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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】クランプ部材
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/12 20060101AFI20231018BHJP
   F16L 47/02 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
F16L3/12 G
F16L47/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019168307
(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2021046874
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】水川 賢司
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-113314(JP,A)
【文献】特開2006-242378(JP,A)
【文献】特開2001-041212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/12
F16L 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製の樹脂管と、前記樹脂管が熱融着により接続される電気融着継手と、を固定する樹脂製のクランプ部材であって、
内側に前記樹脂管が挿入された状態で、前記樹脂管を保持するように縮径可能な締付帯部と、
前記締付帯部の中心軸線回りに周回する周方向に互いに係合することで、前記締付帯部の縮径状態を維持する一対の係合部と、
前記締付帯部に連結され、前記電気融着継手の給電端子を保持する保持部と、を備え、
前記一対の係合部のうちの第1係合部には、第2係合部に向けて突出し、前記一対の係合部同士の縮径状態の程度を示す突起部材が形成され
前記第2係合部と前記保持部の間には、隙間が形成され、
前記締付帯部を縮径させて前記一対の係合部を係合させた状態において、前記突起部材が前記隙間に配置されるクランプ部材。
【請求項2】
前記突起部材は、前記一対の係合部同士が前記中心軸線に沿う軸方向に相対的にずれることを阻止する請求項1に記載のクランプ部材。
【請求項3】
前記突起部材は、前記第2係合部に対して前記中心軸線に沿う軸方向にずらされている請求項1または2に記載のクランプ部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂製の樹脂管が熱融着により連結される電気融着継手が知られている。電気融着継手は筒状をなしている。電気融着継手の内部に樹脂管を挿通した状態で給電端子に電流を流すことで、電気融着継手の内部に設けられた電熱線が発熱し、樹脂管の外周面が溶融されて、電気融着継手の内周面と融着される。
【0003】
このような電気融着継手の熱融着による連結作業では、一定の時間がかかる熱融着の中に、電気融着継手と樹脂管とが位置ずれを起こすことを防ぐために、例えば下記特許文献1に示すようなクランプ部材が用いられる。電気融着継手および樹脂管に許容される位置ずれ量としては、例えば中心軸線同士の傾きが3°以下であることが求められる。また、電気融着継手からの樹脂管の抜け量が1mm以内であることが求められる。
このクランプ部材は金属材料により形成され、熱融着における冷却中に、電気融着継手における一対の給電端子、および電気融着継手に接続される一対の樹脂管を、一体に保持した状態を維持する。
【0004】
しかしながら、このクランプ部材では、金属材料により形成されているので、クランプ部材が高価になり、同時に複数のクランプ部材を手配するのに費用がかさむ。このため、施工作業の費用を抑えながら、熱融着における冷却中に、他の電気融着継手に樹脂管を接続することができず、作業効率が悪かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-155064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のクランプ部材では、金属材料により形成されているので、クランプ部材が高価になり、同時に複数のクランプ部材を手配するのに費用がかさむ。このため、施工作業の費用を抑えながら、熱融着における冷却中に、他の電気融着継手に樹脂管を接続することができず、作業効率が悪かった。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、安価な構成として費用を抑えながら、電気融着継手に樹脂管を接続する施工作業を、複数の箇所で効率的に行うことができるクランプ部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るクランプ部材は、熱可塑性樹脂製の樹脂管と、前記樹脂管が熱融着により接続される電気融着継手と、を固定する樹脂製のクランプ部材であって、内側に前記樹脂管が挿入された状態で、前記樹脂管を保持するように縮径可能な締付帯部と、前記締付帯部の中心軸線回りに周回する周方向に互いに係合することで、前記締付帯部の縮径状態を維持する一対の係合部と、前記締付帯部に連結され、前記電気融着継手の給電端子を保持する保持部と、を備え、前記一対の係合部のうちの第1係合部には、第2係合部に向けて突出し、前記一対の係合部同士の縮径状態の程度を示す突起部材が形成されている。
【0009】
この発明では、樹脂管を熱融着により電気融着継手に接続、固定する際に、クランプ部材における保持部が、電気融着継手の給電端子を保持した状態にしたうえで、樹脂管をクランプ部材の締付帯部の内側に挿入しながら、電気融着継手の開口部に挿入する。その後、クランプ部材における一対の係合部同士を互いに係合させることで、一対の係合部同士が、互いに締付帯部が拡径する方向に相対変位するのを規制することができる。そしてこのように、クランプ部材により、電気融着継手と樹脂管とを仮固定した状態で、給電端子に電流を流すことで、電気融着継手に樹脂管が熱融着される。
【0010】
ここで、本発明ではクランプ部材が樹脂製であるため、安価な構成とすることができる。このため、同時に複数のクランプ部材を手配したとしても費用がかさむことが抑えられ、電気融着継手に樹脂管を接続する施工作業を、複数の箇所で効率的に行うことができる。
また、内側に樹脂管が挿入された締付帯部の縮径状態を保持する一対の係合部を備えているので、締付帯部により確実に樹脂管を保持することができる。
また、電気融着継手の給電端子を保持する保持部が締付帯部に連結されているので、電気融着継手と別体により構成されたクランプ部材により、電気融着継手を確実に保持することができる。
【0011】
また、本発明では、一対の係合部のうちの第1係合部に突起部材が形成されている。突起部材は、第2係合部に向けて突出され、一対の係合部同士による締付帯部の縮径状態の程度を示す。よって、締付帯部の縮径状態を、突起部材を目視することにより確認できる。すなわち、施工現場において、一対の係合部の間隔(距離)を測定する手間を省くことができる。これにより、電気融着継手に樹脂管を接続する施工作業の施工性を高めることができる。
【0012】
また、前記突起部材は、前記一対の係合部同士が前記中心軸線に沿う軸方向に相対的にずれることを阻止してもよい。
【0013】
この場合には、一対の係合部(すなわち、第1係合部および第2係合部)が、軸方向へ相対的にずれることを突起部材で阻止するようにした。具体的には、一対の係合部同士を係合させる際に、第1係合部の突起部材を第2係合部に接触させる。よって、第1係合部および第2係合部が軸方向へ相対的にずれて、第1係合部と第2係合部との係合面積が小さくなることを突起部材で阻止できる。これにより、クランプ部材の締付帯部により樹脂管を安定してクランプできる。
【0014】
また、前記突起部材は、前記第2係合部に対して前記中心軸線に沿う軸方向にずらされていてもよい。
【0015】
この場合には、突起部材を第2係合部に対して軸方向にずらすようにした。よって、第1係合部と第2係合部とを係合させた状態において、突起部材の周方向の端縁と、第2係合部の周方向の端縁とを目視しやすくできる。これにより、締付帯部の縮径状態の程度を確認する際に、突起部材の周方向の端縁と、第2係合部の周方向の端縁とを目視で容易に比較できる。これにより、電気融着継手に樹脂管を接続する施工作業の施工性を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安価な構成として費用を抑えながら、電気融着継手に樹脂管を接続する施工作業を、複数の箇所で効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るクランプ付き電気融着継手の一部断面正面図である。
図2図1に示すクランプ部材の斜視図である。
図3図1に示すクランプ部材を軸方向から見た側面図である。
図4図1に示すクランプ部材を樹脂管に取り付けて電気融着継手に連結した斜視図である。
図5図1に示すクランプ部材で突起部材が第2係合部に対して面一に配置されるまで樹脂管をかしめた状態を示す正面図である。
図6図1に示すクランプ部材で突起部材が第2係合部に対して補強リブ側に配置されるまで樹脂管をかしめた状態を示す正面図である。
図7図1に示すクランプ部材で突起部材が第2係合部に対して操作部側に配置されるまで樹脂管をかしめた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るクランプ部材1について説明する。
図1に示すように、クランプ部材付き電気融着継手3は、電気融着継手2とクランプ部材1とを備えている。電気融着継手2の両側の開口端部に、2つのクランプ部材1が各別に設けられている。
【0019】
電気融着継手2には、熱可塑性樹脂製の樹脂管100が熱融着により接続される。
クランプ部材1は、樹脂管100が熱融着により電気融着継手2に接続、固定される際に、樹脂管100と電気融着継手2とを仮固定する樹脂製の部材である。
ここで、樹脂管100と電気融着継手2との仮固定とは、熱融着の作業中に、樹脂管100の中心軸線に対して電気融着継手2の中心軸線が傾いたり、樹脂管100が電気融着継手2の開口部から抜けたりするのを防ぐことを意味する。
【0020】
電気融着継手2は筒状をなしている。電気融着継手2の周壁20のうち、内周面の近傍には、電熱線21が樹脂管100毎に各別に埋設されている。また、電気融着継手2の周壁20のうち、各開口端部の近傍には、電熱線21と導通された給電端子22が各別に設けられている。給電端子22から、電熱線21に電流を流すことで、電熱線21を発熱させて、電気融着継手2の内側に挿入された樹脂管100を、電気融着継手2の内面に熱融着することができる。
以下の説明において、電気融着継手2の中心軸線Oに沿う方向を軸方向という。また、軸方向から見た平面視で中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0021】
図1および図2に示すように、クランプ部材1は、内側に樹脂管100が挿入された状態で、樹脂管100を保持するように縮径可能な締付帯部10を備えている。
図3に示すように、締付帯部10は、軸方向から見た平面視で、周方向の一部が分断されたC字状をなしている。締付帯部10のうち、周方向に分断された部分の標準状態における大きさは、中心軸線Oを中心とする中心角θ(°)が式(1)を満たす大きさであることが好ましい。
【0022】
θ>360-360×D0/D1…(1)
【0023】
ここで、D0:樹脂管100の外径、D1:締付帯部10の内径を指す。また、締付帯部10の標準状態とは、締付帯部10に外力を加えていない状態を指す。すなわち、クランプ部材1は樹脂製であり、外力を加えると弾性変形し、その外力を解除すると復元変形する。標準状態の締付帯部10は、外力が加えられていない状態の締付帯部10であり、復元変形しきっている状態の締付帯部10であるとも言える。
【0024】
またクランプ部材1は、図2および図3に示すように、一対の係合部11A,11Bと、保持部12と、を備えている。一対の係合部11A,11Bは、周方向に互いに係合することで、締付帯部10の縮径状態を維持する。保持部12は、締付帯部10に連結され、電気融着継手2の給電端子22(図1参照)を保持する。
一対の係合部11A,11B、および保持部12は、合成樹脂材料の射出成形等により、締付帯部10と一体に形成されている。なお、一対の係合部11A,11B、および保持部12を、締付帯部10と別体に形成してもよい。
【0025】
図3に示すように、一対の係合部11A,11Bは、軸方向から見た平面視で、締付帯部10における周方向の両端部に、各別に形成されている。一対の係合部11A,11Bは、互いに周方向に沿って延びている。
一対の係合部11A,11Bは、第1係合部11Aと、締付帯部10が縮径した状態で、第1係合部11Aよりも径方向の外側に位置する第2係合部11Bと、を備えている。第2係合部11Bは、締付帯部10の周方向に沿って第1係合部11A方向へ向けて円弧状に延びて先端面11Cで仕切られている。
【0026】
締付帯部10における第2係合部11Bが形成された端部には、第2係合部11Bよりも径方向の内側に位置し、かつ周方向に延びる案内部10Aが形成されている。案内部10Aは、締付帯部10の端部そのものによって形成されている。
案内部10Aは、第1係合部11Aと第2係合部11Bとが、周方向に互いに係合する際に、第1係合部11Aに対して径方向の内側に位置し、第1係合部11Aの周方向の移動を案内する。すなわち、第1係合部11Aは、第2係合部11Bと案内部10Aとの径方向の間の空間に挿入される。
【0027】
第1係合部11Aには、第1係合歯13Aが形成されている。第1係合歯13Aは、第1係合部11Aにおける径方向の外側を向く外側面に形成されている。第2係合部11Bには、第2係合歯13Bが形成されている。第2係合歯13Bは、第2係合部11Bにおける径方向の内側を向く内側面に形成されている。第1係合部11Aにおいて、第1係合歯13Aが形成されている部分の周方向の長さは、第2係合部11Bにおいて、第2係合歯13Bが形成されている部分の周方向の長さと同等となっている。
第1係合歯13Aおよび第2係合歯13Bは、締付帯部10が縮径する方向の互いの相対変位を許容し、かつ締付帯部10が拡径する方向の互いの相対変位を規制する。具体的には、各係合歯13A,13Bは、軸方向から見た平面視で、三角形状(鋸歯状)をなし、周方向に連続して形成されている。
【0028】
また本実施形態では、第1係合部11Aには、径方向の外側に向けて突出する操作部14が設けられている。操作部14は、第1係合部11Aの基端部に形成されている。図示の例では、操作部14と第2係合部11Bとを、例えばペンチ等の工具で周方向に締める(かしめる)ことができる。これにより、締付帯部10を弾性変形させて縮径させ、係合歯13A、13B同士を係合させることができる。
【0029】
また本実施形態では、図2および図3に示すように、締付帯部10の内周面には、径方向の内側に向けて突出する突起部15が形成されている。突起部15は、周方向に直交する断面視で三角形状をなしている。突起部15は、締付帯部10の内周面における軸方向の中央部に形成されている。突起部15は、締付帯部10の内周面に全周にわたって連続して延びている。なお、このような態様に限られず、突起部15は、締付帯部10の内周面に、周方向に間隔をあけて離散的に設けられてもよい。さらに突起部15はなくてもよい。
【0030】
また本実施形態では、保持部12は、締付帯部10における、軸方向の一方側の端部に連結されている。保持部12は、径方向に延びる連結片12Aと、連結片12Aに連結され、電気融着継手2の給電端子22(図1参照)を保持する保持片12Bと、を備えている。連結片12A、および保持片12Bは一体に形成されている。
連結片12Aは、表裏面が軸方向を向く板状部材であり、図3に示すように、軸方向から見た平面視で径方向に延びる略矩形状を呈している。
【0031】
図1および図2に示すように、連結片12Aは、電気融着継手2の開口端縁に当接する。連結片12Aにおける軸方向の大きさL1は、3mm以上である。図示の例では、連結片12Aにおける軸方向の大きさL1は3mmとなっている。
連結片12Aの表裏面のうち、締付帯部10側を向く外面には、補強リブ16が接続されている。補強リブ16は、第2係合部11Bと、連結片12Aの外面と、を接続し、連結片12Aが軸方向に変形するのを抑制している。また、第2係合部11Bと保持部12との間には、隙間CLが形成されている。
【0032】
図2図3に示すように、隙間CLのうち、周方向において第1係合部11A(操作部14)の反対側の端部が、補強リブ16で閉じられている。また、隙間CLのうち、周方向において第1係合部11Aの端部に、開口部が形成されている。操作部14は、軸方向から見た平面視で、後述する挿通孔12Cの中心から90度以内にある。なお図示の例では、第1係合部11Aおよび第2係合部11Bも、軸方向から見た平面視で、後述する挿通孔12Cの中心から90度以内にある。
【0033】
図1図2に示すように、保持片12Bは、表裏面が径方向を向く板状部材である。連結片12A、および保持片12Bそれぞれにおける周方向の大きさは、互いに同等となっている。保持片12Bは、軸方向から見た平面視で、周方向の中央部が径方向の外側に向けて突出するように湾曲している。保持片12Bの表裏面のうち、径方向の内側を向く内面は、電気融着継手2の外周面に当接する。
保持片12Bには、保持片12Bを径方向に貫く挿通孔12Cが形成されている。挿通孔12C内に電気融着継手2の給電端子22が挿通された状態で保持される。
【0034】
また本実施形態では、締付帯部10における軸方向の端部には、軸方向に向けて突出する突出片17が形成されている。突出片17は、締付帯部10から、軸方向に沿って保持部12と同一方向に突出している。突出片17は、中心軸線Oを径方向に挟んで、保持部12の反対側に位置している。図示の例では、突出片17は、連結片12Aにおける周方向の中央部と、中心軸線Oを径方向に挟む位置に配置されている。
【0035】
突出片17の径方向の大きさは、締付帯部10の径方向の大きさと同等となっている。また、突出片17の軸方向の大きさL2は、連結片12Aにおける軸方向の大きさL1と同じ3mmとなっている。突出片17は、締付帯部10の側面(軸方向の端部)に、周方向に間隔をあけて離散的に設けられてもよい。
【0036】
また本実施形態では、図2から図4に示すように、第1係合部11Aにおける保持部12側の側面に、突起部材25が一体的に形成されている。突起部材25は、第1係合部11Aのうち保持部12側の側面において、周方向の中央部から先端部に至るまで設けられている。突起部材25は、第1係合部11Aの側面から径方向の外側に向けて突出している。
【0037】
突起部材25は、第2係合部11Bに対して軸方向において隙間CLの側にずらされて配置されている。隙間CLは、前述したように、第2係合部11Bと保持部12の連結片12Aとの間に形成され、突起部材25の側に開口部が形成されている。隙間CLの周方向の開口部に対して対向する位置に突起部材25が設置されている。突起部材25の厚みは、軸方向において隙間CLの幅より小さく形成されている。また、突起部材25の長さは、周方向において隙間CLの長さより小さく形成されている。よって、締付帯部10を縮径させて係合歯13A、13B同士を係合させた状態において、突起部材25を隙間CLの内部に開口部から進入させることができる。
【0038】
図示の例では、突起部材25は、表裏面が軸方向を向く板状部材である。図3に示すように、突起部材25は、軸方向から見た平面視で、第1側辺25aと、第2側辺25bと、内辺25cと、外辺25dと、を有する略矩形状である。
第1側辺25aは、第1係合部11Aの保持部12側の側面のうち、周方向の中央に配置されている。第1側辺25aは、径方向に延びている。第2側辺25bは、第1係合部11Aの保持部12側の側面のうち、周方向の先端に配置されている。第2側辺25bは、径方向に延びている。内辺25cは、第1係合部11Aの内周面に沿って第1側辺25aから第2側辺25bまで延びている。外辺25dは、第1側辺25aの外端から第2側辺25bの外端まで、概ね第2係合部11Bの外周面に沿って円弧状に延びている。
【0039】
前記クランプ部材1を用いて、締付帯部10に挿入された樹脂管100を締め付けて(かしめて)固定する際には、まず、操作部14と第2係合部11Bを操作する。そして、第1係合部11Aを案内部10Aと第2係合部11Bの間に挿入する。その際、突起部材25が隙間CLにガイドされて隙間CLの内部に進入し、突起部材25が第2係合部11Bに接触する。
【0040】
よって、係合部11A,11B同士が相対的に軸方向にずれることを突起部材25により防止できる。これにより、第1係合部11Aと第2係合部11Bとの係合面積が小さくなることを突起部材25で阻止して、第1係合歯13Aと第2係合歯13Bとの係合を確実に行える。このように、第1係合歯13Aと第2係合歯13Bとを噛合する面積が十分確保されるので、締付帯部10により樹脂管100を安定してクランプできる。
【0041】
また、突起部材25は、締付帯部10の縮径状態(すなわち、かしめ状態)の程度を示す機能を備えている。すなわち、第1係合部11Aと第2係合部11Bとを係合させて締付帯部10で樹脂管100をかしめた状態において、締付帯部10が樹脂管100を正常にかしめているか否かを突起部材25で判断できる。以下、締付帯部10のかしめ状態を突起部材25で判断する例を図5から図7に基づいて説明する。
【0042】
図5に示すように、操作部14と第2係合部11Bとが周方向にかしめられた状態において、第2係合部11Bの先端面(周方向の端縁)11Cが突起部材25の第1側辺(周方向の端縁)25aに対して軸方向において面一(同一線上)に配置されている。この状態において、操作部14と先端面11Cとの周方向の距離がL3になる。
【0043】
ここで、操作部14と先端面11Cとの周方向の距離L3は、クランプ部材1の締付帯部10で樹脂管100が正常にかしめされた距離である。よって、第2係合部11Bの先端面11Cが突起部材25の第1側辺25aに対して面一に配置されていることを目視する。これにより、樹脂管100が締付帯部10で正常にかしめられていることを確認できる。
【0044】
なお、樹脂管100が締付帯部10で正常にかしめられた状態における操作部14と先端面11Cとの距離L3の具体的な寸法は以下の通りである。
すなわち、樹脂管100の直径が20~30mmにおいて、樹脂管100が正常にかしめられる操作部14と先端面11Cとの周方向の距離L3は約3mmである。よって、距離L3が約3mm以下の場合に、樹脂管100が締付帯部10で正常にかしめられる。
また、樹脂管100の直径が40mmにおいて、樹脂管100が正常にかしめられる操作部14と先端面11Cとの周方向の距離L3は約4mmである。よって、距離L3が約4mm以下の場合に、樹脂管100が締付帯部10で正常にかしめられる。
さらに、樹脂管100の直径が50mmにおいて、樹脂管100が正常にかしめられる操作部14と先端面11Cとの周方向の距離L3は約5mmである。よって、距離L3が約5mm以下の場合に、樹脂管100が締付帯部10で正常にかしめられる。
【0045】
図6に示すように、操作部14と第2係合部11Bとが周方向にかしめられた状態において、第2係合部11Bの先端面11Cが突起部材25の第1側辺25aに対して周方向において補強リブ16の側に配置される。この状態において、操作部14と先端面11Cとの周方向の距離が、L3より短いL4になる。
【0046】
ここで、操作部14と先端面11Cとの周方向の距離L4は、距離L3より小さい。よって、クランプ部材1の締付帯部10で樹脂管100が正常にかしめされた距離である。これにより、第2係合部11Bの先端面11Cが突起部材25の第1側辺25aに対して周方向において操作部14側に配置されていることを目視することにより、樹脂管100が締付帯部10で正常にかしめられていることを確認できる。
【0047】
図7に示すように、操作部14と第2係合部11Bとが周方向にかしめられた状態において、第2係合部11Bの先端面11Cが突起部材25の第1側辺25aに対して周方向において操作部14の反対側に配置される。この状態において、操作部14と先端面11Cとの周方向の距離が、L3よりも長いL5になる。
【0048】
ここで、操作部14と先端面11Cとの周方向の距離L5は、距離L3より大きい。よって、クランプ部材1の締付帯部10で樹脂管100が正常にかしめられていない距離である。これにより、第2係合部11Bの先端面11Cが突起部材25の第1側辺25aに対して周方向において操作部14の反対側に配置されていることを目視することにより、樹脂管100が締付帯部10で正常にかしめられていないことを確認できる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係るクランプ部材1によれば、第1係合部11Aに突起部材25が形成されている。突起部材25は、第2係合部11Bに向けて突出され、係合部11A,11B同士による締付帯部10の縮径状態の程度を示す。よって、締付帯部10の縮径状態を、突起部材25を目視することにより確認できる。このため、施工現場において、締付帯部10の縮径状態を確認するために、操作部14と先端面11Cとの距離(すなわち、第1係合部11Aと第2係合部11Bとの間隔)を測定する手間を省くことができる。これにより、電気融着継手2に樹脂管100を接続する施工作業の施工性を高めることができる。
【0050】
また、突起部材25は、第2係合部11Bに対して軸方向にずらされて配置されている。よって、第1係合部11Aと第2係合部11Bとを係合させた状態において、突起部材25を目視しやすい位置に配置できる。このため、締付帯部10の縮径状態を確認する際に、突起部材25の第1側辺25aと、第2係合部11Bの先端面11Cとを目視で容易に比較できる。これにより、電気融着継手2に樹脂管100を接続する施工作業の施工性を一層高めることができる。
【0051】
さらに、クランプ部材1で締付帯部10に挿入された樹脂管100をかしめて固定する際に、突起部材25が隙間CLにガイドされて隙間CLの内部に進入する。進入した突起部材25は、軸方向に沿って第2係合部11Bに接近すると、第2係合部11Bの軸方向の側面に接触する。この突起部材25は、軸方向に沿って第2係合部11Bから離間しようとすると、連結片12Aに接触する。ここで突起部材25は、第1係合部11Aに一体に設けられ、第2係合部11Bと連結片12A(保持部12)とは一体に設けられている。よって、第1係合部11Aと第2係合部11Bとが軸方向へ相対的にずれることを防止できる。このため、第1係合部11Aと第2係合部11Bとの係合面積が小さくなることを突起部材25で阻止して、第1係合歯13Aと第2係合歯13Bの係合を確実に行える。これにより、第1係合歯13Aと第2係合歯13Bとを噛合する面積が十分確保されるので、締付帯部10により樹脂管100を安定してクランプできる。
【0052】
なお、突起部材25は、予め第2係合部11Bと保持部12の連結片12Aとの間の隙間CLに延ばすように形成してもよい。この場合においても、第1係合歯13Aと第2係合歯13Bは突起部材25にガイドされて係合位置に相対移動できる。
また、突起部材25は、第1係合部11Aに代えて第2係合部11Bの先端部に形成されていてもよい。また、突起部材25は、第1係合部11Aや第2係合部11Bにおいて、隙間CLの反対側の側面に設けてもよい。また、突起部材25は、第1係合部11Aまたは第2係合部11Bの両側面に設けてもよい。すなわち、突起部材25は、第1係合部11Aおよび第2係合部11Bのいずれに設けられていてもよい。突起部材25は、第1係合部11Aおよび第2係合部11Bの一方に設けられ、他方に向けて突出する任意の構成を適宜採用することができる。
【0053】
次に、クランプ部材1を用いて電気融着継手2に樹脂管100を接続する施工作業を図1図2図4から図6に基づいて説明する。
図1図2に示すように、樹脂管100を熱融着により電気融着継手2に接続、固定する際には、クランプ部材1における保持部12の挿通孔12C内に、電気融着継手2の給電端子22を挿通する。これにより、電気融着継手2の給電端子22を保持部12で保持する。
【0054】
そして、保持部12における連結片12A、および締付帯部10に形成された突出片17を、電気融着継手2の開口端縁に各別に当接する。連結片12Aおよび突出片17を当接させた状態において、樹脂管100が締付帯部10の内側を通って、電気融着継手2の開口部内に挿通できるようにクランプ部材1を位置決めする。
この状態において、締付帯部10における軸方向の一方側の端部と、電気融着継手2の開口端縁と、の間に3mm(L1、L2に相当する長さ)の隙間が形成される。
【0055】
そして、樹脂管100をクランプ部材1の締付帯部10の内側に挿入しながら、電気融着継手2の開口部に挿入する。この状態において、クランプ部材1における一対の係合部11A,11Bに各別に形成された係合歯13A,13B同士を互いに係合させる。係合部11A,11Bの操作は、例えば前述したように、操作部14と第2係合部11Bとをペンチで締める(かしめる)ことで行う。
【0056】
図5図6に示すように、操作部14と第2係合部11Bとをペンチで締めることにより、突起部材25が隙間CLにガイドされて隙間CLの内部に進入する。よって、第1係合部11Aと第2係合部11Bとが相対的に軸方向にずれることを突起部材25で防止できる。この状態において、第2係合部11Bの先端面11Cと、隙間CLの内部に進入した突起部材25と、の相対的な位置関係を目視する。このとき、第2係合部11Bの先端面11Cが、突起部材25の第1側辺25aに対して軸方向において面一に配置されていることを確認する。あるいは、第2係合部11Bの先端面11Cが、突起部材25の第1側辺25aに対して操作部14側に配置されていることを確認する。その後、操作部14と第2係合部11Bとのペンチによるかしめ作業を完了する。
【0057】
図1図4に示すように、係合歯13A,13B同士が互いに係合した状態に保たれる。よって、第1係合部11Aおよび第2係合部11B同士が、締付帯部10が拡径する方向に、互いに相対変位するのを規制することができる。これにより、クランプ部材1により、電気融着継手2と樹脂管100とが仮固定(固定)された状態となる。
【0058】
この状態において、給電端子22に電流を流すことにより、電気融着継手2に樹脂管100を熱融着する。熱融着が完了した後、例えば、クランプ部材1を電気融着継手2に付けたまま残置しておく。その後、通水試験を行ない、漏水が発生しなければクランプ部材1を残置したまま通水して、電気融着継手2や樹脂管100からなる配管システムを使用する。
【0059】
なおこれらの作業の後、クランプ部材1を、電気融着継手2および樹脂管100から取り外してもよい。仮に、クランプ部材1を取り外す場合には、例えば、第2係合部11Bを径方向の外側に引張りながら、操作部14を周方向のうち、第2係合部11Bから離間する方向に向けて引きぬく。よって、係合部11A,11B同士の係合が解除される。これにより、締付帯部10を樹脂管100から取り外し、保持部12の挿通孔12Cを給電端子22から取り外すことができる。
また、クランプ部材1を残置する場合には、係合部11A,11Bの幅を引き抜きできない程度にしておくことが好ましい。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係るクランプ部材1によれば、クランプ部材1が樹脂製であるため、安価な構成とすることができる。このため、同時に複数のクランプ部材1を手配したとしても費用がかさむことが抑えられ、例えば、電気融着継手2に樹脂管100を接続する施工作業を、複数の箇所で効率的に行うこと等ができる。
また、内側に樹脂管100が挿入された締付帯部10の縮径状態を保持する一対の係合部11A、11Bを備えているので、締付帯部10により確実に樹脂管100を保持することができる。
また、電気融着継手2の給電端子22を保持する保持部12が締付帯部10に連結されているので、電気融着継手2と別体により構成されたクランプ部材1により、電気融着継手2を確実に保持することができる。
【0061】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 クランプ部材
2 電気融着継手
10 締付帯部
11A 第1係合部(係合部)
11B 第2係合部(係合部)
12 保持部
22 給電端子
25 突起部材
100 樹脂管
CL 隙間
O 中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7