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特許7369136設計された電流密度プロファイル・ダイオードレーザ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】設計された電流密度プロファイル・ダイオードレーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/042 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
H01S5/042 614
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020550106
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 US2019024134
(87)【国際公開番号】W WO2019191134
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】62/648,286
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508318650
【氏名又は名称】ローレンス・リバモア・ナショナル・セキュリティ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Lawrence Livermore National Security, LLC
【住所又は居所原語表記】Lawrence Livermore National Laboratory, 7000 East Avenue, L-703, Livermore, CA 94551-9234, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】レイシャー,ポール オー.
(72)【発明者】
【氏名】デリ,ロバート ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】パトラ,スサント ケー.
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-096988(JP,A)
【文献】特表2011-508440(JP,A)
【文献】特開平01-266781(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0268761(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00- 5/50
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計された電流密度プロファイル・ダイオード・レーザであって、
基板材料の第1の部分と、
半導体材料の前記第1の部分上の量子井戸活性領域と、
前記活性領域上の前記基板材料の第2の部分と、
前記半導体材料の前記第2の部分上の金属接触と、
前記量子井戸活性領域と前記金属接触との間に配置された複数の電流ビアと、
を含み、
前記ビア間の間隔が、ダイオードの長手方向に沿った第1の所定の位置でゼロから第1の値まで増加する電流密度を提供するように予め定められ、
前記電流密度は、前記長手方向に沿った前記第1の所定の位置よりもレーザ放射方向に遠い第2の所定の位置において、前記第1の値から第2の値まで増加し、
前記電流密度は、前記長手方向に沿った前記第2の所定の位置よりもレーザ放射方向に遠い第3の所定の位置において、前記第2の値から第1の値よりも低い第3の値に減少し、
前記電流密度は、前記長手方向に沿った前記第3の所定の位置よりもレーザ放射方向に遠い第4の所定の位置において、前記第3の値から前記第2の値よりも低い第4の値まで増加する、ダイオードレーザ。
【請求項2】
前記半導体材料の前記第2の部分と前記金属接触との間に、誘電絶縁体材料をさらに含み、前記ビアが前記誘電絶縁体材料により形成される、請求項1に記載のダイオードレーザ。
【請求項3】
半導体材料の前記第2の部分内に陽子注入領域をさらに含み、前記陽子注入領域はアパチャを有し、前記複数のビアが前記陽子注入領域の前記アパチャ内に形成される、請求項1に記載のダイオードレーザ。
【請求項4】
半導体材料の前記第2の部分上にパターン化された高ドープのキャッピング層をさらに含み、前記複数のビアが前記パターン化されたキャッピング層に形成され、前記金属接触が、前記半導体材料の前記第2の部分上、および前記パターン化されたキャッピング層上にある、請求項1に記載のダイオードレーザ。
【請求項5】
半導体材料の前記第2の部分上に複数の高ドープのキャッピング層領域をさらに含み、前記複数のビアが、前記複数のキャッピング層領域に形成され、前記金属接触が、半導体材料の前記第2の部分上、およびパターン化された前記キャッピング層上にある、請求項1に記載のダイオードレーザ。
【請求項6】
半導体材料の前記第2の部分上の高ドープのキャッピング層領域をさらに含み、前記キャッピング層領域の各領域は、前記複数のビアうちのビアであり、前記金属接触は、半導体材料の前記第2の部分上、および前記キャッピング層領域上にある、請求項1に記載のダイオードレーザ。
【請求項7】
前記複数のビアのうちの少なくとも1つのビアが、100nmから10μmの範囲内の直径を有する、請求項1に記載のダイオードレーザ。
【請求項8】
前記複数のビアの各ビアが、100nmから10μmの範囲内の直径を有する、請求項1に記載のダイオードレーザ。
【請求項9】
前記複数のビアが、電流注入領域を1次元または2次元でピクセル化するパターンを含む、請求項1に記載のダイオードレーザ。
【請求項10】
前記レーザダイオードが、端面発光半導体レーザを含む、請求項1に記載のダイオードレーザ。
【請求項11】
前記端面発光半導体レーザが、6xx~12xxnm波長帯域で動作するGaAsベースのデバイス、13xx~21xxnm帯域で動作するInPベースのデバイス、および3xx~5xxnm帯域で動作するGaNベースのデバイスからなるグループから選択される、請求項10に記載のダイオードレーザ。
【請求項12】
半導体材料の前記第1の部分、および半導体材料の前記第2の部分が、Si、Ge、GaAs、GaP、InAs、InP、AlAs、GaN、およびGaSbからなるグループ、並びに、前記グループの材料の組み合わせに基づく三元、四元、および五元の化合物半導体から選択される材料を含む、請求項1に記載のダイオードレーザ。
【請求項13】
設計された電流密度プロファイル・ダイオード・レーザを操作する方法であって、
(i)半導体材料の第1の部分、(ii)半導体材料の前記第1の部分上の量子井戸活性領域、(iii)前記活性領域上の前記半導体材料の第2の部分、(iv)前記半導体材料の前記第2の部分上の金属接触、および、(v)前記量子井戸活性領域と前記金属接触との間に配置された複数の電流ビアとを含む、設計された電流密度プロファイル・ダイオード・レーザを提供することと、
前記金属接触と前記活性領域との間に電圧誘導電流を提供すること、
とを含み、
前記ビア間の間隔が、ダイオードの長手方向に沿った第1の所定の位置でゼロから第1の値まで増加する電流密度を提供するように予め定められ、
前記電流密度は、前記長手方向に沿った前記第1の所定の位置よりもレーザ放射方向に遠い第2の所定の位置において、前記第1の値から第2の値まで増加し、
前記電流密度は、前記長手方向に沿った前記第2の所定の位置よりもレーザー放射方向に遠い第3の所定の位置において、前記第2の値から第1の値よりも低い第3の値に減少し、
前記電流密度は、前記長手方向に沿った前記第3の所定の位置よりもレーザ放射方向に遠い第4の所定の位置において、前記第3の値から前記第2の値よりも低い第4の値まで増加する、方法。
【請求項14】
前記ダイオードレーザが、前記半導体材料の前記第2の部分と前記金属接触との間の誘電絶縁体材料をさらに含み、前記ビアが、前記誘電絶縁体材料により形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ダイオードレーザが、半導体材料の前記第2の部分内に陽子注入領域をさらに含み、前記陽子注入領域はアパチャを有し、前記複数のビアが前記陽子注入領域の前記アパチャ内に形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ダイオードレーザが、半導体材料の前記第2の部分上にパターン化された高ドープのキャッピング層をさらに含み、前記複数のビアが、前記パターン化されたキャッピング層に形成され、前記金属接触が、前記半導体材料の前記第2の部分上、および前記パターン化されたキャッピング層上にある、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ダイオードレーザが、半導体材料の前記第2の部分上の複数の高ドープのキャッピング層領域をさらに含み、前記複数のビアが、前記複数のキャッピング層領域に形成され、前記金属接触が、半導体材料の前記第2の部分上、およびパターン化された前記キャッピング層上にある、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記ダイオードレーザが、半導体材料の前記第2の部分上の高ドープのキャッピング層領域をさらに含み、前記キャッピング層領域の各領域は、前記複数のビアのうちのビアであり、前記金属接触は、半導体材料の前記第2の部分上、および前記キャッピング層領域上にある、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
半導体材料の前記第1の部分、および半導体材料の前記第2の部分が、Si、Ge、GaAs、GaP、InAs、InP、AlAs、GaN、およびGaSbからなるグループ、並びに、前記グループの材料の組み合わせに基づく三元、四元、および五元の化合物半導体から選択される材料を含む、請求項13に記載の方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の参照
本出願は、2018年3月26日出願の「設計された電流密度プロファイルを備えた高出力ダイオードレーザ」という名称の米国仮特許出願第62/648,286号の利益を主張し、参考として本明細書に組み込む。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発から得られた発明権利の記載
米国政府は、ローレンスリバモア国立研究所の運営に関しての米国エネルギー省とローレンス・リバモア・ナショナル・セキュリティLLCとの間の契約番号DE-AC52-07NA27344に従って、本発明の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
分野
本技術は、半導体レーザに関し、より詳細には、高効率動作を維持しながら、高出力半導体レーザによって生成される出力および輝度を拡大することに関する。
【0004】
関連技術の記載
過去10年間にわたるダイオードレーザ輝度の大幅な向上は、レーザ共振器のキャビティを長くすることで(つまり、チップを長くすることで)、実現されてきた。ダイオードレーザのキャビティ長が約5mmに達した時点で、キャビティ長の拡大により輝度や電力を一段と拡大しようとする試みは、さらに長くなることによる電力変換効率の低下が原因で、停滞している。効率損失の原因を特定して克服できるのであれば、ダイオードレーザ長を継続して拡大できることが望ましい。
【0005】
ダイオードの長さに沿って延びる広範囲で均一な接触が、量子井戸に電流を供給するために使用されてきた。ダイオードレーザのキャビティ長が長くなると、キャビティの長さに沿って、光子密度、キャリア密度、利得、および再結合寿命の点で、非対称性が大きく損なわれることが知られている。これらの条件が、キャビティの長さに沿った電流密度プロファイルに、(均一な接触にもかかわらず)不均一性をも引き起こすと考えられている。言い換えれば、チップの特定領域は、チップの他領域よりも多くの電流を流す可能性が高く、最も電流が流れる領域が、その電流が流れるのに最適位置である可能性は低い。ダイオードの長さに沿った電流密度を設計して、この不均一性に関連する損失を克服し、ダイオードレーザが、より大きな電力変換効率で動作可能とするか、または、同等の電力変換効率であればより大きな出力電力で動作可能とすることが、望ましい。
【発明の概要】
【0006】
高出力ダイオードレーザにおける長手方向の電流密度プロファイルを制御するいくつかの手法について説明する。例えば、アパチャを有するエピ側の誘電体のパターン化、または、陽子注入よるアパチャの生成により、横方向の電流拡散によるこれらの特性の間での間隔調整を通じて、量子井戸の電流密度プロファイルが制御可能になり、スペーサが離れているほど、アパチャでの電流密度は低くなる。一次元で、現在のアパチャ幅をAと定義し、隣接する2つのアパチャのエッジ間の間隔をBと定義した場合、他の条件を同じにしておくと、Aを大きくするかまたはBを小さくすると、量子井戸での平均電流密度が増加する(逆も同様)。Bは電流の横方向の拡散長よりも小さく保つことができるため、拡散(平均化)が、実際に発生する。電流拡散は2次元であるため、直交方向のアパチャのサイズ(および間隔)も、実際には影響する。言い換えれば、本技術は、長手方向に沿って、幅または間隔が変化するアパチャを作成することを意図している。
【0007】
本技術を使用して、キャビティ内の位置の関数として電流密度を最適化するために、高出力ダイオードレーザの長手方向の電流注入プロファイルを制御することが可能となり、この技術を適用せずに達成できるレベル以上に、より信頼性の高い出力を促進し、デバイスの電気から光への変換効率を向上させることができる。この手法は、例えば、半導体レーザチップの製造に利用して、改善された性能動作を必要とする用途に対して、出力電力と電力変換効率を改善することができる。
【0008】
添付の図面は、本開示に組み込まれ、その一部を形成し、技術の実施形態を示し、説明とともに、技術の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本技術の誘電体閉じ込め手法を利用して形成されたダイオードレーザの実施形態の側断面図を示す。
図1B図1Aのレーザダイオードのエピタキシャル成長方向、およびレーザ放出方向を示す。
図1C】誘電絶縁体内のビアのパターンに応じて、図1Aのレーザダイオードの長手方向の位置に沿って、電流密度がどのように変化するかを示している。
図2A】本技術の注入閉じ込め手法を利用して形成されたダイオードレーザの実施形態の側断面図を示す。
図2B図2Aのレーザダイオードのエピタキシャル成長方向、およびレーザ放出方向を示す。
図2C】陽子注入領域によって形成されたビアのパターンに応じて、図2Aのレーザダイオードの長手方向位置に沿って、電流密度がどのように変化するかを示している。
図3A】本技術のパターン化された接触層手法を利用して形成されたダイオードレーザの実施形態の側断面図を示す。
図3B図3Aのレーザダイオードのエピタキシャル成長方向およびレーザ放出方向を示す。
図3C】誘電絶縁体のパターンに応じて、図3Aのレーザダイオードの長手方向の位置に沿って、電流密度がどのように変化するかを示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この技術により、より大きな電力変換効率で動作するか、または、同等の電力変換効率で、より高い出力電力で動作するダイオードレーザが可能になる。これは、キャビティ長が長い高出力ダイオードレーザの効率と出力を制限する、局所的な電流集中と長手方向の空間ホールバーニング効果を克服するために、デバイスの長手方向の電流密度プロファイルを注意深く制御することによって、達成される。
【0011】
ダイオードの長さに沿った量子井戸での長手方向の電流密度を制御するための3つの技術が説明される。最初は、発光領域を画定する誘電体により、複数のアパチャ(ここでは、複数のビアとも呼ばれる)を使用する高出力広域ダイオードレーザをベースとしている。2番目は、非導電性に描画される半導体領域内の陽子注入により、電流アパチャを作成する同様のデバイスをベースとしている。どちらの場合も、アパチャによって画定される領域が、電流注入の位置を制御する。小さなビア(直径約100nm~約10μm)のパターンを作成することにより、電流注入領域は、(1次元または2次元に)ピクセル化される。これらの領域に注入された電流の横方向の拡散が、量子井戸に流れ込む時に、量子井戸の位置での平均電流密度の低下をもたらす。誘電体または注入領域のこれら小さなアパチャのサイズと間隔を調整することにより、注入電流プロファイルを、ダイオードの長さに沿って設計できる。第3の技術は、パターン化された接触層手法を利用して形成されたダイオードレーザを提供する。本明細書の例示的な半導体材料には、Si、Ge、GaAs、GaP、InAs、InP、AlAs、GaNおよびGaSb、と同様に、これらの材料系の組み合わせに基づく三元、四元、および五元の化合物半導体が含まれる。
【0012】
注入電流プロファイルは、高効率で動作するレーザ領域へ、より高い電流密度の流れを促すように、および/または、非常に長いキャビティ・ダイオードレーザでの長手方向の電流集中の影響を克服するように、設計されている。この技術は、6xx~12xxnm波長帯域で動作するGaAsベースのデバイス、13xx~21xxnm帯域で動作するInPベースのデバイス、および、3xx~5xxnm帯域で動作するGaNベースのデバイスを含む、さまざまなデザインの端面発光半導体レーザに適用できる。
【0013】
図1Aは、本技術の誘電体閉じ込め手法を利用して形成された、設計された電流密度プロファイル・ダイオードレーザの実施形態の側断面図を示す。図1Bは、エピタキシャル成長方向10と、レーザダイオード14の長手方向であるレーザ放出方向12とを示す。レーザダイオード14は、半導体材料16の第1の部分、活性領域18、半導体材料の第2の部分16’、パターン化された誘電絶縁体20、および金属接触22を含む。線24は、電流源が適切に印加された場合、金属接触22と活性領域18との間を流れるであろう電流を表す。図1Cは、誘電絶縁体20内のビアのパターンに応じて、レーザダイオード14の長手方向の位置に沿って、電流密度26がどのように変化するかを示している。16と16’の例示的な半導体材料は、Si、Ge、GaAs、GaP、InAs、InP、AlAs、GaN、GaSbからなるグループ、と同様に、そのグループの材料の組み合わせに基づく、三元、四元、および五元の化合物半導体から選択できる。
【0014】
図1Aの誘電体閉じ込め手法の例示的な製造プロセスは以下の通りである。
1.ウェーハの上部(エピ側、通常は、pドープ側)の上に、薄い(500Å~5000Å)誘電体層(SiNx、SiO2)をブランケット堆積(スパッタまたはPECVD)する。
2.標準的なプロセスを使用して、フォトレジストパターンを、スピン、パターン化、および現像する。パターンは、後続のエッチング工程のビアを画定する。ビア間の誘電体層は、電流密度を低くする必要がある場合は広く、電流密度を高くする必要がある場合は狭くする。電流アパチャが離れているほど、または、電流アパチャが小さいほど、活性領域での平均電流密度は低くなる。
3.絶縁体層のウェットエッチングまたはドライエッチングにより、フォトレジストパターンを絶縁体層に転写する。その後、フォトレジストを除去する。
4.ブランケット金属が、適切なオーム性接触を堆積する。
5.後続の標準的な処理工程(アニール、薄化、裏面金属堆積、バー劈開、コートなど)を実行する。
【0015】
図2Aは、本技術の注入閉じ込め手法を利用して形成された、設計された電流密度プロファイル・ダイオードレーザの実施形態の側断面図を示す。図2Bは、エピタキシャル成長方向30と、レーザダイオード34の長手方向であるレーザ放出方向32とを示している。レーザダイオード34は、半導体材料36の第1の部分、活性領域38、半導体材料36’の第2の部分、(半導体材料36’の前記第2の部分内の)パターン化陽子注入領域40、および金属接触42を含む。線44は、電流源が適切に印加された場合、金属接触42と活性領域38との間を流れるであろう電流を表す。図2Cは、陽子注入領域40によって形成されたビアのパターンに応じて、レーザダイオード34の長手方向の位置に沿って、電流密度46がどのように変化するかを示している。36と36’の例示的な半導体材料は、Si、Ge、GaAs、GaP、InAs、InP、AlAs、GaN、GaSbからなるグループ、と同様に、そのグループの材料の組み合わせに基づく、三元、四元、および五元の化合物半導体から選択できる。
【0016】
接触と量子井戸活性領域との間の層内における横方向の電流拡散は、活性領域の平均線形電流密度が、接触層のフィルファクタ(誘電体のビア開口部の%)に関連付けられる。アパチャ間の間隔は、電流密度プロファイルが量子井戸で均一化するように、接触層と量子井戸との間の横方向の平均電流拡散長(約1~10μm)よりも小さく保つ必要がある。
【0017】
図2Aの注入閉じ込め手法の例示的な製造プロセスは、以下の通りである。
1.適切なオーム性接触のブランケット金属堆積を実行する。
2.標準的なプロセスを使用して、フォトレジストパターンをスピン、パターン化、および現像する。このフォトレジストは、通常、非常に厚く(数ミクロン)であり、陽子注入アパチャを画定するのに役立つ。
3.適切な露光量とエネルギーで陽子注入を行い、露出領域にあるエピタキシャル材料を、非導電性に描画する。
4.フォトレジストを取り除く。
5.後続の標準的な処理工程(アニール、薄化、裏面金属堆積、バー劈開、コートなど)を実行する。
【0018】
場合によっては、フォトレジストと注入は、ブランケット金属堆積の前に行われる。これにより、横方向の拡散長を短くするために、短時間のウェットエッチングまたはドライエッチングを実行して、高濃度にドープされたキャップ層を除去できる。
【0019】
図3Aは、本技術のパターン化された接触層手法を利用して形成された、設計された電流密度プロファイル・ダイオードレーザの実施形態の側断面図を示す。この手法は、パターン化された誘電体接触手法と、概念的に類似している。ダイオード層の上部のエピタキシャル層は、通常、1E18/cmを超えるレベルまで、p型がドープされている。ドープされたGaAs(6xx~11xxの範囲で動作し、GaAs上に成長したダイオード)、または、InGaAs(12xx~21xxnmの範囲で動作し、InP上に成長したダイオード)に、p型金属(通常、Ti-Pt-Au)が堆積される場合に、良好なオーム性接触を形成するために、この非常に高いドーピングレベルが必要である。しかしながら、この高レベルのドーピングは、ダイオードのエピタキシャル構造の中にそれほど遠くまで拡大しておらず、したがって、「キャップ」層は、通常、厚さが50から5000nmに制限される。誘電体接触手法では、電流注入はキャップ層上に配置された絶縁層内に開口したビアに依存するが、この方法では、電流密度の低減は、必要な領域におけるキャップ層を、除去するだけでよい。これが機能するのは、高度にドープされたオーム性接触層の除去が、金属-半導体界面でのオーム性接触の増加を引き起こし、それにより、大電流の流れを抑制するためである。
【0020】
図3Bは、エピタキシャル成長方向50、およびレーザダイオード54の長手方向であるレーザ放出方向52を示す。レーザダイオード54は、半導体材料56の第1の部分、活性領域58、半導体材料56’の第2の部分、パターン化された高ドープキャップ層60および金属接触62を含む。線64は、電流源が適切に印加された場合に金属接触62と活性領域58との間を流れるであろう電流を表す。図3Cは、誘電絶縁体60のパターンに応じて、レーザダイオード54の長手方向の位置に沿って、電流密度66がどのように変化するかを示している。56および56’の例示的な半導体材料は、Si、Ge、GaAs、GaP、InAs、InP、AlAs、GaN、GaSbからなるグループ、と同様に、そのグループの材料の組み合わせに基づく、三元、四元、および五元の化合物半導体から選択できる。
【0021】
図3Aの誘電体閉じ込め手法の例示的な製造プロセスは以下の通りである。
1.標準的なプロセスを使用して、フォトレジストパターンをスピン、パターン化、および現像する。このパターンは、除去される高濃度にドープされたキャップ層の領域を画定する。これらの領域のキャップ層を除去すると、その場所の接触抵抗が増加するため、そこでの電流密度が低下する。パターンを最初に誘電体「ハードマスク」層に転写してからエッチングするか、または、フォトレジスト層自体をエッチングマスクとして使用できる。
2.パターンが露出している領域の高濃度にドープされたキャップ層をエッチングする。このエッチングは、標準のウェットエッチングまたはドライエッチング技術で実行できる。エッチング後、マスクを取り除くと、高濃度にドープされた半導体キャップ層、および別の場所でいくらか低濃度にドープされた半導体の領域を含む、テクスチャ形成面が残る。
3.ブランケット金属は、適切なオーム性接触を堆積する。
4.後続の標準的な処理工程(アニール、薄化、裏面金属蒸着、バー劈開、コート)を実行する。
【0022】
広く、この記載は少なくとも下記を開示している。
【0023】
本技術を使用して、キャビティ内の位置の関数として電流密度を最適化するために、高出力ダイオードレーザの長手方向の電流注入プロファイルを制御することが可能となり、この技術を適用せずに達成できるレベル以上に、より信頼性の高い出力を促進し、デバイスの電気から光への変換効率を向上させることができる。この手法は、例えば、半導体レーザチップの製造に利用して、改善された性能動作を必要とする用途に対して、出力電力と電力変換効率を改善することができる。
【0024】
この記載は少なくとも下記概念も提示している。
【0025】
概念
1.設計された電流密度プロファイル・ダイオードレーザであって、
基板材料の第1の部分と、
半導体材料の前記第1の部分上の量子井戸活性領域と、
前記活性領域上の前記基板材料の第2の部分と、
前記半導体材料の前記第2の部分上の金属接触と、
前記量子井戸活性領域と前記金属接触との間に配置された複数の電流ビアと、
を含む電流密度プロファイル・ダイオードレーザ。
2.前記半導体材料の前記第2の部分と前記金属接触との間に、誘電絶縁体材料をさらに含み、前記ビアが前記誘電絶縁体材料により形成される、概念1、7-11及び13に記載のダイオードレーザ。
3.半導体材料の前記第2の部分内に陽子注入領域をさらに含み、前記複数のビアが前記陽子注入領域に形成される、概念1、7-11及び13に記載のダイオードレーザ。
4.半導体材料の前記第2の部分上にパターン化されたキャッピング層をさらに含み、前記複数のビアが前記パターン化されたキャッピング層に形成され、前記金属接触が、前記半導体材料の前記第2の部分上、および前記パターン化されたキャッピング層上にある、概念1、7-11及び13に記載のダイオードレーザ。
5.半導体材料の前記第2の部分上に複数のキャッピング層領域をさらに含み、前記複数のビアが、前記複数のキャッピング層領域に形成され、前記金属接触が、半導体材料の前記第2の部分上、および前記パターン化されたキャッピング層上にある、概念1、7-11及び13に記載のダイオードレーザ。
6.半導体材料の前記第2の部分上のキャッピング層領域をさらに含み、前記キャッピング層領域の各領域は、前記複数のビアうちのビアであり、前記金属接触は、半導体材料の前記第2の部分上、および前記キャッピング層領域上にある、概念1、7-11及び13に記載のダイオードレーザ。
7.前記ビア間の間隔が、前記ダイオードレーザの長手方向ごとに所望の電流密度を提供するように予め定められている、概念1-6、8-11及び13に記載のダイオードレーザ。
8.前記複数のビアのうちの少なくとも1つのビアが、100nmから10μmの範囲内の直径を有する、概念1-7、9-11及び13に記載のダイオードレーザ。
9.前記複数のビアの各ビアが、100nmから10μmの範囲内の直径を有する、概念1-8、10、11及び13に記載のダイオードレーザ。
10.前記複数のビアが、電流注入領域を1次元または2次元でピクセル化するパターンを含む、概念1-9、11及び13に記載のダイオードレーザ。
11.前記レーザダイオードが、端面発光半導体レーザを含む、概念1-10及び13に記載のダイオードレーザ。
12.前記端面発光半導体レーザが、6xx~12xxnm波長帯域で動作するGaAsベースのデバイス、13xx~21xxnm帯域で動作するInPベースのデバイス、および3xx~5xxnm帯域で動作するGaNベースのデバイスからなるグループから選択される、概念11に記載のダイオードレーザ。
13.半導体材料の前記第1の部分、および半導体材料の前記第2の部分が、Si、Ge、GaAs、GaP、InAs、InP、AlAs、GaN、およびGaSbからなるグループから選択される材料、と同様に、前記グループの前記材料の組み合わせに基づく三元、四元、および五元の化合物半導体を含む、概念1-11に記載のダイオードレーザ。
14.設計された電流密度プロファイル・ダイオード・レーザを操作する方法であって、
(i)半導体材料の第1の部分、(ii)半導体材料の前記第1の部分上の量子井戸活性領域、(iii)前記活性領域上の前記半導体材料の第2の部分、(iv)前記半導体材料の前記第2の部分上の金属接触、および、(v)前記量子井戸活性領域と前記金属接触との間に配置された複数の電流ビアとを含む、設計された電流密度プロファイル・ダイオード・レーザを提供することと、
前記金属接触と前記活性領域との間に電圧誘導電流を提供すること、
とを含む方法。
15.前記ダイオードレーザが、前記半導体材料の前記第2の部分と前記金属接触との間の誘電絶縁体材料をさらに含み、前記ビアが、前記誘電絶縁体材料により形成される、概念14、20及び21に記載の方法。
16.前記ダイオードレーザが、半導体材料の前記第2の部分内に陽子注入領域をさらに含み、前記複数のビアが、前記陽子注入領域に形成される、概念14、20及び21に記載の方法。
17.前記ダイオードレーザが、半導体材料の前記第2の部分上にパターン化されたキャッピング層をさらに含み、前記複数のビアが、前記パターン化されたキャッピング層に形成され、前記金属接触が、前記半導体材料の前記第2の部分上、および前記パターン化されたキャッピング層上にある、概念14、20及び21に記載の方法。
18.前記ダイオードレーザが、半導体材料の前記第2の部分上の複数のキャッピング層領域をさらに含み、前記複数のビアが、前記複数のキャッピング層領域に形成され、前記金属接触が、半導体材料の前記第2の部分上、および前記パターン化されたキャッピング層上にある、概念14、20及び21に記載の方法。
19.前記ダイオードレーザが、半導体材料の前記第2の部分上のキャッピング層領域をさらに含み、前記キャッピング層領域の各領域は、前記複数のビアのうちのビアであり、前記金属接触は、半導体材料の前記第2の部分上、および前記キャッピング層領域上にある、概念14、20及び21に記載の方法。
20.前記ビア間の間隔が、前記ダイオードレーザの長手方向ごとに所望の電流密度を提供するように予め定められている、概念14-19及び21に記載の方法。
21.半導体材料の前記第1の部分、および半導体材料の前記第2の部分が、Si、Ge、GaAs、GaP、InAs、InP、AlAs、GaN、およびGaSbからなるグループから選択される材料、と同様に、前記グループの材料の組み合わせに基づく三元、四元、および五元の化合物半導体を含む、概念14-20に記載の方法。
【0026】
本明細書で説明されるすべての要素、部品、およびステップが含まれることが好ましい。当業者には明らかであるように、これらの要素、部品、およびステップのいずれかは、他の要素、部品、およびステップで置き換えるか、または完全に削除できることを理解されたい。
【0027】
本技術の前述の説明は、例示および説明の目的で提示されたものであり、網羅的であること、または開示された正確な形態に本技術を限定することを意図したものではない。上記の教示に照らして、多くの修正および変形が可能である。開示された実施形態は、本技術の原理およびその実際の応用を説明することのみを意図しており、それにより、当業者は、考えられる特定の用途に適した様々な修正を加えて、様々な実施形態で本技術を最良に使用することができる。本技術の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されるものとする。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C