(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】再生式ガラス溶融炉の同期された酸素-燃料ブーストのためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C03B 5/235 20060101AFI20231018BHJP
F23C 7/00 20060101ALI20231018BHJP
F23D 14/32 20060101ALI20231018BHJP
F23N 3/06 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C03B5/235
F23C7/00
F23D14/32
F23N3/06
(21)【出願番号】P 2022524253
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(86)【国際出願番号】 US2020056628
(87)【国際公開番号】W WO2021081073
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-04-25
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】マーク ダニエル ダゴスティーニ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジェイ.ギャラガー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ジェイ.ホラン
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-136115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B5/00-5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の再生式空気-燃料バーナーのセットおよび第2の再生式空気-燃料バーナーのセットと、前記第1の空気-燃料バーナーのセットが放射しているときは、前記第2の空気-燃料バーナーのセットが再生を行っており、前記第1の空気-燃料バーナーのセットが再生を行っているときは、前記第2の空気-燃料バーナーのセットが放射しているように、前記第1の空気-燃料バーナーのセットおよび前記第2の空気-燃料バーナーのセットの交互放射を制御するようにプログラムされた炉制御システムと、を有する、再生式ガラス溶融炉の同期された酸素-燃料ブーストのためのシステムであって、前記システムは、
第1の二段酸素-燃料バーナーであって、前記炉の第1の壁に取り付けられており、かつ一次酸素と段階化酸素との間で酸素の流れを割り当てるための一次酸素バルブ、および、上部段階化ポートと下部段階化ポートとの間で前記段階化酸素の流れを割り当てるための段階化モードバルブを有する、第1の二段酸素-燃料バーナーと、
第2の二段酸素-燃料バーナーであって、前記第1の壁に対向している前記炉の第2の壁に取り付けられており、かつ一次酸素の流れと段階化酸素の流れとの間で酸素の流れを割り当てるための一次酸素バルブ、および、前記上部段階化ポートへの上部段階化酸素の流れと、前記下部段階化ポートへの下部段階化酸素の流れとの間で前記段階化酸素の流れを割り当てるための段階化モードバルブを有する、第2の二段酸素-燃料バーナーと、
コントローラであって、
前記炉制御システムから、前記第1および第2の空気-燃料バーナーのセットのうちのどちらが放射しており、前記第1および第2の空気-燃料バーナーのセットのうちのどちらが再生を行っているかを示す信号を受信することと、
前記炉制御システムからの前記信号に応答して、前記第1の二段酸素-燃料バーナーおよび前記第2の二段酸素-燃料バーナーの火炎特性を調整するように、前記第1の二段酸素-燃料バーナーの前記一次酸素バルブおよび前記段階化モードバルブを作動させるため、かつ前記第2の二段酸素-燃料バーナーの前記一次酸素バルブおよび前記段階化モードバルブを作動させるための信号を送信することと、を行うようにプログラムされた、コントローラと、を備
え、
前記第1の再生式空気-燃料バーナーのセットは前記第1の壁に位置付けられており、前記第2の再生式空気-燃料バーナーのセットは前記第2の壁に位置付けられており、前記炉は、前記第1の壁および前記第2の壁に対して垂直であり、かつ前記第1の壁と前記第2の壁とを相互接続する、チャージ壁、をさらに備え、
前記コントローラが、前記第1の空気-燃料バーナーのセットが放射しており、前記第2のバーナーのセットが再生を行っていることを示す信号を受信するとき、前記コントローラは、前記第1の二段バーナーの前記一次酸素バルブを、前記酸素の流れの50%超が前記段階化酸素の流れに割り当てられる段階化火炎位置へと作動させ、前記第1の二段酸素-燃料バーナーの前記段階化モードバルブを、前記段階化酸素の流れの50%超が前記下部段階化酸素の流れに割り当てられる溶融モード位置へと作動させるため、かつ前記第2の二段酸素-燃料バーナーの前記一次酸素バルブを、前記酸素の流れの50%超が前記一次酸素の流れに割り当てられる一次火炎位置へと作動させ、前記第2の二段酸素-燃料バーナーの前記段階化モードバルブを、前記段階化酸素の流れが前記上部段階化酸素の流れと前記下部段階化酸素の流れとに割り当てられる分割モード位置へと作動させるための信号を送信し、
前記コントローラが、前記第2の空気-燃料バーナーのセットが放射しており、前記第1のバーナーのセットが再生を行っていることを示す信号を受信するとき、前記コントローラは、前記第1の二段バーナーの前記一次酸素バルブを前記一次火炎位置へと作動させ、前記第1の二段酸素-燃料バーナーの前記段階化モードバルブを前記分割モード位置へと作動させるため、かつ前記第2の二段酸素-燃料バーナーの前記一次酸素バルブを前記段階化火炎位置へと作動させ、前記第2の二段酸素-燃料バーナーの前記段階化モードバルブを前記溶融モード位置へと作動させるための信号を送信する、システム。
【請求項2】
前記第1の二段酸素-燃料バーナーおよび前記第2の二段酸素-燃料バーナーの各々は、燃料の流れおよび前記一次酸素の流れを受容するように構成および配置された中央予燃焼部と、前記上部段階化酸素の流れを受容するように構成および配置された上部段階化ポートと、前記下部段階化酸素の流れを受容するように構成および配置された下部段階化ポートと、を含み、前記第1および第2の二段酸素-燃料バーナーの前記各々に供給される前記酸素の流れは、前記一次酸素の流れと前記段階化酸素の流れとの合計であり、前記段階化酸素の流れは、前記上部段階化酸素の流れと前記下部段階化酸素の流れとの合計である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1および第2の二段酸素-燃料バーナーの各々の前記一次酸素バルブは、
前記一次火炎位置と、
前記段階化火炎位置との間で作動されるように構成および配置され、
前記第1および第2の二段酸素-燃料バーナーの前記各々の前記段階化モードバルブは、前記段階化酸素の流れの
50%超が前記上部段階化酸素の流れに割り当てられる気泡モード位置、
前記分割モード位置、および、
前記溶融モード位置から選択される少なくとも2つの位置の間で作動されるように構成および配置される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の二段酸素-燃料バーナーは、前記第1の空気-燃料バーナーのセットと前記チャージ壁との間に位置付けられており、前記第2の二段酸素-燃料バーナーは、前記第2の空気-燃料バーナーのセットと前記チャージ壁との間に位置付けられている、請求項
1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の再生式空気-燃料バーナーのセットおよび前記第2の再生式空気-燃料バーナーのセットはともに、前記第1の壁および前記第2の壁に対して垂直であり、かつ前記第1の壁と前記第2の壁とを相互接続する壁に位置付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の壁および前記チャージ壁の近傍のガラス底部温度を測定するように位置付けられた第1の底部熱電対、前記第2の壁および前記チャージ壁の近傍のガラス底部温度を測定するように位置付けられた第2の底部熱電対、ならびに前記チャージ壁の近くの天井温度を測定するように位置付けられた天井熱電対のうちの少なくとも1つをさらに備え、
前記コントローラは、それぞれの前記温度を示す前記第1の底部熱電対、前記第2の底部熱電対、および前記天井熱電対のうちの少なくとも1つから信号を受信することと、前記第1の二段酸素-燃料バーナーおよび前記第2の二段酸素-燃料バーナーの火炎特性を調整するように、前記炉制御システム、ならびに前記第1の底部熱電対、前記第2の底部熱電対、および前記天井熱電対のうちの前記少なくとも1つからの前記信号に応答して、前記第1の二段酸素-燃料バーナーの前記一次酸素バルブおよび前記段階化モードバルブを作動させ、前記第2の二段酸素-燃料バーナーの前記一次酸素バルブおよび前記段階化モードバルブを作動させるための信号を送信することと、を行うようにさらにプログラムされている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
再生式ガラス溶融炉の同期された酸素-燃料ブースト方法であって、前記再生式ガラス溶融炉は、第1の再生式空気-燃料バーナーのセットおよび第2の再生式空気-燃料バーナーのセットと、前記炉の第1の壁に取り付けられた第1の二段酸素-燃料バーナーと、前記炉の第2の壁に取り付けられた第2の二段酸素-燃料バーナーと、を有し、前記第1の二段酸素-燃料バーナーおよび前記第2の二段酸素-燃料バーナーの各々は、燃料の流れおよび一次酸素の流れを受容するように構成および配置された中央予燃焼部、上部段階化酸素の流れを受容するように構成および配置された上部段階化ポート、ならびに下部段階化酸素の流れを受容するように構成および配置された下部段階化ポートを含み、
前記第1の再生式空気-燃料バーナーのセットは、前記第1の壁に位置付けられており、前記第2の再生式空気-燃料バーナーのセットは、前記第2の壁に位置付けられており、前記炉は、前記第1の壁および前記第2の壁に対して垂直であり、かつ前記第1の壁と前記第2の壁とを相互接続するチャージ壁をさらに備え、前記炉の前記第1の壁は、前記チャージ壁の右側に位置付けられており、前記炉の前記第2の壁は、前記チャージ壁の左側に位置付けられており、前記方法は、
前記第1の空気-燃料バーナーのセットが放射しているときに前記第2の空気-燃料バーナーのセットが再生を行っており、前記第1の空気-燃料バーナーのセットが再生を行っているときに前記第2の空気-燃料バーナーのセットが放射しているように、前記第1の空気-燃料バーナーのセットおよび前記第2の空気-燃料バーナーのセットを交互に放射することと、
前記第1および第2の空気-燃料バーナーのセットのうちのどちらが放射しており、前記第1および第2の空気-燃料バーナーのセットのうちのどちらが再生を行っているかを検出することと、
前記第1の二段酸素-燃料バーナーおよび前記第2の二段酸素-燃料バーナーの火炎特性を調整するために、前記第1および第2の空気-燃料バーナーのセットのうちのどちらが放射しており、前記第1および第2の空気-燃料バーナーのセットのうちのどちらが再生を行っているかに基づいて、前記第1の二段酸素-燃料バーナーおよび前記第2の二段酸素-燃料バーナーの各々について、前記予燃焼部への前記一次酸素の流れ、ならびに前記上部段階化酸素の流れおよび前記下部段階化酸素の流れを制御することと、を含
み、
前記方法は、
前記第1の空気-燃料バーナーのセットが放射しており、前記第2のバーナーのセットが再生を行っているとき、前記第1の二段バーナーの一次酸素バルブを前記酸素の流れの50%超が段階化酸素の流れに割り当てられる段階化火炎位置へと作動させ、前記第1の二段酸素-燃料バーナーの段階化モードバルブを前記段階化酸素の流れの50%超が前記下部段階化酸素の流れに割り当てられる溶融モード位置へと作動させ、かつ前記第2の二段酸素-燃料バーナーの一次酸素バルブを前記酸素の流れの50%超が前記一次酸素の流れに割り当てられる一次火炎位置へと作動させ、前記第2の二段酸素-燃料バーナーの段階化モードバルブを前記段階化酸素の流れが前記上部段階化酸素の流れと前記下部段階化酸素の流れとに割り当てられる分割モード位置へと作動させることと、
前記第2の空気-燃料バーナーのセットが放射しており、前記第1のバーナーのセットが再生を行っているとき、前記第1の二段バーナーの前記一次酸素バルブを前記一次火炎位置へと作動させ、前記第1の二段酸素-燃料バーナーの前記段階化モードバルブを前記分割モード位置へと作動させ、かつ前記第2の二段酸素-燃料バーナーの前記一次酸素バルブを前記段階化火炎位置へと作動させ、前記第2の二段酸素-燃料バーナーの前記段階化モードバルブを前記溶融モード位置へと作動させることと、をさらに含む、方法。
【請求項8】
前記第1の二段酸素-燃料バーナーに供給される前記酸素の流れは、前記一次酸素の流れと前記段階化酸素の流れとの合計であり、前記段階化酸素の流れは、前記上部段階化酸素の流れと前記下部段階化酸素の流れとの合計である、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の二段酸素-燃料バーナーは、前記第1の空気-燃料バーナーのセットと前記チャージ壁との間に位置付けられており、前記第2の二段酸素-燃料バーナーは、前記第2の空気-燃料バーナーのセットと前記チャージ壁との間に位置付けられている、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の再生式空気-燃料バーナーのセットおよび前記第2の再生式空気-燃料バーナーのセットはともに、前記第1の壁および前記第2の壁に対して垂直であり、かつ前記第1の壁と前記第2の壁とを相互接続する壁に位置付けられている、請求項
7に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の壁および前記チャージ壁の近傍の第1のガラス底部温度のうちの少なくとも1つを測定すること、前記第2の壁および前記チャージ壁の近傍の第2のガラス底部温度を測定すること、ならびに前記チャージ壁の近くの天井温度を測定することと、
前記第1の二段酸素-燃料バーナーおよび前記第2の二段酸素-燃料バーナーの火炎特性を調整するために、前記第1および第2の空気-燃料バーナーのセットのうちのどちらが放射しており、前記第1および第2の空気-燃料バーナーのセットのうちのどちらが再生を行っているか、測定された前記第1のガラス底部温度、測定された前記第2のガラス底部温度ならびに測定された前記天井温度に基づいて、前記第1の二段酸素-燃料バーナーおよび前記第2の二段酸素-燃料バーナーの各々について、前記予燃焼部への前記一次酸素の流れ、ならびに前記上部段階化酸素の流れおよび前記下部段階化酸素の流れを制御することと、をさらに含む、請求項
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月19日に出願された米国出願第17/073,451号、および2019年10月25日に出願された米国出願第62/925,949号に基づく優先権を主張するものであり、これらのいずれも、完全に記載されているかのように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本出願は、再生式ガラス溶融炉における酸素-燃料ブーストバーナーの使用に関し、具体的には、それらのバーナーの有効性の向上に関する。
【0003】
ゼロポート酸素-燃料ブーストバーナーは、ガラス生産を増加させるおよび/または効率を改善するための貴重な手段として、フロートガラス溶融炉において広く受け入れられてきた。しかしながら、ブーストバーナーの有効性は、著しい乱流である空気-燃料火炎との火炎相互作用によって制限されることが多い。さらに、これらの酸素火炎の強度および方向、ならびにそれらの空気-燃料火炎相互作用は、再生器の各逆転サイクルに従い劇的に変化する。これらのファクタは、チャージ壁が過熱されること、および火炎が途中で止められることを含む、悪影響を及ぼす可能性があり、胸壁(breast wall)付近での集中した熱放出、および/または天井(crown)に向かって火炎が吹き上がる原因となる可能性がある。
【0004】
酸素-燃料ブーストバーナーは、数十年前から空気-燃料再生炉で採用されており、その利点は周知である。主な利点には、より高い炉の効率性および/またはより低い燃料消費、より高い生産性、ガラス品質の改善、およびより低いNOxが含まれる。酸素ブーストには利益もあるが、空気-燃料再生式ガラス炉内で発生する高レベルの乱流に耐えることができる、一貫性のあるより高輝度の火炎を維持するなどの課題もある。再生炉内の発射方向の周期的な性質は、変化する気流および乱流パターンを生じさせ、ブーストバーナーの火炎が吹き上がる、偏向する、および別様に不安定になる可能性がある。不安定なブーストバーナーの火炎は付近のチャージ壁の過熱につながる可能性がある。また、火炎があまりに早く短くなるか、または途中で止められると、一方で、胸壁付近に集中した熱放出および/または天井に向かって火炎が吹き上がるなどの極端な火炎の状態を引き起こす可能性がある。このような事象の発生は、しばしば、溶融炉の耐火物(胸壁/天井/チャージ端壁)の過熱、および火炎とガラス表面との間の熱伝達率の低下をもたらす。一方、燃焼空間の乱流はまた、燃料と酸素の混合を邪魔し、不完全燃焼を引き起こす可能性がある。これは特に、より長く輝度の高い火炎を作り出すために、酸素の一部を火炎の上方または下方に向けなおすことによって酸素と燃料の混合が本来的に遅延される段階的な酸素-燃料バーナーの場合に当てはまる。したがって、燃焼空間の乱流と段階的な酸素-燃料バーナーとの間の相互作用の結果、炉の煙道を通って多量の一酸化炭素が排出される可能性がある。
【0005】
図1は、炉10の両側に再生器12Aおよび12Bを有する典型的な再生炉10、固体の溶融されるガラス原料が炉10に投入されるチャージ端14、および溶融されたガラスが炉10から出る出口端16を概略的に示す(ガラスの流れの方向が矢印Gによって示されている)。各再生器12A、12Bは空気-燃料バーナーポートのセットを有する(図示の実施形態では6つ示されており、チャージ端14から出口端16に向かって1~6の番号で示されているが、セットは1つ以上のバーナーを含むことができる)。図示の動作モードでは再生器12Bが炎を放射しており(すなわち、再生器12Bの空気-燃料バーナー1~6が動作している)、再生器12Aは炉10からの燃焼生成物を排気している。また、酸素-燃料ブーストバーナーが「ゼロポート」位置(各々が0で示されている)に図示されており、どちらの再生器12A、12Bが放射を行い、どちらが排気しているかにかかわらず、両方の酸素-燃料ブーストバーナーが継続的に放射を行う。この動作モードでは、ポート1の空気-燃料バーナーとポート0の酸素-燃料ブーストバーナーとの間の水平(放射)平面内に潜在的なガス再循環ゾーン18が生じ得る。これらの再循環ゾーンは、ブーストバーナーの火炎が(同じ側で放射しているとき)最も近い空気-燃料バーナーの流れに巻き込まれることを引き起こし得るか、または反対方向に放射しているブーストバーナーの流れを妨げるか、もしくは偏向させ得る。この状況をAnsys Fluent数値流体力学(CFD)シミュレーションツールを使用してモデル化した。三次元シミュレーションでは、1日当たり650トンの生産速度に基づいて、典型的な空気-燃料再生炉のサイズおよび形状を再現した。
図2および3は、それぞれ、水平(放射)平面および垂直(チャージ壁)平面におけるCFDモデリング結果を示す。
図2は、炉10の排気側Eのチャージ端壁14に向かって酸素-燃料火炎(矢印B)が曲がっていること(および炉10の放射側Fの空気-燃料火炎に向かって酸素-燃料火炎が曲がっていること)を示す。これに応じて、
図3は、チャージ端壁14上の潜在的に過熱されたゾーン14Aを示す。これらの結果は、燃焼空間の流れの場と対向する酸素-燃料ゼロポートブーストバーナーに対して流れの場が及ぼす有害な影響に関する上記主張を強く支持している。本明細書に記載のシステムおよび方法の主な目的は、ブーストバーナーの有益な効果を維持および最大化しながら、これらの悪影響を排除することである。
【発明の概要】
【0006】
発明者らは、再生炉のサイクル空気-燃料バーナーの動作と、酸素-燃料ブーストバーナーの火炎との間の相互作用の性質を理解することにより、酸素-燃料性能の利益を最大化しながら悪影響を回避するように、各再生器逆転に伴って火炎特性(特に、長さ、輝度、および運動量)を自動的に調整することができる高度なバーナー技術を開発した。この開発は、高度な制御技術と最近、二段酸素-燃料フラットフレイムバーナーとを組み合わせたものである。同期された酸素-燃料ブーストバーナーの現場実装の方法および有益な結果の両方が本明細書に記載される。
【0007】
態様1.第1の再生式空気-燃料バーナーのセットおよび第2の再生式空気-燃料バーナーのセットと、第1の空気-燃料バーナーのセットが放射しているときは、第2の空気-燃料バーナーのセットが再生を行っており、第1の空気-燃料バーナーのセットが再生を行っているときは、第2の空気-燃料バーナーのセットが放射しているように、第1の空気-燃料バーナーのセットおよび第2の空気-燃料バーナーのセットの交互放射を制御するようにプログラムされた炉制御システムと、を有する、再生式ガラス溶融炉の同期された酸素-燃料ブーストのためのシステムであって、システムは、第1の二段酸素-燃料バーナーであって、炉の第1の壁に取り付けられており、かつ一次酸素と段階化酸素との間で酸素の流れを割り当てるための一次酸素バルブ、および、上部段階化ポートと下部段階化ポートとの間で段階化酸素の流れを割り当てるための段階化モードバルブを有する、第1の二段酸素-燃料バーナーと、第2の二段酸素-燃料バーナーであって、第1の壁に対向している炉の第2の壁に取り付けられており、かつ一次酸素の流れと段階化酸素の流れとの間で酸素の流れを割り当てるための一次酸素バルブ、および、上部段階化ポートへの上部段階化酸素の流れと、下部段階化ポートへの下部段階化酸素の流れとの間で段階化酸素の流れを割り当てるための段階化モードバルブを有する、第2の二段酸素-燃料バーナーと、コントローラであって、炉制御システムから、第1および第2の空気-燃料バーナーのセットのうちのどちらが放射しており、第1および第2の空気-燃料バーナーのセットのうちのどちらが再生を行っているかを示す信号を受信することと、炉制御システムからの信号に応答して、第1の二段酸素-燃料バーナーおよび第2の二段酸素-燃料バーナーの火炎特性を調整するように、第1の二段酸素-燃料バーナーの一次酸素バルブおよび段階化モードバルブを作動させるため、かつ第2の二段酸素-燃料バーナーの一次酸素バルブおよび段階化モードバルブを作動させるための信号を送信することと、を行うようにプログラムされた、コントローラと、を備える、システム。
【0008】
態様2.第1の二段酸素-燃料バーナーおよび第2の二段酸素-燃料バーナーの各々は、燃料の流れおよび一次酸素の流れを受容するように構成および配置された中央予燃焼部と、上部段階化酸素の流れを受容するように構成および配置された上部段階化ポートと、下部段階化酸素の流れを受容するように構成および配置された下部段階化ポートと、を含み、第1および第2の二段酸素-燃料バーナーの各々に供給される酸素の流れは、一次酸素の流れと段階化酸素の流れとの合計であり、段階化酸素の流れは、上部段階化酸素の流れと下部段階化酸素の流れとの合計である、態様1に記載のシステム。
【0009】
態様3.第1および第2の二段酸素-燃料バーナーの各々の一次酸素バルブは、酸素の流れの50%超が一次酸素の流れに割り当てられる一次火炎位置と、酸素の流れの50%超が段階酸素の流れに割り当てられる段階化火炎位置との間で作動されるように構成および配置され、第1および第2の二段酸素-燃料バーナーの各々の段階化モードバルブは、段階化酸素の流れの50%超が上部段階化酸素の流れに割り当てられる気泡モード位置、段階化酸素の流れが上部段階化酸素の流れと下部段階化酸素の流れとに割り当てられる分割モード位置、および、段階化酸素の流れの50%超が下部段階化酸素の流れに割り当てられる溶融モード位置から選択される少なくとも2つの位置の間で作動されるように構成および配置される、態様2に記載のシステム。
【0010】
態様4.第1の再生式空気-燃料バーナーのセットは第1の壁に位置付けられており、第2の再生式空気-燃料バーナーのセットは第2の壁に位置付けられており、炉は、第1の壁および第2の壁に対して垂直であり、かつ第1の壁と第2の壁とを相互接続する、チャージ壁をさらに備える、態様1に記載のシステム。
【0011】
態様5.第1の二段酸素-燃料バーナーは、第1の空気-燃料バーナーのセットとチャージ壁との間に位置付けられており、第2の二段酸素-燃料バーナーは、第2の空気-燃料バーナーのセットとチャージ壁との間に位置付けられている、態様4に記載のシステム。
【0012】
態様6.第1の再生式空気-燃料バーナーのセットおよび第2の再生式空気-燃料バーナーのセットはともに、第1の壁および第2の壁に対して垂直であり、かつ第1の壁と第2の壁とを相互接続する壁に位置付けられている、態様1に記載のシステム。
【0013】
態様7.コントローラが、第1の空気-燃料バーナーのセットが放射しており、第2のバーナーのセットが再生を行っていることを示す信号を受信するとき、コントローラは、第1の二段バーナーの一次酸素バルブを段階化位置へと作動させ、第1の二段酸素-燃料バーナーの段階化モードバルブを溶融モード位置へと作動させるため、かつ第2の二段酸素-燃料バーナーの一次酸素バルブを一次火炎位置へと作動させ、第2の二段酸素-燃料バーナーの段階化モードバルブを分割モード位置へと作動させるための信号を送信し、コントローラが、第2の空気-燃料バーナーのセットが放射しており、第1のバーナーのセットが再生を行っていることを示す信号を受信するとき、コントローラは、第1の二段バーナーの一次酸素バルブを一次火炎位置へと作動させ、第1の二段酸素-燃料バーナーの段階化モードバルブを分割モード位置へと作動させるため、かつ第2の二段酸素-燃料バーナーの一次酸素バルブを段階化位置へと作動させ、第2の二段酸素-燃料バーナーの段階化モードバルブを溶融モード位置へと作動させるための信号を送信する、態様4に記載のシステム。
【0014】
態様8.第1の壁およびチャージ壁の近傍のガラス底部温度を測定するように位置付けられた第1の底部熱電対、第2の壁およびチャージ壁の近傍のガラス底部温度を測定するように位置付けられた第2の底部熱電対、ならびにチャージ壁の近くの天井温度を測定するように位置付けられた天井熱電対のうちの少なくとも1つをさらに備え、コントローラは、それぞれの温度を示す第1の底部熱電対、第2の底部熱電対、および天井熱電対のうちの少なくとも1つから信号を受信することと、第1の二段酸素-燃料バーナーおよび第2の二段酸素-燃料バーナーの火炎特性を調整するように、炉制御システム、ならびに第1の底部熱電対、第2の底部熱電対、および天井熱電対のうちの少なくとも1つからの信号に応答して、第1の二段酸素-燃料バーナーの一次酸素バルブおよび段階化モードバルブを作動させ、第2の二段酸素-燃料バーナーの一次酸素バルブおよび段階化モードバルブを作動させるための信号を送信することと、を行うようにさらにプログラムされている、態様7に記載のシステム。
【0015】
態様9.再生式ガラス溶融炉の同期された酸素-燃料ブースト方法であって、再生式ガラス溶融炉は、第1の再生式空気-燃料バーナーのセットおよび第2の再生式空気-燃料バーナーのセットと、炉の第1の壁に取り付けられた第1の二段酸素-燃料バーナーと、炉の第2の壁に取り付けられた第2の二段酸素-燃料バーナーと、を有し、第1の二段酸素-燃料バーナーおよび第2の二段酸素-燃料バーナーの各々は、燃料の流れおよび一次酸素の流れを受容するように構成および配置された中央予燃焼部、上部段階化酸素の流れを受容するように構成および配置された上部段階化ポート、ならびに下部段階化酸素の流れを受容するように構成および配置された下部段階化ポートを含み、方法は、第1の空気-燃料バーナーのセットが放射しているときに第2の空気-燃料バーナーのセットが再生を行っており、第1の空気-燃料バーナーのセットが再生を行っているときに第2の空気-燃料バーナーのセットが放射しているように、第1の空気-燃料バーナーのセットおよび第2の空気-燃料バーナーのセットを交互に放射することと、第1および第2の空気-燃料バーナーのセットのうちのどちらが放射しており、第1および第2の空気-燃料バーナーのセットのうちのどちらが再生を行っているかを検出することと、第1の二段酸素-燃料バーナーおよび第2の二段酸素-燃料バーナーの火炎特性を調整するために、第1および第2の空気-燃料バーナーのセットのうちのどちらが放射しており、第1および第2の空気-燃料バーナーのセットのうちのどちらが再生を行っているかに基づいて、第1の二段酸素-燃料バーナーおよび第2の二段酸素-燃料バーナーの各々について、予燃焼部への一次酸素の流れ、ならびに上部段階化酸素の流れおよび下部段階化酸素の流れを制御することと、を含む、方法。
【0016】
態様10.第1の二段酸素-燃料バーナーに供給される酸素の流れは、一次酸素の流れと段階化酸素の流れとの合計であり、段階化酸素の流れは、上部段階化酸素の流れと下部段階化酸素の流れとの合計である、態様9に記載の方法。
【0017】
態様11.第1の再生式空気-燃料バーナーのセットは第1の壁に位置付けられており、第2の再生式空気-燃料バーナーのセットは第2の壁に位置付けられており、炉は、第1の壁および第2の壁に対して垂直であり、かつ第1の壁と第2の壁とを相互接続するチャージ壁をさらに備える、態様9に記載の方法。
【0018】
態様12.第1の二段酸素-燃料バーナーは、第1の空気-燃料バーナーのセットとチャージ壁との間に位置付けられており、第2の二段酸素-燃料バーナーは、第2の空気-燃料バーナーのセットとチャージ壁との間に位置付けられている、態様11に記載の方法。
【0019】
態様13.第1の再生式空気-燃料バーナーのセットおよび第2の再生式空気-燃料バーナーのセットはともに、第1の壁および第2の壁に対して垂直であり、かつ第1の壁と第2の壁とを相互接続する壁に位置付けられている、態様9に記載の方法。
【0020】
態様14.炉の第1の壁は、チャージ壁の右側に位置付けられており、炉の第2の壁は、チャージ壁の左側に位置付けられており、方法は、第1の空気-燃料バーナーのセットが放射しており、第2のバーナーのセットが再生を行っているとき、第1の二段バーナーの一次酸素バルブを段階化位置へと作動させ、第1の二段酸素-燃料バーナーの段階化モードバルブを溶融モード位置へと作動させ、かつ第2の二段酸素-燃料バーナーの一次酸素バルブを一次火炎位置へと作動させ、第2の二段酸素-燃料バーナーの段階化モードバルブを分割モード位置へと作動させることと、第2の空気-燃料バーナーのセットが放射しており、第1のバーナーのセットが再生を行っているとき、第1の二段バーナーの一次酸素バルブを一次火炎位置へと作動させ、第1の二段酸素-燃料バーナーの段階化モードバルブを分割モード位置へと作動させ、かつ第2の二段酸素-燃料バーナーの一次酸素バルブを段階化位置へと作動させ、第2の二段酸素-燃料バーナーの段階化モードバルブを溶融モード位置へと作動させることと、をさらに含む、態様11に記載の方法。
【0021】
態様15.第1の壁およびチャージ壁の近傍の第1のガラス底部温度のうちの少なくとも1つを測定すること、第2の壁およびチャージ壁の近傍の第2のガラス底部温度を測定すること、ならびにチャージ壁の近くの天井温度を測定すること、ならびに、第1の二段酸素-燃料バーナーおよび第2の二段酸素-燃料バーナーの火炎特性を調整するために、第1および第2の空気-燃料バーナーのセットのうちのどちらが放射しており、第1および第2の空気-燃料バーナーのセットのうちのどちらが再生を行っているか、測定された第1のガラス底部温度、測定された第2のガラス底部温度ならびに測定された天井温度に基づいて、第1の二段酸素-燃料バーナーおよび第2の二段酸素-燃料バーナーの各々について、予燃焼部への一次酸素の流れ、ならびに上部段階化酸素の流れおよび下部段階化酸素の流れを制御することをさらに含む、態様14に記載の方法。
【0022】
本明細書に開示されているシステムの様々な態様は、単独で、または互いに組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、ゼロポート酸素-燃料ブーストバーナーを示すサイドポート再生炉の上面概略図であり、チャージ壁とポート1空気-燃料バーナーとの間に再循環ガスのゾーンが発生し得、ブーストバーナー火炎が近くのポート1空気-燃料火炎に偏向されるまたは引き込まれる可能性があることを示す。
【0024】
【
図2】
図2は、ゼロポート酸素-燃料ブーストバーナーを有する再生炉の上面図のCFDモデリング結果を示しており、ブーストバーナー火炎を偏向させる可能性があるブーストバーナー付近(図の左端)の再循環パターンの影響を示している。
【0025】
【
図3】
図3は、
図2の炉の側面図のCFDモデリング結果を示す。
【0026】
【
図4】
図4は、中央の一次ノズル(燃料リッチな一次火炎を形成する燃料および酸素)、ならびに上部および下部段階化ポート(酸素が流れる)を示す、バーナーブロックの加熱面からの二段酸素-燃料バーナーの前方斜視図である。
【0027】
【
図5A】
図5Aは、
図4の二段バーナーの各種の段階化モードを示す概略図である。気泡モード(
図5A)では、酸素は主に一次火炎の上方に段階化され、気泡不安定化のための還元ガス(CO)を含有する煤煙下層を有する長い火炎を作り出す。
【
図5B】
図5Bは、
図4の二段バーナーの各種の段階化モードを示す概略図である。分割モード(
図5B)では、一次火炎の上下両方に酸素が段階化され、高乱流の位置に適した高運動量かつ高輝度の火炎を作り出す。
【
図5C】
図5Cは、
図4の二段バーナーの各種の段階化モードを示す概略図である。溶融モード(
図5C)では、主に一次火炎の下方に酸素が段階化され、高強度溶融および天井シールドのために下側の輝度が高い長い火炎を作り出す。
【0028】
【
図6】
図6は、段階化モードおよび一次酸素(段階化)バルブの自動制御を可能にするために空気圧式アクチュエータが設置された二段酸素-燃料バーナーの背面図である。
【0029】
【
図7】
図7は、ゼロポート位置に設置された2つの二段バーナーと、2つの空気圧式制御ボックスと、システムを制御するように構成されたコントローラと、を含む、同期された酸素-燃料ブーストシステムの一実施形態を示す概略図である。
【0030】
【
図8】
図8は、底部熱電対の位置を示す、酸素-燃料ブーストバーナーを備えた再生炉の平面図である。
【0031】
【
図9】
図9は、同期されていない単段バーナーに対する同期されていない、および同期された二段バーナーの底部温度変動を示す結果の概要のグラフである。
【0032】
【
図10A】
図10Aは、左側の酸素-燃料ブーストバーナーと対向する(右側の)空気-燃料バーナーの放射とを比較した写真である。スロート端(排出端)壁からチャージ壁を見返す視点である。
図10Aは、最小限の段階化を有する単段階バーナーを示す。黒い破線は写真のチャージ端壁上の同じ位置を表す
【
図10B】
図10Bは、左側の酸素-燃料ブーストバーナーと対向する(右側の)空気-燃料バーナーの放射とを比較した写真である。スロート端(排出端)壁からチャージ壁を見返す視点である。
図10Bは、同期されたブーストなしの二段バーナーを示す。黒い破線は写真のチャージ端壁上の同じ位置を表す
【
図10C】
図10Cは、左側の酸素-燃料ブーストバーナーと対向する(右側の)空気-燃料バーナーの放射とを比較した写真である。スロート端(排出端)壁からチャージ壁を見返す視点である。
図10Cは、同期されたブーストありの二段バーナーを示す。黒い破線は写真のチャージ端壁上の同じ位置を表す
【0033】
【
図11】
図11は、ブーストバーナーに最も近い炉天井熱電対の位置を示す炉の平面図である。
【0034】
【
図12】
図12は、同期されていない、および同期された二段バーナーについて、同期されていない単段バーナーに対するブーストバーナーに最も近い平均天井熱電対温度を比較したグラフである。
【0035】
【
図13】
図13は、同期されていない、および同期された二段バーナーについて、同期されていない単段バーナーに対するガラス1トン当たりのガラス欠陥を気泡および石に関して比較したグラフである。
【0036】
【
図14】
図14は、同期されていない、および同期された二段バーナーについて、同期されていない単段バーナーに対する、カレット割合の変動が補正された平均エネルギー消費原単位を示すグラフである。
【0037】
【
図15】
図15は、炉内の燃焼生成物の循環経路を示す、酸素-燃料ブーストバーナーなしのエンドポート再生炉の平面図である。
【0038】
【
図16】
図16は、酸素-燃料ブーストバーナーを備えたエンドポート再生炉の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
酸素ブーストの利点を最大化しつつ、現在の課題を克服するために、発明者らは、各再生器逆転に伴って火炎特性(特に長さ、輝度、および運動量)を自動的に調整することができる同期されたブーストシステムを開発した。同期されたブーストシステムは、炉技術者が、特定のガスフローおよび火炎条件に応じて、両方の放射方向に関して各バーナーの設定をカスタマイズすることを可能にする。このようなシステムは、各バーナーの火炎品質が最大化されるとともに、再生器の逆転サイクルによって生成される乱流の悪影響を克服することを保証することができる。
【0040】
同期されたブーストシステムは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,584,051号に詳細に記載されている
図4に示されるような二段バーナー20を利用する。二段バーナーは、高い運動量および輝度を有する非常に高度な酸素段階化を実現するように設計されており、これは、酸素-燃料ブースト用途に理想的である火炎特性である。二段バーナーは、段階化酸素の方向および量を制御する2つのバルブを含む、高度な調整機能を備えている。これらのバルブは、本明細書では、段階化モードバルブおよび一次酸素バルブとそれぞれ称される。ブースト用途における二段バーナーの性能は、本明細書では、前の世代の単段バーナーと比較される(米国特許第7,390,189号を参照されたい)。さらに、本明細書の開示は、再生炉の動作との同期を追加することによる二段バーナーの性能への影響を示す。3つのケースすべて、すなわち単段バーナーブースト、同期されたシステムなしの二段バーナーブースト、および同期ありの二段バーナーブーストに関して、様々な炉動作パラメータ、例えば、エネルギー消費、局所的な炉温度、およびガラスの欠陥への影響が本明細書に記載される。
【0041】
二段バーナーは、運動量、長さ、および輝度などの火炎特性の制御における高度な調整性を主な理由として、同期されたブーストシステムを有効にすることを可能にする。二段バーナーはガラス産業向けに設計されたフラットフレイム酸素-燃料バーナーであり、高燃費のための火炎放射の増加、気泡削減能力、ガラス欠陥の低減、および低NOx排出などのいくつかの機能を備えている。
【0042】
二段バーナー20のバーナーブロックは3つのポート、すなわち、燃料および一次酸素が燃焼を開始し、火炎が根付いて安定化される中央予燃焼部ポート24、上部酸素段階化ポート22、および下部酸素段階化ポート26を有する。二段バーナー20は、段階化モードバルブ30を介して一次予燃焼部に隣接する上部段階化ポートまたは下部段階化ポートのいずれかまたは両方を通るよう、段階化酸素を方向制御し、割り当てることができるユニークな酸素段階化機能を有する。酸素段階化のモードには気泡制御モード、溶融モード、および分割モードが含まれる。段階化酸素のそのような方向制御は、火炎の長さ、運動量、輝度、およびガラス表面に隣接するガス雰囲気の調整を含むいくつかの利点を提供する。
図5A~5Cは二段バーナー20の各種の段階化モードを示す。酸素段階化はまた、酸素と天然ガスの混合を遅らせることによって火炎温度を下げ、NOxの形成を防止する。
【0043】
段階化モードバルブ30は以下の3つの異なるバーナー動作モードの実現を可能にする。
【0044】
分割モード.分割モードでは、
図5Bに示されるように、基本的に等しい量の酸素が上部O2段階化ポート22および下部O2段階化ポート26の両方に向けられる。これにより、対向する乱流環境下でも安定な、より短く、輝度が高く、比較的高い運動量の火炎が得られる。分割モードは、ブーストバーナーが再生炉の排気側から放射している場合に特に有用であり得る。
【0045】
溶融モード.溶融モードでは、
図5Cに示すように、酸素はバーナーブロックの下部酸素段階化ポート26に向けられる。下部酸素段階化ポート26は一次火炎の下方に位置する。火炎噴射の下側での段階化酸素および燃料の局所的燃焼によって引き起こされる熱放射のため、火炎は明るい底面を作り出す。非常に燃料リッチな噴射において形成される煤煙は、上方放射を制限する光学シールドとして機能するため、溶融モードで生成された高放射線は優先的にガラス表面に向かって下方に送られ、溶融プロセスを加速させる。
【0046】
気泡モード.気泡モード(または気泡制御モード)では、
図5Aに示すように、酸素は、一次火炎の上方に位置するバーナーブロックの上部酸素段階化ポート22に向けられる。得られる火炎の下側にはすすが多く、(数%の濃度で)主に一酸化炭素で構成された還元ガスを含有する。この火炎が作り出す還元雰囲気はガラス表面の上方で広がり、表面の気泡を消失させる。
【0047】
一次酸素バルブ28の使用は、前述の3つの段階化モードの各々の燃焼特性を緩和する。一次酸素バルブ28が100%開いている場合、バーナーへの総投入酸素の約75%は、中央バーナーブロック(予燃焼部)導管につながる一次ノズルを通過する。この条件は中央ノズル内の酸素と天然ガスの混合を強化し、より高い運動量を有し、より短く、より安定した火炎を作り出す。一次酸素バルブ28が閉じられると、バーナー酸素の流れの約5%は一次ノズルを通って流れ、残りの部分(95%)は、選択された段階化モードに従って上部および/または下部段階化ポートに分配される。一次酸素バルブ28が閉じられると、酸素段階化の最大量を達成することが可能であり、火炎の長さは、所与の燃料の流れ量(放射量)に対して最大長となる。また、中間煤煙が豊富に形成されるため、NOx排出量は減少し、火炎輝度は上昇する。さらに、一次酸素バルブが徐々に閉じられるにつれて火炎の運動量は減少する。
【0048】
同期されたブーストシステムは、空気-燃料サイドポート炉の各再生器逆転サイクルとあわせて、最適なブーストバーナー火炎特性、特に長さ、輝度、および運動量を得ることを可能にする。これは、バーナーの段階化モードバルブ30および一次酸素バルブ28の空気圧または電気作動を使用して火炎特性を自動的に遠隔制御することによって達成される。好ましい実施形態では、バーナーは、酸素バルブ28、30の両方について空気圧式アクチュエータを有する。両バルブの代表的な空気圧式アクチュエータの配置を
図6に示す。空気圧式アクチュエータは典型的には複動式であり、したがって、各々が、機械的ストッパーを用いて予め設定可能な2つの異なる制御位置を達成することができる。同期されたバーナー制御システムは、プラントまたは炉全体の制御システムと連携して動作し、各再生器逆転サイクルでバルブの位置を最適プリセット位置に変更する。最適なバーナー設定は、例えば、システムの初期設定中に、ブーストバーナー火炎の目視観察、ならびにブーストバーナー近傍のチャージ端壁および胸壁の光学的温度測定を通じて決定され得る。これは、様々なバルブ設定で、火炎の品質および外観を評価するとともに局所的な耐火温度を測定することを含む反復プロセスであり得る。なお、最適なバルブ位置は、ブーストバーナー近傍での局所的乱流、設備ごとに異なる炉の形状に起因するガス流パターンの変化、ブーストバーナーの放射量、空気-燃料バーナーの燃料分配、および再生器のフローキャパシティを含むが、これらに限定されない様々なファクタに応じて変化し得ることに留意されたい。次に、最適なバルブ位置設定を同期されたシステムにプログラムして、段階化モードバルブが各逆転サイクル中に最適な位置に移動するようにする。
【0049】
なお、火炎の燃焼特性を広範囲に調整することができるため二段バーナーが同期されたブーストに理想的であるが、単一の酸素段階化モードバルブを有する酸素-燃料バーナー(例えば、US7,390,189)であっても本発明のシステムに容易に適合可能であることに留意されたい。
【0050】
図7に示されるように、同期されたブーストシステム100は、逆転がいつ生じるかを示す信号を炉分散制御システム(DCS)42から受信する、プログラマブル論理コントローラ(PLC)40などのコントローラを使用する。次いで、PLCは、それぞれ、各ブーストバーナー20Aおよび20Bに設置された段階化モードバルブ30に対応する空気圧式アクチュエータを駆動するソレノイド44Aおよび44Bにそれぞれ信号を送信する。
図7は、同期されたブーストシステム100の構成要素の典型的なレイアウトを示す。
【0051】
代替的な実施形態では、いくつかの再生式ガラス炉は、エンドポート空気-燃料バーナー構成を使用する。
図15にはエンドポート炉110が示されており、第1の空気-燃料バーナーポートのセット130Bを有する第1の再生器112Bが空気-燃料火炎132を放射しており、一方、第2の空気-燃料バーナーポートのセット130Aを有する第2の再生器112Aは排気を行っている。再生器112Bおよび112Aの両方が炉110のチャージ端114に配置されている。各バーナポートセット130Aおよび130Bは1つ以上の空気-燃料バーナーを有してもよい。高温燃焼生成物134は溶融体の上を炉110の排出端116に向かって循環し、その後再循環し、煙道ガス136として炉110を出る。チャージポート140を介して固体チャージが炉110に加えられ、溶融ガラスは流れの矢印Gによって示されるように炉から出る。再生器は規則的なサイクルで逆転し、第1の再生器112Bが排気し、第2の再生器112Aが放射を行う。第1の側壁118Bおよび第1の側壁118Bの反対側の第2の側壁118Aは、チャージ端114を排出端116に結合する。
【0052】
図16は、炉110への同期された酸素-燃料ブーストバーナー120Aおよび120Bの追加を示す。第1の酸素-燃料ブースターバーナー120Bは第1の側壁118Bに位置付けられ、第2の酸素-燃料ブースターバーナー120Aは第2の側壁118A内に位置付けられている。ブーストバーナー120Aおよび120Bは対向する側壁118Aおよび118Bにあるが、必ずしも互いに直接対向するように配置されるわけではない。サイドポート再生炉10でのように、最適化された性能を得るために、酸素-燃料ブーストバーナー120Aおよび120Bの動作は空気-燃料再生器112Aおよび112Bの逆転サイクルに同期される。
【0053】
サイドポート再生炉における例
【0054】
同期されたブーストシステムを開発し、サイドポート構成を有する1日650トン(「tpd」)のフロートガラス炉に設置した。システムにより、同期された段階化なしで動作する単段バーナーを置き換えた。また、同期なしで二段バーナーを用いた中間動作フェーズも実施した。数ヶ月の動作を通じてこれら3つの動作フェーズの性能を比較した結果を検証した。本明細書では、局所的なガラスおよび耐火天井の温度、ガラス欠陥、ならびに炉溶融効率についての結果が提示されている。
【0055】
試験中の主要な炉独立パラメータには、ガラスの生産量(生産速度)、2つのブーストバーナーの各々の放射量、およびガラス原料と混合されるガラスカレット(リサイクルガラス)の割合が含まれる。生産量は公称650tpdの設定値の+/-2%以内を維持し、ブーストバーナーの放射量は8.25MMBtu/hr/バーナーで一定に保たれた。表1に示されるように、カレットはフェーズ間でわずかに変化した。
表1--各試験フェーズの平均カレット割合
【表1】
【0056】
同期されたブーストシステムを開始する前に、火炎特性、したがって、段階化モードバルブのプリセット位置の手動最適化を行った。目視観察、および1ミクロンの手持ちパイロメーターを使用した光学的温度測定を使用して、各バーナーおよび逆転放射サイクルの最適な段階化モードおよび一次酸素バルブ設定を決定した。
【0057】
以下の表2は、試験期間中に同期されたブーストシステムを備えた二段バーナーのために決定された最適なバルブ設定を示す。これらの最適なバルブ設定は、試験期間中の現場の条件に基づいて、この特定のケースのために選択された。最適なバルブ設定は、ブーストバーナー近傍での局所的乱流、設備ごとに異なる炉の形状に起因するガス流パターンの変化、酸素-燃料ブーストバーナーの放射量、空気-燃料バーナーの燃料分配、および再生器のフローキャパシティを含むが、これらに限定されない様々なファクタにより、同じ設備でまたは異なる設備で時間とともに変化し得る。一般に、空気-燃料バーナーと反対方向に放射している酸素-燃料ブーストバーナーの最適条件は、一次酸素の流れの量を増加させ、段階化モードを分割モードに変更することを含み、これは、より高い運動量の火炎を提供する。空気-燃料バーナーと同じ側で放射している酸素-燃料ブーストバーナーの一般的最適条件は、一次酸素を減少させ(段階化酸素を増加させ)、段階化モードを溶融モードに設定することで、下方のバッチ材料への熱伝達を最大化することを含む。最適条件を決定する厳密なバルブ設定は、火炎の観察、ならびに/または、炉の熱電対および/もしくは光学的温度測定を含むがこれらに限定されない温度指標に基づいて現場で決定されるべきである。最適条件を典型的に包含し得る一次酸素の流れおよび段階化酸素の流れの範囲には、空気-燃料バーナーと反対方向に放射している酸素-燃料ブーストバーナーについて、60%~90%の一次酸素の流れおよび残り(40%~10%)の段階化酸素の流れ、ならびに、空気-燃料バーナーと同じ方向で放射している酸素-燃料ブーストバーナーについて、5%~40%の一次酸素の流れおよび残り(95%~60%)の段階化酸素の流れ、が含まれる。
【0058】
表3および4に同期されていない二段バーナーおよび同期されていない単段バーナーの類似情報をそれぞれ示す。
表2--二段の同期されたブーストバーナーの最適化された段階化設定
【表2】
表3--二段の同期されていないブーストバーナーの段階化設定
【表3】
表4--単段の同期されていないブーストバーナーの段階化設定
【表4】
【0059】
結果.
【0060】
ガラス底部温度への影響.底部温度を上昇させることにより、ガラス溶融体内の自然循環流動が強化され、ガラス滞留時間が増加し、それにより、ガラス生産物内の気体含有物(シードまたはバブル)の数が減少する。
図8に示すように、ブーストバーナーの約12フィート、タンク下流に位置する最も近い熱電対46A(
図9の図面では右側、「R」で示されている)および46B(
図9の図面では左側、「L」で示されている)を使用してガラス底部温度を炉の左側および右側で記録した。
【0061】
図9は、同期あり(「同期」)および同期なし(「HRx」)の二段バーナーの平均底部温度の正規化された温度差(ΔT)を示す。ここで示されている結果は、試験開始前に設置された同期なし単段バーナーからの測定値に対して正規化されている。二段の同期されたブーストのケースの平均底部温度は、単段バーナーと比較して6°F増加した。さらに、左側と右側の熱電対の変化はほぼ同じであり、これは、再生器サイクルの放射の半分および排気の半分の両方で火炎が安定していてバランスが取れていたことを意味する。対照的に、同期されたブーストなしの二段バーナーの平均底部温度は入り交じった結果を示した。具体的には、左底部熱電対は単段バーナーのそれよりもわずかに高い一方、右底部熱電対がわずかに低かった。左右の不均衡は、バーナーの同期の欠如のために、再生器サイクルの両半分の最適な火炎が欠如したことによる火炎の不安定性に起因する可能性がある。
【0062】
さらに、再生器サイクルの排気フェーズ中に撮影された
図10A、10B、および10Cに示される火炎の写真を参照して、ガラス底部温度に関するバーナーの「平均」相対的性能を定性的に理解することができる。
図10Aの単段の同期されていないバーナーからの火炎は、乱流の影響を受けて拡散しているように見える。
図10Bの二段の同期されていないバーナーからの火炎は、より直線的かつ一貫しているように見えるが、炉内での放射の逆転中に火炎特性を一貫して維持するための段階化は限られている。
図10Cの二段の同期されたバーナーからの火炎はより長く、かつより明るく、段階化を最大化することができ、バッチへのより良好な熱伝達を可能にする。要約すると、これらの写真は、2つの同期されていないケース(
図10Aおよび10B)に対して、二段の同期されたブーストバーナー(
図10C)で達成されたより長く、より輝度が高い火炎を強調している。
図10Cのより長く、より明るい火炎は、明らかにより多くの表面積およびより高い放射率を有し、これは、火炎からガラスへのより高い熱伝達率、したがって、より高い底部温度をもたらすであろう。
【0063】
炉天井温度への影響.これは、耐火寿命し、耐火物に基づくガラス欠陥(石)を低減するため、比較的低い天井温度での動作が望ましい。炉10内のブーストバーナー20Aおよび20Bに最も近い天井熱電対48は、
図11に示すように、ブーストバーナー20Aおよび20Bの間の中央で、チャージ端壁から約12フィート離れて位置している(バーナーから約4フィート、タンク下流)。
【0064】
図12は、同期あり、およびなしの二段バーナーの局所的天井熱電対の平均温度差を単段バーナー結果に対して示している。同期されたブーストなしの二段バーナー(「HRx」)は、先に設置された単段バーナーと比較して約7°Fの平均温度低下を示す。これは主に、二段バーナーが単段バーナーよりも高い火炎運動量を有し、より程度の高い火炎下段階化を実現できることが理由である。米国特許第10,584,051号で説明されているように、より高い程度の火炎下段階化は、火炎の上方により高密度のすす粒子層を作り出し、これは放射火炎エネルギーの天井への上方伝達を妨げる。さらに、二段バーナーの高い運動量は、ある程度、天井に向かって火炎が吹き上がるのを防ぎ、これも天井温度を低下させる傾向がある。同期されたブースト(「同期」)ありの二段バーナーは、約12°Fというさらに大きな平均天井温度の低下を示した。この結果は、二段バーナーの火炎特性が完全に最適化されて火炎輝度および運動量を最大化し、それによって、より高い割合の熱伝達をガラス溶融体に導く同期されたブーストシステムの有効性を強調している。
【0065】
ガラス欠陥への影響.生産されたガラス1トン当たりの平均欠陥数に基づいて、気泡および石に関するガラス欠陥データを計算した。同期あり、およびなしの二段バーナーの欠陥データは単段バーナーの欠陥データに対して再び正規化され、
図13に示されている。二段の同期されたブーストシステムの結果は、気泡および石でそれぞれ8%および21%の減少を示した。これらの好ましい結果は、やはり同期されたシステムを使用して達成されたガラス底部温度の上昇および天井温度の低下から論理的に導かれる。すなわち、先に説明したように、より高い底部温度は、ガラス溶融体内の自然循環の強化による気泡の減少をもたらし、一方、より低い天井温度は耐火物がガラスに流れ込むことを低減し、それによって「石」を減少させる。同期されたブーストなしの二段バーナーは欠陥気泡がわずかに増加していた。
図9に示されているように、平均底部温度(左右の熱電対の平均)がわずかに低いことを考えると予想外ではなかった。さらに、同期されたブーストなしの二段バーナーは、やはりおそらくは天井温度の低下に起因して、石が12%減少した。
【0066】
エネルギー消費原単位.炉のエネルギー消費原単位はいくつかの試験変数が関与する間接的な計算であり、試験変数のすべてが試験プログラム中に制御されたわけではなく、評価するのが最も困難なパラメータであった。具体的には、空気-燃料バーナーの総天然ガス消費率に天然ガス発熱量を掛け、評価にわたるガラスの総生産トン数で割ることによってエネルギー消費を評価した。その後、3つの試験期間の各々で使用されたカレットの平均パーセントの変化についてエネルギー消費の結果を補正した。
図14に示される結果は、両方の二段バーナーの補正後エネルギー消費が単段バーナーのそれよりも約2.5%低かったことを示している。なお、エネルギー消費の結果は、試験開始直前に運用可能にされた炉制御システムの影響を受けた可能性があることに留意されたい。この制御システムは、燃料の流量を緩和するために、主要な炉の温度に依存する従来のタイプのものではなかった。この制御システムは、継続的な学習/データ整理から導出された複雑な非線形アルゴリズムに基づいて空気-燃料放射量を調整した。したがって、試験フェーズ間でハードウェア変更(酸素-燃料バーナー)および動作変更(バーナー同期)が行われたことが学習パターンに影響を与え、制御応答に影響した可能性がある。それでも、同期の有無にかかわらず、二段バーナーがベースラインの単段バーナーに対してエネルギー消費を削減したことは明らかである。
【0067】
要約すると、同期されたブーストシステムは、空気-燃料再生式サイドポート炉内の酸素ブーストに固有の高乱流および変化する気流を克服するように設計された。再生器の逆転サイクルごとに、カスタマイズされた火炎特性(運動量、輝度)を自動的に各バーナーに設定できるようにすることにより、酸素-燃料ブーストバーナーの性能が改善された。本明細書に記載の試験結果は、同期されたブーストシステムが、より有利な炉天井および底部温度を生成すること、ならびにエネルギー消費を2~3%削減しつつガラス品質を大幅に改善することが可能であることを示した。
【0068】
本発明は、本発明のいくつかの態様の例示として意図される実施例において開示されている具体的な態様または実施形態によって範囲が限定されるべきではなく、機能的に均等であるいかなる実施形態も本発明の範囲内にある。本明細書に示され、記載されるものに加えて、本発明の様々な変更形態が当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲の範囲に含まれることが意図される。