(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】霧化状態識別方法、装置、電子機器及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
A61M 11/04 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
A61M11/04 300Z
(21)【出願番号】P 2022176867
(22)【出願日】2022-11-04
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】202111506032.5
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522331161
【氏名又は名称】深▲せん▼摩尓霧化健康医療科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shenzhen Moore Vaporization Health & Medical Technology Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陽 勝
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3230353(JP,U)
【文献】国際公開第2014/083594(WO,A1)
【文献】特開2012-165848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
霧化器の霧化シートの昇温速度を取得することと、
前記昇温速度に基づいて、前記霧化器の霧化状態を判断することと、を含
み、
前記昇温速度に基づいて、前記霧化器の霧化状態を判断することは、具体的には、
予め定められた霧化時間内の前記昇温速度の変化傾向を取得することと、
前記予め定められた霧化時間内に前記昇温速度が上昇傾向にあることに応答して、前記霧化シートが異常であるか、又は前記霧化器が空焚き状態にあると判定することと、
前記予め定められた霧化時間内に前記昇温速度が下降傾向にあることに応答して、前記予め定められた霧化時間内に前記霧化器が安定した霧化区間に入ったと判定することと、を含む霧化状態識別方法。
【請求項2】
前記予め定められた霧化時間の後に前記霧化器が安定した霧化区間に入ったと判定した後、
前記安定した霧化区間内の昇温速度がプリセット閾値以上であるか否かを判断することと、
前記安定した霧化区間内の昇温速度が前記プリセット閾値以上であることに応答して、
前記霧化器が空焚き状態にあると判定することと、をさらに含むことを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記安定した霧化区間内の昇温速度がプリセット閾値以上であるか否かを判断することは、具体的には、
前記安定した霧化区間の異なるサブ区間内の昇温速度が、前記サブ区間に対応するプリセット閾値以上であるか否かを判断することを含む、ことを特徴とする請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記予め定められた霧化時間は、前記霧化器の起動から、霧化が4秒~12秒行われるまでの時間帯である、ことを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
霧化器の霧化シートの昇温速度を取得するための取得モジュールと、
前記昇温速度に基づいて、前記霧化器の霧化状態を判断するための処理モジュールと、
を含
み、
前記昇温速度に基づいて、前記霧化器の霧化状態を判断することは、具体的には、
予め定められた霧化時間内の前記昇温速度の変化傾向を取得することと、
前記予め定められた霧化時間内に前記昇温速度が上昇傾向にあることに応答して、前記霧化シートが異常であるか、又は前記霧化器が空焚き状態にあると判定することと、
前記予め定められた霧化時間内に前記昇温速度が下降傾向にあることに応答して、前記予め定められた霧化時間内に前記霧化器が安定した霧化区間に入ったと判定することと、を含む霧化状態識別装置。
【請求項6】
電子機器であって、メモリとプロセッサを含み、前記メモリにはプログラム命令が記憶され、前記プロセッサは、前記メモリから前記プログラム命令を呼び出して、請求項1~4のいずれか一項に記載の霧化状態識別方法を実行する、ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
前記電子機器は電子霧化装置であり、前記電子霧化装置は、前記霧化シートと温度特性デバイスを含み、前記温度特性デバイスは、前記プロセッサに接続され、前記霧化シートの温度を検出するために使用される、ことを特徴とする請求項
6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記温度特性デバイスは、正温度係数サーミスタ又は負温度係数サーミスタである、ことを特徴とする請求項
7に記載の電子機器。
【請求項9】
プログラムファイルが記憶されており、前記プログラムファイルは、請求項1~
4のいずれか一項に記載の霧化状態識別方法を実現するために実行可能である、ことを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電子霧化技術の分野に関し、特に霧化状態識別方法、装置、電子機器及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
医療技術の発展に伴い、霧化吸入治療が登場し、呼吸器系疾患の治療によく使用されている。電子霧化装置の霧化シートを使用して、薬液を微小粒子に霧化し、患者が呼吸により霧化後の薬物を呼吸道及び肺に吸入して堆積させる。病巣に直接達することができ、薬効をスピードアップし、無痛、迅速且つ効果的な治療目的に達することができる。
【0003】
空焚きは、電子霧化装置の使用中に最もよく見られる問題である。長時間の空焚きは霧化シートに損傷を与え、霧化シートの性能を低下させ、霧化量を減少し、さらに霧化機能を失う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願によって提供される霧化状態識別方法、装置、電子機器及び記憶媒体は、どのように電子霧化装置の空焚きを検出するかという従来技術における技術的問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術的問題を解決するために、本出願によって提供される1つ目の技術的解決策は、霧化状態識別方法を提供することである。この方法は、
霧化器の霧化シートの昇温速度を取得することと、
前記昇温速度に基づいて、前記霧化器の霧化状態を判断することと、を含む。
【0006】
前記昇温速度に基づいて、霧化器の霧化状態を判断することは、具体的には、
予め定められた霧化時間内の前記昇温速度の変化傾向を取得することと、
前記予め定められた霧化時間内に前記昇温速度が上昇傾向にあることに応答して、前記霧化シートが異常であるか、又は前記霧化器が空焚き状態にあると判定することと、
前記予め定められた霧化時間内に前記昇温速度が下降傾向にあることに応答して、前記予め定められた霧化時間内に前記霧化器が安定した霧化区間に入ったと判定することと、を含む。
【0007】
前記予め定められた霧化時間の後に前記霧化器が安定した霧化区間に入ったと判定した後、
前記安定した霧化区間内の昇温速度がプリセット閾値以上であるか否かを判断することと、
前記安定した霧化区間内の昇温速度が前記プリセット閾値以上であることに応答して、前記霧化器が空焚き状態にあると判定することと、をさらに含む。
【0008】
前記安定した霧化区間内の昇温速度がプリセット閾値以上であるか否かを判断することは、具体的には、
前記安定した霧化区間の異なるサブ区間内の昇温速度が、前記サブ区間に対応するプリセット閾値以上であるか否かを判断することを含む。
【0009】
前記予め定められた霧化時間は、前記霧化器の起動から、霧化が4秒~12秒行われるまでの時間帯である。
【0010】
上記の技術的問題を解決するために、本出願によって提供される2つめの技術的解決策は、霧化状態識別装置を提供することである。この装置は、取得モジュールと処理モジュールを含む。前記取得モジュールは、霧化器の霧化シートの昇温速度を取得するために使用される。前記処理モジュールは、前記昇温速度に基づいて、前記霧化器の霧化状態を判断するために使用される。
【0011】
上記の技術的問題を解決するために、本出願によって提供される3つめの技術的解決策は、電子機器を提供することである。この電子機器は、メモリとプロセッサを含む。前記メモリにはプログラム命令が記憶されている。前記プロセッサは、前記メモリから前記プログラム命令を呼び出して、上記のいずれか一項に記載の霧化状態識別方法を実行する。
【0012】
前記電子機器は電子霧化装置であり、前記電子霧化装置は、前記霧化シートと温度特性デバイスを含み、前記温度特性デバイスは、前記プロセッサに接続され、前記霧化シートの温度を検出するために使用される。
【0013】
前記温度特性デバイスは、正温度係数サーミスタ又は負温度係数サーミスタである。
【0014】
上記の技術的問題を解決するために、本出願によって提供される4つめの技術的解決策は、コンピュータ読取可能な記憶媒体を提供することである。コンピュータ読取可能な記憶媒体には、プログラムファイルが記憶されている。前記プログラムファイルは、上記のいずれか一項に記載の霧化状態識別方法を実現するために実行可能である。
【0015】
本出願の有益な効果は次のとおりである。従来技術とは異なり、本出願は、霧化状態識別方法、装置、電子機器及び記憶媒体を開示する。霧化状態識別方法は、霧化器の霧化シートの昇温速度を取得することと、昇温速度に基づいて、霧化器の霧化状態を判断することとを含み、霧化器が空焚きであるか否かをリアルタイムに判断し、霧化器の空焚きをリアルタイムに処理することができる。霧化器の霧化状態を識別するプロセスでは、プローブなどのセンサを薬液と接触させる必要がなく、検出がより正確になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下、本願の実施例の技術的解決策を更に詳細に説明するために、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。当然のことながら、下記の説明における図面は本願の幾つかの実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的労働をしない前提で、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【
図1】本出願によって提供される霧化状態識別方法の第1実施例のフローチャートの一例である。
【
図2】
図1で提供される霧化状態識別方法のステップS2のフローチャートの一例である。
【
図3】本出願によって提供される霧化シートの正常な霧化時の温度上昇曲線図の一例である。
【
図4】本出願によって提供される霧化状態識別方法の第2実施例のステップS2のフローチャートの一例である。
【
図5】本出願によって提供される霧化シートの異なる霧化状態下での温度上昇曲線比較図の一例である。
【
図6】本出願によって提供される加熱識別方法の第3実施例のフローチャートの一例である。
【
図7】本出願によって提供される霧化状態識別装置の一実施例の構造模式図の一例である。
【
図8】本出願によって提供される電子機器の一実施例の構造模式図の一例である。
【
図9】本出願の実施例によって提供される電子霧化装置の模式ブロック図の一例である。
【
図10】本出願の実施例によって提供されるコンピュータ読取可能な記憶媒体の構造模式図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本願の実施例の添付図面を参照しながら、本願の実施例の技術的解決手段を明確かつ完全に説明する。当然のことながら、ここで説明する実施例は本願の実施例の全てではなく一部にすぎない。当業者が創造的な作業なしに本願の実施例に基づいて得られる全ての他の実施例は、本願の保護範囲に含まれるべきである。
【0018】
以下の説明では、限定の目的ではなく説明の目的のために、本願の実施例を完全に理解するように、特定のシステム構造、インターフェイス、技術などの具体的な詳細を提供する。
【0019】
本願における「第1」、「第2」、及び「第3」という用語は、説明の目的でのみ使用され、相対的な重要性を示すもしくは暗示する、又は示される技術的特徴の数を暗示的に示すと解釈されるべきではない。そのため、「第1」、「第2」、「第3」により限定される特徴は、明示的に又は暗黙的に、少なくとも1つの前記特徴を含むことができる。本願の説明において、「複数の」は、他に特に定義されない限り、少なくとも2つ、例えば、3つなどを意味する。本出願の実施例におけるすべての方向指示(上、下、左、右、前、後……など)は、ある特定の姿勢(図に示す)での各部材間の相対的な位置関係、運動状況などを説明するためにのみ使用される。前記特定の姿勢が変化する場合、前記方向指示もそれに応じて変化する。本願の実施例における「含む」や「有する」という用語及びそれらの任意の変形は、非排他的な包含をカーバすることを意図する。例えば、一連のステップ又はユニットを含むプロセス、方法、システム、製品又は機器は、挙げられたステップ又はユニットに限定されず、任意選択で、挙げられていないステップ又はユニットを更に含み、又はこれらのプロセス、方法、製品又は機器に固有の他のステップ又はアセンブリを更に含む。
【0020】
本明細書における「実施例」への言及は、実施例に関して説明される特定の特徴、構造又は特性が、本願の少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを意味する。明細書の様々なところで出現する前記用語は、必ずしも同じ実施例を指すわけではなく、他の実施例と相互に排他的な独立した又は代替の実施例でもない。当業者は、本明細書に記載の実施例が他の実施例と組み合わせることができることを明確かつ暗黙的に理解している。
【0021】
以下、添付の図面及び実施例を参照しながら、本願を詳細に説明する。
【0022】
電子霧化装置は通常、貯液室内にプローブなどのセンサを配置し、プローブなどのセンサを被霧化基質に接触させて、被霧化基質の液位を検出して、貯液室にまだ被霧化基質があるか否かを判断し、それにより、霧化器が空焚きであるか否かを判断する。理解されるように、発明者の分析によれば、電子霧化装置の霧化器が空焚き状態にある可能性のある原因には、1)霧化器に貯蔵された被霧化基質が消耗によりなくなったことによるもの、2)被霧化基質の液体供給が不良であることによるもの、3)霧化シートの駆動モードが現在の霧化基質の状態に適していないことによるものが含まれる。空焚き状態にある霧化シートは、一方では霧化シートの空焚きにより霧化シートを壊す可能性があり、他方では霧化シートの温度が空焚き状態で上昇する可能性があり、被霧化基質(例えば、薬液)を失効させる。しかしながら、現在、被霧化基質の液供給不良による空焚きは、既存の検出方法で検出することができない。従来技術に存在する問題に基づき、本出願は、霧化器の霧化状態が空焚きであるか否かをより正確に検出するために、霧化状態識別方法を提供する。
【0023】
図1を参照されたい。
図1は、本出願によって提供される霧化状態識別方法の第1実施例のフローチャートの一例である。
【0024】
本出願によって提供される霧化状態識別方法は、具体的には、S1~S2を含む。
S1では、霧化器の霧化シートの昇温速度を取得する。
【0025】
具体的には、霧化シートの温度を取得して、霧化シートの温度及びそれに対応する霧化時間に基づいて、霧化シートの昇温速度を得る。霧化シート上に温度特性デバイスを設けることによって、霧化シートの温度を検出することができる。温度特性デバイスは、正温度係数サーミスタ、負温度係数サーミスタなどであり得、霧化シートの温度を検出できればよい。理解されるように、霧化シートは、通常、圧電セラミックシートと金属ベースシートを含む。金属ベースシートがTCR性能を有するように設置することで、金属ベースシートの温度を取得して霧化シートの温度を得ることができる。取得された霧化シート温度は、そのリアルタイムの温度である。
【0026】
S2では、昇温速度に基づいて、霧化器の霧化状態を判断する。
【0027】
具体的には、昇温速度に基づいて霧化器の霧化状態を判断する原理は、次のとおりである。本出願の発明者は、研究により次のことを発見した。霧化シートが空焚き状態にあるとき、霧化シートの温度は迅速に上昇し、その温度上昇速度は、正常な霧化時の温度上昇速度よりもはるかに速い。かつ、温度区間が異なると、霧化シートの空焚き時の温度上昇速度が異なる。そのため、霧化器の昇温速度に基づいて、霧化器の霧化状態が空焚きであるか否かを判断することができる。
【0028】
図2を参照されたい。
図2は、
図1で提供される霧化状態識別方法のステップS2のフローチャートの一例である。昇温速度に基づいて、霧化器の霧化状態を判断することは、具体的には、S21~S23を含む。
S21では、予め定められた霧化時間内の前記昇温速度の変化傾向を取得する。
【0029】
アンプル微孔霧化シートを含む電子霧化装置を例として実験を行った。この電子霧化装置に対して正常な霧化テストを行うことによって、霧化シートの正常な霧化プロセス中の温度上昇曲線を取得した。実験結果は
図3に示される。
図3は、本出願によって提供される霧化シートの正常な霧化時の温度上昇曲線の一例である。
図3では、X軸は、サンプリング点数であり、Y軸は、サンプリング点に対応するサンプリング温度である。この実験では、1回のサンプリング間隔は1秒で、合計97点のサンプリング点が採取された。
図3では、霧化シートの正常な霧化時の温度上昇曲線は、識別区間と安定した霧化区間とに分けられる。
【0030】
図3からわかるように、識別区間での昇温速度の変化規律は次のとおりである。電子霧化装置が起動した後、被霧化基質に対する加熱と霧化が開始される。霧化が進むにつれて、被霧化基質に温度さが現れる。霧化シート部分に近い被霧化基質の温度が高く、霧化シート部分から離れた被霧化基質の温度が低い。低温域の被霧化基質は、高音域の被霧化基質の温度を下げ、高音域の被霧化基質の昇温速度が制限される。このとき、霧化シートの昇温速度は比較的速い。さらに霧化が進むと、被霧化基質の温度はほぼ一致し、霧化シートの温度に近い。霧化シートの昇温速度は徐々に緩やかになって、霧化は、安定した霧化区間に入る。霧化シートの昇温速度が徐々に穏やかになるとは、昇温速度の変化の傾向は穏やかになること、即ち、昇温速度の増加は低下傾向にあることである。
【0031】
図3からわかるように、電子霧化装置が霧化を開始してから、約10秒霧化した後、霧化シートの昇温速度は穏やかになって、安定した霧化区間に入る。即ち、電子霧化装置が正常な霧化状態であれば、予め定められた霧化時間(例えば、上述した10秒)霧化すると、安定した霧化区間に入り、霧化シートの昇温速度は徐々に穏やかになる。予め定められた霧化時間は、識別区間に対応する時間である。従って、予め定められた霧化時間における霧化シートの昇温速度の変化傾向を取得することによって、霧化状態が空焚きであるか否かを判断することができる。異なる電子霧化装置の霧化パラメータの設定が異なり、安定した霧化区間に入るのに必要な予め定められた霧化時間が異なるため、予め定められた霧化時間は、霧化器の起動から4秒~12秒霧化するまでの時間帯に設定される。
【0032】
S22では、予め定められた霧化時間内に昇温速度が上昇傾向にあることに応答して、霧化シートが異常であるか、又は霧化器が空焚き状態にあると判定する。
【0033】
電子霧化装置が霧化を予め定められた霧化時間行った後、霧化シートの昇温速度がまだ上昇傾向にあることにより、霧化は安定した霧化区間に入っていないか、又は入らないことが説明される。そのため、霧化シートは異常又は空焚き状態にあると判断される。霧化シートが異常である場合、予め設定された加熱方式で被霧化基質を加熱することができず、予め定められた霧化時間霧化した後、安定した霧化区間に入ることができないこと、電子霧化装置が起動する際に、貯液室に被霧化基質がないか、又は被霧化基質が非常に少ない場合、安定した霧化区間に入る前に空焚きが起こることが理解され得る。
【0034】
S23では、予め定められた霧化時間内に昇温速度が下降傾向にあることに応答して、予め定められた霧化時間内に霧化器が安定した霧化区間に入ったと判定する。
【0035】
電子霧化装置が霧化を予め定められた霧化時間行った後、霧化シートの昇温速度が下降傾向にあることにより、霧化シートの昇温速度は穏やかになって、霧化は安定した霧化区間に入ることが説明される。安定した霧化区間に入る前は識別区間であり、即ち、電子霧化装置が起動する際に、霧化シートは異常であるか、又は霧化器は空焚き状態にあるかを識別するものである。
【0036】
理解されるように、霧化が安定した霧化区間に入った後、霧化が進むにつれて、被霧化基質が消耗されて、空焚きの現象も現れる可能性があるため、安定した霧化区間に入った後、霧化状態が空焚きであるか否かを判断するために、霧化シートの昇温速度を検出し続ける必要がある。これを踏まえて、本出願は、霧化状態識別方法の別の実施例を提供する。
図4を参照されたい。
図4は、本出願によって提供される霧化状態識別方法の第2実施例のステップS2のフローチャートの一例である。
【0037】
霧化状態識別方法の第2実施例では、ステップS1及びステップS2は、霧化状態識別方法の第1実施例のステップS1及びステップS2と同じであり、ここでは繰り返さない。相違点は、本実施例がステップS23の後に、S24をさらに含むことである。
S24では、安定した霧化区間内の昇温速度がプリセット閾値以上であるか否かを判断する。
【0038】
霧化シートが空焚き状態にあるとき、霧化シートの温度は迅速に上昇し、即ち、プリセット閾値を設定し、霧化シートの昇温速度とプリセット閾値を比較することによって、霧化シートの霧化状態が空焚きであるか否かを判断することができる。理解されるように、リアルタイムの霧化シートの昇温速度とプリセット閾値を比較する。
【0039】
図3からわかるように、霧化シートが正常な霧化状態にあるとき、安定した霧化区間に入った後、異なる温度サブ区間に対応する昇温速度は異なる。霧化シートの霧化状態が空焚きであるか否かを正確に検出できるようにするために、異なる温度サブ区間に対して異なるプリセット閾値を設定して比較を行う。即ち、一実施形態では、安定した霧化区間内の異なるサブ区間内の昇温速度が、そのサブ区間に対応するプリセット閾値以上であるか否かを判断することによって、霧化状態が空焚きであるか否かを検出することができる。
【0040】
具体的には、アンプル微孔霧化シートを含む電子霧化装置を例として実験を行った。この電子霧化装置に対して定電力で正常な霧化テスト及び空焚き霧化テストを行うことによって、霧化シートの正常な霧化プロセス中の温度上昇曲線及び空焚き時の温度上昇曲線の変化傾向を取得し、正常な霧化の昇温速度と空焚き時の昇温速度との間の中間値を空焚き識別プリセット閾値として選択し、正常な霧化状態プロセス中の温度上昇曲線、空焚き時の温度上昇曲線の変化傾向、プリセット閾値に従って設定された温度上昇曲線の変化傾向をプロットして、
図5を得た。
図5は、本出願によって提供される霧化シートの異なる霧化状態下での温度上昇曲線の比較図の一例である。
図5では、X軸は、サンプリング点数であり、Y軸は、サンプリング点に対応するサンプリング温度である。この実験では、単回のサンプリング時間間隔は1秒で、合計97点のサンプリング点が採取された。霧化シートに対して、20℃~60℃の霧化温度区間の条件下でテストを行った。
【0041】
例示的に、安定した霧化区間は、30℃~35℃、35℃~40℃、40℃~50℃、50℃~60℃を例として4つの異なるサブ区間に分割される。まず、正常な霧化テストによって霧化シートの霧化プロセス中の温度上昇曲線を取得し、上記の4つの異なるサブ区間の昇温速度を計算する。次に、空焚きテストによって、上記の4つの異なるサブ区間での霧化シートの空焚き時の昇温速度を取得する。その後、そのうちの1つのサブ区間に対し、正常な霧化の昇温速度と空焚き時の昇温速度との中間値を、そのサブ区間に対応するプリセット閾値として取る。30℃~35℃の霧化シートの温度に対応する昇温速度のプリセット閾値は2℃/Sであり 、35℃~40℃の霧化シートの温度に対応する昇温速度のプリセット閾値は1.5℃/Sであり、40℃~50℃の霧化シートの温度に対応する昇温速度のプリセット閾値は1.2℃/Sであり、50℃~60℃の霧化シートの温度に対応する昇温速度のプリセット閾値は1℃/Sである。
【0042】
理解されるように、上記のテストでは、電子霧化装置が起動してから、霧化を4~12秒行った後、霧化シートの温度は30℃に達し、同時に、安定した霧化区間に入る。安定した霧化区間内の異なるサブ区間の分割は、必要に応じて設定することができる。プリセット閾値は、正常な霧化の昇温速度より高く空焚き時の昇温速度より低いだけでよい。
【0043】
S25では、安定した霧化区間内の昇温速度が前記プリセット閾値以上であることに応答して、前記霧化器が空焚き状態にあると判定する。
【0044】
安定した霧化区間において、霧化シートの昇温速度はプリセット閾値以上であり、プリセット閾値は正常な霧化状態下での昇温速度よりも大きく、霧化シートが迅速に上昇し、空焚き状態にあることが説明される。
【0045】
安定した霧化区間内の異なるサブ区間内の昇温速度がそのサブ区間に対応するプリセット閾値以上であるか否かを判断することによって、霧化状態が空焚きであるか否かを検出するとき、異なるサブ領域内のリアルタイムの昇温速度が、そのサブ区間に対応するプリセット閾値よりも大きい場合、霧化器が空焚き状態にあると判定する。
【0046】
図6を参照されたい。
図6は、本出願によって提供される加熱識別方法の第3実施例のフローチャートの一例である。
【0047】
加熱識別方法の第3実施例は、具体的には、S01~S05を含む。
S01では、霧化シートの温度を検出して、配列に保存する。
【0048】
霧化シート上に温度特性デバイスを設けることによって、霧化シートの温度を検出することができる。温度特性デバイスは、正温度係数サーミスタ、負温度係数サーミスタなどであり得、霧化シートの温度を検出できればよい。霧化シート自体が持っているTCR性能により、霧化シートの温度を得ることもできる。
【0049】
S02では、配列に基づいて、霧化シートの昇温速度を計算する。
【0050】
配列における霧化シートの温度及びそれに対応する霧化時間に対して計算を行って、霧化シートの昇温速度を得る。
【0051】
S03では、昇温速度に基づいて、霧化が安定した霧化区間に入ったか否かを判断する。
【0052】
電子霧化装置が起動してから予め定められた霧化時間を経て、昇温速度が下降傾向にある場合、霧化が安定した霧化区間に入ったと判定し、ステップS04に進む。電子霧化装置が起動してから予め定められた霧化時間を経て、昇温速度が上昇傾向にある場合、霧化器の霧化状態が空焚きであるか又は霧化シートが異常であると判定する。
【0053】
S04では、霧化シートのリアルタイムの昇温速度がプリセット閾値よりも大きいか否かを判断する。
【0054】
大きい場合は、ステップS05に進む。大きくない場合は引き続き、リアルタイムの昇温速度がプリセット閾値よりも大きいか否かを判断する。
【0055】
安定した霧化区間において、霧化シートの昇温速度はプリセット閾値以上であり、プリセット閾値は正常な霧化状態下での昇温速度よりも大きく、霧化シートが迅速に上昇し、空焚き状態にあることが説明される。
【0056】
安定した霧化区間内の異なるサブ区間内の昇温速度がそのサブ区間に対応するプリセット閾値以上であるか否かを判断することによって、霧化状態が空焚きであるか否かを検出するとき、異なるサブ領域内のリアルタイムの昇温速度が、そのサブ区間に対応するプリセット閾値よりも大きい場合、霧化器が空焚き状態にあると判定する。
【0057】
S05では、温度保護マークを設定する。
【0058】
霧化器が空焚き状態にあると判定すると、温度保護マークを設定する。例えば、霧化器の動作を停止させて、長期間の空焚きにより霧化シートを壊して、霧化シートの性能を低下させ、さらに電子霧化装置の性能に影響を及ぼすことを防止する。
【0059】
図7を参照されたい。
図7は、本出願によって提供される霧化状態識別装置の一実施例の構造模式図の一例である。
【0060】
霧化状態識別装置は、取得モジュール11と処理モジュール12を含む。取得モジュール11は、霧化器の霧化シートの昇温速度を取得するために使用される。処理モジュール12は、昇温速度に基づいて、霧化器の霧化状態を判断するために使用される。霧化状態識別装置は、上記のいずれか一項の霧化状態識別方法を実現し、霧化器の霧化状態の正確な検出を実現するために使用され得る。
【0061】
図8を参照されたい。
図8は、本出願によって提供される電子機器の一実施例の構造模式図の一例である。電子機器は、互いに接続されているメモリ20とプロセッサ21を含む。
【0062】
メモリ20は、上記のいずれか一項の霧化状態識別方法を実現するプログラム命令を記憶するために使用される。
【0063】
プロセッサ21は、メモリ20に記憶されているプログラム命令を実行するために使用される。即ち、プロセッサ21は、メモリ20に記憶されているプログラム命令をメモリ20から呼び出して、上記のいずれか一項の霧化状態識別方法を実行する。
【0064】
プロセッサ21はCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)とも呼ばれる。プロセッサ21は、信号処理機能を有する集積回路チップであってもよい。プロセッサ21は、汎用プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサー(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又は他のプログラマブルロジックデバイス、ディスクリートゲート若しくはトランジスタロジックデバイス、ディスクリートハードウェアコンポーネントであってもよい。汎用プロセッサはマイクロプロセッサーであってもよいし、又は該プロセッサは任意の従来のプロセッサなどであってもよい。
【0065】
メモリ20はメモリバンクやTFカードなどであってもよく、入力された元データ、コンピュータプログラム、中間実行結果、及び最終実行結果を含む、機器の電子機器におけるすべての情報をメモリに記憶することができる。それは、コントローラによって指定された位置に基づいて、情報を記憶したり読み出したりする。メモリ20があれば、電子機器は記憶機能を有し、正常な動作を保証することができる。電子機器のメモリ20は、用途別に主メモリ(内部記憶装置)と補助メモリ(外部記憶装置)に分かられ、外部メモリと内部メモリとに分ける分類方法もある。外部記憶装置は、通常、磁気媒体や光ディスクなどであり、情報を長期間保存することができる。内部記憶装置とは、現在実行中のデータやプログラムを保存するためのマザーボード上の記憶部品ですが、プログラムやデータを一時的に保存し、電源をオフしたり、電源を切ったりすると、データが失われる。
【0066】
本願で提供される幾つかの実施例において、開示された方法及び装置は他の方式で実現されてもよいことが理解されるべきである。例えば、上述した装置の実施形態は、単なる例にすぎない。例えば、モジュールまたはユニットの区分は、単なる論理的な機能による区分であり、実際に実現するときに他の区分方式であってもよく、例えば、複数のユニットまたは組立体が別のシステムに合わせまたは一体化してもよく、或いは幾つかの特徴が無視しまたは実行されなくてもよい。一方、示されたまたは解説された相互間の結合又は直接的な結合又は通信接続は、幾つかのインターフェイス、装置又はユニットによる間接的な結合又は通信接続であってもよく、電気の、機械のまたは他の形態であってもよい。
【0067】
別個の構成要素として説明されたユニットは、物理的に分離されていてもよく、そうでなくてもよく、ユニットとして示された部材は、物理的なユニットであってもよく、そうでなくてもよく、同じところに位置してもよく、複数のネットワークユニット上に分散されてもよい。実際の要求に応じて、一部又は全部のユニットを選択し、本実施形態の目的を実現することができる。
【0068】
なお、本出願の各実施例における各機能ユニットは、1つの処理ユニットに集積されていてもよく、各ユニットが単独に物理的に存在していてもよく、2つ以上のユニットが1つのユニットに集積されていてもよい。上記の一体化されたユニットは、ハードウエアの形で実現されてもよく、ソフトウェア機能ユニットの形で実現されてもよい。
【0069】
一体化されたユニットは、ソフトウェア機能ユニットの形で実現され、かつ独立した製品として販売または使用されるとき、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体内に記憶されてもよい。そのような理解に基づいて、本出願の技術的解決策の本質的な部分、即ち、従来技術に貢献する部分、又はこの技術的解決策の全部若しくは一部は、ソフトウェア製品の形式で表すことができる。このコンピュータソフトウェア製品は、記憶媒体に記憶され、コンピュータ機器(パーソナルコンピューター、システムサーバ又はネットワーク機器などであってもよい)又はプロセッサー(processor)に、本願の各実施形態の方法の全部若しくは一部のステップを実行させる複数の命令を含む。
【0070】
一実施形態では、電子機器は電子霧化装置である。電子霧化装置を例として、電子機器の構造を詳細に説明する。
図9を参照されたい。
図9は、本出願の実施例によって提供される電子霧化装置の模式ブロック図の一例である。
【0071】
電子霧化装置は、霧化器31とホスト機32を含む。霧化器31とホスト機32は、取り外し可能に接続されてもよく、又は一体的に成形されてもよく、具体的には、必要に応じて選択される。
【0072】
霧化器31は、貯液室311と霧化シート312を含む。貯液室311は、被霧化基質を貯蔵するために使用され、霧化シート312は、被霧化基質を霧化するために使用される。ホスト機32は、プロセッサ321と電池322を含む。電池322は、霧化シート312に電気エネルギーを提供する。プロセッサ321は、電池322が霧化シート312に電気エネルギーを提供するか否かを制御する。
【0073】
一実施形態では、霧化器31は、霧化シート312上に配置された温度特性デバイス(図示せず)をさらに含む。温度特性デバイスは、プロセッサ321に接続され、霧化シート312の温度を検出するために使用される。温度特性デバイスは、正温度係数サーミスタ、負温度係数サーミスタなどであり得、霧化シートの温度を検出できればよい。
【0074】
別の実施形態では、霧化シート312は、圧電セラミックシート(図示せず)と金属ベースシート(図示せず)を含む。金属ベースシートは、TCR性能を有する。それにより、金属ベースシートの温度を取得して、霧化シート312の温度を得る。
【0075】
電子霧化装置は、ニコチンを含有する溶液、薬液などの液体基質の霧化に使用される。理解されるように、貯液室311に貯蔵される被霧化基質は、ニコチンを含有する溶液、薬液などの液体基質であってもよく、必要に応じて選択される。
【0076】
図10を参照されたい。
図10は、本願の実施例によって提供されるコンピュータ読取可能な記憶媒体の構造模式図の一例である。本出願の記憶媒体には、上記の霧化状態識別方法のすべてを実現することができるプログラムファイル40が記憶されている。このプログラムファイル40は、ソフトウェア製品の形式で上記の記憶媒体内に記憶されてもよく、コンピュータ機器(パーソナルコンピューター、サーバー又はネットワーク機器などであってもよい)又はプロセッサー(processor)に、本出願の各実施形態の方法の全部若しくは一部のステップを実行させる複数の命令を含む。前記記憶装置は、USBメモリ、リムーバブルハードディスク、読み取り専用メモリ(ROM、Read-Only Memory)、ランダムアクセスメモリ(RAM、Random Access Memory)、ディスク若しくは光ディスクなどの様々なプログラム・コードを記憶可能である媒体、又はコンピュータ、サーバー、携帯電話、タブレットなどの端末機器を含む。
【0077】
以上は本願に係る実施形態に過ぎず、本願の保護範囲を制限するものではない。本願の明細書及び添付図面によって作成したすべての同等構造又は同等フローの変更を、直接又は間接的に他の関連する技術分野に実施することは、いずれも同じ理由により本願の保護範囲内に含まれるべきである。