(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
B60K 28/10 20060101AFI20231018BHJP
A01B 71/02 20060101ALI20231018BHJP
B60K 17/28 20060101ALI20231018BHJP
F02D 29/00 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B60K28/10 Z
A01B71/02 H
B60K17/28 C
F02D29/00 B
(21)【出願番号】P 2020049786
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康仁
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-087773(JP,A)
【文献】特開平10-329560(JP,A)
【文献】特開平10-315794(JP,A)
【文献】特開平10-211824(JP,A)
【文献】特開平10-217783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/28-17/36,
28/00-28/16
A01B 51/00-61/04,
63/14-67/00,
71/00-79/02
F02D 29/00-29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘作業を行うことが可能なトラクタであって、
走行機体に搭載されたエンジンと、
前記エンジンから伝動される動力によって回転駆動されるように前記走行機体に設けられ且つ前記走行機体に昇降可能に連結されたロータリ耕耘装置に動力を出力する回転軸と、
前記ロータリ耕耘装置の昇降を検出する昇降検出手段と、
前記走行機体の走行の有無及び前後進の検出を行う走行検出手段と、
前記回転軸の回転方向の正逆転切換を行うことが可能であるとともに、前記エンジンの回転数
であるエンジン回転数を制御することが可能な制御部と
、を備え、
前記制御部は、予め定めた所定の条件である開始条件が満たされたことが確認された場合、前記正逆転切換によって前記ロータリ耕耘装置が逆転駆動され且つ前記エンジン回転数を、前記ロータリ耕耘装置が正転駆動されている場合における所定の値又は範囲のエンジン回転数である通常回転数よりも低下させた所定の値又は範囲のエンジン回転数である低速回転数とする低速モードへの切替を行う
ように構成され、
前記制御部は、低速モードへの切替中、予め定めた所定の条件である終了条件が満たされたことが確認された場合、前記ロータリ耕耘装置を正転駆動させ且つ前記エンジン回転数を通常回転数とする通常モードへの切替を行うように構成され、
前記昇降検出手段によって前記ロータリ耕耘装置の下降が検出され且つ前記走行検出手段によって前記走行機体の前進走行が検出された後、前記走行検出手段によって前記走行機体の走行停止が検出されたことを、前記終了条件の少なくとも一部とする
ことを特徴するトラクタ。
【請求項2】
耕耘作業を行うことが可能なトラクタであって、
走行機体に搭載されたエンジンと、
前記エンジンから伝動される動力によって回転駆動されるように前記走行機体に設けられ且つ前記走行機体に昇降可能に連結されたロータリ耕耘装置に動力を出力する回転軸と、
前記ロータリ耕耘装置の昇降を検出する昇降検出手段と、
前記走行機体の走行の有無及び前後進の検出を行う走行検出手段と
、
前記回転軸の回転方向の正逆転切換を行うことが可能であるとともに、前記エンジンの回転数であるエンジン回転数を制御することが可能な制御部とを備え、
前記制御部は、予め定めた所定の条件である開始条件が満たされたことが確認された場合、前記正逆転切換によって前記ロータリ耕耘装置が逆転駆動され且つ前記エンジン回転数を、前記ロータリ耕耘装置が正転駆動されている場合における所定の値又は範囲のエンジン回転数である通常回転数よりも低下させた所定の値又は範囲のエンジン回転数である低速回転数とする低速モードへの切替を行うように構成され、
前記制御部は、前記ロータリ耕耘装置を正転駆動させ且つ前記エンジン回転数を通常回転数とする通常モードへの切替中、予め定めた所定の条件である開始条件が満たされたことが確認された場合、低速モードへの切替を行うように構成され、
前記昇降検出手段によって前記ロータリ耕耘装置の上昇が検出され且つ前記走行検出手段によって前記走行機体の後進走行が検出された後、前記走行検出手段によって前記走行機体の走行停止が検出されたことを、前記開始条件の少なくとも一部とする
ことを特徴とするトラクタ。
【請求項3】
入切操作可能なモード切替操作具を備え、
前記制御部は、前記モード切替操作具による入操作が検出されている場合のみ、前記低速モードから前記通常モードへの切替、或いは前記通常モードから前記低速モードへの切替を許容するように構成された
請求項1
又は2の何れかに記載のトラクタ。
【請求項4】
報知手段を備え、
前記制御部が、前記低速モードに切り替えている際には、前記報知手段による報知を行う
請求項1
又は2の何れかに記載のトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘作業を行うことが可能なトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体に搭載されたエンジンと、前記エンジンから伝動される動力によって回転駆動されるように前記走行機体に設けられ且つ前記走行機体に昇降可能に連結されたロータリ耕耘装置に動力を出力する回転軸と、前記回転軸の回転方向の正逆転切換を行う正逆転切換操作手段とを備えたトラクタが従来である。
【0003】
該構成のトラクタによれば、ロータリ耕耘装置を正転駆動させて行う耕耘作業等に起因して、圃場の四隅や所定の範囲に集中的に盛られた土を、ロータリ耕耘装置を逆転駆動させて行う土寄せ作業によって均すことが容易になる一方で、ロータリ耕耘装置の耕耘爪は、通常、正転駆動されるようにしか設計されておらず、ロータリ耕耘装置を意図せずに高速で逆転駆動させた場合、故障等の不具合が生じる原因になる。
【0004】
このような不具合を防止するため、前記回転軸の変速機構が高速に切り換えられている場合には、ロータリ耕耘装置の駆動を規制する特許文献1に示すトラクタ(例えば、特許文献1を参照)や、限られた条件下においてのみ、正逆転切換操作手段によるロータリ耕耘装置の逆転駆動を許容する特許文献2に示すトラクタが開発され、公知になっている。
【0005】
特許文献1,2に示すトラクタによれば、ロータリ耕耘装置が高速で逆転駆動されることは確実に防止できる一方で、ロータリ耕耘装置の逆転駆動を許容する状態に切り替える作業が必要になり、手間が増える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耕耘作業を行うことが可能なトラクタであって、ロータリ耕耘装置が、意図せずに高速で逆転駆動されることが効率的に防止されるとともに、ロータリ耕耘装置を適切な状況下で逆転駆動させること自体は簡易且つ迅速に実行できるトラクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、耕耘作業を行うことが可能なトラクタであって、走行機体に搭載されたエンジンと、前記エンジンから伝動される動力によって回転駆動されるように前記走行機体に設けられ且つ前記走行機体に昇降可能に連結されたロータリ耕耘装置に動力を出力する回転軸と、前記回転軸の回転方向の正逆転切換を行うことが可能であるとともに、前記エンジンの回転数であるエンジン回転数を制御することが可能な制御部とを備え、前記制御部は、予め定めた所定の条件である開始条件が満たされたことが確認された場合、前記正逆転切換によって前記ロータリ耕耘装置が逆転駆動され且つ前記エンジン回転数を、前記ロータリ耕耘装置が正転駆動されている場合における所定の値又は範囲のエンジン回転数である通常回転数よりも低下させた所定の値又は範囲のエンジン回転数である低速回転数とする低速モードへの切替を行うことを特徴としている。
【0009】
第2に、前記ロータリ耕耘装置の昇降を検出する昇降検出手段と、前記走行機体の走行の有無及び前後進の検出を行う走行検出手段とを備え、前記制御部は、低速モードへの切替中、予め定めた所定の条件である終了条件が満たされたことが確認された場合、前記ロータリ耕耘装置を正転駆動させ且つ前記エンジン回転数を通常回転数とする通常モードへの切替を行うように構成され、前記昇降検出手段によって前記ロータリ耕耘装置の下降が検出され且つ前記走行検出手段によって前記走行機体の前進走行が検出された後、前記走行検出手段によって前記走行機体の走行停止が検出されたことを、前記終了条件の少なくとも一部とすることを特徴としている。
【0010】
第3に、前記ロータリ耕耘装置の昇降を検出する昇降検出手段と、前記走行機体の走行の有無及び前後進の検出を行う走行検出手段とを備え、前記制御部は、前記ロータリ耕耘装置を正転駆動させ且つ前記エンジン回転数を通常回転数とする通常モードへの切替中、予め定めた所定の条件である開始条件が満たされたことが確認された場合、低速モードへの切替を行うように構成され、前記昇降検出手段によって前記ロータリ耕耘装置の上昇が検出され且つ前記走行検出手段によって前記走行機体の後進走行が検出されたことを、前記開始条件の少なくとも一部とすることを特徴としている。
【0011】
第4に、入切操作可能なモード切替操作具を備え、前記制御部は、前記モード切替操作具による入操作が検出されている場合のみ、前記低速モードから前記通常モードへの切替、或いは前記通常モードから前記低速モードへの切替を許容するように構成されたことを特徴としている。
【0012】
第5に、報知手段を備え、前記制御部が、前記低速モードに切り替えている際には、前記報知手段による報知を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
前記ロータリ耕耘装置は、所定条件を満たした場合に低速モードに切り替えられることにより、逆転駆動され且つエンジン回転数が低速回転数に切り換えられるため、該ロータリ耕耘装置が、意図せずに高速で逆転駆動されることが効率的に防止されるとともに、ロータリ耕耘装置を適切な状況下で逆転駆動させること自体は簡易且つ迅速に実行できるトラクタを提供することを課題とする。
【0014】
前記ロータリ耕耘装置の昇降を検出する昇降検出手段と、前記走行機体の走行の有無及び前後進の検出を行う走行検出手段とを備え、前記制御部は、低速モードへの切替中、予め定めた所定の条件である終了条件が満たされたことが確認された場合、前記ロータリ耕耘装置を正転駆動させ且つ前記エンジン回転数を通常回転数とする通常モードへの切替を行うように構成され、前記昇降検出手段によって前記ロータリ耕耘装置の下降が検出され且つ前記走行検出手段によって前記走行機体の前進走行が検出された後、前記走行検出手段によって前記走行機体の走行停止が検出されたことを、前記終了条件の少なくとも一部とするものによれば、別途の切替操作を行うことなく、ロータリ耕耘装置を下降させ且つ走行機体を前進走行させた後に、該走行機体を走行停止させるという自然な流れによって、低速モードから通常モードへの切替をスムーズ且つ迅速な行うことが可能になる。
【0015】
前記ロータリ耕耘装置の昇降を検出する昇降検出手段と、前記走行機体の走行の有無及び前後進の検出を行う走行検出手段とを備え、前記制御部は、前記ロータリ耕耘装置を正転駆動させ且つ前記エンジン回転数を通常回転数とする通常モードへの切替中、予め定めた所定の条件である開始条件が満たされたことが確認された場合、低速モードへの切替を行うように構成され、前記昇降検出手段によって前記ロータリ耕耘装置の上昇が検出され且つ前記走行検出手段によって前記走行機体の後進走行が検出された後、前記走行検出手段によって前記走行機体の走行停止が検出されたことを、前記開始条件の少なくとも一部とするものによれば、別途の切替操作を行うことなく、ロータリ耕耘装置を上昇させ且つ走行機体を後進走行させた後に、該走行機体を走行停止させるという自然な流れによって、通常モードから低速モードへの切替をスムーズ且つ迅速な行うことが可能になる。
【0016】
入切操作可能なモード切替操作具を備え、前記制御部は、前記モード切替操作具による入操作が検出されている場合のみ、前記低速モードから前記通常モードへの切替、或いは前記通常モードから前記低速モードへの切替を許容するように構成されたものによれば、モード切替操作具の切操作によって、ロータリ耕耘装置を意図的に高速で逆転駆動させることも可能になり、汎用性が向上する。
【0017】
報知手段を備え、前記制御部が、前記低速モードに切り替えている際には、前記報知手段による報知を行うものによれば、ロータリ耕耘装置を低速で逆転駆動させる低速モードに切り替えられていることが報知されるため、その間の無駄な作業を行うことを防止される他、意図しない状態でロータリ耕耘装置が低速で逆転駆動されることも防止される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明を適用した農業用トラクタを示した全体側面図である。
【
図3】(A)は、操縦部を示した要部正面図であり、(B)は、操作パネルを示した平面図である。
【
図4】ロータリ耕耘装置の作業状態を示した要部側面図である。
【
図5】(A)は、耕耘作業時における土寄せ作業の作業経路を示した図であり、(B)は、代掻き作業後における土寄せ作業の作業経路を示した図である。
【
図8】別実施例の土寄せ制御の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明を適用した農業用トラクタを示した全体側面図であり、
図2は、操縦部を示した要部平面図であり、
図3(A)は、操縦部を示した要部正面図であり、
図3(B)は、操作パネルを示した平面図である。作業車両の一種である本トラクタは、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2と、前後輪1,2によって支持された走行機体3と、走行機体3の後部に昇降リンク4を介して昇降自在に連結される作業機であるロータリ耕耘装置6とを備え、前記ロータリ耕耘装置6を圃場面側の作業高さに昇降作動させた状態で、該ロータリ耕耘装置6を駆動させることにより、圃場の耕耘作業を行うことができる。
【0020】
前記走行機体3は、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2からなる走行装置によって支持され且つ前後方向に延びる機体フレーム7と、該機体フレーム7の前部に載置固定されたエンジン(図示しない)を開閉自在にカバーするボンネット8と、該ボンネット8の後方に配置されてオペレータが乗込む操縦部9と、該操縦部9の後部側に支持された逆U字状の安全フレーム10とを有している。
【0021】
前記操縦部9は、オペレータが着座する座席11と、該座席11の前方側に配置されてステアリング軸回りに操向操作可能に設けられたステアリングハンドル12と、該ステアリングハンドル12の下方側に配置されて前記ロータリ耕耘装置6の駆動速度を操作するPTO変速レバー(正逆転切換操作手段)13と、該ステアリングハンドル12の真下側に配置されて前記ロータリ耕耘装置6の昇降作動の切換を操作する作業機昇降レバー(クイックアップレバー)14と、前記ステアリングハンドル12の前方に配置されたフロントパネル16と、前記座席11の左右側方(図示する例では右)側に配置されたサイド操作パネル17と、前記ステアリングハンドル12と前記座席11との間に形成されたフロアステップ18とが設けられており、該フロアステップ18側には、走行機体3の制動操作を行うブレーキ操作具(ブレーキペダル)15が設けられている(
図1乃至
図3(A)参照)。
【0022】
前記PTO変速レバー13は、H状に形成されたレバーガイド(図示しない)により、ニュートラル位置から左右一方側に揺動された状態から上下(前後)方向に揺動操作可能に構成されている。具体的には、該PTO変速レバー13は、低速位置、中速位置、高速位置(1速、2速、3速)に変速操作可能に構成されることで、前記PTO軸の駆動速度を3段階で変速操作できるように構成される他、該PTO軸が逆転駆動する逆転駆動位置に切換操作できるように構成されている。
【0023】
前記サイド操作パネル17は、その前部側に前後揺動操作によって走行変速操作を行う主変速レバー19が設けられ、該主変速レバー19の左右内側に並列するように前記ロータリ耕耘装置の昇降位置を手動操作する作業機昇降レバー(ポジションコントロールレバー)21が設けられている。また、該作業機昇降レバー21の後端側には、前記ロータリ耕耘装置6を僅かに上昇作動させる微調整スイッチ22が設けられ、前記主変速レバー19の後方側には、前記ロータリ耕耘装置6により圃場を耕す深さを設定する耕深調整ダイヤル23が配置されている(
図3(B)参照)。
【0024】
また、前記サイド操作パネル17の後部左右外側には、前記ロータリ耕耘装置6への動力の入切を操作するPTOスイッチ24と、後述する制御部による土寄せ制御を行うための土寄せモードに切換えるためのモード切替スイッチ(モード切換操作具)26とが設けられており、該モード切替スイッチ26の近傍には、土寄せモードへの切換え状況や、土寄せ作業中であることを作業者に報知する報知ランプ(報知手段)51が設けられている。ちなみに、該サイド操作パネル17の後部左右内側には、アームレスト27が設けられている。
【0025】
次に、
図4に基づき、前記ロータリ耕耘装置について説明する。
図4は、ロータリ耕耘装置の作業状態を示した要部側面図である。
【0026】
前記ロータリ耕耘装置6は、前方中央のヒッチ機構31を介して前記昇降リンク4側に昇降自在に連結され、昇降シリンダ(図示しない)の伸縮作動によって前記走行機体3の後部に昇降可能に設けられている。また、該ロータリ耕耘装置6は、前記走行機体3の後端側から後方に向けて突設されているPTO軸32とユニバーサルジョイントを介して連結されることにより、前記走行機体3側のエンジンから伝動される動力が入力されるように構成されている。
【0027】
該ロータリ耕耘装置6は、ロータリ軸33に軸支された耕耘爪34等からなる耕耘作業部であるロータリ35と、前記PTO軸32から伝動された動力を前記耕耘爪34側に伝動する上下方向の伝動ケース36と、前記ロータリ35の左右側方側に前後(上下)揺動可能に支持されたサイドカバー37と、左右一対のサイドカバー37,37間に配置されて前記ロータリ35の上側から後方に亘る範囲を覆うリヤカバー38とを有している(
図4参照)。
【0028】
上記ロータリ35は、圃場面に接地した状態で前記走行機体3が前進した際に進行方向に沿って回転(順回転)する方向、言い換えると、該ロータリ35の前部で前記耕耘爪が上方から下方に向かって回転する方向(
図4で示される例では反時計回り)を正転方向とし、前記PTO変速レバー13の操作に応じて、該ロータリ35を逆転方向にも回転駆動させることができるように構成されている。
【0029】
また、上記ロータリ35を構成する前記耕耘爪34は、前記ロータリ軸33側から先端側に向かって放射方向に延設されるとともに、該耕耘爪34が前記ロータリ35の逆転方向に向かって湾曲形成されるように構成されている(
図1及び
図4参照)。
【0030】
該構成によれば、前記走行機体3の前進走行時に前記ロータリ35(ロータリ耕耘装置6)を正転方向に回転駆動させて圃場面の耕耘作業を行った場合(
図4参照)、前記耕耘爪34が圃場への没入方向に対して逃げる方向に湾曲するため、該耕耘爪34が破損し難くなる。
【0031】
以上より、上述のロータリ耕耘装置6は、前記ロータリ35を正転方向に回転駆動させながら前記走行機体3を前進走行させることにより、圃場の土を耕しつつ、耕した圃場の土を後方に送る(盛る)ことができる。このとき、前記ロータリ耕耘装置6のロータリ35によって耕された土は、一対の前記サイドカバー37によって前記ロータリ耕耘装置6より左右外側に飛散することを防止しつつ、該ロータリ耕耘装置6の後方に盛られた土を前記リヤカバー38によって均すことができるように構成されている。
【0032】
上述の前記ロータリ耕耘装置6は、耕耘作業時や代掻き作業後に所定のタイミングで逆転駆動させながら前進走行することにより、前記ロータリ35内に土を抱えて移動する土寄せ作業を行うことができる(
図5参照)。これにより、耕耘作業や代掻き作業によって圃場端側に多く溜まりやすい土を移動させて圃場全体を均すことができる。詳しくは後述する。
【0033】
このとき、該ロータリ耕耘装置6は、詳しくは後述する制御部50により、前記ロータリ35を逆転駆動させて土寄せ作業を行う際に、前記エンジンの回転数を通常時よりも減速させる土寄せ制御(低速回転制御)が実行可能に構成されている。該制御部の詳細についても後述する。
【0034】
次に、
図5に基づき、ロータリ耕耘装置6による耕耘作業時の土寄せ作業と、代掻き作業後の土寄せ作業について説明する。
図5(A)は、耕耘作業時における土寄せ作業の作業経路を示した図であり、
図5(B)は、代掻き作業時における土寄せ作業の作業経路を示した図である。
【0035】
まず、
図5(A)に基づいて、前記ロータリ耕耘装置6による圃場面の耕耘作業について説明する。作業用の前記トラクタは、前記ロータリ耕耘装置6による耕耘作業を行いながら畦(圃場端)に沿って対向する圃場端側に向かって前進走行するとともに、圃場の端部側で旋回走行(図示する例では左折)をする(
図5(A)1)。その後、前記ロータリ耕耘装置6を非作業位置まで上昇作動させた状態で、該ロータリ耕耘装置6が圃場端側となる位置(耕耘作業再開位置X)まで後進走行をする(
図5(A)2)、その後、前記ロータリ耕耘装置6を作業高さまで下降作動させるとともに逆転駆動に切換えることにより圃場の隅に溜まった土を均すために土寄せ作業を行う(
図5(A)3)。所定の位置まで土寄せ作業を行った後、前記走行機体3を停止させるとともに前記ロータリ耕耘装置6を正転回転に切換え、通常の耕耘作業を再開する(
図5(A)参照)。
【0036】
上述の経路で耕耘作業が行われると、旋回走行後に圃場端側まで折返し走行することでコーナー付近(前記耕耘作業再開位置X)の周辺に圃場の土が多く溜まり易くなる。このため、前記耕耘作業再開位置Xから耕耘作業を再開する際に(
図5(A)3)、前記ロータリ耕耘装置6を逆転駆動させて圃場端側で多く溜まった土を前方に送る土寄せ作業を行うことで、耕耘作業後の圃場面をより均一な状態に保つことができる。
【0037】
次に、
図5(B)に基づいて、前記ロータリ耕耘装置6による代掻き作業後の土寄せ作業について説明する。前記ロータリ耕耘装置6による代掻き作業は、稲作の作付けにあたって耕耘作業後に水を入れた圃場(水田)で水の中で土を攪拌してコロイド状の泥とし、圃場面を均一(平ら)にする作業であって、これにより田植作業等をし易くするなるものであって、上記の耕耘作業と同様の作業経路で実行される。
【0038】
該ロータリ耕耘装置6による代掻き作業が行われると、耕耘作業時と同様に圃場の端側に土が溜まり易くなるため、
図5(B)に示されるように、圃場端側の土を圃場の中央側へと寄せる土寄せ作業が行われる。
【0039】
前記代掻き作業後の土寄せ作業は、前記ロータリ耕耘装置6を作業高さまで下降作動させた状態で圃場端側の開始位置Aから折返し位置Bまで前記ロータリ耕耘装置を逆転回転させつつ直進走行することにより土寄せ作業を行い(
図5(B)1)、その後、前記ロータリ耕耘装置6を非作業高さまで上昇作動させた状態で前記折返し位置Bから開始位置Aまで一工程分左右外側にずらしつつ後進走行し(
図5(B)2)、その後、前記ロータリ耕耘装置6を作業高さまで下降作動させた状態で開始位置Aから折返し位置Bまで前記ロータリ耕耘装置を逆転回転させつつ直進走行を行うことで土寄せ作業を行う(
図5(B)1)。これを繰返すことで、代掻き作業後の圃場面全体に前後輪の走行跡を残すことなく土寄せ作業を行うことができる。
【0040】
これに対し、前記制御部は、上述の土寄せ作業を実行するために、前記ロータリ耕耘装置6を逆転駆動させる切換操作(前記PTO変速レバー13の逆転切換操作)が検出された場合には、前記ロータリ35が逆転駆動されるとともに、前記エンジン(側の駆動軸)から出力されるエンジン回転数を通常の状態よりも予め設定された所定範囲に減速させた低回転状態(低速モード)に自動的に切換える土寄せ制御(低回転制御)が実行可能に構成されている。
【0041】
該構成によれば、上述の土寄せ作業を行う際に前記ロータリ35の逆転方向の駆動速度も自動的に低速に切換えられるため、土寄せ作業時に前記ロータリ35(耕耘爪34)に掛かる負担を軽減して安全性を向上させることができるとともに、前記ロータリ35の前方に向かって土寄せをする際に、操縦部のオペレータ側への圃場の泥等の飛散も抑制することができる。
【0042】
また、該制御部50による土寄せ制御は、前記エンジンが低速回転状態(低速モード)に切換えられた状態で前進走行される土寄せ作業が実行された後に、該走行機体7の前進走行を停止するための前記ブレーキ操作具の踏込み操作が検出された場合には、自動的に前記エンジンの低速回転状態(低速モード)が解除された通常モードに切換えられるとともに、前記ロータリ耕耘装置6の駆動方向も正転方向に自動的に切換えることができるように構成されている。
【0043】
該構成によれば、作業者は前記PTO変速レバー13の正転切換操作を行うことなく、土寄せ作業の終了時に必ず実行される前記ブレーキペダルの踏込み操作が検出されることで、該土寄せ制御(低速回転制御)の終了することができるため、上述の土寄せ作業時の操作手順が簡素化されて当該作業をよりスムーズに行うことができる。以下、土寄せ制御(低回転制御)の具体的な構成について説明する。
【0044】
次に、
図6及び
図7に基づき、上述の制御部による土寄せ制御の詳細について説明する。
図6は、制御部のブロック図である。前記制御部50の入力側には、前記走行機体3の車速を検出する車速センサ41と、前記PTO変速レバー13の操作位置を検出するPTO位置センサ42と、前記モード切替スイッチ26と、エンジンの回転数を検出するエンジン回転センサ43と、前記PTO軸の回転数(回転方向)を検出するPTO回転センサ44と、前記ロータリ耕耘装置6(作業機)の昇降位置を検出するリフトアームセンサ(昇降位置検出センサ)46と、前記ブレーキ操作具15の操作状態を検出するブレーキセンサ47とが接続されている。
【0045】
前記制御部50の出力側には、前記エンジンの回転出力(速度)を調整(減速)するエンジン回転出力手段48と、前記PTO軸の回転出力(速度)を調整(変速)するPTO変速出力手段52と、作業者に報知するための報知ブザー(ブザー、報知手段)49と、前記報知ランプ(表示ランプ、報知手段)51とが接続されている。
【0046】
図7は、土寄せ制御の処理フロー図である。前記制御部は、土寄せ制御の処理フローが開始されると、ステップS1に進む。ステップS1では、前記エンジン回転センサ43により、エンジンの回転数が検出され、ステップS2に進む。ステップS2では、前記PTO回転センサ44(又は前記エンジン回転センサ及び前記PTO位置センサ)により、前記PTO軸の回転情報(回転数・回転方向等)を検出し、ステップS3に進む。ステップS3では、前記ブレーキセンサ47によりブレーキ操作具の操作状況を検出し、ステップS4に進む。ステップS4では、前記リフトアームセンサ46によりロータリ耕耘装置6の昇降位置を取得し、その後、ステップS5に進む。
【0047】
ステップS5では、前記モード切替スイッチ26により、前記制御部(トラクタ)が土寄せモードに切換えられている状態か否かが確認され、土寄せモード中であることが検出された場合には、ステップS6に進む。なお、ステップS5において、土寄せモードに切換えられていることが検出されなかった場合には、その後、リターンする。
【0048】
すなわち、前記モード切替スイッチ26により、土寄せ制御を実行する土寄せモードに切換えられていない場合には、前記ロータリ耕耘装置6を逆転駆動させても、前記エンジン回転数を減速して低速回転状態に自動的に切換える土寄せ制御が実行されないように構成されている。
【0049】
ステップS6では、前記PTO位置センサ42と前記リフトアームセンサ46により、既に前記PTO変速レバー13が前記逆転駆動位置に操作され、且つ前記ロータリ耕耘装置6が土寄せ作業を行う作業高さに昇降操作されているか否か、言い換えると、土寄せ作業中であるか否かが確認され、土寄せ作業状態であることが検出されなかった場合には、ステップS7に進む。
【0050】
ステップS7では、前記PTO位置センサ42により前記PTO変速レバー13の前記逆転位置に変速操作の有無が確認され、前記PTO変速レバー13が逆転駆動位置への変速操作が検出された場合には、ステップS8に進む。
【0051】
ステップS8では、前記PTO変速レバー13の変速操作に基づいて前記PTO軸を逆転駆動させて、ステップS9に進む。ステップS9では、前記エンジン回転出力手段により、前記エンジン回転数を通常よりも減速させた低回転(低出力)状態に自動的に切換え、ステップS10に進む。
【0052】
すなわち、作業者によって前記PTO変速レバー13が前記ロータリ35を正転駆動させる低速位置、中速位置、高速位置、ニュートラル位置の何れかの状態から前記逆転駆動位置への変速操作(逆転切換操作)が検出された場合には、前記エンジンから出力されるエンジン回転数が自動的に通常よりも減速された低速回転状態に切換えられるように構成されている。これにより、土寄せ作業時には、ロータリ耕耘装置6の逆転駆動速度や、走行機体の後進走行速度がより抑制されて、土寄せ作業時おけるロータリ耕耘装置6(耕耘爪34)への負荷を確実且つ効率的に軽減することができる。
【0053】
なお、前記エンジンが低速回転状態(低速モード)に切換えられた場合には、前記報知ブザー49や、前記報知ランプ51によって、作業者に対して、土寄せ制御によってエンジン回転数が低下している状態であることを確実に報知できるように構成されている。これにより、作業者が意図せずにエンジンの回転数が減速する事態を防止できる。
【0054】
ステップS10では、前記ブレーキセンサ47により前記ブレーキ操作具の踏込み操作の有無が確認され、前記ブレーキ操作具の踏込み操作が検出された場合には、ステップS11に進む。
【0055】
ステップS11では、前記PTO変速出力手段52によって、前記PTO軸が逆転駆動する状態から正転駆動する状態に自動的に切換えられ、ステップS12に進む。ステップS12では、前記エンジン回転出力手段により、前記エンジン回転数が前記エンジンコントロールレバーの操作位置に応じた通常の回転数で出力する通常モードに切換えられる。言い換えると、前記低回転状態が解除されて、その後、リターンする。
【0056】
すなわち、前記エンジンの低速回転状態(低速モード)の終了条件として土寄せ作業の終了時に必ず実行される前記ブレーキペダルの踏込み操作を設定したことにより、作業者が前記PTO変速レバー13を操作することなく前記PTO軸を正転切換することができる。このため、上述の土寄せ作業終了時の操作手順が削減・簡素化されて土寄せ作業をよりスムーズ且つ安全に行うことができる。このとき、前記PTO変速レバー13も自動的に逆転駆動する直前の操作位置に自動的に戻されるように構成しても良い。
【0057】
なお、前記PTO変速レバー13とは別途に、前記操縦部側に前記PTO軸の逆転駆動を開始するPTO逆転スイッチ(図示しない)を設け、前記制御部50は、該PTO逆転スイッチの入操作によって、前記エンジンの低回転状態への切換えを行い、前期ブレーキペダルの踏込み操作が検出された場合には、前記PTO逆転スイッチが自動的に切操作されるとともに、前記エンジンの低回転状態が解除されるように構成しても良い。
【0058】
ちなみに、前記エンジンの低速回転状態(低速モード)の終了条件として、ブレーキ操作具15の踏込み操作の有無に代えて、前記車速センサ41により走行機体3が停止したことを検出することに変更しても良い。
【0059】
また、ステップS10において、前記ブレーキ操作具15の踏込み操作が検出されなかった場合には、その後、リターンする。
【0060】
また、ステップS7において、前記PTO変速レバー13が前記PTO軸を正転駆動させる操作位置から前記逆転駆動位置へ変速される逆転切換操作が検出されなかった場合には、ステップS10に進む。この場合、ステップS10を経由して、その後、リターンする。
【0061】
同様に、ステップS6において、記ロータリ耕耘装置6が土寄せ作業状態であることが検出された場合には、ステップS10に進む。
【0062】
次に、
図8に基づき、前記制御部50による土寄せ制御の別実施例について説明する。上述の土寄せ制御(低速回転制御)では、所定の開始操作、具体的には、前記PTO変速レバー13を逆転駆動位置へ変速操作が検出されることを条件に、前記エンジンの低速モードへの切換えが実行されるように構成されていたところ、前記土寄せ作業をするタイミングで、前記ロータリ耕耘装置6の逆転駆動と、前記エンジンの低速モードへの切換えとが自動的に開始されるように構成しても良い。
【0063】
該構成によれば、
図5に示した圃場面の耕耘作業時の土寄せ作業や代掻き作業後の土寄せ作業をするにあたり、作業者は、所定の開始操作(前記PTO変速レバー13等の切換え操作)をすることなく、前記土寄せ作業を開始するタイミングで自動的に前記土寄せ制御が実行され、土寄せ作業が終わるタイミングで自動的に前記土寄せ制御が終了するため、作業者による操作の手間が大きく軽減される。以下、該構成の土寄せ制御のフローについて説明する。
【0064】
図8は、別実施例の土寄せ制御の処理フロー図である。前記制御部は、土寄せ制御の処理フローが開始されると、ステップS21に進む。ステップS21では、前記エンジン回転センサ43により、エンジンの回転数が検出され、ステップS22に進む。ステップS22では、前記PTO回転センサ44(又は前記エンジン回転センサ及び前記PTO位置センサ)により、前記PTO軸の回転情報(回転数・回転方向等)を検出し、ステップS23に進む。ステップS23では、前記ブレーキセンサ47によりブレーキ操作具の操作状況を検出し、ステップS24に進む。ステップS24では、前記リフトアームセンサ46によりロータリ耕耘装置6の昇降位置を取得し、その後、ステップS25に進む。
【0065】
ステップS25では、前記モード切替スイッチ26により、前記制御部(トラクタ)が土寄せモードに切換えられている状態か否かが確認され、土寄せモード中であることが検出された場合には、ステップS26に進む。なお、ステップS25において、土寄せモードに切換えられていることが検出されなかった場合には、その後、リターンする。
【0066】
すなわち、前記モード切替スイッチ26により、土寄せ制御を実行する土寄せモードに切換えられていない場合には、前記エンジン回転数を減速して低速回転状態に自動的に切換える土寄せ制御が実行されないように構成されている。
【0067】
ステップS26では、前記車速センサ41と前記PTO位置センサ42と前記リフトアームセンサ46により、前記PTO変速レバー13が前記逆転駆動位置に操作され、且つ前記ロータリ耕耘装置6が土寄せ作業を行う作業高さに昇降操作されている状態で前進走行されているか否か、言い換えると、土寄せ作業中であるか否かが確認され、土寄せ作業状態であることが検出されなかった場合には、ステップS27に進む。
【0068】
ステップS27では、前記車速センサ41等により前記走行機体3が後進走行されているか否か、前記リフトアームセンサ46により前記ロータリ耕耘装置6が非作業高さに向けた上昇操作がされたか否かが確認され、前記走行機体3の後進走行と、前記ロータリ耕耘装置6の上昇操作が検出された場合には、ステップS28に進む。
【0069】
ステップS28では、前記PTO変速出力手段52により前記PTO軸を逆転駆動させて、ステップS29に進む。ステップS29では、前記エンジン回転出力手段48により、前記エンジン回転数を通常よりも減速させた低回転状態(低速モード)に自動的に切換え、ステップS30に進む。
【0070】
すなわち、前記土寄せ制御(低速回転制御)の実行開始条件として、走行機体の後進操作と、ロータリ耕耘装置6の上昇操作とを検出したことにより(
図5(A)2、及び
図5(B)2参照)、作業者が前記PTO変速レバー13を逆転切換操作することなく、自動的に前記PTO軸を逆転駆動させるとともに、前記エンジンを低速モードに切換える土寄せ制御(低速回転制御)が実行されるように構成されている。
【0071】
このとき、ステップS27では、前記土寄せ制御(低速回転制御)の実行開始条件として、走行機体の後進操作と、ロータリ耕耘装置6の上昇操作とを検出した後に、前記走行機体3の停止(又はブレーキ操作具によるブレーキ操作)を条件に追加しても良い。
【0072】
ステップS30では、前記リフトアームセンサ46に前記ロータリ耕耘装置6の下げ操作の有無が確認され、前記ロータリ耕耘装置6の下げ操作が検出された場合には、ステップS31に進む。
【0073】
すなわち、前記ロータリ耕耘装置6を非作業高さに上昇作動させつつ後進走行するタイミングで前記ロータリ35を自動的に逆転駆動に切換えられるため、土寄せ作業をする場所まで後進した後に、前記ロータリ耕耘装置6を作業高さまで下降作動させて前進走行を再開することにより、作業者はPTO軸の駆動切換を操作することなく土寄せ作業を実行することができる(
図5(A)及び(B)参照)。
【0074】
ステップS31では、前記ブレーキセンサ47により前記ブレーキ操作具15の踏込み操作の有無が確認され、前記ブレーキ操作具15の踏込み操作が検出された場合には、ステップS32に進む。
【0075】
ステップS32では、前記PTO変速出力手段52によって、前記PTO軸が逆転駆動する状態から正転駆動する状態に自動的に切換えられ、ステップS33に進む。ステップS33では、前記エンジン回転出力手段48により、前記エンジン回転数を前記エンジンコントロールレバーの操作位置に応じた通常の回転数で出力する通常モードに切換える。言い換えると、前記低回転状態を解除し、その後、リターンする。
【0076】
すなわち、前記エンジンの低速回転状態(低速モード)の終了条件として土寄せ作業の終了時に必ず実行される前記ブレーキペダルの踏込み操作を設定したことにより、作業者が前記PTO変速レバー13を操作することなく前記PTO軸を正転切換することができるため、上述の土寄せ作業終了時の操作手順が削減・簡素化されて土寄せ作業をよりスムーズ且つ安全に行うことができる。
【0077】
ちなみに、前記エンジンの低速回転状態(低速モード)の終了条件として、ブレーキ操作具15の踏込み操作の有無に代えて、前記車速センサ41により走行機体3が停止したことを検出することに変更しても良い。
【0078】
また、ステップS31において、前記ブレーキ操作具の踏込み操作が検出されなかった場合には、その後、リターンする。
【0079】
また、ステップ30において、前記ロータリ耕耘装置6の下げ操作が検出されなかった場合には、その後、リターンする。
【0080】
また、ステップS27において、前記走行機体の後進走行と、前記ロータリ耕耘装置6の上げ操作とが検出されなかった場合には、ステップS30に進む。
【0081】
また、ステップS26において、記ロータリ耕耘装置6が土寄せ作業状態であることが検出された場合には、ステップS31に進む。
【0082】
上述の前記制御部50による土寄せ制御によれば、耕耘作業中(代掻き作業後)に、土寄せ作業を開始する際のPTO軸の逆転駆動切換と、逆転駆動時のエンジンの低速モードへの切換えと、土寄せ作業終了時のPTO軸の正転駆動切換とを、作業者が前記PTO変速レバー13の操作を行うことなく自動的に実行することができる。
【0083】
また、上述の実施例では、前記PTO軸の正逆転切換操作を前記PTO変速レバー13の変速切換操作を介したギヤ変速により実行されるように構成されているが、該PTO軸の変速を油圧クラッチ等で変速されるように構成し、スイッチ操作具やダイヤル操作具等により操作できるようしても良い。この場合には、前記PTO回転センサ44により前記PTO軸の正逆転切換を検出するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0084】
3 走行機体
6 ロータリ耕耘装置
13 PTO変速レバー(正逆転切換操作手段)
26 モード切替スイッチ(モード切替操作具)
32 PTO軸(回転軸)
49 報知ブザー(報知手段)
50 制御部
51 報知ランプ(報知手段)