(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトの調製方法
(51)【国際特許分類】
C01G 51/00 20060101AFI20231018BHJP
C01G 51/04 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C01G51/00 A
C01G51/04
(21)【出願番号】P 2022538225
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 CN2019126213
(87)【国際公開番号】W WO2021120040
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】201911303146.2
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522244089
【氏名又は名称】格林美(江蘇)鈷業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GEM (JIANGSU) COBALT INDUSTRY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.8 of Binjiang North Road, Taixing City, Taizhou, Jiangsu 225400, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】許開華
(72)【発明者】
【氏名】蒋振康
(72)【発明者】
【氏名】張愛青
(72)【発明者】
【氏名】李炳忠
(72)【発明者】
【氏名】王超
(72)【発明者】
【氏名】許東偉
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110078132(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109354075(CN,A)
【文献】特開2004-051471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 51/00-51/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト塩溶液、液体アルカリ及び酸化剤を反応ケトルに加えて
沈殿反応を行い、D50が2.0~2.5μmになると、アルミニウムコバルト溶液を反応系に加えて反応させ、D50が3.5~4.0μmになると、アルミニウムコバルト溶液の供給を停止し、他の条件はそのままで反応を継続し、D50が所望の粒径になったら、反応を停止し、アルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルトスラリーを得るステップ1と、
ステップ1で得られたアルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルトスラリーに対して熟成、脱水、洗浄、乾燥を行って、アルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルト粉末を得るステップ2と、
ステップ2で得られたアルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルト粉末を仮焼して、高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトを得るステップ3と、を含むことを特徴とする、高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトの調製方法。
【請求項2】
前記ステップ1において、D50が3.5~4.0μmになると、アルミニウムコバルト溶液の供給を停止し、他の条件はそのままで反応を継続し、D50が所望の粒径になったら、反応を停止
することは、
D50が3.5~4.0μmになると、アルミニウムコバルト溶液の供給を停止し、コバルト塩溶液の供給を継続し、前記反応ケトル内の液位がオーバーフローレベルに達した後、オーバーフローしたスラリーに対して濃縮、上清排出を行い、濃厚スラリーを前記反応ケトル内に戻して反応を継続し、D50が所望の粒径になったら、反応を停止すること
であることを特徴とする、請求項1に記載の高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトの調製方法。
【請求項3】
前記ステップ1において、前記コバルト塩溶液
は濃度130g/Lの硫酸コバルト溶液であり、前記硫酸コバルト溶液の供給速度は220~260L/hであり、前記液体アルカリ
の濃度は100g/Lであり、前記液体アルカリの供給速度は50~150L/hであり、前記酸化剤
は空気であり、前記空気の供給速度は20~30L/hであり、前記供給時の撹拌速度は300~600rpmであることを特徴とする、請求項2に記載の高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトの調製方法。
【請求項4】
前記ステップ1において、
前記アルミニウムコバルト溶液中のコバルトイオンとアルミニウムイオンとの濃度比は100:
0.8であることを特徴とする、請求項
3に記載の高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトの調製方法。
【請求項5】
前記コバルト塩溶液とアルミニウムコバルト溶液のいずれにおいてもキレート剤が含有され、前記コバルト塩溶液中のコバルトイオンとキレート剤との濃度比は0.0
7であり、前記アルミニウムコバルト溶液中のコバルトイオンとキレート剤との濃度比は0.0
7であることを特徴とする、請求項
4に記載の高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトの調製方法。
【請求項6】
前記ステップ1において、前記反応ケトルにはpH値9.0~11の底液が含有されることを特徴とする、請求項
5に記載の高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトの調製方法。
【請求項7】
前記ステップ2において、前記洗浄は80~90℃の脱イオン水を用いて行われ、前記乾燥の温度は1
50℃であることを特徴とする、請求項
6に記載の高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトの調製方法。
【請求項8】
前記ステップ3において、前記仮焼の温度は500~750℃であり、仮焼の時間は10~20hであることを特徴とする、請求項
7に記載の高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトの調製方法。
【請求項9】
ステップ3で得られた高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトを洗浄及びベーキングするステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1から
8のいずれか1項に記載の高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化コバルト調製の技術分野に属し、特に、高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、新しいエネルギー源として高エネルギー、長寿命、低汚染等の利点を有し、携帯電話、コンピュータ、電気自動車、国防など様々な分野に広く応用されている。3C電子製品には軽量・小型が求められ、これに応じて電池には高エネルギー密度が求められている。電池内の正極材が最終的なリチウムイオン電池の性能を直接決定するが、現在最も主要な3C電子製品用正極材はコバルト酸リチウムであり、そのエネルギー密度がリチウムイオン電池のエネルギー密度をある程度決定している。高電圧のコバルト酸リチウムは高グラム容量の特性を有し、一般的なコバルト酸リチウムに比べてより高いエネルギー密度を有し、今後のコバルト酸リチウムの研究開発の主な方向になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記に鑑みて、本願は、高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトの調製方法を提供し、従来技術で調製されたアルミニウムドープ酸化コバルトにおけるアルミニウム元素のドープが均一でなく、タップ密度が低く、結果として作製した電池のサイクル性能及び充放電性能が不十分になるという問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の技術的解決手段は下記のように実現される。
【0005】
コバルト塩溶液、液体アルカリ及び酸化剤を反応ケトルに加えて共沈反応を行い、D50が2.0~2.5μmになると、アルミニウムコバルト溶液を反応系に加えて反応させ、D50が3.5~4.0μmになると、アルミニウムコバルト溶液の供給を停止し、他の条件はそのままで反応を継続し、D50が所望の粒径になったら、反応を停止し、アルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルトスラリーを得るステップ1と、
ステップ1で得られたアルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルトスラリーに対して熟成、脱水、洗浄、乾燥を行って、アルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルト粉末を得るステップ2と、
ステップ2で得られたアルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルト粉末を仮焼して、高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトを得るステップ3と、を含む、高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトの調製方法である。
【0006】
好ましくは、前記ステップ1において、D50が3.5~4.0μmになると、アルミニウムコバルト溶液の供給を停止し、他の条件はそのままで反応を継続し、D50が所望の粒径になったら、反応を停止し、具体的な方法としては、
好ましくは、D50が3.5~4.0μmになると、アルミニウムコバルト溶液の供給を停止し、コバルト塩溶液の供給を継続し、前記反応ケトル内の液位がオーバーフローレベルに達した後、オーバーフローしたスラリーに対して濃縮、上清排出を行い、濃厚スラリーを前記反応ケトル内に戻して反応を継続し、D50が所望の粒径になったら、反応を停止する。
【0007】
好ましくは、前記ステップ1において、前記コバルト塩溶液の供給速度は220~260L/hであり、前記液体アルカリの供給速度は50~150L/hであり、前記酸化剤の供給速度は20~30L/hであり、前記供給時の撹拌速度は300~600rpmである。
【0008】
好ましくは、前記ステップ1において、前記コバルト塩溶液中のコバルトイオンの濃度は120~140g/Lであり、前記液体アルカリの濃度は80~150g/Lであり、前記酸化剤は空気、酸素ガス又は過酸化水素水のうちの少なくとも1つである。
【0009】
好ましくは、前記ステップ1において、前記アルミニウムコバルト溶液中のコバルトの濃度は120~140g/Lであり、前記アルミニウムコバルト溶液中のコバルトイオンとアルミニウムイオンとの濃度比は100:0.5~1である。
【0010】
好ましくは、前記コバルト塩溶液とアルミニウムコバルト溶液のいずれにおいてもキレート剤が含有され、前記コバルト塩溶液中のコバルトイオンとキレート剤との濃度比は0.04~0.1であり、前記アルミニウムコバルト溶液中のコバルトイオンとキレート剤との濃度比は0.04~0.1である。
【0011】
好ましくは、前記ステップ1において、前記反応ケトルにはpH値9.0~11の底液が含有される。
【0012】
好ましくは、前記ステップ2において、前記洗浄は80~90℃の脱イオン水を用いて行われ、前記乾燥の温度は120~180℃である。
【0013】
好ましくは、前記ステップ3において、前記仮焼の温度は500~750℃であり、仮焼の時間は10~20hである。好ましくは、該方法は、ステップ3で得られた高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトを洗浄及びベーキングするステップをさらに含む。
【0014】
従来技術に比べて、本発明では、まずコバルト塩溶液を加えて共沈反応を行い、一定の粒径に達した後、さらにアルミニウムコバルト溶液を加えて共沈反応を行う方法を採用することによって、ドープするアルミニウム元素が酸化コバルトの格子内に完全に組み込まれることが可能となり、それによって、アルミニウムドープ酸化コバルトのタップ密度及び均一性が効果的に向上し、電池のサイクル性能及び充放電性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1で得られた高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトと非ドープ酸化コバルトのXRDパターンを比較分析した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、具体的な実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、ここで説明する具体的な実施例は単に本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するためのものではないことを理解すべきである。
【0017】
本発明はレーザー粒度分析機を用いて、アルミニウムドープ酸化コバルト生成プロセスにおける粒子粒径及び最終的に得られたアルミニウムドープ酸化コバルト粒子の粒径を測定する。本発明の実施例において使用される化学試薬は、特に説明しない限り、いずれも一般的な商業的供給源から得られるものである。
【0018】
本発明の実施例で提供される高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトの調製方法は、以下のステップを含む。
【0019】
ステップ1では、コバルト塩溶液、液体アルカリ及び酸化剤をpH値9.0~11の底液を含有する反応ケトルに加えて共沈反応を行い、D50が2.0~2.5μmになると、アルミニウムコバルト溶液を反応系に加えて反応させ、D50が3.5~4.0μmになると、アルミニウムコバルト溶液の供給を停止し、コバルト塩溶液の供給を継続し、前記反応ケトル内の液位がオーバーフローレベルに達した後、オーバーフローしたスラリーに対して濃縮、上清排出を行い、濃厚スラリーを前記反応ケトル内に戻して反応を継続し、D50が所望の粒径になったら、反応を停止し、アルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルトスラリーを得る。
ここでコバルト塩溶液の供給速度は220~260L/hであり、好ましくは240L/hである。液体アルカリの供給速度は50~150L/hであり、好ましくは100L/hである。前記酸化剤の供給速度は20~30L/hであり、好ましくは25L/hである。前記供給時の撹拌速度は300~600rpmであり、好ましくは500rpmである。前記コバルト塩溶液中のコバルトイオンの濃度は120~140g/Lであり、好ましくは130g/Lである。前記液体アルカリの濃度は80~150g/Lであり、好ましくは100g/Lである。前記酸化剤は空気、酸素ガス又は過酸化水素水のうちの少なくとも1つである。コバルト塩は塩化コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルトのうちの1つであり、好ましくは硫酸コバルトである。アルミニウムコバルト溶液中のアルミニウム塩は硫酸アルミニウム又は硝酸アルミニウムであり、好ましくは硫酸アルミニウムである。アルミニウムコバルト溶液中のコバルトイオンとアルミニウムイオンとの濃度比は100:0.5~1であり、好ましくは100:0.85である。前記コバルト塩溶液とアルミニウムコバルト溶液のいずれにおいてもキレート剤が含有され、前記コバルト塩溶液中のコバルトイオンとキレート剤との濃度比は0.04~0.1であり、好ましくは0.07である。前記アルミニウムコバルト溶液中のコバルトイオンとキレート剤との濃度比は0.04~0.1であり、好ましくは0.07である。キレート剤はアンモニア水、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、クエン酸のうちの少なくとも1つであり、好ましくはアンモニア水である。
【0020】
ステップ2では、ステップ1で得られたアルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルトスラリーに対して熟成、脱水、洗浄、乾燥を行って、アルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルト粉末を得る。ここで前記洗浄は80~90℃の脱イオン水を用いて行われ、前記乾燥の温度は120~180℃である。
【0021】
ステップ3では、ステップ2で得られたアルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルト粉末を500~750℃で10~20h仮焼して、高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトを得る。
【0022】
さらに、該方法は、ステップ3で得られた高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトを洗浄及びベーキングするステップをさらに含む。
【0023】
本発明の解決手段をよりよく解釈できるように、以下において、具体的な実施例によってさらに説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明の実施例1で提供される高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトは下記ステップによって調製される。
【0025】
ステップ1では、500rpmの撹拌速度で濃度130g/Lの硫酸コバルト溶液、濃度100g/Lの液体アルカリ及び空気をそれぞれ240L/h、100L/h、25L/hの供給速度で、pH値9.0~11の純水を含有する反応ケトルに加えて共沈反応を行い、D50が2.2μmになると、コバルトイオンとアルミニウムイオンとの濃度比が100:0.8となるアルミニウムコバルト硫酸塩溶液を反応系に加えて反応させ、D50が3.8μmになると、アルミニウムコバルト硫酸塩溶液の供給を停止し、硫酸コバルト溶液の供給を継続し、前記反応ケトル内の液位がオーバーフローレベルに達した後、オーバーフローしたスラリーに対して濃縮、上清排出を行い、濃厚スラリーを前記反応ケトル内に戻して反応を継続し、D50が所望の5μmの粒径になったら、反応を停止し、アルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルトスラリーを得る。
ここで使用される硫酸コバルト溶液とアルミニウムコバルト硫酸塩溶液のいずれにおいてもキレート剤が含有され、硫酸コバルト溶液中のコバルトイオンとキレート剤であるアンモニア水との濃度比は0.07であり、前記アルミニウムコバルト硫酸塩溶液中のコバルトイオンとキレート剤であるアンモニア水との濃度比は0.07である。
【0026】
ステップ2では、ステップ1で得られたアルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルトスラリーに対して熟成、脱水、洗浄、乾燥を行って、アルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルト粉末を得る。
ここで洗浄は80~90℃の脱イオン水を用いて行われ、乾燥の温度は150℃である。
【0027】
ステップ3では、ステップ2で得られたアルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルト粉末を600℃で15h仮焼し、さらに80~90℃の脱イオン水を用いて洗浄して、150℃で乾燥し、高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトを得る。
【実施例2】
【0028】
本発明の実施例2で提供される高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトは下記ステップによって調製される。
【0029】
ステップ1では、500rpmの撹拌速度で濃度130g/Lの硫酸コバルト溶液、濃度100g/Lの液体アルカリ及び空気をそれぞれ240L/h、100L/h、25L/hの供給速度で、pH値9.0~11の純水を含有する反応ケトルに加えて共沈反応を行い、D50が2.0μmになると、コバルトイオンとアルミニウムイオンとの濃度比が100:0.8となるアルミニウムコバルト硫酸溶液を反応系に加えて反応させ、D50が3.5μmになると、アルミニウムコバルト硫酸塩溶液の供給を停止し、硫酸コバルト溶液の供給を継続し、反応ケトル内の液位がオーバーフローレベルに達した後、オーバーフローしたスラリーに対して濃縮、上清排出を行い、濃厚スラリーを前記反応ケトル内に戻して反応を継続し、D50が所望の4μmの粒径になったら、反応を停止し、アルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルトスラリーを得る。
ここで使用される硫酸コバルト溶液とアルミニウムコバルト硫酸塩溶液のいずれにおいてもキレート剤であるアンモニア水が含有され、硫酸コバルト溶液中のコバルトイオンとキレート剤であるアンモニア水との濃度比は0.07であり、前記アルミニウムコバルト硫酸塩溶液中のコバルトイオンとキレート剤であるアンモニア水との濃度比は0.07である。
【0030】
ステップ2では、ステップ1で得られたアルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルトスラリーに対して熟成、脱水、洗浄、乾燥を行って、アルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルト粉末を得る。
ここで洗浄は80~90℃の脱イオン水を用いて行われ、乾燥の温度は150℃である。
【0031】
ステップ3では、ステップ2で得られたアルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルト粉末を500℃で20h仮焼し、さらに80~90℃の脱イオン水を用いて洗浄して、150℃で乾燥し、高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトを得る。
【実施例3】
【0032】
本発明の実施例3で提供される高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトは下記ステップによって調製される。
【0033】
ステップ1では、500rpmの撹拌速度で濃度130g/Lの硫酸コバルト溶液、濃度100g/Lの液体アルカリ及び空気をそれぞれ240L/h、100L/h、25L/hの供給速度で、pH値9.0~11の底液を含有する反応ケトルに加えて共沈反応を行い、D50が2.5μmになると、コバルトイオンとアルミニウムイオンとの濃度比が100:0.8となるアルミニウムコバルト硫酸塩溶液を反応系に加えて反応させ、D50が4μmになると、アルミニウムコバルト硫酸塩溶液の供給を停止し、硫酸コバルト溶液の供給を継続し、反応ケトル内の液位がオーバーフローレベルに達した後、オーバーフローしたスラリーに対して濃縮、上清排出を行い、濃厚スラリーを前記反応ケトル内に戻して反応を継続し、D50が所望の6μmの粒径になったら、反応を停止し、アルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルトスラリーを得る。
ここで使用される硫酸コバルト溶液とアルミニウムコバルト硫酸塩溶液のいずれにおいてもキレート剤であるアンモニア水が含有され、硫酸コバルト溶液中のコバルトイオンとキレート剤であるアンモニア水との濃度比は0.07であり、前記アルミニウムコバルト硫酸塩溶液中のコバルトイオンとキレート剤であるアンモニア水との濃度比は0.07である。
【0034】
ステップ2では、ステップ1で得られたアルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルトスラリーに対して熟成、脱水、洗浄、乾燥を行って、アルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルト粉末を得る。
ここで洗浄は80~90℃の脱イオン水を用いて行われ、乾燥の温度は150℃である。
【0035】
ステップ3では、ステップ2で得られたアルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルト粉末を750℃で10h仮焼し、さらに80~90℃の脱イオン水を用いて洗浄して、150℃で乾燥し、高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトを得る。
【0036】
本発明の実施例で調製された高密度なアルミニウムドープ酸化コバルト中のアルミニウム元素が酸化コバルト中に均一にドープされているか否かを検証するために、
図1に示すように、実施例1で得られたアルミニウムドープ酸化コバルト及び非ドープ酸化コバルトに対してXRD測定を行う。
図1から、本発明で得られた高密度なアルミニウムドープ酸化コバルトと非ドープ酸化コバルトはピーク型が完全に一致し、望ましくないピークがないことが分かり、本発明においてアルミニウム元素が全て酸化コバルトの格子内に均一にドープされていることが示されている。
<比較例>
【0037】
本比較例で提供されるアルミニウムドープ酸化コバルトは下記方法で調製される。
【0038】
ステップ1では、実施例1と同じ濃度の硫酸コバルト溶液、液体アルカリ、酸化剤をそれぞれ同じ供給速度で、底液を含有する反応ケトル中に並流で加えながら、メタアルミン酸ナトリウムを加え、前記反応ケトル内の液位がオーバーフローレベルに達した後、オーバーフローしたスラリーに対して濃縮、上清排出を行い、濃厚スラリーを前記反応ケトル内に戻して反応を継続し、D50が5μmの粒径になったら、反応を停止し、アルミニウムを含有するオキシ水酸化コバルトスラリーを得る。
【0039】
ステップ2とステップ3はいずれも実施例1に記載するものと同じであり、最終的にアルミニウムドープ酸化コバルトを得る。
【0040】
実施例1~実施例3及び比較例で調製されたアルミニウムドープ酸化コバルト中のアルミニウムの含有量、タップ密度及び比表面積を測定し、測定結果を下記に示す。
【0041】
【0042】
表1のデータから、本発明で得られたアルミニウムドープ酸化コバルト中のアルミニウムの含有量は、比較例で調製されたアルミニウムドープ酸化コバルト中のアルミニウムの含有量よりもはるかに大きく、また、本発明で得られたアルミニウムドープ酸化コバルトのタップ密度及び比表面積は、比較例で得られたアルミニウムドープ酸化コバルトのタップ密度及び比表面積よりもはるかに高くなることが分かる。
<検出例>
【0043】
本発明の実施例で得られたアルミニウムドープ酸化コバルト及び比較例で得られたアルミニウムドープ酸化コバルトをそれぞれコバルト酸リチウム電池として組み立てた後、それらの電気化学的性能を検出し、結果を下記の表に示す。
【0044】
[表2]実施例1~3及び比較例で得られたアルミニウムドープ酸化コバルトを用いて組み立てられたコバルト酸リチウム電池の放電比容量及びサイクル後容量維持率の検出データ
【0045】
以上より、本発明では、まずコバルト塩溶液を加えて共沈反応を行い、一定の粒径に達した後、さらにアルミニウムコバルト溶液を加えて共沈反応を行う方法を採用することによって、ドープするアルミニウム元素が酸化コバルトの格子内に完全に組み込まれることが可能となり、アルミニウムドープ酸化コバルトのタップ密度は2.36g/cm3と高く、比表面積は6.8m2/gと高く、それによって、アルミニウムドープ酸化コバルトのタップ密度及び均一性が効果的に向上し、電池のサイクル性能、充放電性能及び電流密度が向上する。
【0046】
以上は、本発明の好ましい具体的な実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲はこれに限定されず、当業者が本発明に披露された技術範囲で容易に想到できる変化や置換は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。したがって、本発明の保護範囲は、請求項の保護範囲を基準とすべきである。