(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】装飾成形部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20231018BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231018BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20231018BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20231018BHJP
【FI】
B29C45/14
B32B27/00 E
B32B27/00 L
B32B27/32 Z
B32B7/06
(21)【出願番号】P 2020547107
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2019055661
(87)【国際公開番号】W WO2019170794
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】102018105523.4
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507370644
【氏名又は名称】レオンハード クルツ シュティフトゥング ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フックス ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ガイヤー マルセル
(72)【発明者】
【氏名】ハーン マルティン
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-091666(JP,A)
【文献】特開2002-018893(JP,A)
【文献】特開2000-079796(JP,A)
【文献】特開2012-176791(JP,A)
【文献】特開2018-089952(JP,A)
【文献】特開2017-001378(JP,A)
【文献】特開平08-187746(JP,A)
【文献】特開2002-355850(JP,A)
【文献】特開平04-004130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B32B 27/32
B32B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾成形部品の製造方法であって、
a)転写フィルム(1)の転写プライ(15)をポリプロピレンフィルム(20)の第1表面(21)に塗布することによって複合体(2)の形態の中間製品を製造するステップであって、前記転写フィルム(1)の前記転写プライ(15)が少なくとも1つの装飾層(13)を含む、ステップと、
b)前記転写フィルム(1)の前記転写プライ(15)が塗布された前記ポリプロピレンフィルム(20)を含む前記複合体(2)を形成するステップと、
c)形成された前記複合体(
2)を射出成形型に挿入し、形成された前記複合体
(2)をプラスチック材料(40)でバックインジェクション成形および/またはオーバーモールド成形および/またはインサート成形するステップと、
を有し、
前記転写フィルム(1)の前記転写プライ(15)は、接着促進層(14)を有し、当該接着促進層(14)は、前記ポリプロピレンフィルム(20)の前記第1表面(21)に面する一つ又は複数の装飾層(13)の側に配置され、
前記接着促進層(14)は、連続して印刷される2つ以上の部分層からなり、
前記ポリプロピレンフィルム(20)の前記第1表面(21)に面する前記接着促進層(14)の前記部分層は、ポリオレフィンをベースとしており、
前記一つ又は複数の装飾層(13)に面する前記接着促進層(14)の部分層は、溶剤ベースのポリウレタン樹脂からなる、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ポリプロピレンフィルム(20)は、前記転写フィルム(1)の前記転写プライ(15)を塗布する前に、ステップa)において前処理され、
前記前処理は、前記転写プライ(15)の塗布を行う直前、前記前処理と前記塗布との間の経過時間が24時間以下、であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)において、前記転写フィルム(1)を前記ポリプロピレンフィルム(20)の前記第1表面(21)の上に熱積層し、熱活性化可能な熱架橋性接着剤または熱可塑性接着促進剤を用いて熱積層し、その後、前記転写フィルム(1)のキャリアプライ(10)を除去することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)における前記複合体の形成は、真空形成および/またはハイドロフォーミングを用いた熱形成方法により実行されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップb)において、前記複合体(2)は、50℃~190℃の温度に加熱されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップc)において、ポリプロピレンを含有するか、またはポリプロピレンからなるプラスチックがプラスチックとして使用され、かつ/または、
ステップc)において、前記プラスチックは、170℃~290℃の溶融温度に加熱され、かつ/または、
ステップc)において、前記射出成形型は、15℃~80℃の成形温度に加熱されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップc)において、前記ポリプロピレンフィルム(20)の前記第1表面(21)の反対側に位置する前記ポリプロピレンフィルムの第2表面(22)は、少なくとも当該表面の一部にわたって前記プラスチック材料(40)に接合されて、モノリシック積層体を形成することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリプロピレンフィルム(20)は、5μm~3mmの層厚を有し、かつ/または、
VST A120法による前記ポリプロピレンフィルム(20)のビカット軟化温度は、140℃~145℃であり、DIN EN ISO 306:2014-03に従って決定され、かつ/または、
示差走査熱量測定(DSC)による前記ポリプロピレンフィルム(20)の溶融温度は、10K/分で160℃~170℃であり、DIN EN ISO 11357-3:2013-04に従って決定され、かつ/または、
温度115℃/1時間における前記ポリプロピレンフィルム(20)の収縮長さは、1%未満であり、IEC 60674-2:2016に従って決定され、かつ/または、
前記ポリプロピレンフィルム(20)の引張弾性率は、1000MPa~1400MPaであり、DIN EN ISO 527の第1部~第3部に従って決定され、かつ/または、
前記ポリプロピレンフィルム(20)の降伏点の引張応力は、20MPa~30MPaであり、DIN EN ISO 527の第1部から第3部に従って決定され、かつ/または、
前記ポリプロピレンフィルム(20)の破断点伸びは、100%を超え、DIN EN ISO 527の第1部から第3部に従って決定され、かつ/または、
前記ポリプロピレンフィルム(20)のショアD硬度(15秒)は、60~65であり、DIN EN ISO 7619-1:2012-02に従って決定されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記転写フィルム(1)の前記転写プライ(15)は保護ワニス層(12)を有し、
前記保護ワニス層(12)は、前記1つ以上の装飾層(13)の、前記ポリプロピレンフィルム(20)の前記第1表面(21)から離れる方向に面する側に配置され、
前記保護ワニス層(12)は、0.5μm~5μmの層厚を有し、かつ/または、
前記保護ワニス層(12)は、架橋ワニスからなり、かつ/または、
前記保護ワニス層(12)は、前記2つ以上の部分層からなり、当該2つ以上の部分層は、連続して並び、前記表面全体または一部にわたって印刷されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記接着促進層(14)の前記2つ以上の部分層は、それぞれ、0.5μm~5μmの層厚を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記接着促進層(14)の前記2つ以上の部分層は、それぞれ充填剤を備えたワニスからなり、
その乾燥質量における充填剤含有量は前記部分層の間で異なっていることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップc)の後、ステップd)として、前記バックインジェクション成形および/またはオーバーモールド成形および/またはインサート成形された複合体(4)は、1つ以上のプライマー層および/または1つ以上のワニス層でその表面全体またはその一部がコーティングされ、
ステップd)において、最初に、プライマー層(50)を用いた湿式コーティングが行われ、次いで、保護ワニス層(51)を用いた湿式コーティングが行われ、
前記プライマー層は、バックインジェクション成形および/またはオーバーモールド成形および/またはインサート成形された複合体(4)の保護ワニス層(12)の表面全体または一部に塗布され、
前記保護ワニス層(51)は、前記プライマー層(50)の表面全体または一部に塗布され、
さらに、前記保護ワニス層(51)を用いた湿式コーティングのために、ポリウレタンワニスおよび/またはアクリレートワニスによるフラッドコーティング、あるいは、ポリウレタンワニスおよび/またはアクリレートワニスによる再コーティングを行い、かつ/または、
前記1つ以上のプライマー層および/または前記保護ワニス層のうちの1つ以上は、架橋可能なあるいは、放射線架橋性のワニスで形成されることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
装飾成形体(6)であって、
前記装飾成形体(6)は、プラスチック材料(40)をバックインジェクション成形および/またはオーバーモールド成形および/またはインサート成形して形成された複合体(4)を備え、
前記複合体(4)は、転写フィルム(1)の転写プライ(15)を備えたポリプロピレンフィルム(20)を有し、
前記転写プライ(15)は、第1表面(21)に塗布された少なくとも1つの装飾層(13)を有し、
前記転写フィルム(1)の前記転写プライ(15)は、接着促進層(14)を有し、当該接着促進層(14)は、前記ポリプロピレンフィルム(20)の前記第1表面(21)に面する一つ又は複数の装飾層(13)の側に配置され、
前記接着促進層(14)は、連続して印刷される2つ以上の部分層からなり、
前記ポリプロピレンフィルム(20)の前記第1表面(21)に面する前記接着促進層(14)の前記部分層は、ポリオレフィンをベースとしており、
前記一つ又は複数の装飾層(13)に面する前記接着促進層(14)の部分層は、溶剤ベースのポリウレタン樹脂からなる、ことを特徴とする装飾成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾成形部品を製造するための方法、装飾成形部品、及び装飾成形部品を製造するための転写フィルムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特に自動車分野における装飾成形部品の製造においては、ABSプラスチック基材を用いて、特にロール製品、シート、またはプレートとして成形部品を製造することが通常である(ABS=アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー)。プラスチック基材は、加工が容易であり、湿式ワニス系で装飾が容易であり、特に屋外での環境的な影響に対して良好な耐性を有するので、上記のABS基板は、製造用途で好適に利用されている。これらのABS基板は、通常、深絞り加工がされてから、所望の装飾が施される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、装飾成形部品を製造するための改良方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、以下のステップが実行される、装飾成形部品の製造方法によって達成される:
a)転写フィルムの転写プライをポリプロピレンフィルムの第1表面に塗布することによって複合体の形態の中間製品を製造するステップであって、転写フィルムの転写プライが少なくとも1つの装飾層を含むステップ、
b)転写フィルムの転写プライが塗布されたポリプロピレンフィルムを含む複合体を形成するステップ、
c)形成された複合体を射出成形型に挿入し、形成された複合体をプラスチック材料、特にポリプロピレンを含有するかまたはポリプロピレンなるプラスチック材料でバックインジェクション成形および/またはオーバーモールド成形および/またはインサート成形するステップ。
【0005】
この目的は、さらに、前記方法で製造された、プラスチック材料でバックインジェクション成形および/またはオーバーモールド成形および/またはインサート成形された、少なくとも1つの装飾層を含む転写フィルムの転写プライを有するポリプロピレンフィルムを第1表面に塗布した、複合体を有する装飾成形体によって達成される。この目的は、さらに、上記方法による装飾成形体を製造するための転写フィルムの使用によって達成される。
【発明の効果】
【0006】
ポリプロピレン(PP)は、プロペンの連鎖重合によって製造される熱可塑性ポリマーである。それは、ポリオレフィンの基に属し、部分的に結晶性であり、非極性である。ポリプロピレンの使用に伴う問題は、ワニスがこのプラスチックに不十分にしか付着せず、従って、ワニスの層間剥離がしばしば生じることである。従って、ポリプロピレンは、ワニス塗りが困難であると分類される。さらに、ポリプロピレンは、そのポリマー構造の点で非常に敏感な材料であり、その活性化の間に、弱められた境界面の形成、したがって接着の問題が予めプログラムされる。それは言うまでもなく、ポリプロピレンはABSと比較してはるかに密度が低く、それは好ましくは0.895g/cm3~0.92g/cm3である。その結果、より軽量な成形部品を製造し、特定のプラスチック塊からより多くの部品を製造することが可能となり、その結果、コストの節約を達成することができる。
【0007】
本発明は、先に記載した方法により、一つには、ポリプロピレンの使用における欠点、すなわち、塗布されたワニス層へのその接着性が装飾を困難にし、特に屋外での環境の影響に対する耐性が悪く、機械的加工性が悪いことを回避することができ、低重量、環境の影響に対する耐性が高いこと、特に環境の影響に対する耐性が高い装飾、および全体的に製造コストが低いことを特徴とする成形部品を製造することができるという知識に基づいている。従って、ポリプロピレンに起因する問題は、一方では装飾を有する転写プライの塗布、他方では射出成形による接合によるものであり、これらの追加の手段により、環境の影響に対する耐性、並びに改善された機械的挙動もさらに達成される。
【0008】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
好ましい実施形態によれば、ステップc)を実施した後、ステップd)において、バックインジェクション成形および/またはオーバーモールド成形および/またはインサート成形された複合体が、1つ以上のプライマー層および/または1つ以上のワニス層でコーティングされる。
【0010】
その結果、特に屋外用途において、装飾成形品の耐性をさらに向上させることができる。これらの1つ以上のプライマー層および/または1つ以上のワニス層の複合体への接着性は、ここでは、先行するプロセスステップが、これらの1つ以上のプライマー層および/または1つ以上のワニス層をポリプロピレンフィルムに直接塗布することがもはや必要ではないことを意味し、したがって、前述の接着性の問題が回避されるという点で、保証される。
【0011】
ここで、1つ以上のプライマー層および/または1つ以上のワニス層は、好ましくは、ポリプロピレンフィルムの第1表面の反対側に位置する転写プライの表面の表面全体または一部に塗布される。したがって、転写プライは、ポリプロピレンフィルムと1つ以上のプライマー層および/または1つ以上のワニス層との間の接着促進成分として作用する。
【0012】
好ましくは、ステップd)において、最初に、プライマーを用いた湿式コーティングが行われ、次いで、保護ワニスを用いた湿式コーティングが行われる。
【0013】
プライマーによる湿式コーティングには、フラッドコーティングおよびワニス化、特にスプレーワニス化などの方法が好ましく使用される。したがって、プライマーを用いた湿式コーティングのためにアクリレートワニスによるスプレーワニスを実施することが有利である。プライマーは無色透明であることが好ましい。プライマーは、特に、1bar~5bar、特に2bar~5barの空気圧で、および0.2bar~2bar、特に0.5bar~1.5barの材料圧力により、0.5mm~2mm、特に0.7mm~1.5mmのノズル直径で噴霧される。ワニス塗布後、プライマーを乾燥させる。乾燥は、いくつかの段階を有することができ、特に、室温で約5分~20分間の予備乾燥と、60℃~90℃の温度で約20分~40分間の最終乾燥とを含む。
【0014】
保護ワニスを用いた湿式コーティングには、フラッドコーティングおよびワニス塗り、特にスプレーワニス塗りなどの方法を使用することが好ましい。したがって、保護ワニスによる湿式コーティングのために、ポリウレタンワニスまたはアクリレートワニスによるフラッドコーティング、またはポリウレタンワニスおよび/またはアクリレートワニスによる再コーティング、特にスプレーワニスコーティングを実施することが有利である。保護ワニスは、好ましくは無色透明であり、特に乾燥後にその表面にサテン仕上げされる。保護ワニスは、特に、1bar~5bar、特に2bar~5barの空気圧、および0.2bar~2bar、特に0.5bar~1.5barの材料圧力により、0.5mm~2mm、特に0.7mm~1.5mmのノズル直径で噴霧される。ワニス塗布後、保護ワニスを乾燥させる。乾燥は、いくつかの段階を有することができ、特に、室温で約5分~20分間の予備乾燥と、60℃~90℃の温度で約20分~50分間の最終乾燥とを含む。
【0015】
好ましくは、架橋性ワニス、特に放射線硬化性ワニス、例えばUVまたは電子ビーム硬化性ワニスが、1つ以上のプライマー層のためのワニスとして使用される。さらに、反応性二成分ワニス(2Kワニス)または熱架橋性ワニスを使用することも可能である。
【0016】
好ましくは、架橋性ワニス、特に放射線硬化性ワニス、例えばUVまたは電子ビーム硬化性ワニスが、1つ以上のワニス層のためのワニスとして使用される。さらに、反応性二成分ワニス(2Kワニス)または熱架橋性ワニスを使用することも可能である。このようなワニスを使用することにより、特に硬くて強靭な表面を得ることができる。
【0017】
ステップd)で塗布される1つ以上のプライマー層の層厚は、好ましくは0.1μm~25μmの範囲、特に0.5μm~15μmの範囲にある。
【0018】
ステップd)で塗布される1つ以上のワニス層の層厚は、好ましくは3μm~50μmの範囲、特に5μm~30μmの範囲にある。
【0019】
さらに、成形品の装飾をさらに向上させる染料および/または顔料を、1つ以上のプライマー層および/または1つ以上のワニス層に添加することも可能である。
【0020】
好ましい実施形態の例によれば、ポリプロピレンフィルムは、転写フィルムの転写プライを塗布する前に、ステップa)において前処理される。
【0021】
ここで前処理としては、ポリプロピレンフィルムの第1表面の火炎処理を行うことが好ましい。このような火炎処理を用いて、表面を穏やかに活性化することができる:
【0022】
第1表面の酸素含有量と極性官能基は火炎処理の強度と共に増加するが、粗さはほとんど変化しない。火炎処理により、極性官能基が生成され、これがポリプロピレンフィルムの基材に強固に接合される。
【0023】
ここで、前処理として、第1表面を高電圧コロナ処理および/またはプラズマ活性処理に曝すことが特に有効であることが証明されている。
【0024】
さらに、試験は、ポリプロピレンフィルムの第1表面の接着性が、第1表面上のポリプロピレンフィルム中の添加剤含有量が増加するにつれて大きく減少することを示している。これらの添加剤は、特に、ポリプロピレンフィルムの機械的および/または熱的特性を向上させるために有利である。本処理において、添加剤は、ポリプロピレンフィルムの化学的/物理的性質、特にその表面における望ましくない副作用をもたらし、特に、ポリプロピレンフィルムの第1表面の接着性を低下させる可能性がある。これを打ち消すために、前処理の枠組み内で追加の洗浄によって第1表面上のこれらの添加剤を除去すること、および/または第1表面上の添加剤の影響を低減すること、したがって接着性をさらに改善することが有利である。特に、前処理の枠内で洗浄法として「パワー洗浄」洗浄、CO2スノージェット洗浄、水-イソプロパノール/超音波洗浄が用いられる。さらに、添加剤を除去するために、塩素系洗剤の使用は前処理の枠内で有利である。この洗浄によって、添加剤は第1表面から洗い流され、および/または洗い出される。この追加の洗浄は、好ましくは火炎処理の前に行われる。
【0025】
ポリプロピレンフィルムの材料の内側からポリプロピレンフィルムの第1表面への新たな添加剤の移動、ひいては第1表面接着性の新たな低下を回避するために、前処理後できるだけ早く転写プライの塗布を実施することがさらに有利である。
【0026】
したがって、好ましくは、ポリプロピレンフィルムの第1表面は、コロナ処理および/または上述の洗浄法の1つ以上によって前処理される。このようにして、続いて塗布される転写フィルムの接着性をさらに向上させることができる。
【0027】
試験は、約10m/分のポリプロピレンフィルム供給速度で1500ワット~3000ワット、特に約10m/分のポリプロピレンフィルム供給速度で1800ワット~2200ワットのコロナ処理が、その後に塗布される転写フィルムの接着性を有意に向上させることを明らかにした。
【0028】
また、この前処理は、転写プライの塗布を行う直前に行うことが好ましい。従って、前処理、特にコロナ処理と塗布との間の経過時間が、24時間以下、好ましくは6時間以下、特に好ましくは10分以下であることが有利であることが判明した。このようにして、続いて塗布される転写フィルムの接着性をさらに向上させることができる。
【0029】
コロナ処理および/または上述の洗浄方法の1つまたは複数を、第1表面の反対側に位置するポリプロピレンフィルムの表面に塗布して、特にポリプロピレンフィルムへのプラスチック材料の接着性を向上させることも有利である。
【0030】
ポリプロピレンフィルムは、好ましくは5μm~3mm、好ましくは200μm~1000μmの層厚を有する。
【0031】
ポリプロピレンフィルムは、純粋なポリマー塩基性構成要素(EN)に加えて、離型剤、添加剤、充填剤、染料、着色顔料、機能性顔料、編物繊維布帛、織物繊維布帛、個々の繊維およびこれらの混合物から選択される複数のさらなる配合成分を有することができ、これらは、ポリプロピレンフィルムの処理および使用特性に影響を及ぼし、これらを向上させることができる。
【0032】
タルク、チョークおよび/またはガラス繊維は、ここでは充填剤として使用されることが好ましい。
【0033】
適切なさらなる配合成分の添加により、ポリプロピレンフィルムが以下に記載される機械的特性を達成するように形成される場合、ステップb)およびc)による加工処理にとって特に有利であることが判明した:
【0034】
したがって、VST A120法によるポリプロピレンフィルムのビカット軟化温度は、140℃~145℃の範囲にあると有利であり、DIN EN ISO 306:2014-03(「プラスチック-熱可塑性材料-ビカット軟化温度(VST)の決定(ISO 306:2013)」;発行日:2014-03)に従って決定される。
【0035】
また、示差走査熱量測定(DSC)(10K/分)によるポリプロピレンフィルムの溶融温度は、160℃~170℃の範囲にあると、さらに有利であり、DIN EN ISO 11357-3:2013-04(「プラスチック-示差走査熱量測定(DSC)-第3部:溶融および結晶化の温度およびエンタルピーの決定(ISO 11357-3:2011)」;発行日:2013-04)に従って決定される。
【0036】
また、115℃/1時間におけるポリプロピレンフィルムの収縮長さは、1.0%未満であることが好ましく、IEC 60674-2:2016(「電気的目的のためのプラスチックフィルムの仕様-第2部:試験方法」;第2.0版;発行日:2016-11)に従って決定される。
【0037】
試験は、上記のようにポリプロピレンフィルムの熱特性を設定することによって、ステップb)およびc)におけるポリプロピレンフィルムの特に良好な加工性を達成することができ、特に、材料間の熱応力による、これらのステップを実施する際のポリプロピレンフィルムの第1表面からの転写プライの望ましくない剥離を、これによって大幅に回避することができることを示した。
【0038】
ポリプロピレンフィルムは、好ましくは、1100MPa~1300MPaの引張弾性率を有し、DIN EN ISO 527の第1部~第3部、好ましくは第3部に従って決定される。
【0039】
ポリプロピレンフィルムは、好ましくは、降伏点の引張応力が20MPa~30MPa、特に22MPa~26MPaを有し、DIN EN ISO 527の第1部から第3部、好ましくは第3部に従って決定される。
【0040】
ポリプロピレンフィルムは、好ましくは、100%を超える破断点伸びを有し、 DIN EN ISO 527の第1部から第3部、好ましくは第3部に従って決定される。
【0041】
DIN EN ISO 527の第1部は、 DIN EN ISO 527-1:2012-06(「プラスチック-引張特性の決定-第1部:一般原則(ISO 527-1:2012);発行日:2012-06」)を指す。
【0042】
DIN EN ISO 527の第2部は、DIN EN ISO 527-2:2012-06(「プラスチック-引張特性の決定-第2部:成形・押出プラスチックの試験条件 (ISO 527-2:2012)」;発行日:2012-06)を指す。
【0043】
DIN EN ISO 527の第3部は、DIN EN ISO 527-3:2003-07(「プラスチック-引張特性の決定-第3部:フィルムおよびシートの試験条件(ISO 527-3:1995+Corr 1:1998+Corr 2:2001)(訂正AC:1998+AC:2002を含む)」;発行日:2003-07)を示す。
【0044】
さらに、ポリプロピレンフィルムは、好ましくは、60~65のショアD硬度(15秒)を有し、DIN EN ISO 7619-1:2012-02(「ゴム性、硬化性または熱可塑性-押込み硬度の決定-第1部:デュロメーター法(ショア硬度)(ISO 7619-1:2010)」;発行日2012-02)に従って決定される。
【0045】
試験は、ポリプロピレンフィルムの機械的性質のこのような設定によって、後の使用中の不利な外部環境の影響下でさえ、複合体の層間剥離を大幅に防止することができることを示した。これは、おそらく、ポリプロピレンフィルムの物理的特性、特に機械的特性が、複合体本体の他の層/層系の物理的、特に機械的特性に最適化されたことに起因する。
【0046】
本発明の好ましい実施形態の例によれば、ステップa)において、転写フィルムをポリプロピレンフィルムの第1表面上に熱積層し、次に転写フィルムのキャリアプライを塗布された転写プライから除去する。この場合、熱積層は、好ましくは120℃~180℃の温度で行われる。転写フィルムがポリプロピレンフィルムの第1表面上に熱積層されるローラギャップ内のライン圧力は、特に加熱積層ローラおよび特に冷却された逆圧ローラが使用される場合、好ましくは4bar~6barである。熱積層、特に前述のパラメータを使用した熱積層により、ポリプロピレンフィルムの表面の追加の熱活性化が達成され、したがって、ポリプロピレンフィルムの第1表面に対する転写プライの特に良好な接着性が達成される。
【0047】
転写フィルムは、好ましくは、キャリアプライ、任意の剥離層、1つ以上の装飾層、および任意の接着促進層を有する。ここで、接着促進層は、転写フィルムの一部ではなく、むしろ、転写フィルムが塗布される前に、ポリプロピレンフィルムの第1表面に、表面全体にわたって、またはある領域において、特に積層されるか、印刷されるか、またはスプレーされることで塗布することも可能である。また、1つの接着促進剤層は転写フィルムの一部であり、さらに別の接着促進剤層を、転写フィルムが塗布される前に、ポリプロピレンフィルムの第1表面に、表面全体にわたって、またはある領域において、特に積層されるか、印刷されるか、またはスプレーされることで塗布することも可能である。
【0048】
しかしながら、本発明の好ましい実施形態例によれば、接着促進層は、転写フィルムの転写プライの一部であり、ポリプロピレンフィルムの第1表面に面する1つ以上の装飾層の側の転写フィルムの層構造内に配置される。
【0049】
なお、接着促進層は、好ましくは、熱活性化可能な接着剤層、特に熱可塑性および/または熱架橋性接着剤からなる。しかしながら、接着促進層が放射線架橋成分、特にUV架橋または電子ビーム架橋成分を有することも可能である。
【0050】
接着促進層が、連続して印刷される2つ以上の部分層からなる場合、特に有利である。ここで、これらの部分層が相応に異なって形成されることが特に有利であり、その結果、第1表面に面する部分層は、ポリプロピレンフィルムの第1表面への接着のために最適化され、1つ以上の装飾層に面する第2の部分層は、接着促進層に面する装飾層への接着のために最適化される。
【0051】
ここでは、ポリプロピレンフィルムの第1表面に面する接着促進層の部分層がポリオレフィンをベースとすること、特に低分子量のマレイン酸変性ポリオレフィンをベースとすることが特に有効であることが証明された。
【0052】
1つ以上の装飾層に面する接着促進層の部分層が、特にポリカーボネートをベースとする溶剤ベースのポリウレタン樹脂からなる場合、さらに有利である。
【0053】
接着促進層の1つ以上の部分層の層厚は、好ましくは、0.5μm~5μm、特に1μm~2μmの範囲にある。
【0054】
さらに、接着促進層および/または接着促進層の2つ以上の部分層が、それぞれ、充填剤を備えたワニスからなることも可能である。ここで、ワニスの乾燥質量における充填剤含有量は、好ましくは、部分層の間で異なっており、これにより、ポリプロピレンフィルムおよび装飾層の性質の機械的適応性を創出すると共に、ロール製品の形態の転写フィルムの貯蔵性を向上させる。
【0055】
充填剤含有量は、使用されるワニスの乾燥質量において、好ましくは0重量%~15重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%である。
【0056】
ここで、ポリプロピレンフィルムの第1表面に面する接着促進層の部分層の充填剤含有量が、1つ以上の装飾層に面する接着促進層の部分層の充填剤含有量よりも、それぞれ、接着促進層の固体成分の総重量に対して、少なくとも10重量%高いことが好ましい。上述の利点は、このようにして特に確実に達成され得ることが示されている。
【0057】
転写フィルムの1つ以上の装飾層は、特に、顔料および/または充填剤を含有するワニス層、顔料および/または染料を含有するワニス層、金属層、バインダーおよび光学可変顔料(特に干渉層顔料および/または液晶顔料、磁気的に整列可能な顔料)を含有する層、バインダーおよび金属顔料を含有する層、サーモクロミック顔料および/または染料を含有する層、発光染料および/または顔料を含有する層、蓄光染料および/または顔料を含有する層、および/または成形表面レリーフを有するワニス層から選択される。
【0058】
金属層の場合、金属化、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)および/またはスパッタリングによってこの金属層を塗布することが有利である。異なる装飾層はまた、異なる、特に異なる色の金属からなることができる。
【0059】
金属層は、好ましくは、透明なワニス層または顔料含有ワニス層に塗布される。その場合、金属層の上に形成される層の接着性を向上させるために、金属接着促進層として追加のワニス層を金属層に塗布することが有利である。
【0060】
ここで、転写フィルムの装飾層構造において、上記の装飾層を自由に組み合わせることも可能である。
【0061】
装飾層は、いずれの場合も、表面全体にわたって、またはいずれの場合も部分的にのみ存在することができる。いくつかの装飾層がそれぞれの場合に部分的に存在する場合、個々の装飾要素は、互いに隣り合って、特に互いに直接隣り合って、または少なくとも装飾層の領域において重なり合って配置することができる。部分的な装飾層を全面的な装飾層上に配置することも可能であり、全面的な装飾層は、部分的な装飾層の背景または基板として作用し、特に、部分的な装飾層に対して色および/または明度および/または反射率および/または粗さにおいてコントラストを形成する。
【0062】
また、ポリプロピレンフィルムの色および/または明度および/または反射率および/または粗さを、その上に配置された装飾層と組み合わせることによって、ポリプロピレンフィルムが得られる装飾の一部を形成することも可能である。ポリプロピレンフィルムは、透明、半透明または不透明であってもよく、および/または染料および/または顔料で染色されていてもよい。特に、ポリプロピレンフィルムは、装飾層の背景または基板を形成し、特に、装飾層に対して色および/または明度および/または反射率および/または粗さのコントラストを形成する。
【0063】
装飾要素は、互いに対してオフセットして配置されてもよく、または上面視において装飾層上に重なり合って配置されてもよい。しかしながら、装飾要素は、上面視において装飾層上に互いに隣接して配置することもできる。
【0064】
装飾要素は、1つ以上のモチーフを形成することもできる。本発明の意味において、モチーフとは、例えば、グラフィック状に設計されたアウトライン、図形表現、画像、視覚的に認識可能なデザイン要素、シンボル、ロゴ、ポートレート、パターン、英数字、符号、コードパターン、暗号パターン、テキスト、色デザインなどである。モチーフを個別化して形成することもできる。
【0065】
個別化とは、特に、本発明の意味の範囲内で、プリントが、例えば、固有のシリアル番号のような、プリントごとに固有かつ個別の情報項目を含むことを意味する。個別化とは、特に、プリントがプリントのグループに対して同一であるが、各プリントのグループに固有の情報、例えば、バッチ番号を含むことも意味する。以下、プリントとは、個別化されたプリントまたは個別化されていないプリントを意味する。
【0066】
有利には、装飾要素は、少なくともいくつかの装飾要素またはいくつかの装飾要素の一部が、上面視で装飾層上に全体モチーフを形成するように、装飾層上に配置または形成される。これらの装飾要素のうちの1つ以上は、個別化されてもよく、または個別化されなくてもよい。例えば、1つ以上の個別化されていない装飾要素は、全体的なモチーフを形成するために、1つ以上の個別化された装飾要素によって補足され得る。特に、プリントは、互いに見当合わせして配置することができる。
【0067】
見当又は見当合わせ、見当の精度又は見当合わせの精度とは、2つ以上のエレメント及び/又は層の互いに対する位置的な精度を意味する。見当の精度は、可能な限り小さくすべき所定の許容範囲内で変化させるべきである。同時に、いくつかの要素および/または層の互いに対する見当合わせ精度は、プロセスの信頼性を高めるための重要な特徴である。位置的に正確な位置決めは、特に、感覚的な、好ましくは光学的に検出可能な見当合わせマーク又は見当マークによって行うことができる。これらの見当(位置)合わせマーク又は見当マークは、特定の専用のエレメント又は領域又は層を表す、あるいは、配置されるエレメント又は領域又は層の一部であるマーク自体を表す。
【0068】
また、装飾の3次元的な奥行き効果を生み出すために、装飾要素を有する2つの部分装飾層の間に、または装飾要素を有する部分装飾層と装飾要素を有する全表面装飾層との間に、例えば0.5μm~10μmの厚さを有する1つ以上の透明または半透明のスペーサ層、あるいは透明または半透明に染色されたスペーサ層を配置することもできる。これにより、特に装飾層の照射角及び/又は観察角度に応じて装飾要素のシャドウイング及び/又はマスキング効果を達成することができる。
【0069】
成形表面レリーフを有するワニス層の場合、表面レリーフとして光学活性表面レリーフを使用することが有利である。表面レリーフは、光線光学的に活性であり、したがって屈折的に作用する構造を形成し、したがって特に巨視的な光学的および/または触覚的に検出可能なモチーフを生成する表面レリーフとすることができる。さらに、表面レリーフは、例えば、装飾層構造内の対応する金属層と組み合わせて艶消し金属表面の光学的印象を生成する艶消し構造とすることも可能である。
【0070】
さらに、表面レリーフは、レンズ構造、マイクロレンズ構造、および/または自由形状表面構造を形成する表面レリーフとすることも可能であり、任意選択で、モチーフの3次元印象をさらに伝える。また、表面レリーフとして回折作用構造、例えばホログラム等を使うことも可能である。
【0071】
しかしながら、成形された表面レリーフは、例えば、木製装飾等を模倣する単に触覚的に検出可能な表面レリーフとすることも可能である。
【0072】
転写フィルムの転写プライは、好ましくは、保護ワニス層を有し、この保護ワニス層は、1つ以上の装飾層の、ポリプロピレンフィルムの第1表面から離れる方向に面する側に配置される。このような保護ワニス層の配置により、装飾層、さらにはポリプロピレンフィルムも環境の影響から保護され、したがって装飾成形部品の耐性が向上し、複合体の層間剥離が回避される。
【0073】
保護ワニス層は、好ましくは、0.5μm~5μm、特に2μm~4μmの層厚を有する。1つには、このような層厚を選択することにより、これに応じた保護ができる一方、他には、ステップb)およびc)における複合体のさらなる加工性が依然として残り、その結果、保護ワニス層の破壊または保護ワニス層と装飾層との境界面における層間剥離が生じないことが保証される。
【0074】
保護ワニス層は、好ましくは架橋ワニス、特にポリアクリレート、好ましくは架橋ポリ(メチル)アクリレート系からなる。
【0075】
さらに、保護ワニス層は、2つ以上の部分層から構成されることも可能であり、これらの部分層は、特に、表面全体にわたって、または表面の一部にわたって、連続して印刷される。ここで、2つ以上の部分層は、それぞれ、好ましくは、0.5μm~5μmの層厚を有する。これらの部分層は、一方では保護ワニス層と装飾層との間の良好な接着性を保証し、他方では環境の影響に対する良好な保護を保証するために、異なる変性ポリアクリレートからなることが好ましい。
【0076】
転写フィルムのキャリアプライは、PETフィルム(PET=ポリエチレンテレフタレート)からなることが好ましく、PETフィルムは、特に、9μm~100μm、好ましくは23μm~75μmの層厚を有する。
【0077】
好ましい実施形態の例によれば、ステップb)における複合体の形成は、熱成形によって行われる。ここで、複合体は、好ましくは、50℃~190℃の温度に加熱され、次いで機械的に変形される。
【0078】
変形は、好ましくは、真空成形またはハイドロフォーミングによって行われる。
【0079】
圧縮空気支持体を用いた真空成形によって、好ましくはロール・ツー・ロール法で複合体を形成することが特に有利であることが判明した。試験では、複合体は、好ましくは、ここでは140~190℃の温度に加熱され、好ましくは、0.4~0.8barの範囲の負圧(0.85barの真空ポンプの最大性能に対して50~95%の真空度に相当)を用い、圧縮空気支持体の圧縮空気が1bar~6barの間の圧力を有することが示されている。
【0080】
同様に、真空成形もロール・ツー・ロール法ではなく、シート・ツー・シート法で行うことができる。この場合、同様のプロセスパラメータが選択される。特に、シート・ツー・シート法の個々のシートは、切断、レーザー切断、フライス削りおよび/またはパンチングプロセスによって、フィルムロールの形態の物品として、個々のシートに分離される。
【0081】
試験では、上記のパラメータの選択を通して、ここでは、0.5mm以上の半径を達成することができ、また、部品の幾何学的形状に応じ、変形前の表面領域のサイズに対して300%までの表面領域の局所的変形を達成できることが示された。したがって、この方法は、好ましくは、変形前の表面積のサイズに対して、表面積の300%までの局所表面積拡大を可能にする。
【0082】
これに代えて、複合体の形成は、ハイドロフォーミングによって行うこともできる。ここで、複合体は、好ましくは、50℃~180℃の温度に加熱される。ここで、好ましくは、0.4bar~0.8barの範囲の負圧(0.85barの真空ポンプの最大性能に対して50%~95%の真空に相当)を用い、圧縮空気の圧力は、20bar~200barの間となるように選択される。試験では、上記のプロセスパラメータの使用を通して、最大0.2mmまたはそれ以上の半径を実現することができ、また、部品の幾何学的形状に応じ、変形前の表面領域のサイズに対して最大300%までの表面領域の局所的変形を達成できることが示された。
【0083】
好ましい実施形態の例によれば、ステップc)において、ポリプロピレンを含有するかまたはポリプロピレンからなるプラスチックがプラスチックとして使用される。その結果、ポリプロピレンフィルム及びこれにより達成可能な射出成形材料の機械的及び熱的特性の対応関係により、一つには、ポリプロピレンフィルムと射出成形との間の層境界における成形部品の後の層間剥離が可能な限り回避され、さらに、ステップc)を実施することにより、射出成形とポリプロピレンフィルムとの間の特に良好な接着性が達成される。これは、関連する材料のクラスにより、ステップc)を実行しながら層境界の溶融中に特に密接な材料接合が達成されるからである。
【0084】
ここで、ステップc)において、ポリプロピレンフィルムの第1表面の反対側に位置するポリプロピレンフィルムの第2表面が、表面の少なくとも一部にわたってプラスチック材料に接合されて、モノリシック積層体を形成することがさらに有利である。モノリシック積層体とは、ここでは、隣接する層が、接着剤層を使用せずに、層境界の「溶接」によって互いに接合される積層体を意味する。これは、隣接する層の溶融によるものである。
【0085】
ステップc)では、ポリプロピレン、またはポリプロピレンフィルムに関して上述したように、同等の熱的および機械的特性を有する変性ポリプロピレンが、プラスチックとして特に有利に使用される。
【0086】
プラスチック材料の色および/または明度が、その上に配置された装飾層および/またはそれに接合されたポリプロピレンフィルムと組み合わされることによって、当該プラスチック材料が、得られる装飾の一部を形成することも可能である。プラスチック材料は、透明、半透明または不透明であってもよく、および/または染料および/または顔料で染色されていてもよい。特に、プラスチック材料は、装飾層および/またはそれに接合されたポリプロピレンフィルムの背景または基板を形成し、特に、装飾層および/またはそれに接合されたポリプロピレンフィルムに対して、色および/または明度および/または反射率および/または粗さのコントラストを形成する。
【0087】
プラスチック材料及びそれに接合されたポリプロピレンフィルムは、屈折率及び/又は透明度及び/又は不透明度及び/又は色及び/又は反射率に関して同じ又は非常に類似した光学特性を有することが好ましい。
【0088】
ポリプロピレン、および/または異なる充填剤および/または他の添加剤で変性されたポリプロピレン含有プラスチックは、好ましくは、ステップc)のプラスチック材料に使用することができる。例えば、以下のようにすることができる:
・充填剤として、プラスチック材料の固形成分の総重量に対して、20重量%タルク含有量を有するポリプロピレン(例えば、LyondellBasell社のHifax TRC 134P 3004またはHostacom TRC 352N)
・充填剤として、プラスチック材料の固体成分の総重量に対して、5重量%のタルク含有量を有するポリプロピレンコポリマー(例えば、LyondellBasell社のTKC 2007N)
・充填剤として、プラスチック材料の固体成分の総重量に対して、16重量%の鉱物含量を有するポリプロピレン-TPO化合物(TPO=熱可塑性オレフィンエラストマー)(例えば、LyondellBasell社のEKC 330N)
・ポリプロピレン-TPO化合物(TPO=熱可塑性オレフィンエラストマー)(例えば、Exxon Mobile社のBMU 141)。
【0089】
ステップc)において、プラスチックは、好ましくは170℃~290℃の溶融温度に加熱される。これにより、射出成形材料とポリプロピレンフィルムとの間の層境界の溶融が確実に達成され、したがって、これらの2つの材料の間の高度に密着した接合が達成される。ここで、射出成形型は、好ましくは、15℃~80℃の間の成形温度に加熱または予熱される。
【0090】
ステップc)において、プラスチック材料は、好ましくは、500μm~5mm、好ましくは1mm~3mmの層厚で、バックインジェクション成形および/またはオーバーモールド成形および/またはインサート成形される。
【0091】
本発明のさらなる好ましい実施形態の例によれば、複合体は、ステップb)において、切断、レーザー切断、フライス削り、および/または打ち抜きプロセスによって加工され、したがって、例えば、対応する個々の物品が、フィルムロールの形態の複合体から分離され、次いで、ステップc)においてさらに加工されて、装飾成形部品が製造される。
【0092】
装飾成形体は、好ましくは、自動車の内装及び/又は外装部品として自動車分野で使用される。特に、装飾成形体のさらなる用途は、家庭用、工業用または医療用の電子デバイスおよび/または電気デバイスのためのケーシングまたはケーシング要素の装飾の分野にある。
【0093】
本願において使用される略語「wt.%」は、含量仕様「重量パーセント」を示す。
【0094】
以下、添付図面を用いた複数の実施例を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【
図2】
図2は、転写フィルムの層構造の模式図を示す。
【
図4】
図4は、形成された複合体の模式的な層構造を示す。
【
図5】
図5は、射出成形プロセスで加工した複合体の模式的な層構造を示す。
【
図6】
図6は、射出成形プロセスでの加工後にさらに再コーティングした複合体の層構造を示す。
【
図7】
図7は、射出成形プロセスでの加工後にさらに再コーティングした複合体の層構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0096】
図1は、装飾成形部品を製造するための基本的な手順を示す。この方法は、いくつかの製造ステップ71~77を含む。
【0097】
転写フィルム1の製造は、製造ステップ71で行われる。また、ここでは、製造ステップ71を省略し、プレハブ転写フィルム1に転写することも可能である。
【0098】
転写フィルム1は、好ましくは、
図2に示すように構成される:転写フィルムは、キャリアプライ10、任意の剥離層11、任意の保護ワニス層12、1つ以上の装飾層13、および任意の接着促進層14を有する。
【0099】
キャリアプライ10は、プラスチックフィルムからなるか、または1つ以上のプラスチックおよび/または紙フィルムの層複合体からなる。さらに、キャリアプライ10は、フィルムロールの形態の転写フィルム1の対応する提供を可能にするために、その上側に対応する剥離層を有することもできる。
【0100】
キャリアプライ10は、好ましくは、9μm~100μm、好ましくは23μm~75μmの層厚を有するPETフィルム(PET=ポリエチレンテレフタレート)からなる。
【0101】
剥離層11は、好ましくは、以下のようにしてキャリアプライ10上に印刷される。剥離層11は、好ましくは、ワックスベースの層であり、これは、転写操作中に、転写フィルム1のさらに下の層12~14(以下、転写プライ15と呼ぶ)からのキャリアプライの剥離性能を向上させる。キャリアプライ10および転写プライ15の最上層の材料特性が、対応して互いに調整される場合、剥離層11は、ここでは省略することもできる。
【0102】
次に、転写フィルムの転写プライ15の層が、キャリアプライ10に順に塗布される。この塗布は、好ましくは、印刷方法によって、特にグラビア印刷および/またはスクリーン印刷によって行われる。また、スロットキャスティング、フレキソ印刷、インクジェット印刷によって塗布することも可能である。
【0103】
保護ワニス層12は、好ましくは、0.5μm~5μm、特に2μm~4μmの層厚を有する。保護ワニス層12は、好ましくは、順次印刷される2つ以上の部分層からなる。
【0104】
ここで、以下の手順が特に有利である。
【0105】
まず、ポリアクリレート、特に架橋ポリアクリレート系の層が印刷される。このために、脂肪族ポリメチルメタクリレートを、例えば、反応性成分、例えば脂肪族ポリイソシアネートと反応させる。ポリアクリレートは、反応性架橋剤成分の発熱性重付加反応で反応する。次いで、このワニスは、好ましくは充填剤、好ましくは、乾燥質量において、充填剤含有量0.1重量%~10重量%の範囲で提供される。次に、このワニスを2μm~4μmの層厚で印刷する。次に、透明なワニス層が塗布され、これもポリアクリレートからなり、1μmの厚さを有する。続いて、ポリアクリレートからなり、約1μmの厚さを有するさらなるワニス層を塗布することができる。
【0106】
次に、1つ以上の装飾層が塗布される。装飾層は、1つまたは複数の装飾層から成ることができ、そのうちの装飾層13は、
図2に示される。
【0107】
装飾層、したがって装飾層13は、顔料および/または染料を含有するワニス層であることが好ましい。さらに、装飾層は、金属層であってもよく、異なる装飾層は、異なる、特に異なる色の金属からなることもできる。さらに、装飾層は、1つ以上のバインダーおよび金属顔料、光学可変顔料、磁気的に整列可能な顔料、サーモクロミック顔料および/または染料、発光染料および/または顔料、蓄光染料および/または顔料を含む層からなることもできる。さらに、装飾層13は、成形表面レリーフを有するワニス層、特にマット構造、レンズ構造、マイクロレンズ構造、屈折構造、回折構造、または触覚的に検出可能な構造の表面レリーフからなることも可能である。これらの層の全ては、所望の光学的及び/又は触覚的結果を達成するために、表面全体にわたって又は表面の一部にわたって設けられ、転写プライ15の層構造において任意の所望の組み合わせでパターン化することができる。
【0108】
装飾層13は、ここでは、好ましくは、上述のように、対応する顔料および/または染料を備えたポリアクリレートからなる。このポリアクリレートは、架橋されていても架橋されていなくてもよい。この場合、装飾層13の層厚は、4μm~8μmの範囲である。
【0109】
金属層が装飾層13として使用される場合、これらの金属層は、好ましくは、金属化、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)および/またはスパッタリングによって塗布される。
【0110】
金属層は、好ましくは、透明なワニス層または顔料含有ワニス層に塗布される。その場合、金属層の上に形成される層の接着性を向上させるために、金属接着促進層として追加のワニス層を金属層に塗布することが有利である。
【0111】
次に、ポリアクリレートとポリ塩化ビニルとの混合物からなり、1μm~2μmの厚さを有する透明なワニス層(
図2には示されていない)が、好ましくは塗装される。
【0112】
これに続いて、接着促進層14が塗布される。接着促進層14は、好ましくは、1つ以上の部分層からなる。
【0113】
そして、ポリカーボネートをベースとする溶剤ベースのポリウレタン樹脂からなる層は、好ましくは、第1部分層として塗布される。ここでの固形分は好ましくは35重量%であり、ここでの動粘度は好ましくは約25℃で0.5mPa・s~100mPa・s、特に10mPa・s~50mPa・sである。粘度は、DIN EN ISO 3219:1994-10(「プラスチック-液状ポリマー/樹脂、またはエマルジョンもしくは分散液として-所定のせん断速度を有する回転粘度計を用いた粘度の決定」、1994-10月発行)に記載されている方法に従って、例えばHAAKE Viscotester(登録商標) VT550(Thermo Fischer Scientific Inc., Waltham, MA, USA)を用いて決定され、さらに好ましくは円筒形測定装置NVおよび測定ビーカーNVを用いて決定された。このワニスは、充填剤、好ましくは乾燥質量における含有量が0.1重量%~10重量%の範囲の充填剤を備えることができる。この層の厚さは、好ましくは1μm~2μmの範囲である。
【0114】
次に、ポリプロピレンフィルムへの最終的な接着を生じさせるために、第2部分層が塗装される。このワニス層は、好ましくは、低分子量マレイン酸変性ポリオレフィン(ガラス転移温度Tg=100℃)をベースとする。このワニスはまた、充填剤を備えることができ、ここで、乾燥質量における充填剤含有量は、好ましくは、1重量%~12重量%である。この層の厚さは、好ましくは約1μmの範囲で変化する。
【0115】
このようにして製造ステップ71で製造された転写フィルム1は、
図3に層構造が示されている複合体2の形態の中間生成物を製造するために、以下で使用される。
【0116】
複合体2は、ポリプロピレンフィルム(20)を有し、このフィルムは、第1表面(21)と、その反対側に位置する第2表面(22)とを有する。
図3に示すように、装飾層13を有する転写フィルム(1)の転写プライ(15)は、ポリプロピレンフィルム(20)の第1表面(21)に塗布される。
【0117】
ポリプロピレンフィルム20は、好ましくは5μm~3mm、さらに好ましくは20μm~1000μmの層厚を有する。
【0118】
ポリプロピレンフィルム20は、好ましくは、以下のように配合される。
【0119】
複合体2の形態の中間生成物を製造するために、以下の手順を使用する。
【0120】
任意の製造ステップ72において、好ましくはフィルムロールの形態で存在するポリプロピレンフィルム20に前処理を施す。この前処理により、ポリプロピレンフィルム20の第1表面21の接着性が向上する。この前処理は、好ましくは、火炎処理および/または1つ以上の洗浄方法を含む。
【0121】
従って、ポリプロピレンフィルムの表面21及び22には、次のような接着性の問題が存在する。
【0122】
ポリプロピレンは、表面エネルギーが低いプラスチックである。表面エネルギーは、29dyn/cm~36dyn/cmまたはmN/m(ミリニュートン/メートル)である。ポリプロピレンのような表面エネルギーの低い材料への十分な接着度を達成することは、当該表面の滑らかさが原因となって極めて困難である。したがって、これらの接着性の問題は、印刷されたインクが擦り落とされるか、または色が表面に付着しない結果となる。さらに、接着の問題は、他の層への、または表面と表面に塗布されるシールとの間の接着の場合にも生じ得る。例えば、ポリプロピレンのようなポリオレフィンは、非極性表面および低い表面エネルギーを有し、これは、環境的に有害であり、非常に労働不可の高い方法を用いない限り、印刷、結合、コーティングまたは塗装に適していない。
【0123】
材料の表面張力および比較表面エネルギーは、コーティングと材料自体との間の接着性能を決定する因子である。固体は、液体の表面張力に比べて表面エネルギーが高いため、分子引力の増大により接着剤、インク、および色が結合し、その結果、優れた結合強度が得られる。その結果、固体の表面張力が液体の表面張力よりも低い場合、引力が弱められ、その結果、コーティングがはじかれる。
【0124】
したがって、以下に記載する前処理、さらには、既に上述した接着促進層14の構造によって、第1表面21の表面エネルギーが、第1表面21上にある材料、ここでは接着促進層14の最も低い部分層の表面張力よりも少なくとも5mN/m(dyn/cm)高いことが保証される。
【0125】
ポリプロピレンフィルム20の第1表面の前処理には、好ましくは、特にコロナおよび/またはプラズマ表面活性化の形態の火炎処理、および/または1つ以上の洗浄方法が使用される。このような火炎処理を用いて、表面を穏やかに活性化させることができる。材料表面の酸素含有量および極性官能基は、火炎処理の強度と共に増加するが、粗さはほとんど変化しないままである。したがって、火炎処理によって、極性官能基が生成され、これが基材にしっかりと結合される。さらに、プラスチック表面上の添加剤含有量を減少させるために、洗浄方法が使用される。試験は、プラスチック表面上の添加剤含有量が増加するにつれて、ワニス接着が減少し、したがって、第1表面21の接着特性が、これによって著しく減少することを示した。特に、洗浄方法としては、パワー洗浄、CO2スノージェット洗浄および/または水-イソプロパノール/超音波洗浄方法が使用される。さらに、典型的な添加剤(酸化防止剤、ワックス、帯電防止剤など)の除去には、塩素化洗剤の使用が好ましい。この追加の洗浄は、好ましくは火炎処理の前に行われる。
【0126】
ここで、製造ステップ72における前処理と製造ステップ73におけるポリプロピレンフィルム20への転写プライ15の塗布との間の経過時間ができるだけ短く、したがって、これらの2つの製造ステップが互いからできるだけ早く連続することが特に有利であることが判明した。これは、火炎処理によって生成された極性官能基が経時的に著しく減少することと、また添加剤がポリプロピレンフィルム20の材料の内側から表面21に移動し、それによって経時的に第1表面の接着特性を損なうためである。
【0127】
試験は、製造ステップ72における前処理と製造ステップ73における転写プライ15の塗布との間が、可能であれば、24時間以下、好ましくは6時間以下、特に好ましくは10分以下であるべきであることを示した。
【0128】
製造ステップ73では、転写フィルム1の転写プライ15をポリプロピレンフィルム20の第1表面21に塗布する。
【0129】
ここで、転写プライ15の塗布には、以下の手順を用いることが好ましい。
【0130】
この目的のために、転写フィルム1は、ポリプロピレンフィルム20の第1表面21上に熱積層され、次いで、転写フィルム1のキャリアプライ10が除去される。
【0131】
熱積層は、転写フィルム1とポリプロピレンフィルム20とが、加熱された積層ローラと、特に冷却された逆圧ローラとのローラギャップを通って案内され、熱と圧力とを用いて複合体2を形成するように接合されることによって、実現されることが好ましい。この場合、熱積層は、好ましくは120℃~180℃の温度で行われる。
【0132】
続く製造ステップ74において、複合体2が形成され、その結果、
図4に示すように、対応して形成された複合体3が存在する。
【0133】
複合体2の形成は、ここでは熱形成方法によって行われることが好ましい。成形は、好ましくは、140℃~190℃の間の温度範囲での真空形成によって行われる。ここで、複合体2は、好ましくは、石英ラジエータによってそのような温度に加熱されるが、セラミックまたは赤外線ラジエータのような他のエネルギー源によっても加熱され、次いで、それに対応して、好ましくは圧縮空気支持体を用いた真空形成によって三次元的に形成される。ここで、0.4bar~0.8barの範囲の負圧が好ましく使用され、これは、好ましくは、0.85barの真空ポンプの最大性能に対して、それぞれ、50%~95%の間の真空に対応し、圧縮空気の圧力は、1bar~6barの間である。
【0134】
真空成形の代替として、ハイドロフォーミングによって成形を行うことも特に有利である。好ましくは、50℃~180℃のフィルム温度、0.4bar~0.8barの範囲の負圧がここで使用され、これは好ましくは0.85barの真空ポンプの最大性能に対してそれぞれ50%~95%の真空に相当し、圧縮空気の圧力は20bar~200barとなるように選択される。
【0135】
次の製造ステップ75において、装飾成形部品の所望のデザインを得るために、複合体は、切断または打ち抜きによってそのデザインに対応して形成される。ここで、製造ステップ75を製造ステップ74の前に行うことも可能である。さらに、ポリプロピレンフィルムの対応するデザインの場合には、製造ステップ75を省略することも可能である。
【0136】
製造ステップ76において、形成された複合体3は、次に、射出成形型に配置され、例えば、
図5に示されるバックインジェクション成形された複合体4が得られるように、プラスチック材料でバックインジェクションモールド成形および/またはオーバーモールド成形および/またはインサート成形される。
【0137】
ここで、射出成形プロセスは、好ましくは、以下のプロセスパラメータを使用して実行される:
・プラスチック材料の溶融温度: 170℃~290℃
・金型温度: 15℃~80℃
【0138】
さらに、使用される射出圧力は、装飾成形部品およびプラスチック材料の幾何学的形状に依存する。
【0139】
すでに上述したように、ポリプロピレンを含有するか、またはポリプロピレンからなるプラスチックが、プラスチック材料として使用されることが好ましい。
【0140】
プラスチック材料は、特に好ましくは、以下に述べるように配合される。
【0141】
ポリプロピレン並びに/または異なる充填剤および/もしくは他の添加剤で変性されたポリプロピレン含有プラスチックは、好ましくは、ステップc)においてプラスチック材料に使用することができる。例えば、以下のようにすることができる:
・充填剤として、プラスチック材料の固体成分の総重量に対して、20重量%のタルク含有量を有するポリプロピレン(例えば、LyondellBasell社のHifax TRC 134P 3004またはHostacom TRC 352N)
・充填剤として、プラスチック材料の固体成分の総重量に対して、5重量%のタルク含有量を有するポリプロピレンコポリマー(例えば、LyondellBasell社のTKC 2007N)
・充填剤として、プラスチック材料の固体成分の総重量に対して、16重量%の鉱物含量を有するポリプロピレン-TPO化合物(TPO=熱可塑性オレフィンエラストマー)(例えば、LyondellBasell社のEKC 330N)
・ポリプロピレン-TPO化合物(TPO=熱可塑性オレフィンエラストマー)(例えば、Exxon Mobile社のBMU 141)
【0142】
次の機能ステップ77では、複合体4を1つ以上のプライマー層および/または保護ワニス層で再コーティングし、それによって装飾成形部品を得る。
【0143】
また、製造ステップ77を省略し、製造ステップ76を行った後に得られる複合体4を装飾成形部品として使用することも可能である。
【0144】
製造ステップ77では、
図6に示すように、まずプライマー層50を塗布し、
図7に示すように、そこに保護ワニス層51を塗布することが好ましい。ここで、プライマー層50および保護ワニス層51の塗布は、フラッドコーティングによって、および/またはワニス塗り、特にスプレーワニス塗りによって行われる。ポリウレタンおよび/またはアクリレートワニスは、好ましくは、プライマー層50および保護ワニス層51のワニスとして使用される。
【0145】
この目的のために、ワニス組成物は、好ましくは、以下のように製剤化される:
20重量%~90重量%の少なくとも1種のバインダー、例えばポリウレタン;
5重量%~25重量%の少なくとも1つの共バインダー、例えば、アクリレート、プロポリマー;
1重量%~10重量%の架橋剤;
0重量%~10重量%の少なくとも1つの充填剤、例えばAerosil;
0重量%~10重量%の少なくとも1つの添加剤;
10重量%~50重量%の少なくとも1つの溶媒、例えば水。いずれの場合も、ワニス組成物の総重量に対する重量である。
【符号の説明】
【0146】
1 転写フィルム
2 複合体
3 複合体
4 複合体
10 キャリアプライ
11 剥離層
12 保護ワニス層
13 装飾層
14 接着促進層
15 転写プライ
20 ポリプロピレンフィルム
21 第1表面
22 第2表面
40 プラスチック材料
50 プライマー層
51 保護ワニス層