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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】摺動部品
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20231018BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
F16J15/34 G
F16C17/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020572261
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2020005258
(87)【国際公開番号】W WO2020166588
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2019026035
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】王 岩
(72)【発明者】
【氏名】井村 忠継
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓志
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-200068(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092742(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/035502(WO,A1)
【文献】実開昭56-015856(JP,U)
【文献】国際公開第2019/139107(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/34
F16C 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械の相対回転する箇所に配置される環状を成す一対の摺動部品であって、
一方の摺動部品の摺動面には、漏れ側に連通する少なくとも浅溝部を有する動圧発生機構が複数設けられており、他方の摺動部品の摺動面には、前記動圧発生機構よりも深い寸法を有する深溝が漏れ側に連通して設けられており、相対回転時に前記深溝は前記動圧発生機構の浅溝部に重なり、
前記浅溝部の数は、前記深溝の数よりも多く、
前記深溝の開口面の面積は、前記浅溝部それぞれの開口面の面積よりも大きい摺動部品。
【請求項2】
前記動圧発生機構の浅溝部と前記深溝とが同一方向を向くように延設されている請求項1に記載の摺動部品。
【請求項3】
前記深溝において少なくとも前記動圧発生機構の浅溝部の終端側に重なる部分の開口幅が該浅溝部の開口幅よりも長く形成されている請求項1または2に記載の摺動部品。
【請求項4】
前記深溝の開口面の総面積は前記浅溝部の開口面の総面積よりも小さい請求項1ないし3のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項5】
前記摺動部品は回転するものであって、外径側に連通する前記深溝が形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項6】
いずれか一方の摺動部品の摺動面には、前記動圧発生機構よりも被密封流体側に配置され前記動圧発生機構とは独立する特定動圧発生機構が設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載の摺動部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対回転する摺動部品に関し、例えば自動車、一般産業機械、あるいはその他のシール分野の回転機械の回転軸を軸封する軸封装置に用いられる摺動部品、または自動車、一般産業機械、あるいはその他の軸受分野の機械の軸受に用いられる摺動部品に関する。
【背景技術】
【0002】
被密封液体の漏れを防止する軸封装置として例えばメカニカルシールは相対回転し摺動面同士が摺動する一対の環状の摺動部品を備えている。このようなメカニカルシールにおいて、近年においては環境対策等のために摺動により失われるエネルギーの低減が望まれており、摺動面間の潤滑性を向上させることにより摺動により失われるエネルギーの低減を図る特許文献1のような摺動部品が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示される摺動部品には、摺動部品の摺動面に被密封液体側である外径側に連通するとともに摺動面において一端が閉塞する動圧発生溝が設けられている。これによれば、摺動部品の相対回転時には、被密封液体側から動圧発生溝に流入した被密封流体が動圧発生溝の周方向終端から摺動面間に流出され、その動圧により摺動面同士が離間するとともに、動圧発生溝が被密封液体を保持することで潤滑性が向上し、低摩擦化を実現している。
【0004】
また、動圧発生溝として特許文献2に示されるようなものもある。特許文献2の動圧発生溝は、被密封液体側である外径側から漏れ側である内径側に向けて弧状に延び、且つ内径側の端部が先細りするスパイラル形状を成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-50559号公報(第3頁、第2図)
【文献】特許第3079562号公報(第4頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2で示される被密封流体には、摺動面同士の摺動により発生する摩耗紛や塵埃などのコンタミが混入することがあり、被密封流体に混入したコンタミは、動圧発生溝内を流れる流体により該動圧発生溝の終端に導かれて堆積しやすくなっており、動圧発生溝の終端にコンタミが堆積すると、動圧発生溝の動圧発生機能の低下や、摺動面同士が不均一に接触するなどの虞があった。尚、本願において、「コンタミ」とはコンタミネーション(contamination)の略称であり、多細粒子状の導電性異物などの「粒子状異物」を意味する。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、動圧発生機構の浅溝部内にコンタミが堆積することを抑制できる摺動部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の摺動部品は、
回転機械の相対回転する箇所に配置される環状を成す一対の摺動部品であって、
一方の摺動部品の摺動面には、漏れ側に連通する少なくとも浅溝部を有する動圧発生機構が複数設けられており、他方の摺動部品の摺動面には、前記動圧発生機構よりも深い寸法を有する深溝が漏れ側に連通して設けられており、相対回転時に前記深溝は前記動圧発生機構の浅溝部に重なる。
これによれば、一対の摺動部品の相対回転時に、深溝は動圧発生機構の浅溝部上を横切り、そのタイミングで動圧発生機構の浅溝部に深溝が連通し、浅溝部から深溝に移動する流体によりコンタミが動圧発生機構の浅溝部に堆積しにくくなっている。
【0009】
前記動圧発生機構の浅溝部と前記深溝とが同一方向を向くように延設されていてもよい。
これによれば、動圧発生機構の浅溝部と深溝とを広い領域で連通させることができ、浅溝部の終端以外の部分からも流体を深溝側に移動させることができる。
【0010】
前記深溝において少なくとも前記動圧発生機構の浅溝部の終端側で重なる部分の開口幅が該浅溝部の開口幅よりも長く形成されていてもよい。
これによれば、動圧発生機構の浅溝部と深溝とを長い時間連通させることができるので、浅溝部内のコンタミを深溝内に流出させやすい。
【0011】
前記深溝の開口面の総面積は前記浅溝部の開口面の総面積よりも小さくてもよい。
これによれば、摺動部品の相対回転時において動圧発生機構の浅溝部と深溝とが連通しない領域を広く確保できるので、動圧発生機構で動圧を効率よく発生させることができる。
【0012】
前記摺動部品は回転するものであって、外径側に連通する前記深溝が形成されていてもよい。
これによれば、遠心力により深溝内のコンタミを外径側に排出することができる。
【0013】
いずれか一方の摺動部品の摺動面には、前記動圧発生機構よりも被密封流体側に配置され前記動圧発生機構とは独立する特定動圧発生機構が設けられていてもよい。
これによれば、摺動部品の相対回転時に、特定動圧発生機構により摺動面間を離間させて摺動面間に適当な液膜を生成しつつ、動圧発生機構によって被密封液体の漏れ側への漏れを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1におけるメカニカルシールの一例を示す縦断面図である。
図2】静止密封環の摺動面を軸方向から見た図である。
図3】回転密封環の摺動面を軸方向から見た図である。
図4】A-A断面図である。
図5】B-B断面図である。
図6】(a)は動圧発生機構と深溝とが連通していない状態において静止密封環の摺動面を軸方向から見た図、(b)は同じく断面図である。
図7】動圧発生機構と深溝とが連通した状態において静止密封環の摺動面を軸方向から見た図である。
図8】(a)~(d)は動圧発生機構上を深溝が横切る一連の動きを示す説明図である。
図9】深溝に流出したコンタミを含む被密封液体が漏れ側に排出される状態を示す概略図である。
図10】(a)は本発明の実施例2における動圧発生機構を示す概略図、(b)は同じく深溝を示す概略図である。
図11】(a)はレイリーステップ内のコンタミを漏れ側に排出する形態を示す概略図、(b)は逆レイリーステップ内のコンタミを漏れ側に排出する形態を示す概略図である。
図12】(a)は本発明の変形例1を示す説明図、(b)は本発明の変形例2を示す説明図である。
図13】本発明の変形例3を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る摺動部品を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0016】
実施例1に係る摺動部品につき、図1から図9を参照して説明する。尚、本実施例においては、摺動部品がメカニカルシールである形態を例に挙げ説明する。また、メカニカルシールを構成する摺動部品の外径側を漏れ側としての大気側(低圧側)、内径側を被密封液体側(高圧側)として説明する。また、説明の便宜上、図面において、摺動面に形成される溝等にドットを付すこともある。
【0017】
図1に示される一般産業機械用のメカニカルシールは、摺動面の内径側から外径側に向かって漏れようとする被密封液体Fを密封するアウトサイド形のものであって、回転軸1にスリーブ2を介して回転軸1と共に回転可能な状態で設けられた円環状の摺動部品としての回転密封環20と、被取付機器のハウジング4に固定されたシールカバー5に非回転状態かつ軸方向移動可能な状態で設けられた円環状の摺動部品としての静止密封環10と、から主に構成され、ベローズ7によって静止密封環10が軸方向に付勢されることにより、静止密封環10の摺動面11と回転密封環20の摺動面21とが互いに密接摺動するようになっている。
【0018】
静止密封環10及び回転密封環20は、代表的にはSiC(硬質材料)同士またはSiC(硬質材料)とカーボン(軟質材料)の組み合わせで形成されるが、これに限らず、摺動材料はメカニカルシール用摺動材料として使用されているものであれば適用可能である。尚、SiCとしては、ボロン、アルミニウム、カーボン等を焼結助剤とした焼結体をはじめ、成分、組成の異なる2種類以上の相からなる材料、例えば、黒鉛粒子の分散したSiC、SiCとSiからなる反応焼結SiC、SiC-TiC、SiC-TiN等があり、カーボンとしては、炭素質と黒鉛質の混合したカーボンをはじめ、樹脂成形カーボン、焼結カーボン等が利用できる。また、上記摺動材料以外では、金属材料、樹脂材料、表面改質材料(コーティング材料)、複合材料等も適用可能である。
【0019】
図2に示されるように、静止密封環10に対して回転密封環20が矢印で示すように相対摺動するようになっており、静止密封環10の摺動面11には動圧発生機構14と特定動圧発生機構16とが静止密封環10の周方向に均等に複数個ずつ配設されている。摺動面11の動圧発生機構14及び特定動圧発生機構16以外の部分は平端面を成すランド12となっている。
【0020】
動圧発生機構14は、摺動面11を直交する方向から見て一定幅の弧状を成し、外径側である大気側に連通し、内径側に向けて径方向及び周方向に交差するように延びている。この動圧発生機構14は、全長に亘って深さが一定を成し、後述のように、静止密封環10と回転密封環20とが相対回転したときに、動圧発生機構14内に動圧を発生させる浅溝部のみから構成されている。動圧発生機構14は、動圧発生機構14の2つの円弧状の面と、円弧状の面同士に交差して延びる壁部14aと、摺動面11に平行な底面との4面で囲まれており、内径側端部は閉塞されている。また、動圧発生機構14と特定動圧発生機構16とはランド12を隔てて配置されている。
【0021】
図4に示されるように、動圧発生機構14は、幅寸法L20が1mm、深さ寸法L23が1μmに形成されている。また、隣接する動圧発生機構14の離間寸法L21は、2mmに形成されている。尚、図4図8は、説明の便宜上、深さ寸法を実際の寸法よりも深く図示している。
【0022】
尚、動圧発生機構14の幅寸法及び深さ寸法は、静止密封環10と回転密封環20とが相対回転したときに動圧発生機構14内に動圧を発生させることができる寸法であればよく、好ましくは動圧発生機構14の幅寸法L20が後述する深溝22の幅寸法L22よりも小さく形成されていればよい。また、動圧発生機構14の離間寸法L21も自由に変更できるが、好ましくは動圧発生機構14の離間寸法L21が後述する深溝22の幅寸法L22よりも大きく形成されていればよい。
【0023】
図2に戻って、特定動圧発生機構16は、高圧側に連通する液体誘導溝部161と、液体誘導溝部161の外径側端部から回転密封環20の回転方向に向けて静止密封環10と同心状に周方向に延びるレイリーステップ162と、を備えており、摺動面11を直交する方向から見て逆L字形状を成している。特定動圧発生機構16は、動圧発生機構14よりも半分以下の個数で形成されている。レイリーステップ162の深さ寸法は、動圧発生機構14と同じ1μmに形成されており、液体誘導溝部161はレイリーステップ162よりも深い100μmの深さ寸法に形成されている。
【0024】
図3に示されるように、回転密封環20の摺動面21には、深溝22が周方向に離間して4つ、すなわち動圧発生機構14の半分以下の個数で均等配置されている。摺動面21の深溝22以外の部分は平端面を成すランド23となっている。
【0025】
深溝22は、動圧発生機構14と鏡像関係にあってほぼ相似形かつ僅かに摺動面21を直交する方向から見た面積が大きいものであり、摺動面21を直交する方向から見て一定幅の弧状を成し、外径側である大気側に連通し、内径側に向けて径方向及び周方向に交差するように延びている。具体的には、深溝22は、深溝22の2つの円弧状の面と、円弧状の面同士に交差して延びる壁部と、摺動面21に平行な底面との4面で囲まれており、内径側端部は閉塞されている。このように、深溝22は、内径側の幅寸法よりも外径側の幅寸法が周方向に若干大きくなっている。図5に示されるように、深溝22は、径方向の幅寸法L22が1.5mm、深さ寸法L24が10μmに形成されている。すなわち、深溝22の径方向の幅寸法L22は、動圧発生機構14の幅寸法L20よりも大きく(L20<L22)、隣接する動圧発生機構14の離間寸法L21よりも小さい(L21>L22)。また、深溝22の深さ寸法L24は、動圧発生機構14の深さ寸法L23よりも深く形成されている(L23<L24)。
【0026】
また、深溝22の深さ寸法L24は、静止密封環10と回転密封環20とが相対回転したときに、深溝22内に動圧が略発生しない深さとなっている。尚、深溝22の幅寸法及び深さ寸法は、静止密封環10と回転密封環20とが相対回転したときに深溝22内に動圧が略発生しなければ自由に変更することができ、好ましくは深溝22の深さ寸法L24は動圧発生機構14の深さ寸法L23の5倍以上である。また、深溝22の径方向の幅寸法L22は、動圧発生機構14の幅寸法L20よりも大きくなっていれば自由に変更できる。
【0027】
尚、動圧発生機構14の底面は平坦面を成しランド12に平行に形成されているが、平坦面に微細凹部を設けることやランド12に対して傾斜するように形成することを妨げない。さらに、動圧発生機構14の周方向に延びる2つの円弧状の面はそれぞれ動圧発生機構14の底面に直交している。また、深溝22の底面は平坦面を成しランド12に平行に形成されているが、平坦面に微細凹部を設けることやランド12に対して傾斜するように形成することを妨げない。さらに、深溝22の周方向に延びる2つの円弧状の面はそれぞれ深溝22の底面に直交している。
【0028】
これら動圧発生機構14と深溝22とは、図6(a)及び図7に示されるように、静止密封環10の摺動面11と回転密封環20の摺動面21とを対向させたときに、同一方向を向くように配置される鏡像関係となっている。また、静止密封環10と回転密封環20との相対回転時には、図6に示されるように動圧発生機構14と深溝22とが軸方向視において重ならない状態と、図7に示されるように動圧発生機構14と深溝22とが軸方向視において重なる状態と、が存在する。深溝22は、軸方向視で動圧発生機構14よりも大きく形成されているので軸方向視において全領域が重なるようになっている(特に図7(a)参照)。
【0029】
次いで、静止密封環10と回転密封環20との相対回転時の動作について図6図9を参照して説明する。尚、図6(a)及び図7(a)は、静止密封環10の摺動面11を直交する方向から見た図であり、回転密封環20の深溝22は二点鎖線で示している。また、図6(b)及び図8は、動圧発生機構14の壁部14a近傍を切断した図である。
【0030】
まず、静止密封環10と回転密封環20との相対回転時の動作の概略を説明する。回転密封環20が回転していない一般産業機械の非稼動時には、摺動面11,21間には摺動面11,21よりも内径側の被密封液体Fが毛細管現象によって僅かに進入しているとともに、動圧発生機構14には一般産業機械の停止時に残っていた被密封液体Fと摺動面11,21よりも外径側から進入した大気とが混在した状態となっている。また、深溝22も同様に一般産業機械の停止時に残っていた被密封液体Fと摺動面11,21よりも外径側から進入した大気とが混在した状態となっている。尚、被密封液体Fは気体と比べ粘度が高いため、一般産業機械の停止時に動圧発生機構14及び深溝22から低圧側に漏れ出す量は少ない。
【0031】
一般産業機械の停止時に動圧発生機構14に被密封液体Fがほぼ残っていない場合には、回転密封環20が静止密封環10に対して相対回転(黒矢印参照)すると、図6(a)に示されるように、大気側の低圧側流体Aが矢印L1に示すように外径側から動圧発生機構14内に導入されて追随移動するため、動圧発生機構14内に動圧が発生するようになる。
【0032】
動圧発生機構14の下流側端部である壁部14a近傍が最も圧力が高くなり、低圧側流体Aは矢印L2に示すように壁部14a近傍からその周辺に流出する。尚、動圧発生機構14の上流側に向かうにつれて漸次圧力が低くなっている。
【0033】
また、回転密封環20が静止密封環10に対して相対回転すると、高圧側の被密封液体Fが矢印L11に示すように特定動圧発生機構16の液体誘導溝部161から導入されるとともに、レイリーステップ162によって被密封液体Fが回転密封環20の回転方向に矢印L12に示すように追随移動するため、レイリーステップ162内に動圧が発生するようになり、被密封液体Fは矢印L13に示すように終端である壁部162a近傍からその周辺に流出する。液体誘導溝部161は深溝であることから被密封液体Fを多く保持でき、液体誘導溝部161に連通する浅溝であるレイリーステップ162により動圧を発生させることができる。
【0034】
静止密封環10と回転密封環20との相対回転時には、摺動面11,21間にそれらの内径側から高圧の被密封液体Fが随時流入しており、いわゆる流体潤滑を成すようになっている。このとき、上述したように動圧発生機構14の下流側は高圧となっているため、矢印H1に示すように、動圧発生機構14の下流側近傍に位置する被密封液体Fは、ランド12に位置したままで動圧発生機構14にはほぼ進入せず、動圧発生機構14の上流側近傍に位置する被密封液体Fは、動圧発生機構14の上流側端部から該動圧発生機構14内に僅かずつ進入する。
【0035】
また、レイリーステップ162近傍の被密封液体Fは、レイリーステップ162の下流側は高圧となっているため、矢印H2に示すように、ランド12に位置したままで、レイリーステップ162にはほぼ進入しない。一方、液体誘導溝部161の近傍の被密封液体Fは、液体誘導溝部161が深溝部であることから、矢印H3に示すように、液体誘導溝部161に進入しやすくなっている。
【0036】
静止密封環10と回転密封環20とがある程度相対回転すると、動圧発生機構14に進入する被密封液体Fの量が増え、動圧発生機構14から連続的に被密封液体Fが摺動面11,21間に流出する定常状態となる。定常状態では、摺動面11,21間にそれらの内径側や動圧発生機構14から高圧の被密封液体Fが随時流入しており、上述したように流体潤滑となっている。尚、動圧発生機構14に被密封液体Fがほぼ残っていない状態から定常状態となるまでは過渡的な短い時間である。また、一般産業機械の停止時に動圧発生機構14に被密封液体Fが残っている場合には、動圧発生機構14に被密封液体Fが残存している量によって定常状態となるまでの時間が変動することとなる。
【0037】
次いで、静止密封環10と回転密封環20との相対回転時における動圧発生機構14と深溝22との関係について説明する。
【0038】
図6(a)に示されるように、静止密封環10と回転密封環20との相対回転時において、動圧発生機構14と深溝22とが軸方向視に重ならない状態にあっては、矢印L1に示すような流体の流れが生じ、動圧発生機構14内に動圧が発生している。このときには、図6(a),(b)に示されるように、動圧発生機構14内に発生する流れにより被密封液体F内に混入するコンタミCは動圧発生機構14内の壁部14a近傍に集まりやすくなっている。尚、動圧発生機構14と深溝22とが軸方向視に重ならない状態にあっては、深溝22に被密封液体Fが僅かに進入する。
【0039】
一方、図7に示されるように、静止密封環10と回転密封環20との相対回転時において、動圧発生機構14と深溝22とが軸方向視に重なった状態にあっては、動圧発生機構14と深溝22とが軸方向に連通する。
【0040】
具体的には、図8(a)に示されるように、動圧発生機構14と深溝22とが軸方向視に重ならない状態にあっては、矢印H4に示されるように摺動面11,21間の被密封液体Fが深溝22内に相対回転上流側から僅かに進入する。尚、深溝22内の被密封液体Fは、相対回転下流側かつ摺動面11側に寄っている。すなわち、深溝22内の相対回転上流側は、摺動面11,21側が最も深くなり、深溝22の深さ方向に向かうにしたがって浅くなるようになっている。
【0041】
次いで、図8(b)に示されるように、深溝22の相対回転上流側が動圧発生機構14の相対回転下流側に軸方向に一部重畳し、深溝22と動圧発生機構14とが一部連通すると、深溝22の容積は動圧発生機構14の容積よりも大きいので、動圧発生機構14内の圧力は深溝22の圧力に近づくように変化し、その圧力変化により動圧発生機構14の被密封液体Fは深溝22内に勢いよく流入することとなる(矢印L6参照)。このとき、動圧発生機構14のコンタミCは被密封液体Fとともに深溝22内に流入し、深溝22の深さ方向奥側に誘導される。
【0042】
次いで、図8(c)に示されるように、軸方向視において深溝22が動圧発生機構14の全領域が重なったときには、深溝22内の被密封液体Fが矢印L7に示すように動圧発生機構14内に戻るが、被密封液体F内を浮遊するコンタミCは深溝22の深さ方向奥側に誘導されている(矢印L8参照)ので、矢印L7に示す被密封液体Fとともに動圧発生機構14内に戻ることが抑制される。尚、上述した図8(a)に示す動圧発生機構14と深溝22とが軸方向視に重ならない状態にあっては、深溝22内の被密封液体Fはほぼ清浄であって、ほとんどコンタミCを含んでいないので、矢印L7による流れによって動圧発生機構14にコンタミCが流入することはほぼない。
【0043】
そして、深溝22が動圧発生機構14を完全に横切り、深溝22の相対回転上流側が動圧発生機構14の回転下流側に軸方向に一部重畳し、深溝22と動圧発生機構14とが一部連通した状態にあっては、動圧発生機構14内の被密封液体Fの一部が回転密封環20から受けるせん断力により深溝22内に回収される(矢印L9参照)。このとき、深溝22内に回収される被密封液体FとともにコンタミCが深溝22内に流入する。すなわち、コンタミCが動圧発生機構14内に堆積しにくくなっている。さらに、図8(b),(c),(d)のように、動圧発生機構14内の被密封液体Fが深溝22に流入した後、動圧発生機構14内に戻り、再度深溝22に流入するように移動するため、被密封液体Fの移動により動圧発生機構14内が洗浄される。
【0044】
図9(a)に示されるように、動圧発生機構14から深溝22内に移動したコンタミCを含む被密封液体Fは、遠心力により回転密封環20の回転方向と反対側の側壁22aに押し付けられ、その後図9(b)に示されるように、コンタミCを含む被密封液体Fは、遠心力により側壁22aに沿って大気側である外径側に移動し、動圧発生機構14における大気側との連通部22bから大気側に吹き飛ばされて排出されるため、深溝22内にコンタミCが堆積しにくくなっている。
【0045】
以上、説明したように、一方の摺動部品である静止密封環10の摺動面11には、漏れ側としての大気側に連通する浅溝部として機能する動圧発生機構14が複数設けられており、他方の摺動部品である回転密封環20の摺動面21には、動圧発生機構14よりも深い寸法を有する深溝22が大気側に連通して設けられており、深溝22は相対回転時に動圧発生機構14に重なる。これによれば、静止密封環10及び回転密封環20の相対回転時に、深溝22は動圧発生機構14上を横切り、そのタイミングで動圧発生機構14に深溝22が軸方向において連通するので、動圧発生機構14から深溝22に被密封液体Fが移動して動圧発生機構14内の圧力は深溝22内の圧力に近づくように変化する。これにより動圧発生機構14に流入したコンタミCに圧力変化による流体の力が作用し、コンタミCが動圧発生機構14に堆積しにくくなっている。また、低圧側に深溝22が連通しており、且つ動圧発生機構14よりも深いため、深溝22内の圧力と動圧発生機構14内の圧力との差圧を確実に生じさせることができ、動圧発生機構14内のコンタミを深溝22内に誘導しやすい。
【0046】
尚、本実施例1では、動圧発生機構14に流入したコンタミCに圧力変化による流体の力が作用することで動圧発生機構14から深溝22内にコンタミCを移動させる形態を例示したが、コンタミCに圧力変化による流体の力が作用することで動圧発生機構14内にコンタミCが定着することを阻止できれば、必ずしもコンタミCが深溝22内に移動しなくてもよい。
【0047】
また、低圧側に動圧発生機構14が連通して設けられており、静止密封環10と回転密封環20との相対回転時において、動圧発生機構14に進入した被密封液体Fを引き込んで動圧が発生しているので、摺動面11の低圧側まで被密封液体Fを供給しても、被密封液体Fを回収して動圧発生機構14により摺動面11,21間に戻すことができるため、摺動面11の広い面積で潤滑性を向上させることができる。
【0048】
また、動圧発生機構14と深溝22とが同一方向を向くように延設されている。具体的には、静止密封環10の摺動面11と回転密封環20の摺動面21とを対向させたときに、動圧発生機構14と深溝22とが同一方向を向くように配置される鏡像関係となっているため、動圧発生機構14と深溝22とが軸方向視で重なったときに、動圧発生機構14と深溝22とを広い領域で連通させることができる。これによれば、動圧発生機構14の壁部14a近傍だけでなく、動圧発生機構14の壁部14aよりも上流側も深溝22に連通するため、動圧発生機構14の壁部14a近傍に到達する前のコンタミCも動圧発生機構14から深溝22に移動させることができる。
【0049】
また、軸方向視における深溝22の幅寸法L22は、動圧発生機構14の幅寸法L20よりも長く形成されている。これによれば、深溝22が1つの動圧発生機構14上を横切るまでにかかる時間、すなわち深溝22と該動圧発生機構14とが軸方向に連通する時間を長く確保できるので、動圧発生機構14内のコンタミCを深溝22内に流出させやすい。また、動圧発生機構14と深溝22との間に絞りとなる段差が形成されることを回避できるので、動圧発生機構14から深溝22に移動するコンタミCが前記段差に引っ掛かることなく、コンタミCを深溝22にスムーズに移動させることができる。
【0050】
また、深溝22は動圧発生機構14の全領域に重なるので、動圧発生機構14と深溝22との連通領域を最大限確保することができ、動圧発生機構14内のコンタミCを深溝22に流入させやすい。
【0051】
また、動圧発生機構14の離間寸法L21が深溝22の幅寸法L22よりも大きいので、隣接する2つの動圧発生機構14が深溝22に同時に連通することが回避され、動圧発生機構14と深溝22とが連通したときの深溝22内の圧力と動圧発生機構14内の圧力との差圧を確実に発生させることができる。
【0052】
また、深溝22は動圧発生機構14よりも少ない個数であるため、静止密封環10及び回転密封環20の相対回転時において、動圧発生機構14と深溝22とが連通しない領域を広く確保できる。言い換えれば、深溝22の開口面の総面積は動圧発生機構14の開口面の総面積よりも小さい。すなわち、静止密封環10及び回転密封環20の相対回転時において、動圧発生機構14と深溝22とが軸方向視で重ならない状態を確保することができ、動圧発生機構14と深溝22とが軸方向視で重ならないときには、動圧発生機構14内で動圧が発生するため、摺動面11,21同士を離間させる機能が低下することを回避でき、摺動面11,21間の潤滑性を維持できる。
【0053】
尚、本実施例1では、深溝22の数量が4つである形態を例示したが、動圧発生機構14及び深溝22の個数は自由に変更でき、好ましくは、深溝22の個数は動圧発生機構14の個数の半分以下であればよい。
【0054】
また、深溝22は回転する回転密封環20に形成されており、該深溝22及び静止密封環10に形成される動圧発生機構14は外径側に連通している。すなわち、摺動面11,21の内径側から外径側に向かって漏れようとする被密封液体Fを密封するアウトサイド形のメカニカルシールであり、遠心力により深溝22内に流入したコンタミCを深溝22の外径側の連通部22bから大気側に排出することができ、深溝22内にコンタミCが堆積することを抑制できる。
【0055】
さらに、深溝22の連通部22bは、回転密封環20の回転方向とは反対方向を向くので、遠心力により深溝22内に流入したコンタミCを含む被密封液体Fを深溝22の外径側の連通部22bから大気側に排出させやすい。
【0056】
また、静止密封環10の摺動面11には、動圧発生機構14よりも高圧側に配置され動圧発生機構14とは独立する特定動圧発生機構16が設けられている。これによれば、静止密封環10及び回転密封環20の相対回転時に、特定動圧発生機構16により摺動面11,21間を離間させて摺動面11,21間に適当な液膜を生成しつつ、動圧発生機構14によって被密封液体Fの低圧側への漏れを低減できる。
【0057】
尚、本実施例1では、動圧発生機構14を静止密封環10に設け、深溝22を回転密封環20に設ける例について説明したが、動圧発生機構14を回転密封環20に、深溝22を回転密封環20に設けてもよく、静止密封環10と回転密封環20の両方に動圧発生機構14及び深溝22を設けてもよい。
【0058】
また、本実施例1では、軸方向視で動圧発生機構14と深溝22とが重なったときに、深溝22が動圧発生機構14の全領域に重なる形態を例示したが、動圧発生機構14と深溝22とが一部のみ重なるようになっていてもよい。例えば、動圧発生機構14と深溝22とが摺動面11,21を重ね合わせたときに異なる方向を向くようになっていてもよい。好ましくは、深溝22の径方向の長さが動圧発生機構14と同等以上に形成されていればよい。
【0059】
また、本実施例1では、特定動圧発生機構16が静止密封環10の摺動面11に形成されている形態を例示したが、回転密封環20の摺動面21に形成されていてもよい。
【実施例2】
【0060】
次に、実施例2に係る摺動部品につき、図10及び図11を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0061】
図10(a)に示されるように、動圧発生機構141は、大気側に連通して内径方向に延びる液体誘導溝部142と、液体誘導溝部142の内径側端部から下流側に向けて静止密封環10と同心状に周方向に延びる浅溝部としてのレイリーステップ143と、液体誘導溝部142の内径側端部から上流側に向けて静止密封環10と同心状に周方向に延びる浅溝部としての逆レイリーステップ144と、を備えている。すなわち、動圧発生機構141は、摺動面11を直交する方向から見てT字形状を成している。
【0062】
液体誘導溝部142の深さ寸法は100μmに形成されており、レイリーステップ143及び逆レイリーステップ144の深さ寸法は1μmに形成されている。すなわち、液体誘導溝部142とレイリーステップ143及び逆レイリーステップ144との間には、深さ方向の段差18が形成されている。また、液体誘導溝部142の径方向の長さ寸法L40は2mmに形成されている。
【0063】
一方、図10(b)に示されるように、深溝221は大気側に連通して内径方向に直交するように延びている。深溝221の径方向の長さ寸法L50は液体誘導溝部142の径方向の長さ寸法L40と同じ2mmに形成されている。
【0064】
図11(a)の実線矢印で示す紙面反時計回りに回転密封環20が回転する場合には、低圧側流体Aが矢印L3,L4,L5の順に移動してレイリーステップ143内に動圧が発生する。このとき、深溝221が軸方向視においてレイリーステップ143の終端である壁部143a近傍に重なったときに、レイリーステップ143の壁部143a近傍に集まったコンタミCが深溝221に移動し低圧側に排出される。
【0065】
また、図11(b)の点線矢印で示す紙面時計回りに回転密封環20が回転する場合には、低圧側流体Aが矢印L3,L4’,L5’の順に移動して逆レイリーステップ144内に動圧が発生する。このとき、深溝221が軸方向視において逆レイリーステップ144の終端である壁部144a近傍に重なったときに、逆レイリーステップ144の壁部144a近傍に集まったコンタミCが深溝221に移動し低圧側に排出される。すなわち、図10(b)の紙面時計回りに回転密封環20が回転する場合には、逆レイリーステップ144がレイリーステップとして機能し、レイリーステップ143が逆レイリーステップとして機能する。
【0066】
このように、液体誘導溝部142から周方向両側にレイリーステップ143及び逆レイリーステップ144が延設されており、レイリーステップ143及び逆レイリーステップ144のいずれか一方を動圧発生用の浅溝部として利用できるため、静止密封環10と回転密封環20との相対回転方向に関わらず使用できる。
【0067】
また、深溝221の径方向の長さ寸法L50は液体誘導溝部142の径方向の長さ寸法L40と同じ寸法に形成されているので、深溝221がレイリーステップ143及び逆レイリーステップ144の径方向に亘って連通するため、コンタミCが深溝221に移動しやすい。
【0068】
次いで、特定動圧発生機構の変形例を説明する。図12(a)に示すように、変形例1の特定動圧発生機構は、摺動面11を直交する方向から見て円形を成す凹形状のディンプル30である。尚、ディンプル30の形状、数量、配置などは自由に変更することができる。尚、変形例1の特定動圧発生機構は実施例1、2に採用し得る。
【0069】
また、図12(b)に示すように、変形例2の特定動圧発生機構は、径方向に向けて傾斜しながら円弧状に延びる円弧溝31である。具体的には、円弧溝31は、動圧発生機構14と同じ個数設けられており、内径側の端部が高圧側に連通し、外径側の端部が動圧発生機構14の内径側の端部よりも内径側に離間して配置されている。すなわち、円弧溝31の外径側の端部と動圧発生機構14の内径側の端部とはランド12により区画されている。尚、円弧溝31の大きさ、数量、配置などは自由に変更することができる。尚、変形例2の特定動圧発生機構は実施例1、2も採用し得る、実施例2に採用する場合には円弧溝の半数は他の半数の円弧溝と反対方向に傾斜していることが好ましい。
【0070】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0071】
例えば、前記実施例1,2では、摺動部品として、一般産業機械用のメカニカルシールを例に説明したが、自動車やウォータポンプ用等の他のメカニカルシールであってもよい。また、メカニカルシールに限られず、すべり軸受などメカニカルシール以外の摺動部品であってもよい。
【0072】
また、前記実施例1,2では、摺動面11,21の内径側から外径側に向かって漏れようとする被密封液体Fを密封するアウトサイド形のメカニカルシールを例に挙げ説明したが、摺動面の外径側から内径側に向かって漏れようとする被密封液体Fを密封するインサイド形のメカニカルシールであってもよい。尚、インサイド形のメカニカルシールであっても、前記実施例1のように、動圧発生機構が片回転に対応する弧状に形成されていてもよいし、前記実施例2の動圧発生機構を適用してもよい。また、特定動圧発生機構が図11のように形成されていてもよい。
【0073】
また、前記実施例1,2では、摺動部品に同一形状の動圧発生機構が複数設けられる形態を例示したが、形状の異なる動圧発生機構が複数設けられていてもよい。また、動圧発生機構の間隔や数量などは適宜変更できる。
【0074】
また、特定動圧発生機構は必ずしも設けられる必要はなく、特定動圧発生機構の構成を省略してもよい。
【0075】
また、図13に示される変形例3のように、メカニカルシールは、動圧発生機構241及び深溝222が高圧側に連通するものであってもよい。この場合であっても、動圧発生機構241と深溝222との圧力差により動圧発生機構241から深溝222に向かう液体の流れが生じ、動圧発生機構241内のコンタミCを深溝222側に移動させることができる。また、動圧発生機構241と深溝222とが常に被密封液体Fにより満たされており、動圧発生機構241と深溝222とが連通したときに生じる被密封液体Fは動圧発生機構241から深溝222に向けて流れるため、深溝222に移動したコンタミCが動圧発生機構241側へ戻ることが抑制されている。尚、変形例3の動圧発生機構、深溝の連通対象は、実施例1、2にも採用し得る。
【0076】
また、被密封流体側を高圧側、漏れ側を低圧側として説明してきたが、被密封流体側が低圧側、漏れ側が高圧側となっていてもよいし、被密封流体側と漏れ側とは略同じ圧力であってもよい。
【0077】
また、前記実施例1,2及び変形例1~3では、被密封流体が液体である形態を例示したが、被密封流体は、気体であってもよいし、液体と気体が混合したミスト状であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 静止密封環(一方の摺動部品)
11 摺動面
12 ランド
14 動圧発生機構(浅溝部)
16 特定動圧発生機構
20 回転密封環(他方の摺動部品)
21 摺動面
22 深溝
23 ランド
30 ディンプル(特定動圧発生機構)
31 円弧溝(特定動圧発生機構)
141 動圧発生機構
143 レイリーステップ(浅溝部)
144 逆レイリーステップ(浅溝部)
221 深溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13