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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】金属化フィルムの検査方法及び検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
G01N21/956 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020018609
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021124414
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】笹井 浩之
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-305718(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107389691(CN,A)
【文献】特開昭62-262192(JP,A)
【文献】特開2010-145145(JP,A)
【文献】特開2001-74414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
G06T 1/00 - G06T 1/40
G06T 3/00 - G06T 7/90
G06V 10/00 - G06V 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着部と非蒸着部とを備えるフィルムコンデンサ用金属化フィルムの検査方法であって、
検査対象の金属化フィルムを撮像して画像を得るステップと、
撮像された画像に対してパターンマッチング処理を実行し、基準画像に対応する領域を切り出すステップと、
切り出された切り出し画像から輝度変化点を示す第1エッジ画像を生成するステップと、
前記基準画像の非蒸着部を収縮させた収縮非蒸着部を含むマスク画像を生成するステップと、
前記第1エッジ画像と前記マスク画像とを重ね合わせ、前記収縮非蒸着部と重なる部分の輝度変化点のみを表す第2エッジ画像を生成するステップと、
前記第2エッジ画像からノイズを除去したノイズ除去画像を生成するステップと、
前記ノイズ除去画像の輝度変化点の大きさを算出して限度値と照合し、良否判定をするステップと、
を備える金属化フィルムの検査方法。
【請求項2】
蒸着部と非蒸着部とを備えるフィルムコンデンサ用金属化フィルムの検査装置であって、
検査対象の金属化フィルムを撮像して画像を得る撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像に対してパターンマッチング処理を実行し、基準画像に対応する領域を切り出す検出部と、
前記検出部で切り出された切り出し画像から輝度変化点を示す第1エッジ画像を生成する第1生成部と、
前記基準画像の非蒸着部を収縮させた収縮非蒸着部を含むマスク画像を生成するマスク画像生成部と、
前記第1エッジ画像と前記マスク画像とを重ね合わせ、前記収縮非蒸着部と重なる部分の輝度変化点のみを表す第2エッジ画像を生成する第2生成部と、
前記第2エッジ画像からノイズを除去したノイズ除去画像を生成するノイズ除去部と、
前記ノイズ除去画像の輝度変化点の大きさを算出して限度値と照合し、良否判定をする判定部と、
を備える金属化フィルムの検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属化フィルムの検査方法及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムコンデンサに使用される一般的な金属化フィルムには、金属を蒸着させた蒸着部からなる電極部に、金属を蒸着していない非蒸着部で囲まれた小電極部が形成されている。そして、互いに隣接する小電極部同士は、ヒューズ部分となる狭隘部を介して適宜電気的に接続されている。
【0003】
ところで、擦れや傷等によって生じた金属粉が非蒸着部に付着すると、その部分が導通し短絡する可能性がある。そのため、従来、検査員による目視検査が行われていた。ただ、検査員の主観的な判定に頼るところが多く、良否の一貫性確保が難しく、製品の品質の安定にも関わっていた。また、微細な欠陥であるため、判定自体が難しく、見逃してしまう可能性もあった。
【0004】
特許文献1には目視によらないフィルムの検査方法が開示されている。特許文献1では、ロール状に巻回されたテープ状物を繰り出し、巻き取る間に上下のカメラで基準点を撮像し、そのデータを基に上下の導通検査器の停止位置を補正した後、電極パターンの導通検査を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-249738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の方法を金属化フィルムに適用しようとした場合、ヒューズ部分となる狭隘部を剥離して小電極部を電気的に絶縁する必要があり、自動化は困難である。また、このような方式は、最終的には導通検査器(プローブ等)を検査対象物に接触させて検査を実施するため、金属化フィルムが傷ついてしまう可能性がある。そのため、製品には適用できず、検査箇所が限られてしまうという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、金属化フィルムの短絡箇所を非接触で検査する方法及び検査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金属化フィルムの検査方法は、蒸着部11Aと非蒸着部12Aとを備えるフィルムコンデンサ用金属化フィルム10Aの検査方法であって、検査対象の金属化フィルム10Aを撮像して画像を得るステップ(S31)と、撮像された画像に対してパターンマッチング処理を実行し、基準画像13に対応する領域を切り出すステップ(S32~S35)と、切り出された切り出し画像15から輝度変化点を示す第1エッジ画像16を生成するステップ(S36)と、前記基準画像13の非蒸着部12を収縮させた収縮非蒸着部12Bを含むマスク画像14を生成するステップ(S21~S22)と、前記第1エッジ画像16と前記マスク画像14とを重ね合わせ、前記収縮非蒸着部12Bと重なる部分の輝度変化点のみを表す第2エッジ画像17を生成するステップ(S37)と、前記第2エッジ画像17からノイズを除去したノイズ除去画像18を生成するステップ(S38)と、前記ノイズ除去画像18の輝度変化点の大きさを算出して限度値と照合し、良否判定をするステップ(S39)とを備えることを特徴としている。
【0009】
本発明の金属化フィルムの検査装置1は、蒸着部11Aと非蒸着部12Aとを備えるフィルムコンデンサ用金属化フィルム10Aの検査装置であって、検査対象の金属化フィルム10Aを撮像して画像を得る撮像部3と、前記撮像部3で撮像された画像に対してパターンマッチング処理を実行し、基準画像13に対応する領域を切り出す検出部71と、前記検出部71で切り出された切り出し画像15から輝度変化点を示す第1エッジ画像16を生成する第1生成部74と、前記基準画像13の非蒸着部12を収縮させた収縮非蒸着部12Bを含むマスク画像14を生成するマスク画像生成部6と、前記第1エッジ画像16と前記マスク画像14とを重ね合わせ、前記収縮非蒸着部12Bと重なる部分の輝度変化点のみを表す第2エッジ画像17を生成する第2生成部75と、前記第2エッジ画像17からノイズを除去したノイズ除去画像18を生成するノイズ除去部76と、前記ノイズ除去画像18の輝度変化点の大きさを算出して限度値と照合し、良否判定をする判定部77とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の金属化フィルムの検査方法及び検査装置では、輝度変化点に基づいて短絡箇所を検出することができ、非接触での検査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の一実施形態の金属化フィルムの検査装置を示す図である。
図2】金属化フィルムを示す図である。
図3】基準画像生成工程のフローチャートである。
図4】マスク画像生成工程のフローチャートである。
図5】良否判定工程のフローチャートである。
図6図6aは基準画像を示す図、図6bはマスク画像を示す図である。
図7図7aは撮像された被検査体の画像を示す図、図7bは輝度変化点を示す第1エッジ画像を示す図、図7cは第1エッジ画像とマスク画像とを重ね合わせてなる第2エッジ画像を示す図、図7dは第2エッジ画像からノイズを除去したノイズ除去画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明の金属化フィルムの検査装置の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の検査装置1は、図1に示すように、金属化フィルム10(10A)に光を照射する照明部2と、照明部2からの光で照射された金属化フィルム10(10A)を撮像して画像を得る撮像部3と、撮像部3で撮像された画像に基づいて金属化フィルム10Aの良否判定を行う良否判定部4とを備えている。
【0013】
(金属化フィルム)
金属化フィルム10(10A)は、誘電体フィルム上に金属を蒸着したものであって、図2に示すように、金属が蒸着された蒸着部11(11A)と、金属が蒸着されていない非蒸着部12(12A)とを備えている。なお、図2は良品の金属化フィルム10と、検査対象の金属化フィルム10Aの両方を示している。そこで区別のために、検査対象の金属化フィルム10Aの蒸着部、非蒸着部にはAの添え字を付している。非蒸着部12(12A)の形状は略T字状や直線状とされているが、例えば十字状、クロス状、斜線等、種々の形状を採用し得る。なお、誘電体フィルムの厚みは例えば2~15μm、蒸着部11(11A)の厚みは例えば0.02~10μm、非蒸着部12(12A)の幅は例えば0.2~10mmである。
【0014】
(照明部)
照明部2は、LED(発光ダイオード)や蛍光灯、ハロゲンランプやメタルハライドランプ等の光源上にガラス等の光透過性の載置面を設けた透過照明台であって、載置面上に金属化フィルム10、10Aを載置できるようになっている。なお、光源としては、可視光に限らず、赤外線や紫外線などの不可視光線を照射するものであってもよい。
【0015】
(撮像部)
撮像部3は、撮影レンズと撮像素子とを備えたカメラであって、例えば撮像指示の入力や画像の出力を行うためのUSB端子を備えたUSBカメラである。画素数は例えば640×480であるが、金属化フィルム10、10Aに合わせて適宜変更可能である。
【0016】
(良否判定部)
良否判定部4は、撮像部3で撮像された良品の画像に基づいて基準画像13を生成する基準画像生成部5と、基準画像13に基づいてマスク画像14を生成するマスク画像生成部6と、基準画像13とマスク画像14とを用いて金属化フィルム10Aの良否判定を行う第1判定部7とを備えている。
【0017】
なお、このような良否判定部4は、演算部(CPU)、記憶部(不揮発性メモリ、揮発性メモリ、記憶デバイス)、表示部(ディスプレイ)、インターフェース(キーボード、マウス)等を備えた一般的なコンピュータによって実現できる。記憶部には良否判定プログラムが格納されており、これに従って良否判定が行われる。また、記憶部は後述の第1記憶部55や第2記憶部63を兼ねてもよい。
【0018】
(基準画像生成部)
基準画像生成部5は、撮像された良品の画像のノイズを除去する第1ノイズ除去部51と、画像に対してパターンマッチング処理を実行し、撮像された良品の画像の中から理想画像に対応する領域を切り出す第1検出部52と、第1検出部52で切り出された切り出し画像を基準画像13として記憶する第1記憶部55とを備えている。なお、理想画像とは、設計データに基づいた画像である。撮像された良品の画像とは、実際の金属化フィルム10の蒸着パターン良品(蒸着パターンに欠陥の無いもの)を撮像した画像である。
【0019】
第1検出部52は、理想画像に基づいて画像を回転させる第1角度補正部53と、理想画像に基づいて画像から非蒸着部12を含む画像を切り出す第1切り出し部54とを備えている。
【0020】
第1角度補正部53は、撮像された良品の画像と理想画像とを縮小してなる縮小画像を生成する画像縮小部53aと、両方の縮小画像を比較して回転角(両者の角度ズレ)を把握する回転角把握部53bと、回転角把握部53bで把握した回転角に基づいて画像を回転させる(角度ズレを補正する)回転部53cとを備えている。
【0021】
(マスク画像生成部)
マスク画像生成部6は、基準画像13を2値化する2値化部61と、基準画像13の非蒸着部12を収縮させた収縮非蒸着部12Bを含むマスク画像14を生成する収縮部62と、マスク画像14を記憶する第2記憶部63とを備えている。
【0022】
(第1判定部)
第1判定部7は、被検査体を撮像した画像に対してパターンマッチング処理を実行し、撮像された画像の中から基準画像13に対応する領域を切り出す第2検出部71と、第2検出部71で切り出された切り出し画像15から輝度変化点を示す第1エッジ画像16を生成する第1生成部74と、第1エッジ画像16とマスク画像14とを重ね合わせ、収縮非蒸着部12Bと重なる部分の輝度変化点のみを表す第2エッジ画像17を生成する第2生成部75と、第2エッジ画像17からノイズを除去したノイズ除去画像18を生成する第2ノイズ除去部76と、ノイズ除去画像18の輝度変化点の大きさを算出して限度値と照合し、良否判定をする判定部77とを備えている。
【0023】
第2検出部71は、基準画像13に基づいて画像を回転させる第2角度補正部72と、基準画像13に基づいて画像から非蒸着部12を含む画像を切り出す第2切り出し部73とを備えている。
【0024】
第2角度補正部72は、検査対象の金属化フィルム10Aを撮像した画像と基準画像13とを縮小してなる縮小画像を生成する画像縮小部72aと、両方の縮小画像を比較して回転角(両者の角度ズレ)を把握する回転角把握部72bと、回転角把握部72bで把握した回転角に基づいて画像を回転させる(角度ズレを補正する)回転部72cとを備えている。
【0025】
(検査方法)
次に、上記検査装置1を用いた検査方法について説明する。
【0026】
(撮像工程)
照明部2の載置面に金属化フィルム10、10Aを載置して光源から光を照射するとともに、金属化フィルム10、10Aを透過した光を撮像部3で撮像する(図3のS11や図5のS31)。この際、理想画像の非蒸着部と基準画像13の非蒸着部12の角度や、基準画像13の非蒸着部12と検査対象の金属化フィルム10Aの非蒸着部12Aの角度を合わせるように撮像してもよい。この場合、以下で説明する角度補正工程(図3のS13~S15、図5のS32~S34)は不要となる。また、非蒸着部12、12Aのパターン(連続する模様:図2の場合は略T字状)を中心に撮像することが好ましい。ただ、画像にパターンが1つ以上含まれていればよい。なお、良否判断はパターン毎に行われるため、画像に複数のパターンが含まれている場合は、パターンの数だけ良否判断を繰り返す。
【0027】
(基準画像生成工程:図3のS12~S17)
続いて、基準画像13を生成する。まず、第1ノイズ除去部51で、撮像部3で撮像された良品の画像のノイズを除去する(図3のS12)。具体的には、画像には照明部2や撮像部3に起因するノイズが生じるため、画像にフィルター処理を施してノイズを除去する。
【0028】
次に、第1検出部52で、ノイズを除去した画像に対してパターンマッチング処理を実行し、撮像された画像の中から理想画像に対応する領域を切り出す。具体的には、まず、画像縮小部53aで、予め設定されている理想画像とノイズを除去した画像とをともに縮小して2つの縮小画像を出力する(S13)。次に、回転角把握部53bで、2つの縮小画像を比較し、画像をどれだけ回転させれば理想画像の非蒸着部と撮像された画像の非蒸着部12とが同形状になるか(角度が等しくなるか)を把握し、画像を回転させる角度を把握する(S14)。そして、回転部53cで、回転角把握部53bで把握した角度に基づいて画像(縮小画像ではない)を回転させる(S15)。次に、第1切り出し部54で、理想画像に基づいて画像から非蒸着部12を含む画像を切り出す(S16)。具体的には、理想画像と相関度が高くなる範囲を指定して切り出す。すなわち、蒸着部11の大きさ、非蒸着部12の大きさ、蒸着部11と非蒸着部12との位置関係が理想画像とほぼ等しくなるように切り出す。理想画像は非蒸着部12のパターン(この実施例では略T字状)を含む画像である。従って、第1切り出し部54で切り出された切り出し画像は、図6aに示すように非蒸着部12のパターンを含んだ画像となる。
【0029】
そして、第1記憶部55に、切り出し画像を基準画像13として記憶させて(S17)、基準画像生成工程を完了する。このように、実際の金属化フィルム10に基づいて基準画像13を生成することにより、理想画像に比べてより実態に即した基準を設けることができ、精度の良い良否判定が可能となる。
【0030】
(マスク画像生成工程:図4のS21~S23)
次に、マスク画像14を生成する。まず、2値化部61で、基準画像13を2値化する(S21)。2値化により、蒸着部11の情報は削除され、非蒸着部12の情報のみが残る。具体的には、蒸着部11が0、非蒸着部12が1の情報を持つことになる。次に、図6bに示すように、収縮部62で、2値化された画像の非蒸着部12(パターン部分)のみを収縮させてマスク画像14を生成する(S22)。具体的には、非蒸着部12の中心線(図示しない)に向かって両側から同じ画素数ずつ蒸着部11を広げていき、非蒸着部12の幅を両側から均等に狭くする。このようにして収縮された非蒸着部を以下、収縮非蒸着部12Bと称す。なお、図6bの破線Bは元の非蒸着部12の大きさを示したものであり、実際には存在しない。そして、第2記憶部63にマスク画像14を記憶させて(S23)、マスク画像生成工程を完了する。
【0031】
(良否判定工程:図5のS31~S39)
基準画像13が生成された後、次に良否判定を行う。なお、マスク画像14については、後述するS37までに生成していればよい。まず、上記撮像工程に基づいて検査対象となる金属化フィルム10Aを撮像する(図5のS31)。
【0032】
次に、第2検出部71で、撮像された画像に対してパターンマッチング処理を実行し、撮像された画像の中から基準画像13に対応する領域を切り出す。具体的には、まず、画像縮小部72aで、基準画像13と撮像された画像とをともに縮小して2つの縮小画像を出力する(S32)。次に、回転角把握部72bで、2つの縮小画像を比較し、画像をどれだけ回転させれば基準画像13の非蒸着部12と撮像された画像の非蒸着部12とが同形状になるか(角度が等しくなるか)を把握し、画像を回転させる角度を把握する(S33)。そして、回転部72cで、回転角把握部73bで把握した角度に基づいて画像(縮小画像ではない)を回転させる(S34)。次に、第2切り出し部73で、基準画像13に基づいて画像から非蒸着部12を含む画像を切り出す(S35)。具体的には、基準画像13と相関度が高くなる範囲を指定して切り出す。すなわち、蒸着部11Aの大きさ、非蒸着部12Aの大きさ、蒸着部11Aと非蒸着部12Aとの位置関係が基準画像13の蒸着部11、非蒸着部12とほぼ等しくなるように切り出す。基準画像13は、図6aに示すように、非蒸着部12のパターン(この実施例では略T字状)を含む画像である。従って、第2切り出し部73で切り出された切り出し画像15は、図7aに示すように非蒸着部12Aのパターンを含んだ画像となる。
【0033】
続いて、第1生成部74で、第2検出部71で切り出された切り出し画像15から輝度変化点を示す第1エッジ画像16を生成する(S36)。具体的には、画像中、輝度が急激に変化する点(画素)を抽出し、それ以外の部分の情報を削除する。より具体的には、隣接する画素間で輝度の差が最大となる画素を抽出する。輝度が急激に変化するのは蒸着部11Aと非蒸着部12Aの境界(非蒸着部12Aの輪郭)である。従って、第1エッジ画像16には、パターン外周(蒸着部11Aのうち、意図的に金属を蒸着させた部分と非蒸着部12Aとの境界)12Cと、欠陥部分(蒸着部11Aのうち、意図せず金属が蒸着/付着した部分と非蒸着部12Aとの境界)Sと、ノイズ部分Nとの3種類の輝度変化点の情報が現れることになる。
【0034】
次に、第2生成部75で、第1エッジ画像16とマスク画像14とを重ね合わせ、基準画像13の非蒸着部12の輪郭Bよりも内側の輝度変化点のみを表す第2エッジ画像17を生成する(S37)。収縮非蒸着部12Bは実際の非蒸着部12よりも狭幅となっている。また、収縮非蒸着部12Bにしか情報が無い(収縮非蒸着部12Bは1、蒸着部11は0とされている)。そのため、欠陥部分Sやノイズ部分Nの輝度変化点の情報を含む第1エッジ画像16とマスク画像14とを画素間で積算(要素単位の乗算)すれば、図7cに示すように、基準画像13の非蒸着部12の輪郭Bよりも所定量内側の情報のみが残る。具体的には、基準画像13の非蒸着部12の輪郭Bと収縮蒸着部12Bとの差分だけ、基準画像13の非蒸着部12の輪郭Bよりも内側に入った部分の情報のみが残る。なおこの状態は、収縮蒸着部12Bの輪郭よりも内側(第1エッジ画像16とマスク画像14とを重ね合わせたとき、収縮蒸着部12Bと重なる部分)の情報のみが残るともいえる。そのため、パターン外周12cの情報は除かれ、欠陥部分Sとノイズ部分Nの情報のみが残ることになる。
【0035】
次に、第2ノイズ除去部76で、第2エッジ画像17からノイズを除去してノイズ除去画像18を生成する(S38)。図7cに示すように、第2エッジ画像17には、照明部2や撮像部3に起因するノイズが入り込んでいるとともに、短絡を生じない微小な欠陥が見られるため、画像にフィルター処理を施してこれらを除去する。
【0036】
そして、判定部77で、ノイズ除去画像18の輝度変化点の大きさを算出して限度値と照合し、良否判定をする(S39)。限度値は面積や長さ等である。例えば、輝度変化点で囲まれた部分の面積(画素数)や輝度変化点の長さ(画素数)が40画素以上のときに不良と判断する。なお、不良と判断する画素数については、撮像部3の画素数や非蒸着部12Aの幅に合わせて適宜変更する。例えば、撮像部3の撮影可能画素数が大きい場合は、それに応じて大きくすることが好ましい。また、非蒸着部12Aの幅が大きくなれば、それに応じて大きくすることが好ましい。以上で、良否判定工程が完了する。
【0037】
このように本発明は、良品の画像に基づいて検査対象の画像から不要な情報を削除しているため、真に不要な情報のみを的確に且つ精度良く削除することができ、精度良く欠陥の有無を検知することができる。例えば、検査対象の画像を適宜、膨張収縮させることで欠陥を消し、その画像に基づいて不要な情報を削除しようとしても、膨張収縮により元の形状を維持できなくなる場合があり、その場合、精度良く不要な情報を削除することは困難となる。
【0038】
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、図2では略T字状のパターンのみであったが、複数種類のパターンを備える金属化フィルムもある。この場合、各パターンで基準画像13を設定し、最も相関度が高くなる基準画像13に基づいて画像を切り出すようにすればよい。
【0039】
なお、基準画像13として予め撮影しておいた良品の画像や設計図に基づく理想画像を用いる場合、基準画像生成工程は不要である。また、基準画像生成部5を設ける必要もない。
【0040】
画像縮小部53a、72aについては必ずしも設ける必要はない。すなわち、理想画像や基準画像13と未縮小の画像とを比較して画像を回転するようにしてもよい。
【0041】
第1検出部52と第2検出部71、第1角度補正部53と第2角度補正部72、第1切り出し部54と第2切り出し部73、第1記憶部55と第2記憶部63については一方を他方にまとめてもよい。すなわち、例えば第1検出部52が第2検出部71を兼ねていてもよい。
【0042】
また、撮像部3は金属化フィルム10、10Aを透過した光を撮像していたが、金属化フィルム10、10Aを反射した光を撮像してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 検査装置
2 照明部
3 撮像部
4 良否判定部
5 基準画像生成部
51 第1ノイズ除去部
52 第1検出部
53 第1角度補正部
53a 画像縮小部
53b 回転角把握部
53c 回転部
54 第1切り出し部
55 第1記憶部
6 マスク画像生成部
61 2値化部
62 収縮部
63 第2記憶部
7 第1判定部
71 第2検出部
72 第2角度補正部
72a 画像縮小部
72b 回転角把握部
72c 回転部
73 第2切り出し部
74 第1生成部
75 第2生成部
76 第2ノイズ除去部
77 判定部
10 良品の金属化フィルム
10A 検査対象の金属化フィルム
11 良品の蒸着部
11A 検査対象の蒸着部
12 良品の非蒸着部
12A 検査対象の非蒸着部
12B 収縮非蒸着部
12C パターン外周
13 基準画像
14 マスク画像
15 切り出し画像
16 第1エッジ画像
17 第2エッジ画像
18 ノイズ除去画像
B 基準画像の非蒸着部の輪郭
S 欠陥部分
N ノイズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7