(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
B60R 21/264 20060101AFI20231018BHJP
B01J 7/00 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B60R21/264
B01J7/00 A
(21)【出願番号】P 2020007650
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井本 勝大
(72)【発明者】
【氏名】小林 睦治
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-067338(JP,A)
【文献】登録実用新案第3019856(JP,U)
【文献】米国特許第05551724(US,A)
【文献】特開2015-009625(JP,A)
【文献】特開2001-225713(JP,A)
【文献】特開2000-159051(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01506897(EP,A2)
【文献】実開平04-041441(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102008029591(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/264
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火部と前記点火部の作動により燃焼するガス発生剤とが配置される燃焼室と、
筒状の周壁部と、前記周壁部の一端側に設けられた第1部材と、前記周壁部の他端側に設けられ、前記周壁部及び前記第1部材と共に前記燃焼室を画定する第2部材と、を含むハウジングであって、前記燃焼室と前記ハウジングの外部とを連通するガス排出孔が形成されたハウジングと、
複数の孔を有し金属材料により形成された筒状のフィルタであって、前記ガス発生剤を取り囲み且つ前記ガス排出孔がその外側に位置するように前記燃焼室に配置され、その一端面が前記第1部材に当接して支持され、その他端面が前記第2部材に当接して支持されたフィルタと、
を備えるガス発生器であって、
前記フィルタ
の両端部は、前記ハウジングに形成された保持部によって、前記ガス発生剤の燃焼によって作用する径方向外側への荷重に対して当接して支持され、
前記フィルタの一部の部位であって前記フィルタの他の部位よりも前記金属材料の充填率の高い密部が、前記フィルタ
の前記両端部のそれぞれにおける、前記保持部と当接する部位に形成されている、
ガス発生器。
【請求項2】
前記フィルタ
の前記両端部のそれぞれと前記保持部との当接状態が、前記フィルタの周方向の全周に亘って形成されている、
請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記フィルタは、前記密部において、前記孔を有さない無孔部を含む、
請求項1又は2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記第1部材と前記第2部材とのうちの少なくとも一方には、前記周壁部に繋がると共に前記フィルタの軸方向において前記燃焼室の外部側に向かうに従って縮径するように傾斜した環状の傾斜部が、前記保持部として形成されており、
前記保持部と前記フィルタ
の前記両端部のそれぞれとの当接状態は、前記ガス発生剤の燃焼によって作用する径方向外側への荷重による前記フィルタのずれが規制されるように、前記フィルタ
の前記両端部のそれぞれにおける前記フィルタの端面の少なくとも一部が
前記保持部によって前記フィルタの径方向外側から当接して支持されるように、形成される、
請求項1から
3の何れか一項に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記第1部材と前記第2部材との
両方には、前記フィルタの軸方向に沿って前記燃焼室の内部側に向かって突出する環状の段差部が、前記保持部として形成され、
前記保持部は、前記ガス発生剤の燃焼によって作用する径方向外側への荷重による前記フィルタのずれを規制するように、前記フィルタ
の前記両端部のそれぞれにおける前記フィルタの外周面を当接して支持する、
請求項1から
3の何れか一項に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記第1部材と前記第2部材との
両方には、前記フィルタの軸方向において前記燃焼室の内部側に向かって突出する環状の突起部が、前記保持部として形成され、
前記保持部は、前記ガス発生剤の燃焼によって作用する径方向外側への荷重による前記フィルタのずれを規制するように、前記フィルタ
の前記両端部のそれぞれにおける前記フィルタの外周面を当接して支持する、
請求項1から
3の何れか一項に記載のガス発生器。
【請求項7】
前記保持部の前記フィルタの軸方向における高さは、前記ガス発生剤の燃焼により前記第1部材と前記第2部材との前記フィルタの軸方向における間隔が広がる場合に前記保持部と前記フィルタ
の前記両端部のそれぞれの外周面との当接状態が維持されるように、設定されている、
請求項
5又は6に記載のガス発生器。
【請求項8】
前記フィルタは、前記フィルタ
の前記両端部のそれぞれにおいて、径方向外側に突出して前記周壁部に当接する突出部を有し、
前記保持部は、前記周壁部における前記突出部に当接する部位として形成されている、
請求項1から
3の何れか一項に記載のガス発生器。
【請求項9】
前記密部と、前記フィルタのうちの前記密部を除く部位との境界は、前記ガス発生剤の燃焼によって作用する径方向外側への荷重による前記フィルタのうちの前記密部を除く部位のずれが規制されるように、前記フィルタのうちの前記密部を除く部位が前記密部によって前記フィルタの径方向外側から支持されるように、形成されている、
請求項1から
8の何れか一項に記載のガス発生器。
【請求項10】
点火部と前記点火部の作動により燃焼するガス発生剤とが配置される燃焼室と、
筒状の周壁部と、前記周壁部の一端側に設けられた第1部材と、前記周壁部の他端側に設けられ、前記周壁部及び前記第1部材と共に前記燃焼室を画定する第2部材と、を含むハウジングであって、前記燃焼室と前記ハウジングの外部とを連通するガス排出孔が形成されたハウジングと、
複数の孔を有し金属材料により形成された筒状のフィルタであって、前記ガス発生剤を取り囲み且つ前記ガス排出孔がその外側に位置するように前記燃焼室に配置され、その一端面が前記第1部材に当接して支持され、その他端面が前記第2部材に当接して支持されたフィルタと、
を備えるガス発生器であって、
前記フィルタにおける前記一端面を含む部位である第1端部と前記フィルタにおける前記他端面を含む部位である第2端部とのうちの少なくとも一方であるフィルタ端部は、前記ハウジングに形成された保持部によって、前記ガス発生剤の燃焼によって作用する径方向外側への荷重に対して当接して支持され、
前記フィルタの一部の部位であって前記フィルタの他の部位よりも前記金属材料の充填
率の高い密部が、前記フィルタ端部における、前記保持部と当接する部位に形成されており、
前記密部は、前記フィルタの内周面側と外周面側とのうち、外周面側にのみ露出している
、
ガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火部の作動によりガス発生剤を燃焼させて燃焼ガスを発生させるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジング内に形成された燃焼室内にガス発生剤を充填し、点火器によってガス発生剤を燃焼させることで燃焼ガスを発生させ、該燃焼ガスをハウジングに設けられたガス排出孔から外部へ放出するガス発生器が広く用いられている。また、このようなガス発生器において、発生した燃焼ガスの冷却及び残渣の捕集を行うために、燃焼室とガス排出孔との間に金属製且つ筒状のフィルタが配置される場合がある。燃焼ガスの全部がフィルタを通過するように、フィルタの軸方向の両端部がハウジング内で当接して支持される。
【0003】
これに関連して、特許文献1や特許文献2には、筒状のフィルタが配置されたガス発生器において、フィルタにおける金属材料の充填率を特定の部位ごとに異ならせた技術が開示されている。特許文献1に開示のガス発生器は、ガス排出口から遠い部位における金属材料の充填率を低くすることで、当該部位における燃焼ガスの通過性を高め、フィルタ全体に燃焼ガスを通過させる。また、特許文献2に開示のガス発生器は、燃焼ガスの一部がフィルタを通らずにガス排出孔に至る、所謂「ショートパス」を抑制するために、フィルタの両端部における金属材料の充填率を低くし、その可撓性を高めることで、ハウジングとフィルタとを密に当接させて燃焼ガスのショートパスを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第5503806号明細書
【文献】特開2011-255750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ガス発生器においては、ガス発生剤が燃焼して燃焼室に燃焼ガスが発生すると、燃焼ガスの圧力により、フィルタに対して径方向外側への荷重が作用する。仮に、径方向外側へ作用する荷重によりフィルタが変形することでフィルタの端部がハウジングから離れると、ショートパスが発生する虞がある。そのため、フィルタの変形によるショートパスを効果的に抑制できる技術が求められていた。
【0006】
本開示の技術は、上述の実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、ガス発生器において、ショートパスを抑制することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のガス発生器は、以下の構成を採用した。即ち、本開示のガス発生器は、点火部と前記点火部の作動により燃焼するガス発生剤とが配置される燃焼室と、筒状の周壁部と、前記周壁部の一端側に設けられた第1部材と、前記周壁部の他端側に設けられ、前記周壁部及び前記第1部材と共に前記燃焼室を画定する第2部材と、を含むハウジングであって、前記燃焼室と前記ハウジングの外部とを連通するガス排出孔が形成されたハウジングと、複数の孔を有し金属材料により形成された筒状のフィルタであって、前記ガス発生剤を取り囲み且つ前記ガス排出孔がその外側に位置するように前記燃焼室に配置され、その一端面が前記第1部材に当接して支持され、その他端面が前記第2部材に当接して支持されたフィルタと、を備えるガス発生器であって、前記フィル
タにおける前記一端面を含む部位である第1端部と前記フィルタにおける前記他端面を含む部位である第2端部とのうちの少なくとも一方であるフィルタ端部は、前記ハウジングに形成された保持部によって、前記ガス発生剤の燃焼によって作用する径方向外側への荷重に対して当接して支持され、前記フィルタの一部の部位であって前記フィルタの他の部位よりも前記金属材料の充填率の高い密部が、前記フィルタ端部における、前記保持部と当接する部位に形成されている、ガス発生器である。
【0008】
ここで、フィルタのある部位における金属材料の充填率とは、当該部位において金属材料が占める体積の割合のことを指す。より詳細には、当該部位の外形から求められる体積に対する金属材料の体積の割合である。そのため、密部の充填率の方がフィルタにおける他の部位の充填率よりも高いということは、密部の方がフィルタにおける他の部位よりもフィルタを構成する金属材料が密に詰まっていることを意味する。そのため、密部は、フィルタにおける他の部位よりも高い剛性を有し、変形し難く形成される。また、フィルタの密部は、金属材料が密に詰まっていることから、通気抵抗がフィルタの他の部位よりも高い部位でもある。
【0009】
本開示のガス発生器によると、ガス発生剤の燃焼によって径方向外側への荷重がフィルタに作用すると、フィルタ端部の密部が保持部に押し付けられることとなる。密部は変形し難く形成されているため、密部と保持部との当接状態が維持される。これにより、ガス発生剤の燃焼による径方向外側への荷重によりフィルタが外側に撓むように変形した場合であっても、フィルタ端部とハウジングとの当接状態を維持することができ、その結果、ショートパスを抑制できる。なお、この効果が得られる限りにおいては、フィルタ端部と保持部の間に介在物が存在してもよい。また、本開示では、フィルタ端部と保持部は、少なくともガス発生器の作動時(つまり、点火部の作動時)に当接すればよく、ガス発生器の作動前にフィルタ端部と保持部との間に僅かなクリアランスが形成されていてもよい。つまり、ガス発生器の作動時にフィルタ端部と保持部とが当接してショートパスの抑制効果が得られるものであればよい。
【0010】
また、本開示のガス発生器において、前記フィルタ端部と前記保持部との当接状態が、前記フィルタの周方向の全周に亘って形成されていてもよい。これにより、より好適にショートパスを抑制できる。
【0011】
また、本開示のガス発生器において、前記フィルタは、前記密部において、前記孔を有さない無孔部を含んでもよい。このような無孔部は、空隙を有さないことから、密部における他の部位よりも高い剛性を有し、より変形し難く形成される。このような無孔部を密部に形成することで、ガス発生剤が燃焼したときに密部とハウジングとの当接状態をより確りと維持させることができ、より好適にショートパスを抑制できる。
【0012】
また、本開示のガス発生器において、前記第1端部と前記第2端部とのうちの前記ガス排出孔により近い方が前記保持部によって当接して支持されていてもよい。ガス発生器においてガス発生剤が燃焼するとき、フィルタの両端部のうちガス排出孔により近い端部の方が、通過する燃焼ガスの流速が速くなる傾向がある。つまり、フィルタの両端部のうちガス排出孔により近い端部の方が、ガス発生剤の燃焼により径方向外側へ作用する荷重が大きくなりがちとなる。そのため、フィルタの両端部のうち、ガス排出孔により近い方をフィルタ端部とすることで、ショートパスを好適に抑制できる。
【0013】
また、本開示のガス発生器において、前記第1端部と前記第2端部との両方が前記保持部によって当接して支持されていてもよい。これにより、より好適にショートパスを抑制できる。
【0014】
また、本開示のガス発生器において、前記第1部材と前記第2部材とのうちの少なくとも一方には、前記周壁部に繋がると共に前記フィルタの軸方向において前記燃焼室の外部側に向かうに従って縮径するように傾斜した環状の傾斜部が、前記保持部として形成されており、前記保持部と前記フィルタ端部との当接状態は、前記ガス発生剤の燃焼によって作用する径方向外側への荷重による前記フィルタのずれが規制されるように、前記フィルタ端部における前記フィルタの端面の少なくとも一部が前記保持部によって前記フィルタの径方向外側から当接して支持されるように、形成されてもよい。
【0015】
また、本開示のガス発生器において、前記第1部材と前記第2部材とのうちの少なくとも一方には、前記フィルタの軸方向に沿って前記燃焼室の内部側に向かって突出する環状の段差部が、前記保持部として形成され、前記保持部は、前記ガス発生剤の燃焼によって作用する径方向外側への荷重による前記フィルタのずれを規制するように、前記フィルタ端部における前記フィルタの外周面を当接して支持してもよい。
【0016】
また、本開示のガス発生器において、前記第1部材と前記第2部材とのうちの少なくとも一方には、前記フィルタの軸方向において前記燃焼室の内部側に向かって突出する環状の突起部が、前記保持部として形成され、前記保持部は、前記ガス発生剤の燃焼によって作用する径方向外側への荷重による前記フィルタのずれを規制するように、前記フィルタ端部における前記フィルタの外周面を当接して支持してもよい。
【0017】
また、本開示のガス発生器において、前記第1部材と前記第2部材との両方に、前記保持部が形成され、前記保持部の前記フィルタの軸方向における高さは、前記ガス発生剤の燃焼により前記第1部材と前記第2部材との前記フィルタの軸方向における間隔が広がる場合に前記保持部と前記フィルタ端部の外周面との当接状態が維持されるように、設定されていてもよい。これにより、ガス発生剤の燃焼により第1部材と第2部材との間隔が広がる場合であっても、ショートパスを抑制できる。
【0018】
また、本開示のガス発生器において、前記フィルタは、前記フィルタ端部において、径方向外側に突出して前記周壁部に当接する突出部を有し、前記保持部は、前記周壁部における前記突出部に当接する部位として形成されてもよい。
【0019】
また、本開示のガス発生器において、前記密部と、前記フィルタのうちの前記密部を除く部位との境界は、前記ガス発生剤の燃焼によって作用する径方向外側への荷重による前記フィルタのうちの前記密部を除く部位のずれが規制されるように、前記フィルタのうちの前記密部を除く部位が前記密部によって前記フィルタの径方向外側から支持されるように、形成されてもよい。これによると、ガス発生剤が燃焼するときに密部とフィルタの他の部位とが分離することを抑制できる。
【0020】
また、本開示のガス発生器において、前記密部は、前記フィルタの内周面側と外周面側とのうち、外周面側にのみ露出してもよい。これによると、ガス発生剤が燃焼したときに密部と保持部との当接状態を維持させてショートパスを抑制しつつも、フィルタの全体に対する密部の占める割合を小さく抑えることができる。そのため、フィルタの燃焼ガスの冷却機能及び濾過機能を大きく確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、フィルタを具備するガス発生器において、燃焼ガスのショートパスを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態1に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図3】
図3(A)は、
図1におけるA-A断面図である。
図3(B)は、
図1におけるB-B断面図である。
【
図4】実施形態1に係るガス発生器において点火装置が作動し、ガス発生剤の燃焼による径方向外側への荷重によりフィルタが変形した状態の一例を示す図である。
【
図5】実施形態1に係るガス発生器において点火装置が作動し、ガス発生剤の燃焼によりハウジングが変形した状態の一例を示す図(1)である。
【
図6】実施形態1に係るガス発生器において点火装置が作動し、ガス発生剤の燃焼によりハウジングが変形した状態の一例を示す図(2)である。
【
図7】実施形態1の変形例1に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図8】実施形態1の変形例2に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図9】実施形態1の変形例3に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図10】実施形態1の変形例4に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図11】実施形態1の変形例5に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図12】実施形態1の変形例6に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図13】実施形態1の変形例7に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図14】実施形態2に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係るガス発生器について説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0024】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るガス発生器100の軸方向断面図である。
図1では、ガス発生器100の作動前の状態が示されている。ガス発生器100は、例えばエアバッグ用に使用されるエアバッグ用ガス発生器である。
【0025】
[全体構成]
図1に示すように、ガス発生器100は、点火装置4と、内筒部材5と、フィルタ6と、伝火薬110と、ガス発生剤120と、これらを収容するハウジング1と、を備えている。ガス発生器100は、点火装置を1つのみ備えた、いわゆるシングルタイプのガス発生器として構成されている。また、ガス発生器100は、点火装置4に含まれる点火器41を作動させることで、ガス発生剤120を燃焼させ、その燃焼生成物である燃焼ガスをハウジング1に形成されたガス排出孔11から放出するように構成されている。以下、ガス発生器100の各構成について説明する。なお、本明細書では、点火装置(点火部)に含まれる点火器が作動することを、便宜上、「ガス発生器が作動する」又は「点火装置(点火部)が作動する」と表現する場合がある。
【0026】
[ハウジング]
ハウジング1は、それぞれが有底略円筒状に形成された金属製の上部シェル2及び下部シェル3が互いの開口端同士を向き合わせた状態で接合されることによって、軸方向の両端が閉塞した短尺円筒状に形成されている。ハウジング1の内部には、点火装置4、内筒部材5、フィルタ6、伝火薬110、及びガス発生剤120が配置される燃焼室10が形成されている。ここで、ハウジング1の軸方向に沿う方向をガス発生器100の上下方向と定義し、上部シェル2側(即ち、
図1における上側)をガス発生器100の上側とし、下部シェル3側(即ち、
図1における下側)をガス発生器100の下側とする。
【0027】
上部シェル2は、筒状の上側周壁部21と該上側周壁部21の上端を閉塞する天板部22とを有し、これらにより内部空間を形成する。上側周壁部21の下端部によって上部シェル2の開口部が形成されている。上側周壁部21の下端部には、径方向外側へ延びる接合部23が繋がっている。下部シェル3は、筒状の下側周壁部31と該下側周壁部31の下端を閉塞すると共に点火装置4が固定された底板部32とを有し、これらにより内部空間を形成する。下側周壁部31の上端部には、径方向外側へ延びる接合部33が繋がっている。
【0028】
上部シェル2の接合部23と下部シェル3の接合部33とが重ね合わされてレーザ溶接等によって接合されることで、軸方向の両端が閉塞した短尺円筒状のハウジング1が形成されている。上部シェル2と下部シェル3を接合する箇所は、接合部23,33のみである。これら上部シェル2の上側周壁部21と下部シェル3の下側周壁部31とによって、天板部22と底板部32とを接続する筒状の周壁部12が形成されている。つまり、ハウジング1は、筒状の周壁部12と、周壁部12の一端側に設けられた天板部22と、他端側に設けられ、点火装置4が取り付けられた底板部32と、を含んで構成されている。これら天板部22と底板部32と周壁部12とによって、燃焼室10が画定されている。天板部22は、本開示に係る「第1部材」に相当する。また、底板部32は、本開示に係る「第2部材」に相当する。また、上部シェル2の上側周壁部21には、燃焼室10とハウジング1の外部空間とを連通するガス排出孔11が、周方向に沿って複数並んで形成されている。ガス排出孔11は、点火装置4が作動する前の状態では、シールテープ(図示なし)により閉塞されている。
【0029】
ここで、上部シェル2の天板部22は、天壁部221と段差部222とを含む。天壁部221は、燃焼室10の上端を画定する部位であり、フィルタ6の軸方向と直交するように、フィルタ6の径方向に延在している。段差部222は、後述するように径方向外側への荷重に対してフィルタ6の上端部610を当接して支持する環状の部位であり、フィルタ6の軸方向に沿って燃焼室10の内部側(即ち、上側)に突出すると共に周壁部12(上側周壁部21)に繋がっている。段差部222は、即ち、天壁部221と周壁部12との間に形成された環状の部位であり、その周長方向に直交する断面の形状がクランク状の部位である。段差部222の内周面222aは、フィルタ6の軸方向に沿って延びている。
【0030】
また、下部シェル3の底板部32は、底壁部321と段差部322とを含む。底壁部321は、燃焼室10の下端を画定する部位であり、フィルタ6の軸方向と直交するように、フィルタ6の径方向に延在している。底壁部321の中央には、点火装置4の点火器41を底板部32に取り付けるための取付孔32aが形成されている。段差部322は、後述するように径方向外側への荷重に対してフィルタ6の下端部620を当接して支持する環状の部位であり、フィルタ6の軸方向に沿って燃焼室10の内部側(即ち、上側)に突出すると共に周壁部12(下側周壁部31)に繋がっている。段差部322は、即ち、底壁部321と周壁部12との間に形成された環状の部位であり、その周長方向に直交する断面の形状がクランク状の部位である。段差部322の内周面322aは、フィルタ6の軸方向に沿って延びている。ガス発生器100では、天板部22の段差部222及び底板部32の段差部322が、それぞれ、本開示の「保持部」に相当する。
【0031】
[点火装置]
図1に示すように、点火装置4は、点火器41とカラー42と樹脂部43とを含み、下部シェル3の底板部32における底壁部321に取り付けられている。点火装置4は、本開示に係る「点火部」に相当する。点火器41は、点火薬が収容された金属製のカップ体411と、外部から電流の供給を受けるための一対の通電ピン412,412と、を有する。点火器41は、一対の通電ピン412,412に供給される着火電流により作動する
ことで該点火薬を燃焼させ、その燃焼生成物をカップ体411の外部に放出させる。カラー42は、点火器41を支持する部材である。カラー42は、筒状に形成されており、底壁部321に形成された取付孔32aに圧入された状態で、溶接等によって固定されている。樹脂部43は、点火器41とカラー42との間に介装されることで、カラー42に対して点火器41を固定する樹脂製の部材である。樹脂部43は、点火器41の下部を覆うと共にカラー42と係合することで、カップ体411の少なくとも一部が樹脂部43から露出した状態となるように、カラー42に対して点火器41を固定する。但し、樹脂部43によってカップ体411の全体がオーバーモールドされていてもよい。即ち、カップ体411の全体が樹脂に覆われた状態であってもよい。また、樹脂部43は、カラー42の内側に、一対の通電ピン412,412に外部電源からの電力を供給するコネクタ(図示せず)を挿入可能なコネクタ挿入空間を形成している。樹脂部43は、一対の通電ピン412,412の下端がコネクタ挿入空間に露出するように、一対の通電ピン412,412の一部を覆い、保持している。樹脂部43によって、一対の通電ピン412,412同士の絶縁性が保たれている。なお、点火器41とカラー42の固定や、カラー42と底板部32の関係は
図1に限られることなく、公知の技術を使用できる。
【0032】
[内筒部材]
内筒部材5は、点火装置4を取り囲むようにして底板部32から天板部22に向かって延びる筒状の部材である。内筒部材5は、一端(上端)が閉塞され他端(下端)が開口した筒状に形成されており、その下端にカラー42が嵌入(圧入)されることで、底板部32に取り付けられている。内筒部材5と点火装置4との間には、伝火薬110が収容される空間である伝火室51が形成されている。伝火薬110は、点火器41の作動により燃焼し、燃焼ガス等を発生させる。また、内筒部材5には、その内部空間(即ち、伝火室51)と外部空間とを連通する連通孔52が複数形成されている。連通孔52は、点火装置4が作動する前の状態では、シールテープ(図示なし)により閉塞されている。
【0033】
[フィルタ]
図2は、実施形態1に係るフィルタ6の斜視図である。フィルタ6は、金属材料により形成された筒状の部材であって、複数の孔を有している。
図1に示すように、フィルタ6は、ガス発生剤120を取り囲み、且つ、その径方向においてガス排出孔11がその外側に位置するように、燃焼室10に配置されている。つまり、フィルタ6は、ガス発生剤120を取り囲むようにガス発生剤120とガス排出孔11との間に配置されている。フィルタ6は、軸方向の両端面のうち、一端面(符号61で示す上端面)が上部シェル2の天板部22における天壁部221に当接して支持され、他端面(符号62で示す下端面)が下部シェル3の底板部32における底壁部321に当接して支持されている。これにより、フィルタ6の軸方向がハウジング1の軸方向(即ち、周壁部の軸方向)と平行となっている。
【0034】
このフィルタ6には複数の孔が形成されていることから、燃焼室10に配置されたガス発生剤120の燃焼ガスがフィルタ6を通過可能となっている。フィルタ6は、燃焼ガスがフィルタ6を通過する際に、燃焼ガスの熱を奪い取ることで当該燃焼ガスを冷却する。また、フィルタ6は、上述の燃焼ガスの冷却機能に加え、燃焼ガスに含まれる燃焼残渣を捕集することで当該燃焼ガスを濾過する機能も有する。なお、
図1中、符号63はフィルタ6の内周面を示し、符号64はフィルタ6の外周面を示す。
【0035】
図3(A)は、
図1におけるA-A断面図である。また、
図3(B)は、
図1におけるB-B断面図である。
図3(B)では、便宜上、点火装置4を簡略化して図示している。ここで、フィルタ6のうち、上端面61を含む上端部610は、本開示に係る「第1端部」に相当し、下端面62を含む端部を下端部620は、本開示に係る「第2端部」に相当する。このとき、
図1及び
図3(A)に示すように、ガス発生器100では、上端部61
0におけるフィルタ6の外周面64が段差部222の内周面222aに当接している。つまり、段差部222が上端部610に対して径方向外側から当接している。フィルタ6の上端部610と段差部222との当接状態は、フィルタ6の周方向の全周に亘って形成されている。また、
図1及び
図3(B)に示すように、ガス発生器100では、下端部620におけるフィルタ6の外周面64が段差部322の内周面322aに当接している。つまり、段差部322が下端部620に対して径方向外側から当接している。フィルタ6の下端部620と段差部322との当接状態は、フィルタ6の周方向の全周に亘って形成されている。
【0036】
図1及び
図3(A)に示すように、上端部610には、符号D1で示す密部が形成されている。密部D1は、フィルタ6の一部の部位であって、フィルタ6における他の部位よりも充填率の高い部位である。ここで、フィルタのある部位における金属材料の充填率とは、当該部位において金属材料が占める体積の割合のことを指す。より詳細には、当該部位の外形から求められる体積に対する金属材料の体積の割合である。そのため、密部D1の充填率の方がフィルタ6における他の部位の充填率よりも高いということは、密部D1の方が他の部位よりもフィルタ6を構成する金属材料が密に詰まっていることを意味する。これにより、密部D1は、フィルタ6における他の部位よりも高い剛性を有する。また、密部D1は、金属材料が密に詰まっていることから、通気抵抗がフィルタ6の他の部位よりも高い部位でもある。上端部610の密部D1は、上端面61を含んで形成されている。また、
図1及び
図3(B)に示すように、下端部620にも、密部D1が形成されている。下端部620の密部D1は、下端面62を含んで形成されている。ここで、フィルタ6における密部D1を除く部位(即ち、上述の「他の部位」)を、本体部D2と称する。
図1では、密部D1と本体部D2との区別を、ハッチングパターンの違いにより表している。
【0037】
本例に係るフィルタ6は、多孔が形成された金属板を半径方向に重ね、半径方向及び軸方向に圧縮することで形成されている。フィルタ6の材料となる多孔金属板としては、エキスパンドメタル、ラスメタル、パンチングメタル等が例示される。本例では、
図2に示すように、密部D1の孔H1を本体部D2の孔H2よりも小さくすることで、密部D1を本体部D2よりも高充填率としている。なお、密部D1と本体部D2とを別々に成形し、これらを組み付けることでフィルタ6を形成してもよい。また、フィルタ6には、その他に針金を心棒に多層に巻いて形成された巻線タイプの構造のものを採用してもよい。本例では、密部D1における充填率と本体部D2における充填率が境界部を境に不連続に変わっており、密部D1における充填率は一定(一様)となっている。
【0038】
なお、本例では、フィルタ6の上端部610と天板部22の段差部222とが直接当接し、下端部620と底板部32の段差部322とが直接当接しているが、これらは直接当接しなくてもよい。例えば、フィルタ6の上端部610と段差部222との間、又はフィルタ6の下端部620と段差部322との間に、ガスケットなどのシール部材が介在していてもよい。また、段差部222や段差部322は、連続的な環状に形成されていなくともよく、断続的な環状に形成されていてもよい。
【0039】
[伝火薬]
伝火薬110としては、公知の黒色火薬の他、着火性が良く、ガス発生剤120よりも燃焼温度の高いガス発生剤を使用することができる。伝火薬110の燃焼温度は、1700~3000℃の範囲に設定することができる。このような伝火薬110としては、例えば、ニトログアニジン(34重量%)、硝酸ストロンチウム(56重量%)を含む、公知のものを用いることができる。また、伝火薬110には、例えば顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。
【0040】
[ガス発生剤]
ガス発生剤120には、比較的燃焼温度の低いガス発生剤を使用することができる。ガス発生剤120の燃焼温度は、1000~1700℃の範囲に設定することができる。このようなガス発生剤120としては、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物を含む、公知のものを用いることができる。また、ガス発生剤120には、例えば顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。
【0041】
[動作]
以下、実施形態1に係るガス発生器100の動作について説明する。まず、
図1を参照しながら説明する。センサ(図示せず)が衝撃を感知すると、一対の通電ピン412,412に着火電流が供給され、点火器41が作動する。すると、点火器41のカップ体411に収容された点火薬が燃焼し、その燃焼生成物である火炎や高温のガス等がカップ体411の外部に放出される。これにより、伝火室51に収容された伝火薬110が燃焼し、燃焼ガスが発生する。伝火薬110の燃焼ガスは、連通孔52を閉塞していたシールテープを破って連通孔52から伝火室51の外部へ放出される。すると、伝火薬110の燃焼ガスがガス発生剤120と接触し、ガス発生剤120が着火される。ガス発生剤120が燃焼することで、燃焼室10に高温・高圧の燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスがフィルタ6を通過することで、燃焼ガスが冷却され、燃焼残渣が捕集される。フィルタ6によって冷却及び濾過されたガス発生剤120の燃焼ガスは、間隙13を通り、ガス排出孔11を閉塞していたシールテープを破ってガス排出孔11からハウジング1の外部へと放出される。ガス発生剤120の燃焼ガスは、ハウジング1の外部へ放出された後に、エアバッグ(図示せず)内に流入する。エアバッグが膨張することで、乗員と堅い構造物の間にクッションが形成され、乗員が衝撃から保護される。
【0042】
[ショートパスの抑制について]
ところで、ガス発生器においては、ガス発生剤が燃焼して燃焼室に燃焼ガスが発生すると、燃焼ガスの圧力により、フィルタに対して径方向外側への荷重が作用する。仮に、径方向外側へ作用する荷重によりフィルタが変形することでフィルタの端部がハウジングから離れ、フィルタの端部とハウジングとの間に隙間が形成されると、燃焼ガスの一部がフィルタを通らずに当該隙間を通ってガス排出孔に至ることが懸念される。つまり、いわゆる「ショートパス」が発生する虞がある。
【0043】
図4は、ガス発生器100において点火装置4が作動し、ガス発生剤120の燃焼による径方向外側への荷重によりフィルタ6が変形した状態の一例を示す図である。上述のように、ガス発生器100では、段差部222が上端部610に対して径方向外側から当接している。これにより、
図4に示すように、上端部610は、段差部222によって、ガス発生剤120の燃焼による径方向外側への荷重に対して当接して支持される。より具体的には、段差部222は、ガス発生剤120の燃焼により作用する径方向外側への荷重によるフィルタ6のずれを規制するように、上端部610におけるフィルタ6の外周面64を当接して支持する、また、上述のように、フィルタ6の上端部610には、本体部D2よりも充填率の高い、即ち、他の部位よりも剛性が高く変形し難い密部D1が形成されている。この密部D1は、
図4に示すように、フィルタ6の上端部610における、ガス発生剤120の燃焼による径方向外側への荷重により段差部222と当接する部位に形成されている。そのため、ガス発生剤120の燃焼によって径方向外側への荷重がフィルタ6に作用すると、
図4に示すように上端部610の密部D1が段差部222に押し付けられることとなる。密部D1は本体部D2よりも変形し難いため、密部D1と段差部222との当接状態が維持される。同様に、ガス発生器100では、段差部322が下端部620に対して径方向外側から当接しているため、
図4に示すように、下端部620は、段差部322によって、ガス発生剤120の燃焼による径方向外側への荷重に対して当接して支
持される。より具体的には、段差部322は、ガス発生剤120の燃焼により作用する径方向外側への荷重によるフィルタ6のずれを規制するように、下端部620におけるフィルタ6の外周面64を当接して支持する。
図4に示すように、フィルタ6の下端部620における、ガス発生剤120の燃焼による径方向外側への荷重により段差部322と当接する部位にも、密部D1が形成されている。そのため、ガス発生剤120の燃焼によって径方向外側への荷重がフィルタ6に作用すると、
図4に示すように下端部620の密部D1が段差部322に押し付けられることとなり、密部D1と段差部322との当接状態が維持される。
【0044】
これにより、ガス発生剤120の燃焼によりフィルタ6が外側に撓むように変形することでフィルタ6の上端面61や下端面62がハウジング1から離れた場合であっても、上端部610の密部D1とハウジング1(天板部22)との当接状態、及び下端部620の密部D1とハウジング1(底板部32)との当接状態は維持される。その結果、フィルタ6の上端部610とハウジング1との当接状態、及びフィルタ6の下端部620とハウジング1との当接状態が維持され、ショートパスが抑制される。
【0045】
また、ガス発生器においては、ガス発生剤が燃焼して燃焼室に燃焼ガスが発生することにより、燃焼室を形成するハウジングの内圧が上昇すると、ハウジングが膨張するように変形する場合がある。つまり、ハウジングがその容積を増大させるように変形する場合がある。ここで、ガス発生器100のハウジング1は、天板部22と底板部32とを筒状の周壁部12のみによって接続した構造とし、周壁部12以外に天板部22と底板部32とを接続又は固定する部材を有しないため、周壁部12よりも天板部22や底板部32の方が大きく変形し易い傾向がある。
【0046】
図5は、ガス発生器100において点火装置4が作動し、ガス発生剤120の燃焼によりハウジング1が変形した状態の一例を示す図である。ハウジング1の内圧が上昇することで、ハウジング1に対して燃焼室10の外部側に向かって圧力が作用する。つまり、天板部22や底板部32には、フィルタ6の軸方向であって、天板部22や底板部32をフィルタ6の端面から離そうとする方向に圧力が作用する。これにより、
図5に示すように、天板部22は上側に膨らむように撓み、底板部32は下側に膨らむように撓む。ここで、
図1及び
図5に示すように、天板部22に形成された段差部222のフィルタ6の軸方向における高さ(突出量)をh1とし、底板部32に形成された段差部322のフィルタ6の軸方向における高さ(突出量)をh2とする。また、ガス発生器100の作動前の状態における段差部222と段差部322とのフィルタ6の軸方向における間隔をd1とし、ガス発生器100が作動した状態における段差部222と段差部322とのフィルタ6の軸方向における間隔をd2とする。ガス発生器100が作動すると、天板部22が上側に撓むことで段差部222が上側に変位し、底板部32が下側に撓むことで段差部322が下側に変位するため、段差部222と段差部322とのフィルタ6の軸方向における間隔は広がることとなる。そのため、d2>d1となる。ここで、ガス発生器100では、以下の関係式が成り立つようにh1及びh2が設定されている。
h1>(d2-d1)/2・・・・・(1)
h2>(d2-d1)/2・・・・・(2)
つまり、h1及びh2は、段差部222と段差部322とのフィルタ6の軸方向における間隔の増加量の1/2よりも大きくなるように設定されている。ここで、
図5では、天板部22の段差部222と底板部32の段差部322とが均等に(d2-d1)/2の変位量で変位し、フィルタ6が軸方向に変位していない(ずれていない)場合が示されている。ガス発生器100では、上述の式(1)及び式(2)が成立することで、
図5に示す場合において、天板部22の段差部222と上端部610との当接状態、及び底板部32の段差部322と下端部620との当接状態が維持され、ショートパスが抑制される。
【0047】
更に、ガス発生器100では、以下の関係式が成り立つようにh1及びh2が設定されている。
h1>d2-d1・・・・・(3)
h2>d2-d1・・・・・(4)
つまり、h1及びh2は、段差部222と段差部322とのフィルタ6の軸方向における間隔の増加量のよりも大きくなるように設定されている。ここで、
図6は、ガス発生器100において点火装置4が作動し、ガス発生剤120の燃焼によりハウジング1が変形した状態の一例を示す図である。
図6では、天板部22の段差部222と底板部32の段差部322とが均等に(d2-d1)/2の変位量で変位し、下端面62が底板部32の底壁部321に当接する位置までフィルタ6が軸方向下側に変位した(ずれた)場合が示されている。ガス発生器100では、上述の式(3)及び式(4)が成立することで、
図6に示す場合においても、段差部222と上端部610との当接状態、及び段差部322と下端部620との当接状態が維持され、ショートパスが抑制される。同様に、上端面61が天板部22の天壁部221に当接する位置までフィルタ6が軸方向上側に変位した(ずれた)場合においても、段差部222と上端部610との当接状態、及び段差部322と下端部620との当接状態が維持され、ショートパスが抑制される。
【0048】
[作用・効果]
以上のように、実施形態1に係るガス発生器100では、ガス発生剤120の燃焼による径方向外側への荷重に対して、フィルタ6は、その上端部610が天板部22に形成された段差部222によって当接して支持され、その下端部620が底板部32に形成された段差部322によって当接して支持されている。そして、フィルタ6の上端部610における天板部22の段差部222と当接する部位と、下端部620における底板部32の段差部322と当接する部位には、フィルタ6の一部の部位であってフィルタ6における他の部位よりも充填率の高い密部D1が形成されている。
【0049】
このようなガス発生器100によると、ガス発生剤120の燃焼によって作用する径方向外側への荷重によりフィルタ6が外側に撓むように変形した場合であっても、上端部610の密部D1とハウジング1との当接状態を維持させ、下端部620の密部D1とハウジング1との当接状態を維持させることができる。これにより、ガス発生剤120が燃焼したときに、フィルタ6の上端部610とハウジング1との当接状態、及びフィルタ6の下端部620とハウジング1との当接状態を維持することができ、その結果、ショートパスを抑制できる。なお、本例では、ガス発生器の作動前からフィルタ端部と保持部が当接している場合について説明したが、本開示では、フィルタ端部と保持部は、少なくともガス発生器の作動時(つまり、点火部の作動時)に当接すればよい。つまり、ガス発生器の作動前にフィルタ端部と保持部との間に僅かなクリアランスが形成されていてもよい。密部は、フィルタ端部におけるガス発生器の作動時に径方向外側への荷重により保持部と当接する部位に形成されていればよい。これにより、ショートパスの抑制効果が得られる。
【0050】
特に、ガス発生器100では、フィルタ6の上端部610の密部D1に上端面61を含ませ、フィルタ6の下端部620の密部D1に下端面62を含ませることで、上端面61と下端面62とを変形し難くしている。これにより、上端面61が変形して上端面61と天板部22との間に隙間が生じることや下端面62が変形して下端面62と底板部32との間に隙間が生じることが抑制されている。その結果、より好適にショートパスを抑制できる。また、密部D1における充填率が一定(一様)であることから、密部D1がハウジング1の段差部に対してほぼ均等に当接し、当接斑などが発生しない。これにより、ショートパス防止効果が密部D1において均等に発現される。
【0051】
更に、ガス発生器100では、ガス発生剤120の燃焼により天板部22と底板部32との間隔が広がる場合に、天板部22の段差部222とフィルタ6の上端部610との当
接状態、及び底板部32の段差部322とフィルタ6の下端部620との当接状態が維持されるように、段差部222の高さh1及び段差部322の高さh2が設定されている。これにより、ガス発生剤120の燃焼により天板部22と底板部32との間隔が広がる場合であっても、ショートパスを抑制できる。
【0052】
また、ガス発生器100では、フィルタ6の上端部610と天板部22の段差部222との当接状態がフィルタ6の周方向の全周に亘って形成され、フィルタ6の上端部610と天板部22の段差部222との当接状態がフィルタ6の周方向の全周に亘って形成されている。これにより、より好適にショートパスを抑制できる。
【0053】
なお、本例では、フィルタにおける第1端部(本例の上端部610)と第2端部(本例の下端部620)との両方が、ハウジングに形成された保持部(本例の段差部)によって当接して支持され、保持部との当接部位に密部D1を有する場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。本開示は、フィルタにおける第1端部と第2端部とのうちの少なくとも何れか一方が、ハウジングに形成された保持部によって当接して支持され、保持部との当接部位に密部を有していればよい。また、第1部材(本例の天板部22)と第2部材(本例の底板部32)とのうちの一方のみに保持部としての段差部が形成されていてもよい。
【0054】
ここで、ガス発生器においてガス発生剤が燃焼するとき、フィルタの両端部のうちガス排出孔により近い端部の方が、通過する燃焼ガスの流速が速くなる傾向がある。つまり、フィルタの両端部のうちガス排出孔により近い端部の方が、ガス発生剤の燃焼により径方向外側へ作用する荷重が大きくなりがちとなる。そのため、フィルタの両端部のうち、少なくともガス排出孔により近い方が保持部によって当接して支持され、保持部との当接部位に高充填率を有することが好ましい。これにより、フィルタの両端部のうち、より大きな荷重が作用する端部におけるショートパスを好適に抑制できる。本例では、フィルタ6の上端部610と下端部620とのうち、少なくともガス排出孔11により近い方である上端部610を段差部222によって当接して支持し、上端部610と段差部222との当接部位に密部D1を形成することで、上端部610におけるショートパスを好適に抑制している。
【0055】
[実施形態1の変形例]
以下、実施形態1の変形例に係るガス発生器について説明する。変形例の説明では、
図1~
図6で説明したガス発生器100との相違点を中心に説明し、ガス発生器100と同様の点については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。以下、
図7~
図13で説明する実施形態1の変形例1~7に係るガス発生器100A~Gは、ガス発生器100と同様に、上部シェル2と下部シェル3を接合する箇所は、接合部23,33のみであり、周壁部以外に天板部と底板部とを接続又は固定する部材を有しない。
【0056】
[実施形態1の変形例1]
図7は、実施形態1の変形例1に係るガス発生器100Aの軸方向断面図である。
図7では、ガス発生器100Aの作動前の状態が示されている。
図7に示すように、ガス発生器100Aのフィルタ6Aは、上端部610の密部D1と下端部620の密部D1において、孔を有さない無孔部N1を含む。無孔部N1には、フィルタを構成する金属材料が空隙を形成せずに詰まっている。そのため、無孔部N1は、密部D1における他の部位よりも高い充填率、ひいては高い剛性を有し、より変形し難くなっている。このような無孔部N1を密部D1に形成することで、ガス発生剤120が燃焼したときに密部D1とハウジング1との当接状態をより確りと維持させることができる。その結果、より好適にショートパスを抑制できる。特に、
図7に示すように、ガス発生器100Aでは、フィルタ6Aの上端部610の無孔部N1に上端面61を含ませ、下端部620の無孔部N1に下端面
62を含ませることで、上端面61と下端面62とをより変形し難くしている。これにより、上端面61や下端面62の変形により上端面61や下端面62とハウジング1との間に隙間が生じることをより好適に抑制し、その結果、より好適にショートパスを抑制できる。また、無孔部N1と密部D1における無孔部N1を除く部位は、境界部を境にその充填率が不連続に変わっており、無孔部N1における充填率は一定(一様)である。これにより、無孔部N1でのショートパス防止効果を均等に発現することができる。
【0057】
[実施形態1の変形例2]
図8は、実施形態1の変形例2に係るガス発生器100Bの軸方向断面図である。
図8では、ガス発生器100Bの作動前の状態が示されている。
図8に示すように、ガス発生器100Bのフィルタ6Bでは、密部D1がフィルタの端面(上端面61、下端面62)を含まない位置に形成されている。このガス発生器100Bのように、本開示では、密部は、フィルタの端部における保持部(本例では段差部)と当接する部位に形成されていればよく、フィルタの端面を含まなくともよい。
【0058】
[実施形態1の変形例3]
図9は、実施形態1の変形例3に係るガス発生器100Cの軸方向断面図である。
図9では、ガス発生器100Cの作動前の状態が示されている。
図9に示すように、ガス発生器100Cのフィルタ6Cでは、密部D1がフィルタ6Cの内周面63側と外周面64側とのうち、外周面64側にのみ露出している。つまり、ガス発生器100Cでは、フィルタ6Cの上端部610及び下端部620において、段差部222及び段差部322と当接する側にのみ密部D1が露出するように、密部D1を形成している。これにより、ガス発生剤120が燃焼したときに密部D1とハウジング1との当接状態を維持させてショートパスを抑制しつつも、フィルタ6Cの全体に対する密部D1の占める割合を小さく抑え、本体部D2の占める割合を大きくすることができる。そのため、フィルタ6Cの燃焼ガスの冷却機能及び濾過機能を大きく確保することができる。また、フィルタ6Cの軽量化や材料コストの低減に資することもできる。
【0059】
[実施形態1の変形例4]
図10は、実施形態1の変形例4に係るガス発生器100Dの軸方向断面図である。
図10では、ガス発生器100Dの作動前の状態が示されている。
図10に示すように、ガス発生器100Dでは、段差部に代えて符号223、323で示す突出壁が保持部として形成されている点で、ガス発生器100と主に相違する。突出壁223及び突出壁323は、本開示に係る「突起部」に相当する。
【0060】
図10に示すように、ガス発生器100Dの天板部22Dには、環状の突出壁223が天壁部221からフィルタ6の軸方向において燃焼室10の内部側(即ち、下側)に向かって突出している。同様に、ガス発生器100Dの底板部32Dには、環状の突出壁323が底壁部321からフィルタ6の軸方向において燃焼室10の内部側(即ち、上側)に向かって突出している。
【0061】
図10に示すように、ガス発生器100Dでは、上端部610におけるフィルタ6の外周面64が突出壁223の内周面223aに当接し、下端部620におけるフィルタ6の外周面64が突出壁323の内周面323aに当接している。つまり、突出壁223が上端部610に対して径方向外側から当接し、突出壁323が下端部620に対して径方向外側から当接している。これにより、上端部610は突出壁223によって、下端部620は突出壁323によって、それぞれ、ガス発生剤120の燃焼による径方向外側への荷重に対して当接して支持される。より具体的には、突出壁223及び突出壁323は、ガス発生剤120の燃焼により作用する径方向外側への荷重によるフィルタ6のずれを規制するように、フィルタ6の端部における外周面64を当接して支持する。そして、フィル
タ6の上端部610における突出壁223との当接部位と、下端部620における突出壁323との当接部位には、密部D1が形成されている。
【0062】
このようなガス発生器100Dによっても、ガス発生剤120が燃焼したときに密部D1とハウジング1とを当接させることで、フィルタ6の端部とハウジング1との当接状態を維持することができ、ショートパスを抑制できる。なお、本例では、突出壁223が上部シェル2の一部として天壁部221と共に一体に形成され、突出壁323が下部シェル3の一部として底壁部321と一体に形成されている。このような上部シェル2や下部シェル3は、鍛造や切削加工によって好適に製造することができる。
【0063】
[実施形態1の変形例5]
図11は、実施形態1の変形例5に係るガス発生器100Eの軸方向断面図である。
図11では、ガス発生器100Eの作動前の状態が示されている。
図11に示すように、ガス発生器100Eでは、段差部に代えて符号224、324で示す突出片が保持部として取り付けられている点で、ガス発生器100と主に相違する。突出片224及び突出片324は、本開示に係る「突起部」に相当する。
【0064】
図11に示すように、突出片224は、環状の部材であり、フィルタ6の軸方向において天壁部221から燃焼室10の内部側(即ち、下側)に向かって突出するように、天板部22Eに取り付けられている。突出片224は、L字状の断面形状を有しており、その一端が上側周壁部21に接続され、他端が天壁部221に接続されている。同様に、突出片324も、環状の部材であり、フィルタ6の軸方向において底壁部321から燃焼室10の内部側(即ち、上側)に向かって突出するように、底板部32Eに取り付けられている。突出片324も、L字状の断面形状を有しており、その一端が下側周壁部31に接続され、他端が底壁部321に接続されている。
【0065】
また、
図11に示すように、ガス発生器100Eでは、上端部610におけるフィルタ6の外周面64が突出片224の内周面224aに当接し、下端部620におけるフィルタ6の外周面64が突出片324の内周面324aに当接している。つまり、突出片224が上端部610に対して径方向外側から当接し、突出片324が下端部620に対して径方向外側から当接している。これにより、突出片224及び突出片324は、ガス発生剤120の燃焼により作用する径方向外側への荷重によるフィルタ6のずれを規制するように、フィルタ6の端部における外周面64を当接して支持する。そして、フィルタ6の上端部610における突出片224との当接部位と、下端部620における突出片324との当接部位には、密部D1が形成されている。
【0066】
このようなガス発生器100Eによっても、ガス発生器100Dと同様に、ショートパスを抑制できる。なお、本例では、突出片224が上部シェル2における他の部位とは別体の部材として形成され、突出片324が下部シェル3における他の部位とは別体の部材として形成され、それぞれ取り付けられている。このような上部シェル2や下部シェル3は、突出片以外の部位をプレス成形し、これに突出片を組み付けることで、好適に製造することができる。更に、突出片224と天板部22E、および突出片324と底板部32Eとは周方向に連続して溶接固定されていると、より一層ショートパスの抑制効果が高まる。
【0067】
[実施形態1の変形例6]
図12は、実施形態1の変形例6に係るガス発生器100Fの軸方向断面図である。
図12では、ガス発生器100Fの作動前の状態が示されている。
図12に示すように、ガス発生器100Fでは、段差部に代えて符号225、325で示す傾斜部が保持部として形成されている点で、ガス発生器100と主に相違する。
【0068】
図12に示すように、ガス発生器100Fの天板部22Fには、上側周壁部21に繋がると共にフィルタ6Fの軸方向において燃焼室10の外部側(即ち、上側)に向かうに従って縮径するように傾斜した環状の傾斜部が形成されている。同様に、ガス発生器100Fの底板部32Fには、下側周壁部31に繋がると共にフィルタ6Fの軸方向において燃焼室10の外部側(即ち、下側)に向かうに従って縮径するように傾斜した環状の傾斜部が形成されている。
【0069】
ガス発生器100Fのフィルタ6Fは、天板部22Fの傾斜部225によって上端面61が当接して支持され、天板部22Fの傾斜部225によって上端面61が当接して支持されている。フィルタ6Fの上端面61は、傾斜部225の内周面225aに沿うように、先端に向かうに従って縮径するように傾斜している。また、フィルタ6Fの下端面62は、傾斜部325の内周面325aに沿うように、先端に向かうに従って縮径するように傾斜している。つまり、傾斜部225が上端部610に対して径方向外側から当接し、傾斜部325が下端部620に対して径方向外側から当接している。これにより、上端部610は傾斜部225によって、下端部620は傾斜部325によって、それぞれ、ガス発生剤120の燃焼による径方向外側への荷重に対して当接して支持される。つまり、ガス発生剤120の燃焼により作用する径方向外側への荷重によるフィルタ6Fのずれが規制されるように、傾斜部225と上端部610との当接状態及び傾斜部325と下端部620との当接状態が形成されている。そして、フィルタ6Fの上端部610における傾斜部225との当接部位と、下端部620における傾斜部325との当接部位には、密部D1が形成されている。
【0070】
このようなガス発生器100Fによっても、ガス発生剤120が燃焼したときに密部D1とハウジング1とを当接させることで、フィルタ6Fの端部とハウジング1との当接状態を維持することができる。その結果、ショートパスを抑制できる。
【0071】
なお、ガス発生器100Fのフィルタ6Fは、径方向の内側から外側に向かう従って軸方向の長さ(高さ)が短くなるように形成されている。このようなフィルタ6Fは、例えば、長手方向の一端が他端よりも幅の小さい長尺状の多孔金属板を、幅の大きい方の端から巻くことで製造することができる。
【0072】
[実施形態1の変形例7]
図13は、実施形態1の変形例7に係るガス発生器100Gの軸方向断面図である。
図13では、ガス発生器100Gの作動前の状態が示されている。
図13に示すように、ガス発生器100Gでは、段差部に代えて周壁部12の一部が保持部として形成されている点で、ガス発生器100と主に相違する。
【0073】
図13に示すように、ガス発生器100Gの天板部22Gには段差部が形成されておらず、天壁部221が上側周壁部21に繋がっている。同様に、ガス発生器100Gの底板部32Gにも段差部が形成されておらず、底壁部321が下側周壁部31に繋がっている。
【0074】
また、ガス発生器100Gのフィルタ6Gは、上端部610において、径方向外側に突出した突出部611を有する。突出部611は、上側周壁部21の内周面21aに当接している。更に、フィルタ6Gは、下端部620において、径方向外側に突出した突出部621を有する。突出部621は、下側周壁部31の内周面31aに当接している。つまり、上側周壁部21が上端部610に対して径方向外側から当接し、下側周壁部31が下端部620に対して径方向外側から当接している。これにより、上端部610は上側周壁部21によって、下端部620は下側周壁部31によって、それぞれ、ガス発生剤120の
燃焼による径方向外側への荷重に対して当接して支持される。つまり、ガス発生剤120の燃焼により作用する径方向外側への荷重によるフィルタ6Gのずれが規制されるように、上側周壁部21と上端部610との当接状態及び下側周壁部31と下端部620との当接状態が形成されている。この、上側周壁部21における突出部611に当接する部位、及び下側周壁部31における突出部621に当接する部位は、本開示に係る「保持部」に相当する。そして、フィルタ6Gの上端部610における上側周壁部21との当接部位である突出部611と、下端部620における下側周壁部31との当接部位である突出部621には、密部D1が形成されている。
【0075】
このようなガス発生器100Gによっても、ガス発生剤120が燃焼したときに密部D1とハウジング1とを当接させることで、フィルタ6Gの端部とハウジング1との当接状態を維持することができる。その結果、ショートパスを抑制できる。また、フィルタ6Gに形成された突出部611及び突出部621と周壁部12とによって当接状態を形成するため、ハウジング1の形状を簡略化できる。
【0076】
ここで、ガス発生器100Gのフィルタ6Gは、密部D1と本体部D2とを別々に成形し、これらを組み付けることで形成されている。
図13に示すように、フィルタ6Gの上端部610の密部D1と本体部D2との境界部B1は、上端面61に向かうに従って縮径するように傾斜した面となっている。同様に、フィルタ6Gの下端部620の密部D1と本体部D2との境界部B1は、下端面62に向かうに従って縮径するように傾斜した面となっている。そのため、本体部D2は、径方向外側への荷重に対して密部D1によって支持される。これにより、ガス発生剤120の燃焼により作用する径方向外側への荷重による本体部D2のずれが規制される。その結果、ガス発生剤120が燃焼するときに密部D1と本体部D2とが分離することを抑制できる。なお、密部D1と本体部D2との境界部B1は、
図13に示すような傾斜面に限定されず、ステップ状に形成されていてもよい。
【0077】
<実施形態2>
図14は、実施形態2に係るガス発生器200の軸方向断面図である。
図14では、ガス発生器200の作動前の状態が示されている。以下、実施形態2に係るガス発生器200について、実施形態1に係るガス発生器100との相違点を中心に説明し、ガス発生器100と同様の点については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。実施形態2に係るガス発生器200は、実施形態1に係るガス発生器100と同様に、周壁部以外に天板部と底板部とを接続又は固定する部材を有しない。
【0078】
図14に示すように、ガス発生器200は、第1点火装置4Xと、第2点火装置4Yと、内筒部材5Hと、フィルタ6と、伝火薬110と、第1ガス発生剤120Xと、第2ガス発生剤120Yと、これらを収容するハウジング1Hと、を備えている。ガス発生器200は、点火装置を2つ備えた、いわゆるデュアルタイプのガス発生器として構成されている。ガス発生器200では、第1点火装置4Xが本開示に係る「点火部」に相当する。また、ガス発生器200は、第1点火装置4Xの作動により第1ガス発生剤120Xを燃焼させ、第2点火装置4Yの作動により第2ガス発生剤120Yを燃焼させることで、比較的多量の燃焼ガスをガス排出孔11から放出するように構成されている。ガス発生器200では、第2点火装置4Yは、第1点火装置4Xとは独立して作動するものであり、作動する場合には第1点火装置4Xの作動時以降の所定のタイミングで作動する。
【0079】
図14に示すように、実施形態2に係るハウジング1Hは、ハウジング1Hの内部空間を第1燃焼室10Xと第2燃焼室10Yとに隔てると共にフィルタ6の下端面62を当接して支持する、隔壁部14を有する。隔壁部14は、フィルタ6の軸方向において、天板部22と底板部32との間に設けられている。つまり、隔壁部14は、周壁部12の一端側に設けられた天板部22に対して周壁部12の他端側に設けられている。天板部22と
隔壁部14と周壁部12とによって、第1燃焼室10Xが画定されている。また、隔壁部14と底板部32と周壁部12とによって、第2燃焼室10Yが画定されている。ガス発生器200では、天板部22が本開示に係る「第1部材」に相当し、隔壁部14が本開示に係る「第2部材」に相当する。第1燃焼室10Xには、第1点火装置4Xの作動により燃焼する第1ガス発生剤120Xが収容され、第2燃焼室10Yには、第2点火装置4Yの作動により燃焼する第2ガス発生剤120Yが収容される。第1燃焼室10Xは、本開示に係る「燃焼室」に相当し、第1ガス発生剤120Xは、本開示に係る「ガス発生剤」に相当する。
【0080】
隔壁部14は、分割壁部141と嵌合壁部142と終端部143を含む。分割壁部141は、第1燃焼室10Xの下端を画定する部位であり、フィルタ6の軸方向と直交するように、フィルタ6の径方向に延在している。分割壁部141には、内筒部材5が貫通する孔である貫通孔14aが形成されている。嵌合壁部142は、下部シェル3の下側周壁部31に嵌合する筒状の部位であり、分割壁部141の周縁からフィルタ6の軸方向に沿って第1燃焼室10Xの内部側(即ち、上側)に延びている。終端部143は、下部シェル3の下側周壁部31の上端に載置される環状の部位であり、嵌合壁部142の上端から径方向外側に延びている。
【0081】
実施形態2に係る内筒部材5Hは、底板部32に固定された第1点火装置4Xを取り囲むようにして底板部32から天板部22に向かって延び、隔壁部14の貫通孔14aを貫通し、その端部が開口している。そのため、内筒部材5Hの内側の空間が第1燃焼室10Xに含まれ、第1点火装置4Xが第1燃焼室10Xに配置された状態となっている。また、内筒部材5Hの内側には、その内部空間を上下に仕切る、仕切部材P1が配置されている。これにより、内筒部材5の内部空間のうち、仕切部材P1よりも下側(第1点火装置4X側)の空間は、伝火室51として形成されている。伝火室51には、伝火薬110が、第1ガス発生剤120Xと混在することなく収容されている。仕切部材P1は、伝火薬110の燃焼ガスによる第1ガス発生剤120Xの着火を妨げないように、伝火薬110の燃焼ガスにより速やかに燃焼、溶融あるいは消滅する材料で形成されている。また、内筒部材5Hには、内筒部材5Hの内部空間(ひいては、第1燃焼室10X)と第2燃焼室10Yとを連通する連通孔52が複数形成されている。連通孔52は、第2点火装置4Yが作動する前の状態では、シールテープ(図示なし)により閉塞されている。
【0082】
図14に示すように、ガス発生器200では、フィルタ6は、上端面61が天板部22に当接して支持され、下端面62が隔壁部14における分割壁部141に当接して支持されるように、第1燃焼室10Xに配置されている。また、ガス発生器200では、天板部22の段差部222が上端部610に対して径方向外側から当接し、隔壁部14の嵌合壁部142が下端部620に対して径方向外側から当接している。これにより、フィルタ6の上端部610は段差部222によって、下端部620は嵌合壁部142によって、それぞれ、ガス発生剤120の燃焼による径方向外側への荷重に対して当接して支持される。ガス発生器200では、段差部222及び嵌合壁部142が、本開示に係る「保持部」に相当する。そして、フィルタ6の上端部610における段差部222との当接部位と、下端部620における嵌合壁部142との当接部位には、密部D1が形成されている。
【0083】
このようなガス発生器200が作動する場合、まず、第1点火装置4Xが作動し、第1燃焼室10Xの伝火室51に収容された伝火薬110が燃焼し、その燃焼ガスが発生する。第1伝火薬111の燃焼ガスによって仕切部材P1が燃焼し、除去されることで、該燃焼ガスが第1ガス発生剤120Xと接触し、第1ガス発生剤120Xが着火される。第1ガス発生剤120Xが燃焼することで、第1燃焼室10Xに燃焼ガスが生成される。第1ガス発生剤120Xの燃焼ガスは、フィルタ6を通過し、ガス排出孔11からハウジング1の外部へと放出される。次に、第2点火装置4Yが作動し、第2燃焼室10Yに収容さ
れた第2ガス発生剤120Yが燃焼し、その燃焼ガスが発生する。第2ガス発生剤120Yの燃焼ガスは、連通孔52を閉塞していたシールテープを破って連通孔52から第1燃焼室10Xへ流れ込み、フィルタ6を通過し、ガス排出孔11を閉塞していたシールテープを破ってガス排出孔11からハウジング1Hの外部へと放出される。
【0084】
実施形態2に係るガス発生器200では、第1ガス発生剤120Xや第2ガス発生剤120Yの燃焼によって径方向外側への荷重がフィルタ6に作用すると、上端部610の密部D1が段差部222に押し付けられ、下端部620の密部D1が嵌合壁部142に押し付けられることとなる。これにより、密部D1とハウジング1Hとが当接し、フィルタ6の端部とハウジング1Hとの当接状態を維持することができる。その結果、ショートパスを抑制できる。
【0085】
<その他>
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0086】
100,200 ガス発生器
1 ハウジング
11 ガス排出孔
12 周壁部
14 隔壁部(第2部材の一例)
142 段差部
2 上部シェル
22 天板部(第1部材の一例)
222 段差部(保持部の一例)
3 下部シェル
32 底板部(第2部材の一例)
322 段差部(保持部の一例)
4 点火装置(点火部の一例)
5 内筒部材
6 フィルタ
61 上端面(フィルタの一端面)
62 下端面(フィルタの他端面)
64 フィルタの外周面
610 上端部(第1端部)
620 下端部(第2端部)
10 燃焼室
120 ガス発生剤
D1 密部
N1 無孔部