(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 5/26 20060101AFI20231018BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20231018BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20231018BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B32B5/26
B32B27/12
B32B27/32 E
B32B7/12
(21)【出願番号】P 2022572474
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2022009359
(87)【国際公開番号】W WO2022186371
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2021035850
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390019264
【氏名又は名称】ダイヤテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健
(72)【発明者】
【氏名】田辺 洋平
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-196892(JP,A)
【文献】特開2001-260290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D06M 17/00,17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製の線条体からなる複数の布状体を積層してなるクロス積層体の少なくとも一方の面に、厚さ0.02mm以上 1.0mm以下の熱可塑性樹脂の被覆層を積層し、
所定形状の成形品を成形する前に、積層された該複数の布状体及び被覆層を、熱圧着して、積層体シートを製造する方法であって、
前記線条体と前記被覆層は、ポリプロピレン樹脂成分を共通して含み、
前記熱圧着して積層体シートを製造する際に、熱プレス成形法により、前記被覆層を構成する樹脂を溶融する温度まで加熱し、該溶融した樹脂を前記布状体の間に侵入させることを特徴とする積層体シートの製造方法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂製の線条体からなる複数の布状体を積層してなるクロス積層体の少なくとも一方の面に、厚さ0.02mm以上 1.0mm以下の熱可塑性樹脂の被覆層と、0.02mm以上1.0mm以下の熱可塑性樹脂からなるトップ層を順に積層し、
所定形状の成形品を成形する前に、積層された該複数の布状体、被覆層及びトップ層を、熱圧着して、積層体シートを製造する方法であって、
前記線条体と前記被覆層は、ポリプロピレン樹脂成分を共通して含み、
前記熱圧着して積層体シートを製造する際に、熱プレス成形法により、前記被覆層を構成する樹脂を溶融する温度まで加熱し、該溶融した樹脂を前記布状体の間に侵入させることを特徴とする積層体シートの製造方法。
【請求項3】
前記熱圧着して積層体シートを製造する際に、複数の前記布状体を、接着層を介して積層し、
前記接着層として、低融点ポリプロピレン樹脂成分に、高融点ポリプロピレン樹脂成分を含有したフィルムを用いることを特徴とする請求項1又は2記載の積層体シートの製造方法。
【請求項4】
前記被覆層と、前記トップ層が、極性基含有熱可塑性樹脂層を介して順に積層してなることを特徴とする請求項2記載の積層体シートの製造方法。
【請求項5】
前記極性基含有熱可塑性樹脂層が、変性ポリオレフィンを用いて形成されることを特徴とする請求項4記載の積層体シートの製造方法。
【請求項6】
前記変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンに、カルボキシル基を有する有機酸を用いて酸変性されたものであることを特徴とする請求項5記載の積層体シートの製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂製の線条体からなる複数の布状体を積層してなるクロス積層体の少なくとも一方の面に、厚さ0.02mm以上 1.0mm以下の熱可塑性樹脂の被覆層を積層し、
所定形状の成形品を成形する前に、積層された該複数の布状体及び被覆層を、熱圧着し、
前記線条体と前記被覆層は、ポリプロピレン樹脂成分を共通して含み、
前記熱圧着は、熱プレス成形法により、前記被覆層を構成する樹脂を溶融する温度まで加熱し、該溶融した樹脂を前記布状体の間に侵入させ、
厚さ0.02mm以上1.0mm以下の熱可塑性樹脂からなるトップ層を、接着剤層を介して、前記被覆層に積層し、
前記接着剤層は、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、スチレン・ブタジエンゴム系接着剤、シリコーン系接着剤から選ばれる少なくとも1種の接着剤を用いること特徴とする積層体シートの製造方法。
【請求項8】
前記熱圧着する際に、複数の前記布状体を、接着層を介して積層し、
前記接着層として、低融点ポリプロピレン樹脂成分に、高融点ポリプロピレン樹脂成分を含有したフィルムを用いることを特徴とする請求項7記載の積層体シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーツケースなど用いられる積層体に関し、詳しくは、金型隙間の公差による部分的な押圧ムラを解消し、外観に優れる成形品を得ることができる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、織布の両面に被覆層(ラミネートシート)を形成した被覆層付きの織布を複数セット用意し、その被覆層付きの織布を、織布が隣接しないように、熱可塑性ポリマーの融点以上かつ織布の融点未満の温度で熱圧着して板状シートを製造する技術が開示されている。
【0003】
これにより隣接するラミネートシートの被覆層を互いに融着させるので、成形品の強度を向上させることができる。こうして得られた成形品は、耐衝撃性及び引張強度に優れ適度な剛性を有する、スーツケースなどのケースとして好適なものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、クロス積層体を用いて、雄雌の金型によるプレス成形してスーツケースなどの成形品を製造する際に、金型隙間の公差による部分的な押圧ムラにより、外観不良が発生する問題があった。
【0006】
特許文献1のような、被覆層付きの織布のセットを複数枚重ねて熱融着する手法では、金型隙間の公差による部分的な押圧ムラによる外観不良が発生するのを防止できなかった。
【0007】
本発明の課題は、雄雌の金型によるプレス成形において、金型隙間の公差による部分的な押圧ムラを防止して、外観不良の発生しない積層体を提供することにある。
【0008】
さらに本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0010】
(請求項1)
熱可塑性樹脂製の線条体からなる複数の布状体を積層してなるクロス積層体の少なくとも一方の面に、厚さ0.02mm以上 1.0mm以下の熱可塑性樹脂の被覆層を積層し、
所定形状の成形品を成形する前に、積層された該複数の布状体及び被覆層を、熱圧着して、積層体シートを製造する方法であって、
前記線条体と前記被覆層は、ポリプロピレン樹脂成分を共通して含み、
前記熱圧着して積層体シートを製造する際に、熱プレス成形法により、前記被覆層を構成する樹脂を溶融する温度まで加熱し、該溶融した樹脂を前記布状体の間に侵入させることを特徴とする積層体シートの製造方法。
(請求項2)
熱可塑性樹脂製の線条体からなる複数の布状体を積層してなるクロス積層体の少なくとも一方の面に、厚さ0.02mm以上 1.0mm以下の熱可塑性樹脂の被覆層と、0.02mm以上1.0mm以下の熱可塑性樹脂からなるトップ層を順に積層し、
所定形状の成形品を成形する前に、積層された該複数の布状体、被覆層及びトップ層を、熱圧着して、積層体シートを製造する方法であって、
前記線条体と前記被覆層は、ポリプロピレン樹脂成分を共通して含み、
前記熱圧着して積層体シートを製造する際に、熱プレス成形法により、前記被覆層を構成する樹脂を溶融する温度まで加熱し、該溶融した樹脂を前記布状体の間に侵入させることを特徴とする積層体シートの製造方法。
(請求項3)
前記熱圧着して積層体シートを製造する際に、複数の前記布状体を、接着層を介して積層し、
前記接着層として、低融点ポリプロピレン樹脂成分に、高融点ポリプロピレン樹脂成分を含有したフィルムを用いることを特徴とする請求項1又は2記載の積層体シートの製造方法。
(請求項4)
前記被覆層と、前記トップ層が、極性基含有熱可塑性樹脂層を介して順に積層してなることを特徴とする請求項2記載の積層体シートの製造方法。
(請求項5)
前記極性基含有熱可塑性樹脂層が、変性ポリオレフィンを用いて形成されることを特徴とする請求項4記載の積層体シートの製造方法。
(請求項6)
前記変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンに、カルボキシル基を有する有機酸を用いて酸変性されたものであることを特徴とする請求項5記載の積層体シートの製造方法。
(請求項7)
熱可塑性樹脂製の線条体からなる複数の布状体を積層してなるクロス積層体の少なくとも一方の面に、厚さ0.02mm以上 1.0mm以下の熱可塑性樹脂の被覆層を積層し、
所定形状の成形品を成形する前に、積層された該複数の布状体及び被覆層を、熱圧着し、
前記線条体と前記被覆層は、ポリプロピレン樹脂成分を共通して含み、
前記熱圧着は、熱プレス成形法により、前記被覆層を構成する樹脂を溶融する温度まで加熱し、該溶融した樹脂を前記布状体の間に侵入させ、
厚さ0.02mm以上1.0mm以下の熱可塑性樹脂からなるトップ層を、接着剤層を介して、前記被覆層に積層し、
前記接着剤層は、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、スチレン・ブタジエンゴム系接着剤、シリコーン系接着剤から選ばれる少なくとも1種の接着剤を用いること特徴とする積層体シートの製造方法。
(請求項8)
前記熱圧着する際に、複数の前記布状体を、接着層を介して積層し、
前記接着層として、低融点ポリプロピレン樹脂成分に、高融点ポリプロピレン樹脂成分を含有したフィルムを用いることを特徴とする請求項7記載の積層体シートの製造方法。
(請求項9)
熱可塑性樹脂製の線条体からなる複数の布状体を積層してなるクロス積層体の少なくとも一方の面に、厚さ0.02mm以上 1.0mm以下の熱可塑性樹脂の被覆層が積層されてなり、
前記線条体と前記被覆層は、ポリプロピレン樹脂成分を共通して含み、
複数の前記布状体は、接着層を介して積層され、
前記接着層として、低融点ポリプロピレン樹脂成分に、高融点ポリプロピレン樹脂成分を含有したフィルムを用いることを特徴とする積層体シート。
(請求項10)
熱可塑性樹脂製の線条体からなる複数の布状体を積層してなるクロス積層体の少なくとも一方の面に、厚さ0.02mm以上 1.0mm以下の熱可塑性樹脂の被覆層と、0.02mm以上1.0mm以下の熱可塑性樹脂からなるトップ層が順に積層されてなり、
前記線条体と前記被覆層は、ポリプロピレン樹脂成分を共通して含み、
複数の前記布状体は、接着層を介して積層され、
前記接着層として、低融点ポリプロピレン樹脂成分に、高融点ポリプロピレン樹脂成分を含有したフィルムを用いることを特徴とする積層体シート。
(請求項11)
前記被覆層と、前記トップ層が、極性基含有熱可塑性樹脂層を介して順に積層してなることを特徴とする請求項10記載の積層体シート。
(請求項12)
前記極性基含有熱可塑性樹脂層が、変性ポリオレフィンを用いて形成されることを特徴とする請求項11記載の積層体シート。
(請求項13)
前記変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンに、カルボキシル基を有する有機酸を用いて酸変性されたものであることを特徴とする請求項12記載の積層体シート。
(請求項14)
前記被覆層と、前記トップ層が、接着剤層を介して順に積層してなり、
前記接着剤層は、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、スチレン・ブタジエンゴム系接着剤、シリコーン系接着剤から選ばれる少なくとも1種の接着剤を用いて形成されることを特徴とする請求項10記載の積層体シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、雄雌の金型によるプレス成形において、被覆層が金型隙間に流れ込むことでの押圧ムラが解消し外観に優れる成形品を得ることができる。
【0012】
更に、本発明によれば、トップ層が存在する場合には、表面の傷付き防止性能に加え、光沢感、マット調感など意匠性への効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1に示す態様の改良の一例を示す概略断面図
【
図4】
図1に示す態様の改良の他の例を示す概略断面図
【
図5】
図1に示す態様の改良の他の例を示す概略断面図
【
図8】
図6に示す態様の改良の他の例を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について好ましい実施の形態について説明する。
【0015】
〔第1態様〕
本発明の積層体の第1態様は、熱可塑性樹脂製の線条体からなる複数の布状体を積層してなるクロス積層体の少なくとも一方の面に、前記線条体と同一成分からなる厚さ0.02mm以上 1.0mm以下の熱可塑性樹脂の被覆層が積層してなることを特徴とする。
【0016】
図1は、本発明の積層体の第1態様を示す概略断面図であり、
図2は、
図1の改良の一例を示す概略断面図である。
図1は積層物の一方の面に被覆層を積層した例を示し、
図2は、積層物の両方の面に被覆層を積層した例を示す。
【0017】
本発明において、熱可塑性樹脂製の線条体1からなる複数の布状体2を積層してなるクロス積層体が形成され、該クロス積層体の少なくとも一方に、線条体1と同一成分からなる厚さ0.02mm以上 1.0mm以下の熱可塑性樹脂の被覆層3が積層され、これらを熱圧着して一体化されることによって本発明の積層体が得られる。
【0018】
(線条体)
線条体1は、熱圧着の温度よりも融点の高い高融点樹脂成分を主体として構成されるが、熱圧着の温度よりも融点の低い低融点樹脂成分を含むことができる。
【0019】
線条体1の構造は、
図3に示すような態様が例示できる。
図3(a)は、線条体1が基層100のみの単層とした例である。この例の場合、線条体を構成する樹脂は、高融点樹脂成分で構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲で、低融点樹脂成分を含むことができる。
図3(b)、(c)は、線条体1が基層100の片面又は両面に、基層100よりも融点の低い低融点樹脂成分の熱可塑性樹脂からなる表面層101が積層された積層構造の例を示している。
図3(d)は、基層100よりも融点の低い熱可塑性樹脂からなる表面層101が、基層100の周囲を覆う芯鞘構造とした例である。
図3(e)は、海島構造の例であり、102は低融点樹脂成分の部位である。
【0020】
線条体1を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルなどを好ましく挙げることができる。中でも、ポリプロピレンが特に好適である。
【0021】
線条体1として積層構造のものが使用される場合、その成形材料となる積層フィルムを成形する手段としては、
(1)予め基層100となるフィルムと表面層101となるフィルムを形成してドライラミネート法や熱ラミネート法を用いて複層化する手段、
(2)基層100となるフィルムの表面に表面層101となる熱可塑性樹脂をコーティングする手段、
(3)予め形成した基層100となるフィルムに表面層101を押出ラミネートする手段、あるいは
(4)多層共押出法によって積層フィルムとして押出成形する手段等から適宜選択して用いることができる。
【0022】
基層100となるフィルムを、例えば一軸方向に延伸した後、表面層101となる熱可塑性樹脂を積層し、これをテープ状にスリットして延伸された線条体1を得ることができる。
【0023】
あるいは、基層100と表面層101とが積層された積層フィルムをスリットした後、一軸方向に延伸することによって線条体1を得ることもできる。
【0024】
延伸方法は特に限定されるものではなく、熱ロール、熱板、熱風炉、温水、熱油、蒸気、赤外線照射等を用い、一段もしくは多段延伸によって行うことができる。
【0025】
線条体の太さは、目的に応じて任意に選定することができるが、一般的には、積層構造の場合は、50~10000デシテックス(dt)の範囲が望ましく、
図3(d)で示されるような芯鞘構造(被覆構造)の場合は、1~10000デシテックス(dt)の範囲が望ましい。
【0026】
延伸された線条体は、半結晶性熱可塑性ポリマーの延伸糸であれば特に限定されるものではなく、マルチフィラメント、モノフィラメント、扁平モノフィラメント、フラットヤーン、スリットヤーンなどが挙げられる。マルチフィラメント、モノフィラメント及び扁平モノフィラメントは、成形品の表面平滑性が劣る欠点があるため、フラットヤーン、スリットヤーンが好適に用いられる。
【0027】
(布状体)
本発明に用いられる布状体10は、線条体1を用いて織成した織布(例えば平織、綾織、朱子織、絡み織や変化組織など)が好ましいが、多数の熱可塑性樹脂からなる線条体1を直交するように並設することによって面状としてその交点を接合した交差結合布(ソフ)であってもよいし、その他上記の熱可塑性樹脂からなる線条体1で形成された編物でもよい。
織布の目付は、50~500g/m2のものが好ましく、より好ましくは50~400g/m2である。
【0028】
織布の織密度は、経糸及び緯糸がそれぞれ5本/インチ以上であることが、成形品の強度を保持するうえで望ましい。織密度の上限は糸の種類によって異なり、特に限定されるものではないが、好ましくは5本~30本/インチである。
【0029】
(被覆層)
図1において、被覆層3は、複数の布状体2を積層してなる積層物の一方の面に設けられている。また
図2においては、被覆層3は、複数の布状体2を積層してなる積層物の両方の面に設けられている。
【0030】
被覆層3は、布状体2と同一素材のフィルムが好ましく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミドなどのフィルムを好ましく用いることができる。
【0031】
これらのフィルムを被覆層3に用いれば、軽量で耐衝撃性に優れ、融点が低く加工し易く、延伸線条体との溶融接着性に優れるので好ましく、中でも、ポリオレフィンが好ましく、より好ましくはポリプロピレンである。
被覆層3は、公知の押出ラミネート法、熱ラミネート法、カレンダー法、コーティング法、浸漬法等により、布状体2(織布)の両面もしくは片面に形成できる。
【0032】
本実施形態は、被覆層が積層されたクロス積層体が、熱圧着により、被覆層3が溶融してなる溶融ポリマーが布状体の低融点樹脂成分と同一の成分であることによって、布状体2に含侵して、布状体2と被覆層3との層間接着が強固になった積層体を形成することができる。
【0033】
そして、形成された積層体が、被覆層の融点以上に加熱された後に、所定形状の成形品の金型にセットされ、金型により押圧されると、被覆層が流動して、金型隙間の公差部分を埋めるように作用し、その結果、金型による押圧力が、被覆層3を介して均一化にされ、金型隙間の公差による部分的な押圧ムラをなくすことができ、さらに外観不良もなくすことができる。
【0034】
被覆層3の厚さは、0.02mm以上 1.0mm以下である。厚みが0.02mm未満であると、製造困難である欠点があり、一方、厚みが大きくなり過ぎると、軽量性を損なう。
【0035】
また、被覆層3の粘度は、150℃における貯蔵弾性率が5.0×104以上1.0×108以下である特性を有することが好ましい。より好ましくは貯蔵弾性率が、1.0×105以上5.0×107以下、更に好ましくは、1.0×105以上3.0×107以下である特性を有する。
【0036】
被覆層3の貯蔵弾性率は、例えば、以下の測定装置(動的粘弾性 温度分散測定)を用いて測定することができる。
<測定装置>
装置名:EPLEXOR500N(ネッチガボ社製)
測定モード:引張モード
周波数:1Hz
環境:N2下
温度範囲:-20℃~180℃
昇温速度:2℃/min
【0037】
本発明において、線条体1と被覆層3を構成する樹脂成分は同一成分であり、かかる同一成分というのは、ポリプロピレン樹脂成分を共通して含むことである。
【0038】
(接着層)
接着層について、
図4及び
図5に基づいて説明する。
図1~3と同一の符号は同一の構成であるため、その説明を省略し援用する。
【0039】
図4及び
図5は、
図1の改良の他の例を示す概略断面図である。
図4及び
図5に示すように、布状体2と隣接する布状体2の間には、接着層4が介装されている。
【0040】
接着層4は、布状体2と布状体2との間に配置されて、これら布状体2と布状体2との間を接着する。この接着層4の存在により、得られる積層体の剛性を向上する機能を有する。
【0041】
接着層4は、熱可塑性樹脂により構成されるフィルムが好ましい。この熱可塑性樹脂として、低融点樹脂成分に、高融点樹脂成分を含有させたものを用いることできる。低融点樹脂成分に高融点樹脂成分を含有させると、接着層を剛性向上層として機能させることができる。
【0042】
本明細書において、「融点」というのは、DSC測定(示差走査熱量測定;Differential scanning calorimetry)により融解ピーク温度として測定される温度のことである。
言い換えれば、高融点樹脂成分は、低融点樹脂成分よりも融解ピーク温度が高い関係にある。接着層4は、これら樹脂に由来する2つの融解ピーク温度を示し得る。
【0043】
接着層4に用いられる低融点樹脂成分としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルなどを好ましく挙げることができる。中でも、ポリオレフィンが好ましく、より好ましくはポリプロピレンである。
【0044】
接着層4に用いられる高融点樹脂成分としては、低融点樹脂成分よりも融点が高いものであればよいが、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルなどを好ましく挙げることができる。中でも、ポリプロピレンが特に好適である。
【0045】
接着層4に用いられる低融点樹脂成分及び高融点樹脂成分が、それぞれポリプロピレンから選択される場合は、例えば、低融点樹脂成分としてランダムポリプロピレンを用い、高融点樹脂成分としてホモポリプロピレンを用いることができる。また、低融点樹脂成分として比較的低融点のランダムポリプロピレンを用い、高融点樹脂成分として比較的高融点のランダムポリプロピレンを用いることもできる。
【0046】
ランダムポリプロピレンは、モノマー成分としてのプロピレンと、α-オレフィン(例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等のプロピレン以外のα-オレフィン)とが、ランダムに共重合したものである。
【0047】
α-オレフィンは、例えば、全モノマー成分に対して、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下の割合で用いることができる。所望の融点を示すように、α-オレフィンの割合を調整することができる。
【0048】
ランダムポリプロピレンの融点は、上述したように、例えば、α-オレフィンの割合を調整すること等により設定することができる。具体的には、例えば、低融点樹脂成分として用いるランダムポリプロピレンよりもα-オレフィンの割合が小さいものを高融点樹脂成分として用いることができる。
【0049】
接着層4としては、低融点樹脂成分のペレットと高融点樹脂成分のペレットとを、両樹脂成分の融点以上の温度で混練し、インフレーション成形等により形成されたフィルムを用いることができる。
【0050】
接着層4において、高融点樹脂成分の含有量は、例えば、5重量%~50重量%の範囲であることが好ましく、10重量%~30重量%の範囲であることが更に好ましい。
【0051】
また、接着層4における低融点樹脂成分と高融点樹脂成分の重量比率は、5:95~50:50の範囲であることが好ましく、10:90~30:70の範囲であることが更に好ましい。
【0052】
接着層4の厚さは、例えば、布状体の厚さや、布状体を構成する線条体の太さ等に応じて適宜設定可能であるので限定的ではないが、10μm~500μmの範囲であることが好ましく、20μm~300μmの範囲であることが更に好ましい。
【0053】
(第1の態様の積層体)
図1の例では、3枚の布状体2を積層しており、表面に被覆層3を有している。具体的には、被覆層3/布状体2/布状体2/布状体2からなる積層体の例である。
【0054】
図2の例では、3枚の布状体2を積層しており、両面に被覆層3を有している。具体的には、被覆層3/布状体2/布状体2/布状体2/被覆層3からなる積層体の例である。
【0055】
図1の態様との差異は、
図2では最下層に被覆層3を有している点である。
これらの積層体は、積層された布状体2の少なく一方の面に、被覆層3を積層し、積層体の熱圧着時、被覆層3を構成するポリマーが軟化もしくは一部が溶融する温度まで加熱され、ラミネートシートの被覆層3を互いに融着或いは被覆層3を軟化させて織布の間に侵入もしくは織布に融着されると共に、布状体2に用いる線条体1の表面層101を構成する低融点樹脂成分が融解し、複数の布状体2同士が熱圧着されて一体化される。その際、残った線条体1の基層100を構成する高融点樹脂成分が、布状体2の繊維成分として残存する。この繊維成分が成形品の強度を増強する作用を呈するので好ましい。
【0056】
本形態において、織布の枚数は、好ましくは2~20枚、さらに好ましくは2~10枚であり、枚数は成形品の目的や用途に合わせて適宜選択することができ、重ね合せる方向も任意である。成形品に適度な強度(堅さ)や耐衝撃性を付与する観点からは、織布は少なくとも2枚以上用いることが好ましい。
【0057】
次に、
図4の例では、布状体と隣接する布状体とを、接着層を介して積層しており、表面に被覆層を有している。具体的には、被覆層3/布状体2/接着層4/布状体2/接着層4/布状体2からなる積層体の例である。
【0058】
図5の例は、被覆層3/布状体2/接着層4/布状体2/接着層4/布状体2/被覆層3からなる積層体の例である。
【0059】
図4の態様との差異は、
図5では最下層に被覆層3を有している点である。
本形態においては、積層された布状体2の少なく一方の面に、被覆層3を積層し、熱圧着すると、被覆層3を構成するポリマーが軟化もしくは一部が溶融する温度まで加熱され、ラミネートシートの被覆層3を互いに融着或いは被覆層3を軟化させて織布の間に侵入もしくは織布に融着されると共に、織布と接着フィルムを重ね合せたものが、フィルムの融点以上かつ織布の融点未満の温度、即ち、接着フィルムを構成するポリマーが軟化もしくは一部が溶融する温度まで加熱され、織布と接着フィルムとが圧着され、一体化することで、積層体シートを作製する。
【0060】
本形態においては、複数の布状体2同士が、同一成分からなる接着層4を介して積層してなることが好ましい。布状体と接着層に含まれる同一成分は、ポリプロピレン樹脂成分を共通して含むことが好ましい。
【0061】
本形態においても、線条体に低融点樹脂成分と高融点樹脂成分とが含まれる場合には、
図1の態様と同様に、積層体の熱圧着時、布状体2に用いる線条体1の表面層101を構成する低融点樹脂成分が融解し、更に、上述のように接着フィルムが溶融して、複数の布状体2同士が熱圧着されて一体化される。その際、残った線条体1の基層100を構成する高融点樹脂成分が、繊維成分として残存する。
【0062】
本態様においても、
図1に示す態様と同様に、織布の枚数は、好ましくは2~20枚、さらに好ましくは2~10枚であり、枚数は成形品の目的や用途に合わせて適宜選択することができ、重ね合せる方向も任意である。成形品に適度な強度(堅さ)や耐衝撃性を付与する観点からは、織布は少なくとも2枚以上用いることが好ましい。
【0063】
積層体を形成する熱圧着手法は格別限定されず、公知の押出ラミネート成形法、熱ラミネート法、カレンダー成形法、プレス成形法等を採用することができる。
【0064】
また、形成された積層体からの所定形状の成型品への成形方法としては、プレス成形、スタンピング成形、プラグアシスト圧空成形、圧空成形、真空圧空成形、真空プレス成形、プラグアシスト真空成形、真空成形等が挙げられる。
【0065】
所定形状の成形品を成形する前に、熱圧着により積層体シートを作製することは好ましい。この場合、熱圧着温度は、延伸線条体を構成するポリマーの結晶化を低下させないために、ポリマーの融点未満とすることが望ましい。例えば、被覆層を構成するポリマーがポリエチレンの場合、熱圧着温度は115~125℃程度が好ましい。また、被覆層を構成するポリマーがポリプロピレンの場合、熱圧着温度は115~165℃程度が好ましい。
【0066】
第1態様の積層体は、上述したように、シート状の積層体の被覆層の融点以上に加熱された後に、所定形状の金型にセットし、金型により押圧されると、溶融した被覆層3の樹脂が流動して、金型隙間の公差を埋めるように作用する。この結果、金型による積層体への押圧力が、被覆層を介して均一され、金型隙間の公差による部分的な押圧ムラをなくすことができ、外観不良をなくすことができる。
【0067】
〔第2態様〕
本発明の積層体の第2態様は、熱可塑性樹脂製の線条体からなる複数の布状体を積層してなるクロス積層体の少なくとも一方の面に、前記線条体と同一成分からなる厚さ0.02mm以上 1.0mm以下の熱可塑性樹脂の被覆層と、0.02mm以上1.0mm以下の熱可塑性樹脂からなるトップ層が順に積層してなることを特徴とする。
【0068】
本発明の好ましい態様としては、前記複数の布状体同士が、同一成分からなる接着層を介して積層してなることであり、前記布状体と接着層に含まれる同一成分は、ポリプロピレン樹脂成分を共通して含むことである。
【0069】
また前記被覆層と、前記トップ層が、接着剤層を介して順に積層してなることが好ましく、前記接着剤層は、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、スチレン・ブタジエンゴム系接着剤、シリコーン系接着剤から選ばれる少なくとも1種の接着剤を用いて形成された接着剤層であることが好ましい。
【0070】
また本発明は、被覆層と、トップ層が、極性基含有熱可塑性樹脂層を介して順に積層してなることが好ましい。また前記極性基含有熱可塑性樹脂層が、変性ポリオレフィンを用いて形成されて樹脂層であることが好ましく、前記変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンに、カルボキシル基を有する有機酸を用いて酸変性されたものであることが好ましい。
【0071】
以下、
図6~
図8に基づいて、第2態様について説明する。
この態様の特徴は、
図6~
図8に示すように、トップ層5を有する点である。
【0072】
(トップ層)
トップ層5としては、布状体及び被覆層と同一素材のものが好ましく、例えば無延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムが挙げられ、中でも、無延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレンが好ましく、より好ましくは二軸延伸ポリプロピレンである。
【0073】
本実施形態において、トップ層5は、着色されていてもよい。トップ層5の着色方法としては、トップ層5自体が顔料、塗料で着色してもよいし、トップ層5の被覆層3側に着色した印刷層を設けてもよい。
【0074】
(接着剤層)
またこの態様において、トップ層5と被覆層3との間には、
図7に示すように、接着剤層6を有していてもよい。
【0075】
接着剤は、格別限定されないが、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、スチレン・ブタジエンゴム系接着剤、シリコーン系接着剤などを用いることができる。
【0076】
接着剤層6を設ける方法は、格別限定されないが、スプレー、浸漬塗布、刷毛塗り等を例示することができる。
【0077】
この接着剤層6の上面に設けるトップ層5としては、無延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、アクリルフィルム、塩化ビニルフィルムなどが挙げられる。
【0078】
本発明では、上述の説明のように、トップ層5を設ける場合、被覆層3の上に設ける場合と、接着剤層6の上に設ける場合には、トップ層の素材を変えることができる。
【0079】
図6及び
図7に示す第2の態様において、布状体2と布状体2の間には、接着層4を設けてもよい。
【0080】
接着層としては、
図4、
図5に示す接着層4と同一の構成の接着フィルムを用いることができる。
【0081】
(極性基含有熱可塑性樹脂層)
図8に示す態様の特徴は、被覆層3とトップ層5が極性基含有熱可塑性樹脂層7を介して順に積層されている点である。本実施形態の極性基含有熱可塑性樹脂層7は、トップ層5と結合をより強固にしたい場合に有用である。
【0082】
極性基含有熱可塑性樹脂層7は、変性ポリオレフィン層で構成されることが好ましい。
【0083】
変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンを変性した変性ポリオレフィンからなることが好ましい。
【0084】
また、変性ポリオレフィン層7は、酸変性された変性ポリプロピレン、又は酸変性された変性ポリエチレンから選ばれる少なくとも一種を用いることもできる。
【0085】
ポリオレフィンとしては、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。そのモノマーとしては、エチレン、プロピレンなどを例示でき、これらを単独又は2種以上混合して用いることができ、共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。本態様では、これらを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。中でも、ポリオレフィンとしてポリプロピレン、ポリエチレンを用いることは特に好ましい。
【0086】
ポリオレフィンの変性方法としては、酸変性する手法が挙げられる。酸変性する手法としては、ポリオレフィンに、カルボキシル基を有する有機酸をグラフト重合する方法等を用いることができる。
【0087】
かかるグラフト重合により、ポリオレフィンに有機酸成分がグラフトされた酸変性ポリオレフィンが得られる。重合手法は、グラフト重合に限定されず、任意の方法を適宜選択して用いることができる。
【0088】
有機酸の種類は格別限定されないが、カルボキシル基を少なくとも1以上有する、飽和又は不飽和のカルボン酸又は無水カルボン酸であることが好ましい。
【0089】
有機酸として、例えば、
(1)マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アコニット酸、クロトン酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、チオマリン酸、酒石酸、アジピン酸、クエン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アクリル酸、テトラヒドロフタル酸、イソクロトン酸、エンドシス-ビシクロ(2.2.1)ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸及びセバシン酸等のカルボン酸;
(2)無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水コハク酸等の無水カルボン酸
が挙げられる。
【0090】
有機酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
変性ポリオレフィンは、酸変性される場合、通常、有機酸をポリオレフィンに対して0.01~10重量%含むように変性することができる。
【0092】
有機酸の含有量が0.01重量%未満となる場合、変性ポリオレフィン層7が、クロス積層体と共重合ポリアミド層との間に積層される際、層間接着性に劣るため好ましくない。また、10重量%を超える場合、分子架橋型のモノマーを主成分とするポリオレフィンに対して変性すると、ポリオレフィンの架橋が著しいために溶融粘度が増大し、分子切断型のモノマーを主成分とするポリオレフィンに対して変性すると、主鎖切断が著しくなるため溶融粘度が減少する。この結果、変性ポリオレフィン層7が、クロス積層体と共重合ポリアミド層との間に積層される際、層間接着性に劣る。
【0093】
変性ポリオレフィン層7は、上述した変性ポリオレフィンの他に、無変性ポリオレフィン等の他の樹脂を本発明の効果を阻害しない範囲で含んでもよい。
【0094】
変性ポリオレフィン層7の形態は格別限定されず、例えば、フィルム状やシート状のものや、押出ラミネート等に供するために溶融された状態とすることができる。汎用性の観点から、フィルム状やシート状のものが好ましい。
【0095】
(添加剤)
本発明において、クロス積層体に用いる線条体や接着層、変性ポリオレフィン層や共重合ポリアミド層、並びに、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層には、目的に応じて各種の添加剤を添加することができる。具体的には、有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系等の光安定剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤、帯電防止剤、ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤、アミド系、有機金属塩系等の滑剤、含臭素系有機系、リン酸系、メラミンシアヌレート系、三酸化アンチモン等の難燃剤、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等の延伸助剤、有機顔料、無機顔料、無機充填剤、有機充填剤、金属イオン系等の無機抗菌剤、有機抗菌剤等が挙げられる。
【0096】
(第2の態様の積層体)
図6の例では、3枚の布状体2を積層しており、布状体2の少なくとも一方の面に、被覆層3を有し、被覆層3上に、トップ層5を有している。具体的には、トップ層5/被覆層3/布状体2/布状体2/布状体2からなる積層体の例である。
図1に示す第1の形態の積層体に、更にトップ層5を有した積層体である。
【0097】
この積層体は、被覆層3上に、トップ層を積層し、積層体の熱圧着時、被覆層3を構成するポリマーが軟化もしくは一部が溶融する温度まで加熱され、ラミネートシートの被覆層3を互いに融着或いは被覆層3を軟化させて織布の間侵入もしくは織布に融着されると共に、トップ層5と融着することによって、積層体を作製することができる。
【0098】
図7の例では、3枚の布状体2を積層しており、布状体2の少なくとも一方の面に、被覆層3を有し、被覆層3上に、接着剤層6を介してトップ層5を有している。具体的には、トップ層5/接着剤層6/被覆層3/布状体2/布状体2/布状体2からなる積層体の例である。
図1に示す第1の形態の積層体に、更に接着剤層6、及びトップ層5を有した積層体である。
【0099】
本実施形態において、接着剤を用いて接着剤層6を形成する場合には、まず、
図1に示す第1の形態に示す積層体を作製する。
【0100】
次に、作製された積層体上に接着剤を付与して、接着剤層6を形成し、その接着剤層6の接着剤を介してトップ層5を接着させることにより、本態様の積層体が作製することができる。
【0101】
図8の例では、3枚の布状体2を積層しており、布状体2の少なくとも一方の面に、被覆層3を有し、被覆層3上に、極性基含有熱可塑性樹脂層7を介してトップ層5を有している。
【0102】
この積層体は、被覆層3上に、極性基含有熱可塑性樹脂層7を積層し、極性基含有熱可塑性樹脂層7上にトップ層5を積層し、積層体を熱圧着すると、被覆層3を構成するポリマーが軟化もしくは一部が溶融する温度まで加熱され、ラミネートシートの被覆層3を互いに融着或いは被覆層3を軟化させて織布の間侵入もしくは織布に融着されると共に、極性基含有熱可塑性樹脂層7が溶融して、極性基によって、極性基含有熱可塑性樹脂層7と被覆層3、極性基含有熱可塑性樹脂層7とトップ層5が強固に融着されることによって、層間が結合され、本実施形態の積層体が作製される。
【0103】
本発明の第2の態様の積層体において、所定形状の金型にセットされ、金型により押圧されると、トップ層5は最外層となるため、金型隙間の公差によって、押圧ムラを生じても、トップ層5と布状体2との間の被覆層3が、溶融し、押圧力の大きな部分から押圧力の小さな部分に溶融して、被覆層成分が移動することによって、結果として、積層体のトップ層5を押圧する押圧力が被覆層3によって均一化され、外観不良の発生を防ぐことができる。
【0104】
本発明の第1の態様の積層体、及び第2の態様の積層体によれば、雄雌の金型によるプレス成形において、金型隙間の公差による部分的な押圧ムラを防止して外観不良の発生しない積層体を製造できるために、スーツケースやアタッシュケース、カメラケース、楽器ケース等の外観性に優れた成形品を製造することができる。
【実施例】
【0105】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されない。
【0106】
実施例1
1.積層体の作製
(1)布状体の作製
<2種3層ポリプロピレンフィルムの製造>
高融点ポリプロピレン(MFR=0.4g/10分、重量平均分子量Mw=630,000、融点164℃)と、低融点ポリプロピレン(プロピレン-エチレンランダム共重合体、MFR=7.0g/10分、重量平均分子量Mw=220,000、融点125℃)とを用い、インフレーション成形法によって、低融点ポリプロピレンを表層とし高融点ポリプロピレンを内層とした2種3層ポリプロピレンフィルムを製造した。
【0107】
<フラットヤーンの製造>
得られたフィルムを、レザー(razor)でスリットした。次いで、温度110~120℃の熱板上で7倍に延伸した後、温度145℃の熱風循環式オーブン内で10%の弛緩熱処理を行い、糸巾4.5mm、繊度1700デシテックス(dt)のフラットヤーンを得た。
【0108】
<布状体の製造>
得られたフラットヤーンを、スルーザー織機を用いて、経糸15本/25.4mm、緯糸15本/25.4mmの綾織に織成することによって布状体を得た。
【0109】
(2)接着層
接着層としては、融点125℃の低融点ポリプロピレンに、融点161℃の高融点ポリプロピレンを含有させた、0.06mmのポリプロピレンフィルムを用いた。
【0110】
(3)積層体の層構成
得られた布状体3枚と、得られた接着層2枚を、布状体/接着層/布状体/接着層/布状体となるように交互に積層し、その布状体の上面に、被覆層とトップ層を順に設けた。被覆層は、ポリプロピレンフィルム0.17mmとし、トップ層は二軸延伸ポリプロピレンフィルム0.04mmとした。
【0111】
層構成は、トップ層/被覆層/布状体/接着層/布状体/接着層/布状体となるようにした。
【0112】
(4)積層体の製造
油圧式プレス機でプレス温度145℃に設定し、圧力1MPaで2分間加熱プレスした後、油圧式プレス機でプレス温度20℃、圧力5MPaで2分間冷却プレスして積層体を得た。
【0113】
得られた積層体の外周を把持した状態で、赤外線ヒータで、積層体表面が160℃になるまで加熱した後に、80℃に加熱された金型でプレス成形し、2分間閉型した後に、脱型した。この結果、金型による押圧力が、被覆層を介して均一化にされ、金型隙間の公差による部分的な押圧ムラをなくすことができ、表面の外観に優れた成形物を得た。
【0114】
実施例2
実施例1において、赤外線ヒータを、恒温炉に代え、積層体表面を、170℃に加熱し、100℃に加熱された金型プレス成形し、1.5分間閉型した以外は、実施例1と同様に試験した。
【0115】
実施例2においても、実施例1と同様に、金型による押圧力が、被覆層を介して均一化にされ、金型隙間の公差による部分的な押圧ムラをなくすことができ、表面の外観に優れた成形物を得た。
【符号の説明】
【0116】
1 線条体
100 基層
101 表面層
2 布状体
3 被覆層
4 接着層
5 トップ層
6 接着剤層
7 極性基含有熱可塑性樹脂層