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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】カテーテル案内置換弁装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019230197
(22)【出願日】2019-12-20
(62)【分割の表示】P 2016503329の分割
【原出願日】2014-03-15
(65)【公開番号】P2020049274
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-01-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】61/802,311
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515251780
【氏名又は名称】ナヴィゲート カーディアック ストラクチャーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Navigate Cardiac Structures, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ロドルフォ シー キジャーノ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ケー クラーク
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】村上 聡
【審判官】村上 哲
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然心臓弁の弁輪に埋め込まれる幾何学的形態を有する生体心臓弁アセンブリを含むカテーテルを有する生体心臓弁アセンブリの最小限に襲的な埋め込み用アセンブリであって、
a.近端部と遠端部とを有するカテーテルであって、該遠端部が生体心臓弁を折り畳んだ形状で維持している、カテーテルと、
b.前記カテーテルの前記遠端部に設けられて、前記生体心臓弁を圧縮した形状で維持している、筐体と、
を備え、
前記生体心臓弁が、
i)入口開口端と、その反対端の出口開口部とを有する、ステントの圧縮可能かつ拡張可能な管状構造体であって、圧縮された形態で維持されている複数の相互接続された要素で構成され、前記複数の相互接続された要素が複数のウィングレットで構成される、管状構造体と、
ii)前記入口開口部と前記出口開口部との間の内側環状部を覆っている生体適合性材料と、
iii)並列する縁部に液密シールを形成することが可能な複数の弁葉で構成された弁であって、前記複数の弁葉の周囲が一緒に、前記入口開口部と前記出口開口部との間の前記弁アセンブリの内部の周囲に液密シールを形成するよう構成されている、弁と、
を備え、
前記管状構造体が、拡張された形態で前記入口開口部が前記出口開口部より小さい直径を有するように前記バルブを含む前記管状構造体がその長さに沿って直線的にかつ連続的にテーパしている直径を有する、前記アセンブリ全体の高さを低く維持する切頭円錐形を呈するよう構成され、且つ
前記ウィングレットが前記切頭円錐の周囲の全方向で、上部外周と下部外周の両方から前記ウイングレットの上下の先端部が互いに近接するように半径方向外側に延出してその間に環状の空間を形成し、該環状の空間内に前記生体心臓弁の弁輪を収容するよう構成されていることを特徴とするアセンブリ。
【請求項2】
前記複数の弁葉が前記生体適合性材料に縫合されていることを特徴とする、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記ウィングレットが第1端部および第2端部のそれぞれにおいて、前記ステントの管状構造体の長手方向に沿う軸から突出していることを特徴とする、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記ウィングレットが前記ステントの上外周面の周囲に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記ステントが、端部にアイレットを有する複数の垂直棒材で構成されていることを特徴とする、請求項1から4いずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記圧縮された形態のステントを収容して該ステントに取り付けられる円筒状のホルダをさらに備えることを特徴とする、請求項1から5いずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記アイレットが前記ホルダの内部の取付具に係合するように構成されていることを特徴とする、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記拡張可能なステントおよび前記生体心臓弁が、前記生体心臓弁アセンブリを維持する搬送デバイスと組み合わされるよう構成されているとともに、該搬送デバイスが搬送デバイスの内部に前記生体心臓弁を圧縮された形態で維持するよう構成されており、前記搬送デバイスが、前記管状構造体の長手方向の軸方向の長さの少なくとも一部を被覆して、前記管状構造体を保持るカプセル状デバイスを有し、
該カプセル状デバイスが、異なる直径を有し、且つ同心状に配置された複数のスリーブで構成されており、少なくとも1つのスリーブが、同心状であり、且つ別のスリーブの周囲で摺動して、前記管状構造体の展開を制御可能であることを特徴とする、請求項1から7いずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記ウィングレットの第1のリングおよび前記ウィングレットの第2のリングであって、前記ステントが前記拡張された形態であるとき、円錐台の外周面に沿って該第1のリングと該第2のリングとの間に環状空間を形成するように離間され、且つ房室心臓弁の自然弁輪を収容するサイズである、前記ウィングレットの第1のリングおよび前記ウィングレットの第2のリングで前記ステントが構成されていることを特徴とする、請求項1からいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記複数のウィングレットの各々が、記憶金属で形成されている、丸みのある、且つ非外傷性の細長い部分を有することを特徴とする、請求項に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記下部における前記ウィングレットの前記リングが前記ステントの下縁に近接して配置されていることを特徴とする、請求項に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2013年3月15日に出願された米国仮特許出願第61/802,311号明細書の利益を主張し、この出願は参照により本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、カテーテル案内置換弁装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトの心臓の4つの心臓弁、即ち、左側の大動脈弁および僧帽弁、または右側の肺動脈弁および三尖弁はそれぞれ、常に多くの点で機能不全になるおそれがある。感染、構造不全、例えば、僧帽弁腱索のような特定の構成要素の断裂もしくは破壊、または弁物質の遺伝的素因による奇形を含むこのような事象は、心臓内および身体の残りの部分での正常な一方向の血流を妨げるおそれがあり、致命的な結果を伴うことが多い。心臓弁は、全身の組織に血液によって運ばれる栄養の十分な供給を維持するのに、および、身体の様々な臓器に灌流する血管系を通る拍動流を維持するのに重要な機能を果たす。出生時に疾患のあるこれらの弁の一部または全部に先天奇形があるとき、多くの場合、乳幼児の命は迅速且つよく構成された弁修復または弁置換術に依存する。
【0004】
人工心肺による外部心肺酸素化の開発により、疾患のある弁または機能不全の弁を修復または置換する手術が容易になるように心臓を停止させ、外傷があるにもかかわらず救命することが可能となった。開胸術および開心術の侵襲性、ならびにこのような手術に特有の術後合併症により、高齢者は高い死亡率リスクに曝される。高齢者および虚弱な人は、リスクアセスメントにより、手術を拒否されることが多く、代わりに、種々の比較的無効な投薬による治療を受け、弁の障害の影響は比較的耐えられるものになるが、患者は死に至るまで必然的に衰退し続ける。
【0005】
カテーテル法を使用して血管ステントを冠動脈に送達し、埋め込み、これらの動脈を再疎通または拡張し、心筋への血流を維持することにより、閉塞の除去や心筋への血液や酸素の流れの回復が可能となった。何百万ものカテーテル送達ステントが世界中で比較的安全且つ有効に配置されたように、このような技術は日常的なものになった。この技術に触発されて、心臓弁の分野の先駆的開発者は心臓弁を同様に送達することを試みた。この技術は、構造を維持することができる材料で製造された、弁付きステントと称される弁機構を収納し、カテーテルに装着された状態で血管系を通して導入され、案内され得るフレームまたはステントを製造する能力に依存する。弁付きステントは、配置中のその損傷および血管壁の損傷を最小限に抑えるために、カテーテルの遠位先端部に組み込まれたカプセルに入れられることが多い。先端部が疾患のある弁の近傍にくると、弁付きステントをカテーテル上のカプセルから出現させ、自動的に、または液圧で膨張されるバルーンを用いて拡張させ、デバイスの公称サイズに到達させることができる。次いで、弁付きステントが留まり、弁が疾患のある機能不全の弁の機能を代替するという意図された機能を果たすことになる適切な標的部位でステントを展開させ、留置する。
【0006】
血管経路の他に、弁付きステントを収容するカテーテルを、順行性経路で、即ち、血管に沿ったまたは心臓を通る血流に従って心臓に導入することができる。あるいは、逆行性に、即ち、先端部が血流に逆らうようにして置換弁を導入することもできる。大動脈弁位弁付きステントが大腿動脈を通して導入される場合、カテーテルは、それが留置されることになる疾患のある大動脈弁に到達するまで、大動脈を通り血流に逆行性に移動する。心臓の先端部を穿刺することによりその先端部を通って大動脈弁に到達する場合、順行性経路となり得るが、このアプローチは、肋骨間の切開を通して外科的に入れること、およびカテーテルを、心室を通して大動脈弁に直接繋がる左心室流出路の方に案内することを必要とする。これは、経心尖経路と称される。
【0007】
この経路を逆行性に使用して、僧帽弁位弁付きステントを左心室と左心房との間の僧帽弁輪に留置することもでき、このとき弁付きステントを収容する先端部は大動脈の方に進む血流に逆らって逆行性に移動する。しかし、静脈側を通して送達される僧帽弁位弁付きステントは大腿静脈から刺入し、大静脈を通って右心房まで進み、心臓の左側の上部チャンバである左心房を分離する壁を通過する(経中隔経路)。このアプローチでは、カテーテル先端部が心房に到達し、その先端部を弁付きステントが留置される僧帽弁輪面に導くことができるように、中隔とも称される壁の穿刺を行わなければならない。明らかに、この順行性経路は、大手術による方法を用いない、心房および機能不全の僧帽弁への近道である。カテーテル案内により埋め込まれた最初の大動脈弁は、実際、このようにして行われ、カテーテルは中隔を通過し、僧帽弁を通過し、腱索塊(chordal mass)を通過し、さらに進んで基部に疾患のある大動脈弁がある大動脈に到達し、そこに大動脈弁位弁付きステントを留置した。僧帽弁の場合、別の可能な経路は、左心房の頭部(cranial aspect)または上部、即ち左心房の上壁へのアプローチを可能にする比較的小さい胸部切開を通した低侵襲性の外科的方法である別の順行性経路である経心房経路であり、それを通して、弁付きステントを担持するカテーテルを、血流で直接経路に従うことにより導入し、デバイスを機能不全の僧帽弁の中に留置することができる。
【0008】
現在、方法の選択は、患者の状態に応じて、長期的なまたは介入後の合併症を最小限に抑えるように行われる。大動脈弁および肺動脈弁に関するカテーテル案内法は広く使用され、その患者数は現在300,000人を超えたが、これらの方法はまだ、僧帽弁置換術の確立に繋がっていない。この明確な理由は僧帽弁の複雑さである。僧帽弁器官は、腱索と称される腱状フィラメント群に接続する乳頭筋が現れる心臓壁から始まる連続体からなる。これらの構造は、僧帽弁葉の辺縁に達するパラシュートロープの外観を有する。弁葉自体は、異なる形状とサイズを有する。大動脈から下行する心房カーテンに接続する比較的大きい表面を有する僧帽弁前尖と、心臓壁の外部または後部に付着する僧帽弁後尖。これらの弁葉と腱索塊は両方とも、一般に「弁輪」と称される、あまり連続的でない構造に入っている。弁の心房側または心室側からその弁輪面へのアプローチは、そのアプローチだけでなく、弁付きステントの正確な同軸留置(ステントが僧帽弁の中心軸と一列に並ぶ)、所定の位置に留まり、2つのチャンバ間の周辺部を封止し、必要な機能を提供するために必要な弁葉構成要素と弁輪構成要素の捕捉に関しても操縦が困難である。
【0009】
何らかの障害がある弁組織が依然として全部または一部良好に保たれていることが分かるまで、何十万例もの僧帽弁機能不全に関して切開手術による置換が行われてきた。第一人者の外科医は開心術で機能障害を修復する処置を考案したが、複雑な手術を行うことができるのは心臓外科で一般に認められた優れた中心施設だけである。その重症度に関して軽度(中等度)より重いと評価された僧帽弁逆流または弁閉鎖不全の状態および重症と評価された多くのものに罹患した患者の数は非常に多く、世界中で何百万人にも達している。非特許文献1、著者は、米国の人口における心臓弁障害の発生率を記載しており、毎年約230万人の患者が様々な病期の機能不全の僧帽弁を有し、約220,000人が重症に分類されていることを示している。これらの重症患者のうち、その状態を治療するための適切な処置を受けるのは約23%(48,000人)に過ぎない。残念なことには、大部分は未治療のままであり、報告書が書かれてから100万人を超える患者が死亡している。現在、僧帽弁を修復する中心施設では少数の罹患者しか処置できない。
【0010】
外科的修復法から低侵襲性のカテーテル案内法への転換は、外科的な僧帽弁修復法を可能にすることを期待して1990年代後半に始まった。安全性、より詳細にはこのような処置の有効性の信頼性を評価したとき、この期待は多くの失望に直面した。多くの症例における結果は部分的にしか満足ではなく、僧帽弁逆流の修復が不完全であるパーセンテージがかなり大きい。種々の方法が試みられたが、僧帽弁葉の中心辺縁を捕捉し、それらを中心に並列させ、このようにして二重開口を形成し(カテーテルを用いて外科的Alfieriエッジトゥエッジ(edge-to-edge)修復法を再現し)、僧帽弁逆流を低減する方法が最も進歩している。他の方法では、冠状静脈洞を通して金属ワイヤを導入し、僧帽弁輪の周囲を囲み、緊締することによりそのサイズを小さくすることにより弁輪拡張を低減するが、これも同様に失望する結果に直面した。他の幾つかは、低侵襲性の処置で修復することにより状態を治療することを目的としたが、不十分な結果に留まった。
【0011】
様々な実施形態では、置換心臓弁は、心臓弁を置換するための大部分のデバイスに一般的な特定の構成要素を備えることができる。支持体の役割を果たす構成要素である、通常ステントと称されるフレームがあることが多い。これらの弁機構は弁機能の回復を目的とするものであるため、このフレームまたはステント内に、いわゆる生体心臓弁の場合は比較的可撓性が高いことが多い弁機構が収納されている。これらの弁機構は、血流の作用で可動性の薄い材料(通常、生体膜)からなるセクションで構成される。「弁葉」または「弁」と称されることが多い、単一のセクションであってもまたは複数の2つ以上のセクションであってもよいこれらのセクション。これらの表面は、血流の方向に応じて同じ方向に動き、これにより、血液が心臓の1つのチャンバから次のチャンバにまたは心臓の外側の方に流れるとき、ステントによって提供される開口を、弁葉を損傷することなくできるだけ大きく開放させる。その後、心臓の拍出ストロークが終了するとき、血流の逆転が即時に起こって弁葉を反対方向に押し、弁を閉鎖し、逆流(regurgitation)とも称される逆行性の血流または逆流(reflux)を防ぐ。逆流は心臓の効率を大きく低下させる可能性があり、重篤で、しばしば致命的な状態と見なされる。
【0012】
インプラントとして何十年も使用された弁は、大部分、同じ構成要素から、即ち、一般的にワイヤで補強されたポリマーから製造されるステントと弁葉機構とからなった。弁治療の「新時代」の弁付きステントは、組織弁機構を備えると共にチューブの元の直径に近い非常に小さい直径に圧縮される方法および形状でカットされた金属製の略円筒状の管状フレームであり、弁全体の外形をできるだけ小さくしてカテーテルを用いて血管系に挿通させることができるようになっている。これらの金属ステントは、一般に、それらの最終径または公称径まで拡張させるために加圧下で液体が充填されるバルーンを必要とする、非常に純粋なさびないステンレス鋼(鉄と他の金属との合金)製である。しかし、それらの最終拡張径で、このようなステントは依然として、組織が加え得る圧力を受け、内側に変形し、回復しようとする機能が失われるおそれがある。使用される他の金属合金は、それらの分子組成のため、特定の低温範囲で且つそれ自体で所望される小さい直径に圧縮し得る、いわゆる形状記憶金属であり、温度(即ち、体温)下でそれらの圧縮前の元の公称径に拡張する。心臓弁治療の「新時代」のステント、実質的に弁は、必要な機能を果たし、特に、位置がずれるまたは移動することなく自然弁輪の標的部位に留まることができ、これにより置換弁が患者の余生の間、所定の位置に固定されたままになるように、特定の厳しい要件を満たすように適合される。弁機能は必要である。さらに、弁付きステントは、血液および患者の健康に非常に損害をあたえる可能性がある漏洩(漏洩の一部は、実質的に、逆流である)が起こらないように周辺部を封止しなければならず、さもなければ治療するために修正または手術を必要とすることがある。
【0013】
大動脈弁置換療法におけるステントは、大部分、心臓の大動脈弁を構成する組織の病的石灰化のために起こることが多い疾患である大動脈狭窄に使用される。大動脈弁の弁葉は、血漿から弁葉組織内への、および場合によりこの組織の表面への拡散により肥厚化し、カルシウムが沈着して、弁葉が硬化し、それらの可動性は、それらが左心室から大動脈に繋がる開口の狭小化(狭窄)により実質的に閉鎖し、これにより血液が正常な流れに従うことができない程度にまで至る。心室拍出によりその筋肉は酷使されるため、大動脈弁の比較的小さい開口を通して血液を拍出しようとして肥厚化し、ゆっくりとその機能が衰える。身体から血液が奪われ、臓器の状態および生活の質が急速に低下する。疾患を治療するために使用される、カテーテル案内埋め込み型弁付きステントは、石灰化したごつごつした弁葉にステントが及ぼす力だけに依存する。これらのステントは弁の近傍が円筒状であり、円筒の壁は弁付きステントを自然大動脈弁の領域に保持する圧力を加える。この圧力は、バルーンを用いた弁付きステンレス鋼製ステントの拡張により、または拡張されるステントが及ぼし得る温度形状記憶力により加えられる。全く異なる状態が僧帽弁逆流の場合には見られる。
【0014】
僧帽弁逆流(MR)は多くの状態によって起こり得、その中には弁付きステントの使用に適しているものがある。心臓と僧帽弁輪の両方の拡張(拡張型心筋症、DCM)による心臓の形状およびサイズの変化に起因する一形態では弁機能の変化が起こり、このようなものとして、「機能性僧帽弁逆流」と称される。それは、心筋(心臓の筋肉)の損傷により左心室拡張が起こり、これによりさらに乳頭筋が心尖側に偏位し、弁輪が拡張する悪循環である。これらの2つの作用が合わさって、左心室負荷を引き起こす僧帽弁逆流が生じ、それによりさらに左心室拡張が起こり、その悪循環が再開する。弁輪、僧帽弁、および心房カーテンが僧帽弁口のサイズを維持する能力を失うと、極端な場合、拡張によりこの弁口がそのサイズのほぼ2倍に拡がり得る。このような場合、弁葉は、それらが並列した状態になって弁口を閉鎖しチャンバ(心房)への逆流を防ぐはずである心周期の時間(収縮期)に、遠く離れている。弁輪は柔軟であり、幾分曲がり易く、大動脈ステントで行われるように半径方向に圧力が加えられると、拡張がさらに大きくなり、それにより状態が悪化する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【文献】Oern S,Liddicoat J.:Emerging Opportunities for Cardiac Surgeons within Structural Heart Disease.J Thorac and Cardiovasc Surgery:132:1258-1261(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
現在、経皮手段またはカテーテル案内手段により機能不全の僧帽弁に配置されるようにまたは自然僧帽弁機能を代替するように、十分な開発および商品化が行われた人工僧帽弁デバイスはない。心臓僧帽弁および三尖弁の機能を代替する改善された実施形態が得られる弁付きステントおよび送達デバイスの改善された設計が非常に強く必要とされている。これらのデバイスは、弁付きステントを房室弁輪に正確に送達、展開、および留置し、それらが係合することを可能にし、合併症が最小限であり且つ正常で健康なヒトの弁の機能にできるだけ近い機能を回復しなければならない。これらのデバイスは、弁周囲逆流(PVL)の発生、即ち、埋め込まれた弁付きステントと自然弁組織との間での漏洩の発生も防止しなければならず、弁ステントは自然弁組織に非常に緊密に適合しなければならない。これらの状態は、弁が特別設計の弁ステントと特別設計の送達システムとを組み合わせて操作することも必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、医療用デバイスおよび置換心臓弁、好ましくはカテーテル案内手段により埋め込まれるものに関する。本願は、特に、一態様ではディフューザ(diffuser)、別の態様では倒置型ディフューザである切頭円錐の幾何学的形態の完成したアセンブリを置換心臓弁として、最初の例では心房、即ち患者の心臓の上部チャンバ、または、他方では患者房室弁の弁下機構を過度に侵害することなく使用することを可能にする、形状記憶金属装着フレームと、内部に装着される生体膜心臓弁機構との両方に関して特定の幾何学的形態を有するデバイスに関する。このデバイスは、ディフューザを収容するカテーテルを心臓に繋がる血管に挿通させることを含む様々な手段で、四足動物およびヒトの心臓の両方の機能不全の僧帽弁に埋め込むことができる、つまり、術者がデバイスを最終的に配置する標的部位から一定の距離において展開形状のディフューザの送達を制御し、標的部位でデバイスが展開した形状を取ることができるように術者が装置を操作する。あるいは、標的部位への到達はまた、開胸、開心術中に直接挿入することにより、または心尖、即ち心臓の先端部を通過して僧帽弁領域に直接入れることによっても可能である。弁および展開装置の独自の設計のため、一連の特定の選択された工程および操作または操縦を行って、最終展開を遂行し、デバイスの展開した最終形状および機能を達成する。
【0018】
本発明は、心房と心室との結合部(junction)である房室弁、即ち、心臓の左側の僧帽弁および心臓の右側の三尖弁に埋め込まれる弁に関する前述の問題を最小限に抑えることを目的とする新規な幾何学的設計の必要性に対処するが、これらに限定されるものではなく、残りの心臓弁である肺動脈弁および大動脈の治療にそれらを使用することも可能である。いくらかの変更を行って、本幾何学的形態およびデバイスを、静脈循環系、特に、上肢、および大部分は下肢の静脈循環系の閉鎖不全の弁を治療するのに使用することもできる。
【0019】
そのもっとも単純な実施形態では、一般に、その作製または製造を容易にするために、僧帽弁逆流を治療するのに使用されるデバイスに言及する場合、本明細書に記載のデバイスは、一端の入口セクションまたは入口開口と、1つの出口セクションまたは出口開口とを有する円管状構造からなってもよい。この管状構造は、生体膜で製造された特定の形状および寸法の複数の表面を組み込む。これらの表面は管状構造内にその長さに沿った縁辺の1つで取り付けられ、その周辺部の弧を連結し、これらの表面を管状構造の内側領域(ルーメン)または容積内に維持する取り付け部の縁辺を形成すると共に、膜表面の他の縁辺である、それらの自由縁が血液または液体の流動方向に浮遊することを可能にする。これらの表面の自由縁は円形または円筒状の構造の内面の方にそれらが移動(excursion)することを可能にするが、それは衝突および浮遊面構造の損傷を回避するために移動の終わりに管状構造の内面からある一定の距離、制限下で移動することを意味する。しかし、これらの表面は、流体または血液の方向が逆転するとき、それらの移動も逆転させて、隣接する自由浮遊面に接近させ、この箇所で、表面は、隣接する当接面が閉鎖して血流の逆転を防ぐように、全並列面の一部として接合部に成形および設計されている。補綴物はまた、弁葉弁機構を支持するようにフレームまたはステントでも構成される。
【0020】
僧帽弁器官は、通常、速度が低下し、圧力が増大するように、流体が通過するチャネルまたはチャンバの断面積を徐々に大きくすることにより機器を通過する流体の運動エネルギーの一部を利用するデバイスである倒置型ディフューザの形態のように見え、血液が心房から心室に進むにつれ、弁の通路の直径は僅かに小さくなり得る。しかし、心臓では、有索動物および乳頭筋が弁葉に及ぼす引張力により、円錐が開放し、比較的小さい開口が拡張して、非常に小さい圧力で血液を流動させる。従って、置換弁の管状構造の幾何学的形態は切頭円錐で近似することができる。この管状構造は、一実施形態では製造が容易になる均一な直径(円筒状)を有し得るが、好ましくは流体入口部の直径と流体出口部の直径が異なるようにすべきである。入口部が出口径と比較して最大径を示す場合、目的の僧帽弁位生体補綴物は、正常な状態の僧帽弁器官の自然の幾何学的形態を反映する倒置型ディフューザの形態であるが、自然弁が行うように出口径を拡張させる方法がない。その逆が真である場合、入口径の寸法は出口径の寸法より小さくてもよく、従って、ディフューザの条件が満たされる。ディフューザは、軸方向の通路に沿った流体圧力の消散を可能にする。
【0021】
弁付きステントは、入口部の直径の方が小さく、僧帽弁の流入部が心臓の上部チャンバである心房内にあるように配置される。入口径を最小限のサイズにすることにより、弁は開閉に必要な圧力勾配が最小で済む。この幾何学的形態は、開放および閉鎖(接合)する僧帽弁に関して最小限の高さで済み、同時に左心房内への突出ができるだけ小さくなるように最適化されている。ヒト、およびより深刻にはin vivo試験動物として一般的に使用される四足動物の左心房の寸法を考慮すると、LAに侵入する垂直方向の寸法が過大な場合、心房の収縮運動により補綴物の入口部に接触する。
【0022】
乳頭筋の解剖学的構造および形態はヒトおよび動物の両方とも心臓によって異なことがあり、場合によっては、筋肉が心臓の心尖に近くなるように、筋群の数も異なり得る、僧帽弁または心臓の右側の三尖弁の弁輪面から離れて(遠位方向)存在することがある。正常な状態と病的状態との両方とも、筋肉はより心房側に、つまり、弁の僧帽弁葉のより近くに位置し得る(頭側に変位し得る)。後者の状態では、弁ステントの遠位端は、乳頭筋と腱索塊へのそれらの結合部との両方に衝突または接触する可能性が最も高い。従って、弁ステントのテーパ形状は、裂傷、腱索断裂の可能性、リズム障害等を含む、心房と補綴物との接触による合併症の回避するために、置換弁付きステントに好適な場合がある。
【0023】
ディフューザは、流体流が円形または円形に近い(楕円形)入口部を通って入り、流体が順方向に流動するにつれ構造の壁が中心軸から離れるようになる、または、構造が終わる場所では直径または壁から中心軸までの距離が入口点より大きくなるように、管状構造が直線的にフレア状に広がる管状構造である。従って、ディフューザの構造は、入口領域または周辺寸法が出口領域周辺直線寸法のものより小さい、切頭円錐に類似している。この場合、直線的なフレア状の広がり(トランペットのフレアの場合のように曲線状ではない)は、フレーム金属構造上に均一な応力および歪みを維持することが必要になり、従って、流動方向に沿ってまたは逆方向で、金属ステントは均一な応力および歪みを有していなければならない。
【0024】
弁機構が存在するまたは装着されるステントまたはフレームも、同じ全体形状である。この協働する構成を採用することにより、左心房へのデバイスの侵入を最小限に抑えると共に、弁の流動/圧力特性を損なうことなく高さ寸法を小さくすることができる。疾患のある僧帽弁輪が正常な直径または断面より30%~50%拡大して、弁葉が接触することができなくなり、僧帽弁逆流が起こり得ることを考慮すると、補綴物の「弁輪」は、拡張した患者弁輪にデバイスを十分固定できるように、拡張した患者弁輪と類似のサイズでなければならない。しかし、この構成は、正常に開閉でき、弁輪と正確に同じ寸法を有する弁機構または弁を必要としない。デバイスは円筒状である必要はないが、左心房の正常な機能を妨げるほど離れずに弁輪より僅かに上に弁を配置することができる。[テープ♯1]
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】正常な心臓の構造および動作を示す。
図2】他に接合としても知られる弁葉の相互並列を妨げる拡張した僧帽弁輪による逆流が起こっている閉鎖不全の僧帽弁を示す。
図3】カテーテルによる低侵襲性の配置法により自然弁を置換する、本発明の人工弁の配置を示す。
図4図4A-4Eは、ステントの1種類の要素の拡張を含む、置換弁装置のステント構造の畳まれた状態の図および拡張された状態の図を示す。図4Aは、低侵襲に展開するように円筒状の形態に閉じ込められたステント構造の畳まれた形態である。陰影の付いた部分は、図4B~4Eでは切り離され、拡張されている要素の最初の状態である。図4Bは、弁ステントの拡張時および展開前の、上接続および下接続、ならびに面外に拡張する中間ウイングレット/歯構造を示す、切り離された状態で示されているステントの要素である。図4Cは、ステント構造の拡張によって起こるウイングレットの半径方向の延出/所定角度での延出を示す、拡張後のステント要素の側面図である。図4Dは、ウイングレット要素の中間部分、上部分および下部分の半径方向の延出を示す図4Cを回転させた図である。図4Eは、ステント構造の個々の要素の拡張時の配向を明らかにするために、図4Bで識別された8つの点(A~H)の展開を示すステント構造の要素の上面図(superficial view)である。
図5A】ステントの本体から半径方向にまたは所定角度で展開され、僧帽弁輪に係合するときの、歯またはウイングレットを形成する中間部分および下部分の半径方向の延出を示す拡張されたステントである。
図5B】組立て時の垂直棒材および3つの弁葉を示す完全に組み立てられた弁構造である。
図5C】心室側からの3つの弁葉の接合、および弁葉の周囲連結点の固定クリップを示す完成した弁アセンブリである。
図6図6Aは、圧縮された円筒状の形態で内部に弁機構を保持するステントを示す、弁付きステントの側面図の図面である。図6Bは、機能機構の閉鎖した弁部分中の弁葉の接合を示す、拡張された弁機構を有するディフューザまたは切頭円錐の形態である、拡張されたステント形態を示す弁付きステントの側面図の図面である。図6Cは、展開された位置決め部材表面を湾曲させて、組織接触面領域界面を改善した、拡張された弁付きステント形態の概略側面図である。
図7図7A-7Bは、逆行性送達によりステントを展開し得る、弁付きステントの逆装填を示すステントの一実施形態の概略図である。
図8】微細織布(microwoven fabric)で構成された内面、垂直棒材、および送達デバイスに取り付けるための延出アイレットを有する、完全に組み立てられたステントを示す。
図9図9A-9Cは、送達システム内に収納する準備が整ったときの、畳まれたステント構造の様々な設計および配向である。図9Dは、図9Cのステント構造の拡張状態である。
図10】円筒状ホルダを備え、展開された図9のステント構造を中に収容する送達システムの遠位端を示す。
図11】カプセル状デバイスである。
図12】圧縮された形態のステントを有するカプセル状デバイスの切欠図である。
図13】アイレットとホルダの遠位端との係合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、デバイス、幾つかの構成部品、特に、疾患のあるまたは機能不全の心臓弁を置換するための人工心臓弁を送達するためのものである。機能不全の房室弁に機能を取り戻し、これまで、送達、展開、合併症を最小限に抑えた機能の遂行が困難であると考えられている置換弁アセンブリの埋め込みを容易にするように様々な設計で後述される、ステント、「弁付きステント」または「弁付きフレーム」と本明細書で記載される、弁と組み合わせたステント、および送達デバイスを含むデバイス。前述の本発明は全て、房室弁(僧帽弁および三尖弁)に限定されるものではなく、他の心臓弁のいずれかの機能を代替するためにも適用することができる。
【0027】
本発明の1つのデバイスは、一般にステントと称される拡張可能な支持部材と、本体の拡張可能な支持部材の内部に取り付けられる弁機構とを備え、これらはまとめて「弁付きステント」と称される。デバイスは、半径方向に収縮したまたは畳まれた1つの形態から、半径方向に拡張された1つまたは多くの形態に周期変化することができる。拡張可能な支持部材は、第1の端部、中央部、および第2の端部を有し、2つの端部間に本体が延在する。これらの部分と一致して、本体部分は、ディフューザとしても知られる切頭円錐を示す3つの主要な円周方向軸または直径により形成される3つの異なる外周面を備える。ディフューザの外面と内面は共に、同じ切頭円錐形態である。デバイスは支持部材の内面に緊密にフィットする弁機構または人工弁も備え、弁機構または人工弁は支持部材の内面に特定の手段で取り付けられている。外周面から、本体は、表面の一部を延出させることにより、様々な形状または幾何学的形態を有する複数の表面を形成することができる。これらの延出部であるウイングレットまたはタインは、特定の角度で現れ、本体の一定の寸法に対して特定の長さと表面を有し、特定の方向に現れるか、または延出する。各ウイングレットは、ステントの本体または構造に取り付けられており、半径方向に圧縮された形態と半径方向に拡張された形態のどちらでも本体表面に隣接している端部を有する。各ウイングレットはまた、本体のどの部分にもウイングレットの端部以外で取り付けられておらず末端が宙吊りになっている、末端が先端部になっている中間部分も有する。デバイスが半径方向に圧縮された状態では、これらのウイングレットは表面の一体部分となっており、外面および内面と同一平面上にあり、表面を形成するのに役立つ。前記ウイングレットは、切頭円錐の上面と切頭円錐の下部の両方から伸びてまたはせり出して半径方向外側に延出し、それらの端部間の空間が自然弁輪と自然弁葉の一部を収容する所定の距離を有する拡張可能な部位または空洞を形成するように、それらの端部間に切頭円錐の第2の軸または第2の半径を所定の距離で維持する。
【0028】
ウイングレットは尖った先端部を有しても、または心臓内部構造を損傷しないように、宙吊りの部分が終端する端部が丸みのある形態を示してもよい。さらに、丸みのある端部は、接触する組織構造のどの表面とも直接垂直接触または衝突しない向きになっている。従って、丸みのある部分は、血液拍出時の心臓の機能による接触領域の動きで組織表面に衝突しない接触包囲面の役割を果たすに過ぎない。さらに、自然弁輪面上に置かれる上部ウイングレットは、ステント-組織界面の封止を向上させ、弁付きステント材料の血栓形成能を低下させる物質の線維浸潤の沈着をそれ自体で誘発する生体適合性医療用布帛で被覆されてもよい。
【0029】
従って、弁付きステントが弁輪および近傍の弁葉組織を固定する手段は、組織を優しく、しかし弁付きステントを所定の位置に留め、移動を防止するように確実に把持する材料で構成される。弁ステントの固定は、弁輪の一方のチャンバ側から、心室内で把持し、且つ弁輪の心房部分で弁輪を把持する複数組のタインまたはウイングレットをフレームまたはステントに設けることにより遂行される。ウイングレットは必ず、弁輪の組織を引裂することなく緊締保持する。
【0030】
本発明は、拡張した自然心臓弁にフィットするように弁付きステントを送達し、弁付きステントを所定の場所に固定することができる。弁付きステントは、隣接するチャンバ内の機能不全の弁の領域に取り付けられる固定具を有してもよい。これらの固定具は互いに鏡面対称状になっており、それらはステントを隣接するチャンバ間に取り付け、対向するチャンバから反対方向に互いに対向し、対向するチャンバウイングレット間で隣接するチャンバの縁を締め付け、これにより前記タインは対向するチャンバの中に、即ち、1つのチャンバから隣接するチャンバに、ステントが全部移動しないように制限する。心房側の固定具は弁付きステントが心室の中に入ることを制限し、逆に、心室側のタインは弁付きステントが心室の中に入ることを防ぐ。
【0031】
心房側のウイングレット、タインまたは固定具の幾何学的形状により封止機能を得ることができる。大動脈弁位に関する幾つかの従来の経カテーテル弁の設計上の制限の1つは、周辺、即ち弁周囲での逆流(カテーテル案内大動脈弁置換術後、患者の約40%で起こる)、つまり、弁付きステントの周辺部での血液の漏洩の克服が困難なことであったが、それは経カテーテル大動脈弁置換デバイスによる治療を受けたかなりの数の大動脈弁患者の死亡率に直接関連することが判明した。弁口を閉鎖し、僧帽弁が閉鎖する心周期中(収縮期中)に発生する圧力による心房への逆方向の血流を防ぐように設計された僧帽弁デバイスを用いると、心臓は血液を心室から大動脈を通して身体の残りの部分に非常に強い駆出速度と圧力で駆出する。心房に向かう、ステントの周辺部の小さいまたは比較的大きい弁周囲逆流(PVL)により、広範にわたる溶血(非常に脆弱な細胞壁を有する赤血球の破壊)が起こり、患者の健康および僧帽弁位弁付きステントの性能に有害作用を及ぼす可能性がある。
【0032】
弁付きステントの上ウイングレットは、丸みがあり、拡大されている場合、弁付きステントの流入部を良好に並列させ、さらに上タインと下タインとの間で十分な量の弁葉を捕捉して、弁付きステントの周辺部を封止することにより封止機能も提供することが意図されている。自己拡張型ステントの半径方向の力はステントの傾斜したまたはテーパ状の外面と共に、ステントの周辺部を弁輪および弁葉連結部(joint)によって形成される弁輪口の周辺部と並列してフィットした状態を維持することに寄与し、固定具間で物質を捕捉する効果を強め、封止を向上させる傾向がある。これらの上タインは、定められた角度でステント格子の表面を起点とする部材を枢動させることにより、またはタインの形状を取るようにウイングレットを定められた角度で下に逆に曲げることによりステントの上部縁を延出することにより得ることができる。
【0033】
下タインまたは流出タインを保持したまま、まず上部タインが展開されるように、これらのタインを順次展開し、固定の改善を促進することができる。まず上部タインを展開させることにより、弁輪面上への、およびチャンバ間の弁口内への弁付きステントのフィッティングが改善され、それにより同軸方向の埋め込み(中心)が改善され、上心房側部分が心房内に留まるように制限されるため、下部チャンバ(心室)へのステントの不必要な侵入が減少し、漏洩も招くことになる位置のずれや、移動の一形態である傾斜が低減する。心室側のウイングレットはステント格子の下縁または流出縁を起点としてもよく、あるいは、半径方向外側に枢動することにより交連ポスト幅広部材を起点としても、または、複数のポストとウイングレットを維持する交連ポスト間の追加のポストを起点としてもよい。術者が埋め込むための展開および放出を制御して行うことができるように、ステントの下縁または流出縁から延設されたポストは、その部分(流出)を拡張することなくカプセル内に縮径した状態に保持することができると同時に、もう一方の部分(流入)を拡張させることができるネックとアイレットのどちらかまたは両方を特徴とする。
【0034】
健常なヒトでは、僧帽弁は形状が長円形に近く、一般に、その公称サイズはその軸の1つである、交連部から交連部への軸(C-C)のサイズとして記載されるが、前後(A-P)軸は、それがより長円形になる収縮期のものから僅かに変化し、正常な患者では、通常、C-C軸の80%~90%の範囲となり;例えば、MRが認められる患者では実質的に楕円形になる僧帽弁口(または弁輪)の偏心は、約0.85+0.05である。それがD形に見えるものもある。人工弁置換の選択を容易にするために、比較的大きい弁の導入により1つの軸が伸長されると同時に他の軸が小さくなって円形に近付き、機能を提供する3つの弁葉を有する置換弁機構が円形となり得ることから、それは円形に近似される。正常な僧帽弁のサイズは、体格の小さい人の直径25mmから、心臓の大きい人の33mmまでである。弁輪が正常なサイズの150%超に拡張する異常な状態(MR)では、閉鎖不全の僧帽弁が非常に大きく拡張し、その直径が30mm代半ばから、極端な場合は50mmを僅かに超える大きさになる。これは、経皮的アプローチを行う場合、直径が40mmより大きい弁を圧縮された小さい外形に縮小してカテーテルの中に装填し、正常な血管系を挿通させなければならず、このような圧縮された直径は大部分のヒトまたは動物の血管に許容される通過サイズの限界に既にほぼ達している圧縮された大動脈用弁付きステントよりかなり大きいことから困難であるため、大動脈弁の治療とのもう1つのかなり大きな違いをもたらす。
【0035】
より重要なことには、弁付きステントは、一般に円筒状金属チューブから設計され、拡張されたとき、円筒状ステントになる。このような幾何学的形態では、弁付きステントは円筒状形態も有する、即ち、拡張されたとき、チューブまたは弁付きステントの長さ全体にわたり半径が均一である。MR患者では、40または50mmに拡張した弁輪は、左心房側から左心室側への通過を閉鎖するために極端な場合50mmの円筒を有しなければならない。そのため、このようなステントの弁は、弁を閉鎖するために非常に大きい帆を有するのと同等と見なすことができる、直径50mmの弁となる複数の非常に大きい弁葉を有することになり、パスカルの法則によりこのような大きい表面は、僧帽弁を強制的に閉鎖し血液を、大動脈を通して全身に駆出するとき、血液によって発生する力に単位当たりの面積で耐えなければならない。単位面積当たりの力は、閉鎖を引き起こす1秒にも満たない間の差圧であるdp/dtとしても知られる、心室によって発生する瞬時の圧力である。この圧力は、健常なヒトでは、安静時、約2000mmHg/秒であり、運動時には何千にも上昇する。流れが大動脈方向と左心房方向の両方に向かうため、弱くなることから、MRが認められる患者は比較的低いdp/dtしか発生することができないが、dp/dtはそれでも約700~900mmHg/秒であり、これは、特に、閉鎖不全弁が置換された後、dp/dtが比較的高い値に戻るため、弁付きステントをその固定された位置から変位させるほど十分大きい。このような力は、自然弁、人工機械弁または生体組織僧帽置換弁の弁葉を迅速に損傷することが知られている。弁葉が示す面積に比例して、衝撃[パスカルの法則]を受ける弁葉のサイズは、弁付きステントの管状構造の流入部により低減する。また、把持機構は金属ステントから外傷性の形態またはできるだけ丸みのある形態に形作られる。従って、弁輪に係合するウイングレットは、組織(弁葉および弁輪)に垂直に衝突することを回避するために、真の点またはタインではなく好ましくは表面である。僧帽弁の位置は、血流をチャンバ間で流動させるために、弁の両側での勾配(心房と心室との圧力の差)を5mmHg以下に維持するのに直径が30mmより大きい弁を必要としない。従って、ステントの幾何学的形態は、優先的には円筒状ではなく、心房側の直径が比較的小さく、心室側で拡張した弁輪を捕捉するように流出部の直径が大きくなっているディフューザまたは切頭円錐である。曲線状のフレアは実現可能であるが、大部分の用途では直線的な切頭状円錐を使用する。構造は3つの別個の直径を有する:最小径である弁付きステントへの血液の入口の第1の直径、即ち、心房側直径;第1の直径の下流の第2の直径、どちらかといえば、弁付きステントの上部と下部からの互いに対向する複数の固定具によって取り囲まれる部位、即ち、前記僧帽弁器官の拡張した弁輪が捕捉される空間となり、隣接するチャンバである心房と心室の間の縁を封止する2つの近い直径に接している帯域;および拡張した僧帽弁輪より僅かに大きい寸法に拡張し、従って、dp/dtがその最大圧力を及ぼすときに閉鎖した弁付きステントがその着設位置から心房の方に排出される可能性を防ぐ、第2の直径より引き続き大きくなっている第3の直径。幾つかの実施形態では、心房側のタインと心室側のタインは両方とも同じ形態を有し、弁付きステントを所定の場所に固定するために両方ともステントの中心軸から同じ距離で接触する場合、傾斜面のため、上部または心房側のタインの方が必然的に大きくなる。
【0036】
弁付きステントの心房側部分の直ぐ下且つ周囲にある複数の「タイン」は、意図的に比較的大きくなっており、切頭円錐面から自己拡張し、花弁のような形状であり、拡張した弁輪より大きい円形の領域を形成し、弁付きステント全体が心室の方向に通過することを防ぎ、このようにして移動防止と広い封止領域の形成の両方の機能を有し、周辺部または弁周囲で血液がどちらかの方向に漏洩することを防止する、延長部からなる。全体的に、ディフューザまたは切頭円錐の形態の弁付きステントの実施形態は、低い心房天井を有する一部の患者では高さが重要になり得、心房の天井が非常に低い四足動物ヒト臨床試験モデルで安全性および性能試験を行うと、禁忌を示すため、ステントの高さを低く維持する役割も果たす。心房の中に高く突出する弁付きステントはその周囲に血液の貯留を引き起こし、血液は心房天井近傍で弁付きステントの上部開口に入ることができるように上方に移動しようとするため、肺から肺静脈(上および下静脈)を通り心房に到達する血液が乱流になり、低いチャンバ圧力でも血栓が形成し得ることから、高さも適切な血行動態の維持に極めて重要な要因である。さらに、心房は、心室ほど顕著ではないが、心房の内膜または内面と弁付きステントフレームとの接触の可能性を示すほど十分収縮し、それによりさらに、引裂や裂傷が起こる可能性があり、また拍動する心臓の電気信が内側心房の表面で伝達されるため、最小限でリズム障害が起こる可能性がある。これらのリズム障害は、死に至り得る、心臓収縮および弛緩のリズムおよび速度の異常である心房細動として現れる。
【0037】
直径の変化にもかかわらず、ステント自体は、ディフューザまたは切頭円錐と本明細書に記載される所定の幾何学的形態に自己拡張する円筒状金属合金チューブからカットされ、好ましくは化学処理された生物組織からなる複数の弁葉を有し、埋め込まれたとき、一方向に開放して一方向の血流を維持するように構成されているが、カテーテルに挿入されるように圧縮されたとき、再度、最初の円筒管状の形態を取る。弁付きステントは、拡張前、拡張中、ならびに、標的部位での拡張時に術者の制御下で弁ステントを放出させることによる展開および固定時に、送達デバイスによりステント全体が所定の場所に保持され、制御される、ポストのアイレットまたは緊締部を特徴とする主ポストの延長部を備える。
【0038】
標的部位への弁の送達は、円筒管状シースまたはカプセルが圧縮された弁付きステントを収納し、空間内の様々な角度へのカテーテルの遠位端の運動を方向付けることができる容器または機構に接続される可撓性のシースまたはカテーテルの長いシャフトの遠位端で取り付けられるシースを有する、任意の異なる方法で行われる。内側シースまたはカプセルは弁付きステントをその半径方向に円筒状に圧縮された状態で収容するように構成されている。内側遠位カプセルまたはシース全体を別の遠位シース内に収容することもできる。これらのシースの一方または両方がシースと長いカテーテルの両方の中心軸に沿ってどちらかの方向に摺動して全体的に移動可能であり、内側カプセルとその内容物を、弁付きステントの上部タインと下部タインの両方によって画定される領域を含む弁付きステントの標的部位に導く手段を提供するようになっていてもよい。カプセルの遠位端は、弁付きステントの格子の部材を支える複数のポストのスロットおよびネックを備える流出部を保持し、これにより比較的大きい流出径がその圧縮径に保持されると同時に上部または比較的小さい花状部が半径方向にその最終径近くまで拡張できるようになっている。それが起こり得るようになり、弁付きステントの軸方向の導入が開始し、上部タインが僧帽弁の弁輪面に接触した後、心室側のタインを展開し、弁輪と弁葉連結部が円形の帯域を形成して上部タインと下部タインとの間で捕捉されるように心室側から弁葉連結部を捕捉することが可能となり、標的部位での捕捉を完了することができる。
【0039】
従って、補完的なステントと弁機構を組み合わせて、開示する弁ステント組合せの標的部位への正確な配置と適切な固定の両方をする遂行する理想的な僧帽弁位弁付きステントデバイスが設計される。本発明の僧帽弁位弁付きステントデバイスは、僧帽弁位弁付きステント(MVS)の分離不可能な部分または補完物と送達システムとから形成される。
【0040】
特定の幾何学的形態の心臓弁アセンブリは、一方の周辺部が、他方の周辺部より小さくなり得るように、寸法と形状が異なり得る入口開口端と反対側の極端の出口開口とを有する幾何学的に管状構造である外壁構造を有する。管状構造は、この2つの開口間に位置する環状部を有し、これによりその部位がヒトまたは動物の弁の係合弁輪部の周囲の生体補綴物の弁輪係合点とほぼ一致することができるようになっている。環状部は、ヒトまたは動物の弁輪の標的部位に係合するように、それ自体で拡張可能であるか、または機械的手段で拡張され得る。
【0041】
環状部は、ステントの1種類の要素、複数個で構成され、好ましくは特定の温度の影響下で、半径方向に所定角度で構造の外面から離れるように下方向に展開および拡張し、弁輪面の上部を固定する固定ウイングレットが上部に結合している。構造の環状部には、所定角度で構造の外面から上方向に展開および拡張し、動物またはヒトの房室弁輪の下部を固定する類似の固定ウイングレットも下部に結合している。上および下の歯またはウイングレットは構造または弁付きステントの順方向または逆方向での動きまたは移動を防ぎ、前記弁輪面にデバイスを確実に固定する。
【0042】
ステントの内部構造は、その内面が、金属ステントの構造の格子を形成する部材ストラットに特定の縫合パターンで緊張状態に取り付けられている人工ポリマー材料、好ましくはポリエステルまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の織布または編布で被覆されている。ポリマー基材は、同様に組織膜に縫合されて、心室が収縮する毎に心室dp/dtが発生する単位面積当たりの力を受けて膜が格子を通って膨出することを防止する非常に緊張した窓ガラス状の表面を提供するように、張力がかかった状態に縫合されなければならない。
【0043】
本発明はまた、機能不全の心臓僧帽弁を置換する方法も含む。まず、拡張可能な支持部材が十分拡張された形態になっているとき、自然心臓弁と同様に機能する弁機構をその本体部分内に組み込む拡張可能な支持ステント部材を備えるデバイスが提供される。拡張可能な支持部材は、支持部材の一端から支持部材の第2の端部まで外部が変化する表面を示す。第2の半径より上の拡張可能な支持部材の外面から延出し、この部材は、周囲で互いに離間し、本体の上面に取り付けられた端部の方が空間に延出する端部より上になり、このようにして下に向かう自由端を維持する角度をなすように延出する複数の花弁、ウイングレットまたはタインを備える。これらの上ウイングレットは、自然僧帽弁輪の流入部が示すものより広い周囲領域に延出し、このようなものとして、弁付きステントの流入部を自然僧帽弁輪より僅かに上に維持するのに役立ち、弁付きステントの残りの部分が同軸方向に、僧帽弁器官の中心軸に沿って僧帽弁器官自体に入ることを確実にする。
【0044】
第2の半径より下の拡張可能な支持部材の外面から延出し、この部材は、周囲で互いに離間しており、本体の下面に取り付けられた端部の方が空間に延出する端部より下になるように延出し、このようにして、上に向かう自由端を維持する角度をなす複数のウイングレットを備える。従って、拡張可能な支持部材の外面が接し、上ウイングレットと下ウイングレットの自由端に取り囲まれる隆起または環状帯域は、機能不全の自然僧帽弁の弁輪に対応する。第2の工程では、弁機構を収容する拡張可能なディフューザ状または切頭円錐形の弁付きステント支持部材は半径方向で円筒形状に畳まれ、それを固定し、保持する送達デバイスのカプセルに挿入される。カプセルは畳まれた弁付きステントを収容し、送達用のカテーテルの遠位端に取り付けられる。送達カテーテルは、ある入口点から皮膚を通し、機能不全の心臓僧帽弁の部位に案内する血管を通して進められる。僧帽弁輪の標的部位にくると、デバイスは、拡張可能な支持部材の第1の端部がその半径方向に完全に拡張された形態に近い状態に拡張され得るが、拡張可能な支持部材の第2の端部が部分的に畳まれた状態に保持されるように、半径方向に部分的に拡張された形態で展開される。弁付きステントは、上部ウイングレットが僧帽弁輪の上領域に置かれ、ウイングレットの延出により拡張可能な弁付きステントの上端が僧帽弁の開口を通って進むことが防止されるように、僧帽弁輪の上部を案内する構成を取る。次いで、拡張可能な支持部材の下部が放出され、ウイングレットの下自由端が展開され、半径方向に延出して、弁輪と心臓弁葉組織がウイングレット間に捕捉されるように僧帽弁の弁輪の下で機能不全の弁葉に接触する。この形態は、弁付きステントを所定の場所に固定し、心周期の血流が正常になるように機能を果たす財政上(fiscal)の工程となる。
【0045】
図1を参照すると、正常で健康なヒト心臓の断面図が示されている。心臓は、上部の2つの血液を受け取るチャンバである心房1および2と、下部の2つの拍出するチャンバである心室3および4の、4つのチャンバからなる。右心房1と左心房2は心房中隔5と称される壁により分離されており、健常な成人ではこの2つは連通していない。右心房は、心室収縮期に上大静脈SVC6および下大静脈IVC7から脱酸素化された血液を受け取り、心室拡張期に血液を心室に供給する。左心房は、心室収縮期に肺から肺静脈8を通して酸素化された血液を受け取り、心室拡張期に酸素化された血液を心室に供給する。心室、即ち、心臓の下部の2つの拍出チャンバRV4およびLV5は心室中隔9により分離されている。心室は拍出に使用される心筋層(筋肉)に取り囲まれており、LV心筋層は血液を、大動脈を通して身体の残りの部分に拍出しなければならないため、LV心筋層はRV心筋層より厚い。両方の心室の乳頭筋9は心筋層の一部を形成し、房室弁である三尖弁10と僧帽弁11の弁葉に、前記乳頭筋を起始部とする強度のある線維状の紐体である腱索12により付着されている。
【0046】
僧帽弁11は実質的に心筋層から始まる連続体または器官であり、乳頭筋は心筋層を起始部とし、腱索塊を通り弁葉、即ち、僧帽弁前尖13および僧帽弁後尖14まで続き、弁葉自体は、弁葉を弁輪16ならびに心房1および心室4の部分的に線維状で筋性の部位に付着させるヒンジ部または連結部15および16まで続く。拡張期に心室が弛緩するとき、拡張期の正常な僧帽弁によって形成される開口が示されており、左心房2から酸素化された血液が流入し、共に心室の中に引き込まれている大きい僧帽弁前尖13と比較的狭く長い僧帽弁後尖14が示されている。僧帽弁11が適切に機能している収縮期に、前尖および後尖の一部は互いに強制的に係合し、閉鎖して心房への逆流を防止する一方向弁を形成する。腱索の作用および心室4の収縮のため、弁11は比較的短い前後径を有し、開放時よりも円形に見えなくなる。心房1と心室は両方とも収縮し、僧帽弁11を通るコンピテントな流れは僧帽弁11の機能に非常に重要な役割を果たす。拡張期に、心室の弛緩により心室チャンバ5が拡張し、腱索による牽引および心房1から来る速い血液の流れが起こり、弁葉が分離し、11弁が開放する。弁11が完全に開放した直後に、弁11を通る流れが低減し、心房1が収縮している拡張期の終わりに、弁を通る流れが終了し、収縮期、心室4が収縮し、乳頭筋も収縮して、弁葉が逸脱すること、即ち、互いに折り重なって心房2に入ることを防止し、弁葉が膨らみ、互いに対向して開口を閉鎖する。開口は開放時、実質的に円形であり、正常な僧帽弁11器官の存在下で心室4の漸進的な拡張のため機能性僧帽弁逆流が起こるとき、開口ははるかに大きくなる。心室拡張は、既に拡張した左心室4内の容量負荷、心室壁張力の増加、および僧帽弁葉の接合不全のサイクルに繋がる。しばしば、乳頭筋の分離が拡大し、弁葉テザリングや弁葉閉鎖力の低下が起こり、全てが組み合わさって、図2に示すように接合ゾーンがなくなり、中心部で僧帽弁逆流ジェットが生じる。
【0047】
図4Aを参照すると、畳まれた形態のステント構造21は、図4Bに示す個々の要素22、6~24個からなる。この形態では、流体流路の全体寸法が狭小化し、比較的小さい開口部から比較的大きい開口部までテーパ状になるように、流入部または入口部23は流出出口周辺部直径24の何分の1かである(即ち、1より小さい)。図4Aの実施形態では、構造が畳まれた形状のとき、入口部23と出口部24の相対的サイズは明らかではないが、拡張時、所定の相対的直径を取る。さらに、自然弁輪に対して入口部23と出口部24の両方からの距離が一定になるように、入口部23または出口部24からの相対的距離は周辺ウイングレット構造(下記の図5Aおよび8を参照されたい)から所定の値の距離になっている。ホルダまたは送達デバイス内に配置されたとき、デバイスが最小限の直径プロファイルを取ることができるように、棒材25はステント構造の外周部と厳密に一致した向きになっている。穿孔)6の垂直配向はまた、ホルダデバイスと特に係合するような向きになっている。前述のように、棒材はまた、ホルダへの取り付けを容易にし、展開中に操作するためのアイレット(図示せず)を特徴とする。
【0048】
図4Bを参照すると、A、B、C、D、E、およびFで示される6つの点は、ステント構造1の各個々の要素の拡張の向きを明らかにするための相対的位置決め点と称することができる。要素GおよびHはウイングレット部材を形成し、ステント部材の本体に接続して枢軸を形成する第1および第2の端部27、28で構成されている。各ウイングレットの先端部29はステント部材21の構造に直接接続しておらず、拡張時に先端部29がステント構造の外周軸から離れるように枢動できるようになっている。
【0049】
図4Cを参照すると、ウイングレットはステント構造の本体から離れるように延出するが、それらの第1および第2の端部27、28で取り付けられており、これによりそれらの先端部29が自然弁輪の組織に係合できるようになっている。図4B図4Cおよび図4Dから明らかなように、ステント構造全体の円周方向軸の周囲で個々の部材の面から偏倚するのは点GおよびHだけである。ウイングレットの角変位により、それらの間に、自然弁輪の標的部位に係合するステントデバイス21の部分となる、図4CでA-Aで示される間隙が形成される。下記でさらに詳細に説明するように、本発明のデバイスの独自の展開方法では、ステント構造21の外周面から離れるウイングレットの角変位が慎重に制御され、術者、即ち、心臓病専門医または外科医が弁装置の拡張を制御して自然弁輪に共形的に係合させ得るように、ステント部材21を制御して拡張することを可能にする。図4Eに矢印で示すように、展開時に各要素上の8つの個別の点はそれぞれ配置が変わり、図4C図4Eに示される構造が得られる。
【0050】
図4Cを参照すると、側面図は、ステント構造21の個々の要素22によって形成される係合ウイングレットまたは係合歯を示す。ステント構造またはステント足場自体は、ニチノールまたは他の任意の自己拡張性の温度記憶金属(好ましくは体温で、25℃以上で拡張する)で形成される。ステント要素の円周方向の変位とウイングレットまたは歯の角変位により、ステント構造の中間部分から延出するウイングレットの最外部に形成される先端部が形成される。前述のように、この形態により、自然心臓弁の弁輪の上(心房側)と下(心室側)の両方でステント構造の外部が係合する。
【0051】
図4Dに示すように、下部または下部分のウイングレットおよび中間ウイングレットは、展開時に所定角度で半径方向外側に延出し、心房の方向または向きと、心室の方向または向きとの両方から自然心臓の弁輪に係合する。図4Bおよび図4Eに示すように、図4Bに示すステント構造上の8つの個々の点(A~K)は互いから相対的に変位するが、曲線矢印で示される2つの点、GおよびHだけ残りの点(A~F)の面から離れるように角変位する。これは、ウイングレット30の点29が、ステント構造1の個々の要素22からなる本体の要素の面に留まる残りの点(A~F)から最も遠く離れるように延出されている、図4Cが最も分かり易い。組み立てられたとき、デバイスの周囲の全方向で半径方向に延出していることが図5Aから分かる。
【0052】
図5A図5Cを参照すると、ディフューザの形態を採用することにより、患者の左心房へのデバイスの侵入が最小限に抑えられると共に、弁の流動/圧力特性を損なうことなく高さ寸法(B-B)を小さくすることが可能となる。前述のように、疾患のある僧帽弁輪が正常な直径または断面より30%~50%大きく拡大し、弁葉が接触できなくなり、その結果、僧帽弁逆流が起こり得ることを考慮すると、デバイスを患者の弁輪の標的部位上に完全に固定できるように補綴物の「弁輪」は拡張した患者弁輪と類似のサイズを有するべきである。その収縮した状態で、僧帽弁ステントが円筒状チューブの形態を取るようにした。図5Bおよび図5Cはそれぞれ本発明の置換弁のステント構成要素の外面図および内面図を示し、埋め込み型デバイスに通常使用されるタイプの、即ち、生体適合性、非反応性、および非免疫原性であるポリマー微細織布(PTFE)に取り付けられたステント足場またはステント構造を示している。布帛材料は、ステント構造の内部の複数の点に、特にストラット部材に沿って取り付けられている。図4Aおよび図5Aに関して、ステント足場の特定の構造を説明する。ステント構造部材の一部は、入口(流入)部および(流出)出口部の最内縁を越えて上下に延在するリブ付きの棒材で構成されており、ステント構造の取り付け点を形成し得る。材料は、埋め込まれたとき、左心室の収縮および置換僧帽弁の内部を通る流体流により加えられる力からステント構造を隔離するのに役立つ。展開した状態のステント構造を示す置換弁から分かるように、ステント構造の中間部分は、図5Bおよび図5Cの実施形態では、所定角度で偏倚し、下(下部)周囲にウイングレット(歯)を形成する構造で構成されている。この実施形態では、流出部は直径が比較的大きく、ウイングレットが半径方向に所定角度で布帛から離れるように延出し、その周辺部で心臓の自然弁輪に係合する。異なる実施形態では、好ましくはデバイスの外周軸の周囲全体に配置されているウイングレットは、流入部であれ、または流出部であれ、直径の比較的小さいステント構造の部位に配置することができる。図2Aおよび図2Bのステント構造、対応するデバイスをイントロデューサ装置に係合させるための穿孔を備えるリブ付きの棒材。延設された棒材はまた、ホルダへの取り付けも容易にする、特に図5に示すようなアイレットを特徴とし得る。好ましくは、アイレットはステント構造の角度をなす部分の周囲の幾つかの点に延在し、複数の取り付け点となり得る。アイレットの数は確定されていないが、ステント構造の角度をなす部分の周囲の複数の点での係合を可能にし、保持されるアイレットを設けた部材が配置される流入部または流出部の円形性を維持するように、アイレットの数は少なくとも4~6でなければならない。
【0053】
再度、図5Aを参照すると、拡張収縮されるステントまたは弁付きステント1の上部は、ホルダ#の特定の同じ形状の突出部が係合し得る特定の形状のアイレットまたは穿孔を有する6本以上の延設された棒材を特徴とし、前記係合は、ステント1の上部を伸縮摺動式円筒#またはスリーブによって形成される緊密にフィットする円筒状カプセル#内に保持する役割を果たし、遠位スリーブ#は中心スリーブ#より大きく、前記中心スリーブ#は近位スリーブまたはクラウン#より大きい。この機構は全て、一端がハブ#に固定されているが、反対端は自由端で取り付けられておらず、別個の保持デバイス#が作動してカプセル#の自由端#に到達するまで、ステント1または弁付きステントアセンブリが存在する。同軸方向の運動が維持されることを確実にするため、ハブ#およびステント#または弁付きステントカプセルデバイスに接続する2本の位置合わせロッド#は、ステント#の一部を形成し、ステント#を保持する。このようにして、ステント#または弁付きステントは、自然弁輪内の僧帽弁位弁付きステントの適切な位置に到達するまで依然としてクラウン上に保持されたままで、部分的に再び元の切頭円錐形状を取るように、一定方向に選択的に拡張される。この設計により、装置は、まず構造を部分的に拡張させた後、ウイングレット10が自然僧帽弁輪と僧帽弁葉連結部の周囲領域を把持できるように展開させることにより、徐々に位置決めされる。
【0054】
本発明の弁付きステント38の基本的実施形態を、疾患のあるまたは機能不全の僧帽弁用の、特に、僧帽弁逆流[MR]を生じる状態の僧帽弁用の置換補綴物としての前記弁付きステントに関するものとして、図6に示すことができる。圧縮された形態の前記弁付きステント38のステントは、図6Aの側面図の例示的形態で示される拡張可能な円筒状の形態39となり、その展開した形態の図6Bの側面図でも示されているその最終送達形態の前の瞬間まで圧縮された形態である。圧縮された形態では、前記弁付きステントは最初の端部40と最後の端部21とを有し、この形態では、それが円筒であるため、第1の端部の直径と第2の端部の直径は両方とも同じ寸法である。前記弁付きステントは、展開時、比較的大きい直径D、即ち、流出径を有する第2の端部41より小さくなる、40に対応する1つの直径D、即ち、流入径を有する第1の端部または近位端を示す。展開時、前記比較的大きい直径は弁輪の直ぐ下の心室の中に延び、前記弁輪より大きい寸法に拡張して、僧帽弁の拡大した弁輪の直ぐ下でフィットする。弁付きステントは、それらの心臓チャンバのどちらかの中に過度に突出することなくまたは過度に延びることなく、左心房と左心室との間の部位に留まる。弁付きステントは、ステント、フレームまたは支持体39と、フレームまたは弁支持体またはステント内に取り付けられた弁機構42と、特定の長さとステントの表面上に配置され、ステント表面と同一平面上にある表面とを有する複数の弁付きステント位置決め支持体または固定具43および44とを備える。これらの位置決め要素は取り付け点45および46を中心に枢動することができ、このような枢動点は異なる位置に配置され、近位枢動点45、即ち、近位表面または流入固定具の枢動点はステント39の近位端または流入端の遠位側にあり、遠位枢動点46、即ち、遠位枢動面または固定面の枢動点はステントの遠位端または第2の端部の近位側に位置する。このような方法で、位置決め要素がステント表面から延出するとき、図6Bに示すように、近位固定具43の遠位端47は、近位枢動点45の遠位側にあり、遠位表面44の近位端48はその遠位枢動点46の近位側にある。近位位置決め要素端部または表面先端部47はその遠位端から半径方向に延出し、逆に遠位位置決め要素はその近位端から半径方向に延出する。枢動面の自由端が、接触するのではなくそれらの端部間に自然組織が挟まり得る、集積し得る、または把持され得る空洞49となる間隙48を形成して互いに対向するように、位置決め要素はステント表面から、その表面から90°未満の特定の角度で枢動する。枢動面または固定具は両方とも、両方の枢動面に関して等角度で回転することができる。代替の実施形態では、1つの枢動面により形成される角度は、対向する枢動面の角度と異なり得る。[最小および最大?上部では、おそらく最小45°、一般に<90°であるが、損傷することなく100°以下とすることも可能となり得る]僧帽弁器官内の所定の位置でカプセルから放出されると、ステント39内の拡張される弁機構40がその自然な形態まで拡張し、心臓内の血液がその周期中に正常な方向を継続するように生体弁が機能し始める準備が整うように、ステント38の遠位端がその最大径まで拡張するとき、位置決め要素が延出し、2つの位置決め面または固定具43、44により形成される間隙内に僧帽弁輪面および弁葉連結部またはヒンジ部を捕捉する。
【0055】
弁付きステントの代替の実施形態では、これらの握持タインが、ステント格子の2つの近接したビーム材によって形成されるタインの懸吊端47および48でどちらかというと広い表面と比較的小さい先鋭度、即ち、尖った表面の有し得る傷害性を最小限に抑える丸みおよび湾曲を示すように、支持ステントの展開された位置決め面を図6Cに、湾曲した形状の面として示す。タイン間の間隙は、必要な弁葉連結部および僧帽弁輪を捕捉し、ステントを所定の場所に保持し、チャンバ間封を封止するように維持される。
【0056】
展開時に元の流出径を縮径された形態の円筒径に保持したまま、流入部または流入径が、部分的にまたは完全にその最終径まで開放できるように、弁付きステント38は、図6Bに示すように、逆向きの弁機構を有してもよい。
【0057】
図7Aおよび図7Bは、最終位置が同じであり、血流が同じであり、そのアプローチだけを逆にしたため、即ち、僧帽弁輪の心室側からアプローチするため、完全に展開されたとき、拡張された弁付きステント図7Bは同様に機能する向きになるように、逆の形態42’の弁機構を特徴とするステント38を有する圧縮された円筒状の弁付きステント39の側面図を示す。これは、僧帽弁器官内の標的領域へのアプローチを心臓の先端部、即ち心尖を通して行う場合、つまり、経尖端埋め込みまたは逆行(正常な血流に反する)を行おうとし、延出される位置決め要素または固定具43および44を順次展開する場合、必要なことがある。しかし、拡張された形態では、弁付きステントは、完全に接合する弁を内部に有するディフューザまたは切頭円錐の幾何学的形態に戻る。左心房および心室の中へのステントの突出または延出は最小限であり、特に、起こり得る左心室流出路の侵害による血行動態的変化が生じない。
【0058】
対のウイングレットにより提供される弁ステント固定手段(図5A)は、前記弁付きステントを心房と心室の両方の共通縁の所定の場所に維持し、間に配置される全組織物質を全て捕捉する役割を果たし、周辺部を封止するのに十分な物質をステントと弁輪との間に提供する。乳頭筋が互いに引き離されず、僧帽弁逆流が軽減され、なくされるように、固定手段はまた、弁輪をその捕捉時の寸法に維持し、さらなる拡張を防止する。心臓の弁輪および基部の継続的拡張によるMR状態の周期的作用が妨げられるため、心臓は、可能な場合、ゆっくり正常に戻り得る。心室固定具は、弁輪拡張の進行を制限する装置(restrictors)である。
【0059】
図8は、弁葉交連部および個々の弁葉の接合を構成する膜を形成し、支持するU字形クリップの配置を示す。図5Bおよび図5Cに示すように、クリップは個々の膜セクションの周囲部の、隣接する2つの膜セクションの接合部に近接し、その最外部であるがポリマー膜内部となるところに固定される。
【0060】
図9は、畳まれた形態のステント構造置換弁を示す。側部棒材は、畳まれた形態で、流入部および流出部の上下両方に延出している。テープ
図10は、ステント構造が送達システムの遠位部のホルダ80内に閉じ込められるようになっている、ホルダを有する送達システムを示す。2つの縫合糸が送達システムの長さを延長し、遠位端にループを形成する。ループは、側部棒材に形成されているアイレットに挿通され、送達システムのホルダ部分に接続する。ホルダ部分は、ステントを畳まれた形態で閉じ込める形状の円筒構造である。
【0061】
図11を参照すると、遠位スリーブ50は、遠位スリーブ50に緊密にフィットし、それに係合される所定の寸法を有する、ステンレス鋼、ニチノール合金、またはさびない金属合金などの金属製の引張リング51によって取り囲まれており、引張リング51にかかる牽引力により遠位スリーブ50もクラウン52およびハブ53の方向に後退し、このようにしてステント1または弁付きステントのカバーがそれに随伴するようになっている。
【0062】
図5に示すように、ステント1または弁付きステントが完全に延びているまたはその元の公称寸法および幾何学的形態に戻っているとき、金属リング54の長さは、ステント2または僧帽弁位弁付きステント中の上流入先端部または心房ウイング先端部もしくはタインと、下、流出または心室ウイング先端部またはタインとの間にある寸法またはスパンと同じ寸法になるように予め決定されている。引張リング51の主要な機能は、遠位スリーブ50を後退させる均一な引張力を作り出すことである。体外から行われるこの引張作用は、遠位スリーブ50が引っ張られて後退し、標的部位の選択された部分で自己拡張を開始するステントの遠位部または流出部をこのようにして解放することを術者に確信させる。弁付きステント1の大部分は依然としてカプセル状デバイス内に保持されている。(図11参照)。カプセルデバイス55内のこの引張リング51の特定の特徴は、ステント1または弁付きステントデバイスの環状間隙を画定するマーカーの役割を果たし得、前記環状間隙は弁ステント1が固定する自然心臓弁輪の標的部位の選択された部分を保持するのに必要な、弁付きステント1の把持領域となる。
【0063】
この引張リング51に牽引力を加える前に、蛍光透視検査(X線)または心エコー法(心内エコーICE、または経胸壁心エコーTTEまたは経食道心エコーTEE)などの様々な画像法により、引張リング51を画像化することができる。このようにして、弁付きステント1の環状領域を自然僧帽弁輪面またはその周囲環境と配向させ、実質的に重ね合わせ、そこで僧帽弁位弁付きステント38が自然弁構造を確実に保持することを確実にすることができる。カプセル状デバイス55は、疾患のある弁の中への弁付きステント1の展開および送達を連続的且つ全体的に制御する手段を提供する。対照的に、既存の自己拡張型弁は、弁の自己拡張部分がステントであるため、ステントが拡張するときに常に拡張し、拡張の速度および程度が制御されず、周囲の自然弁環境への位置決めが不正確になるおそれがある。カプセル状デバイス55は、既存の自己拡張型弁付きステントで起こる急な1段階の拡張が起こらないようにする。
【0064】
図12を参照すると、カプセル状デバイス55は、収縮させた僧帽弁位弁付きステント全体を収納し、温度が形状記憶金属の転移温度を越えても筐体に入った状態のまま、拡張しないようにするのに必要な内部構造を有する。カプセル壁は、僧帽弁位弁付きステント3がその円筒状の幾何学的形態でカプセル状デバイス内に保持されるようになっている。前述のように、弁付きステントの配置は、頭側方向または尾側方向のいずれかで達成することができる。カプセル状デバイス55は、ステント着設ゾーンに自然僧帽弁の頭側(上)方向からアプローチするとき、特に有用である。収縮したまたは縮径した僧帽弁位弁付きステント1は、前記僧帽弁位弁付きステント突出部材が6つ以上のアイレットを有するように、その上部を、または僧帽弁の場合、最小径を有する心房側切頭円錐部をカプセル状デバイスに挿入して、カプセル状デバイス55内に配置されている。
【0065】
図13を参照すると、アイレットは、円板状の短い円筒構造から延出しているクラウン52内でアイレットが対応する部材と接触するようにクラウン52に係合する。前記部材は、僧帽弁位弁付きステントのアイレット90に締り嵌めによりスナップフィットし、このようにして弁付きステント38をアイレットによりカプセル内壁と短い円筒板構造との間に保持する。
【0066】
円筒板構造60はカプセル状筐体55内にあるとき、それ自体、前記円筒構造58をクラウン52から前方に、および前方に押動した後は後方に、しかしクラウン52内でのその最初の着座部から後方にならないように押動するのに使用することができるシャフトまたはカテーテルの一部となり得る。このようにして、遠位または中心スリーブ50、54が後退した後、術者が体外から弁付きステント1を押動し、弁付きステント流出部(比較的大きい直径または切頭円錐構造)が直径の何分の1まで拡張する。円筒板60がカプセル55内にある限り、短い円筒板60は依然としてカプセル55内にあるとき、アイレット40によりステント1を保持し続けるため、拡張は完全ではない。ステント1は円筒板60上にスナップフィットして固定されているが、カプセル壁を円筒板50から離れるように押動または後退させると、捕捉されたアイレット10を円筒板突出部からスナップ解除し、カプセル状デバイス55から解放することが可能となる。
【0067】
頭側アプローチを採用して僧帽弁に配置する場合、心室側のまたは下部のタインまたはウイングレット10がまず拡張されるように、弁付きステントの尾部がまず放出される。その拡張の制御はカプセル55のスリーブ50、54によって制限される。従って、遠位スリーブ50を後退させても弁付きステント1の何分の1しか拡張されない、即ち、弁付きステント1流出周囲(直径)の何分の1しか拡張されない。中心スリーブ54を後退させるとき、遠位周囲が増大し、拡張中、その公称径に近付き、弁ステントは自然僧帽弁葉の把持作用を達成する。そのとき、心房側のまたは上部の、上タインまたはウイングレット10は拡張し始めているが、それは依然として[#?]の内壁とホルダの円筒板60との間に保持されているため、心房側直径またはステント上部直径はカプセルデバイス55の直径を有する。これにより、術者がかなりの距離から画像を用いて、弁付きステント38の拡張により形成される把持機能および間隙の位置を制御し、自然弁輪面組織および弁葉組織を捕捉し、弁付きステント38を標的部位のその適切な位置に確実に固定することが可能となる。既存の弁は拡張による半径方向の力と摩擦を使用して石灰化した弁にフィットするが、対照的に、この弁は大動脈の狭窄を治療するように設計されている。弁輪が拡張し、拡大して弁閉鎖不全が生じている場合、半径方向の力と摩擦は自然弁の直径をさらに拡大させるだけであるが、本置換術は開口を効果的に保持し、封止し、弁閉鎖不全を治療することができる。
【0068】
従って、本質および形態において、前記僧帽弁位弁付きステントデバイスおよびその効果的な使用に関する本開示の理想的な例示的実施形態に至るために、開示された弁付きステントの正確な配置と適切な機能の両方を弁付きステントで遂行する補完的なデバイスを設計しなければならない。僧帽弁位弁付きステントの実施形態の大部分では、後者がその意図された機能を十分遂行することができる場合、前記デバイスは僧帽弁位弁付きステント(MVS)の分離不可能な部分または補完物となる。前記デバイスは、弁付きステントが目的とする着設ゾーンに到達することを可能にし、それと同時にその意図された機能を果たすためにそれが最終的に存在することになる生物器官または系の血管系および心臓の構造を通って移動するのに必要な変形を可能にするように、弁付きステントが様々な形態を取るのに役立つ。
【0069】
その収縮した状態で、切頭円錐から進むが、特定の手段により僧帽弁位弁付きステントに円筒状チューブの形態を取らせた。図NNNは、前記収縮したステントを描いた図である。
【0070】
その上部、ステントまたは弁付きステントは、別個のデバイスであるホルダの特定の同じ形状の突出部が係合し得る特定の形状のアイレットまたは穿孔を有する6本以上の延設される棒材を特徴とし、前記係合は、ステントの上部を、伸縮摺動式円筒またはスリーブにより形成される緊密にフィットする円筒状カプセル内に保持する役割を果たし、遠位スリーブは中心スリーブより大きく、前記中心スリーブは近位スリーブまたはクラウンより大きくなっている。この機構は全て、一端がハブに固定されるが、反対端が自由で取り付けられておらず、ステントまたは弁付きステントは、カプセルの自由端に到達するように別個のデバイスまたは保持デバイスのカバーを取ることが決定されるまでそこに存在することになる。同軸方向の運動が維持されることを確実にするために、ハブとステントまたは弁付きステントカプセルデバイスを接続する2本の位置合わせロッドは、ステントまたは弁付きステントデバイスポッドまたはカプセルの一部を形成し、それを保持する。このようにして、ステントまたは弁付きステントは、僧帽弁位弁付きステントの適切な位置と見なされるところに到達し、それを放出することができ、従って、ウイングレットまたはタインが自然僧帽弁輪と僧帽弁葉連結部の周囲領域を把持することができるまで、依然としてクラウン上に保持されたまま、ゆっくり一定方向に再び部分的にその元の切頭円錐形状を取る。
【0071】
遠位スリーブは、遠位スリーブに緊密にフィットし、それに係合される所定の寸法を有する、ステンレス鋼、ニチノール合金、またはさびない金属合金などの金属製の引張リングにより取り囲まれており、これにより引張リングにかかる牽引力により遠位スリーブもクラウンおよびハブの方向に後退し、このようにしてステントまたは弁付きステントのカバーがそれに随伴するようになっている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13