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特許7369073光学部材保護フィルム用粘着剤組成物及び光学部材保護フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】光学部材保護フィルム用粘着剤組成物及び光学部材保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20231018BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231018BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20231018BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231018BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J11/06
C09J11/08
C09J7/38
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020051918
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021147586
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池元 智拾
(72)【発明者】
【氏名】藤川 はる奈
(72)【発明者】
【氏名】鴨井 彬
(72)【発明者】
【氏名】狩野 肇
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/147318(WO,A1)
【文献】特開2017-043710(JP,A)
【文献】特開2017-141343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有し、水酸基価が0.3mgKOH/g以上40mgKOH/g以下の範囲であるか、又は、酸価が0.7mgKOH/g以上24mgKOH/g以下の範囲であり、かつ、重量平均分子量が20万を超えて200万以下の範囲である(メタ)アクリル系重合体(A)と、
水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有し、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して0.1質量%以上10質量%以下の範囲であるか、又は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して0.1質量%以上5質量%以下の範囲であり、ガラス転移温度が0℃以上45℃以下の範囲であり、かつ、重量平均分子量が6000以上15万以下の範囲である(メタ)アクリル系重合体(B)と、
ガラス転移温度が-30℃以下であり、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して0質量%を超えて1質量%以下の範囲であり、かつ、重量平均分子量が6000以上15万以下の範囲である(メタ)アクリル系重合体(C)と、
イソシアネート系架橋剤(D)と、を含み、
前記(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、前記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、7質量部以上70質量部以下の範囲であり、
前記(メタ)アクリル系重合体(C)の含有量が、前記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下の範囲である光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系重合体(C)の重量平均分子量が、前記(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量よりも小さい請求項1に記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項3】
帯電防止剤を含む請求項1又は請求項2に記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項4】
ポリエーテル変性シリコーン化合物を含む請求項1~請求項のいずれか1項に記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項5】
基材と、前記基材上に設けられ、かつ、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える光学部材保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材保護フィルム用粘着剤組成物及び光学部材保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種物品の表面を保護するため、粘着剤層を備えた保護フィルムが広く用いられている。特に、偏光板に代表される各種光学部材では、保護フィルムが多用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び官能基含有モノマーが共重合してなるガラス転移温度が-40℃以下の(メタ)アクリル系ポリマー、(B)(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするガラス転移温度80℃以上の(メタ)アクリル系ポリマー、及び(C)架橋剤を含有し、上記(A)100重量部に対して、上記(B)を5~20重量部で配合する架橋性組成物を、ゲル分率80%以上となるように架橋反応せしめてなる感圧接着剤を、支持体上に塗工してなる表面保護シートが開示されている。
また、特許文献2には、ガラス転移温度が0℃未満のポリマー(A)100質量部と、重量平均分子量が1000以上50000未満であり、ガラス転移温度が30~300℃である(メタ)アクリル系重合体(B)0.05~3質量部と、特定のポリオキシアルキレン鎖を有するオルガノポリシロキサン化合物(C)と、を含む粘着剤組成物からなる粘着剤層を、支持体の少なくとも片面に形成してなる表面保護シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-146151号公報
【文献】特開2013-216769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学部材に使用する保護フィルムに用いられる粘着剤組成物(以下、「光学部材保護フィルム用粘着剤組成物」ともいう。)には、保護フィルムを光学部材の表面に貼り付けた後、保護が必要な間は、光学部材からの剥がれ、ずれ等の不具合が起こり難く、かつ、保護が不要となった段階で、光学部材から効率良く剥離できる粘着剤層を形成できることが求められる。
ここで、光学部材からの剥がれ、ずれ等の不具合が起こり難い粘着剤層であることは、保護フィルムを光学部材から低速(0.3m/分)で剥離した場合に測定される粘着力(所謂、低速剥離力)により評価できる。また、光学部材から効率良く剥離できる粘着剤層であることは、保護フィルムを光学部材から高速(30m/分)で剥離した場合に測定される粘着力(所謂、高速剥離力)により評価できる。
【0006】
ところで、保護フィルムを光学部材から剥離する際に、滑らかに剥離せずにバリバリと音を立てて剥離するジッピングと呼ばれる現象(以下、「ジッピング現象」ともいう。)が起こる場合がある。ジッピング現象が起こると、保護フィルムを剥離した後の光学部材の表面において、スジ状の欠点(所謂、シッピングライン)が確認されることがある。このため、光学部材保護フィルム用粘着剤組成物には、ジッピング現象を抑制できる粘着剤層を形成できることが求められる。特に、保護フィルムを貼り付けた光学部材は、長期間保管されることが想定されるため、光学部材保護フィルム用粘着剤組成物は、光学部材に長期間貼り付けた場合でも、ジッピング現象を抑制可能な粘着剤層を形成できることが望ましい。
【0007】
しかし、保護フィルムが備える粘着剤層の低速剥離力及び高速剥離力を制御しようとすると、両者は同様の挙動を示すため、低速剥離力と高速剥離力とのバランスを調整することは難しい。特に近年、フレキシブルディスプレイの台頭により、保護フィルムを曲面に貼り付ける機会が増えている。保護フィルムを曲面に貼り付けると、平面に貼り付ける場合と比較して、光学部材からの剥がれ、ずれ等の不具合が起こりやすい。このため、保護フィルムが備える粘着剤層に対して、従来よりも高い低速剥離力が求められる傾向があり、低速剥離力と高速剥離力とのバランスを調整することがより困難となっている。
【0008】
また、近年、作業性をより向上させる観点から、光学部材からの保護フィルムの剥離速度がより高速化する傾向がある。加えて、光学部材の薄型化に伴い、保護フィルムの剥離時のジッピング現象に起因する光学部材の表面欠点がより発生しやすい傾向がある。ジッピング現象は、粘着剤層の粘着力の強弱に起因して起こるとされている。一般に、粘着剤層の粘着力は、被着体に貼り付けた後、経時で高くなる傾向を示すことから、ジッピング現象は、例えば、6ヶ月といった長期間にわたって保護フィルムを光学部材に貼り付けた場合に起こりやすい。また、粘着剤層の粘着力は、剥離速度が速くなるほど高くなる傾向を示すことから、保護フィルムを光学部材から高速で剥離する場合にも、ジッピング現象は起こりやすい。
それゆえ、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好であること、及び、光学部材に長期間貼り付けた後、光学部材から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難いことを兼ね備えた粘着剤層を形成できる光学部材保護フィルム用粘着剤組成物を実現することは困難であった。
【0009】
上述の点に関し、特許文献1及び特許文献2では、光学部材に長期間貼り付けた後、光学部材から高速で剥離した場合におけるジッピング現象を抑制することについて、何ら言及していない。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好であり、かつ、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難い粘着剤層を形成できる光学部材保護フィルム用粘着剤組成物、及び光学部材保護フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有し、かつ、重量平均分子量が20万を超えて200万以下の範囲である(メタ)アクリル系重合体(A)と、
水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有し、ガラス転移温度が0℃以上45℃以下の範囲であり、かつ、重量平均分子量が6000以上15万以下の範囲である(メタ)アクリル系重合体(B)と、
ガラス転移温度が-30℃以下であり、かつ、重量平均分子量が6000以上15万以下の範囲である(メタ)アクリル系重合体(C)と、
イソシアネート系架橋剤(D)と、を含み、
上記(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、7質量部以上70質量部以下の範囲であり、
上記(メタ)アクリル系重合体(C)の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下の範囲である光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<2> 上記(メタ)アクリル系重合体(A)は、水酸基を有し、かつ、水酸基価が0.3mgKOH/g以上40mgKOH/g以下の範囲である<1>に記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<3> 上記(メタ)アクリル系重合体(A)は、カルボキシ基を有し、かつ、酸価が0.7mgKOH/g以上24mgKOH/g以下の範囲である<1>又は<2>に記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<4> 上記(メタ)アクリル系重合体(B)は、水酸基を有し、かつ、水酸基価が0.3mgKOH/g以上40mgKOH/g以下の範囲である<1>~<3>のいずれか1つに記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<5> 上記(メタ)アクリル系重合体(B)は、カルボキシ基を有し、かつ、酸価が0.7mgKOH/g以上24mgKOH/g以下の範囲である<1>~<4>のいずれか1つに記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<6> 上記(メタ)アクリル系重合体(C)の水酸基価が40mgKOH/g以下である<1>~<5>のいずれか1つに記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<7> 上記(メタ)アクリル系重合体(C)の重量平均分子量が、上記(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量よりも小さい<1>~<6>のいずれか1つに記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<8> 帯電防止剤を含む<1>~<7>のいずれか1つに記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<9> ポリエーテル変性シリコーン化合物を含む<1>~<8>のいずれか1つに記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<10> 基材と、前記基材上に設けられ、かつ、<1>~<9>のいずれか1つに記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える光学部材保護フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好であり、かつ、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難い粘着剤層を形成できる光学部材保護フィルム用粘着剤組成物、及び光学部材保護フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0014】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0015】
本明細書において、「(メタ)アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位〔即ち、(メタ)アクリル系重合体の全構成単位〕の50質量%以上である重合体を意味する。
本明細書において、「(メタ)アクリル系単量体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味する。
【0016】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0017】
本明細書において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0018】
本明細書において、「粘着剤組成物」とは、架橋反応が終了する前の液状又はペースト状の物質を意味する。
本明細書において、「粘着剤層」とは、粘着剤組成物における架橋反応が終了した後の物質からなる膜を意味する。
【0019】
本明細書において、「被着体」とは、光学部材を指す。
【0020】
本明細書において、「低速剥離力」とは、被着体に貼着した保護フィルムを、被着体から保護フィルムの長手方向に低速(即ち、0.3m/分)で180°剥離したときに測定される粘着力を意味する。なお、詳細な測定方法は、後述の実施例に示すとおりである。
本明細書において、「適切な低速剥離力」とは、被着体からの剥がれ、ずれ等の不具合が起こり難い程度の強さの粘着力を意味する。
【0021】
本明細書において、「高速剥離力」とは、被着体に貼着した保護フィルムを、被着体から保護フィルムの長手方向に高速(即ち、30m/分)で180°剥離したときに測定される粘着力を意味する。なお、詳細な測定方法は、後述の実施例に示すとおりである。
本明細書において、「適切な高速剥離力」とは、被着体から効率良く剥離できる程度の強さの粘着力を意味する。
【0022】
本明細書において、「低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好な粘着剤層」とは、被着体からの剥がれ、ずれ等の不具合が起こり難く、かつ、被着体から効率良く剥離できる程度の強さの粘着力を有する粘着剤層を意味する。
【0023】
[光学部材保護フィルム用粘着剤組成物]
本発明の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう。)は、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有し、かつ、重量平均分子量が20万を超えて200万以下の範囲である(メタ)アクリル系重合体(A)〔以下、「特定(メタ)アクリル系重合体(A)」ともいう。〕と、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有し、ガラス転移温度が0℃以上45℃以下の範囲であり、かつ、重量平均分子量が6000以上15万以下の範囲である(メタ)アクリル系重合体(B)〔以下、「特定(メタ)アクリル系重合体(B)」ともいう。〕と、ガラス転移温度が-30℃以下であり、かつ、重量平均分子量が6000以上15万以下の範囲である(メタ)アクリル系重合体(C)〔以下、「特定(メタ)アクリル系重合体(C)」ともいう。〕と、イソシアネート系架橋剤(D)と、を含み、上記(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、7質量部以上70質量部以下の範囲であり、上記(メタ)アクリル系重合体(C)の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下の範囲である。
本発明の粘着剤組成物によれば、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好であり、かつ、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難い粘着剤層を形成できる。
本発明の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本発明の粘着剤組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0024】
本発明の粘着剤組成物は、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有し、かつ、重量平均分子量が比較的高い特定(メタ)アクリル系重合体(A)と、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有し、ガラス転移温度が比較的高く、かつ、重量平均分子量が比較的低い特定(メタ)アクリル系重合体(B)と、ガラス転移温度が比較的低く、かつ、重量平均分子量が比較的低い特定(メタ)アクリル系重合体(C)と、イソシアネート系架橋剤(D)と、を含む。また、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の含有量よりも少なく、特定(メタ)アクリル系重合体(C)の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量よりも少ない
本発明の粘着剤組成物は、上記のような構成を有するため、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層では、特定(メタ)アクリル系重合体(B)が、表面付近(所謂、被着体との界面付近)に適度に局在化し、イソシアネート系架橋剤(D)と反応することにより架橋構造を形成していると考えられる。特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、ガラス転移温度が比較的高く、形成される架橋構造が比較的硬いと考えられる。このため、粘着剤層の表面付近には、比較的硬い部分が適度に存在していると考えられる。また、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層では、特定(メタ)アクリル系重合体(C)が、表面付近(所謂、被着体との界面付近)に適度に局在化していると考えられる。特定(メタ)アクリル系重合体(C)のガラス転移温度は、比較的低いため、粘着剤層の表面付近には、比較的柔らかい部分が適度に存在していると考えられる。
このような粘着剤層を被着体に貼り付けた場合、粘着剤層の被着体との界面付近に、比較的硬い部分が適度に存在することで、粘着剤層の被着体に対する濡れが過度にならず、粘着剤層が適切な高速剥離力を示すと考えられる。よって、本発明の粘着剤組成物によれば、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好な粘着剤層を形成できると推測される。
一方、粘着剤層の被着体に対する濡れが不足すると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合に、ジッピング現象が起こりやすくなる。これに対し、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、被着体との界面付近に、比較的柔らかい部分が適度に存在するため、被着体に対して適度に濡れると考えられる。このため、粘着剤層の被着体に対する濡れが不足することに起因するジッピング現象が抑制されると考えられる。よって、本発明の粘着剤組成物によれば、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難い粘着剤層を形成できると推測される。
すなわち、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層では、特定(メタ)アクリル系重合体(B)及び特定(メタ)アクリル系重合体(C)が、被着体との界面付近に適度に局在化し、比較的硬い部分と比較的柔らかい部分とが形成されることで、粘着剤層の被着体に対する濡れが適度に調整される。このため、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好であり、かつ、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難いと推測される。
【0025】
以下、本明細書では、特定(メタ)アクリル系重合体(A)、特定(メタ)アクリル系重合体(B)、及び特定(メタ)アクリル系重合体(C)を「特定(メタ)アクリル系重合体」と総称する。
【0026】
〔特定(メタ)アクリル系重合体(A)〕
本発明の粘着剤組成物は、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有し、かつ、重量平均分子量が20万を超えて200万以下の範囲である(メタ)アクリル系重合体(A)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体(A)〕を含む。
本発明の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0027】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。また、特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、水酸基及びカルボキシ基のうち、水酸基のみを有する重合体であってもよく、カルボキシ基のみを有する重合体であってもよく、水酸基及びカルボキシ基の両方を有する重合体であってもよい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、例えば、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する(メタ)アクリル系単量体の単独重合体であってもよく、水酸基及びカルボキシ基のいずれも有しない(メタ)アクリル系単量体の単独重合体に、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を置換により導入したものであってもよく、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する(メタ)アクリル系単量体の共重合体であってもよく、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する(メタ)アクリル系単量体と、水酸基及びカルボキシ基のいずれも有しない(メタ)アクリル系単量体以外の単量体との共重合体であってもよく、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する(メタ)アクリル系単量体以外の単量体と、水酸基及びカルボキシ基のいずれも有しない(メタ)アクリル系単量体との共重合体であってもよい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の好ましい態様としては、特定(メタ)アクリル系重合体(A)が、後述の水酸基を有する単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の少なくとも一方を含むことで、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する態様である。
【0028】
<水酸基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
本明細書において、「水酸基を有する単量体に由来する構成単位」とは、水酸基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0029】
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
水酸基を有する単量体の具体例としては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基を有する単量体としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が1~5のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが更に好ましく、4-ヒドロキシブチルアクリレートが特に好ましい。
【0030】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0031】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(A)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して、0.1質量%以上10質量%以下の範囲であることが好ましく、0.5質量%以上8質量%以下の範囲であることがより好ましく、1質量%以上5質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して0.1質量%以上であることは、特定(メタ)アクリル系重合体(A)が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を積極的に含むことを意味する。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して10質量%以下であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象がより起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0032】
<カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
本明細書において、「カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0033】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート〔例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート〕、コハク酸エステル〔例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸〕等が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸が好ましい。
【0034】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0035】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(A)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して、0.1質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましく、0.3質量%以上3質量%以下の範囲であることがより好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して0.1質量%以上であることは、特定(メタ)アクリル系重合体(A)がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を積極的に含むことを意味する。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して5質量%以下であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象がより起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0036】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位は、粘着力の調整に寄与する。
【0037】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」には、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、含まれない。
【0038】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
アルキル基の炭素数は、例えば、粘着力の観点から、1以上18以下の範囲であることが好ましく、1以上12以下の範囲であることがより好ましく、1以上8以下の範囲であることが更に好ましい。
特に、アルキル基の炭素数が1以上8以下の範囲であると、形成される粘着剤層が被着体に対して適度に濡れ広がり、より適切な低速剥離力を示す傾向がある。
【0039】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、n-ブチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0040】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0041】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して、50質量%以上であることが好ましく、50質量%以上99質量%以下の範囲であることがより好ましく、60質量%以上99質量%以下の範囲であることが更に好ましく、70質量%以上99質量%以下の範囲であることが特に好ましい。
ここで、特定(メタ)アクリル系重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して50質量%以上であることは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0042】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、本発明の効果が発揮される範囲において、既述の構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含むことができる。
【0043】
その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、並びに、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルが挙げられる。また、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
【0044】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0045】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)がその他の構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(A)におけるその他の構成単位の含有率は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0046】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(「Tg」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、-40℃以下であることが好ましく、-50℃以下であることがより好ましく、-60℃以下であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度が-40℃以下であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスがより良好な粘着剤層を形成できる傾向がある。また、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象がより起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度の下限は、特に限定されないが、例えば、-70℃以上であることが好ましい。
【0047】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度は、下記の式1から計算により求められる絶対温度(単位:K;以下、同じ。)をセルシウス温度(単位:℃;以下、同じ。)に換算した値である。
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2+・・・+m(k-1)/Tg(k-1)+mk/Tgk (式1)
【0048】
式1中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k-1)、及びTgkは、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する各単量体を単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度をそれぞれ表す。m1、m2、・・・、m(k-1)、及びmkは、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する各単量体のモル分率をそれぞれ表し、m1+m2+・・・+m(k-1)+mk=1である。
なお、絶対温度から273を引くことで絶対温度をセルシウス温度に換算でき、セルシウス温度に273を足すことでセルシウス温度を絶対温度に換算できる。
【0049】
本明細書において、「単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度」とは、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度で表されるガラス転移温度をいう。
単独重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置(DSC)〔型番:EXSTAR6000、セイコーインスツル(株)〕を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のガラス転移温度としたものである。
【0050】
代表的な単量体の「単独重合体としたときのセルシウス温度で表されるガラス転移温度」は、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が-76℃、2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)が-10℃、n-ブチルアクリレート(n-BA)が-57℃、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)が21℃、t-ブチルアクリレート(t-BA)が41℃、t-ブチルメタクリレート(t-BMA)が107℃、i-ブチルメタクリレート(i-BMA)が48℃、メチルアクリレート(MA)が5℃、メチルメタクリレート(MMA)が103℃、イソボニルメタクリレート(IBXMA)が155℃、イソボニルアクリレート(IBXA)が96℃、エチルアクリレート(EA)が-27℃、メタクリル酸が185℃、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)が-39℃、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)が-15℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)が55℃、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(2HPA)が-7℃、アクリル酸(AA)が163℃、i-オクチルアクリレート(i-OA)が-75℃、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)が18℃、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートが-30℃、及び2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸が-40℃である。
【0051】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0052】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(「Mw」ともいう。)は、20万を超えて200万以下の範囲であり、20万を超えて180万以下の範囲であることが好ましく、20万を超えて160万以下の範囲であることがより好ましく、20万を超えて140万以下の範囲であることが更に好ましく、20万を超えて120万以下の範囲であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が20万を超えると、形成される粘着剤層が凝集力を得やすくなる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が200万以下であると、粘着剤組成物の塗工性が良化しやすい傾向がある。
【0053】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記の(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系重合体(A)の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系重合体(A)を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系重合体(A)とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める特定(メタ)アクリル系重合体(A)の質量割合を意味する。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量を測定する。
【0054】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)〕
カラム:TSK-GEL GMHXL〔東ソー(株)〕を直列に4本接続
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0055】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量は、重合温度、重合時間、有機溶媒の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0056】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)の水酸基価>>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)が水酸基を有する場合、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の水酸基価は、特に限定されないが、例えば、0.3mgKOH/g以上40mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、0.5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下の範囲であることがより好ましく、1mgKOH/g以上20mgKOH/g以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の水酸基価が0.3mgKOH/g以上であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスがより良好な粘着剤層を形成できる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の水酸基価が40mgKOH/g以下であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象がより起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0057】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の水酸基価は、以下の計算式によって求められる値である。なお、以下の計算式において、56.1は、KOHの分子量である。
水酸基価(mgKOH/g)
={(A1/100)÷A2}×56.1×1000×A3
A1:特定(メタ)アクリル系重合体(A)の製造に使用される全単量体中の、水酸基を有する単量体の占める割合(単位:質量%)
A2:特定(メタ)アクリル系重合体(A)の製造に使用される水酸基を有する単量体の分子量
A3:水酸基を有する単量体1分子中に含まれる水酸基の数
【0058】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の製造に使用される水酸基を有する単量体が2種以上ある場合には、それぞれの単量体について、上記の計算式に準じて水酸基価を求めた後、得られた値を合計して水酸基価を求める。
【0059】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)の酸価>>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)がカルボキシ基を有する場合、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の酸価は、特に限定されないが、例えば、0.7mgKOH/g以上24mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、1mgKOH/g以上20mgKOH/g以下の範囲であることがより好ましく、2mgKOH/g以上10mgKOH/g以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の酸価が0.7mgKOH/g以上であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスがより良好な粘着剤層を形成できる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の酸価が24mgKOH/g以下であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象がより起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0060】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の酸価は、以下の計算式によって求められる値である。なお、以下の計算式において、56.1は、KOHの分子量である。
酸価(mgKOH/g)
={(a1/100)÷a2}×56.1×1000×a3
a1:特定(メタ)アクリル系重合体(A)の製造に使用される全単量体中の、カルボキシ基を有する単量体の占める割合(単位:質量%)
a2:特定(メタ)アクリル系重合体(A)の製造に使用されるカルボキシ基を有する単量体の分子量
a3:カルボキシ基を有する単量体1分子中に含まれるカルボキシ基の数
【0061】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の製造に使用されるカルボキシ基を有する単量体が2種以上ある場合には、それぞれの単量体について、上記の計算式に準じて酸価を求めた後、得られた値を合計して酸価を求める。
【0062】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)の含有率>>
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(A)の含有率は、特に限定されないが、例えば、粘着剤組成物中の全固形分量に対して、55質量%以上92質量%以下の範囲であることが好ましく、55質量%以上90質量%以下の範囲であることがより好ましく、60質量%以上90質量%以下の範囲であることが更に好ましく、60質量%以上88質量%以下の範囲であることが特に好ましい。
本明細書において、「粘着剤組成物中の全固形分量」とは、粘着剤組成物が溶媒を含まない場合には、粘着剤組成物の全質量を意味し、粘着剤組成物が溶媒を含む場合には、粘着剤組成物から溶媒を除いた残渣の質量を意味する。
【0063】
〔特定(メタ)アクリル系重合体(B)〕
本発明の粘着剤組成物は、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有し、ガラス転移温度が0℃以上45℃以下の範囲であり、かつ、重量平均分子量が6000以上15万以下の範囲である(メタ)アクリル系重合体(B)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体(B)〕を含む。また、本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、7質量部以上70質量部以下の範囲である。
本発明の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系重合体(B)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0064】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。また、特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、水酸基及びカルボキシ基のうち、水酸基のみを有する重合体であってもよく、カルボキシ基のみを有する重合体であってもよく、水酸基及びカルボキシ基の両方を有する重合体であってもよい。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、例えば、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する(メタ)アクリル系単量体の単独重合体であってもよく、水酸基及びカルボキシ基のいずれも有しない(メタ)アクリル系単量体の単独重合体に、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を置換により導入したものであってもよく、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する(メタ)アクリル系単量体の共重合体であってもよく、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する(メタ)アクリル系単量体と、水酸基及びカルボキシ基のいずれも有しない(メタ)アクリル系単量体以外の単量体との共重合体であってもよく、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する(メタ)アクリル系単量体以外の単量体と、水酸基及びカルボキシ基のいずれも有しない(メタ)アクリル系単量体との共重合体であってもよい。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の好ましい態様としては、特定(メタ)アクリル系重合体(B)が、後述の水酸基を有する単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の少なくとも一方を含むことで、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する態様である。
【0065】
<水酸基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)における水酸基を有する単量体の具体例は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)における水酸基を有する単量体の具体例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
水酸基を有する単量体としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が1~5のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが更に好ましく、4-ヒドロキシブチルアクリレートが特に好ましい。
【0066】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0067】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(B)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して、0.1質量%以上10質量%以下の範囲であることが好ましく、0.5質量%以上8質量%以下の範囲であることがより好ましく、1質量%以上5質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して0.1質量%以上であることは、特定(メタ)アクリル系重合体(B)が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を積極的に含むことを意味する。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して10質量%以下であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象がより起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0068】
<カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるカルボキシ基を有する単量体の具体例は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)におけるカルボキシ基を有する単量体の具体例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
カルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸が好ましい。
【0069】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0070】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して、0.1質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましく、0.3質量%以上3質量%以下の範囲であることがより好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して0.1質量%以上であることは、特定(メタ)アクリル系重合体(B)がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を積極的に含むことを意味する。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して5質量%以下であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象がより起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0071】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
アルキル基の炭素数は、例えば、粘着力の観点から、1以上18以下の範囲であることが好ましく、1以上12以下の範囲であることがより好ましく、1以上8以下の範囲であることが更に好ましい。
【0072】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、及びn-ブチルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0073】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0074】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(B)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して、50質量%以上であることが好ましく、50質量%以上99質量%以下の範囲であることがより好ましく、60質量%以上99質量%以下の範囲であることが更に好ましく、70質量%以上99質量%以下の範囲であることが特に好ましい。
ここで、特定(メタ)アクリル系重合体(B)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して50質量%以上であることは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位が、特定(メタ)アクリル系重合体(B)を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0075】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、本発明の効果が発揮される範囲において、既述の構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含むことができる。
【0076】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるその他の構成単位を構成する単量体は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)におけるその他の構成単位を構成する単量体の具体例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0077】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0078】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)がその他の構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるその他の構成単位の含有率は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0079】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度は、0℃以上45℃以下の範囲であり、5℃以上43℃以下の範囲であることが好ましく、10℃以上40℃以下の範囲であることがより好ましく、15℃以上35℃以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度が0℃以上であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好な粘着剤層を形成できる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度が45℃以下であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0080】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度と同様の方法により求められる値である。
【0081】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0082】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、6000以上15万以下の範囲であり、1万以上15万以下の範囲であることが好ましく、1.5万以上15万以下の範囲であることがより好ましく、2万以上10万以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が6000以上であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好な粘着剤層を形成できる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が15万以下であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0083】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と同様の方法により測定される値である。
【0084】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、重合温度、重合時間、有機溶媒の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0085】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(B)の水酸基価>>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)が水酸基を有する場合、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の水酸基価は、特に限定されないが、例えば、0.3mgKOH/g以上40mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、0.5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下の範囲であることがより好ましく、1mgKOH/g以上20mgKOH/g以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の水酸基価が0.3mgKOH/g以上であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスがより良好な粘着剤層を形成できる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の水酸基価が40mgKOH/g以下であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象がより起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0086】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の水酸基価は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の水酸基価と同様の方法により計算した値である。
【0087】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(B)の酸価>>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)がカルボキシ基を有する場合、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の酸価は、特に限定されないが、例えば、0.7mgKOH/g以上24mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、1mgKOH/g以上20mgKOH/g以下の範囲であることがより好ましく、2mgKOH/g以上10mgKOH/g以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の酸価が0.7mgKOH/g以上であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスがより良好な粘着剤層を形成できる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の酸価が24mgKOH/g以下であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象がより起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、形成される粘着剤層の被着体に対する濡れが過度に抑制されないためと推測される。
【0088】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の酸価は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の酸価と同様の方法により計算した値である。
【0089】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量>>
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、7質量部以上70質量部以下の範囲であり、10質量部以上60質量部以下の範囲であることが好ましく、15質量部以上55質量部以下の範囲であることがより好ましく、20質量部以上50質量部以下の範囲であることが更に好ましい。
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して7質量部以上であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好な粘着剤層を形成できる傾向がある。
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して70質量部以下であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0090】
〔特定(メタ)アクリル系重合体(C)〕
本発明の粘着剤組成物は、ガラス転移温度が-30℃以下であり、かつ、重量平均分子量が6000以上15万以下の範囲である(メタ)アクリル系重合体(C)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体(C)〕を含む。また、本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(C)の含有量は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下の範囲である。
本発明の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系重合体(C)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0091】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。
以下、特定(メタ)アクリル系重合体(C)に含まれる好ましい構成単位について、詳細に説明する。
【0092】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(C)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
アルキル基の炭素数は、例えば、粘着力の観点から、1以上18以下の範囲であることが好ましく、1以上12以下の範囲であることがより好ましく、1以上8以下の範囲であることが更に好ましい。
【0093】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート及びn-ブチルアクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0094】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0095】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(C)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(C)の全構成単位に対して、50質量%以上100質量%以下の範囲であることが好ましく、60質量%以上100質量%以下の範囲であることがより好ましく、70質量%以上100質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
ここで、特定(メタ)アクリル系重合体(C)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(C)の全構成単位に対して50質量%以上であることは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位が、特定(メタ)アクリル系重合体(C)を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0096】
<水酸基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(C)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系重合体(C)における水酸基を有する単量体の具体例は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)における水酸基を有する単量体の具体例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
水酸基を有する単量体としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が1~5のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが更に好ましく、4-ヒドロキシブチルアクリレートが特に好ましい。
【0097】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0098】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(C)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(C)の全構成単位に対して、0.1質量%以上10質量%以下の範囲であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下の範囲であることがより好ましく、1質量%以上8質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(C)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(C)の全構成単位に対して0.1質量%以上であると、架橋構造が適度に形成されるため、剥離する際の被着体への粘着剤層成分の転着が抑制される傾向がある。
特定(メタ)アクリル系重合体(C)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(C)の全構成単位に対して10質量%以下であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象がより起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0099】
<カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(C)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系重合体(C)におけるカルボキシ基を有する単量体の具体例は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)におけるカルボキシ基を有する単量体の具体例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0100】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0101】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(C)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系重合体(C)は、例えば、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象がより起こり難い粘着剤層を形成できる傾向があるとの観点から、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(C)の全構成単位に対して、0質量%を超えて1質量%以下の範囲であることが好ましく、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(C)の全構成単位に対して、0質量%を超えて0.5質量%以下の範囲であることがより好ましく、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(C)の全構成単位に対して、0質量%を超えて0.1質量%以下の範囲であることが更に好ましく、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないことが特に好ましい。
【0102】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(C)は、本発明の効果が発揮される範囲において、既述の構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含むことができる。
【0103】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)におけるその他の構成単位を構成する単量体は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)におけるその他の構成単位を構成する単量体の具体例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0104】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0105】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)がその他の構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(C)におけるその他の構成単位の含有率は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0106】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(C)のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系重合体(C)のガラス転移温度は、-30℃以下であり、-65℃以上-30℃以下の範囲であることが好ましく、-65℃以上-40℃以下の範囲であることがより好ましく、-65℃以上-45℃以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(C)のガラス転移温度が-30℃以下であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0107】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)のガラス転移温度は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度と同様の方法により求められる値である。
【0108】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)のガラス転移温度は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0109】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(C)の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系重合体(C)の重量平均分子量は、6000以上15万以下の範囲であり、7000以上13万以下の範囲であることが好ましく、8000以上10万以下の範囲であることがより好ましく、9000以上8万以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(C)の重量平均分子量が6000以上であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好な粘着剤層を形成できる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系重合体(C)の重量平均分子量が15万以下であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0110】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)の重量平均分子量は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と同様の方法により測定される値である。
【0111】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)の重量平均分子量は、重合温度、重合時間、有機溶媒の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0112】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)の重量平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量よりも小さいことが好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(C)の重量平均分子量が、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量よりも小さいと、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象がより起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0113】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(C)の水酸基価>>
特定(メタ)アクリル系重合体(C)の水酸基価は、特に限定されないが、例えば、40mgKOH/g以下であることが好ましく、0mgKOH/g以上40mgKOH/g以下の範囲であることがより好ましく、0.3mgKOH/g以上40mgKOH/g以下の範囲であることが更に好ましく、0.5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下の範囲であることが特に好ましい。
本明細書において、特定(メタ)アクリル系重合体(C)の水酸基価が0mgKOH/gであることは、特定(メタ)アクリル系重合体(C)が水酸基を含まないことを意味する。
特定(メタ)アクリル系重合体(C)の水酸基価が40mgKOH/g以下であると、形成される粘着剤層がより適切な高速剥離力を示す傾向がある。
【0114】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)の水酸基価は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の水酸基価と同様の方法により計算した値である。
【0115】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(C)の酸価>>
特定(メタ)アクリル系重合体(C)の酸価は、特に限定されないが、例えば、7mgKOH/g以下であることが好ましく、0mgKOH/g以上7mgKOH/g以下の範囲であることがより好ましく、0mgKOH/g以上3.5mgKOH/g以下の範囲であることが更に好ましく、0mgKOH/gであることが特に好ましい。
本明細書において、特定(メタ)アクリル系重合体(C)の酸価が0mgKOH/gであることは、特定(メタ)アクリル系重合体(C)がカルボキシ基を含まないことを意味する。
特定(メタ)アクリル系重合体(C)の酸価が7mgKOH/g以下であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0116】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)の酸価は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の酸価と同様の方法により計算した値である。
【0117】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)としては、市販品を使用できる。
特定(メタ)アクリル系重合体(C)との市販品の例としては、UP-1080〔商品名、ガラス転移温度:-61℃、重量平均分子量:6000、東亞合成(株)〕、UP-1170〔商品名、ガラス転移温度:-57℃、重量平均分子量:8000、東亞合成(株)〕、UH-2000〔商品名、水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体、ガラス転移温度:-55℃、重量平均分子量:11000、東亞合成(株)〕、UH-2190〔商品名、水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体、ガラス転移温度:-47℃、重量平均分子量:6000、東亞合成(株)〕等が挙げられる。
【0118】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(C)の含有量>>
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(C)の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下の範囲であり、0.5質量部以上4.5質量部以下の範囲であることが好ましく、1質量部以上4質量部以下の範囲であることがより好ましく、1.5質量部以上3質量部以下の範囲であることが更に好ましい。
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(C)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.5質量部以上であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(C)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して5質量部以下であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好な粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0119】
本発明の粘着剤組成物の好ましい態様としては、特定(メタ)アクリル系重合体(C)の重量平均分子量が、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量よりも小さく、かつ、特定(メタ)アクリル系重合体(C)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量よりも少ない態様が挙げられる。
上記態様によれば、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象がより起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0120】
〔特定(メタ)アクリル系重合体の製造方法〕
特定(メタ)アクリル系重合体(A)、特定(メタ)アクリル系重合体(B)、及び特定(メタ)アクリル系重合体(C)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体〕の製造方法は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、既述の単量体を重合することにより製造できる。また、特定(メタ)アクリル系重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、水酸基及びカルボキシ基のいずれも有しない単量体を重合することにより(メタ)アクリル系重合体を製造した後、製造した(メタ)アクリル系重合体に、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を置換によって導入することにより製造できる。
重合方法としては、製造後に本発明の粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合法が好ましい。
【0121】
溶液重合法では、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中、有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶媒、単量体、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0122】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、アルコール化合物等が挙げられる。
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素化合物、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン化合物、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル化合物、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールに代表されるアルコール化合物が挙げられる。
【0123】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶媒の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチル、トルエン、及びメチルエチルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種の使用が好ましい。
【0124】
重合反応時には、有機溶媒を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0125】
重合開始剤としては、通常の溶液重合法で用いられる有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN〕、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤の使用が好ましく、特に、アゾ化合物の使用が好ましい。
【0126】
重合反応時には、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0127】
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0128】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素化合物、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド化合物、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン化合物、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、並びに、ピネン及びターピノレンに代表されるテルペン化合物が挙げられる。
【0129】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0130】
重合温度は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0131】
〔イソシアネート系架橋剤(D)〕
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤(D)を含む。
本明細書において、「イソシアネート系架橋剤(D)」とは、分子内に2以上のイソシアネート基を有する化合物(所謂、ポリイソシアネート化合物)を指す。
【0132】
イソシアネート系架橋剤(D)は、特に限定されない。
イソシアネート系架橋剤(D)としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びトリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
また、イソシアネート系架橋剤(D)としては、上記ポリイソシアネート化合物の2量体、3量体、又は5量体、上記ポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、上記ポリイソシアネート化合物のビウレット体なども挙げられる。
また、イソシアネート系架橋剤(D)としては、分子内に、2以上のイソシアネート基と、ポリシロキサン構造及びアルキレンオキシド構造と、を有する化合物(所謂、シリコーン系ポリイソシアネート化合物)も挙げられる。
シリコーン系ポリイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、特開2019-35066号公報の段落[0102]~段落[0118]に記載されたシリコーン系イソシアネート化合物(C)の例示化合物が挙げられる。
【0133】
これらの中でも、イソシアネート系架橋剤(D)としては、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
イソシアネート系架橋剤(D)が、ヘキサメチレンジイソシアネートであると、保護フィルムの用途に、より適した剥離力を有する粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0134】
イソシアネート系架橋剤(D)としては、市販品を使用できる。
イソシアネート系架橋剤(D)の市販品の例としては、「コロネート(登録商標) HX」、「コロネート(登録商標) HL-S」、「コロネート(登録商標) L」、「コロネート(登録商標) L-45E」、「コロネート(登録商標) 2031」、「コロネート(登録商標) 2030」、「コロネート(登録商標) 2234」、「コロネート(登録商標) 2785」、「アクアネート(登録商標) 200」、及び「アクアネート(登録商標) 210」〔以上、東ソー(株)〕、「スミジュール(登録商標) N3300」、「デスモジュール(登録商標) N3400」、及び「スミジュール(登録商標) N75」〔以上、住化コベストロウレタン(株)〕、「デュラネート(登録商標) E-405-80T」、「デュラネート(登録商標) AE700-100」、「デュラネート(登録商標) 24A-100」、及び「デュラネート(登録商標) TSE-100」〔以上、旭化成(株)〕、並びに、「タケネート(登録商標) D-110N」、「タケネート(登録商標) D-120N」、「タケネート(登録商標) M-631N」、「MT-オレスター(登録商標) NP1200」、及び「スタビオ(登録商標) XD-340N」〔以上、三井化学(株)〕が挙げられる。
【0135】
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤(D)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0136】
本発明の粘着剤組成物におけるイソシアネート系架橋剤(D)の含有量は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上7.0質量部以下の範囲であることが好ましく、0.3質量部以上7.0質量部以下の範囲であることがより好ましく、0.5質量部以上5.0質量部以下の範囲であることが更に好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下の範囲であることが特に好ましい。
本発明の粘着剤組成物におけるイソシアネート系架橋剤(D)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスがより良好な粘着剤層を形成できる傾向がある。
本発明の粘着剤組成物におけるイソシアネート系架橋剤(D)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して7.0質量部以下であると、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象がより起こり難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0137】
〔有機溶媒〕
本発明の粘着剤組成物は、有機溶媒を含んでいてもよい。
本発明の粘着剤組成物は、有機溶媒を含むと、塗布性が向上し得る。
有機溶媒としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系重合体の重合反応時に用いられる有機溶媒と同様のものが挙げられる。
【0138】
本発明の粘着剤組成物は、有機溶媒を含む場合、有機溶媒を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0139】
本発明の粘着剤組成物が有機溶媒を含む場合、有機溶媒の含有量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0140】
〔帯電防止剤〕
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止剤を含んでいてもよい。
帯電防止剤としては、特に限定されず、例えば、イオン性化合物が挙げられる。
イオン性化合物としては、アルカリ金属塩、有機塩等が挙げられる。
これらの中でも、イオン性化合物としては、アルカリ金属塩が好ましい。
アルカリ金属塩は、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、ルビジウムイオン(Rb)等をカチオンとする金属塩であれば、特に限定されない。
アルカリ金属塩は、Li、Na、及びKからなる群より選ばれる少なくとも1種のカチオンと、Cl、Br、I、BF 、PF 、SCN、ClO 、CFSO 、(FSO、(CFSO、(CSO、及び(CFSOからなる群より選ばれる少なくとも1種のアニオンと、から構成される金属塩であることが好ましく、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、LiClO、LiCFSO(所謂、LiTFS)、Li(FSON、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOC等のリチウム塩であることがより好ましく、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、及びLi(CFSOCからなる群より選ばれる少なくとも1種のリチウム塩であることが更に好ましい。
【0141】
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止剤を含む場合、帯電防止剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0142】
本発明の粘着剤組成物が帯電防止剤を含む場合、帯電防止剤の含有量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0143】
〔ポリエーテル変性シリコーン化合物〕
本発明の粘着剤組成物は、ポリエーテル変性シリコーン化合物を含んでいてもよい。
なお、本明細書における「ポリエーテル変性シリコーン化合物」には、既述のシリコーン系ポリイソシアネート化合物は含まれない。
本発明の粘着剤組成物において、ポリエーテル変性シリコーン化合物は、剥離調整剤として機能し得る。
また、本発明の粘着剤組成物において、ポリエーテル変性シリコーン化合物は、帯電防止助剤として機能し得る。このため、本発明の粘着剤組成物は、ポリエーテル変性シリコーン化合物を、帯電防止剤と組み合わせて含むことが好ましい。
ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、特に限定されないが、例えば、主鎖であるポリシロキサン鎖の側鎖の一部に、末端に水酸基を有するアルキレンオキシド構造が結合したシリコーン化合物、末端にアセチル基を有するアルキレンオキシド構造が結合したシリコーン化合物、及び、主鎖であるポリシロキサン鎖の両末端に、末端に水酸基を有するアルキレンオキシド構造が結合したシリコーン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のシリコーン化合物〔以下、「特定ポリエーテル変性シリコーン化合物」ともいう。〕が好ましい。
【0144】
特定ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、ジアルキルシロキサンに由来する構成単位と、末端に水酸基を有するアルキレンオキシド構造が結合したアルキルシロキサンに由来する構成単位と、を含むポリシロキサン化合物であることが好ましい。
ジアルキルシロキサンにおけるアルキル基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1であることがより好ましい。
末端に水酸基を有するアルキレンオキシド構造が結合したアルキルシロキサンにおけるアルキレンオキシド鎖の炭素数は、2~4であることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。
末端に水酸基を有するアルキレンオキシド構造が結合したアルキルシロキサンにおけるアルキル基の炭素数は、1~4であることが好ましい。
末端に水酸基を有するアルキレンオキシド構造が結合したアルキルシロキサンにおけるアルキレンオキシド鎖の含有数は、1~100であることが好ましく、10~100であることがより好ましい。
【0145】
特定ポリエーテル変性シリコーン化合物が、ジアルキルシロキサンに由来する構成単位と、末端に水酸基を有するアルキレンオキシド構造が結合したアルキルシロキサンに由来する構成単位とを含む場合、ジアルキルシロキサンに由来する構成単位の含有数は、100以下であることが好ましく、1~80であることがより好ましい。
また、末端に水酸基を有するアルキレンオキシド構造が結合したアルキルシロキサンに由来する構成単位の含有数は、2~100であることが好ましく、2~80であることがより好ましい。
【0146】
特定ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、下記の式(A)又は式(B)で表される化合物が好ましい。
【0147】
【化1】

【0148】
式(A)中、pは、ジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数であって、0~100の整数を表し、qは、ポリエチレンオキシド鎖を有するメチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数であって、2~100の整数を表し、aは、エチレンオキシド構造単位の繰り返し数であって、1~100の整数を表す。
式(A)で表される化合物が複数の化合物の集合体である場合、p、q、及びaは、化合物の集合体としての平均値であり、有理数である。
【0149】
式(A)中、aで表されるエチレンオキシド構造単位の繰り返し数は、10~100の整数であることが好ましい。
式(A)中、pで表されるジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数は、1~80の整数であることが好ましい。
式(A)中、qで表されるメチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数は、2~80の整数であることが好ましい。
【0150】
式(A)で表される化合物としては、市販品を使用できる。
式(A)で表される化合物の市販品の例としては、「DOWSIL(登録商標) SF-8428」、「DOWSIL(登録商標) FZ-2162」、「DOWSIL(登録商標) SH-3773M」、「DOWSIL(登録商標) FZ-77」、「DOWSIL(登録商標) FZ-2104」、「DOWSIL(登録商標) FZ-2110」、「DOWSIL(登録商標) L-7001」、「DOWSIL(登録商標) L-7002」、「DOWSIL(登録商標) SH-3749」等〔以上、ダウ・東レ(株)〕が挙げられる。
【0151】
【化2】

【0152】
式(B)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基を表し、cは、ジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数であって、10~80の整数を表し、dは、エチレンオキシド構造単位の繰り返し数であって、1以上の整数を表し、eは、プロピレンオキシド構造単位の繰り返し数であって、0以上の整数を表し、d+eは、1~30の整数を表す。エチレンオキシド構造単位及びプロピレンオキシド構造単位の順序は、ランダムであってもよい。
【0153】
式(B)で表される化合物としては、市販品を使用できる。
式(B)で表される化合物の市販品の例としては、「DOWSIL(登録商標) BY-16-201」、「DOWSIL(登録商標) SF-8427」等〔以上、ダウ・東レ(株)〕が挙げられる。
【0154】
ポリエーテル変性シリコーン化合物の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、0.1万以上2万以下の範囲であることが好ましく、0.3万以上1.5万以下の範囲であることがより好ましい。
ポリエーテル変性シリコーン化合物の重量平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定される値である。
【0155】
本発明の粘着剤組成物は、ポリエーテル変性シリコーン化合物を含む場合、ポリエーテル変性シリコーン化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0156】
本発明の粘着剤組成物がポリエーテル変性シリコーン化合物を含む場合、本発明の粘着剤組成物におけるポリエーテル変性シリコーン化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上3.0質量部以下の範囲であることが好ましく、0.1質量部以上1.5質量部以下の範囲であることがより好ましく、0.1質量部以上1.0質量部以下の範囲であることが更に好ましい。
【0157】
〔架橋触媒〕
本発明の粘着剤組成物は、架橋触媒を含んでいてもよい。
架橋触媒としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
架橋触媒としては、例えば、ジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)及び1,3-ジアセトキシテトラブチルスタノキサンに代表される有機金属化合物、並びに、トリエチレンジアミン及びN-メチルモルホリンに代表される第3級アミン化合物が挙げられる。
【0158】
本発明の粘着剤組成物は、架橋触媒を含む場合、架橋触媒を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0159】
本発明の粘着剤組成物が架橋触媒を含む場合、架橋触媒の含有量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0160】
〔その他の成分〕
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、イソシアネート系架橋剤以外の架橋剤(例えば、金属キレート系架橋剤)、酸化防止剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)等が挙げられる。
【0161】
本発明の粘着剤組成物がその他の成分を含む場合、その他の成分の含有量は、本発明の効果が発揮される範囲において、適宜設定できる。
【0162】
[用途]
本発明の粘着剤組成物は、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好であり、かつ、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難い粘着剤層を形成できるため、光学部材を保護するためのフィルム(所謂、光学部材保護フィルム)に好ましく用いられる。すなわち、本発明の粘着剤組成物は、光学部材に保護フィルムを貼り付ける用途に好適である。
【0163】
光学部材としては、特に限定されず、例えば、画像表示装置、入力装置等の機器(所謂、光学機器)を構成する部材又はこれらの機器に用いられる部材が挙げられる。
光学部材の具体例としては、偏光板、AG(Anti-Glare)偏光板、波長板、1/2、1/4等の波長板を含む位相差板、視角補償フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、ITO(Indium-Tin Oxide)フィルム等の透明導電フィルム、プリズムシート、レンズシート、拡散板などが挙げられる。
光学部材の材質としては、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂(例えば、トリアセチルセルロース樹脂)、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0164】
[光学部材保護フィルム]
本発明の光学部材保護フィルム(以下、単に「保護フィルム」ともいう。)は、基材と、上記基材上に設けられ、かつ、既述の本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える。すなわち、本発明の保護フィルムでは、基材と、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層とが、積層されている。
本発明の保護フィルムは、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、被着体の表面に貼り付けた後、保護が必要な間は、被着体からの剥がれ、ずれ等の不具合が起こり難く、かつ、保護が不要となり、被着体から剥離する際には、効率良く剥離できる。換言すると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好である。
本発明の保護フィルムは、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難い。
【0165】
基材は、その基材上に粘着剤層を形成できれば、特に限定されない。
基材としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂(例えば、トリアセチルセルロース樹脂)、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂を含むフィルムが挙げられる。
例えば、透視による光学部材の検査及び管理の観点からは、基材としては、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むフィルムが好ましい。
また、例えば、表面保護性能の観点からは、ポリエステル系樹脂を含むフィルムが好ましく、実用性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含むフィルムが特に好ましい。
【0166】
基材は、可塑剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
基材は、一部又は全体に、模様が施されていてもよい。
【0167】
基材の厚さは、特に限定されないが、一般には500μm以下であり、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
基材の厚さの下限は、例えば、保護フィルムの強度の観点から、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。
【0168】
基材の片面又は両面には、帯電防止層が設けられていてもよい。また、基材の粘着剤層が設けられる側の表面には、基材と粘着剤層との密着性を向上させる観点から、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0169】
粘着剤層の形成方法は、特に限定されず、通常用いられる方法を採用できる。
基材上に粘着剤層を形成する方法としては、例えば、以下の方法を採用できる。
本発明の粘着剤組成物を、そのままの状態で、又は、必要に応じて溶媒で希釈した状態で、基材上に塗布し、塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、基材上に粘着膜を形成する。次いで、基材上に形成した粘着膜を養生することにより、基材上に粘着剤層を形成する。
【0170】
本発明の保護フィルムにおいて、露出した粘着剤層は、剥離フィルムによって保護されていてもよい。剥離フィルムとしては、粘着剤層からの剥離を容易に行えるものであれば、特に限定されず、例えば、片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。剥離処理剤としては、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン、長鎖アルキル基化合物等が挙げられる。
剥離フィルムは、保護フィルムを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0171】
基材上に粘着剤層を形成する別の方法としては、例えば、以下の方法を採用できる。
本発明の粘着剤組成物を、そのままの状態で、又は、必要に応じて溶媒で希釈した状態で、剥離剤による表面処理が施された紙、樹脂フィルム等の剥離フィルム上に塗布し、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離フィルム上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を基材に接触させて加圧し、粘着膜を基材に転写することにより、基材上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜を養生させることにより、基材上に粘着剤層を形成する。
【0172】
基材上又は剥離フィルム上に、粘着剤組成物を塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
基材上又は剥離フィルム上への粘着剤組成物の塗布量は、形成する粘着剤層の厚さに応じて、適宜設定される。
【0173】
粘着剤層の厚さは、保護フィルムに求められる粘着力、被着体の種類(例えば、材質及び形状)、被着体の表面粗さ等に応じて、適宜設定できる。
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、一般には1μm以上100μm以下の範囲であり、5μm以上50μm以下の範囲であることが好ましく、10μm以上30μm以下の範囲であることがより好ましい。
【0174】
基材上又は剥離フィルム上に形成した塗布膜を乾燥させる方法としては、特に限定されず、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、塗布膜の厚さ、塗布膜中の有機溶媒の量等に応じて、適宜設定される。
乾燥条件の一例としては、熱風乾燥機を用いて、70℃~120℃で1分間~3分間乾燥させる条件が挙げられる。
【0175】
養生は、例えば、20℃~35℃の環境下で、4日間~7日間行う。
養生により、粘着剤組成物の架橋反応が終了して粘着剤層が形成される。
【0176】
被着体に貼り付けた保護フィルムを180°剥離したときの粘着剤層の粘着力(所謂、剥離力)は、剥離速度が0.3m/分(即ち、低速剥離)の場合には、0.09N/25mm以上であることが好ましく、0.13N/25mm以上であることがより好ましく、0.18N/25mm以上であることが更に好ましい。
【0177】
被着体に貼り付けた保護フィルムを180°剥離したときの粘着剤層の粘着力(所謂、剥離力)は、剥離速度が30m/分(即ち、高速剥離)の場合には、1.00N/25mm未満であることが好ましく、0.75N/25mm未満であることがより好ましく、0.50N/25mm未満であることが更に好ましい。
【0178】
本明細書において、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好な粘着剤層であることは、低速剥離力の値を高速剥離力の値で除した値(即ち、「低速剥離力/高速剥離力」)に基づいて評価する。
「低速剥離力/高速剥離力」は、0.10以上であることが好ましく、0.20以上であることがより好ましく、0.30以上であることが更に好ましい。
【実施例
【0179】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0180】
[(メタ)アクリル系重合体Aの製造]
〔製造例A-1〕
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、及び逐次滴下装置を備えた反応容器内に、酢酸エチル〔有機溶媒〕70.0質量部を仕込んだ。
また、別の容器に、n-ブチルアクリレート〔n-BA;アクリル酸アルキルエステル単量体〕60.0質量部、2-エチルヘキシルアクリレート〔2EHA;アクリル酸アルキルエステル単量体〕36.3質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート〔4HBA;水酸基を有する単量体〕3.0質量部、及びアクリル酸〔AA;カルボキシ基を有する単量体〕0.7質量部を入れ、混合して単量体混合物とした。
この単量体混合物のうち、25.0質量%を上記反応容器内に添加した。次いで、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN;重合開始剤〕0.01質量部を添加し、窒素雰囲気下で撹拌しながら、反応容器内の内容物温度を85℃に昇温させて、初期反応を開始させた。
初期反応がほぼ終了した後の反応容器内に、残りの単量体混合物75.0質量%と、酢酸エチル20.0質量部及びAIBN 0.02質量部の混合物と、を約2時間かけて逐次添加しながら反応容器内の内容物を反応させ、添加終了後に、更に2時間反応させて、反応物(a1)を得た。
その後、反応容器内の反応物(a1)に、酢酸エチル25.0質量部にt-ブチルペルオキシピバレート(重合開始剤)0.25質量部を溶解させて調製した溶液を1時間かけて滴下し、滴下終了後に、更に1.5時間反応させて、反応物(a2)を得た。得られた反応物(a2)を、酢酸エチルを用いて希釈し、固形分濃度が45質量%である(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液を得た。
【0181】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液に占める(メタ)アクリル系重合体A-1の質量割合を意味する。
以下の(メタ)アクリル系重合体A-2~A-6の各溶液についても同様である。
【0182】
〔製造例A-2及びA-4~A-6〕
製造例A-2及びA-4~A-6では、(メタ)アクリル系重合体Aの単量体組成を、表1に示す単量体組成に変更したこと、並びに、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系重合体Aの重量平均分子量(Mw)を、表1に示す重量平均分子量(Mw)に調整したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が45質量%である(メタ)アクリル系重合体A-2及びA-4~A-6の各溶液を得た。
【0183】
〔製造例A-3〕
製造例A-3では、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系重合体Aの重量平均分子量(Mw)を、表1に示す重量平均分子量(Mw)に調整したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が45質量%である(メタ)アクリル系重合体A-3の溶液を得た。
【0184】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-6の単量体組成(単位:質量%)、水酸基価(単位:mgKOH/g)、酸価(単位:mgKOH/g)、重量平均分子量〔Mw、単位:万(表中では、「×10と表記)〕、及びガラス転移温度(Tg、単位:℃)を表1に示す。
【0185】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-6の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様の方法により測定した。
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-6のガラス転移温度(Tg)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)の計算方法と同様の方法により計算した。
【0186】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-6の水酸基価及び酸価は、それぞれ既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の水酸基価及び酸価の計算方法と同様の方法により計算した。
【0187】
例えば、(メタ)アクリル系重合体A-1の水酸基価は、次のようにして計算した。なお、(メタ)アクリル系重合体A-1における4HBAの含有率(A1)は、3.0質量%であり、4HBAの分子量(A2)は、144.17である。また、4HBA 1分子中に含まれる水酸基の数(A3)は、1である。
(メタ)アクリル系重合体A-1の水酸基価(mgKOH/g)={(A1/100)÷A2}×56.1×1000×A3={(3.0/100)÷144.17}×56.1×1000×1=11.67・・・≒11.7
【0188】
また、(メタ)アクリル系重合体A-1の酸価は、次のようにして計算した。なお、(メタ)アクリル系重合体A-1におけるAAの含有率(a1)は、0.7質量%であり、AAの分子量(a2)は、72.06である。また、AA 1分子中に含まれるカルボキシ基の数(a3)は、1である。
(メタ)アクリル系重合体A-1の酸価(mgKOH/g)={(a1/100)÷a2}×56.1×1000×a3={(0.7/100)÷72.06}×56.1×1000×1=5.44・・・≒5.4
【0189】
上記にて得られた(メタ)アクリル系重合体A-1~A-6のうち、(メタ)アクリル系重合体A-1~A-5は、本発明における特定(メタ)アクリル系重合体(A)に相当する。
【0190】
【表1】
【0191】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
「n-BA」:n-ブチルアクリレート〔アクリル酸アルキルエステル単量体〕
「2EHA」:2-エチルヘキシルアクリレート〔アクリル酸アルキルエステル単量体〕
「4HBA」:4-ヒドロキシブチルアクリレート〔水酸基を有する単量体〕
「AA」:アクリル酸〔カルボキシ基を有する単量体〕
【0192】
表1中、単量体組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当する単量体を含んでいないことを意味する。
表1では、「重量平均分子量」を「Mw」と表記し、「ガラス転移温度」を「Tg」と表記した。
【0193】
[(メタ)アクリル系重合体Bの製造]
〔製造例B-1〕
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、及び逐次滴下装置を備えた反応容器内に、酢酸エチル〔有機溶媒〕70.0質量部を仕込んだ。
また、別の容器に、n-ブチルメタクリレート〔n-BMA;メタクリル酸アルキルエステル単量体〕96.3質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート〔4HBA;水酸基を有する単量体〕3.0質量部、及びアクリル酸〔AA;カルボキシ基を有する単量体〕0.7質量部を入れ、混合して単量体混合物とした。
この単量体混合物のうち、25.0質量%を上記反応容器内に添加した。次いで、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN;重合開始剤〕1.80質量部を添加し、窒素雰囲気下で撹拌しながら、反応容器内の内容物温度を85℃に昇温させて、初期反応を開始させた。
初期反応がほぼ終了した後の反応容器内に、残りの単量体混合物75.0質量%と、酢酸エチル20.0質量部及びAIBN 2.0質量部の混合物と、を約2時間かけて逐次添加しながら反応容器内の内容物を反応させ、添加終了後に、更に約1時間反応させて、反応物(b1)を得た。
その後、反応容器内の反応物(b1)に、酢酸エチル25.0質量部にt-ブチルペルオキシピバレート(重合開始剤)0.25質量部を溶解させて調製した溶液を1時間かけて滴下し、滴下終了後に、更に2時間反応させて、反応物(b2)を得た。得られた反応物(b2)を、酢酸エチルを用いて希釈し、固形分濃度が45質量%である(メタ)アクリル系重合体B-1の溶液を得た。
【0194】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系重合体B-1の溶液に占める(メタ)アクリル系重合体B-1の質量割合を意味する。
以下の(メタ)アクリル系重合体B-2~B-12の各溶液についても同様である。
【0195】
〔製造例B-2~B-5及びB-8~B-10〕
製造例B-2~B-5及びB-8~B-10では、(メタ)アクリル系重合体Bの単量体組成を、表2に示す単量体組成に変更したこと、並びに、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系重合体Bの重量平均分子量(Mw)を、表2に示す重量平均分子量(Mw)に調整したこと以外は、製造例B-1と同様の操作を行い、固形分濃度が45質量%である(メタ)アクリル系重合体B-2~B-5及びB-8~B-10の各溶液を得た。
【0196】
〔製造例B-6、B-7、B-11、及びB-12〕
製造例B-6、B-7、B-11、及びB-12では、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系重合体Bの重量平均分子量(Mw)を、表2に示す重量平均分子量(Mw)に調整したこと以外は、製造例B-1と同様の操作を行い、固形分濃度が45質量%である(メタ)アクリル系重合体B-6、B-7、B-11、及びB-12の各溶液を得た。
【0197】
(メタ)アクリル系重合体B-1~B-12の単量体組成(単位:質量%)、水酸基価(単位:mgKOH/g)、酸価(単位:mgKOH/g)、重量平均分子量〔Mw、単位:万(表中では、「×10と表記)〕、及びガラス転移温度(Tg、単位:℃)を表2に示す。
【0198】
(メタ)アクリル系重合体B-1~B-12の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様の方法により測定した。
(メタ)アクリル系重合体B-1~B-12のガラス転移温度(Tg)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)の計算方法と同様の方法により計算した。
【0199】
(メタ)アクリル系重合体B-1~B-12の水酸基価及び酸価は、それぞれ既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の水酸基価及び酸価の計算方法と同様の方法により計算した。
【0200】
上記にて得られた(メタ)アクリル系重合体B-1~B-12のうち、(メタ)アクリル系重合体B-1~B-7は、本発明における特定(メタ)アクリル系重合体(B)に相当する。
【0201】
【表2】
【0202】
表2に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
「n-BA」:n-ブチルアクリレート〔アクリル酸アルキルエステル単量体〕
「n-BMA」:n-ブチルメタクリレート〔メタクリル酸アルキルエステル単量体〕
「MA」:メチルアクリレート〔アクリル酸アルキルエステル単量体〕
「MMA」:メチルメタクリレート〔メタクリル酸アルキルエステル単量体〕
「2EHMA」:2-エチルヘキシルメタクリレート〔メタクリル酸アルキルエステル単量体〕
「4HBA」:4-ヒドロキシブチルアクリレート〔水酸基を有する単量体〕
「AA」:アクリル酸〔カルボキシ基を有する単量体〕
【0203】
表2中、単量体組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当する単量体を含んでいないことを意味する。
表2では、「重量平均分子量」を「Mw」と表記し、「ガラス転移温度」を「Tg」と表記した。
【0204】
[(メタ)アクリル系重合体Cの製造]
〔製造例C-1〕
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却器を備えた反応容器内に、メチルエチルケトン〔有機溶媒〕100.0質量部を仕込んだ。
反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、反応容器内の温度を87℃に昇温させた。次いで、反応容器内の温度を87℃に保持した状態でメチルエチルケトンを撹拌し、撹拌中のメチルエチルケトンに、n-ブチルアクリレート〔n-BA;アクリル酸アルキルエステル単量体〕95.0質量部及び4-ヒドロキシブチルアクリレート〔4HBA;水酸基を有する単量体〕5.0質量部の単量体混合物と、メチルエチルケトン100.0質量部及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN;重合開始剤〕5.0質量部の混合物と、をそれぞれ約2時間かけて逐次添加しながら反応容器内の内容物を反応させ、添加終了後に、更に約4時間反応させて、反応物(c1)を得た。得られた反応物(c1)を、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度が45質量%である(メタ)アクリル系重合体C-1の溶液を得た。
【0205】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系重合体C-1の溶液に占める(メタ)アクリル系重合体C-1の質量割合を意味する。
以下の(メタ)アクリル系重合体C-2~C-8の各溶液についても同様である。
【0206】
〔製造例C-2、C-5、及びC-6〕
製造例C-2、C-5、及びC-6では、(メタ)アクリル系重合体Cの単量体組成を、表3に示す単量体組成に変更したこと、並びに、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系重合体Cの重量平均分子量(Mw)を、表3に示す重量平均分子量(Mw)に調整したこと以外は、製造例C-1と同様の操作を行い、固形分濃度が45質量%である(メタ)アクリル系重合体C-2、C-5、及びC-6の各溶液を得た。
【0207】
〔製造例C-3、C-4、C-7、及びC-8〕
製造例C-3、C-4、C-7、及びC-8では、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系重合体Cの重量平均分子量(Mw)を、表3に示す重量平均分子量(Mw)に調整したこと以外は、製造例C-1と同様の操作を行い、固形分濃度が45質量%である(メタ)アクリル系重合体C-3、C-4、C-7、及びC-8の各溶液を得た。
【0208】
(メタ)アクリル系重合体C-1~C-8の単量体組成(単位:質量%)、水酸基価(単位:mgKOH/g)、酸価(単位:mgKOH/g)、重量平均分子量〔Mw、単位:万(表中では、「×10と表記)〕、及びガラス転移温度(Tg、単位:℃)を表3に示す。
【0209】
(メタ)アクリル系重合体C-1~C-8の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様の方法により測定した。
(メタ)アクリル系重合体C-1~C-8のガラス転移温度(Tg)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)の計算方法と同様の方法により計算した。
【0210】
(メタ)アクリル系重合体C-1~C-8の水酸基価及び酸価は、それぞれ既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の水酸基価及び酸価の計算方法と同様の方法により計算した。
【0211】
上記にて得られた(メタ)アクリル系重合体C-1~C-8のうち、(メタ)アクリル系重合体C-1~C-5は、本発明における特定(メタ)アクリル系重合体(C)に相当する。
【0212】
【表3】
【0213】
表3に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
「n-BA」:n-ブチルアクリレート〔アクリル酸アルキルエステル単量体〕
「MA」:メチルアクリレート〔アクリル酸アルキルエステル単量体〕
「4HBA」:4-ヒドロキシブチルアクリレート〔水酸基を有する単量体〕
【0214】
表3中、単量体組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当する単量体を含んでいないことを意味する。
表3では、「重量平均分子量」を「Mw」と表記し、「ガラス転移温度」を「Tg」と表記した。
【0215】
[シリコーン系ポリイソシアネート化合物Xの製造]
撹拌羽根、温度計、窒素導入管、還流冷却器、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、タケネート(登録商標) 500〔商品名、キシリレンジイソシアネート(XDI)、三井化学(株)〕118.0質量部と、DOWSIL(登録商標) SH-3773M〔商品名、ポリエーテル変性シリコーン化合物、ダウ・東レ(株)〕82.0質量部と、を仕込み、フラスコ内の空気を窒素ガスで置換した後、フラスコ内の温度を50℃に昇温させた。次いで、フラスコ内の温度を50℃に保持しながら、フラスコ内の内容物を6時間撹拌させて、イソシアネート系架橋剤であるシリコーン系ポリイソシアネート化合物Xを得た。
【0216】
[粘着剤組成物の調製]
〔実施例1〕
撹拌羽根、温度計、冷却器、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、特定(メタ)アクリル系重合体(A)である(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液222.2質量部(固形分として100質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(B)である(メタ)アクリル系重合体B-1の溶液66.7質量部(固形分として30質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(C)である(メタ)アクリル系重合体C-1の溶液3.0質量部(固形分として1質量部)と、ポリエーテル変性シリコーン化合物であるDOWSIL(登録商標) SH-3773M〔商品名、式(A)で表される化合物、ダウ・東レ(株)〕0.36質量部と、を仕込み、フラスコ内の内容物の液温を25℃付近に保持しながら4時間撹拌した。
次いで、フラスコ内に、イソシアネート系架橋剤(D)であるデスモジュール(登録商標) N3400〔商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の2量体、住化コベストロウレタン(株)〕の希釈物6.0質量部(固形分として2.0質量部)を添加し、十分に撹拌して、実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0217】
〔実施例2及び3〕
実施例2及び3では、特定(メタ)アクリル系重合体(C)である(メタ)アクリル系重合体C-1の配合量を表4に示す配合量に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2及び3の各粘着剤組成物を得た。
【0218】
〔実施例4~7〕
実施例4~7では、特定(メタ)アクリル系重合体(C)の種類を表4に示す種類に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、実施例4~7の各粘着剤組成物を得た。
【0219】
〔実施例8及び9〕
実施例8及び9では、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の種類を表4に示す種類に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、実施例8及び9の各粘着剤組成物を得た。
【0220】
〔実施例10〕
撹拌羽根、温度計、冷却器、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、特定(メタ)アクリル系重合体(A)である(メタ)アクリル系重合体A-4の溶液222.2質量部(固形分として100質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(B)である(メタ)アクリル系重合体B-1の溶液66.7質量部(固形分として30質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(C)である(メタ)アクリル系重合体C-1の溶液6.0質量部(固形分として2質量部)と、ポリエーテル変性シリコーン化合物であるDOWSIL(登録商標) SH-3773M〔商品名、式(A)で表される化合物、ダウ・東レ(株)〕0.36質量部と、を仕込み、フラスコ内の内容物の液温を25℃付近に保持しながら4時間撹拌した。
次いで、フラスコ内に、イソシアネート系架橋剤(D)であるデスモジュール(登録商標) N3400〔商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の2量体、住化コベストロウレタン(株)〕の希釈物15.0質量部(固形分として5.0質量部)と、架橋触媒であるジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)0.02質量部と、を添加し、十分に撹拌して、実施例10の粘着剤組成物を得た。
【0221】
〔実施例11〕
撹拌羽根、温度計、冷却器、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、特定(メタ)アクリル系重合体(A)である(メタ)アクリル系重合体A-5の溶液222.2質量部(固形分として100質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(B)である(メタ)アクリル系重合体B-1の溶液66.7質量部(固形分として30質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(C)である(メタ)アクリル系重合体C-1の溶液6.0質量部(固形分として2質量部)と、ポリエーテル変性シリコーン化合物であるDOWSIL(登録商標) SH-3773M〔商品名、式(A)で表される化合物、ダウ・東レ(株)〕0.36質量部と、を仕込み、フラスコ内の内容物の液温を25℃付近に保持しながら4時間撹拌した。
次いで、フラスコ内に、イソシアネート系架橋剤(D)であるデスモジュール(登録商標) N3400〔商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の2量体、住化コベストロウレタン(株)〕の希釈物15.0質量部(固形分として5.0質量部)を添加し、十分に撹拌して、実施例11の粘着剤組成物を得た。
【0222】
〔実施例12〕
撹拌羽根、温度計、冷却器、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、特定(メタ)アクリル系重合体(A)である(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液222.2質量部(固形分として100質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(B)である(メタ)アクリル系重合体B-2の溶液66.7質量部(固形分として30質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(C)である(メタ)アクリル系重合体C-1の溶液6.0質量部(固形分として2質量部)と、ポリエーテル変性シリコーン化合物であるDOWSIL(登録商標) SH-3773M〔商品名、式(A)で表される化合物、ダウ・東レ(株)〕0.36質量部と、を仕込み、フラスコ内の内容物の液温を25℃付近に保持しながら4時間撹拌した。
次いで、フラスコ内に、イソシアネート系架橋剤(D)であるデスモジュール(登録商標) N3400〔商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の2量体、住化コベストロウレタン(株)〕の希釈物15.0質量部(固形分として5.0質量部)と、架橋触媒であるジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)0.02質量部と、を添加し、十分に撹拌して、実施例12の粘着剤組成物を得た。
【0223】
〔実施例13〕
撹拌羽根、温度計、冷却器、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、特定(メタ)アクリル系重合体(A)である(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液222.2質量部(固形分として100質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(B)である(メタ)アクリル系重合体B-3の溶液66.7質量部(固形分として30質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(C)である(メタ)アクリル系重合体C-1の溶液6.0質量部(固形分として2質量部)と、ポリエーテル変性シリコーン化合物であるDOWSIL(登録商標) SH-3773M〔商品名、式(A)で表される化合物、ダウ・東レ(株)〕0.36質量部と、を仕込み、フラスコ内の内容物の液温を25℃付近に保持しながら4時間撹拌した。
次いで、フラスコ内に、イソシアネート系架橋剤(D)であるデスモジュール(登録商標) N3400〔商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の2量体、住化コベストロウレタン(株)〕の希釈物15.0質量部(固形分として5.0質量部)を添加し、十分に撹拌して、実施例13の粘着剤組成物を得た。
【0224】
〔実施例14及び15〕
実施例14及び15では、特定(メタ)アクリル系重合体B-1の配合量を表4に示す配合量に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、実施例14及び15の各粘着剤組成物を得た。
【0225】
〔実施例16~19〕
実施例16~19では、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の種類を表5に示す種類に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、実施例16~19の各粘着剤組成物を得た。
【0226】
〔実施例20及び21〕
実施例20及び21では、イソシアネート系架橋剤(D)であるデスモジュール(登録商標) N3400の配合量を表5に示す配合量に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、実施例20及び21の各粘着剤組成物を得た。
【0227】
〔実施例22及び23〕
実施例22及び23では、イソシアネート系架橋剤(D)の種類を表5に示す種類に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、実施例22及び23の各粘着剤組成物を得た。
【0228】
〔実施例24〕
実施例24では、イソシアネート系架橋剤(D)の種類及び配合量を表5に示す種類及び配合量に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、実施例24の粘着剤組成物を得た。
【0229】
〔実施例25〕
実施例25では、ポリエーテル変性シリコーン化合物であるDOWSIL(登録商標) SH-3773Mを配合しなかったこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、実施例25の粘着剤組成物を得た。
【0230】
〔実施例26〕
撹拌羽根、温度計、冷却器、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、特定(メタ)アクリル系重合体(A)である(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液222.2質量部(固形分として100質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(B)である(メタ)アクリル系重合体B-1の溶液66.7質量部(固形分として30質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(C)である(メタ)アクリル系重合体C-1の溶液6.0質量部(固形分として2質量部)と、ポリエーテル変性シリコーン化合物であるDOWSIL(登録商標) SH-3773M〔商品名、式(A)で表される化合物、ダウ・東レ(株)〕0.36質量部と、を仕込み、フラスコ内の内容物の液温を25℃付近に保持しながら4時間撹拌した。
次いで、フラスコ内に、イソシアネート系架橋剤(D)であるデスモジュール(登録商標) N3400〔商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の2量体、住化コベストロウレタン(株)〕の希釈物6.0質量部(固形分として2.0質量部)と、その他の架橋剤として金属キレート系架橋剤であるアルミキレートA〔商品名、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、川研ファインケミカル(株)〕0.1質量部と、を添加し、十分に撹拌して、実施例26の粘着剤組成物を得た。
【0231】
〔実施例27〕
撹拌羽根、温度計、冷却器、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、特定(メタ)アクリル系重合体(A)である(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液222.2質量部(固形分として100質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(B)である(メタ)アクリル系重合体B-1の溶液66.7質量部(固形分として30質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(C)である(メタ)アクリル系重合体C-1の溶液6.0質量部(固形分として2質量部)と、ポリエーテル変性シリコーン化合物であるDOWSIL(登録商標) SH-3773M〔商品名、式(A)で表される化合物、ダウ・東レ(株)〕0.36質量部と、帯電防止剤であるLiTFS〔LiCFSO(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、森田化学工業(株)〕0.25質量部と、を仕込み、フラスコ内の内容物の液温を25℃付近に保持しながら4時間撹拌した。
次いで、フラスコ内に、イソシアネート系架橋剤(D)であるデスモジュール(登録商標) N3400〔商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の2量体、住化コベストロウレタン(株)〕の希釈物6.0質量部(固形分として2.0質量部)を添加し、十分に撹拌して、実施例27の粘着剤組成物を得た。
【0232】
〔実施例28〕
撹拌羽根、温度計、冷却器、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、特定(メタ)アクリル系重合体(A)である(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液222.2質量部(固形分として100質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(B)である(メタ)アクリル系重合体B-1の溶液66.7質量部(固形分として30質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(C)である(メタ)アクリル系重合体C-1の溶液6.0質量部(固形分として2質量部)と、ポリエーテル変性シリコーン化合物であるDOWSIL(登録商標) SH-3773M〔商品名、式(A)で表される化合物、ダウ・東レ(株)〕0.36質量部と、を仕込み、フラスコ内の内容物の液温を25℃付近に保持しながら4時間撹拌した。
次いで、フラスコ内に、イソシアネート系架橋剤(D)であるデスモジュール(登録商標) N3400〔商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の2量体、住化コベストロウレタン(株)〕の希釈物6.0質量部(固形分として2.0質量部)と、イソシアネート系架橋剤(D)であるシリコーン系ポリイソシアネート化合物X 0.25質量部と、を添加し、十分に撹拌して、実施例28の粘着剤組成物を得た。
【0233】
〔実施例29〕
撹拌羽根、温度計、冷却器、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、特定(メタ)アクリル系重合体(A)である(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液222.2質量部(固形分として100質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(B)である(メタ)アクリル系重合体B-1の溶液66.7質量部(固形分として30質量部)と、特定(メタ)アクリル系重合体(C)である(メタ)アクリル系重合体C-1の溶液6.0質量部(固形分として2質量部)と、ポリエーテル変性シリコーン化合物であるDOWSIL(登録商標) SH-3773M〔商品名、式(A)で表される化合物、ダウ・東レ(株)〕0.36質量部と、を仕込み、フラスコ内の内容物の液温を25℃付近に保持しながら4時間撹拌した。
次いで、フラスコ内に、イソシアネート系架橋剤(D)であるデスモジュール(登録商標) N3400〔商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の2量体、住化コベストロウレタン(株)〕の希釈物6.0質量部(固形分として2.0質量部)と、架橋触媒であるジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)0.02質量部と、を添加し、十分に撹拌して、実施例29の粘着剤組成物を得た。
【0234】
〔比較例1〕
比較例1では、特定(メタ)アクリル系重合体(A)である(メタ)アクリル系重合体A-1を100質量部配合する代わりに、比較重合体としての(メタ)アクリル系重合体A-6を100質量部配合したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、比較例1の粘着剤組成物を得た。
【0235】
〔比較例2〕
比較例2では、特定(メタ)アクリル系重合体(B)である(メタ)アクリル系重合体B-1を30質量部配合する代わりに、比較重合体としての(メタ)アクリル系重合体B-8を30質量部配合したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、比較例2の粘着剤組成物を得た。
【0236】
〔比較例3〕
比較例3では、特定(メタ)アクリル系重合体(B)を配合しなかったこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、比較例3の粘着剤組成物を得た。
【0237】
〔比較例4及び5〕
比較例4及び5では、特定(メタ)アクリル系重合体B-1の配合量を表6に示す配合量に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、比較例4及び5の各粘着剤組成物を得た。
【0238】
〔比較例6〕
比較例6では、特定(メタ)アクリル系重合体(B)である(メタ)アクリル系重合体B-1を30質量部配合する代わりに、比較重合体としての(メタ)アクリル系重合体B-9を30質量部配合したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、比較例6の粘着剤組成物を得た。
【0239】
〔比較例7〕
比較例7では、特定(メタ)アクリル系重合体(B)である(メタ)アクリル系重合体B-1を30質量部配合する代わりに、比較重合体としての(メタ)アクリル系重合体B-10を30質量部配合したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、比較例7の粘着剤組成物を得た。
【0240】
〔比較例8〕
比較例8では、特定(メタ)アクリル系重合体(B)である(メタ)アクリル系重合体B-1を30質量部配合する代わりに、比較重合体としての(メタ)アクリル系重合体B-11を30質量部配合したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、比較例8の粘着剤組成物を得た。
【0241】
〔比較例9〕
比較例9では、特定(メタ)アクリル系重合体(B)である(メタ)アクリル系重合体B-1を30質量部配合する代わりに、比較重合体としての(メタ)アクリル系重合体B-12を30質量部配合したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、比較例9の粘着剤組成物を得た。
【0242】
〔比較例10〕
比較例10では、特定(メタ)アクリル系重合体(C)を配合しなかったこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、比較例10の粘着剤組成物を得た。
【0243】
〔比較例11及び12〕
比較例11及び12では、特定(メタ)アクリル系重合体C-1の配合量を表6に示す配合量に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、比較例11及び12の各粘着剤組成物を得た。
【0244】
〔比較例13〕
比較例13では、特定(メタ)アクリル系重合体(C)である(メタ)アクリル系重合体C-1を2質量部配合する代わりに、比較重合体としての(メタ)アクリル系重合体C-6を2質量部配合したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、比較例13の粘着剤組成物を得た。
【0245】
〔比較例14〕
比較例14では、特定(メタ)アクリル系重合体(C)である(メタ)アクリル系重合体C-1を2質量部配合する代わりに、比較重合体としての(メタ)アクリル系重合体C-7を2質量部配合したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、比較例14の粘着剤組成物を得た。
【0246】
〔比較例15〕
比較例15では、特定(メタ)アクリル系重合体(C)である(メタ)アクリル系重合体C-1を2質量部配合する代わりに、比較重合体としての(メタ)アクリル系重合体C-8を2質量部配合したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、比較例15の粘着剤組成物を得た。
【0247】
〔比較例16〕
比較例16では、イソシアネート系架橋剤(D)の代わりに、比較架橋剤としてエポキシ系架橋剤であるTETRAD(登録商標)-X〔商品名、三菱ガス化学(株)〕を配合したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、比較例16の粘着剤組成物を得た。
【0248】
【表4】
【0249】
【表5】
【0250】
【表6】
【0251】
表4~6中、「-」は、該当する成分を含んでいないことを意味する。
表4~6における配合量は、全て固形分換算値である。
表5では、「シリコーン系ポリイソシアネート化合物X」を「化合物X」と表記した。
【0252】
表4~6に記載の各架橋剤の詳細は、以下に示すとおりである。
<イソシアネート系架橋剤(D)>
「N3400」〔商品名:デスモジュール(登録商標) N3400、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の2量体、住化コベストロウレタン(株)〕
「N3300」〔商品名:スミジュール(登録商標) N3300、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の3量体、住化コベストロウレタン(株)〕
「L-45E」〔商品名:コロネート(登録商標) L-45E、トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、東ソー(株)〕
「D-120」〔商品名:タケネート(登録商標) D-120、キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、三井化学(株)〕
「化合物X」:シリコーン系ポリイソシアネート化合物X
【0253】
<その他の架橋剤>
「アルミキレートA」〔商品名、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、川研ファインケミカル(株)〕:金属キレート系架橋剤
<比較架橋剤>
「TETRAD-X」〔商品名:TETRAD(登録商標)-X、三菱ガス化学(株)〕:エポキシ系架橋剤
【0254】
[評価]
上記にて調製した粘着剤組成物を用い、以下の評価を行った。
結果を表7~9に示す。
【0255】
1.剥離力
<剥離力評価用保護フィルムの作製>
基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔商品名:テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム、型番:G2、厚さ:38μm、帝人フィルムソリューション(株)〕上に、乾燥後の塗布量が15g/mとなるように、粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成した。次いで、形成した塗布膜を、100℃で60秒間、熱風循環型乾燥機を用いて乾燥させることにより、基材上に粘着膜を形成した。
次いで、基材上に形成した粘着膜の露出した面を、シリコーン系剥離処理剤で表面処理された剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010N023、厚さ:100μm、藤森工業(株)〕の表面処理面に重ね合わせた後、加圧ニップロールに通すことにより、粘着膜と剥離フィルムとを圧着して貼り合わせた。次いで、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下で96時間、粘着膜を養生することにより、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する剥離力評価用保護フィルムを得た。
【0256】
<評価試験>
(1)初期
(1-1)低速剥離力
上記にて作製した剥離力評価用保護フィルムを25mm×150mmの大きさに切断し、剥離力評価用保護フィルム片を準備した。
次いで、準備した剥離力評価用保護フィルム片から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、被着体としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔商品名:コスモシャイン(登録商標) A4300、厚さ:300μm、東洋紡(株)〕の面に重ね合わせた後、卓上ラミネート機を用いて圧着して試験サンプルとした。
この試験サンプルを、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下で24時間放置した。次いで、測定装置として、シングルコラム型材料試験機〔型番:STA-1225、(株)エー・アンド・デイ〕を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度0.3m/分の条件にて、PETフィルムから剥離力評価用保護フィルム片(構成:粘着剤層/基材)を長辺(150mm)方向に180°剥離したときの剥離力(単位:N/25mm)を測定した。そして、下記の評価基準に従って、低速剥離力を評価した。
評価結果が「AA」、「A」、又は「B」であれば、適切な低速剥離力を示す粘着剤層であると判断した。
【0257】
-評価基準-
AA:剥離力が0.18N/25mm以上である。
A:剥離力が0.13N/25mm以上0.18N/25mm未満である。
B:剥離力が0.09N/25mm以上0.13N/25mm未満である。
C:剥離力が0.09N/25mm未満である。
【0258】
(1-2)高速剥離力
上記の「(1-1)低速剥離力」と同様の手順で試験サンプルを得た。
この試験サンプルを、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下で24時間放置した。次いで、測定装置として、剥離試験機〔型番:横型TE-720、テスター産業(株)〕を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度30m/分の条件にて、PETフィルムから剥離力評価用保護フィルム片(構成:粘着剤層/基材)を長辺(150mm)方向に180°剥離したときの剥離力(単位:N/25mm)を測定した。そして、下記の評価基準に従って、高速剥離力を評価した。
評価結果が「AA」、「A」、又は「B」であれば、適切な高速剥離力を示す粘着剤層であると判断した。
【0259】
-評価基準-
AA:剥離力が0.50N/25mm未満である。
A:剥離力が0.50N/25mm以上0.75N/25mm未満である。
B:剥離力が0.75N/25mm以上1.00N/25mm未満である。
C:剥離力が1.00N/25mm以上である。
【0260】
(1-3)低速剥離力と高速剥離力とのバランス
上記の「(1-1)低速剥離力」にて測定された低速剥離力の値と、上記の「(1-2)高速剥離力」にて測定された高速剥離力の値と、に基づいて、低速剥離力と高速剥離力とのバランスを評価した。
具体的には、低速剥離力の値を高速剥離力の値で除し、小数点以下3桁目を四捨五入した値に基づき、下記の評価基準に従って、低速剥離力と高速剥離力とのバランスを評価した。
評価結果が「AA」、「A」、又は「B」であれば、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好な粘着剤層であると判断した。
【0261】
-評価基準-
AA:「低速剥離力/高速剥離力」が0.30以上である。
A:「低速剥離力/高速剥離力」が0.20以上0.30未満である。
B:「低速剥離力/高速剥離力」が0.10以上0.20未満である。
C:「低速剥離力/高速剥離力」が0.10未満である。
【0262】
(2)加速試験後
(2-1)ジッピング現象の抑制
上記の「(1-1)低速剥離力」と同様の手順で試験サンプルを得た。
この試験サンプルに対し、80℃に設定した熱風循環型乾燥機〔型式:PHH-200、エスペック(株)〕内に250時間静置する加速試験を行った。加速試験終了後、試験サンプルを熱風循環型乾燥機から取り出し、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に24時間静置した。次いで、測定装置として、剥離試験機〔型番:横型TE-720、テスター産業(株)〕を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度30m/分の条件にて、PETフィルムから剥離力評価用保護フィルム片(構成:粘着剤層/基材)を長辺(150mm)方向に180°剥離した。剥離後のPETフィルムの表面に息を吹きかけた後、その表面の状態を目視で観察した。そして、下記の評価基準に従って、ジッピング現象の抑制を評価した。
評価結果が「AA」、「A」、又は「B」であれば、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難い粘着剤層であると判断した。
【0263】
-評価基準-
AA:スジ状の欠点が全く確認されない。
A:スジ状の欠点が微かに確認される。
B:スジ状の欠点がやや確認されるが、許容される範囲である。
C:スジ状の欠点が顕著に確認される。
【0264】
【表7】
【0265】
【表8】
【0266】
【表9】
【0267】
表7及び8に示すように、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有し、かつ、重量平均分子量が20万を超えて200万以下の範囲である(メタ)アクリル系重合体(A)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体(A)〕と、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有し、ガラス転移温度が0℃以上45℃以下の範囲であり、かつ、重量平均分子量が6000以上15万以下の範囲である(メタ)アクリル系重合体(B)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体(B)〕と、ガラス転移温度が-30℃以下であり、かつ、重量平均分子量が6000以上15万以下の範囲である(メタ)アクリル系重合体(C)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体(C)〕と、イソシアネート系架橋剤(D)と、を含み、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、7質量部以上70質量部以下の範囲であり、特定(メタ)アクリル系重合体(C)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下の範囲である、実施例1~29の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好であり、かつ、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離した場合でも、ジッピング現象が起こり難いことが確認された。
【0268】
一方、表9に示すように、(メタ)アクリル系重合体(A)が水酸基及びカルボキシ基のいずれも有しない比較例1の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体から剥離せず、評価試験を行うことができなかった。
(メタ)アクリル系重合体(B)が水酸基及びカルボキシ基のいずれも有しない比較例2の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではないことが確認された。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)を含まない比較例3の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではないことが確認された。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して7質量部未満である比較例4の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではないことが確認された。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して70質量部を超える比較例5の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離すると、ジッピング現象が起こりやすいことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度が0℃未満である比較例6の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではないことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度が45℃を超える比較例7の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離すると、ジッピング現象が起こりやすいことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が6000未満である比較例8の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではないことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が15万を超える比較例9の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離すると、ジッピング現象が起こりやすいことが確認された。
【0269】
特定(メタ)アクリル系重合体(C)を含まない比較例10の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離すると、ジッピング現象が起こりやすいことが確認された。
特定(メタ)アクリル系重合体(C)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.5質量部未満である比較例11の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離すると、ジッピング現象が起こりやすいことが確認された。
特定(メタ)アクリル系重合体(C)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して5質量部を超える比較例12の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではないことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(C)のガラス転移温度が-30℃を超える比較例13の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離すると、ジッピング現象が起こりやすいことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(C)の重量平均分子量が6000未満である比較例14の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではないことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(C)の重量平均分子量が15万を超える比較例15の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に長期間貼り付けた後、被着体から高速で剥離すると、ジッピング現象が起こりやすいことが確認された。
イソシアネート系架橋剤の代わりにエポキシ系架橋剤を含む比較例16の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではないことが確認された。