(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】ノイズ環境診断機能付き通信回路およびユニット
(51)【国際特許分類】
H04B 17/20 20150101AFI20231018BHJP
H04B 3/46 20150101ALI20231018BHJP
【FI】
H04B17/20
H04B3/46
(21)【出願番号】P 2019231283
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿竹 厚
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-267580(JP,A)
【文献】特開2016-165080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/20
H04B 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置のユニット間における通信路の通信信号を受信する通信回路であって、
予め定められた期間における前記通信信号の立ち上がり、または、立ち下がりの一方または両方である信号エッジの数に基づいて、前記通信信号に含まれるノイズの量であるノイズ量を数値化するノイズ量数値化手段
を備え、
前記ノイズ量数値化手段は、判定パルスを出力する判定パルス発生回路を備え、
前記予め定められた期間は、作業者により入力された、前記判定パルスを最初にアクティブにするタイミング、および、前記判定パルスのアクティブ間隔に基づいて規定されており、
前記ノイズ量数値化手段は、
前記信号エッジを検出するエッジ検出手段と、
前記判定パルスがアクティブになったタイミングでリセットされて、次に前記判定パルスがアクティブになるまでの前記予め定められた期間の前記信号エッジの数をカウントするカウント手段と、を備え、
前記ノイズ量数値化手段は、前記カウント手段のカウント値に基づいて前記ノイズ量を取得し、
前記通信回路は、
前記ノイズ量が予め定められたノイズ許容量を超えた場合に、通知手段により通知を行うために、判定信号を変化させて出力する判定信号出力手段
を備える、
ことを特徴とするノイズ環境診断機能付き通信回路。
【請求項2】
請求項1に記載の通信回路において、
前記ノイズ量数値化手段は、
前記カウント手段の前記カウント値と予め定められた値の差分を前記ノイズ量として取得する差分取得手段
を備える、
ことを特徴とするノイズ環境診断機能付き通信回路。
【請求項3】
請求項1に記載の通信回路において、
前記エッジ検出手段は、第2エッジ検出手段であり、
前記カウント手段は、第2カウント手段であり、
前記カウント手段の前記カウント値は、実カウント値であり、
前記ノイズ量数値化手段は、
前記通信信号を入力し、基準信号を出力するノイズフィルターと、
前記基準信号の立ち上がり、または、立ち下がりの前記一方または両方である基準信号エッジを検出する第1エッジ検出手段と、
前記予め定められた期間における前記基準信号エッジの数をカウントして基準カウント値を出力する第1カウント手段と、
前記基準カウント値と前記実カウント値の差分を前記ノイズ量として取得する差分取得手段と、を備える、
ことを特徴とするノイズ環境診断機能付き通信回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の通信回路と、
前記通信回路の前記判定信号の変化に従って、通知を行う通知手段と、を備える、
ことを特徴とするユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信路を流れる通信信号を受信する通信回路であって、通信路のノイズ環境の診断機能が付いた通信回路と、それを含むユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械のような装置またはシステムは、複数のユニットを含み、ユニット間は通信線(通信路とも言う)により接続される。装置は、各ユニットが相互に通信を行いながら制御される。例えば、各ユニット間の通信にはシリアル通信が使用される。
【0003】
装置は、例えばモータやインバータ等の機器、電力線(動力線)等を含み、それらが電気的ノイズ源となって、装置内の他の機器に影響を与えたり、ユニット間の通信線を流れる通信信号にノイズを発生させることがある。また、ユニット間の通信線は、装置内の限られた配線経路を使用して配線されるため、電気的ノイズ源となる配線と束ねられて配線されることが多く、通信信号にノイズが乗ることがある。
【0004】
特許文献1には、NC制御工作装置に関し、制御部を、機械的な工作部分から分離させて、工作機械特有の環境(電気的なノイズ信号や機械的な振動)に影響されないようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ユニット間の通信路は、電気的ノイズ源とは分離して配線する等し、通信信号に極力、ノイズを発生させないようにすることが望ましい。しかし、装置内部に通信路用に別の配線経路を設けることは難しく、動力線等の電気的ノイズ源との配線分離は作業者の技量によるところが大きく、安定した通信品質を確保することが難しい。また、完成済みの装置を使用中に、経年劣化等により、通信路の通信信号に含まれるノイズの量が多くなってくることもある。
【0007】
従って、装置の開発設計中または完成済み装置の使用中等において、作業者等が、装置のユニット間における通信路の通信信号に含まれるノイズの量が許容量よりも多いか否か(通信路のノイズ環境)を把握して、通信路の改善を行えるように支援する仕組みが望まれている。
【0008】
本発明の目的は、装置のユニット間における通信路の通信信号に含まれるノイズの量が許容量よりも多いか否かを把握できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の通信回路は、装置のユニット間における通信路の通信信号を受信する通信回路であって、予め定められた期間における前記通信信号の立ち上がり、または、立ち下がりの一方または両方である信号エッジの数に基づいて、前記通信信号に含まれるノイズの量であるノイズ量を数値化するノイズ量数値化手段を備え、前記ノイズ量数値化手段は、判定パルスを出力する判定パルス発生回路を備え、前記予め定められた期間は、作業者により入力された、前記判定パルスを最初にアクティブにするタイミング、および、前記判定パルスのアクティブ間隔に基づいて規定されており、前記ノイズ量数値化手段は、前記信号エッジを検出するエッジ検出手段と、前記判定パルスがアクティブになったタイミングでリセットされて、次に前記判定パルスがアクティブになるまでの前記予め定められた期間の前記信号エッジの数をカウントするカウント手段と、を備え、前記ノイズ量数値化手段は、前記カウント手段のカウント値に基づいて前記ノイズ量を取得し、前記通信回路は、前記ノイズ量が予め定められたノイズ許容量を超えた場合に、通知手段により通知を行うために、判定信号を変化させて出力する判定信号出力手段を備える、ことを特徴とするノイズ環境診断機能付き通信回路である。
【0010】
本発明の通信回路において、前記ノイズ量数値化手段は、前記カウント手段の前記カウント値と予め定められた値の差分を前記ノイズ量として取得する差分取得手段を備える、としてもよい。
【0011】
本発明の通信回路において、前記エッジ検出手段は、第2エッジ検出手段であり、前記カウント手段は、第2カウント手段であり、前記カウント手段の前記カウント値は、実カウント値であり、前記ノイズ量数値化手段は、前記通信信号を入力し、基準信号を出力するノイズフィルターと、前記基準信号の立ち上がり、または、立ち下がりの前記一方または両方である基準信号エッジを検出する第1エッジ検出手段と、前記予め定められた期間における前記基準信号エッジの数をカウントして基準カウント値を出力する第1カウント手段と、前記基準カウント値と前記実カウント値の差分を前記ノイズ量として取得する差分取得手段と、を備える、としてもよい。
【0012】
また、本発明のユニットは、以上に記載の通信回路と、前記通信回路の前記判定信号の変化に従って、通知を行う通知手段と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置のユニット間における通信路の通信信号に含まれるノイズの量が予め定められたノイズ許容量を超えた場合には、判定信号が変化し、通知手段により通知が行われる。これにより、作業者等は、通信路の通信信号に含まれるノイズの量が予め定められたノイズ許容量よりも多いか否かを把握することができる。
【0014】
この構成により、装置の開発設計者(作業者)は、例えば、ユニット間の通信路を仮配線した後に、装置を動作させ、通知手段により通知が行われるか否かを確認しながら、通信路の本配線を行うことができ、通信路の安定した通信品質を確保することができる。また、完成済み装置の使用者(作業者)は、通知手段により通知が行われた際には、通信路のノイズ環境に問題が発生していることを把握することができ、通信路の改善に着手する機会を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ノイズ環境診断機能付き通信回路の構成を示すブロック図である。
【
図2】通信路の通信信号にノイズが重畳されていない時の通信回路の動作の一例を示すタイムチャートである。
【
図3】通信路の通信信号にノイズが重畳されている時の通信回路の動作の一例を示すタイムチャートである。
【
図4】別の実施形態に係るノイズ環境診断機能付き通信回路の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施形態を、図面を用いて説明する。全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、ノイズ環境診断機能付き通信回路2の構成を示すブロック図である。本実施形態のノイズ環境診断機能付き通信回路2(単に通信回路2とも言う)は、NC工作機械50の制御装置20の内部に設けられている。
【0017】
NC工作機械50(装置50またはシステム50とも言う)は、制御装置20と、制御装置20にNC工作機械50のアクチュエータ等の動作状態を伝えると共に制御装置20からの指令をNC工作機械50のアクチュエータ等に伝える入出力端末30を備える。制御装置20と入出力端末30は、ユニット20、30とも呼ばれる。制御装置20と入出力端末30は、通信線CP(通信路)を含む通信線により接続されている。通信線CP(通信路)は、入出力端末30から制御装置20に向かってシリアル信号が流れる線である。
【0018】
入出力端末30は、NC工作機械50に配置されたスイッチ等の入力情報を受け付けると共に、NC工作機械50に配置されたアクチュエータへの制御装置20からの指令を伝達するユニットである。入出力端末30は、制御装置20との間で信号を送受信する通信回路1を備える。通信回路1は、通信路CPを含む通信線と接続され、通信路CPに対して送信回路として機能し、シリアル信号を送出する。
【0019】
制御装置20は、各アクチュエータ及び入出力端末30に指令を行うユニットである。制御装置20は、予め決められたプログラムによりアクチュエータを制御するNC装置11と、NC装置11と電気的に接続されたディスプレイ、ランプ等である通知装置12と、NC装置11と入出力端末30の間に介在する通信回路2を備える。なお、通知装置12は、通知手段の一例である。
【0020】
通信回路2は、NC装置11からの指令を入出力端末30に送信すると共に、入出力端末30からの情報をNC装置11に伝える通信インターフェイスである。
図1には、通信回路2の受信機能に関係する部分のみが示されている。通信回路2は、通信路CPを含む通信線と接続され、通信路CPに対して受信回路として機能し、シリアル信号を受け付ける。通信回路2は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等に入れられた回路であるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
次に、通信回路2の受信機能について説明する。通信回路2は、フィルター回路3(ノイズフィルター3とも言う)と受信部4を備え、通信路CPを流れてきた通信信号は、フィルター回路3により予め定められた定数でフィルタリングが行われた後、受信部4に入力される。そして、受信部4は、入力された信号をシリアル-パラレル変換して受信データとして出力し、NC装置11は、受信部4から受信データを受け付けて、入出力端末30から送られてきた情報を得る。
【0022】
通信回路2は、通信路CPのノイズ環境を診断する機能(ノイズ環境診断機能とも言う)を有する。通信回路2は、当該機能を実現するために、予め定められた期間における通信路CPの通信信号の立ち上がりエッジ(信号エッジとも言う)の数に基づいて、通信信号に含まれるノイズの量(ノイズ量)を数値化するノイズ量数値化部40と、ノイズ量が予め定められたノイズ許容量を超えた場合に、通知装置12により通知を行うために、判定信号を変化させて出力する判定信号出力部14を備える。なお、ノイズ量数値化部40、判定信号出力部14のそれぞれは、ノイズ量数値化手段、判定信号出力手段の一例である。
【0023】
ノイズ量数値化部40は、フィルター回路3と、第1エッジ検出回路5と、第1カウンタ回路7と、第2エッジ検出回路6と、第2カウンタ回路8と、判定パルス発生回路9と、判定回路10の一部である差分取得部13を備える。なお、第1エッジ検出回路5、第1カウンタ回路7、第2エッジ検出回路6、第2カウンタ回路8、および差分取得部13のそれぞれは、第1エッジ検出手段、第1カウント手段、第2エッジ検出手段、第2カウント手段、および差分取得手段の一例である。また、判定信号出力部14は、判定回路10の一部である。以下、
図1~3を参照しながら、ノイズ量数値化部40の各部、判定信号出力部14の接続関係(入出力関係)および動作について説明する。
【0024】
図2は、通信路CPの信号(通信信号)にノイズが重畳されていない時のノイズ量数値化部40の各部、および、判定信号出力部14の信号変化の一例を示すタイムチャートである。
図3は、通信路CPの信号(通信信号)にノイズが重畳されている時のノイズ量数値化部40の各部、および、判定信号出力部14の信号変化の一例を示すタイムチャートである。
図2、3には、通信路CPの信号の一例としてクロック状の信号が示されている。また、
図3には、クロック状の通信信号に乗ったノイズが破線で示されている。なお、
図3の通信路CPの信号は、正常な通信が可能なレベルの通信信号にノイズを重畳させたものである。
【0025】
図1に示すように、通信路CPの信号は、フィルター回路3に入力され、フィルター回路3は、通信路CPの信号に対して予め定められた定数でフィルタリングを行い、所定のノイズが除去された信号(以下、基準信号とも言う)を出力する。
【0026】
第1エッジ検出回路5には、フィルター回路3の出力信号(基準信号)が入力され、第1エッジ検出回路5は、入力された基準信号の立ち上がりエッジ(基準信号エッジとも言う)を検出し、基準信号エッジのタイミングでパルス状の信号を出力する(
図2、3参照)。
【0027】
第1カウンタ回路7には、第1エッジ検出回路5の出力信号が入力され、第1カウンタ回路7は、入力された第1エッジ検出回路5の出力信号に含まれるパルスの数(基準信号エッジの数)をカウントしてカウント値(基準カウント値とも言う)を出力する。
【0028】
ここで、第1カウンタ回路7と第2カウンタ回路8には、判定パルス発生回路9から判定パルスが入力されており、第1カウンタ回路7と第2カウンタ回路8の各カウント値は、判定パルスがアクティブ(High)になったタイミングでリセットされる(
図2、3参照)。第1カウンタ回路7は、判定パルスがアクティブになってから、次に判定パルスがアクティブになるまでの期間(以下、予め定められた期間とも言う)における、基準信号エッジの数をカウントする。第1カウンタ回路7のカウント値(基準カウント値)は、判定回路10に入力されている。
【0029】
なお、判定パルスがアクティブになってから、次に判定パルスがアクティブになるまでの期間(予め定められた期間)は、例えば、作業者等がユニット20の入力装置(不図示)を介して、判定パルスを最初にアクティブにするタイミング、判定パルスのアクティブ間隔等を入力し、メモリ等(不図示)に記憶したものであってもよいし、作業者等の入力無しに、予めメモリ等に記憶したものであってもよい。
【0030】
図1に示すように、第2エッジ検出回路6には、通信路CPの信号(通信信号)が入力され、第2エッジ検出回路6は、入力された通信信号の立ち上がりエッジ(信号エッジとも言う)を検出し、通信路CPの信号エッジのタイミングでパルス状の信号を出力する(
図2、3参照)。
【0031】
第2カウンタ回路8には、第2エッジ検出回路6の出力信号が入力され、第2カウンタ回路8は、入力された第2エッジ検出回路6の出力信号に含まれるパルスの数(信号エッジの数と同じ)をカウントしてカウント値(実カウント値とも言う)を出力する。前述したように、第2カウンタ回路8は、判定パルスがアクティブ(High)になったタイミングでリセットされるので、判定パルスがアクティブになってから、次に判定パルスがアクティブになるまでの期間(予め定められた期間)の信号エッジの数をカウントすることになる。第2カウンタ回路8のカウント値(実カウント値)は、判定回路に入力されている。
【0032】
図1に示すように、判定回路10は、差分取得部13(ノイズ量数値化部40の一部)と、判定信号出力部14を備える。差分取得部13には、基準カウント値、実カウント値、および判定パルス発生回路9からの判定パルスが入力される。差分取得部13は、判定パルスがアクティブ(High)になったタイミングで、リセットされる前の基準カウント値と実カウント値の差を、通信路CPのノイズ量として取得する。このノイズ量は、判定パルスのアクティブ間隔(予め定められた期間)の長さに応じた、通信路CPのノイズ量を表している。
【0033】
図2に示すように、通信路CPの信号にノイズが重畳されていない場合には、予め定められた期間における基準信号エッジ(フィルター回路3の出力信号の立ち上がりエッジ)の数と信号エッジ(通信路CPの信号の立ち上がりエッジ)の数が同じか、又は、ほぼ同じになる。そのため、判定パルスがアクティブ(High)になるタイミングにおける基準カウント値と実カウント値は同じ値になるか、又は、ほぼ同じ値となる。
図2には、判定パルスがアクティブ(High)になるタイミングで、基準カウント値と実カウント値が共に「10」であり、ノイズ量として「0」が取得される例が示されている。
【0034】
一方、
図3に示すように、通信路CPの信号にノイズが重畳されている場合には、予め定められた期間における、フィルター回路3の出力信号に比べて通信路CPの信号には多くの立ち上がりエッジが含まれる(ノイズの分の立ち上がりエッジが含まれる)。すなわち、予め定められた期間における、基準信号エッジ(フィルター回路3の出力信号の立ち上がりエッジ)の数に比べて、信号エッジ(通信路CPの信号の立ち上がりエッジ)の数が多くなる。そのため、判定パルスがアクティブ(High)になるタイミングでは、基準カウント値に比べて実カウント値が大きくなる。
図3には、判定パルスがアクティブ(High)になるタイミングで、基準カウント値が「10」であり、実カウント値が「17」であり、ノイズ量として「7」が取得される例が示されている。
【0035】
判定信号出力部14には、差分取得部13からノイズ量が入力され、判定信号出力部14は、ノイズ量が、予め定められたノイズ許容量を超えた場合に、判定信号をアクティブ(High)に変化させて出力する。なお、ノイズ許容量は、例えば、作業者等が、ユニット20の入力装置(不図示)を介して入力し、メモリ等(不図示)に記憶しておいてもよいし、作業者等の入力無しに、予めメモリ等に記憶したものであってもよい。
【0036】
図2、3には、ノイズ許容量が「5」に設定されていた場合の判定信号の動作が示されている。
図2の場合には、ノイズ量が「0」であり、ノイズ許容量の「5」を超えないから、判定信号がディスエイブル(Low)のままである。すなわち、通信路CPは良好な通信品質であると判定されている。一方、
図3の場合には、ノイズ量が「7」であり、ノイズ許容量の「5」を超えるから、判定信号がアクティブ(High)になる。すなわち、通信路CPの通信品質に問題があると判定されている。
【0037】
図1に示すように、判定信号は、NC装置11に接続されており、NC装置11は、通知装置12に接続されている。判定信号がアクティブ(High)になった際には、その情報がNC装置11を介して通知装置12に伝えられ、通知装置12は、ディスプレイに警告を表示したり、警告を示すランプを点灯したりする。通知装置12がスピーカーを含む場合には、スピーカーから警告音が発せられてもよい。これにより、作業者等に注意を促す。
【0038】
以上説明した実施形態によれば、NC工作機械50のユニット20、30間における通信路CPの通信信号に含まれるノイズの量が予め定められたノイズ許容量を超えた場合には、通知装置12により通知が行われる。これにより、作業者等は、通信路CPの通信信号に含まれるノイズの量が予め定められたノイズ許容量よりも多いか否かを簡単に把握することができる。
【0039】
また、以上説明した実施形態によれば、NC工作機械50の開発設計者(作業者)は、ユニット30の通信回路1からユニット20の通信回路2までの配線(各ユニット20、30内の配線を含む)を行う際に、例えば、通信線CPを仮配線した後にNC工作機械50を動作させ、通知装置12により通知が行われるか否かを確認しながら、通信路CPの本配線を行うことができる。また、完成済みNC工作機械50の使用者(作業者)は、通知装置12により通知が行われた際には、経年劣化等により通信路CPのノイズ環境に問題が生じていることを把握することができ、通信路CPの改善に着手する機会を得ることができる。
【0040】
次に、別の実施形態について説明する。
図4は、別の実施形態に係るノイズ環境診断機能付き通信回路2Aの構成を示すブロック図である。
図4の通信回路2Aは、
図1の通信回路2における第1エッジ検出回路5と第1カウンタ回路7を省き、
図1の通信回路2における第2エッジ検出回路6、第2カウンタ回路8の名称を、エッジ検出回路6A、カウンタ回路8Aと変更し、差分取得部13の機能を変更したものである。なお、エッジ検出回路6A、カウンタ回路8Aのそれぞれは、エッジ検出手段、カウント手段の一例である。
図4の差分取得部13Aは、基準カウント値に代えて、予め定められた値を用いてノイズ量を取得する点で、
図1の差分取得部13とは異なる。
【0041】
図4のカウンタ回路8Aは、
図1のカウンタ回路8と同様に、予め定められた期間における信号エッジ(通信路CPの信号の立ち上がりエッジ)の数をカウントしてカウント値(実カウント値)を出力する。差分取得部13Aは、判定パルスがアクティブ(High)になったタイミングで、リセットされる前のカウンタ回路8Aのカウント値と予め定められた値の差を、通信路CPのノイズ量として取得する。なお、予め定められた値は、例えば、作業者等が、ユニット20の入力装置(不図示)を介して入力し、メモリ等(不図示)に記憶しておいてもよいし、作業者等の入力無しに、予めメモリ等に記憶したものであってもよい。
図4の判定信号出力部14および通知装置12の機能は、
図1の実施形態のそれらと同じである。
【0042】
以上説明した実施形態は、例えば、通信路CPに同期信号等の規則的な信号が流れており、予め定められた期間の(ノイズが重畳されていない)通信信号の信号エッジの数が予測できる場合、すなわち、
図1の第1エッジ検出回路5と第1カウンタ回路7が無くても、第1カウンタ回路7のカウント値(基準カウント値)を予測できる場合等に適用することができる。以上説明した実施形態によれば、通信回路2Aの構成が簡易でありながら、上記した
図1の通信回路2と同様の作用効果を得ることができる。
【0043】
なお、以上説明した各実施形態は、ノイズ環境診断機能付き通信回路2、2Aが、NC工作機械50に組み込まれていた。しかし、ノイズ環境診断機能付き通信回路2、2Aは、NC工作機械50以外の装置(システム)にも適用することができる。ノイズ環境診断機能付き通信回路2、2Aは、様々なユニットに組み込まれて、通信路CPのノイズ環境を診断することができる。ユニットには、通信を行う様々な機器、モジュール(例えばアクチュエータ、NC装置、センサ、入出力装置等)が含まれ得る。
【0044】
また、以上説明した通信回路2(
図1参照)の第1エッジ検出回路5、第2エッジ検出回路6、および通信回路2A(
図4参照)のエッジ検出回路6Aは、信号の立ち上がりエッジを検出するものであったが、信号の立ち下がりエッジを検出する構成であってもよいし、信号の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジの両方を検出する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 通信回路、2,2A ノイズ環境診断機能付き通信回路(通信回路)、3 フィルター回路(ノイズフィルター)、4 受信部、5 第1エッジ検出回路、6 第2エッジ検出回路、6A エッジ検出回路、7 第1カウンタ回路、8 第2カウンタ回路、8A カウンタ回路、9 判定パルス発生回路、10 判定回路、11 NC装置、12 通知装置、13,13A 差分取得部、14 判定信号出力部、20 制御装置(ユニット)、30 入出力端末(ユニット)、40,40A ノイズ量数値化部、50 NC工作機械(装置,システム)、CP 通信路(通信線)。