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特許7369066オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子、及びオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子、及びオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20231018BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20231018BHJP
   B29C 44/44 20060101ALI20231018BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20231018BHJP
【FI】
C08J9/16 CES
B29C44/00 G
B29C44/44
B29K23:00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020041024
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021143228
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 翔太
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070735(JP,A)
【文献】特開2019-014770(JP,A)
【文献】国際公開第2018/212183(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/052112(WO,A1)
【文献】特開2019-048942(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090335(WO,A1)
【文献】特開2020-070387(JP,A)
【文献】特開2020-084148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60;67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分として含む発泡粒子であって、
前記発泡粒子の平均粒子径が0.5~5mmであり、
前記発泡粒子の融解熱量が60~80J/gであり、
前記発泡粒子の融点(Tm)と結晶化温度(Tc)との差[Tm-Tc]が20℃以下であり、
前記発泡粒子の結晶化温度(Tc)が105~120℃である、オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項2】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリエチレンブロックからなるハードセグメントと、エチレン/α-オレフィン共重合体ブロックからなるソフトセグメントとのブロック共重合体である、請求項1に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項3】
前記発泡粒子は、オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物を基材ポリマーとし、前記基材ポリマー中のポリエチレン系樹脂の含有量が3~25質量%である、請求項1又は2に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項4】
前記ポリエチレン系樹脂が高密度ポリエチレンである、請求項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項5】
前記発泡粒子の平均粒子径が1~4mmであり、前記発泡粒子の平均質量が1~4mgである、請求項1~のいずれか一項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項6】
前記発泡粒子の熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分が30~70質量%である、請求項1~のいずれか一項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項7】
前記発泡粒子の見掛け密度が30~150kg/mである、請求項1~に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項8】
オレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分として含む発泡粒子から構成される発泡粒子成形体であって、
前記発泡粒子の融解熱量が60~80J/gであり、
前記発泡粒子の融点(Tm)と結晶化温度(Tc)との差[(Tm)-(Tc)]が20℃以下であり、
前記発泡粒子成形体表面における単位面積当たりの発泡粒子の個数が3~30個/cmである、オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体。
【請求項9】
発泡粒子成形体が以下の関係(式1)を満足する、請求項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体。
15≦A×B・・・(式1)
A:発泡粒子成形体の引張り強さ(MPa)
B:発泡粒子成形体の引張り伸び(%)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系熱可塑性エラストマーを基材ポリマーとする発泡粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、柔軟性、反発弾性等に優れていることから、緩衝材、防振材、スポーツ用品、自動車用部材等の様々な用途で使用されている。
【0003】
オレフィン系熱可塑性エラストマーの発泡粒子成形体は、オレフィン系熱可塑性エラストマーが有する柔軟性、反発弾性等の優れた特性を維持しつつ、軽量化を図ることができるため、スポーツ用品、自動車部材、建材等の分野において更なる用途展開が期待されている。
【0004】
近年、用途によっては、例えば、厚肉部と薄肉部とを備え、複雑な形状を有する、オレフィン系熱可塑性エラストマーの発泡粒子成形体が求められることがある。例えば、特許文献1には、ポリエチレンブロックとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックとのマルチブロック共重合体の架橋発泡粒子を小粒子化すること等により、厚みの厚薄を有していても表面性と融着性に優れ、耐久性にも優れる発泡粒子成形体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-58961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、オレフィン系熱可塑性エラストマーの発泡粒子成形体の用途の多様化から、厚みの厚薄差がより大きく、より複雑な形状を有する成形体を得られる成形型で成形した場合であっても、成形性が良好なオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子の実現が望まれていた。
【0007】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであり、その目的は、厚薄差がより大きく、より複雑な形状を有する成形体を得られる成形型で成形した場合であっても、成形性が良好なオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す構成を採用することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] オレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分として含む発泡粒子であって、前記発泡粒子の平均粒子径が0.5~5mmであり、前記発泡粒子の融解熱量が60~80J/gであり、前記発泡粒子の融点(Tm)と結晶化温度(Tc)との差[Tm-Tc]が20℃以下である、オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[2] 前記発泡粒子の結晶化温度(Tc)が105~120℃である、上記[1]に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[3] 前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリエチレンブロックからなるハードセグメントと、エチレン/α-オレフィン共重合体ブロックからなるソフトセグメントとのブロック共重合体である、上記[1]又は[2]に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[4] 前記発泡粒子は、オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物を基材ポリマーとし、前記基材ポリマー中のポリエチレン系樹脂の含有量が3~25質量%である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[5] 前記ポリエチレン系樹脂が高密度ポリエチレンである、上記[4]に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[6] 前記発泡粒子の平均粒子径が1~4mmであり、前記発泡粒子の平均質量が1~4mgである、上記[1]~[5]のいずれかに記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[7] 前記発泡粒子の熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分が30~70質量%である、上記[1]~[6]のいずれかに記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[8] 前記発泡粒子の見掛け密度が30~150kg/mである、上記[1]~[7]のいずれかに記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[9] オレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分として含む発泡粒子から構成される発泡粒子成形体であって、前記発泡粒子の融解熱量が60~80J/gであり、前記発泡粒子の融点(Tm)と結晶化温度(Tc)との差[(Tm)-(Tc)]が20℃以下であり、前記発泡粒子成形体表面における単位面積当たりの発泡粒子の個数が3~30個/cmである、オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体。
[10] 発泡粒子成形体が以下の関係(式1)を満足する、上記[9]に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体。
15≦A×B・・・(式1)
A:発泡粒子成形体の引張り強さ(MPa)
B:発泡粒子成形体の引張り伸び(%)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、厚薄差がより大きく、より複雑な形状を有する成形体を得られる成形型で成形した場合であっても、成形性が良好なオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<発泡粒子>
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子(以下、単に「発泡粒子」ともいう)は、オレフィン系熱可塑性エラストマーを基材ポリマーとする発泡粒子であって、前記発泡粒子の平均粒子径が0.5~5mmであり、前記発泡粒子の融解熱量が60~80J/gであり、前記発泡粒子の融点(Tm)と、熱流束示差走査熱量測定(DSC)法により前記発泡粒子を30℃から200℃まで10℃/minの加熱速度で昇温した後、200℃から30℃まで10℃/minの冷却速度で冷却することにより測定される前記発泡粒子の結晶化温度(Tc)との差[Tm-Tc]が20℃以下である。
【0011】
[基材ポリマー]
本発明の発泡粒子は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を主成分として含む。本明細書において、TPOを主成分として含むとは、発泡粒子中、オレフィン系熱可塑性エラストマーを50質量%以上含むことを意味し、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。本発明の発泡粒子は、好ましくは、オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物を基材ポリマーとする。
【0012】
(オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO))
TPOとしては、例えば、プロピレン系樹脂からなるハードセグメントとエチレン系ゴムからなるソフトセグメントにより構成される混合物、ポリエチレンブロックからなるハードセグメントとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックからなるソフトセグメントとのブロック共重合体等が挙げられる。これらの中でも、オレフィン系熱可塑性エラストマーは、好ましくは、ポリエチレンブロックからなるハードセグメントとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックからなるソフトセグメントとのブロック共重合体である。TPOが、ハードセグメントとしてポリエチレンブロックを有すると、基材ポリマーがポリエチレン系樹脂を含有する場合、ポリエチレン系樹脂との相溶性が高いため、TPOの優れた特性を好適に維持できる。
【0013】
プロピレン系樹脂からなるハードセグメントとエチレン系ゴムからなるソフトセグメントにより構成される混合物において、プロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと、エチレン又は炭素数4~8のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。一方、エチレン系ゴムとしては、例えば、エチレンと炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体、エチレンと、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の非共役ジエンとの共重合体等が挙げられる。
【0014】
ポリエチレンブロックからなるハードセグメントとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックからなるソフトセグメントとのブロック共重合体において、ポリエチレンブロックとしては、例えば、エチレン単独重合体、エチレンと炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。一方、エチレン/α-オレフィン共重合体ブロックとしては、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体のブロックが挙げられ、エチレンと共重合するα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。これらの中でも、工業的な入手しやすさや諸特性、経済性等の観点から、エチレンと共重合するα-オレフィンは、好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンであり、特に好ましくは1-オクテンである。
【0015】
ポリエチレンブロックにおけるエチレン単位の割合は、ポリエチレンブロックの質量に対して、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上である。一方、エチレン/α-オレフィン共重合体ブロックにおける、α-オレフィン単位の割合は、エチレン/α-オレフィン共重合体ブロックの質量に対して、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、更に好ましくは15質量%以上である。なお、ポリエチレンブロックの割合及びエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックの割合は、示差走査熱量測定(DSC)又は核磁気共鳴(NMR)から得られるデータに基づいて計算される。
【0016】
≪TPOの融解熱量≫
TPOの融解熱量は、好ましくは20~80J/gであり、より好ましくは30~70J/gである。TPOの融解熱量が上記範囲であると、本発明の発泡粒子を成形して得られる発泡粒子成形体(以下、単に「発泡粒子成形体」又は「成形体」ともいう)はより優れた耐熱性を有し、また、発泡粒子の融解熱量を特定の範囲に調整しやすい。
TPOの融解熱量は、JIS K 7122:1987に基づき、熱流束示差走査熱量計を用いて測定される。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、複数の融解ピークの面積の合計を融解熱量とする。
【0017】
≪TPOの融点≫
TPOの融点は好ましくは110~140℃であり、より好ましくは115~135℃である。TPOの融点が上記範囲であると、発泡粒子成形体の耐熱性が向上するとともに、発泡粒子の融点と結晶化温度との差を特定の範囲に調整しやすい。
TPOの融点は、JIS K 7121:1987に記載の熱流束示差走査熱量測定に基づき測定される融解ピーク温度を意味する。試験片の状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、加熱速度及び冷却速度は、いずれも10℃/分とする。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とする。
【0018】
≪TPOの結晶化温度≫
TPOの結晶化温度は、好ましくは80~120℃であり、より好ましくは85~115℃である。TPOの結晶化温度が上記範囲であると、発泡粒子は型内成形性により優れ、また、発泡粒子の融点と結晶化温度との差を特定の範囲に調整しやすい。
TPOの結晶化温度は、JIS K 7121:1987に基づき、熱流束示差走査熱量計を用いて測定される。なお、DSC曲線に複数の結晶化ピークが表れる場合は、ピーク高さの最も高い結晶化ピークのピーク温度を結晶化温度とする。
【0019】
≪TPOの密度≫
TPOの密度は、TPOの柔軟性等の観点から、好ましくは700~1000kg/mであり、より好ましくは800~900kg/mである。
TPOの密度は、ASTM D792-13に準拠して測定される。
【0020】
≪TPOの曲げ弾性率≫
TPOの曲げ弾性率は、発泡粒子の柔軟性等の観点から、好ましくは10~50MPaであり、より好ましくは15~40MPaであり、更に好ましくは20~35MPaである。
TPOの曲げ弾性率は、JIS K 7171:2016に準拠して測定される。
【0021】
≪TPOのメルトフローレイト(MFR)≫
TPOのメルトフローレイト(MFR)は、好ましくは2~10g/10minであり、より好ましくは3~8g/10minであり、更に好ましくは4~7g/10minである。TPOのMFRが上記範囲であると、所望の物性を有する発泡粒子成形体を得やすい。
TPOのMFRは、JIS K 7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0022】
TPOとして市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「インフューズ(Infuse)」、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「アフィニティー(Affinity)」、三菱ケミカル(株)製の商品名「サーモラン」、三井化学(株)製の商品名「ミラストマー」、三井化学(株)製の商品名「タフマー」、住友化学(株)製の商品名「住友TPE」、(株)プライムポリマー製の商品名「プライムTPO」等が挙げられる。
【0023】
本発明の発泡粒子は、オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物を基材ポリマーとすることが好ましい。基材ポリマーがオレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物であると、発泡粒子の融解熱量を上記特定の範囲に調整しやすく、また、発泡粒子の融点と結晶化温度との差を上記特定の範囲に調整しやすい。
【0024】
(ポリエチレン系樹脂)
本発明において、ポリエチレン系樹脂とは、エチレン系単量体の単独重合体又はエチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン系共重合体をいう。
ポリエチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のエチレン系炭化水素単独重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン系樹脂は、好ましくは、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンであり、より好ましくは高密度ポリエチレンである。ポリエチレン系樹脂が、上記のものであると、発泡粒子の融解熱量及び発泡粒子の融点と結晶化温度との差を特定の範囲により容易に調整しやすく、その結果として、複雑な形状を有する成形体を得やすい。
これらのポリエチレン系樹脂は単独で又は2種類以上組み合わせて用いられる。
【0025】
TPOとして、ポリエチレンブロックからなるハードセグメントとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックからなるソフトセグメントとのブロック共重合体を用いる場合、基材ポリマーがポリエチレン系樹脂を含有すると、TPOとポリエチレン系樹脂との相溶性により優れるため、型内成形時における気泡膜の歪みがより緩和されやすく、得られる発泡粒子成形体は耐熱性に更に優れ、また、TPOの優れた特性を好適に維持できる。
【0026】
≪ポリエチレン系樹脂の融解熱量≫
ポリエチレン系樹脂の融解熱量は、好ましくは50~200J/gであり、より好ましくは60~190J/gであり、更に好ましくは70~180J/gである。ポリエチレン系樹脂の融解熱量が上記範囲であると、発泡粒子成形体は耐熱性により優れ、また、発泡粒子の融解熱量を特定の範囲に調整しやすい。
ポリエチレン系樹脂の融解熱量は、上記TPOの融解熱量と同様の方法により測定される。
【0027】
≪ポリエチレン系樹脂の融点≫
ポリエチレン系樹脂の融点は、好ましくは110~145℃であり、より好ましくは115~140℃であり、更に好ましくは120~135℃である。ポリエチレン系樹脂の融点が上記範囲であると、発泡粒子成形体は耐熱性により優れ、また、発泡粒子の融点と結晶化温度との差を特定の範囲に調整しやすい。
ポリエチレン系樹脂の融点は、上記TPOの融点と同様の方法により測定される。
【0028】
≪ポリエチレン系樹脂の結晶化温度≫
ポリエチレン系樹脂の結晶化温度は、好ましくは90~130℃であり、より好ましくは100~125℃である。ポリエチレン系樹脂の結晶化温度が上記範囲であると、発泡粒子成形体の収縮率をより小さくすることができ、また、発泡粒子の融点と結晶化温度との差を特定の範囲に調整しやすい。
ポリエチレン系樹脂の結晶化温度は、上記TPOの結晶化温度と同様の方法により測定される。
【0029】
≪ポリエチレン系樹脂の密度≫
ポリエチレン系樹脂の密度は、耐熱性等の観点から、好ましくは910~1000kg/mであり、より好ましくは920~980kg/mであり、更に好ましくは930~960kg/mである。
ポリエチレン系樹脂の密度は、上記TPOの密度と同様の方法により測定される。
【0030】
≪ポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率≫
ポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率は、好ましくは100~1000MPaであり、より好ましくは300~950MPaであり、更に好ましくは400~900MPaであり、より更に好ましくは450~900MPaである。ポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率が上記範囲であると、TPOの優れた特性を維持しつつ、耐熱性により優れる。
【0031】
≪ポリエチレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)≫
ポリエチレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、好ましくは2~50g/10minであり、より好ましくは5~40g/10minであり、更に好ましくは8~35g/10minである。ポリエチレン系樹脂のMFRが上記範囲であると、発泡粒子は発泡性、成形性等により優れる。
【0032】
(オレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物)
基材ポリマーがオレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物である場合、基材ポリマー中のポリエチレン系樹脂の含有量は、好ましくは2~28質量%であり、より好ましくは3~25質量%である。
基材ポリマー中のポリエチレン系樹脂の含有量が上記範囲であると、TPOの優れた特性を維持しつつ、発泡粒子の融解熱量及び発泡粒子の融点と結晶化温度との差を特定の範囲に調整しやすい。
【0033】
また、基材ポリマーがオレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物である場合、ポリエチレン系樹脂のメルトフローレイト(II)とオレフィン系熱可塑性エラストマーのメルトフローレイト(I)との差[(II)-(I)]が1~25g/10minであることが好ましい。上記メルトフローレイトの差[(II)-(I)]が1~25g/10minの範囲内となるポリエチレン系樹脂を含むことにより、発泡性により優れ、成形性により優れる発泡粒子となる。上記観点から、メルトフローレイトの差[(II)-(I)]は2~23g/10minであることがより好ましく、3~20g/10minであることが更に好ましく、5~18g/10minであることが特に好ましい。
【0034】
(他の重合体)
基材ポリマーは、本発明の目的効果を阻害しない範囲において、TPO及びポリエチレン系樹脂以外の他の重合体を含んでもよい。他の重合体としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂、オレフィン系以外の熱可塑性エラストマー(例えば、ポリブタジエン系エラストマー;スチレン-ブタジエン、スチレン-イソプレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレンのブロック共重合体、それらの水添物)等が挙げられる。
上記基材ポリマー中の他の重合体の含有量は、基材ポリマー100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは5質量部以下であり、更に好ましくは0質量部である。
【0035】
(その他の添加剤)
本発明の発泡粒子には、本発明の目的効果を阻害しない範囲においてその他の添加剤を添加することができる。その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、金属不活性剤、導電性フィラー、気泡調整剤等が挙げられる。気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、水酸化アルミニウム、シリカ、ゼオライト、カーボン等の無機粉体;リン酸系核剤、フェノール系核剤、アミン系核剤、ポリフッ化エチレン系樹脂粉末等の有機系粉体が例示される。
これらの添加剤の添加量の合計は、基材ポリマー100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。なお、これらの添加剤は、通常、必要最小限の量で使用される。
【0036】
≪基材ポリマーのタイプDデュロメータ硬さ≫
基材ポリマーのタイプDデュロメータ硬さは、好ましくは10~60であり、より好ましくは20~40であり、更に好ましくは24~35である。基材ポリマーのタイプDデュロメータ硬さが上記範囲であると、柔軟性に富み、型内成形性に優れる発泡粒子となる。
基材ポリマーのタイプDデュロメータ硬さは、JIS K 7215:1986に基づきタイプDデュロメータを用いて測定される。
【0037】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、一般的な結晶性樹脂であるポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等と比較して、非晶部が多く、成形時に過加熱により発泡粒子が収縮してヒケが生じやすい傾向がある。また、一般的に、厚薄差が大きく複雑な形状を有する発泡粒子成形体の成形に用いられる成形型では、発泡粒子の充填度のばらつきによる、発泡粒子の加熱ムラが発生しやすい。したがって、特に、オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子を、厚薄差が大きい複雑な形状を有する成形型を用いて成形して成形体を得ようとした場合、単位体積当たりの発泡粒子の量が少ない傾向にある厚肉部において、ヒケがより生じやすいものであった。
また、成形型への充填性を向上させるために、発泡粒子の粒子径を単に小さくした場合には、発泡粒子1粒当たりの融解熱量が小さく、特に成形型内の厚みが厚い厚肉部では、薄肉部と比較して単位体積当たりの発泡粒子の量が少ないため、発泡粒子成形体は、熱収縮によるヒケをより生じやすく、回復性に劣る傾向にあった。一方、成形型内の厚みが薄い薄肉部においては、単位体積当たりの発泡粒子の量がより多くなるため、発泡粒子の表面を融解させるために必要な熱量が大きくなり、発泡粒子成形体の融着性がより低下しやすい傾向にあった。さらに、成形型への充填性を向上させるために、クラッキング充填により発泡粒子を成形型に充填した場合には、複雑な形状を有する成形型では厚肉部と薄肉部とでクラッキング量(%)が異なるため、上記したような発泡粒子成形体の回復性、融着性の低下はより顕著なものであった。したがって、発泡粒子の粒子径を単に小さくしただけでは、厚薄差がより大きく、より複雑な形状を有する発泡粒子成形体の回復性と融着性とを両立させることが難しかった。
本発明の発泡粒子は、特定の範囲の平均粒子径及び融解熱量を有し、かつ、発泡粒子の融点と結晶化温度との差を特定の範囲とすることにより、厚薄差がより大きく、より複雑な形状を有する成形体を得る成形型で成形した場合であっても、発泡粒子成形体の回復性と融着性とを両立でき、耐久性にも優れる成形体を成形可能な発泡粒子を提供できる。なお、発泡粒子を成形型キャビティ内に効率よく充填するために、成形型を少し開いた状態で発泡粒子を充填し、次いで成形型を型締めして機械的に圧縮した状態とする充填方法をクラッキング充填と呼ぶ。そして、成形型のキャビティ内の厚み(mm)に対する前記型締めの際の金型の移動距離(mm)の比率をクラッキング量(%)として表す。
【0038】
<発泡粒子の物性>
≪発泡粒子の平均粒子径≫
発泡粒子の平均粒子径は、0.5~5mmであり、好ましくは0.8~4.5mm、より好ましくは1~4mmであり、より更に好ましくは2~3.8mmである。発泡粒子の平均粒子径が上記範囲であることにより、発泡粒子は、厚薄差が大きく複雑な形状を有する発泡粒子成形体の成形に用いられる成形型に対しても、充填性に優れ、また、耐久性に優れる発泡粒子成形体を成形可能となる。特に、発泡粒子の平均粒子径が1~4mmであると、厚みが5mm以下の薄肉部を有する成形体や、厚みの厚薄が更に大きな成形体であっても、表面性、融着性等に優れる発泡粒子成形体を成形可能である。
発泡粒子の平均粒子径は以下の方法により求められる値である。まず、発泡粒子の体積基準の粒度分布をもとに、粒子の形状を球として仮定して個数基準の粒度分布に換算することにより、個数基準の粒度分布を得る。そして、この個数基準の粒度分布に基づく粒子径を算術平均することにより個数基準の算術平均粒子径を求めることができる。なお、上記粒子径は、粒子と同体積を有する仮想球の直径を意味する。
体積基準における発泡粒子の粒度分布は、粒度分布測定装置(例えば、日機装(株)製「ミリトラック JPA」)などを用いて測定することができる。測定に用いる発泡粒子の数は、例えば、2000個以上であればよい。
【0039】
≪発泡粒子の平均質量≫
発泡粒子の平均質量は、成形型への充填性等の観点から、好ましくは0.5~6mg、より好ましくは0.8~5mgであり、更に好ましくは1~4.5mgであり、より更に好ましくは1~4mgである。
発泡粒子の平均質量は、無作為に100個以上の発泡粒子を選択し、該発泡粒子群の質量[mg]を測定し、測定に用いた発泡粒子の個数で除することにより求めることができる。
【0040】
≪発泡粒子の融解熱量≫
発泡粒子の融解熱量は、60~80J/gである。発泡粒子の融解熱量が60J/g以上であると、特に成形体の厚肉部において、熱収縮によるヒケの発生を抑制でき、寸法精度に優れた発泡粒子成形体を成形可能である。一方、発泡粒子の融解熱量が80J/g以下であると、特に成形体の薄肉部において、融着性の低下を好適に防止できる。同様の観点から、発泡粒子の融解熱量は、好ましくは62~78J/gであり、より好ましくは65~75J/gである。
発泡粒子の融解熱量は、上記TPOの融解熱量と同様の方法により測定される。
【0041】
発泡粒子の融解熱量を上記特定の範囲に調整する方法は、上記したオレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物を基材ポリマーとする方法に限られない。
【0042】
≪発泡粒子の融点(Tm)と結晶化温度(Tc)との差[Tm-Tc]≫
発泡粒子の融点(Tm)と結晶化温度(Tc)との差[Tm-Tc]は、20℃以下である。差[Tm-Tc]が上記範囲であると、特に熱収縮によるヒケが発生しやすい成形体の厚肉部においてもヒケの発生を抑制できるため、厚薄差がより大きく、より複雑な形状を有する成形体を成形する場合であっても成形性に優れる発泡粒子が得られる。上記観点から、差[Tm-Tc]は、18℃以下であることが好ましく、15℃以下であることがより好ましい。差[Tm-Tc]の下限値は、通常、好ましくは5℃以上である。
発泡粒子の融点(Tm)及び結晶化温度(Tc)は、上記TPOと同様の方法により測定される。
【0043】
≪発泡粒子の結晶化温度(Tc)≫
発泡粒子の結晶化温度(Tc)は、105℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましい。発泡粒子の結晶化温度(Tc)が105℃以上であることにより、成形体を構成する発泡粒子の結晶化が速くなり、結晶化部分による拘束力により、成形体作製時の減圧による変形が抑制され、回復性に優れるものとなる。また、前記発泡粒子の融点(Tm)と結晶化温度(Tc)との差[Tm-Tc]を特定の範囲とし、厚薄差が大きく複雑な形状を有する成形体を成形可能な発泡粒子を得る観点から、発泡粒子の結晶化温度(Tc)は好ましくは105~120℃であり、より好ましくは110~120℃である。
【0044】
発泡粒子の融点(Tm)と結晶化温度(Tc)との差[Tm-Tc]を上記特定の範囲内に調整する方法は、上記したオレフィン系熱可塑性エラストマーとポリエチレン系樹脂との混合物を基材ポリマーとする方法に限られず、例えば基材ポリマーにシリカ、タルク等の結晶核剤を添加する方法等が挙げられる。
【0045】
≪発泡粒子の熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分(キシレン不溶分)≫
発泡粒子の熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分(キシレン不溶分)は、好ましくは30~70質量%であり、より好ましくは40~60質量%である。熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分は、発泡粒子の架橋状態を示す指標の一つである。
発泡粒子のキシレン不溶分は、以下のように求められる。試料約1gを秤量し(秤量した試料質量をG1[g]とする)、キシレン100g中で6時間煮沸した後、100メッシュの金網で速やかに濾過し、次いで金網上に残った沸騰キシレン不溶分を80℃の減圧乾燥機で8時間乾燥させてから沸騰キシレン不溶分の質量を秤量し(秤量した沸騰キシレン不溶分の質量をG2[g]とする)、式2によって求められる。
キシレン不溶分(質量%)=〔G2/G1〕×100 (式2)
【0046】
≪発泡粒子の見掛け密度≫
発泡粒子の見掛け密度は、好ましくは30~150kg/mであり、より好ましくは40~140kg/mである。発泡粒子の見掛け密度が上記範囲であると、軽量性、回復性等に優れる。
発泡粒子の見掛け密度は、以下のように求められる。発泡粒子群を、相対湿度50%、温度23℃、1atmの条件にて2日間放置する。次いで、温度23℃の水が入ったメスシリンダーを用意し、任意の量の発泡粒子群(発泡粒子群の質量W1[g])を上記メスシリンダー内の水中に金網等の道具を使用して沈める。そして、金網等の道具の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積V1[L]を測定する。メスシリンダーに入れた発泡粒子群の質量W1[g]を容積V1[L]で除して(W1/V1)、単位を[kg/m]に換算することにより、発泡粒子の見掛け密度が求められる。
【0047】
≪発泡粒子の嵩密度≫
発泡粒子の嵩密度は、軽量性等の観点から、好ましくは10~110g/Lであり、より好ましくは20~100g/Lであり、更に好ましくは30~90g/Lである。
発泡粒子の嵩密度は、以下のように求められる。メスシリンダー等の容器内に自由落下によって発泡粒子を充填した後、容器を振動させ、その体積が恒量に達したときの目盛りを読んで発泡粒子の嵩体積を求める。容器内に充填された発泡粒子の全質量を該嵩体積で除することにより発泡粒子の嵩密度を求める。
【0048】
<発泡粒子の製造方法>
本発明の発泡粒子の製造方法は、以下の工程(A)、工程(B)、工程(C)及び工程(D)を含む方法により製造することができる。
工程(A):密閉容器内で分散媒に、TPOを基材ポリマーとする粒子(以下、「基材粒子」ともいう)及び架橋剤を分散させる分散工程、
工程(B):TPOが軟化し、架橋剤が実質的に分解する温度以上の温度(架橋温度)まで加熱し、基材粒子を架橋させて架橋粒子を得る架橋工程、
工程(C):架橋粒子に所定の温度(含浸温度)で所定の時間(含浸時間)保持して発泡剤を含浸させる含浸工程、
工程(D):所定の温度(発泡温度)で加熱されている発泡剤を含浸させた架橋粒子を、密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に放出して、発泡させて発泡粒子を製造する発泡工程。
【0049】
[工程(A)]
工程(A)では、密閉容器内で分散媒に、基材粒子及び架橋剤を分散させる。密閉容器は、密閉することができ、加熱及び圧力の上昇に耐えられる容器であり、例えば、オートクレーブ等が挙げられる。
【0050】
TPOを押出機に供給し、混練して溶融混練物とし、該溶融混練物を押出機先端に付設されたダイの小孔からストランド状に押出し、これを所定の質量となるように切断するストランドカット法等、公知の造粒方法により基材粒子が製造される。上記の方法において、例えば、ストランド状に押出し成形された溶融混練物を水冷により冷却した後、所定の長さに切断することにより基材粒子を得ることができる。所定の長さに切断する際には、例えば、該溶融混練物を押出した直後に切断するホットカット法や水中で切断するアンダーウォーターカット法等により基材粒子を得ることができる。
【0051】
基材粒子の1個当たりの平均質量は、好ましくは0.5~6mgであり、より好ましくは0.8~4mgであり、更に好ましくは1~4mgであり、より更に好ましくは1.5~3.8mgである。基材粒子の平均質量は、無作為に選んだ100個の基材粒子の質量[mg]を100で除した値である。
【0052】
(分散媒)
工程(A)で使用する分散媒は、基材粒子を溶解しない分散媒であれば、特に限定されない。分散媒としては、水、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等が挙げられ、分散媒は好ましくは水である。
【0053】
(分散)
上記分散媒に基材粒子を分散させる。例えば、撹拌機を用いて分散媒に基材粒子を分散させる。
【0054】
工程(A)において、上記分散媒に更に分散剤又は界面活性剤を添加してもよい。分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の有機系分散剤;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ、リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム等の難溶性無機塩等が挙げられる。界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、その他懸濁重合で一般的に使用されるアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
また、工程(A)において、pH調整剤を分散媒に添加し、分散媒のpHを調整することもできる。また、工程(A)において、発泡剤を分散媒に添加することもできる。発泡剤については工程(C)で詳述する。
【0055】
架橋剤は、予め分散媒に添加してもよく、基材粒子を分散させてから分散媒に添加しても良い。架橋剤は、TPOを架橋させるものであれば、特に限定されない。架橋剤としては、例えば、ジクミルパーオキシド(10時間半減期温度:116℃)、2,5-t-ブチルパーベンゾエート(10時間半減期温度:104℃)等の10時間半減期温度が100~125℃である過酸化物を用いることが好ましい。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。架橋剤の分散媒への配合量は、発泡粒子中のキシレン不溶分の含有割合を上述した範囲に調整できる量であれば特に限定されないが、架橋剤の配合量は、基材粒子100質量部に対して、好ましくは0.1~5.0質量部であり、より好ましくは0.2~2.5質量部である。
【0056】
[工程(B)]
工程(B)では、密閉容器内で、工程(A)で分散媒中に分散した基材粒子が軟化し、架橋剤が実質的に分解する温度以上の温度(架橋温度)に加熱し、所定の時間(保持時間)保持する。これにより、TPOの架橋が生じて架橋粒子が得られる。架橋温度は、特に限定されないが、例えば、100~170℃の範囲である。また、架橋温度での保持時間は、特に限定されないが、例えば、5~120分間であり、より好ましくは10~90分間である。
【0057】
[工程(C)]
工程(C)では、工程(B)の後、密閉容器内の分散媒に架橋粒子を発泡させる発泡剤を添加し、軟化状態の架橋粒子に発泡剤を含浸させる。含浸温度は、架橋粒子が軟化状態となる温度以上の温度であれば、特に限定されないが、例えば、100~170℃の範囲である。含浸時間は、好ましくは15~60分間であり、より好ましくは30~45分間である。
【0058】
(発泡剤)
工程(C)で使用する発泡剤は、上記架橋粒子を発泡させられるものであれば特に限定されない。発泡剤としては、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、酸素、ネオン等の無機物理発泡剤;プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素、クロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のジアルキルエーテル等の有機物理発泡剤等が挙げられる。これらの中でも、オゾン層の破壊がなく、かつ安価な無機物理発泡剤が好ましく、窒素、空気、二酸化炭素がより好ましく、特に二酸化炭素が好ましい。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。発泡剤の配合量は、目的とする発泡粒子の見掛け密度、TPOの種類、ポリエチレン系樹脂の種類、発泡剤の種類等を考慮して決定されるが、通常、架橋粒子100質量部に対して、5~50質量部の有機物理発泡剤又は0.5~30質量部の無機物理発泡剤を用いることが好ましい。なお、上記の架橋工程、含浸工程、発泡工程は単一の密閉容器における一連の工程として行うことが好ましい。
【0059】
[工程(D)]
工程(D)では、工程(C)により発泡剤が含浸されており、加熱されている架橋粒子を、密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に放出して発泡粒子を作製する。具体的には、密閉容器内の圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら、密閉容器内の水面下の一端を開放し、発泡剤が含浸されている架橋粒子を分散媒とともに密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低圧の雰囲気下、通常は大気圧下に放出して架橋粒子を発泡させることによって発泡粒子を作製する。
【0060】
発泡粒子の製造方法として、密閉容器にて製造する方法を説明したが、発泡粒子の製造方法は上記製造方法に限定されない。例えば、基材粒子、架橋剤及び発泡剤を押出機に供給して溶融し、基材粒子を架橋し、発泡剤を含浸させた後、押出機の先端に取り付けたダイから架橋させた架橋粒子を押出発泡することによって架橋粒子の発泡体を製造し、それらを冷却した後にペレタイズすることにより粒子状に切断する方法;工程(A)~(C)により得た架橋粒子を密閉容器から取出し、脱水乾燥した後、架橋粒子を加熱媒体により加熱して発泡させることにより発泡粒子とする方法等であってもよい。さらに、基材粒子に有機過酸化物を用いて架橋する方法を示したが、本発明における架橋工程は、有機過酸化物を用いるものに限らず、他の公知の方法、例えば、電子線架橋法等を用いて架橋工程を行うことにより架橋粒子とすることができる。
【0061】
<発泡粒子成形体>
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体は、オレフィン系熱可塑性エラストマーを基材ポリマーとする発泡粒子から構成され、発泡粒子の融解熱量が60~80J/gであり、発泡粒子の融点(Tm)と、熱流束示差走査熱量測定(DSC)法により発泡粒子を30℃から200℃まで10℃/minの加熱速度で昇温した後、200℃から30℃まで10℃/minの冷却速度で冷却することにより測定される発泡粒子の結晶化温度(Tc)との差[(Tm)-(Tc)]が20℃以下であり、発泡粒子成形体表面における単位面積当たりの発泡粒子の個数が3~30個/cmであり、好ましくは発泡粒子成形体が以下の関係(式1)を満足する。
15≦A×B・・・(式1)
A:発泡粒子成形体の引張り強さ(MPa)
B:発泡粒子成形体の引張り伸び(%)
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体は、上述した発泡粒子を型内成形することにより得ることができる。
【0062】
(型内成形)
発泡粒子成形体は、従来公知の方法により、発泡粒子を成形型内に充填し、スチーム等の加熱媒体を用いて加熱成形することにより得られる。具体的には、発泡粒子を成形型内に充填した後、成形型内にスチーム等の加熱媒体を導入することにより、発泡粒子を加熱して二次発泡させ、相互に融着させて成形空間の形状が賦形された発泡粒子成形体を得ることができる。また、本発明における型内成形は、発泡粒子を空気等の加圧気体により予め加圧処理して発泡粒子内の圧力を高めて、発泡粒子内の圧力を0.01~0.2MPa(G)(G:ゲージ圧、以下同じ)に調整した後、大気圧下又は減圧下で発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填して型閉めを行った後、型内にスチーム等の加熱媒体を供給して発泡粒子を加熱融着させる加圧成形法(例えば、特公昭51-22951号公報)により成形することが好ましい。
【0063】
≪発泡粒子成形体の見掛け密度≫
発泡粒子成形体の見掛け密度は、好ましくは20~300kg/mであり、より好ましくは30~150kg/mであり、更に好ましくは35~120kg/mであり、より更に好ましくは40~100kg/mである。発泡粒子成形体の見掛け密度が上記範囲であると、軽量性、回復性、融着性に優れる。
発泡粒子成形体の見掛け密度は、以下のように求められる。発泡粒子成形体を、相対湿度50%、温度23℃、1atmの条件にて2日間放置する。次いで、温度23℃の水が入った容器を用意し、任意の量の発泡粒子成形体(質量W[g])を容器内の水中に金網等の道具を使用して沈める。そして、金網等の道具の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子成形体の容積V[L]を測定する。容器に入れた発泡粒子成形体の質量W[g]を容積V[L]で除して(W/V)、単位を[kg/m]に換算することにより、発泡粒子成形体の見掛け密度が求められる。
【0064】
≪発泡粒子成形体表面における発泡粒子の個数≫
本発明の発泡粒子成形体においては、成形体表面における単位面積当たりの発泡粒子の個数が、3~30個/cmである。成形体表面における単位面積当たりの発泡粒子の個数が、3~30個/cmであると、発泡粒子成形体は表面性及び融着性に優れるとともに、耐久性にも優れる。発泡粒子成形体の耐久性をより向上させる観点からは、成形体表面における単位面積当たりの発泡粒子の個数が、5~20個/cmであることがより好ましい。
【0065】
発泡粒子成形体表面における発泡粒子の個数は、以下の方法で測定される。発泡粒子成形体の端部を除く部分の表面の5箇所以上において、100mm×100mmの正方形の範囲内に存在する発泡粒子の数をカウントする。この値を単位面積(cm) 当たりの値に換算し、算術平均することにより算出する。なお、上記範囲の線上に存在する気泡については、隣接する2辺に交差している発泡粒子のみをカウントし、他の2辺に交差する発泡粒子はカウントしない。
【0066】
≪発泡粒子成形体の引張り特性≫
本発明の発泡粒子成形体は、引張り強さ(A)[MPa]と引張り伸び(B)[%]の積が、好ましくは15以上である。本明細書において上記積[(A)×(B)]の値を発泡粒子成形体の耐久性の指標として用いることがある。発泡粒子成形体の引張り強さ(A)と発泡粒子成形体の引張り伸び(B)との積[(A)×(B)]が15以上であると、耐久性に優れるものとなる。上記観点から、積[(A)×(B)]が45以上であることがより好ましい。
発泡粒子成形体の耐久性を維持しつつ、TPOの有する柔軟性をより確実に発揮させる観点から、積[(A)×(B)]は140以下であることが好ましく、135以下であることがより好ましく、100以下であることが更に好ましい。
【0067】
また、TPOの有する柔軟性を維持する観点から、発泡粒子成形体の見掛け密度[kg/m]に対する引張り伸び(B)[%]の比が2.0以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましく、3.0以上であることが更に好ましい。
【0068】
発泡粒子成形体の引張り強さ及び引張り伸びは、JIS K 6767:1999に準拠して、バーチカルスライサーを用いて発泡粒子成形体から全ての面が切り出し面となるように、120mm×25mm×10mmの切り出し片を切り出し、該切り出し片から糸鋸を用いてダンベル状1号形状の試験片を作製し、該試験片を500mm/分の引張速度で引張試験を行うことにより求められる。測定される引張り時の最大引張り応力及び破断時の伸びを、それぞれ、引張り強さ及び引張り伸びとする。
【0069】
≪発泡粒子成形体のタイプCデュロメータ硬さ≫
発泡粒子成形体のタイプCデュロメータ硬さは、好ましくは5~70であり、より好ましくは10~60であり、更に好ましくは17~40である。タイプCデュロメータ硬さが上記範囲内であれば、柔軟性、回復性等のバランスに優れた発泡粒子成形体となる。
発泡粒子成形体のタイプCデュロメータ硬さは、JIS K 7312:1996に基づきタイプCデュロメータを用いて測定される。
【0070】
≪発泡粒子成形体の収縮率≫
発泡粒子成形体の収縮率は、発泡粒子成形体の製造のしやすさの観点から、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、更に好ましくは7.6%以下、より更に好ましくは7.0%以下である。
発泡粒子成形体の収縮率は、成形後の発泡粒子成形体を60℃のオーブン中で12時間乾燥した後に、室温まで冷却して得られた養生後の発泡粒子成形体の長手方向の寸法を測定し、成形型の長手方向の寸法に対する、成形型の長手方向の寸法と発泡粒子成形体の長手方向の寸法との差の比率から求められる。
【実施例
【0071】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0072】
各実施例及び比較例における、基材ポリマー、発泡粒子及び発泡粒子成形体について、以下の測定又は評価を行った。
【0073】
[測定方法]
(基材ポリマー及び発泡粒子)
≪TPO、ポリエチレン系樹脂、及び発泡粒子の融解熱量≫
TPO、ポリエチレン系樹脂、及び発泡粒子の融解熱量は、JIS K 7122:1987に基づき、約3mgの試験片を、熱流束示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、型番:DSC7020)を用いて、10℃/minの加熱速度で23℃から200℃まで昇温し、次いで10℃/minの冷却速度で200℃から30℃まで冷却した後、10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することにより得られるDSC曲線の融解ピークから、融解熱量を算出した。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、複数の融解ピークの面積の合計を融解熱量とした。
【0074】
≪TPO、ポリエチレン系樹脂、及び発泡粒子の融点≫
TPO、ポリエチレン系樹脂、及び発泡粒子の融点は、JIS K 7121:1987に基づき、約3mgの試験片の状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、該試験片を、10℃/minの加熱速度で23℃から200℃まで昇温し、次いで10℃/minの冷却速度で200℃から30℃まで冷却した後、10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することによりDSC曲線を取得し、融解ピークの形状を観察し、該融解ピークの頂点温度を、試験片の融点とした。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とした。
【0075】
≪TPO、ポリエチレン系樹脂、及び発泡粒子の結晶化温度≫
TPO、ポリエチレン系樹脂、及び発泡粒子の結晶化温度は、JIS K 7121:1987に基づき、約3mgの試験片を、熱流束示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、型番:DSC7020)を用いて、10℃/minの加熱速度で23℃から200℃まで昇温した後、10℃/minの冷却速度で200℃から30℃まで冷却することにより得られるDSC曲線における結晶化ピークのピーク温度を結晶化温度とした。なお、DSC曲線に複数の結晶化ピークが表れる場合は、ピーク高さの最も高い結晶化ピークのピーク温度を結晶化温度とした。
【0076】
≪TPO及びポリエチレン系樹脂の密度≫
TPO及びポリエチレン系樹脂の密度は、ASTM D792-13に準拠して測定した。
【0077】
≪TPO及びポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率≫
TPO及びポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K 7171:2016に準拠し、230℃でヒートプレスして厚さ4mmのシートを作製し、該シートから長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm(標準試験片)に切り出したものを使用した。また、圧子の半径R1及び支持台の半径R2は共に5mm、支点間距離は64mmとし、試験速度は2mm/minとした。
【0078】
≪TPO及びポリエチレン系樹脂のMFR≫
TPO及びポリエチレン系樹脂のMFRは、JIS K 7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0079】
≪基材ポリマーのタイプDデュロメータ硬さ≫
基材ポリマーのタイプDデュロメータ硬さは、JIS K 7215:1986に基づきタイプDデュロメータ(高分子計器(株)製、アスカーゴム硬度計D型)を用いて測定した。具体的には、多数の基材粒子をヒートプレスし、縦150mm×横150mm×厚さ4mmのシートを作製し、試験片とした。上記タイプDデュロメータを定圧荷重器(高分子計器(株)製、CL-150L)に取り付け、該シートの任意の箇所を10箇所測定し、算術平均することによりタイプDデュロメータ硬さを求めた。
【0080】
≪発泡粒子の平均粒子径≫
上記方法に従い、約3000個の発泡粒子を用いて、粒度分布測定装置(日機装(株)製「ミリトラック JPA」)により発泡粒子の体積基準における粒度分布を測定した。この粒度分布をもとに、粒子の形状を球として仮定して個数基準の粒度分布に換算して個数基準の粒度分布を得た。この個数基準の粒度分布に基づく粒子径を算術平均することにより、発泡粒子の平均粒子径を求めた。
【0081】
≪発泡粒子の平均質量≫
発泡粒子の平均質量は、無作為に100個以上の発泡粒子を選択し、該発泡粒子群の質量[mg]を測定し、測定に用いた発泡粒子の個数で除することにより求めた。
【0082】
≪発泡粒子の熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分(キシレン不溶分)≫
発泡粒子の熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分(キシレン不溶分)は、以下のように求めた。試料約1gを秤量(秤量した試料質量をG1[g]とした)してキシレン100g中で6時間煮沸した後、100メッシュの金網で速やかに濾過し、次いで金網上に残った沸騰キシレン不溶分を80℃の減圧乾燥機で8時間乾燥させてから沸騰キシレン不溶分の質量を秤量し(秤量した沸騰キシレン不溶分の質量をG2[g]とした)、式2によって求めた。
キシレン不溶分(質量%)=〔G2/G1〕×100 (式2)
【0083】
≪発泡粒子の見掛け密度≫
発泡粒子の見掛け密度は、以下のように求めた。発泡粒子群を、相対湿度50%、温度23℃、1atmの条件にて2日間放置した。次いで、温度23℃の水が入ったメスシリンダーを用意し、任意の量の発泡粒子群(発泡粒子群の質量W1[g])を上記メスシリンダー内の水中に金網等の道具を使用して沈めた。そして、金網等の道具の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積V1[L]を測定した。メスシリンダーに入れた発泡粒子群の質量W1[g]を容積V1[L]で除して(W1/V1)、単位を[kg/m]に換算することにより、発泡粒子の見掛け密度を求めた。
【0084】
≪発泡粒子の嵩密度≫
発泡粒子の嵩密度は、以下のように求めた。メスシリンダー等の容器内に自由落下によって発泡粒子を充填した後、容器を振動させ、その体積が恒量に達したときの目盛りを読んで発泡粒子の嵩体積[L]を求めた。容器内に充填された発泡粒子の全質量[g]を該嵩体積[L]で除して単位を[kg/m]に換算することにより発泡粒子の嵩密度を求めた。
【0085】
(発泡粒子成形体)
≪発泡粒子成形体表面における発泡粒子の個数≫
発泡粒子成形体表面における発泡粒子の個数は、以下の方法で測定した。発泡粒子成形体の端部を除く部分の表面の5箇所以上において、100mm×100mmの正方形の範囲内に存在する発泡粒子の数をカウントした。この値を単位面積(cm) 当たりの値に換算し、算術平均することにより算出した。なお、上記範囲の線上に存在する気泡については、隣接する2辺に交差している発泡粒子のみをカウントし、他の2辺に交差する発泡粒子はカウントしなかった。
【0086】
≪発泡粒子成形体の見掛け密度≫
発泡粒子成形体の見掛け密度は、以下のように求めた。発泡粒子成形体を、相対湿度50%、温度23℃、1atmの条件にて2日間放置した。次いで、温度23℃の水が入った容器を用意し、任意の量の発泡粒子成形体(質量W[g])を容器内の水中に金網等の道具を使用して沈めた。そして、金網等の道具の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子成形体の容積V[L]を測定した。容器に入れた発泡粒子成形体の質量W[g]を容積V[L]で除して(W/V)、単位を[kg/m]に換算することにより、発泡粒子成形体の見掛け密度を求めた。
【0087】
≪発泡粒子成形体のタイプCデュロメータ硬さ≫
発泡粒子成形体のタイプCデュロメータ硬さは、JIS K 7312:1996に基づきタイプCデュロメータを用いて測定した。具体的には、デュロメータC(高分子計器(株)製、アスカーゴム硬度計C型)を定圧荷重器(高分子計器(株)製、CL-150L)に取り付け、発泡粒子成形体の両表面について成形体の端部を除く任意の箇所各10箇所ずつ測定し、算術平均することによりタイプCデュロメータ硬さを求めた。
【0088】
≪発泡粒子成形体の収縮率≫
発泡粒子成形体の収縮率は、縦250mm、横200mm、厚み50mmの平板形状の金型を用いて成形した発泡粒子成形体を60℃のオーブン中で12時間乾燥養生した後に、室温まで冷却して得られた養生後の発泡粒子成形体の縦方向の寸法(L)を測定し、成形金型の縦方向の寸法(L)に対する、成形金型の縦方向の寸法と発泡粒子成形体の縦方向の寸法との差の比率((L-L)/L×100)を発泡粒子成形体の収縮率とした。
【0089】
≪発泡粒子成形体の引張り特性≫
発泡粒子成形体の引張り強さ及び引張り伸びは、JIS K 6767:1999に準拠して、バーチカルスライサーを用いて発泡粒子成形体から全ての面が切り出し面となるように、120mm×25mm×10mmの切り出し片を切り出し、該切り出し片から糸鋸を用いてダンベル状1号形状の試験片を作製し、該試験片を500mm/分の引張速度で引張試験を行うことにより求めた。測定される引張り時の最大引張り応力及び破断時の伸びを、それぞれ、引張り強さ(A)及び引張り伸び(B)とした。そして、引張り強さ(A)と引張り伸び(B)との積を算出した。
また、上述した方法により求められた発泡粒子成形体の見掛け密度に対する引張り伸び(B)の比を算出した。
【0090】
[評価方法]
(発泡粒子の成形性)
実施例及び比較例の発泡粒子の成形性について以下の評価を実施した。なお、本明細書において、「成形性」とは、融着性、表面性(二次発泡性)、及び回復性の総合評価を意味し、以下の基準で評価した。
A:融着性、表面性(二次発泡性)、及び回復性の総合評価のすべてがA
B:融着性、表面性(二次発泡性)、及び回復性の総合評価のいずれか1つ以上がB
【0091】
≪融着性≫
発泡粒子成形体の融着性は、以下の方法により評価した。発泡粒子成形体を折り曲げて破断し、破断面に存在する発泡粒子の数(C1)と破壊した発泡粒子の数(C2)とを求め、上記発泡粒子に対する破壊した発泡粒子の比率(C2/C1×100)を材料破壊率として算出した。異なる試験片を用いて測定を5回行い、それぞれの材料破壊率を求め、それらを算術平均して融着性を以下の基準で評価した。
A:材料破壊率90%以上
B:材料破壊率90%未満
【0092】
≪表面性(二次発泡性)≫
発泡粒子成形体の中央部に100mm×100mmの矩形を描き、矩形状のエリアの角から対角線上に線を引き、その線上の1mm×1mmの大きさ以上のボイド(間隙)の数を数え、発泡粒子成形体の表面性(二次発泡性)を以下のように評価した。
A:ボイドの数が3個未満
B:ボイドの数が3個以上
【0093】
≪回復性≫
得られた発泡粒子成形体の中央部分と四隅部分の厚みをそれぞれ測定し、四隅部分のうち最も厚みが厚い部分に対する中央部分の厚みの比を算出し、回復性について以下のように評価した。
A:厚み比が95%以上の場合
B:厚み比が95%未満
【0094】
≪成形可能なクラッキング量(圧縮比)範囲≫
型内成形時のクラッキング量を変更し、上記融着性、外観(二次発泡性)及び回復性の評価を行った。融着性、外観(二次発泡性)及び回復性のすべての評価がAであり、成形性の評価がAである発泡粒子成形体を成形可能なクラッキング量の範囲を成形可能なクラッキング量(圧縮比)範囲(%)とした。
複数のクラッキング量において成形性が良好な発泡粒子は、成形可能なクラッキング量(圧縮比)範囲が広く、部位によってクラッキング量の異なるような厚薄差を有する金型を用いて作製される成形体の成形性により優れた発泡粒子であると判断できる。また、小さいクラッキング量で成形できる発泡粒子は、厚薄差を有する厚肉部において成形性に優れた発泡粒子であり、大きいクラッキング量で成形できる発泡粒子は、厚薄差を有する薄肉部において成形性に優れた発泡粒子であると判断できる。
【0095】
<発泡粒子及び発泡粒子成形体の作製>
発泡粒子を作製するために主に用いたTPO及びポリエチレン系樹脂(PE)を表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
(実施例1)
<発泡粒子の作製>
TPOとしてTPO1を80質量%、PEとしてHDPE1を20質量%の基材ポリマー原料(ただし、TPOとPEの合計を100質量%とする)と、該混合原料100質量部に対して気泡調整剤としてホウ酸亜鉛(ZnB、富田製薬(株)製、ホウ酸亜鉛2335、平均粒子径6μm)0.1質量部とを押出機に投入し、230℃で溶融混練してφ2mmのダイからストランド状に押し出し、水中で冷却してからペレタイザーにて粒子質量2.0mgとなるようにカットして造粒し、基材粒子を得た。容積5Lの密閉容器に該基材粒子1kgを分散媒である水3リットル、分散剤としてカオリンを3g、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.04g、架橋剤としてジクミルパーオキサイドを基材粒子100質量部に対して0.90質量部添加し、密閉容器を密閉した後撹拌を開始した。その後、発泡剤として二酸化炭素1.5MPaを密閉容器内に圧入し、温度110℃まで昇温して30分間保持した。その後、撹拌下で架橋温度/発泡温度の160℃まで昇温し、30分間保持するとともに、さらに発泡剤として二酸化炭素を圧入し基材粒子に含浸させた。このときのオートクレーブ内の圧力(蒸気圧)は4.0MPa(G)であった。その後、圧力を維持しつつ、密閉容器内の内容物を大気圧下に放出して発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を用いて前記発泡粒子の平均質量、平均粒子径、融解熱量、融点(Tm)、結晶化温度(Tc)、キシレン不溶分、見掛け密度、嵩密度を測定し、差[Tm-Tc]を算出した。その結果を表2に示す。
<発泡粒子成形体の作製>
発泡粒子を密閉容器に投入し、0.2MPa(G)の圧縮空気で12時間加圧して発泡粒子内に0.10MPa(G)の内圧を付与し、取り出した後、縦250mm、横200mm、厚み20mmの平板形状の金型に該発泡粒子を充填し(クラッキング量20%)、0.20MPa(G)の成形圧でスチーム加熱した後、冷却して金型より成形体を取り出す型内成形を行い、さらに該成形体を60℃に調整されたオーブン内で12時間加熱乾燥養生した後に取り出し、発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子成形体を用いて前記発泡粒子成形体の見掛け密度、収縮率、タイプCデュロメータ硬さ、引張り強度(A)、引張り伸び(B)を測定し、積[(A)×(B)]、比[(B)/見掛け密度]を算出した。その結果を表2に示す。
【0098】
(実施例2)
架橋剤としてのジクミルパーオキサイドの添加量を、基材粒子100質量部に対して、0.90質量部から0.95質量部に変更し、発泡剤として二酸化炭素を含浸させたときのオートクレーブ内の圧力(蒸気圧)を、4.0MPa(G)から3.5MPa(G)に変更した以外は、実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。その結果を表2に示す。
【0099】
(実施例3)
ペレタイザーにてカットされる粒子質量を、2.0mgから3.0mgに変更し、発泡剤として二酸化炭素を含浸させたときのオートクレーブ内の圧力(蒸気圧)を、4.0MPa(G)から2.5MPa(G)に変更した以外は、実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。その結果を表2に示す。
【0100】
(実施例4)
ペレタイザーにてカットされる粒子質量を、2.0mgから5.0mgに変更し、架橋剤としてのジクミルパーオキサイドの添加量を、基材粒子100質量部に対して、0.90質量部から0.85質量部に変更し、発泡剤として二酸化炭素を含浸させたときのオートクレーブ内の圧力(蒸気圧)を、4.0MPa(G)から2.5MPa(G)に変更した以外は、実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。その結果を表2に示す。
【0101】
(実施例5)
基材ポリマー原料のPEを、HDPE1からHDPE2に変更し、発泡剤として二酸化炭素を含浸させたときのオートクレーブ内の圧力(蒸気圧)を、4.0MPa(G)から2.5MPa(G)に変更した以外は、実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。その結果を表2に示す。
【0102】
(実施例6)
基材ポリマー原料における、TPO1の配合量を、80質量%から95質量%、HDPE1の配合量を、20質量%から5質量%に変更し、架橋剤としてのジクミルパーオキサイドの添加量を、基材粒子100質量部に対して、0.90質量部から0.85質量部に変更し、発泡剤として二酸化炭素を含浸させたときのオートクレーブ内の圧力(蒸気圧)を、4.0MPa(G)から2.5MPa(G)に変更した以外は、実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。その結果を表2に示す。
【0103】
(実施例7)
基材ポリマーのPEを、HDPE1からLLDPEに変更し、発泡剤として二酸化炭素を含浸させたときのオートクレーブ内の圧力(蒸気圧)を、4.0MPa(G)から2.5MPa(G)に変更した以外は、実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。その結果を表2に示す。
【0104】
(実施例8)
基材ポリマーのTPOをTPO1からTPO2に変更し、架橋剤としてのジクミルパーオキサイドの添加量を、基材粒子100質量部に対して、0.90質量部から0.95質量部に変更し、発泡剤として二酸化炭素を含浸させたときのオートクレーブ内の圧力(蒸気圧)を、4.0MPa(G)から3.5MPa(G)に変更した以外は、実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。その結果を表2に示す。
【0105】
(比較例1)
基材ポリマーにおいて、PEを用いず、TPO1の配合量を100質量%に変更し、架橋剤としてのジクミルパーオキサイドの添加量を、基材粒子100質量部に対して、0.90質量部から0.80質量部に変更し、発泡剤として二酸化炭素を含浸させたときのオートクレーブ内の圧力(蒸気圧)を、4.0MPa(G)から3.5MPa(G)に変更した以外は、実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。その結果を表3に示す。
【0106】
(比較例2)
ペレタイザーにてカットされる粒子質量を、2.0mgから3.0mgに変更し、発泡剤として二酸化炭素を含浸させたときのオートクレーブ内の圧力(蒸気圧)を、3.5MPa(G)から2.5MPa(G)に変更した以外は、比較例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。その結果を表3に示す。
【0107】
(比較例3)
ペレタイザーにてカットされる粒子質量を、2.0mgから8.0mgに変更し、架橋剤としてのジクミルパーオキサイドの添加量を、基材粒子100質量部に対して、0.90質量部から0.85質量部に変更し、発泡剤として二酸化炭素を含浸させたときのオートクレーブ内の圧力(蒸気圧)を、4.0MPa(G)から3.0MPa(G)に変更した以外は、実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。その結果を表3に示す。
【0108】
(比較例4)
基材ポリマー原料における、TPO1の配合量を、80質量%から70質量%、HDPE1の配合量を、20質量%から30質量%に変更し、架橋剤としてのジクミルパーオキサイドの添加量を、基材粒子100質量部に対して、0.90質量部から0.95質量部に変更し、発泡剤として二酸化炭素を含浸させたときのオートクレーブ内の圧力(蒸気圧)を、4.0MPa(G)から2.5MPa(G)に変更した以外は、実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。その結果を表3に示す。
【0109】
(比較例5)
基材ポリマー原料における、TPO1の配合量を、80質量%から50質量%、HDPE1の配合量を、20質量%から50質量%に変更し、架橋剤としてのジクミルパーオキサイドの添加量を、基材粒子100質量部に対して、0.90質量部から1.0質量部に変更し、発泡剤として二酸化炭素を含浸させたときのオートクレーブ内の圧力(蒸気圧)を、4.0MPa(G)から2.5MPa(G)に変更した以外は、実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。その結果を表3に示す。
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
<成形可能なクラッキング量(圧縮比)範囲>
成形型として金型(縦250mm、横200mm、厚み20mm)を使用し、クラッキング量を、5%(1mm)、10%(2mm)、20%(4mm)、30%(6mm)、40%(8mm)に調整した以外は、上記と同様に発泡粒子成形体を作製し、測定及び評価を行った。なお、クラッキング量(%)に併記した数値(mm)は、発泡粒子を金型キャビティ内に充填した後、更に行った型締めの際の雌型内の雄型の移動距離である。その結果を表4及び表5に示す。全てのクラッキング量の条件において、成形圧は0.20MPa(G)である。
【0113】
【表4】
【0114】
【表5】
【0115】
表4から分かるように、本発明の発泡粒子は、一定の成形圧において成形可能なクラッキング量の範囲が広いものであった。したがって、本発明の発泡粒子は厚薄差を有する金型を用いて作製される成形体の成形性により優れた発泡粒子である。また、表2から分かるように、得られた発泡粒子成形体は、積[A×B]が15以上であり、TPOの有する柔軟性を発揮しつつ、優れた耐久性を示した。したがって、本発明によれば、より複雑な形状を有していても、成形性、耐久性に優れる成形体を成形可能である。
【0116】
比較例1及び比較例2の発泡粒子は、差[Tm-Tc]が高すぎるため、クラッキング量が低い成形条件ではヒケが生じ、良好な成形体を成形可能なクラッキング量の範囲が狭いものであった。
【0117】
比較例3の発泡粒子は、平均粒子径が大きすぎるため、発泡粒子の充填性が悪く、良好な成形体を成形可能なクラッキング量の範囲が狭いものであった。また、得られる成形体は耐久性に劣るものであった。
【0118】
比較例4及び比較例5の発泡粒子は、融解熱量が大きすぎるため、クラッキング量を高くして成形した場合には融着性が不十分となり、良好な成形体を成形可能なクラッキング量の範囲が狭いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の発泡粒子は、厚薄差が大きく複雑な形状を有する成形体を成形可能であるので、スポーツ用品、自動車部材、建材等の分野において更なる用途展開が期待される。