(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】液体の殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/04 20060101AFI20231018BHJP
C02F 1/02 20230101ALI20231018BHJP
A23L 3/22 20060101ALN20231018BHJP
【FI】
A61L2/04
C02F1/02 C
A23L3/22
(21)【出願番号】P 2022040754
(22)【出願日】2022-03-15
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000157946
【氏名又は名称】岩井機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 充博
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-225468(JP,A)
【文献】特開2014-184384(JP,A)
【文献】特開2008-188541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00
C02F 1/00
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流通する液体を予め設定された殺菌温度に加熱することで殺菌する液体の殺菌装置であって、
流通する液体を
熱溶媒である加熱用温水で加熱する
熱交換器と、
前記液体を流通させるための流通ポンプと、
任意に設定された設定周波数に応じて前記流通ポンプが備えるモータを制御するインバータと、
前記設定周波数を変更することで前記液体の流量を調整する流量調整部と、
前記加熱用温水を供給するための供給ポンプと、任意に設定された設定周波数に応じて前記供給ポンプが備えるモータを制御するインバータと、を備え、前記加熱用温水を予め設定された設定温度として前記
熱交換器に供給する温水供給部と、
を備え、
前記流量調整部は、
前記流通ポンプが備える前記モータを制御する前記インバータに対して、前記設定周波数を第1周波数から第2周波数に変更する際、前記第1周波数と前記第2周波数とに基づいて所定時間後の変更周波数を演算し、前記設定周波数を前記第1周波数から前記変更周波数を介して段階的に前記第2周波数まで変化させ、
前記供給ポンプが備える前記モータを制御する前記インバータに対して、前記設定周波数を第1周波数から第2周波数に変更する際、前記第1周波数と前記第2周波数とに基づいて所定時間後の変更周波数を演算し、前記設定周波数を前記第1周波数から前記変更周波数を介して段階的に前記第2周波数まで変化させ、
さらに、複数の登録周波数を記憶し、複数の前記登録周波数から選択されたものを前記設定周波数として前記流通ポンプが備える前記モータを制御する前記インバータ及び前記供給ポンプが備える前記モータを制御する前記インバータに出力する制御装置を備え、
前記流量調整部は、前記流通ポンプが備える前記モータを制御する前記インバータ、及び前記供給ポンプが備える前記モータを制御する前記インバータに対して、一定時間毎の前記変更周波数を演算し、前記設定周波数を前記第1周波数から前記変更周波数を介して複数段階で前記第2周波数まで変化させる
ことを特徴とする液体の殺菌装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の液体の殺菌装置であって、
前記流量調整部は、前記流通ポンプが備える前記モータを制御する前記インバータ、及び前記供給ポンプが備える前記モータを制御する前記インバータに対して、1秒毎の前記変更周波数を演算し、前記設定周波数を前記第1周波数から前記変更周波数のそれぞれを介して前記第2周波数まで変化させる
ことを特徴とする液体の殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水、牛乳等の液体を所定の殺菌温度に加熱することで、液体の殺菌を行う液体の殺菌装置に関し、より具体的には、インバータを介してポンプが備えるモータの回転数を制御することで、液体の流量を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の殺菌装置としては、例えば、殺菌対象である液体を所定温度に加熱することで殺菌するものが知られている。また、この種の殺菌装置では、インバータ制御によりポンプの回転数(モータの回転数)を制御することで、液体食品を含む各種液体の流量を調整するものがある(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
すなわち液体の殺菌装置には、インバータ制御によりポンプの回転数(モータの回転数)を制御して液体の流量を調整する流量可変制御システムを含んで構成されているものがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、飲食用流体等の液体の殺菌に用いられる殺菌装置において、液体を移送するための移送用ポンプと、移送用ポンプの回転数(インバータの周波数)を調節する流量制御部とを備え、この流量制御部により、液体の流量が所定の値となるように移送用ポンプの回転数を調節することが記載されている。
【0005】
このような殺菌装置においてポンプの回転数を調節する場合、例えば、インバータに予め登録された周波数(以下、登録周波数という)を切り替えることで液体の流量を変化させる。例えば、ポンプを制御する制御部には、登録周波数が複数段階(数段階程度)で記憶されている。液体の流量を変更する際には、例えば、作業者がこれら複数段階の登録周波数の一つを選択すると、制御部がインバータの周波数を現在の周波数から選択した登録周波数に変更する。また液体の流量を大きく変化させる場合、制御部は、インバータの周波数を複数段階の登録周波数を経て最終的に選択された登録周波数まで変化させる。これにより液体の流量が増減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、制御部に記憶される登録周波数の数は限られるため、各登録周波数の変化幅が比較的大きくなる。したがって、例えば、インバータの周波数を複数の登録周波数の中で最も近いものに変更する場合でも、つまりインバータの周波数を1段階変化させる場合でも、その変化幅は比較的大きくなる。このため、インバータの周波数を1段階変化させた場合でも、液体の流量が安定するまでにある程度の時間が必要となる。
【0008】
このため、インバータの周波数を変更する際には、1段階変化させる毎に、殺菌装置の運転状態(液体の流量、温度、圧力等)を安定させるための待機時間が必要となり、インバータの周波数の変更に時間がかかってしまうという問題がある。特に、液体の流量を大きく変化させる場合には、周波数を複数段階で変更し、各段階で待機時間が必要となるため、流量変化に比較的長い時間を要する。その結果、殺菌装置における液体の殺菌時間が比較的長くなってしまう虞がある。
【0009】
なおこのような問題は、液体の殺菌装置だけでなく、ポンプのインバータを制御することで、各種液体の流量を調整する流量制御システムにおいては同様に存在する。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、液体の殺菌時間の短縮を図る
ことができる液体の殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の一つの態様は、 流通する液体を予め設定された殺菌温度に加熱することで殺菌する液体の殺菌装置であって、流通する液体を熱溶媒である加熱用温水で加熱する熱交換器と、前記液体を流通させるための流通ポンプと、任意に設定された設定周波数に応じて前記流通ポンプが備えるモータを制御するインバータと、前記設定周波数を変更することで前記液体の流量を調整する流量調整部と、前記加熱用温水を供給するための供給ポンプと、任意に設定された設定周波数に応じて前記供給ポンプが備えるモータを制御するインバータと、を備え、前記加熱用温水を予め設定された設定温度として前記熱交換器に供給する温水供給部と、を備え、前記流量調整部は、前記流通ポンプが備える前記モータを制御する前記インバータに対して、前記設定周波数を第1周波数から第2周波数に変更する際、前記第1周波数と前記第2周波数とに基づいて所定時間後の変更周波数を演算し、前記設定周波数を前記第1周波数から前記変更周波数を介して段階的に前記第2周波数まで変化させ、前記供給ポンプが備える前記モータを制御する前記インバータに対して、前記設定周波数を第1周波数から第2周波数に変更する際、前記第1周波数と前記第2周波数とに基づいて所定時間後の変更周波数を演算し、前記設定周波数を前記第1周波数から前記変更周波数を介して段階的に前記第2周波数まで変化させ、さらに、複数の登録周波数を記憶し、複数の前記登録周波数から選択されたものを前記設定周波数として前記流通ポンプが備える前記モータを制御する前記インバータ及び前記供給ポンプが備える前記モータを制御する前記インバータに出力する制御装置を備え、前記流量調整部は、前記流通ポンプが備える前記モータを制御する前記インバータ、及び前記供給ポンプが備える前記モータを制御する前記インバータに対して、一定時間毎の前記変更周波数を演算し、前記設定周波数を前記第1周波数から前記変更周波数を介して複数段階で前記第2周波数まで変化させることを特徴とする液体の殺菌装置にある。
【0014】
さらに前記流量調整部は、前記流通ポンプが備える前記モータを制御する前記インバータ、及び前記供給ポンプが備える前記モータを制御する前記インバータに対して、1秒毎の前記変更周波数を演算し、前記設定周波数を前記第1周波数から前記変更周波数のそれぞれを介して前記第2周波数まで変化させることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
かかる本発明によれば、インバータの出力周波数を、演算により求めた変更周波数を介して設定周波数まで変化させるようにしたので、出力周波数を設定周波数まで比較的直線的にスムーズに変化させることができる。すなわち出力周波数を変化させた際に、液体の流量を安定させるための待機時間を短縮することができる。これにより、液体の流量変化に要する時間を短縮することができる。その結果、殺菌装置において、液体の殺菌時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る殺菌装置の構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る殺菌装置の制御部の構成を説明するブロック図である。
【
図4】本発明に係る流量調整手段による出力周波数の変更手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
まずは、本発明に係る殺菌装置の概略構成について説明する。本発明に係る殺菌装置は、各種液体、例えば、飲料等の液体食品、を充填する充填機の前工程として設けられ、液体食品の殺菌(あるいは滅菌)を行う装置である。
【0020】
図1は、本実施形態に係る殺菌装置10の全体構成を示す概略図であり、
図2は、殺菌装置が備える制御部の構成を説明するためブロック図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る液体の殺菌装置10は、バランスタンク20と、第1加熱部30及び第2加熱部40と、ホールディングチューブ(HTU)50と、第1冷却部60、第2冷却部70及び第3冷却部80と、アセプティックサージタンク(ACT)90と、を備え、これらが流通管路101~107によって直列に接続されて構成されている。
【0022】
さらに、バランスタンク20と第1加熱部30とを接続する流通管路101には、第1流通ポンプ110が設けられ、第1加熱部30と第2加熱部40とを接続する流通管路102には、第2流通ポンプ120が設けられている。バランスタンク20内の液体食品は、これら第1流通ポンプ110及び第2流通ポンプ120を動力源として流通管路101~107内を流通する。また詳しくは後述するが、殺菌装置10は、これら第1流通ポンプ110及び第2流通ポンプ120に接続される制御装置200を備えている。
【0023】
バランスタンク20は、前工程P1から供給される液体食品が貯留される。例えば、前工程P1において調合装置によって調合された未殺菌状態の液体食品が、バランスタンク20に貯留される。第1加熱部30及び第2加熱部40は、バランスタンク20から供給される液体食品を予め設定された殺菌温度(第1温度)まで加熱する。なお殺菌温度である第1の温度は、殺菌する液体食品の種類によって異なり、殺菌する液体食品に応じて設定される。
【0024】
第1加熱部30及び第2加熱部40は、具体的には、いわゆるシェル&チューブ式の熱交換器で構成され、この熱交換器によって液体食品を第1温度まで順次加熱する。例えば、第1加熱部30には、5℃程度の温度の液体食品がバランスタンク20から流通管路101を介して供給され、第1加熱部30において液体食品を加熱して80℃程度の温度まで上昇させる。第2加熱部40には、第1加熱部30にて加熱された液体食品が流通管路102を介して供給され、第2加熱部40では、この液体食品をさらに加熱し、第1温度である130℃程度の温度まで上昇させる。
【0025】
ホールディングチューブ(HTU)50は、第2加熱部40によって加熱されて流通管路103を介して供給される液体食品の温度を保持して当該液体食品の殺菌を行うためのものである。このホールディングチューブ50は公知の構成であるため、ここでの説明は省略する。なお流通管路103には、ホールディングチューブ50に供給される液体食品の温度を計測する温度計130が配置されている。
【0026】
第1冷却部60、第2冷却部70及び第3冷却部80は、ホールディングチューブ50にて殺菌された液体食品を予め設定された第2温度(<第1温度)まで冷却する。これら第1冷却部60、第2冷却部70及び第3冷却部80は、第1加熱部30等と同様に、いわゆるシェル&チューブ式の熱交換器で構成され、これらの熱交換器によって液体食品を冷却する。
【0027】
例えば、第1冷却部60にはホールディングチューブ50にて殺菌された130℃程度の温度の液体食品が流通管路104を介して供給され、この液体食品を99℃程度の温度まで冷却する。第2冷却部70には、第1冷却部60で冷却された液体食品が流通管路105を介して供給され、第2冷却部70では、この液体食品を25℃程度の温度までさらに冷却する。第3冷却部80には、第2冷却部70で冷却された液体食品が流通管路106を介して供給され、第3冷却部80では、この液体食品を3℃程度の温度まで冷却する。そして第3冷却部80で冷却された液体食品は流通管路107を介してアセプティックサージタンク90に一次的に貯留される。なお流通管路107には、液体食品の流量を計測する流量計135が設けられている。アセプティックサージタンク90に貯留された液体食品は、次工程P2に用いられる。次工程P2では、例えば、充填機によって液体食品を所定の容器に充填する。
【0028】
またアセプティックサージタンク90は、戻し管路108を介してバランスタンク20に接続されている。殺菌装置10は、例えば、充填機等で実施される次工程P2が何らかの理由で停止した場合でも、システムの事情により液体処理を停止することが難しい。このため、次工程P2が停止した場合、流通管路107を介してアセプティックサージタンク90に供給された液体食品は、戻し管路108を介してバランスタンク20に戻されて殺菌装置10内を循環する。すなわち次工程P2が停止した場合、殺菌装置10は運転状態から循環待機状態に移行する。また次工程P2の停止時間が比較的長くなる場合等には、殺菌装置10内の液体食品を廃棄して水に切り換え、循環待機状態において殺菌装置10内に水を循環させることもある。
【0029】
また殺菌装置10は、熱交換器で構成される第1加熱部30に所定温度の加熱用温水を供給する温水供給部としての第1温水装置140と、第2加熱部40に加熱用温水を供給する温水供給部としての第2温水装置150と、を備えている。
【0030】
第1温水装置140で所定温度に加熱された熱溶媒である加熱用温水は、第1管路161を介して第1加熱部30に供給される。また第1加熱部30にて液体食品の加熱に用いられて温度が低下した加熱用温水は、第1管路162を介して第2冷却部70に供給されて液体食品の冷却に利用される。第2冷却部70で温度が上昇した加熱用温水は、第1管路163を介して第1温水装置140に戻されて所定温度に加熱された後、再び第1加熱部30に向けて送出される。
【0031】
また第2温水装置150で所定温度に加熱された熱溶媒である加熱用温水は、第2管路164を介して第2加熱部40に供給される。また第2加熱部40にて液体食品の加熱に用いられて温度が低下した加熱用温水は、第2管路165を介して第1冷却部60に供給されて液体食品の冷却に利用される。第1冷却部60で温度が上昇した加熱用温水は、第2管路166を介して第2温水装置150に戻されて所定温度に加熱された後、再び第2加熱部40に送出される。
【0032】
第1温水装置140は、第1供給ポンプ141を備え、この第1供給ポンプ141を動力源として第1加熱部30に加熱用温水を供給する。また第2温水装置150は、第2供給ポンプ151を備え、この第2供給ポンプ151を動力源として第2加熱部40に加熱用温水を供給する。
【0033】
このように本実施形態に係る殺菌装置10は、第1温水装置140で所定温度とされた加熱用温水が第1加熱部30及び第2冷却部70を介して循環するように構成され、第2温水装置150で所定温度とされた加熱用温水が第2加熱部40及び第1冷却部60を介して循環するように構成されている。なお第3冷却部80には、図示しない冷水装置から所定温度に冷却された冷却水が供給される。
【0034】
制御装置200は、このような殺菌装置10が備える各種機器を包括的に制御する。本実施形態に係る制御装置200は、CPU及びメモリ等を備えて構成され、殺菌装置10を構成する機器類、例えば、第1流通ポンプ110、第2流通ポンプ120等の作動機器の他、温度計130、流量計135等の計測機器とネットワーク接続されており、メモリに記憶されたラダープログラムを読み取り実行する。すなわち制御装置200は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)を含んで構成されている。なおPLCは、シーケンサとも称される。
【0035】
ここで、第1流通ポンプ110は、モータ111と、任意に設定された設定周波数に応じてモータ111を制御するインバータ112と、を備えている。同様に、第2流通ポンプ120は、モータ121と、設定周波数に応じてモータ121を制御するインバータ122と、を備えている。これらインバータ112,122は、制御装置200に接続されており、以下に詳しく説明するように、制御装置200によってインバータ112,122の設定周波数が適宜変更される。
【0036】
設定周波数は、任意に設定される値であるが、本実施形態では、制御装置200に登録されている複数の登録周波数から適宜選択され、選択された登録周波数が制御装置200からインバータ112,122に設定周波数として適宜出力される。なお複数の登録周波数は、インバータ112,122自体に登録されていてもよい。
【0037】
また制御装置200と各種機器とは、CC-Link(登録商標)等の通信プロトコルを用いて専用の通信ケーブルで通信を行うことができる。例えば、制御装置200とインバータ112,122とは、それぞれ専用ケーブルで接続されており、両者間の通信はこの専用ケーブルのみで行うことができる。
【0038】
制御装置200は、装置の動作状況等に応じて液体の流量を調整する流量調整部210を備えている。この流量調整部210は、第1流通ポンプ110のインバータ112及び第2流通ポンプ120のインバータ122の設定周波数を変更することで、装置内を流通する液体食品が所定流量となるように調整する。すなわち流量調整部210は、殺菌装置10の動作状況等に応じて、制御装置200に登録されている複数の登録周波数から適切な一つを選択し、選択した登録周波数を新たな設定周波数として設定する。
【0039】
なお設定周波数は、必ずしも流量調整部210が変更する必要ない。例えば、流量調整部210がインバータ112,122に対し設定周波数の変更を指示し、インバータ112,122にて設定周波数を適宜変更するようにしてもよい。また設定周波数は、殺菌装置10の動作状況等に応じて、作業者が手動でその都度変更するようにしてもよい。
【0040】
流量調整部210によりインバータ112,122の設定周波数が変更されると、インバータ112,122は、変更された設定周波数に応じてモータ111,121を制御する。これにより、装置内を流通する液体(例えば、液体食品)の流量が所定流量となるように調整される。
【0041】
本実施形態に係る殺菌装置10では、上述のように次工程P2が停止して殺菌装置10が運転状態から循環待機状態に移行する場合には、液体食品の流量又は液体食品から切り換えられた水の流量が、運転状態における液体食品の流量の50%~60%程度となるようにし、循環待機状態におけるエネルギー消費量を抑制している。
【0042】
流量調整部210は、殺菌装置10が運転状態から循環待機状態に移行する場合には、インバータ112,122の設定周波数を、現在の周波数よりも低い値に変更する。すなわち流量調整部210は、複数の登録周波数から現在の周波数よりも低い所定の登録周波数を選択し、選択した登録周波数を新たな設定周波数として設定する。一方、殺菌装置10が循環待機状態から運転状態に移行する場合には、流量調整部210は、インバータ112,122の設定周波数を、現在の周波数よりも高い値に変更する。すなわち流量調整部210は、複数の登録周波数から現在の周波数よりも高い所定の登録周波数を選択し、選択した登録周波数を新たな設定周波数として設定する。
【0043】
このように流量調整部210によって設定周波数が変更されると、インバータ112,122は、変更された設定周波数に応じてモータ111,121を制御する。これにより、装置内を流通する液体の流量が適切に調整される。なお流量調整部210は、流通管路101~107を流通する液体の流量を、流通管路107に設置された流量計135から取得する。
【0044】
また流量調整部210は、このようにインバータ112,122の設定周波数を、現在の設定周波数である第1周波数から第2周波数に変更する際、これら第1周波数と第2周波数とに基づいて所定時間後の変更周波数を演算し、設定周波数を第1周波数から変更周波数を介して段階的に第2周波数まで変化させる。
【0045】
本実施形態に係る流量調整部210は、一定時間毎の変更周波数を演算し、インバータ112,122に対して一定時間毎に変更周波数を順次出力し、設定周波数を第1周波数から各変更周波数を介して第2周波数まで変化させる。流量調整部210が変更周波数を出力する間隔は、特に限定されないが、1秒程度とすることが好ましい。つまり流量調整部210は、1秒毎の変更周波数を演算し、設定周波数を第1周波数から変更周波数のそれぞれを介して第2周波数まで変化させることが好ましい。このように設定周波数が第1周波数から第2周波数まで変更される間、インバータ112,122は、変更された各変更周波数に応じてモータ111,121を適宜制御する。
【0046】
例えば、
図3のグラフに示すように、インバータ112の設定周波数Xを、時刻t1から時刻t2までの間に第1周波数X1(Hz)から第2周波数X2(Hz)まで変更する場合、つまり変更時間t3(s)でインバータ112の設定周波数Xを第1周波数X1(Hz)から第2周波数X2(Hz)まで変更する場合、
図4のフローチャートに示すように、流量調整部210は、まずは1秒当たりの周波数変化値fを算出する(ステップS1)。
【0047】
次いで、設定周波数Xの現在(時刻t1)の値である第1周波数X1に周波数変化値fを加算して1秒後の変更周波数Z1を算出する(ステップS2)。さらに周波数変化値fを1秒ごとに加算することで、T秒後の変更周波数Znまで1秒ごとの変更周波数Z2~Znを演算する(ステップS3)。そして流量調整部210は、設定周波数Xの現在値である第1周波数X1をこれらの各変更周波数Z1~Znを介して第2周波数X2まで段階的に変化させる(ステップS4)。すなわち流量調整部210は、インバータ112に対し、設定周波数Xとして1秒毎に変更周波数Z1からZnまでを順次出力(設定)する。
【0048】
例えば、第1周波数X1が30(Hz)であり、第2周波数X2が60(Hz)であり、変更時間t3が300(s)である場合、周波数変化値fは0.1(Hz/s)となる。流量調整部210は、第1周波数30(Hz)に、300秒間、1秒毎に0.1(Hz)を加算して変更周波数Z1~Z300を演算する。その後、流量調整部210は、インバータ112の設定周波数Xを1秒毎に変更周波数Z1からZ300まで段階的に変化(増加)させる(ステップS4)。これにより設定周波数Xの変更が完了する。
【0049】
このような手順で、設定周波数Xを第1周波数X1から第2周波数X2に変更することで、インバータ112,122の設定周波数を比較的直線的にスムーズに変化させることができる。すなわち設定周波数を第1周波数X1から第2周波数X2まで変更する際、流通管路101~107内の液体の流動を安定させるための待機時間を短縮することができる。したがって液体の流量変化に要する時間を短縮することができ、ひいては殺菌装置10における液体食品の殺菌時間を短縮することができる。
【0050】
さらには、より大きな流量変化幅に対応することができるようになり、それに伴い、従来より小流量での運転も可能となる。したがって、エネルギー消費量の削減を図ることもできる。
【0051】
なお、このようにインバータ112の設定周波数Xを第1周波数X1から第2周波数X2まで変更する場合、演算により求めた変更周波数Znは、第2周波数X2と実質的に一致する。したがって、基本的には設定周波数Xを変更周波数Znまで段階的に変更することで、設定周波数Xの第2周波数X2への変更は完了する。ただし、演算で求められる変更周波数Znは、実際の第2周波数X2に対して多少の誤差が生じる虞がある。このため、設定周波数Xを変更周波数Znまで変更した後、さらに、設定周波数Xを第2周波数X2に変更することが好ましい。
【0052】
また本実施形態では、流量調整部210は、上述のように流通管路101~107を流通する液体食品が所定流量となるように調整すると共に、第1温水装置140によって第1管路161~163を流通する液体(加熱用温水)及び第2温水装置150によって第2管路164~166を流通する液体(加熱用温水)の流量も調整する。
【0053】
第1温水装置140の第1供給ポンプ141は、モータ142と、モータ142を制御するインバータ143とを備えている。同様に、第2温水装置150の第2供給ポンプ151は、モータ152と、モータ152を制御するインバータ153とを備えている。流量調整部210は、装置の作動状況等に応じて、インバータ143,153の設定周波数を現在の値である第1周波数から第2周波数に変更する。インバータ143,153は変更された設定周波数(第2周波数)に応じてモータ142,152を適宜制御する。これにより第1管路161~163や第2管路164~166を流通する加熱用温水の流量が調整される。
【0054】
その際、流量調整部210は、インバータ143,153の現在の設定周波数である第1周波数と第2周波数とに基づいて所定時間後の変更周波数を演算し、インバータ143,153の設定周波数を第1周波数から変更周波数を介して段階的に第2周波数まで変化させる。
【0055】
これにより第1温水装置140においてインバータ143の設定周波数を第1周波数から第2周波数に変更して加熱用温水の流量を調整する際、第1管路161~163内の加熱用温水の流動の安定化を図ることができる。同様に、第2温水装置150においてインバータ153の設定周波数を第1周波数から第2周波数に変更して加熱用温水の流量を調整する際、第2管路164~166内の加熱用温水の流動の安定化を図ることができる。
【0056】
なお本実施形態では、流量調整部210が、第1流通ポンプ110のインバータ112及び第2流通ポンプ120のインバータ122の設定周波数を変更すると共に、第1供給ポンプ141のインバータ143及び第2供給ポンプ151のインバータ153の設定周波数を変更するように構成されていたが、流量調整部210の構成は、これに限定されるものではない。流量調整部210は、例えば、第1流通ポンプ110のインバータ112及び第2流通ポンプ120のインバータ122のみの設定周波数を変更する構成であってもよく、あるいは第1供給ポンプ141のインバータ143及び第2供給ポンプ151のインバータ153の設定周波数のみを変更する構成であってもよい。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。
【0058】
例えば、上述の実施形態では、液体(液体食品)の殺菌装置を例示して本発明を説明したが、本発明は、殺菌装置以外にも適用することができる。すなわち本発明は、液体を流通させるためのポンプと、任意に設定された設定周波数に応じてポンプが備えるモータを制御するインバータと、設定周波数を変更することで液体の流量を調整する流量調整部と、を備え、液体の流量を制御する各種の流量可変制御システムに対して適用可能なものである。
【符号の説明】
【0059】
10…殺菌装置、 20…バランスタンク(BT)、 30…第1加熱部、 40…第2加熱部、 50…ホールディングチューブ(HTU)、 60…第1冷却部、 70…第2冷却部、 80…第3冷却部、 90…アセプティックサージタンク(ACT)、 101~107…流通管路、 108…戻し管路、 110…第1流通ポンプ、 111…モータ、 112 インバータ、 120…第2流通ポンプ、 121…モータ、 122…インバータ、 130…温度計、 135…流量計、 140…第1温水装置、 141…第1供給ポンプ、 142…モータ、 143…インバータ、 150…第2温水装置、 151…第2供給ポンプ、 152…モータ、 153…インバータ、 161~163…第1管路、 164~166…第2管路、 200…制御装置、 210…流量調整部、 P1…前工程、 P2…次工程