(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】捕球具
(51)【国際特許分類】
A63B 71/14 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
A63B71/14 L
(21)【出願番号】P 2019222121
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高浜 健太
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-268144(JP,A)
【文献】実開平04-007875(JP,U)
【文献】特開平01-299575(JP,A)
【文献】米国特許第06681402(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00 - 71/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの指部の背面部が、前面側から順に、基材と、該基材に接合されたポリウレタン部材と、から構成され、
前記基材は、前面側から順に、不織布と、該不織布に接合されたメッシュと、から構成され、
前記基材の厚みに対する前記ポリウレタン部材の厚みの比率が25%以上である、
捕球具。
【請求項2】
前記ポリウレタン部材の厚みが0.5mm以上である、
請求項1に記載の捕球具。
【請求項3】
前記指部の基端部における前記ポリウレタン部材の体積は、前記指部の先端部における前記ポリウレタン部材の体積よりも大きい、
請求項1
又は2に記載の捕球具。
【請求項4】
前記指部のうち少なくとも小指部の背面部は、屈曲促進部を備え、
前記屈曲促進部における前記ポリウレタン部材の体積は、前記指部の背面部の他の部分の前記ポリウレタン部材の体積よりも小さい、
請求項1
又は2に記載の捕球具。
【請求項5】
少なくとも1つの指部の背面部が、前面側から順に、基材と、該基材に接合されたポリウレタン部材と、から構成され、
前記基材の厚みに対する前記ポリウレタン部材の厚みの比率が25%以上であり、
前記ポリウレタン部材は、網目状構造部を有し、
前記網目状構造部の開口のサイズが一様でない、
捕球具。
【請求項6】
前記基材は、前面側から順に、不織布と、該不織布に接合されたメッシュと、から構成され、
前記ポリウレタン部材は、網目状構造部を有し、
前記網目状構造部の開口を通じて前記メッシュが露出している、
請求項1から
5の何れかに記載の捕球具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球やソフトボール用の捕球具に関する。特に、本発明は、耐久性に優れると共に、3次元的な構造設計や任意の位置への剛性付与が可能な捕球具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、野球やソフトボール用の捕球具(グラブ)には、材料として天然皮革や人工皮革が用いられている。
天然皮革や人工皮革を材料として用いた捕球具は、その製造方法に起因して、3次元的な構造設計や、局所的な剛性付与が制限される。
また、特に、天然皮革を材料として用いた捕球具の場合、長期間の使用に伴う天然皮革の経年劣化によって、指部の剛性が低下したり、捕球具の型(全体的な形状)が崩れるといった問題がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、剛性及び耐久性に優れたグラブを提供することを課題として、指部の背面部にレースや補強部を設けたグラブが提案されている。
しかしながら、特許文献1のグラブでは、3次元的な構造設計や任意の位置への剛性付与が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、耐久性に優れると共に、3次元的な構造設計や任意の位置への剛性付与が可能な捕球具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、少なくとも1つの指部の背面部が、前面側から順に、基材と、該基材に接合されたポリウレタン部材と、から構成され、前記基材は、前面側から順に、不織布と、該不織布に接合されたメッシュと、から構成され、前記基材の厚みに対する前記ポリウレタン部材の厚みの比率が25%以上である、捕球具を提供する。
【0007】
本発明において、「指部の背面部」は、指部の手甲側の部位を意味する。使用者の指を挿入する部分が外指袋と該外指袋に挿入された内指袋との二重構造になっている場合には、「指部」は、外指袋を意味し、「指部の背面部」は、外指袋の手甲側の部位を意味する。また、本発明において、「前面側」とは、手掌側を意味する。また、本発明において、「ポリウレタン部材」とは、全体又は主成分がポリウレタン樹脂から形成された部材を意味する。さらに、本発明において、「前記基材の厚み対する前記ポリウレタン部材の厚みの比率が25%以上」とは、基材の厚み及びポリウレタン部材の厚みが部位によって異なる場合には、基材の最大の厚みに対するポリウレタン部材の最小の厚みの比率が25%以上であることを意味する。また、例えば、ポリウレタン部材が開口を有する網目状構造になっている場合、「ポリウレタン部材の厚み」は、開口を除いた部分の厚みを意味する。
捕球具は、使用者の指を挿入する指部として、一般に、小指を挿入する小指部、薬指を挿入する薬指部、中指を挿入する中指部、人差し指を挿入する人差し指部、及び、親指を挿入する親指部を備える。本発明に係る捕球具は、これら指部のうち少なくとも1つの指部の背面部が、前面側から順に、基材と、該基材に接合されたポリウレタン部材と、から構成されている。基材へのポリウレタン部材の接合は、例えば、モールド成形法を用いて実施可能である。
本発明に係る捕球具は、指部の背面部がポリウレタン部材を備えるため、耐久性に優れる。
また、本発明に係る捕球具によれば、基材の厚みに対するポリウレタン部材の厚みの比率が25%以上と高く、基材に接合する剛性の高いポリウレタン部材の位置や体積(厚み)を適宜設計することで、3次元的な構造設計や任意の位置への剛性付与が可能である。
なお、人工皮革は、不織布にポリウレタン樹脂をコーティングした構成であるが、不織布の厚みに対するポリウレタン樹脂の厚みの比率は、一般に15%以下であり、本発明に係る捕球具における25%以上の比率とは全く異なる。人工皮革は、長尺のシート状の不織布の表面にポリウレタン樹脂を一様に連続的にコーティングして製造されるのが一般的であり、捕球具の材料として用いる場合には、製造されたシート状の人工皮革を所定の寸法に裁断するのに対し、本発明に係る捕球具では、不織布等から構成され予め裁断された基材に、ポリウレタン樹脂をモールド成形する方法等により、ポリウレタン樹脂を立体的に(3次元的に)接合する点でも異なる。
さらに、本発明に係る捕球具において、基材は、前面側から順に、不織布と、該不織布に接合されたメッシュと、から構成されるため、基材(基材の背面側に位置するメッシュ)とポリウレタン部材とが熱融着し易く、容易に接合可能であると共に、接合強度が高まる。また、不織布とメッシュも、例えば、糊を介して接着することで容易に接合可能である。
【0008】
好ましくは、前記ポリウレタン部材の厚みが0.5mm以上である。
【0009】
上記の好ましい構成によれば、十分な剛性を付与することができる。
なお、人工皮革におけるポリウレタン樹脂の厚みは、一般に、0.3mm以下であり、本発明に係る捕球具における0.5mm以上の厚みとは異なる。
【0012】
好ましくは、前記指部の基端部における前記ポリウレタン部材の体積は、前記指部の先端部における前記ポリウレタン部材の体積よりも大きい。
【0013】
上記の好ましい構成において、「基端部」は、指部の長手方向中央から基端側の部位(挿入される使用者の手の基節骨寄りの部位)であり、「先端部」は、指部の長手方向中央から先端側の部位(挿入される使用者の手の末節骨寄りの部位)を意味する。
上記の好ましい構成によれば、指部の基端部におけるポリウレタン部材の体積が、指部の先端部におけるポリウレタン部材の体積よりも大きいため、指部の先端部における重量が相対的に軽くなる。このため、捕球具の捕球性能が向上する。
【0014】
好ましくは、前記指部のうち少なくとも小指部の背面部は、屈曲促進部を備え、前記屈曲促進部における前記ポリウレタン部材の体積は、前記指部の背面部の他の部分の前記ポリウレタン部材の体積よりも小さい。
【0015】
上記の好ましい構成において、「屈曲促進部」とは、捕球具の開閉動作時に歪みが大きくなる領域において屈曲が促進された部分であり、具体的には、使用者の手の基節骨にほぼ対応する領域において屈曲が促進された部分を意味する。基節骨は、MP関節とPIP関節との間に位置する骨である。屈曲促進部は、少なくとも小指部に形成され、人差し指部側に向けて延びていてもよい。
上記の好ましい構成によれば、屈曲促進部におけるポリウレタン部材の体積が他の部分のポリウレタン部材の体積よりも小さいため、屈曲促進部において捕球具を屈曲させ易くなり、捕球具の捕球性能が向上する。
【0016】
また、前記課題を解決するため、本発明は、少なくとも1つの指部の背面部が、前面側から順に、基材と、該基材に接合されたポリウレタン部材と、から構成され、前記基材の厚みに対する前記ポリウレタン部材の厚みの比率が25%以上であり、前記ポリウレタン部材は、網目状構造部を有し、前記網目状構造部の開口のサイズが一様でない、捕球具としても提供される。
【0017】
本発明によれば、開口のサイズが相対的に大きい部位では、剛性が相対的に小さくなり、開口のサイズが相対的に小さい部位では、剛性が相対的に大きくなる。したがい、指部の曲げ特性等の所望する機能に応じた任意の位置への剛性付与を容易に行うことが可能である。
なお、本発明は、基材が、前面側から順に、不織布と、該不織布に接合されたメッシュと、から構成される場合に限るものではなく、基材として、メッシュのみ、不織布のみの他、人工皮革を用いることも可能である。
【0018】
好ましくは、前記基材は、前面側から順に、不織布と、該不織布に接合されたメッシュと、から構成され、前記ポリウレタン部材は、網目状構造部を有し、前記網目状構造部の開口を通じて前記メッシュが露出している。
【0019】
上記の好ましい構成によれば、網目状構造部の開口を通じてメッシュが露出しているため、指部の通気性が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐久性に優れると共に、3次元的な構造設計や任意の位置への剛性付与が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る捕球具の構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す薬指部の背面部のポリウレタン部材が具備する非開口部の厚み分布を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る捕球具の構成を示す図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る捕球具の変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る捕球具について説明する。本実施形態では、捕球具が野球用のグラブである場合を例に挙げて説明する。なお、各図は、参考的に表したものであり、各図に表された部材などの寸法、縮尺及び形状は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
【0023】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る捕球具(野球用グラブ)について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る捕球具の構成を示す図である。
図1(a)は、捕球具の外観を背面側から撮った写真である。
図1(b)は、
図1(a)に示す指部の背面部の矢視AA断面を模式的に示す図である。
図1(b)に示す断面は、実際には上に凸に湾曲しているが、便宜上、平坦に図示している。
【0024】
本実施形態に係る捕球具100は、使用者が指を挿入する5つの指部を備えている。そのうち、本実施形態では、小指を挿入する小指部10、薬指を挿入する薬指部20及び中指を挿入する中指部30の背面部が、前面側(
図1(b)の下側)から順に、基材1と、基材1に接合されたポリウレタン部材2と、から構成されている。
図1(b)では、代表して、薬指部20の背面部の断面を図示しているが、中指部30の背面部の断面も同様の構成である。具体的には、本実施形態の各指部は、外指袋と該外指袋に挿入された内指袋(図示せず)との二重構造になっており、
図1(b)に示す背面部は、外指袋の手甲側の部位である。なお、各指部を構成する材料は、接合部3において、縫製等により接合されている。
【0025】
本実施形態の基材1は、前面側から順に、不織布11と、不織布11に接合されたメッシュ12と、から構成されている。
不織布11としては、例えば、ナイロン(登録商標)やポリエステル製の不織布を用いることができる。
メッシュ12としては、例えば、ポリエステル製のメッシュを用いることができる。
不織布11とメッシュ12とは、例えば、糊を介して接着することで接合されている。
ポリウレタン部材2は、例えば、モールド成形法を用いて、メッシュ12に熱融着することで基材1に接合されている。メッシュ12とポリウレタン部材2とは熱融着し易いため、容易に接合可能であると共に、接合強度が高い。
そして、基材1の厚みT1に対するポリウレタン部材2の厚みT2a、T2bの比率が25%以上である。好ましくは50%以上であり、より好ましくは120%以上である。なお、比率が大きすぎると剛性が高くなりすぎるため、好ましくは200%以下である。また、ポリウレタン部材2の厚みT2a、T2bが0.5mm以上である。好ましくは1mm以上であり、より好ましくは5mm以上である。なお、厚みが大きすぎると剛性が高くなりすぎるため、好ましくは7mm以下である。
本実施形態に係る捕球具100は、指部10、20、30の背面部がポリウレタン部材2を備えるため、耐久性に優れる。また、本実施形態に係る捕球具100によれば、基材1の厚みT1に対するポリウレタン部材2の厚みT2a、T2bの比率が25%以上と高く、なお且つ、ポリウレタン部材2の厚みT2a、T2bが0.5mm以上であるため、基材1に接合する剛性の高いポリウレタン部材2の位置や体積(厚み)を適宜設計することで、3次元的な構造設計や任意の位置への剛性付与が可能である。
【0026】
本実施形態のポリウレタン部材2のうち、薬指部20及び中指部30の背面部が備えるポリウレタン部材2は、開口を有しない非開口部21と、開口2aを有する網目状構造部22と、を具備する。好ましくは、非開口部21のポリウレタン部材2の厚みT2aは、網目状構造部22のポリウレタン部材2の厚みT2bよりも大きい。小指部10の背面部が備えるポリウレタン部材2は、網目状構造部22だけを具備する。また、小指部10の背面部は、捕球具100の開閉動作時に歪みが大きくなる領域において屈曲が促進された部分としての屈曲促進部50を備えている。本実施形態の屈曲促進部50は、挿入される使用者の手の基節骨にほぼ対応する領域において、他の指部や小指部10の先端部と比較して、ポリウレタン部材2(網目状構造部22)の体積(範囲又は厚み)が小さくなっている。
図1(a)に示す例では、屈曲促進部50においてポリウレタン部材2(網目状構造部22)が設けられている範囲が小さくなっている。屈曲促進部50におけるポリウレタン部材2の体積が他の部分のポリウレタン部材2の体積よりも小さいため、屈曲促進部50において捕球具100を屈曲させ易くなり、捕球具100の捕球性能が向上する。
【0027】
網目状構造部22の開口2aのサイズは一様ではない。開口2aのサイズが相対的に大きい部位では、剛性が相対的に小さくなり、開口2aのサイズが相対的に小さい部位では、剛性が相対的に大きくなる。したがい、指部10、20、30の曲げ特性等の所望する機能に応じた任意の位置への剛性付与を容易に行うことが可能である。網目状構造部22は、幅よりも厚みの方が大きいリブ状のポリウレタン部材2が複数の接続点を備えるように、網目状に基材1の表面に接合されている。
図3(b)、(c)に示すように、網目状構造部22の上面は断面視で曲面状に形成されているのが好ましい。網目状構造部22の平面視の形状は、種々の多角形が組み合わさった形状であり、例えばボロノイ形状やハニカム形状とすることができる。この場合、開口2aが連続的に形成されるので、ポリウレタン部材2が基材1から剥がれにくい。
また、網目状構造部22の開口2aを通じてメッシュ12が露出している。このため、指部10、20、30の通気性に優れる。
【0028】
図2は、薬指部20の背面部のポリウレタン部材2が具備する非開口部21の厚み分布を模式的に示す図である。
図2では、代表して、薬指部20の背面部のポリウレタン部材2が具備する非開口部21の厚み分布を図示しているが、中指部30の背面部のポリウレタン部材2が具備する非開口部21の厚み分布も同様である。なお、
図2では、網目状構造部22の図示を省略している。
図2に示すように、非開口部21は、相対的に厚み(
図1(b)に示す厚みT2a)の大きな増厚部21a(斜線のハッチングを施した部分)と、相対的に厚みの小さな薄厚部21b(ドットのハッチングを施した部分)と、を具備する。増厚部21aの厚みも、薄厚部21bの厚みも、0.5mm以上であるが、増厚部21aの厚みの方が薄厚部21bの厚みよりも大きい。増厚部21aの厚みは、好ましくは1mm以上である。薄厚部21bの厚みは、好ましくは増厚部21aの50%以下である。
【0029】
図2に示すような非開口部21の厚み分布とすることで、薬指部20の基端部(薬指部20の長手方向(
図2の上下方向)中央から基端側(
図2の下側)の部位)におけるポリウレタン部材2の体積は、薬指部20の先端部(薬指部20の長手方向中央から先端側(
図2の上側)の部位)におけるポリウレタン部材2の体積よりも大きくなる。中指部30についても同様である。このため、指部20、30の先端部における重量が相対的に軽くなる。また、本発明者らが有限要素法を用いた応力・変位解析を行って検討した結果によれば、
図2に示すような位置・形状で増厚部21a及び薄厚部21bが配置された非開口部21とすることで、使用者が指部20、30に指を挿入して荷重を掛けた際に、指部20、30の先端の変位が最も大きくなるように最適化される。このため、捕球具100の捕球性能が向上する。
【0030】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態に係る捕球具(野球用グラブ)について、第1実施形態に係る捕球具100と同じ点は説明を適宜省略し、主として異なる点を説明する。
【0031】
図3は、本発明の第2実施形態に係る捕球具(野球用グラブ)の構成を示す図である。
図3(a)は、捕球具の外観を背面側から見て模式的に示す斜視図である。
図3(b)は、
図3(a)に示す指部の背面部の矢視BB断面を模式的に示す図である。
図3(c)は、
図3(a)に示す指部の背面部の矢視CC断面を模式的に示す図である。
図3(b)及び
図3(c)に示す断面は、実際には上に凸に湾曲しているが、便宜上、平坦に図示している。
本実施形態では、小指部10、薬指部20、中指部30及び人差し指部40の背面部が、前面側(
図3(b)及び
図3(c)の下側)から順に、基材1Aと、基材1Aに接合されたポリウレタン部材2と、から構成されている。
図3(c)では、代表して、小指部10の背面部の断面を図示しているが、薬指部20、中指部30及び人差し指部40の背面部の断面も同様の構成である。本実施形態では、使用者の指を挿入する部分が外指袋と該外指袋に挿入された内指袋(図示せず)との二重構造になっており、
図3(b)及び
図3(c)に示す背面部は、指部である外指袋の手甲側の部位である。なお、各指部を構成する材料は、接合部3において、縫製等により接合されている。
【0032】
本実施形態の基材1Aは、人工皮革(不織布にポリウレタン樹脂をコーティングした構成)から構成されている点が、第1実施形態と異なる。
【0033】
ポリウレタン部材2は、例えば、モールド成形法を用いて、基材1Aに熱融着することで基材1Aに接合されている。具体的には、人工皮革を構成するポリウレタン樹脂とポリウレタン部材2とは熱融着し易いため、容易に接合可能であると共に、接合強度が高い。
そして、第1実施形態と同様に、基材1の厚みに対するポリウレタン部材2の厚みの比率が25%以上である。また、ポリウレタン部材2の厚みが0.5mm以上である。
本実施形態に係る捕球具100Aは、指部10、20、30、40の背面部がポリウレタン部材2を備えるため、耐久性に優れる。また、本実施形態に係る捕球具100Aによれば、基材1の厚みに対するポリウレタン部材2の厚みの比率が25%以上と高く、なお且つ、ポリウレタン部材2の厚みが0.5mm以上であるため、基材1に接合する剛性の高いポリウレタン部材2の位置や体積(厚み)を適宜設計することで、3次元的な構造設計や任意の位置への剛性付与が可能である。
【0034】
本実施形態のポリウレタン部材2は、開口2aを有する網目状構造部22のみを具備し、非開口部21を有しない点が、第1実施形態と異なる。
網目状構造部22の開口2aのサイズは一様ではない。開口2aのサイズが相対的に大きい部位では、剛性が相対的に小さくなり、開口2aのサイズが相対的に小さい部位では、剛性が相対的に大きくなる。したがい、指部10、20、30、40の曲げ特性等の所望する機能に応じた任意の位置への剛性付与を容易に行うことが可能である。特に、本実施形態の網目状構造部22の開口2aのサイズは、
図3(b)と
図3(c)とを対比すれば分かるように、第1実施形態の網目状構造部22と異なり、部位によって大きく異なっているため、網目状構造部22のみでも、部位による剛性の変化を付与し易い。
【0035】
本実施形態に係る捕球具100Aも、捕球具100Aの開閉動作時に歪みが大きくなる領域において屈曲が促進された部分としての屈曲促進部50を備えている。屈曲促進部50は、少なくとも小指部10の背面部に設けられ、使用者の手の基節骨にほぼ対応する領域において、他の部分よりも網目状構造部22が疎に設けられている。
図3(a)に示す例では、小指部10の背面部及び薬指部20の背面部の一部に屈曲促進部50が設けられ、網目状構造部22が疎に設けられている。捕球具100Aの網目状構造部22は、平面視の形状がボロノイ形状である。ボロノイ形状の網目状構造部22が「疎」(開口2aのサイズが相対的に大きい)とは、最も近隣する母点間距離が30~70mmであることを意味する。屈曲促進部50では、網目状構造部22が疎であり、開口2aのサイズが相対的に大きいため、剛性が相対的に小さく、屈曲が促進される。
一方、使用者の手の末節骨に対応する領域よりも先端側においては、網目状構造部22が密に設けられている。ボロノイ形状の網目状構造部22が「密」(開口2aのサイズが相対的に小さい)とは、最も近隣する母点間距離が0.5~25mmであることを意味する。網目状構造部22が密に設けられている先端側は、開口2aのサイズが小さいので、剛性が相対的に大きくなる。また、長期使用時に先端側の強度が低下するのを抑制することができる。このため、ボールが先端側で捕球された場合に、変形が起こりにくく、捕球具100Aの捕球性能を向上できる。また、捕球具100Aの保形性も向上する。
【0036】
図4は、本発明の第2実施形態に係る捕球具(野球用グラブ)の変形例の構成を示す図である。具体的には、変形例に係る捕球具の外観を背面側から見て模式的に示す斜視図である。
図4に示す捕球具100Bでは、屈曲促進部50が、小指部10、薬指部20、中指部30及び人差し指部40の背面部に設けられ、使用者の手の基節骨にほぼ対応する領域において、他の部分よりも網目状構造部22が疎に設けられている。
変形例の捕球具100Bでも、捕球具100Aと同様に、屈曲促進部50では、網目状構造部22が疎であり、開口のサイズが相対的に大きいため、剛性が相対的に小さく、屈曲が促進される。
【符号の説明】
【0037】
1・・・基材
11・・・不織布
12・・・メッシュ
2・・・ポリウレタン部材
21・・・非開口部
22・・・網目状構造部
2a・・・開口
10・・・小指部(指部)
20・・薬指部(指部)
30・・・中指部(指部)
40・・・人差し指部(指部)
100、100A、100B・・・捕球具