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  • 特許-回転電機の回転子 図1
  • 特許-回転電機の回転子 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】回転電機の回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/16 20060101AFI20231018BHJP
   F16F 15/22 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
H02K15/16 A
F16F15/22 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020045418
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021150984
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】平井 百合名
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-299191(JP,A)
【文献】特開2012-165534(JP,A)
【文献】特開2005-160196(JP,A)
【文献】特開2003-274601(JP,A)
【文献】特開2019-92274(JP,A)
【文献】特開2021-23055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/16
F16F 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心と、
この鉄心の軸方向負荷側端面及び反負荷側端面の外周部分にそれぞれ取り付けられる、環状の負荷側及び反負荷側端板とを備え、
前記負荷側及び反負荷側端板の少なくとも一方には、周方向に並ぶ複数のバランス調整部材が、当該端板の内周面から回転中心方向に突出するように形成されている回転電機の回転子。
【請求項2】
前記バランス調整部材は、少なくとも周方向の幅寸法が、基端部から先端部にかけて1段階以上短くなるように形成されている請求項1記載の回転電機の回転子。
【請求項3】
前記バランス調整部材には、幅寸法が他の部位よりも短くなる縊れ部が、1か所以上に形成されている請求項1又は2記載の回転電機の回転子。
【請求項4】
前記バランス調整部材は、前記負荷側及び反負荷側端板の双方に形成されており、
前記負荷側端板と、前記反負荷側端板とは、それぞれに形成されているバランス調整部材の周方向位置にずれが生じるように、前記鉄心の各端面にそれぞれ取り付けられている請求項1から3の何れか一項に記載の回転電機の回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機の回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の回転子には、径方向に重量のアンバランスが発生していることが多く、製品として出荷する前にアンバランスを解消するための調整作業を行っている。その調整は、一般には工作機械等を用いて回転子の一部を削って行うことが多いが、例えば特許文献1に開示されているように、より簡易にバランス調整を行うことができる回転子の構造も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-299191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている回転子の構造では、バランス調整を行うための突起4が軸方向に突出するように形成されているため、その分だけ軸方向にスペースが必要であり、回転電機の小型化を阻害している。
そこで、軸方向に要するスペースを削減してバランス調整を行うことができる回転電機の回転子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の回転電機の回転子は、鉄心と、この鉄心の軸方向前端面及び後端面の外周部分にそれぞれ取り付けられる、環状の負荷側及び反負荷側端板とを備え、前記負荷側及び反負荷側端板の少なくとも一方には、周方向に並ぶ複数のバランス調整部材が、当該端板の内周面から回転中心方向に突出するように形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態であり、端板を回転子鉄心に取り付けた状態を示す正面図
図2図1のA-O-A断面を示す図
図3】第2実施形態であり、端板を回転子鉄心に取り付けた状態を示す正面図
図4図3のA-O-A断面を示す図
図5】端板を回転子鉄心に取り付けた状態を示す背面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1及び図2を参照して説明する。図2に示すように、本実施形態の回転子1は、回転軸2と、回転子鉄心3と、端板4L及び4Oとを備えている。回転子1は、図示しない固定子と共にインナーロータ形のモータを構成するもので、固定子の内周部に収納される。回転子鉄心3は、複数枚の打抜鋼板を軸方向に積層して構成されている。
【0008】
端板4は例えば樹脂製であり、回転子鉄心3の外周部に沿って、軸方向に厚みを有した円環状に形成されている。端板4の内周面には、回転中心方向に向かって延びるように、バランス調整部材に相当する重り5部が複数個,例えば20個形成されている。重り部5は概ね棒状であるが、その途中部位の2か所に、他の部位よりも若干径小となる縊れ部6を有している。尚、重り部5は端板4と一体で成形されており、例えば、図2に示す端板4を図中縦方向に2分割したものを金型により成形し、成形したもの2つを張り合わせて構成されている。
【0009】
端板4には、図1に示すように、90度毎の4か所に、ねじにより端板4を固定するための挿通孔7が形成されている。それらに合わせて、回転子鉄心3にも挿通孔8が形成されている。そして、端板4L側よりねじ9を挿通孔7及び8に挿通し、端板4O側の挿通孔7より導出されたねじ9の先端部にナット10を取り付けて、端板4L及び4Oを回転子鉄心3に固定する。
【0010】
以上のように構成される本実施形態の回転子1によれば、作業者は、端板4の内周側に形成された重り部5の一部を例えばニッパ等で切断したり、鑢掛けして削る等することで、径方向のバランスを調整できる。その際に、重り部5が縊れ部6を有していることで、その部分において切断や切削を容易に行うことができる。そして、重り部5が端板4の内周側に形成されるので、軸方向に要するスペースを特許文献1よりも削減でき、回転電機を小型に構成できる。
【0011】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。図3及び図4に示すように、第2実施形態の回転子11は、端板4に替わる端板12を備えており、端板12の内周面には、重り部5とは形状が異なる重り部13が複数、例えば12個形成されている。重り部13は概ね円錐台状であるが、径方向側の幅が軸方向の幅よりも広くなっている。そして、重り部13の途中部位の2か所には、それぞれ縊れ部14,15が形成されており、重り部13は、端板12の内周側から回転中心方向に向かうに従い、段階的に幅寸法が狭くなっている。
【0012】
また、図5に示すように、反負荷側の端板12Oは、挿通孔7が形成されている位置が端板12Lとは相違しており、回転子鉄心3に取り付けた際に、重り部13の径方向位置が、端板12Lの位置を基準として時計回りに15度ずれた状態となっている。
【0013】
以上のように構成される第2実施形態によれば、重り部13を、その周方向の幅寸法が、基端部から先端部にかけて段階的に短くなるように形成した。これにより、回転子11が回転した際に作用する遠心力に抗する強度を確保することができる。また、反負荷側の端板12Oを、負荷側の端板12Lの位置を基準として時計回りにずらした状態で回転子鉄心3に取り付けた。これにより、重り部13の径方向位置が負荷側と反負荷側とで異なるため、回転子11のバランス調整をより多様に行うことができる。
【0014】
(その他の実施形態)
端板は、負荷側,反負荷側の何れか一方のみに配置しても良い。
端板を金属で構成しても良い。
縊れ部は、必要に応じて設ければ良い。
第2実施形態において反負荷側をずらす回転角は、15度に限らない。
第2実施形態において反負荷側をずらす構成を、第1実施形態に適用しても良い。
重り部を形成する個数は、個別の設計に応じて適宜変更すれば良い。
回転子鉄心に永久磁石を配置したものに適用しても良い。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0016】
図面中、1は回転子、2は回転軸、3は回転子鉄心、4は端板、5は重り部、6は縊れ部、11は回転子、12は端板、13は重り部を示す。
図1
図2
図3
図4
図5