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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】作業服
(51)【国際特許分類】
   A41D 27/10 20060101AFI20231018BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20231018BHJP
   A41D 13/02 20060101ALI20231018BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
A41D27/10 D
A41D27/10 Z
A41D13/00 102
A41D13/02
A41D27/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019214399
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021085116
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2020-06-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】村井 保雄
(72)【発明者】
【氏名】絹本 良和
【合議体】
【審判長】藤原 直欣
【審判官】▲高▼橋 杏子
【審判官】稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-25314(JP,U)
【文献】特開2002-38322(JP,A)
【文献】登録実用新案第3062097(JP,U)
【文献】特開平10-168619(JP,A)
【文献】特開2011-74520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D27/00-27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業服(1)の背面部が、背中を覆う背中部分(11)と、肩甲骨から脇を覆い脇には脇ぐり線(12c)を有する後袖部分(12)と、上腕背面を覆う上腕背面部分(13)を含む作業服(1)であって、
前記背中部分(11)から後袖部分(12)及び上腕背面部分(13)にかけてプリーツは無く、着用時は人体表面に沿って外側に膨出するように立体縫製されており、
裁断布背中部分頂部線(11a)と後袖部分頂部線(12a)を繋ぐ肩縫製線(7)は、屈曲点のない線で縫製されており、前記背中部分頂部線(11a)から、前記後袖部分頂部線(12a)と上腕背面部分(13)の境界頂部まで下方向に傾斜する肩縫製線(7)で縫製され、
前記肩縫製線(7)は肩峰ライン(8)より前側に配置されており、
裁断布の後袖部分(12)の外側底部(P4)と上腕背面部分(13)の下端部との間の脇ぐり線(12c)は、前記後袖部分(12)の外側頂部(P3)から外側底部(P4)まで引いた直線(L)より外側にあり、かつ円弧線であり、その分、脇部分を膨出させて立体縫製体されており、
前記後袖部分(12)と上腕背面部分(13)との縫製部の下部、及び前記脇ぐり線(12c)の上部は、静置状態では後袖部分で覆われ折り畳まれた状態(12e)となり、その分、着用時は人体表面に沿って外側に膨出し皺のない状態となることを特徴とする作業服。
【請求項2】
前記背中部分(11)の側部線(11c)と前記後袖部分(12)との間の空白部分(x)は、中央部が狭く両端部が広いことにより、前記中央部はその分膨出して立体縫製されている請求項1に記載の作業服。
【請求項3】
作業服(1)の前身頃(2)と前袖部(3)の境界頂部(P2)は、後袖部分(12)と上腕背面部分(13)との境界頂部(P3)より上にある請求項1又は2に記載の作業服。
【請求項4】
前記背中部分(11)は1枚又は2枚であり、2枚の場合は後中心線で分割されている請求項1~3のいずれかに記載の作業服。
【請求項5】
前記上腕背面部分(13)は、静置状態では後袖部分(12)との縫製線の下端から上方又は斜め上方に折り畳まれた状態となるが、着用時は人体表面に沿って外側に膨出し皺のない状態となる請求項1~のいずれかに記載の作業服。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の作業服に、下衣部を一体化させたことを特徴とする作業服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業服の背中面にプリーツは無く、着用時は人体表面に沿って外側に膨出し皺のない状態に立体縫製されている作業服に関する。
【背景技術】
【0002】
作業服は各種作業において広く着用されている。作業服は着用者の動作を妨げることなく円滑にするため、本出願人は、後身頃の肩背面部にアクションプリーツと呼ばれる襞を設け、腕を前方へ上げたときの肩背面部の伸びを許容してツッパリ感をなくし、これにより身体の活動性を向上させている提案をした(特許文献1)。しかし、プリーツを入れると、プリーツが出っ張り、作業の邪魔になったり、機械などに巻き込まれて危険になる場合がある。この問題を解消するため、本出願人は、背中部分と、肩甲骨から脇を覆う後袖部分と上腕背面を覆う上腕背面部分を立体縫製し、縫製後に肩付け根部の背面側が外方へ膨らむ丸みを帯びた形状にした作業服を提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-129513号公報
【文献】特開2002-038322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の作業服は、作業者が腕を前に伸ばす作業の際、ツッパリ感があるという問題があり、さらなる改良が求められていた。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するため、作業者が腕を前に伸ばす作業の際、ツッパリ感を解消し、着用者の動作を妨げることなく円滑にし、使用感及び着用感が良好な作業服を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1番目の作業服は、作業服(1)の背面部が、背中を覆う背中部分(11)と、肩甲骨から脇を覆い脇には脇ぐり線(12c)を有する後袖部分(12)と、上腕背面を覆う上腕背面部分(13)を含む作業服(1)であって、
前記背中部分(11)から後袖部分(12)及び上腕背面部分(13)にかけてプリーツは無く、着用時は人体表面に沿って外側に膨出するように立体縫製されており、
裁断布背中部分頂部線(11a)と後袖部分頂部線(12a)を繋ぐ肩縫製線(7)は、屈曲点のない線で縫製されており、前記背中部分頂部線(11a)から、前記後袖部分頂部線(12a)と上腕背面部分(13)の境界頂部まで下方向に傾斜する肩縫製線(7)で縫製され、
前記肩縫製線(7)は肩峰ライン(8)より前側に配置されており、
裁断布の後袖部分(12)の外側底部(P4)と上腕背面部分(13)の下端部との間の脇ぐり線(12c)は、前記後袖部分(12)の外側頂部(P3)から外側底部(P4)まで引いた直線(L)より外側にあり、かつ円弧線であり、その分、脇部分を膨出させて立体縫製体されており、
前記後袖部分(12)と上腕背面部分(13)との縫製部の下部、及び前記脇ぐり線(12c)の上部は、静置状態では後袖部分で覆われ折り畳まれた状態(12e)となり、その分、着用時は人体表面に沿って外側に膨出し皺のない状態となることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2番目の作業服は、前記第1番目の作業服に、下衣部を一体化させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、背中部分の頂部(ネックポイント)から、後袖部分と上腕背面部分の境界頂部まで下方向に傾斜する肩縫製線で縫製され、前記肩縫製線には屈曲点は無く、前記肩縫製線は肩峰ラインより前側に配置されていることにより、作業者が腕を前に伸ばす作業の際、ツッパリ感を解消し、着用者の動作を妨げることなく円滑にし、使用感及び着用感が良好な作業服を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の一実施形態における作業服の模式的正面図である。
図2図2は同、作業服の模式的背面図である。
図3図3は同、作業服の背面上部の裁断布型紙図である。
図4図4A-Dは、作業服の背中部分と後袖部分との縫製を示す説明図である。
図5図5は同、作業服の模式的背面折り畳み図である。
図6図6は同、作業服の着用時の模式的背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の作業服は、作業服の背面部が、背中を覆う背中部分と、肩甲骨から脇を覆い脇には脇ぐり線を有する後袖部分と、上腕背面を覆う上腕背面部分を含む。このほか、前身頃部分、前袖部分、上腕前面部分、襟部分など周知部分を含む。ポケットや裾ゴムなども任意部分も含んでもよい。背中部分から後袖部分及び上腕背面部分にかけてプリーツは無く、着用時は人体表面に沿って外側に膨出し皺のない状態に立体縫製されている。
【0011】
背中部分の頂部(ネックポイント)から、後袖部分と上腕背面部分の境界頂部まで下方向に傾斜する肩縫製線で縫製され、前記肩縫製線には屈曲点は無く、前記肩縫製線は肩峰ラインより前側に配置されている。これにより、肩峰ラインは背中部分の頂部(ネックポイント)から、後袖部分と上腕背面部分の境界頂部までほぼ直線的に下方向に向いて形成される。また、背中部分から後袖部分及び上腕背面部分にかけて、着用時は人体表面に沿って外側に膨出し、皺のない状態に立体縫製されている。これにより、作業者が腕を前に伸ばす作業の際、ツッパリ感を解消し、着用者の動作を妨げることなく円滑にし、使用感及び着用感が良好な作業服となる。
【0012】
前身頃と前袖部の境界頂部は、後袖部分と上腕背面部分との境界頂部より上にあることが好ましい。これにより、背中側を広くし作業者の動作の自由度を与えることができる。
【0013】
後袖部分の脇ぐり線は、後袖部分の外側頂部から外側底部まで引いた直線より外側にあることが好ましい。これにより、脇部分は大きく立体縫製でき、作業時のツッパリ感を解消し、着用者の動作を妨げることなく円滑にし、使用感及び着用感が良好な作業服となる。
【0014】
背面部は1枚としてもよいし、2枚としてもよい。2枚の場合は後中心線で分割され、後中心線の部分を縫製により繋ぐ。
【0015】
後袖部分と上腕背面部分との縫製部の下部、及び脇ぐり線の上部は、静置状態では後袖部分で覆われ折り畳まれた状態となるが、着用時は人体表面に沿って外側に膨出し皺のない状態となるのが好ましい。すなわち、折り畳まれた分、人体表面に沿って外側に膨出し、さらに作業時のツッパリ感を解消し、着用者の動作を妨げることなく円滑にし、使用感及び着用感が良好な作業服となる。
【0016】
上腕背面部分は、静置状態では後袖部分との縫製線の下端から上方又は斜め上方に折り畳まれた状態となるが、着用時は人体表面に沿って外側に膨出し皺のない状態となる。すなわち、折り畳まれた分、人体表面に沿って外側に膨出し、さらに作業時のツッパリ感を解消し、着用者の動作を妨げることなく円滑にし、使用感及び着用感が良好な作業服となる。前記において斜め上方とは、垂直方向から概ね60°までの範囲である。
【0017】
本発明の作業服は、前記第1番目の作業服に、下衣部を一体化させてつなぎ服としてもよい。この場合、下衣部は通常のつなぎ服に使用するものが使用でき、特に限定されるものではない。
【0018】
本発明の作業服は、綿糸100%の紡績糸、ポリエステル繊維100%の紡績糸、又は綿(コットン)とポリエステル繊維との混紡糸を含む布帛であるのが好ましい。綿(コットン)とポリエステル繊維との混紡糸の場合は、綿10~90質量%、ポリエステル繊維90~10質量%の割合で混紡できる。布帛は織物又は編物が好ましい。とくに織物が好ましい。これにより洗濯が可能であり、繰り返し使用できる。
【0019】
本発明に適用できる織物としては、平織、斜文織(綾織)、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織等がある。編み物としては、丸編、緯編、経編、パイル編等を含み、平編、天竺編、フライス編(リブ編,ゴム編,畔編)、スムース編(両面編)、ゴム編、パール編、デンビー組織、コード組織、アトラス組織、鎖編組織、挿入組織等がある。このうち平織物が好ましい。織物又は編物の単位面積当たりの質量(目付)は50~500g/m2が好ましく、さらに好ましくは100~450g/m2であり、とくに好ましくは140~400g/m2である。
【0020】
以下図面を用いて説明する。各図面において、同一符号は同一部分を示す。図1は本発明の一実施形態における作業服の模式的正面図である。この作業服1は、前身頃2、前袖部3、袖口部4、襟部5及び裾部6が主な部分である。ポケット9はあると便利である。前身頃2と前袖部3の上部の肩縫製線7は、肩峰ライン8より前側に配置されている。これにより背中側に膨らむ自由度を与えている。前身頃2と前袖部3の境界頂部P2は、後袖部分と上腕背面部分との境界頂部P3より上にある。これにより、背中側を広くし自由度を与えている。
【0021】
図2は同、作業服1の模式的背面図である。背面部は、背中を覆う背中部分11と、肩甲骨から脇を覆う後袖部分12と、上腕背面を覆う上腕背面部分13、前腕背面部分14と、後身頃胴部10を含んで縫製されている。背中部分11から後袖部分12及び上腕背面部分13にかけてプリーツは無く、着用時は人体表面に沿って外側に膨出して立体縫製されている。
【0022】
図3は同、作業服の背面上部の裁断布型紙図である。背中を覆う背中部分11の頂部線11aと後袖部分12の頂部線12aはほぼ直線で縫製する。この部分をほぼ直線で縫製すると縫製しやすく、皺も入りにくい。頂部線11aと頂部線12aの間をほぼ直線で縫製することにより、背中部分11の頂部(ネックポイント)P1から、後袖部分12と上腕背面部分13との境界頂部P3まで下方向に傾斜する肩縫製線となる。従来(特許文献2)は、一点鎖線11a’と12a’で示す裁断布型紙図であり、屈曲点があり、皺になりやすく、縫製効率もよくなかった。
【0023】
背中部分11の後袖部分12との側部線11cは、従来(特許文献2)の側部線11c’に比べて外側に出している。背中部分11の後袖部分12との間の部分xは、中央部が狭く、両端部が広い。この状態で背中部分11の後袖部分12を縫製するには、次のようにする。
(1)図4Aに示すように、まず頂部線11aと頂部線12aを縫製するか、又は図4Bに示すように、底部線11bと底部線12bとを縫製する。この順序はどちらが先でもよい。このようにして背中部分11と後袖部分12との側部線11cの両端付近を縫製すると、図4Cに示すように中央部分は膨出する。
(2)次に図4Dに示すように、側部線11cの中央部分を膨出させて縫製すると、前記中央部分は膨出し、立体縫製される。図3に戻り、背中部分11の後袖部分12との間の空白部分xは、中央部が狭く、両端部が広いため、中央部はその分膨出する。これにより立体縫製される。
【0024】
後袖部分12の脇には脇ぐり線12cがあり、この脇ぐり線12cは、後袖部分の外側頂部P3から外側底部P4まで引いた直線Lより外側にある。従来(特許文献2)の脇ぐり線12c’は、外側頂部P3から外側底部P4まで引いた直線Lの内側又は接触する部分があった。本発明では脇ぐり線12cを外側に出し、その分、脇部分は大きく膨出し立体縫製体となる。
【0025】
後袖部分12と上腕背面部分13との空白部分yも、中央部が狭く、両端部が広いため、中央部はその分膨出し、立体縫製される。
【0026】
図5は同、作業服1の模式的背面折り畳み図である。後袖部分12の膨出部は折り畳まれて平面にすると、表面の折り畳み線12dと、畳み線12dの陰に隠れた折り畳み線12eが形成される。また、上腕背面部分13の膨出部も折り畳んで平面にすると、折り畳み線13aが形成される。この例では折り畳み線13aは脇部から斜め上に向かう線となっているが、真上に向かう線になってもよい。
【0027】
図6は同、作業服1の着用時の模式的背面図である。作業者が腕を前に伸ばす作業の際、ツッパリ感がなく、着用者の動作を妨げることなく円滑な作業ができることを示している。それ故、使用感及び着用感が良好な作業服となる。
【実施例
【0028】
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
綿(コットン)35質量%、ポリエステル65質量%の混紡糸(メートル番手34番)を経糸と緯糸に使用し、綾織組織とした質量170g/mの織物を製造した。この織物を使用して、図1~5に示す作業服を縫製した。得られた作業服はLサイズで1着約610gであった。この作業服を着用し、様々な作業をしたところ、作業者が腕を前に伸ばす作業の際、ツッパリ感がなく、どのような作業においても着用者の動作を妨げることなく円滑な作業ができることが確認できた。また、使用感及び着用感が良好な作業服であることも確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の作業服は、土木、建築、工場の内外作業、室内作業、病院作業などのさまざまな作業服の上衣に好適である。
【符号の説明】
【0030】
1 作業服
2 前身頃
3 前袖部
4 袖口部
5 襟部
6 裾部
7 肩縫製線
8 肩峰ライン
9 ポケット
10 後身頃胴部
11 背中部分
12 後袖部分
13 上腕背面部分
14 前腕背面部分
P1 頂部(ネックポイント)
図1
図2
図3
図4
図5
図6