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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】建物におけるオーバーハング部の構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
E04B1/348 L
E04B1/348 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020097332
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021188458
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-09-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社ネス・コーポレーションが東京都大田区矢口二丁目14番5にて、川口航、大津正博が発明した建物におけるオーバーハング部の構造を公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】川口 航
(72)【発明者】
【氏名】大津 正博
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-014107(JP,U)
【文献】特開平04-319144(JP,A)
【文献】特開2001-323560(JP,A)
【文献】特開2003-336312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の上階部において横方向に隣り合って直交する二面に跨り、かつ、下階部の壁面よりも外部側に突出して形成された平面視略L字状のオーバーハング部の構造であって、
前記オーバーハング部は、
前記上階部の一方向に突出して形成された第一オーバーハング部と、
前記第一オーバーハング部に対して直交する方向に突出して形成された第二オーバーハング部と、
前記上階部のコーナーに位置し、前記第一オーバーハング部と前記第二オーバーハング部との間に形成されたコーナー張出部と、を備えており、
前記第一オーバーハング部と前記第二オーバーハング部は、平面視において互いの間に入隅部を形成するように隣り合って配置されており、
前記コーナー張出部は、前記入隅部に配置され、前記第一オーバーハング部と前記第二オーバーハング部の双方に隣接して固定されており、
平板状の第一外装材が、前記コーナー張出部における一方の外側面と、前記第一オーバーハング部における外側面に跨って設けられ、
平板状の第二外装材が、前記コーナー張出部における他方の外側面と、前記第二オーバーハング部における外側面に跨って設けられていることを特徴とするオーバーハング部の構造。
【請求項2】
請求項1に記載のオーバーハング部の構造において、
前記コーナー張出部は、前記第一オーバーハング部と同一の方向かつ同等の寸法で張り出すとともに、前記第二オーバーハング部と同一の方向かつ同等の寸法で張り出していることを特徴とするオーバーハング部の構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオーバーハング部の構造において、
前記第一オーバーハング部は、自身の端部が前記下階部の壁面よりも外側に突出した第一床パネルと、前記第一床パネルの突出側縁部に立設された外壁と、を有しており、
前記第二オーバーハング部は、自身の端部が前記下階部の壁面よりも外側に突出した第二床パネルと、前記第二床パネルの突出側縁部に立設された外壁と、を有しており、
前記第一床パネルは、前記第二床パネルにおける側縁部に隣接して固定されていることを特徴とするオーバーハング部の構造。
【請求項4】
請求項3に記載のオーバーハング部の構造において、
前記コーナー張出部は、
前記第一オーバーハング部側の一壁面が、前記第一オーバーハング部における前記外壁の側端面に固定される下地壁と、
前記下地壁に直交して配置されるとともに、前記下地壁の前記一壁面とは反対側の他壁面に固定される複数の張出壁パネルと、を有しており、
前記複数の張出壁パネルは、
前記下地壁の幅方向一端部に位置し、前記第一オーバーハング部における前記外壁の延長線上に配置される第一張出壁パネルと、
前記下地壁の幅方向他端部に位置し、前記第二オーバーハング部における前記外壁の側端面に固定される第二張出壁パネルと、を少なくとも備えることを特徴とするオーバーハング部の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物におけるオーバーハング部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建物には、例えば特許文献1のように、上階部が下階部より外部側に突出したオーバーハング部を有するものが知られている。特許文献1におけるオーバーハング部は、下階部よりも外方に跳ね出すように長尺に形成された上階部の建築用床パネルにおける屋外側の端部に、建築用壁パネルが立設されて形成されている。
特許文献1におけるオーバーハング部は、長尺に形成された建築用床パネルが、下階部よりも外方に跳ね出し、その跳ね出した部分に形成されることになるため、オーバーハング部の重量を十分に支えることができて構造上の問題が生じない。
【0003】
一方、特許文献2には、直方体フレーム状に形成された鋼製の建物ユニットからなるユニット式建物の上階部にその直交方向の二面に跨るオーバーハング部を配置する技術が開示されている。特許文献2におけるオーバーハング部は、直方体フレーム状に形成された張出部ユニットが、上階部の建物ユニットに接合されて形成されている。
特許文献2の技術によれば、上階部の直交する二面に跨るオーバーハング部を簡易に形成することができる。さらに、建物の外観が単調になることを解消し、外観における意匠性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-003193号公報
【文献】特開2002-188210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、木造の建物において、上階部の直交する二面に跨るオーバーハング部を形成する場合に、特許文献1のように建築用床パネルを上階部の二方向に跳ね出すように設けることは構造上困難である。そこで、より簡易な構造で、上階部の直交する二面に跨るオーバーハング部を簡易に形成することが求められている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、建物における上階部の直交する二面に跨るオーバーハング部を簡易に形成でき、建物の外観における意匠性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、例えば図1図11に示すように、建物1(園舎1)の上階部において横方向に隣り合って直交する二面に跨り、かつ、下階部の壁面7,8(一階の外壁7,8)よりも外部側に突出して形成された平面視略L字状のオーバーハング部OHの構造であって、
前記オーバーハング部OHは、
前記上階部の一方向に突出して形成された第一オーバーハング部4と、
前記第一オーバーハング部4に対して直交する方向に突出して形成された第二オーバーハング部5と、
前記上階部のコーナーに位置し、前記第一オーバーハング部4と前記第二オーバーハング部5との間に形成されたコーナー張出部6と、を備えており、
前記第一オーバーハング部4と前記第二オーバーハング部5は、平面視において互いの間に入隅部6aを形成するように隣り合って配置されており、
前記コーナー張出部6は、前記入隅部6aに配置され、前記第一オーバーハング部4と前記第二オーバーハング部5の双方に隣接して固定されており、
平板状の第一外装材31が、前記コーナー張出部6における一方の外側面と、前記第一オーバーハング部4における外側面に跨って設けられ、
平板状の第二外装材32が、前記コーナー張出部6における他方の外側面と、前記第二オーバーハング部5における外側面に跨って設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、上階部の一方向に突出して形成された第一オーバーハング部4と、第一オーバーハング部4に対して直交する方向に突出して形成された第二オーバーハング部5を、平面視において互いの間に入隅部6aを形成するように隣り合って配置し、この入隅部6aにコーナー張出部6を配置し、第一オーバーハング部4と第二オーバーハング部5の双方に隣接して固定すれば、平面視略L字状のオーバーハング部OHを簡易に形成できる。これにより、建物1における上階部の直交する二面に跨るオーバーハング部OHを簡易に形成でき、建物1の外観における意匠性を高めることができる。
また、平板状の第一外装材31が、コーナー張出部6における一方の外側面と、第一オーバーハング部4における外側面に跨って設けられているので、第一外装材31によって、コーナー張出部6における一方の外側面と、第一オーバーハング部4における外側面を、表面に不陸が生じない状態で被覆することができる。
さらに、平板状の第二外装材32が、コーナー張出部6における他方の外側面と、第二オーバーハング部5における外側面に跨って設けられているので、第二外装材32によって、コーナー張出部6における他方の外側面と、第二オーバーハング部5における外側面を、表面に不陸が生じない状態で被覆することができる。
これにより、平面視略L字状のオーバーハング部OHの外観における意匠性を高めることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば図5に示すように、請求項1に記載のオーバーハング部OHの構造において、
前記コーナー張出部6は、前記第一オーバーハング部4と同一の方向かつ同等の寸法で張り出すとともに、前記第二オーバーハング部5と同一の方向かつ同等の寸法で張り出していることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、コーナー張出部6は、第一オーバーハング部4と同一の方向かつ同等の寸法で張り出すとともに、第二オーバーハング部5と同一の方向かつ同等の寸法で張り出しているので、平面視略L字状のオーバーハング部OHにおける屈曲部分に不陸が生じにくくなる。これにより、平面視略L字状のオーバーハング部OHの外観における意匠性を高めることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、例えば図5図6に示すように、請求項1又は2に記載のオーバーハング部OHの構造において、
前記第一オーバーハング部4は、自身の端部が前記下階部の壁面7よりも外側に突出した第一床パネル11と、前記第一床パネル11の突出側縁部に立設された外壁17と、を有しており、
前記第二オーバーハング部5は、自身の端部が前記下階部の壁面8よりも外側に突出した第二床パネル12と、前記第二床パネル12の突出側縁部に立設された外壁18と、を有しており、
前記第一床パネル11は、前記第二床パネル12における側縁部に隣接して固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、第一オーバーハング部4の床は、自身の端部が下階部の壁面7よりも外側に突出した所謂跳ね出し床である第一床パネル11によって構成されているので、単純な構造で強度の高い第一オーバーハング部4の床を形成することができる。さらに、第一オーバーハング部4は、第一床パネル11の突出側縁部に立設された外壁17を有するので、強度の高い第一床パネル11によって外壁17が支持されることとなり、安定的かつ強度の高い第一オーバーハング部4を形成することが可能となる。
また、第二オーバーハング部5の床も、自身の端部が下階部の壁面8よりも外側に突出した所謂跳ね出し床である第二床パネル12によって構成されているので、単純な構造で強度の高い第二オーバーハング部5の床を形成することができる。さらに、第二オーバーハング部5は、第二床パネル12の突出側縁部に立設された外壁18を有するので、強度の高い第二床パネル12によって外壁18が支持されることとなり、安定的かつ強度の高い第二オーバーハング部5を形成することが可能となる。
そして、第一床パネル11は、第二床パネル12における側縁部に隣接して固定されているので、第一床パネル11の突出方向と第二床パネル12の突出方向を直交させることができ、第一オーバーハング部4と第二オーバーハング部5との間に、コーナー張出部6を形成するスペースを確保することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば図6図11に示すように、請求項3に記載のオーバーハング部OHの構造において、
前記コーナー張出部6は、
前記第一オーバーハング部4側の一壁面が、前記第一オーバーハング部4における前記外壁17の側端面に固定される下地壁20と、
前記下地壁20に直交して配置されるとともに、前記下地壁20の前記一壁面とは反対側の他壁面に固定される複数の張出壁パネル25(25a~25d)と、を有しており、
前記複数の張出壁パネル25は、
前記下地壁20の幅方向一端部に位置し、前記第一オーバーハング部4における前記外壁17の延長線上に配置される第一張出壁パネル25aと、
前記下地壁20の幅方向他端部に位置し、前記第二オーバーハング部5における前記外壁18の側端面に固定される第二張出壁パネル25bと、を少なくとも備えることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、コーナー張出部6は、第一オーバーハング部4側の一壁面が、第一オーバーハング部4における外壁17の側端面に固定される下地壁20と、下地壁20に直交して配置されるとともに、下地壁20の一壁面とは反対側の他壁面に固定される複数の張出壁パネル25と、を有しており、複数の張出壁パネル25は、下地壁20の幅方向一端部に位置し、第一オーバーハング部4における外壁17の延長線上に配置される第一張出壁パネル25aと、下地壁20の幅方向他端部に位置し、第二オーバーハング部5における外壁18の側端面に固定される第二張出壁パネル25bと、を少なくとも備えるので、コーナー張出部6を形成するにあたっては、必ずしも床が必要ではなく、少ない部材量で、コーナー張出部6を形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、建物における上階部の直交する二面に跨るオーバーハング部を簡易に形成でき、建物の外観における意匠性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】保育施設の西側面を示す立面図である。
図2】保育施設の南側面を示す立面図である。
図3】保育施設を南西側から見た場合の斜視図であり、コーナー張出部における内部構造の概要を説明する図である。
図4】東西方向に長尺に形成された部分の西端部のうち一階の一部を示す平断面図である。
図5】東西方向に長尺に形成された部分の西端部のうち二階の一部における床割を説明する平面図である。
図6】東西方向に長尺に形成された部分の西端部のうち二階の一部を示す平断面図である。
図7】コーナー張出部における内部構造の概要を示す平断面図である。
図8】コーナー張出部における内部構造の概要を示す斜視図である。
図9】コーナー張出部における内部構造の概要を示す斜視図である。
図10】コーナー張出部における内部構造の概要を示す斜視図である。
図11】コーナー張出部における内部構造の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。なお、以下の実施形態及び図示例における方角は、あくまでも説明の便宜上設定したものである。
【0020】
図1図3において符号1は、例えば保育園や幼稚園等として用いられる保育施設における二階建ての園舎を示す。この園舎1は、木造の建物であり、東西方向に長尺に形成された部分1a(以下、第一延伸部分1aと称する。)と、南北方向に長尺に形成された部分1b(以下、第二延伸部分1bと称する。)と、を備えて平面視略T字状に形成されている。
【0021】
なお、本実施形態における園舎1は、木造であり、壁や床、屋根といった園舎1の構成要素を予め工場にてパネル化しておき、施工現場でこれらのパネル(すなわち、壁パネルや床パネル、屋根パネル)を組み立てて構築する木質系のパネル工法で構築される。ただし、これに限られるものではなく、従来の軸組工法や壁式工法の建物にも適用することができる。
また、このパネルとは、縦横の框材Aが矩形状に組み立てられるとともに、縦横の框材Aからなる矩形枠の内部に補助桟材Bが縦横に組み付けられて枠体が構成され、この枠体の両面もしくは片面に、面材Cが貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。さらに、その内部中空な部分には、通常、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填されるものである。本実施形態においては、説明の便宜上、このパネルの構成要素である縦横の框材A、補助桟材B、面材Cの図示を省略する場合がある。
【0022】
第一延伸部分1aは、東端部が、第二延伸部分1bの中央と一体化したような状態となっている。
また、第一延伸部分1aに設けられた屋根2は、南側が高く、北側が低い片流れ屋根とされている。
【0023】
第一延伸部分1aと、第二延伸部分1bと、によって形成される二つの入隅部のうち、南側に位置する入隅部の二階部分には、掃き出し窓を介して屋内に出入り可能なバルコニー3が設けられている。
また、バルコニー3の西端部には外階段3aが設けられており、屋外通路とバルコニー3との間を行き来できるようになっている。
なお、屋外通路には、園児の敷地外への通行を防止するゲートや、隣接する敷地との間を隔てるフェンスが適宜設けられている(図4参照)。
【0024】
第一延伸部分1aの西端部の二階には、一階の外壁7,8よりも外部側に突出した(張り出した)平面視略L字状のオーバーハング部OHが形成されている。そして、このようなオーバーハング部OHは、上階部の一方向に突出して形成された第一オーバーハング部4と、第一オーバーハング部4に対して直交する方向に突出して形成された第二オーバーハング部5と、上階部のコーナーに位置し、第一オーバーハング部4と第二オーバーハング部5との間に形成されたコーナー張出部6と、を備えている。
なお、第一延伸部分1aの西端部とは、外階段3aの上り口付近から西側に位置する部分を指している。
【0025】
第一オーバーハング部4は、第一延伸部分1aの西端部における西側面に形成されており、第二オーバーハング部5は、第一延伸部分1aの西端部における南側面に形成されている。
そして、これら第一オーバーハング部4と第二オーバーハング部5は、第一延伸部分1aの西端部における南西側のコーナー部分において一体化した状態となっている。換言すれば、第一延伸部分1aの西端部における南西側のコーナー部分には、第一オーバーハング部4と第二オーバーハング部5との間に形成された上記のコーナー張出部6が設けられている。
【0026】
第一延伸部分1aの西端部における西側面は、一階の外壁7が、相対的に見て、室内側に後退している部分7aと、外部側に突出している部分7bと、に分かれて構成されている。
そして、一階の外壁7における外部側に突出している部分7bの上端部は、第一オーバーハング部4の下端部と一体化した状態となっている。
なお、一階の外壁7における室内側に後退している部分7aには、複数の窓が設けられており、第一オーバーハング部4は、窓上方の庇としても機能する。これら複数の窓は、腰高窓でもよいし、掃き出し窓でもよいし、高窓でもよい。
【0027】
第一オーバーハング部4は、第一延伸部分1aの西端部の二階における西側面の外壁を構成しており、一階の外壁7における室内側に後退している部分7aに対してオーバーハングしている。
このような第一オーバーハング部4は、正面視において台形状に形成されており、上端部は、片流れ屋根である屋根2の角度に沿って斜めに形成されている。
また、第一オーバーハング部4における外部側への突出寸法は、一階の外壁7における外部側に突出している部分7bの、外部側への突出寸法と等しい。
【0028】
第一延伸部分1aの西端部の一階における南側面の外壁8は、第二オーバーハング部5を除く第一延伸部分1aの南側面と連続する壁面を構成している。つまり、第一延伸部分1aの南側面は、西端部の二階のみが第二オーバーハング部5として突出し、その他の壁面は、第二オーバーハング部5に対して室内側に後退し、かつ連続する平坦面として設けられている。
また、一階の外壁8は、第一延伸部分1aの長さ方向(西方)に突出している。そのため、上記の西側面における一階の外壁7の南側端部には、図4等に示すように、南側面における一階の外壁8からなる袖壁が設けられた状態となっている。
なお、一階の外壁8は、上記の壁パネルによって構成されているが、他の部分(本実施形態においては、後述する下地壁20)との寸法を調整するために、角材からなる調整材8aが適宜使用される(図9参照)。
【0029】
第二オーバーハング部5は、第一延伸部分1aの西端部の二階における南側面の外壁を構成しており、第一延伸部分1aの西端部の一階における南側面の外壁8に対してオーバーハングしている。
このような第二オーバーハング部5は、正面視において矩形状に形成されており、上端部は、屋根2まで達している。また、下端部は、バルコニー3の床部よりも下方に位置している。
なお、第二オーバーハング部5には、複数の窓が設けられている。これら複数の窓は、腰高窓でもよいし、高窓でもよい。
【0030】
図5は、第一延伸部分1aの西端部の二階における床割を示している。すなわち、複数の床パネルをどのように割り付けて、第一延伸部分1aの西端部の二階の床を構成しているかを示している。より詳細には、図5は、第一延伸部分1aにおける西端部の二階のうち、南側に位置する箇所の床割を示している。
【0031】
複数の床パネルには、第一オーバーハング部4を形成する複数の第一床パネル11と、第二オーバーハング部5を形成する複数の第二床パネル12と、が含まれており、どちらも上面に家具を設置したり、人が歩行したりすることが出来るようになっている。すなわち、複数の第一床パネル11と複数の第二床パネル12とによって形成された床は、通常の床として機能する。
これら複数の第一床パネル11及び複数の第二床パネル12は、自身の端部を、一階の外壁7,8よりも外側に突出させて、その突出した部分を第一オーバーハング部4及び第二オーバーハング部5としている。つまり、複数の第一床パネル11及び複数の第二床パネル12は、いわゆる跳ね出し床である。
なお、複数の第一床パネル11及び複数の第二床パネル12における外周縁部には、胴差15が設けられている。
【0032】
なお、第一床パネル11及び第二床パネル12は、縦横(南北方向)に配置される框材Aが矩形状に組み立てられるとともに、矩形枠の内部に補助桟材Bが組み付けられて枠体が構成され、この枠体の上面に、面材C(フローリングが取り付けられる床下地材)が貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。
また、矩形枠の内部に組み付けられる補助桟材Bのうち、一階の外壁7,8の上方に位置するものは、一階の外壁7,8の上端部に固定される固定桟材11a,12aとして機能する。なお、図5では、補助桟材Bのうち固定桟材11a,12aのみ表示する。
【0033】
複数の第一床パネル11が、一階の外壁7よりも外側に突出した部分(上記の自身の端部であり、固定桟材11aよりも西側に位置する部分)に着目すると、当該部分は、図5の二点鎖線で示すように、平面視において東西方向よりも南北方向に長い矩形状に形成されている。
また、複数の第二床パネル12が、一階の外壁8よりも外側に突出した部分(上記の自身の端部であり、固定桟材12aよりも南側に位置する部分)に着目すると、当該部分は、図5の二点鎖線で示すように、平面視において南北方向よりも東西方向に長い矩形状に形成されている。
【0034】
また、複数の床パネルには、複数の第一床パネル11と共に第一オーバーハング部4を形成する複数の第三床パネル13と、第一延伸部分1aの西端部の二階におけるその他の床を構成する複数の第四床パネル14と、が更に含まれている。
複数の第三床パネル13は、第一床パネル11の北側に並んで配置されており、第一床パネル11と同様に、自身の端部を、一階の外壁7よりも外側に突出させて、その突出した部分を第一オーバーハング部4としている。
複数の第四床パネル14は、端部が、一階の外壁7,8よりも外側に突出していない。
なお、複数の第三床パネル13における外周縁部には、胴差15が設けられている。
【0035】
複数の第二床パネル12は、第一延伸部分1aの西端部の北側に位置する第三床パネル13及び第四床パネル14から南方に伸びており、南側端部が、第二オーバーハング部5を形成している。
複数の第一床パネル11は、第三床パネル13の南側に位置するとともに、第二床パネル12の西側に位置しており、西側端部が、第一オーバーハング部4を形成している。
そして、複数の第一床パネル11は、複数の第二床パネル12のうち最も西側に位置する第二床パネル12の西側縁部に隣接して固定されている。
【0036】
複数の第一床パネル11及び複数の第三床パネル13における西側縁部には、第一延伸部分1aの西端部の二階における西側の外壁17が設けられている。すなわち、この二階の外壁17は、第一オーバーハング部4の外壁を構成している。そのため、二階の外壁17は、上記のように正面視において台形状に形成されている。
なお、この二階の外壁17は、上記の壁パネルによって形成されている。
また、この二階の外壁17は、複数の第一床パネル11及び複数の第三床パネル13における西側縁部の上面と、複数の第一床パネル11及び複数の第三床パネル13における外周縁部に設けられた胴差15の上面と、に跨って設けられている。
【0037】
複数の第二床パネル12における南側縁部には、第一延伸部分1aの西端部の二階における南側の外壁18が設けられている。すなわち、この二階の外壁18は、第二オーバーハング部5の外壁を構成している。そのため、二階の外壁18は、上記のように正面視において矩形状に形成されている。
なお、この二階の外壁18は、上記の壁パネルによって形成されている。
また、この二階の外壁18は、複数の第二床パネル12における南側縁部の上面と、複数の第二床パネル12における外周縁部に設けられた胴差15の上面と、に跨って設けられている。
【0038】
複数の第一床パネル11及び複数の第二床パネル12が以上のように配置された場合、第一オーバーハング部4の延長線と第二オーバーハング部5の延長線とが交差する部分の下方には、当該交差する部分を支持する支持手段(第一床パネル11に対する一階の外壁7や、第二床パネル12に対する一階の外壁8に相当する支持手段)が存在しないことになる。そのため、たとえ第一オーバーハング部4の延長線と第二オーバーハング部5の延長線とが交差する部分に床パネルを設けても、上面に家具を設置したり、人が歩行したりすることが出来る通常の床として機能させることは困難である(ただし、例えば通常の床として機能させることを目的としない床パネルを設けることを妨げるものではない。)。
しかしながら、例えば図5に示す床割のとおりにオーバーハング部を形成しようとすると、第一延伸部分1aの西端部における南西側のコーナー部分が、平面視においてL字状に切り欠かれた状態となってしまう。すなわち、第一オーバーハング部4と第二オーバーハング部5は、平面視において入隅部6aを形成するように隣り合って配置されることになる。この入隅部6aは直角であり、第一オーバーハング部4と第二オーバーハング部5は、入隅部6a側の角部が接触(平面視において点接触)しているようなイメージで隣り合って配置されている。そのため、第一延伸部分1aにおける二階の直交する二面(西側面、南側面)に跨るオーバーハング部を形成できない。
そこで、本実施形態においては、第一オーバーハング部4の延長線と第二オーバーハング部5の延長線とが交差する部分には、上記のコーナー張出部6が形成されている。
【0039】
コーナー張出部6の構造について、より詳細に説明すると、このコーナー張出部6は、第一オーバーハング部4と同一の方向かつ同等の寸法で張り出すとともに、第二オーバーハング部5と同一の方向かつ同等の寸法で張り出している。つまり、コーナー張出部6は、第一オーバーハング部4や第二オーバーハング部5の外側面よりも突出したり、凹んだりせずに、面一の状態となるように張り出して形成されている。
また、このコーナー張出部6は、図5の二点鎖線で示すように、概略的には、平面視において南北方向よりも東西方向に長い矩形状に形成されている。
要するに、コーナー張出部6は、第一オーバーハング部4及び第二オーバーハング部5と共に、平面視略L字状のオーバーハング部OHを形成するにあたり、コーナー部分に位置するからと言ってL型に屈曲したり、丸みを帯びたりするように形成されているのではなく、第一オーバーハング部4や第二オーバーハング部5と同様に、平面視において直線状(矩形状)に形成されている。
【0040】
このようなコーナー張出部6は、内部構造として、図3図6図9に示すように、下地壁20と、複数の張出壁パネル25と、外装下地材27と、を有する。
また、このようなコーナー張出部6の内部構造を被覆するものとして、オーバーハング部OHの外側面には、平板状の第一外装材31と、平板状の第二外装材32と、平面視L字状の第三外装材33と、が設けられている。
【0041】
下地壁20は、第一オーバーハング部4側の一壁面(第一オーバーハング部4側の面)が、第一オーバーハング部4における上記の外壁17の側端面に固定されるとともに、最も南側に位置する第一床パネル11における南側端部の縁部に立設固定されている。そのため、外壁17の側端部は、下地壁20の厚さ分、最も南側に位置する第一床パネル11における南側端部よりも北側に位置した状態となる。
また、この下地壁20は、複数の第一床パネル11における南側縁部の上面と、複数の第一床パネル11における外周縁部に設けられた胴差15の上面と、に跨って設けられている。
このような下地壁20は、同一直線上に配置される複数の下地壁パネル21と、下地壁20の両端部に配置される複数の第一柱材22と、複数の下地壁パネル21間に配置される複数の第二柱材23と、を備える。
下地壁パネル21は、上記の壁パネルであり、縦横の框材Aと、補助桟材Bと、両側の面材Cと、を有する。
第一柱材22及び第二柱材23は角材であり、長手方向の寸法は、下地壁パネル21と等しい上下寸法に設定されている。また、第一柱材22は断面が矩形(長方形)であり、第二柱材23は断面正方形である。第一柱材22及び第二柱材23における南北方向の長さは、下地壁パネル21における南北方向の長さ(厚さ)と等しい。
【0042】
これら下地壁パネル21と、第一柱材22と、第二柱材23とは、横方向(東西方向)に並べて配置され、互いに接合されており、これによって下地壁20が形成されている。また、隣接する部材同士は接着剤やビス等によって適宜接合されている。
より詳細に説明すると、第一柱材22が、下地壁20の両端部に配置されている。そして、これら両端部の第一柱材22の間に、複数の第二柱材23が第一柱材22から間隔を空けて、かつ、複数の第二柱材23同士が間隔を空けて配置されている。
複数の下地壁パネル21は、第一柱材22と第二柱材23との間と、第二柱材23同士の間に配置されている。そして、上下方向に伸びる縦框材Aと、両側の面材Cにおける側端面が、第一柱材22の側面と第二柱材23の側面にそれぞれ接した状態となっている。
【0043】
下地壁20のうち西側端部に位置する第一柱材22と下地壁パネル21の端部との境目には、後述する連結ボルト24が通される貫通孔THが南北方向に沿って形成されている。
また、下地壁20のうち東側端部に位置する第一柱材22と下地壁パネル21の端部との境目にも、後述する連結ボルト24が通される貫通孔THが南北方向に沿って形成されている。さらに、東側端部に位置する第一柱材22と下地壁パネル21の端部との境目における二階の室内側の面には、後述する連結ボルト24の先端部と、当該連結ボルト24の先端部に設けられるナット24aが収容される座堀部24bが座堀り形成されている。
第二柱材23における室内側の面にも、後述する連結ボルト24の先端部と、当該連結ボルト24の先端部に設けられるナット24aが収容される座堀部24bが座堀り形成されている。さらに、第二柱材23にも、後述する連結ボルト24が通される貫通孔THが南北方向に沿って形成されている。
なお、図9に示すように、このような下地壁20の下方に位置する一階の外壁8における調整材8aの上端部にも、南北方向に沿って貫通孔THが形成されている。図示はしないが、調整材8aの室内側面にも座堀部が適宜形成されている。
【0044】
張出壁パネル25は、上記の壁パネルであり、縦横の框材Aと、補助桟材Bと、両側の面材Cと、を有する。そして、下地壁20に直交して配置されるとともに、下地壁20の一壁面(第一オーバーハング部4側の面)とは反対側の他壁面に固定される。
このような張出壁パネル25は、下地壁20の幅方向一端部に位置し、第一オーバーハング部4における外壁17の延長線上に配置される第一張出壁パネル25aと、下地壁20の幅方向他端部に位置し、第二オーバーハング部5における外壁18の側端面に固定される第二張出壁パネル25bと、を少なくとも備える。本実施形態においては、第一張出壁パネル25a及び第二張出壁パネル25bの他に、第三張出壁パネル25cと、第四張出壁パネル25dと、を備えている。
第三張出壁パネル25c及び第四張出壁パネル25dは、第一張出壁パネル25aと第二張出壁パネル25bとの間に間隔を空けて設けられている。
これら第一から第四張出壁パネル25a~25dは、同一の構成とされている。
さらに、第一から第四張出壁パネル25a~25dの下端部は、複数の第一床パネル11及び複数の第二床パネル12における下端部を越えて、一階の外壁8における上端部の位置まで伸びている。換言すれば、第一から第四張出壁パネル25a~25dの下端部は、最も南側に位置する第一床パネル11における外周縁部に設けられた胴差15を跨いで、一階の外壁8における上端部まで達している。
【0045】
そして、第一から第四張出壁パネル25a~25dは、連結ボルト24によって、下地壁20に連結固定されている。
より詳細には、第一から第四張出壁パネル25a~25dは、下地壁20のうち、第一柱材22と第二柱材23が設けられた位置に連結固定されている。
さらに、第二から第四張出壁パネル25b~25dは、下端部が、一階の外壁8における上端部のうち、調整材8aが設けられた位置に連結固定されている。
第一張出壁パネル25aは、一階の外壁8における西端部よりも西側に配置されるため、下端部(下端部パネル251)は、一階の外壁8には連結固定されないが、第一オーバーハング部4を構成する二階の外壁17の下方に位置する後述の垂れ壁16に連結固定されている(図10図11参照)。
すなわち、第一から第四張出壁パネル25a~25dにおける下地壁20側及び一階の外壁8側(すなわち、北側)の框材Aには、連結ボルト24が通される貫通孔THが南北方向に沿って形成されている。連結ボルト24は、第一から第四張出壁パネル25a~25d側の貫通孔THから、下地壁20側及び調整材8a側(すなわち、北側)の貫通孔THに通されてナット24aによって固定される。
ただし、第一張出壁パネル25aは、上記のように第一オーバーハング部4における外壁17の延長線上に配置されているため、壁パネルである外壁17の框材Aにも貫通孔THが形成されている。そして、連結ボルト24は、第一張出壁パネル25a側の貫通孔THから、下地壁20側の貫通孔THに通され、さらに外壁17の貫通孔THに通されて、当該外壁17の内部中空部においてナット24aが設けられている。
なお、この第一張出壁パネル25aについては、第一床パネル11及び第二床パネル12よりも上方に位置する本体部分と、この本体部分の下端面に接合される上記の下端部パネル251と、を有している。図示はしないが、この下端部パネル251にも作業用孔26は形成されている。そして、下端部パネル251は、上記のように、後述する垂れ壁16に対し、連結ボルト24によって連結固定されている。さらに、この下端部パネル251は、第一張出壁パネル25aにおける本体部分の下端面に対してビスや接着剤によって適宜接合されている。
また、本実施形態においては、第一張出壁パネル25aのみが本体部分と下端部パネル251とを有する構成とされているが、これに限られるものではなく、第二から第四張出壁パネル25b~25dも、本体部分と下端部パネルとを有する構成とされてもよい。
【0046】
このような連結ボルト24による固定を可能とするために、第一から第四張出壁パネル25a~25dにおける少なくとも一方の面材Cには、図8に示すように、連結ボルト24が通される位置(貫通孔THの位置)に対応して作業用孔26が形成されている。また、図示はしないが、外壁17における少なくとも一方(室内側が好ましい)の面材Cにも、連結ボルト24が通される位置(貫通孔THの位置)に対応して作業用孔26が形成されている。
作業用孔26は、連結ボルト24やナット24aを面材Cの裏側(壁パネルの内部中空部)に入れるとともに、手や工具を差し入れることが可能な孔である。第一から第四張出壁パネル25a~25dは、連結ボルト24によって、下地壁20及び外壁17に連結固定する場合は、作業用孔26を利用する。
【0047】
複数の張出壁パネル25の上端部は、図3図9に示すように、屋根2の高さまで伸びているが、屋根2に対しては非固定とされている。また、下地壁20の上端部は、複数の張出壁パネル25と同様に、屋根2の高さまで伸びているが、屋根2に対しては固定されている。
さらに、本実施形態においては、複数の張出壁パネル25における下端部は、複数の第一床パネル11及び複数の第二床パネル12よりも下端部に突出している。そのため、複数の第一床パネル11及び複数の第三床パネル13における西側端部の下端面と、複数の第二床パネル12における南側端部の下端面に、複数の張出壁パネル25における下端部と同程度に下方に突出する垂れ壁16を設けるようにしてもよい(図10図11参照)。その場合、この垂れ壁16も第一オーバーハング部4及び第二オーバーハング部5に含まれる。なお、この垂れ壁16は、小壁とも呼ばれ、上記の壁パネルによって構成されている。
【0048】
下地壁20に対して複数の張出壁パネル25が連結固定されると、その形状は平断面視において櫛形となり、屋外側に向かって開放した状態となる。このように開放された部分を覆うため、複数の張出壁パネル25における南側端部間のそれぞれには、上記の外装下地材27が設けられている。
外装下地材27は、合板等の板材からなり、複数の張出壁パネル25における南側端部の側面に取り付けられた被固定部27aに対して固定されている。なお、被固定部27aは、角材からなる。
【0049】
外装下地材27の外側面は、複数の張出壁パネル25における南側端面と面一になるように納められている。さらに、上記の垂れ壁16を設けた場合は、垂れ壁16の外側面も、外装下地材27の外側面と、複数の張出壁パネル25における南側端面と面一になる。これにより、コーナー張出部6の南側面に、平坦な壁面を形成することができる。すなわち、第二オーバーハング部5全体の表面(外側面)を平坦な壁面とすることができる。このような平坦な壁面には、上記の第二外装材32及び第三外装材33の取付下地となる胴縁(図示省略)が取り付けられる。
なお、第一張出壁パネル25aの西側面と、下地壁20における西側の第一柱材22の西側面と、二階の外壁17における西側面も面一になるように納められている。さらに、上記の垂れ壁16を設けた場合は、垂れ壁16の外側面も、第一張出壁パネル25aの西側面と、下地壁20における西側の第一柱材22の西側面と、二階の外壁17における西側面も面一になる。これにより、コーナー張出部6の西側面に、平坦な壁面を形成することができる。すなわち、第一オーバーハング部4全体の表面(外側面)を平坦な壁面とすることができる。このような平坦な壁面には、上記の第一外装材31及び第三外装材33の取付下地となる胴縁(図示省略)が取り付けられる。
【0050】
上記の平板状の第一外装材31と、平板状の第二外装材32と、平面視L字状の第三外装材33は、図7に示すように、コーナー張出部6の内部構造を被覆するとともに、第一オーバーハング部4及び第二オーバーハング部5の外側面を被覆している。
第一外装材31は、コーナー張出部6における一方の外側面(西側面)と、第一オーバーハング部4における外側面に跨って設けられている。
第二外装材32は、コーナー張出部6における他方の外側面(南側面)と、第二オーバーハング部5における外側面に跨って設けられている。
平面視L字状に形成された第三外装材33は、コーナー張出部6における一方の外側面(西側面)と、コーナー張出部6における他方の外側面(南側面)に跨って設けられている。
なお、これらの各外装材31,32,33は、図示しない上記の胴縁を介してオーバーハング部OHの外側面に取り付けられており、オーバーハング部OHの外側面からは間隔を空けて配置されている。
【0051】
以上のようなオーバーハング部OHは、一階の外壁7,8よりも外側に突出する複数の各床パネル11,12,13によって形成されているため、園舎1の第一延伸部分1aを施工する過程で施工が行われることとなる。すなわち、オーバーハング部OHは、第一延伸部分1aの施工が終わった後に、後付けされるものではない。
【0052】
本実施形態における建物は、上記のように保育施設の園舎1とするが、これに限られるものではなく、その他の建物であってもよい。建物の構造も、平面視略T字状に形成される必要はなく、平面視において直交する二つの壁面があり、これら二つの壁面に跨ってオーバーハング部OHが設けられていればよい。
また、以上のように形成されたオーバーハング部OHの下面には、図示しない軒天材が設けられており、オーバーハング部OHの下面を化粧している。これにより、各床パネル11,12,13の下面や複数の張出壁パネル25における下端面、垂れ壁16を設けた場合には垂れ壁16の下端面も被覆されることになり、外観における意匠性を向上できる。
なお、本実施形態においては、複数の張出壁パネル25における下端部が、複数の第一床パネル11及び複数の第二床パネル12における下端部を越えて、一階の外壁8における上端部の位置まで伸びているとしたが、複数の第一床パネル11及び複数の第二床パネル12における下端部を越えないようにしてもよい。すなわち、複数の張出壁パネル25における下端部の高さ位置と、複数の第一床パネル11及び複数の第二床パネル12における下端部の高さ位置が略等しくてもよいし、複数の張出壁パネル25における下端部の高さ位置と、下地壁20における下端部の高さ位置が略等しくてもよい。下地壁20における下端部の高さ位置が略等しい場合は、上記の、通常の床として機能させることを目的としない床パネルを設けてもよい。当該通常の床として機能させることを目的としない床パネルは、例えば複数の張出壁パネル25を支持する目的で設けられてもよい。
【0053】
本実施形態によれば、上階部の一方向に突出して形成された第一オーバーハング部4と、第一オーバーハング部4に対して直交する方向に突出して形成された第二オーバーハング部5を、平面視において互いの間に入隅部6aを形成するように隣り合って配置し、この入隅部6aにコーナー張出部6を配置し、第一オーバーハング部4と第二オーバーハング部5の双方に隣接して固定すれば、平面視略L字状のオーバーハング部OHを簡易に形成できる。これにより、建物1における上階部の直交する二面に跨るオーバーハング部OHを簡易に形成でき、建物1の外観における意匠性を高めることができる。
【0054】
また、コーナー張出部6は、第一オーバーハング部4と同一の方向かつ同等の寸法で張り出すとともに、第二オーバーハング部5と同一の方向かつ同等の寸法で張り出しているので、平面視略L字状のオーバーハング部OHにおける屈曲部分に不陸が生じにくくなる。これにより、平面視略L字状のオーバーハング部OHの外観における意匠性を高めることができる。
【0055】
また、第一オーバーハング部4の床は、自身の端部が下階部の壁面7よりも外側に突出した所謂跳ね出し床である第一床パネル11によって構成されているので、単純な構造で強度の高い第一オーバーハング部4の床を形成することができる。さらに、第一オーバーハング部4は、第一床パネル11の突出側縁部に立設された外壁17を有するので、強度の高い第一床パネル11によって外壁17が支持されることとなり、安定的かつ強度の高い第一オーバーハング部4を形成することが可能となる。
また、第二オーバーハング部5の床も、自身の端部が下階部の壁面8よりも外側に突出した所謂跳ね出し床である第二床パネル12によって構成されているので、単純な構造で強度の高い第二オーバーハング部5の床を形成することができる。さらに、第二オーバーハング部5は、第二床パネル12の突出側縁部に立設された外壁18を有するので、強度の高い第二床パネル12によって外壁18が支持されることとなり、安定的かつ強度の高い第二オーバーハング部5を形成することが可能となる。
そして、第一床パネル11は、第二床パネル12における側縁部に隣接して固定されているので、第一床パネル11の突出方向と第二床パネル12の突出方向を直交させることができ、第一オーバーハング部4と第二オーバーハング部5との間に、コーナー張出部6を形成するスペースを確保することができる。
【0056】
また、コーナー張出部6は、第一オーバーハング部4側の一壁面が、第一オーバーハング部4における外壁17の側端面に固定される下地壁20と、下地壁20に直交して配置されるとともに、下地壁20の一壁面とは反対側の他壁面に固定される複数の張出壁パネル25と、を有しており、複数の張出壁パネル25は、下地壁20の幅方向一端部に位置し、第一オーバーハング部4における外壁17の延長線上に配置される第一張出壁パネル25aと、下地壁20の幅方向他端部に位置し、第二オーバーハング部5における外壁18の側端面に固定される第二張出壁パネル25bと、を少なくとも備えるので、コーナー張出部6を形成するにあたっては、必ずしも床が必要ではなく、少ない部材量で、コーナー張出部6を形成することができる。
【0057】
また、平板状の第一外装材31が、コーナー張出部6における一方の外側面と、第一オーバーハング部4における外側面に跨って設けられているので、第一外装材31によって、コーナー張出部6における一方の外側面と、第一オーバーハング部4における外側面を、表面に不陸が生じない状態で被覆することができる。
さらに、平板状の第二外装材32が、コーナー張出部6における他方の外側面と、第二オーバーハング部5における外側面に跨って設けられているので、第二外装材32によって、コーナー張出部6における他方の外側面と、第二オーバーハング部5における外側面を、表面に不陸が生じない状態で被覆することができる。
これにより、平面視略L字状のオーバーハング部OHの外観における意匠性を高めることができる。
【符号の説明】
【0058】
OH オーバーハング部
TH 貫通孔
A 縦横の框材
B 補助桟材
C 面材
1 園舎
1a 第一延伸部分
2 屋根
3 バルコニー
3a 外階段
4 第一オーバーハング部
5 第二オーバーハング部
6 コーナー張出部
7 一階の外壁
7a 室内側に後退している部分
7b 外部側に突出している部分
8 一階の外壁
11 第一床パネル
12 第二床パネル
13 第三床パネル
14 第四床パネル
17 二階の外壁
18 二階の外壁
20 下地壁
21 下地壁パネル
22 第一柱材
23 第二柱材
24 連結ボルト
25 張出壁パネル
25a 第一張出壁パネル
25b 第二張出壁パネル
26 作業用孔
27 外装下地材
31 第一外装材
32 第二外装材
33 第三外装材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11