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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】シャフト壁ユニット
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/34 20060101AFI20231018BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20231018BHJP
   B66B 7/00 20060101ALN20231018BHJP
【FI】
E04B1/34 Z
E04B2/56 631A
E04B2/56 603A
B66B7/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020088370
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021181735
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】剱持 光尚
(72)【発明者】
【氏名】新原 広宣
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-125567(JP,A)
【文献】特開平06-305656(JP,A)
【文献】特表平02-503421(JP,A)
【文献】特開2001-261253(JP,A)
【文献】特開2006-132178(JP,A)
【文献】米国特許第03772844(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/34,1/02,1/348
E04B 2/56
B66B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁が鉄骨造である複数階建ての建築物に前記複数階に渡って連続するシャフト空間を形成するためのシャフト壁ユニットであって、
前記梁に架設可能に形成された上側横架材と、
前記上側横架材に固定され、前記シャフト空間を形成する板状部材と、
前記上側横架材が前記梁に架設された状態において前記上側横架材よりも下方に配置され、前記板状部材を支持する下側横架材と、
前記上側横架材から吊り下げられ、前記下側横架材を支持する支持部材と、を備え
前記下側横架材は、前記建築物の床用に打設されるコンクリートを止めるコンクリート止めである、
シャフト壁ユニット。
【請求項2】
梁が鉄骨造である複数階建ての建築物に前記複数階に渡って連続するシャフト空間を形成するためのシャフト壁ユニットであって、
前記梁に架設可能に形成された上側横架材と、
前記上側横架材に固定され、前記シャフト空間を形成する板状部材と、
前記上側横架材が前記梁に架設された状態において前記上側横架材よりも下方に配置され、前記板状部材を支持する下側横架材と、
前記上側横架材から吊り下げられ、前記下側横架材を支持する支持部材と、
前記板状部材によって形成され、人が出入りするための開口部と、
前記開口部を跨いで設けられ、前記板状部材における構面のずれを防止するずれ防止材と、を更に備える、
ャフト壁ユニット。
【請求項3】
前記下側横架材は、前記建築物の床用に打設されるコンクリートを止めるコンクリート止めである、
請求項に記載のシャフト壁ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフト壁ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
複数階建ての建築物では、エレベータ籠を昇降させるための空間、水及びガスといった流体を導くパイプを通すための空間、又は電気の幹線を通すための空間として、複数階に渡って連続する竪穴状の空間(「シャフト空間」とも呼ばれる)が設けられる。シャフト空間は、各階に設置されるシャフト壁によって形成される。特許文献1には、予め成形された板状部材(プレキャスト材、ALCパネル、化粧押出成形版等)をエレベータシャフト空間のシャフト壁として用いることが提案されている。
【0003】
特許文献1に開示された施工手順では、まず、建物における各階の床に、エレベータ籠が通過可能な開口を設ける。次に、床の下面における開口の周囲に横架材を固定すると共に、建物における屋根の下面に横架材を固定する。次に、板状部材を横架材に固定し、エレベータシャフト空間を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-308547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された方法では、床又は屋根に横架材を固定する作業に加え、横架材に板状部材を固定する作業を、エレベーターピット底等から組み上げられた足場で行う必要がある。足場での作業は高所作業であり、危険を伴う。
【0006】
本発明は、シャフト空間を形成する工事における高所作業を減らすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、梁が鉄骨造である複数階建ての建築物に複数階に渡って連続するシャフト空間を形成するためのシャフト壁ユニットであって、梁に架設可能に形成された上側横架材と、上側横架材に固定され、シャフト空間を形成する板状部材と、上側横架材が梁に架設された状態において上側横架材よりも下方に配置され、板状部材を支持する下側横架材と、上側横架材から吊り下げられ、下側横架材を支持する支持部材と、を備え、下側横架材は、建築物の床用に打設されるコンクリートを止めるコンクリート止めである。
【0008】
また、本発明は、梁が鉄骨造である複数階建ての建築物に複数階に渡って連続するシャフト空間を形成するためのシャフト壁ユニットであって、梁に架設可能に形成された上側横架材と、上側横架材に固定され、シャフト空間を形成する板状部材と、上側横架材が梁に架設された状態において上側横架材よりも下方に配置され、板状部材を支持する下側横架材と、上側横架材から吊り下げられ、下側横架材を支持する支持部材と、板状部材によって形成され、人が出入りするための開口部と、開口部を跨いで設けられ、板状部材における構面のずれを防止するずれ防止材と、を更に備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シャフト空間を形成する工事における高所作業を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は、本実施形態に係るシャフト壁ユニットを用いて形成されたシャフト空間を有する複数階建ての建築物の立断面図であり、(b)は、図1(a)とは別の方向から見た建築物の立断面図であり、(c)は、図1(a)に示すIC-IC線に沿う平断面図(見上げ図)である。
図2】(a)は、シャフト壁ユニットの立正面図であり、(b)は、シャフト壁ユニットの平断面図(見下げ図)であり、(c)は、図2(a)に示すIIC-IIC線に沿う立断面図である。
図3】(a)は、図2に示すシャフト壁ユニットとは別のシャフト壁ユニットの立正面図であり、(b)は、図3(a)に示すシャフト壁ユニットの平断面図(見下げ図)であり、(c)は、図3(a)に示すIIIC-IIIC線に沿う立断面図である。
図4図1(c)に示す平断面図(見上げ図)におけるIV部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るシャフト壁ユニット(以下、単に「ユニット」と称する。)、及びシャフト空間形成方法について、図面を参照して説明する。ここでは、シャフト空間が、エレベータ籠を昇降させるためのいわゆるエレベータシャフト空間である場合について説明するが、本発明は、水及びガスといった流体を導くパイプを通すためのパイプシャフト空間、電気の幹線を通すための電気シャフト空間、及び階段を設けるための階段シャフト空間等、エレベータシャフト以外のシャフト空間にも適用可能である。
【0012】
まず、図1を参照して、本実施形態に係るユニットを用いて形成されたシャフト空間Sを有する複数階建ての建築物1について説明する。図1(a)は、建築物1の立断面図であり、図1(b)は、図1(a)とは別の方向から見た建築物1の立断面図である。図1(c)は、図1(a)及び(b)に示すIC-IC線に沿う平断面図(見上げ図)である。建築物1は、大梁2が鉄骨造である。大梁2は、不図示の柱に架設される。大梁2と不図示の柱とによって、建築物1の骨組みが形成される。
【0013】
図1に示すように、シャフト空間Sは、竪穴状に形成され、複数階に渡って連続する。シャフト空間Sを形成するためのユニットは、建築物1の各階に設けられる。ここでは、建築物1における下階Faに設けられるユニット101a,102a,103a,104aと、下階Faの1つ上の階(以下、「上階」と称する)Fbに設けられるユニット101b,102b,103b,104bと、について説明する。以下において、ユニット101a,101bを総称する場合には、単に「ユニット101」とする。ユニット102a,102b、ユニット103a,103b、ユニット104a,104bについても同様である。
【0014】
ユニット101,102,103,104は、それぞれ、上側横架材11,12,13,14と、上側横架材11,12,13,14に固定される複数の板状部材21,22,23,24と、上側横架材11,12,13,14よりも下方に配置される下側横架材31,32,33,34と、を備えている。下側横架材31,32,33,34は、それぞれ、板状部材21,22,23,24を支持する。
【0015】
下階Faに設けられるユニット101a,102aの上側横架材11,12は、下階Faの大梁2に架設される。ユニット103a,104aの上側横架材13,14は、ユニット101a,102aの上側横架材11,12に架設される。同様に、上階Fbに設けられるユニット101b,102bの上側横架材11,12は、上階Fbの大梁2に架設され、ユニット103b,104bの上側横架材13,14は、ユニット101b,102bの上側横架材11,12に架設される。つまり、上側横架材11,12は、いわゆる小梁であり、上側横架材13,14は、いわゆる孫梁である。上側横架材11,12,13,14は、例えばH形鋼である。以下において、大梁2が延びる方向を「梁方向」と称する。
【0016】
大梁2及び上側横架材11,12,13,14には、作業者の足場となり床に打設するコンクリートの型枠にもなる床用デッキプレート3が固定される。なお、図1(c)の見上げ図では、床用デッキプレート3の図示を省略している。
【0017】
ユニット101,102の板状部材21,22は、梁方向に互いに間隔を空けて設けられ、ユニット103,104の板状部材23,24は、ユニット101,102の板状部材21,22の間に渡って設けられる。板状部材21,22,23,24によって、シャフト空間Sが形成される。ユニット104には、シャフト空間Sを昇降する不図示のエレベータ籠に人が出入りするための開口部4が板状部材24によって形成されている。開口部4は、一つのシャフト空間Sにおいて1面のみに設けられる場合もあるが、建築物1の用途によっては対向する2面に設けられる場合もある。
【0018】
板状部材21,22,23,24は、セメントを含む部材であり、例えば、セメント、けい酸質原料及び繊維質原料を主原料として押出成形により成形された押出成形セメント板(Extruded Cement Panel:ECP)である。板状部材21,22,23,24は、セメント、珪石、生石灰、アルミ粉末を主原料として発泡させた軽量気泡コンクリート(Autoclaved Lightweight aerated Concrete:ALC)パネルであってもよい。
【0019】
下階Faに設けられるユニット101a,102a,103a,104aの下側横架材31,32,33,34は、最も下層に設けられるユニットにおいては、建築物1の床梁5上やコンクリートの床上にボルト等で固定される。そして、上階Fbに設けられるユニット101b,102b,103b,104bの下側横架材31,32,33,34は、下階Faに設けられるユニット101a,102a,103a,104aの上側横架材11,12,13,14の上端に固定される。
【0020】
下側横架材31,32,33,34は、建築物1の床用に打設されるコンクリート(図示省略)を止めるコンクリート止め(止め型枠)としても用いられる。下側横架材31,32,33,34は、例えば床用デッキプレート3側に開口を向けた溝形鋼である。
【0021】
本実施形態に係るシャフト空間形成方法では、上側横架材11,12が大梁2に架設されていない状態で上側横架材11,12に板状部材21,22を固定しユニット101,102を組み立てる。その後、ユニット101,102を吊り上げて上側横架材11,12を大梁2に架設する。また、上側横架材13,14が上側横架材11,12に架設されていない状態で上側横架材13,14に板状部材23,24を固定しユニット103,104を組み立てる。その後、ユニット103,104を吊り上げて上側横架材13,14を上側横架材11,12に架設する。そのため、上側横架材11,12,13,14に板状部材21,22,23,24を固定する作業を工事敷地内の地組みヤード等の、足場のしっかりとした低所で行うことができる。したがって、シャフト空間S内で組み上げられた足場での作業といった、シャフト空間Sを形成する工事における高所作業を減らすことができ、工事の安全性を高めることができる。
【0022】
また、ユニット101,102,103,104では、下側横架材31,32,33,34がコンクリート止めであるため、シャフト空間Sの形成に伴ってコンクリート止めが構築される。したがって、建築物1の工事期間を短縮することができる。
【0023】
次に、図2乃至図4を参照して、ユニット101,104の構造を詳述する。ユニット102,103の構造は、ユニット101の構造と略同じであるため、それらの説明は省略する。
【0024】
図2(a)は、ユニット101の立正面図であり、図2(b)は、ユニット101の平断面図(見下げ図)である。図2(a)及び(b)は、上側横架材11を大梁2(図1参照)に架設する前の状態を示している。図2(c)は、図2(a)に示すIIC-IIC線に沿う立断面図である。
【0025】
図2(a)乃至(c)に示すように、上側横架材11には、複数の板状部材21が上側ボルト11c、上側クリップ11b及び上側通し材11aを介して固定される。具体的には、上側通し材11aが上側横架材11に溶接により接合され、複数の上側クリップ11bが上側通し材11aに溶接により接合され、複数の板状部材21の上部が上側クリップ11bに上側ボルト11cを用いて接合される。板状部材21の間は、不図示の目地シールによって塞がれる。上側通し材11aは、例えばアングル材である。
【0026】
板状部材21の上部のみを上側横架材11に固定した状態で上側横架材11を吊り上げた場合には、板状部材21の上部に自重により引張応力が生じ、板状部材21の上部が破損して板状部材21が落下するおそれがある。特に、板状部材21としてセメントを含む部材を用いた場合には、板状部材21は引張強度が圧縮強度に比べて小さく、板状部材21が落下するおそれが高くなる。
【0027】
そこで、本実施形態では、上側横架材11を大梁2に架設する前の状態において、板状部材21を下方から支持する支持構造をユニット101に設けている。具体的には、ユニット101は、上側横架材11を大梁2に架設する前の状態において、複数の板状部材21を支持する下側横架材31と、上側横架材11から吊り下げられ下側横架材31を支持する複数の支持部材41と、を備えている。そのため、板状部材21の重量は、支持部材41によって支持された下側横架材31によって受け止められ、荷重を支えられる。したがって、板状部材21に生じる引張応力を低減することができ、板状部材21が固定された上側横架材11を吊り上げることができる。これにより、低所で組み立てたユニット101を容易かつ安全に吊り上げることができ、シャフト空間S(図1参照)を容易に形成することができる。
【0028】
複数の板状部材21は、下側ボルト31c、下側クリップ31b及び下側通し材31aを介して下側横架材31に固定される。具体的には、下側横架材31には下側通し材31aが溶接により接合され、下側通し材31aには複数の下側クリップ31bが溶接により接合される。下側クリップ31bに、板状部材21の下部が下側ボルト31cを用いて接合される。下側通し材31aは、例えばアングル材である。
【0029】
支持部材41は、板状部材21に沿って設けられる。支持部材41の上端は、溶接により上側横架材11に接合される。支持部材41の下端近傍には、下側横架材31に向かって突出する当板41aが設けられており、下側横架材31には、支持部材41に向かって突出する当板31dが設けられている。当板41aと当板31dとは、ボルト41bを用いて接合される。つまり、下側横架材31は、当板31d、ボルト41b及び当板41aを介して支持部材41に固定される。
【0030】
支持部材41及び当板41aには、下側横架材31を床梁5(図1参照)又は1つ下の階におけるユニット101の上側横架材11に固定するためのボルト(図示省略)を挿通可能なボルト孔41cが形成されている。ボルト孔41cは、鉛直方向に延びるルーズ穴である。そのため、床梁5又は1つ下の階におけるユニット101の上側横架材11に対して下側横架材31の位置(レベル)を調整することができ、ユニット101の組立誤差、及び建築物1における骨組みの構築誤差(鉄骨の建方誤差)を許容することができる。
【0031】
支持部材41は、上側横架材11を大梁2(図1参照)に架設し下側横架材31を床梁5等や1つ下の階におけるユニット101の上側横架材11に固定した後は、下側横架材31を吊り下げる役目を終えるため、当板41aよりも上方で切断され、撤去される。支持部材41の切断箇所は、残存する部分の上端が建築物1の床用に打設されるコンクリート内に埋まって隠れる位置(レベル)であることが好ましい。
【0032】
図3(a)は、ユニット104の立正面図であり、図3(b)は、ユニット104の平断面図(見下げ図)である。図3(a)及び(b)は、上側横架材14をユニット101,102の上側横架材11,12に架設する前の状態を示している。図3(c)は、図3(a)に示すIIIC-IIIC線に沿う立断面図である。
【0033】
図3(a)乃至(c)に示すように、ユニット104の板状部材24には、鉛直方向における寸法の異なる長板部材24aと短板部材24bが用いられる。長板部材24aと短板部材24bは、上側ボルト14c、上側クリップ14b及び上側通し材14aを介して上側横架材14に固定されており、短板部材24bの下端は、長板部材24aの下端よりも上方に位置している。上側ボルト14c、上側クリップ14b及び上側通し材14aは、ユニット101における上側ボルト11c、上側クリップ11b及び上側通し材11aと略同じであるため、ここではそれらの説明を省略する。
【0034】
長板部材24aは、互いに間隔を空けて複数配置される。短板部材24bは、長板部材24aの間に配置されており、短板部材24bの下端と長板部材24aの側端とによって、人が出入りするための開口部4が形成されている。長板部材24aと短板部材24bとの間には補強材54aが設けられている。
【0035】
長板部材24aは、下側ボルト34c、下側クリップ34b及び下側通し材34aを介して下側横架材34に固定される。下側横架材34は、支持部材44に当板34d、ボルト44b及び当板44aを介して固定される。支持部材44は、上側横架材11から吊り下げられており、下側横架材34を支持している。そのため、長板部材24a及び短板部材24bの重量は、支持部材44によって支持された下側横架材31によって受け止められる。支持部材44及び当板44aには、ボルト孔44cが形成されている。
【0036】
下側ボルト34c、下側クリップ34b、下側通し材34a、当板34d、ボルト44b、当板44a及びボルト孔44cは、ユニット101における下側ボルト31c、下側クリップ31b、下側通し材31a、当板31d、ボルト41b、当板41a及びボルト孔41c(図2参照)と略同じであるため、ここではそれらの説明を省略する。
【0037】
補強材54aは、長板部材24aの側端に沿って下側横架材34まで延びている。隣り合う補強材54aの間には、短板部材24bの下端に沿って補強材54bが架け渡されている。補強材54a、54bによって、開口部4の枠が形成されている。補強材54a、54bは、例えばアングル材である。短板部材24bは、補強材54bに荷重を預けて支持される。
【0038】
ユニット104は、開口部4を跨いで設けられるずれ防止材64を備えている。ずれ防止材64は、開口部4の枠を形成する補強材54aにキャッチクランプ64aを用いて取り付けられており、長板部材24aにおける構面のずれを防止する。そのため、ユニット104を吊り上げたときにおける長板部材24aの振れやバタつきを軽減することができる。したがって、ユニット104を建築物1の各階に設ける際に長板部材24a及び下側横架材34の位置を容易に合わせることができる。
【0039】
ずれ防止材64は、作業者用の手摺やシャフト空間S側への落下防止柵としての役割も果たしている。ずれ防止材64は、例えば単管パイプ等の仮設材である。
【0040】
図1に示すように、上側横架材11,12,13,14は、板状部材21,22,23,24に対してシャフト空間Sとは反対側に配置される。そのため、シャフト空間Sの内部は、耐火被覆の吹付け作業を要さない部材(板状部材21,22,23,24とコンクリートを内部に打設した下側横架材31,32,33,34)のみの連続で構築することができることになり、シャフト空間Sに足場を組み立てて耐火被覆の吹付け作業を行う必要が無い。すなわち、上側横架材11,12,13,14に耐火被覆を吹付ける作業をシャフト空間Sから各ユニットで仕切られた、足場の安定した床用デッキプレート3の上で行うことができ、これにより作業の安全性を向上させることができる。
【0041】
図4は、図1(c)に示す平断面図(見上げ図)におけるIV部の拡大図である。図4に示すように、ユニット101の板状部材21とユニット104の板状部材24とは、間隔を空けて配置される。これは、建築物1における骨組みの構築(鉄骨の建方)時やユニット101,104の組立時に誤差が生じ、ユニット101,104を建築物1の各階に設けるときに板状部材21と板状部材24とが干渉するおそれがあるためである。ユニット101の板状部材21とユニット104の板状部材24とが間隔を空けて配置されるようにユニット101,104を設計することによって、ユニット101,104の組立誤差、及び建築物1における骨組みの構築誤差(鉄骨の建方誤差)を許容することができる。ユニット101の板状部材21とユニット104の板状部材24との間隔は、例えば15mm以上30mm以下に設定することができる。
【0042】
図2及び図4に示すように、ユニット101における板状部材21の側端には、ユニット101,104を建築物1の各階に設けた状態において板状部材21と板状部材24との間に配置される閉塞部材61が配置される。閉塞部材61によって、板状部材21と板状部材24との間が塞がれる。図示を省略するが、ユニット101の板状部材21とユニット103の板状部材23との間、ユニット102の板状部材22とユニット103の板状部材23との間、及びユニット102の板状部材22とユニット104の板状部材24との間も、閉塞部材61によって塞がれる。そのため、シャフト空間Sの気密性を高めることができる。これにより、シャフト空間Sの耐火性能を向上させることができる。閉塞部材61は、例えばウレタンガスケットである。
【0043】
次に、本実施形態に係るシャフト空間形成方法について説明する。
【0044】
まず、建築物1が構築される敷地内に、ユニット101,102,103,104を組み立てるためのエリアを設け、ユニット101,102,103,104を組み立てる(ユニット組立ステップ)。ユニット101,102,103,104の組立ては、建築物1における骨組みの構築(鉄骨の建方)と並行して行われる。
【0045】
ユニット101の組立では、まず、不図示の地組み用架台に上側横架材11を載置し、地組み用架台と上側横架材11を例えばブルマン等で落下しないよう固定する。次に、支持部材41の上端を上側横架材11に溶接により接合し、支持部材41を上側横架材11から吊り下げる。次に、支持部材41の下端に下側横架材31を固定する。具体的には、支持部材41に予め設けられた当板41aと、下側横架材31に予め設けられた当板34dと、を、ボルト44bを用いて接合する。次に、板状部材21の重量を下側横架材31に預けた状態で板状部材21を上側横架材11と下側横架材31とに固定すると共に、隣り合う板状部材21の間を目地シールを用いて塞ぐ。次に、閉塞部材61を板状部材21の側端に配置する。以上により、ユニット101の組立が完了する。ユニット102,103の組立手順は、ユニット101の組立手順と略同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0046】
ユニット104の組立では、地組み用架台に上側横架材14を載置し、支持部材44を上側横架材14から吊り下げる。次に、支持部材44に下側横架材34を固定する。次に、長板部材24aの重量を下側横架材34に預けた状態で長板部材24aを上側横架材14と下側横架材34とに固定する。次に、隣り合う長板部材24aの間に設けられた補強材54aの間に、補強材54bを架け渡し、開口部4の枠を形成する。そして、短板部材24bを、補強材54bに荷重を預けた状態で上側横架材14に固定する。以上により、ユニット101の組立が完了する。
【0047】
シャフト空間形成方法では、ユニット101,102,103,104の組立後、ユニット101,102,103,104を建築物1の各階に設け、シャフト空間Sを形成する(シャフト空間形成工程)。ここでは、上階Fbにユニット101b,102b,103b,104bを設ける手順について説明する。
【0048】
上階Fbへのユニット101b,102b,103b,104bの設置は、下階Faにユニット101a,102a,103a,104aが設けられており、上階Fbにおける大梁2を含む骨組みの構築(鉄骨の建方)が終わっており、且つ、作業床としての上階Fbの床用デッキプレート3の敷設後に行われる。大梁2及び床用デッキプレート3は、作業床として機能すれば良く、仮止め状態でもよい。
【0049】
まず、組立てられたユニット101b,102bの上側横架材11,12をクレーン等の揚重機を用いて吊り上げ、上側横架材11,12を大梁2に架設する。このとき、上側横架材11,12が板状部材21,22に対してシャフト空間Sとは反対側に配置されるように上側横架材11,12を大梁2に架設する。
【0050】
次に、ユニット101b,102bの下側横架材31,32を、下階Faに設けられたユニット101a,102aにおける上側横架材11,12の上端に固定する。
【0051】
次に、ユニット103b,104bを吊り上げ、ユニット103b,104bの上側横架材13,14をユニット101b,102bの上側横架材11,12に架設する。このとき、ユニット101b,102bと同様に、上側横架材13,14が板状部材23,24に対してシャフト空間Sとは反対側に配置されるように上側横架材13,14を上側横架材11,12に架設する。またこのとき、ユニット104bの板状部材24をユニット101bの閉塞部材61及びユニット102bの閉塞部材(図示省略)に押し当てる。同様に、ユニット103bの板状部材23をユニット101bの閉塞部材61及びユニット102bの閉塞部材(図示省略)に押し当てる。
【0052】
次に、ユニット103b,104bの下側横架材33,34を、下階Faに設けられたユニット103a,104aにおける上側横架材13,14の上端に固定する。
【0053】
次に、ユニット101b,104bの支持部材41,44を前述の所定レベルで切断し撤去する。ユニット102b,103bの支持部材(図示省略)も同様に、切断し撤去する。次に、ユニット101b,102b,103b,104bの下側横架材31,32,33,34をコンクリート止め(止め型枠)として用い、建築物1の床にコンクリートを打設し、支持部材41,44の残存部をコンクリート内に埋め殺す。
【0054】
以上により、上階Fbにおけるシャフト空間Sの形成が完了する。骨組みの構築(鉄骨の建方)とシャフト空間Sの形成とを繰り返すことにより、建築物1の全ての階に渡って連続するシャフト空間Sが完成する。
【0055】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0056】
本実施形態に係るユニット10,102,103,104では、大梁2に架設可能に形成された上側横架材11,12に板状部材21,22が固定され、上側横架材11,12に架設可能に形成された上側横架材13,14に板状部材23,24が固定される。そのため、上側横架材11,12,13,14に板状部材21,22,23,24を固定する作業を工事敷地内の地組みヤード等の、足場のしっかりとした低所で行うことができる。したがって、シャフト空間Sを形成する工事における高所作業を減らすことができ、工事の安全性を高めることができる。
【0057】
また、ユニット10,102,103,104では、下側横架材31が板状部材21を支持し、上側横架材11から吊り下げられた支持部材41が下側横架材31を支持する。そのため、板状部材21の重量は、支持部材41によって支持された下側横架材31によって受け止められ荷重を支えられる。したがって、板状部材21に生じる引張応力を低減することができ、板状部材21が固定された上側横架材11を吊り上げることができる。これにより、低所で組み立てたユニット101を容易かつ安全に吊り上げることができ、シャフト空間Sを容易に形成することができる。
【0058】
また、ユニット101,102,103,104では、下側横架材31は、建築物1の床用に打設されるコンクリートを止めるコンクリート止めを兼ねる。そのため、シャフト空間Sの形成に伴ってコンクリート止めが構築される。したがって、建築物1の工期短縮や施工合理化に寄与することができる。
【0059】
また、ユニット104では、長板部材24aにおける構面のずれを防止するずれ防止材64が開口部4を跨いで設けられる。そのため、ユニット104を吊り上げたときにおける長板部材24aの振れやバタつきを軽減することができる。したがって、ユニット104を建築物1の各階に設ける際に長板部材24a及び下側横架材34の位置を容易に合わせることができる。
【0060】
ユニット101,102,103,104では、ボルトを挿通可能なボルト孔41c,44cは、鉛直方向に延びるルーズ穴である。そのため、床梁5又は1つ下の階におけるユニット101,102,103,104の上側横架材11,12,13,14に対して下側横架材31,32,33,34の位置(レベル)を調整することができる。したがって、ユニット101,102,103,104の組立誤差、及び建築物1における骨組みの構築誤差(鉄骨の建方誤差)を許容することができる。
【0061】
また、建築物1では、上側横架材11,12,13,14は、板状部材21,22,23,24に対してシャフト空間Sとは反対側に配置される。そのため、シャフト空間Sの内部は、耐火被覆の吹付け作業を要さない部材(板状部材21,22,23,24とコンクリートを内部に打設した下側横架材31,32,33,34)のみの連続で構築することができることになり、シャフト空間Sに足場を組み立てて耐火被覆の吹付け作業を行う必要が無い。すなわち、上側横架材11,12,13,14に耐火被覆を吹付ける作業をシャフト空間Sから各ユニット101,102,103,104で仕切られた、足場の安定した床用デッキプレート3の上で行うことができ、これにより作業の安全性が向上する。
【0062】
また、ユニット101における板状部材21の側端には、ユニット101,104を建築物1の各階に設けた状態において板状部材21と板状部材24との間に配置される閉塞部材61が配置される。閉塞部材61によって、板状部材21と板状部材24との間が塞がれる。そのため、シャフト空間Sの気密性を高め、耐火性能を逸することなく竪穴区画を形成することができる。
【0063】
本実施形態に係るシャフト空間形成方法によれば、ユニット101,102,103,104を組立てた後に上側横架材11,12を大梁2に架設し上側横架材13,14を上側横架材11,12に架設するため、上側横架材11,12,13、14に板状部材21,22,23,24を固定する作業を工事敷地内の地組みヤード等の、足場のしっかりとした低所で行うことができる。したがって、シャフト空間S内で組み上げられた足場での作業といった、シャフト空間Sを形成する工事における高所作業を減らすことができ、工事の安全性を高めることができる。また、シャフト空間S内での足場の組立が不要になるので、作業効率が向上する。
【0064】
また、板状部材21の固定のために必要な溶接作業も、同様に低所で行うことができる。したがって、シャフト空間S近傍での溶接作業を減らすことができ、安全性が向上する。また、シャフト空間S近傍での溶接作業時に必要となる火花落下養生が不要となり、設置解体手間及びコストを低減することができる。
【0065】
また、上階Fbに床用デッキプレート3を設けた後にユニット101b,102b,103b,104bを設ける。そのため、ユニット101b,102b,103b,104bの下側横架材31,32,33,34をユニット101a,102a,103a,104aの上側横架材11,12,13,14に固定する作業を床用デッキプレート3の上で行うことができ、作業の安全性が向上する。
【0066】
また、上側横架材11,12,13,14を、板状部材21,22,23,24に対してシャフト空間Sとは反対側に配置する。そのため、シャフト空間Sの内部は、耐火被覆の吹付け作業を要さない部材(板状部材21,22,23,24とコンクリートを内部に打設した下側横架材31,32,33,34)のみの連続で構築することが出来ることになり、シャフト空間Sに足場を組み立てて耐火被覆の吹付け作業を行う必要が無い。すなわち、上側横架材11,12,13,14に耐火被覆を吹付ける作業を床用デッキプレート3の上で行うことができ、作業の安全性が向上する。
【0067】
また、建築物1の骨組みの構築(鉄骨の建方)と並行してシャフト空間Sを形成する。そのため、建築物1の全骨組みの構築(鉄骨の建方)完了後に各階にシャフト空間Sを形成する従来工法の場合と比較して、本設エレベータ工事への着手を早めることができる。また、骨組みの構築(鉄骨の建方)に伴ってシャフト空間Sとフロア空間とをユニット101,102,103,104を用いて早期に隔てることができ、開口部養生を早期に設けることで安全性が向上する。
【0068】
また、ユニット101,102,103,104を鉄骨の建方と同時並行して吊り上げ各階に設けるため、鉄骨建方完了後に板状部材21,22,23,24を各階に取り込むための仮設の荷取り用ステージを建物外周部に設ける必要がなくなる。したがって、仮設ステージの構築作業及び解体作業をなくすことができる。これにより、仮設ステージの構築作業及び解体作業に要する労力を削減することができると共に、外装工事にダメ工事として後施工とする部分を残す必要が無くなり、工期短縮に寄与することができる。
【0069】
ユニット101,102,103,104の組み立ては、低所での繰り返し作業となる。そのため、反復行為により作業者の早期の習熟が可能になり、作業の歩掛りを向上させることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0071】
ユニット101において、隣り合う支持部材41の間に筋交いを設け、板状部材21のゆがみを防止してもよい。ユニット102,103,104においても同様に、筋交いを設けて、板状部材22,23,24のゆがみを防止してもよい。筋交いには、例えば長さを調整可能なターンバックルブレースを用いることができる。
【0072】
ユニット101を吊り上げる際には、従来よく行われる吊りピースによる揚重では、偏心によりユニット101が傾くおそれがあるため、ユニット101の上側横架材11(例えばH型鋼であれば上側フランジ)の、重心の上方位置に吊り機構を有するネジ式クランプ等を設け、クランプに揚重フックを通して吊り上げることが好ましい。揚重フックは、ユニット101bの上側横架材11を大梁2に架設し、ユニット101bの下側横架材31をユニット101aの上側横架材11に固定した後、クランプから取り外し可能となる。ユニット102,103,104においても同様である。
【符号の説明】
【0073】
101,102,103,104・・・シャフト壁ユニット
1・・・建築物
2・・・大梁(梁)
11,12,13,14・・・上側横架材
21,22,23,24・・・板状部材
31,32,33,34・・・下側横架材
41,44 ・・・支持部材
61・・・閉塞部材
64・・・ずれ防止材
S・・・シャフト空間
図1
図2
図3
図4