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特許7369319調剤棚内に配置される調剤用薬剤ケース及び調剤薬局用薬剤保管具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】調剤棚内に配置される調剤用薬剤ケース及び調剤薬局用薬剤保管具
(51)【国際特許分類】
   B65D 21/08 20060101AFI20231018BHJP
   A61J 3/00 20060101ALI20231018BHJP
   B65D 5/355 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B65D21/08
A61J3/00 310Z
B65D5/355
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023070730
(22)【出願日】2023-04-24
【審査請求日】2023-04-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503219721
【氏名又は名称】株式会社Windy
(74)【代理人】
【識別番号】100094581
【弁理士】
【氏名又は名称】鯨田 雅信
(72)【発明者】
【氏名】中村 行延
【審査官】二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-111923(JP,U)
【文献】実開昭55-1641(JP,U)
【文献】特開2012-76810(JP,A)
【文献】登録実用新案第3202361(JP,U)
【文献】登録実用新案第3164924(JP,U)
【文献】特開2012-179422(JP,A)
【文献】特開2021-154008(JP,A)
【文献】特開平11-9663(JP,A)
【文献】特開2006-168810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 21/08
A61J 3/00
B65D 5/355
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調剤棚と、複数の薬剤シートを内部に収納した状態で前記調剤棚内に並べて配置される複数の調剤用薬剤ケースとにより構成される調剤薬局用の薬剤保管具であって、
前記調剤用薬剤ケースは、薬剤シートが配置される底壁部と前記底壁部上の空間を介して互いに対向する各側壁部とを少なくとも含み、前記各側壁部間の距離が所定の長さと同じかそれよりも小さい第1の形態と、前記各側壁部間の距離が所定の長さよりも大きい第2の形態との間で互いに移行可能に構成されており、横幅が比較的小さい薬剤シートを収納するときは薬剤ケースの横幅を比較的小さい形態とすることにより調剤棚内に並べて配置される薬剤ケースの総数が増加されるように構成したことを特徴とする調剤薬局用薬剤保管具。
【請求項2】
調剤薬局の調剤棚内に複数個並ぶように配置される調剤用薬剤ケースであって、一方の側壁部並びにこの一方の側壁部にそれぞれ隣接する底壁部、前壁部及び後壁部を含み、これらの底壁部、前壁部及び後壁部がそれぞれ前記一方の側壁部側から後記第2のケース片の側に延びている第1のケース片と、前記一方の側壁部と対向する他方の側壁部並びにこの他方の側壁部にそれぞれ隣接する底壁部、前壁部及び後壁部を含み、これらの底壁部、前壁部及び後壁部がそれぞれ前記他方の側壁部側から前記第1のケース片の側に延びている第2のケース片とを備え、前記第1のケース片及び前記第2のケース片は、それらの互いに対向する各側壁部が所定距離の範囲内で近接又は離反できるように構成されており、横幅が比較的小さい薬剤シートを収納するときは薬剤ケースの横幅を比較的小さい形態とすることにより調剤棚内に並べて配置される薬剤ケースの総数が増加されるように構成したことを特徴とする調剤棚内に配置される調剤用薬剤ケース。
【請求項3】
調剤薬局の調剤棚内に複数個並ぶように配置される調剤用薬剤ケースであって、薬剤シートが配置される底壁部と前記底壁部上の空間を介して互いに対向する各側壁部とを少なくとも含み、前記各側壁部間の距離が所定の長さと同じかそれよりも小さい第1の形態と、前記各側壁部間の距離が所定の長さよりも大きい第2の形態との間で互いに移行可能に構成されており、横幅が比較的小さい薬剤シートを収納するときは薬剤ケースの横幅を比較的小さい形態とすることにより調剤棚内に並べて配置される薬剤ケースの総数が増加されるように構成したことを特徴とする、請求項1の薬剤保管具に使用されるのに適した、調剤棚内に配置される調剤用薬剤ケース。
【請求項4】
前記薬剤ケースの底壁部側の少なくとも一部に、磁性体材料で形成された調剤棚に吸着し得るマグネットが配置又は備えられている請求項2又は3に記載の調剤棚内に配置される調剤用薬剤ケース。
【請求項5】
前記薬剤ケースの側壁部側又は後壁部側に、前記薬剤ケース内にどの程度の枚数又は数量の薬剤シートが積ねられ又は存在しているかを知るための目安を示す目安提示部が形成され又は備えられている請求項2又は3に記載の調剤棚内に配置される調剤用薬剤ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調剤薬局などに設置されている調剤用棚に配置される調剤用薬剤ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、調剤薬局では、例えば図6(a)に示すような調剤棚が使用されている。図6(a)において、1は調剤台、2は調剤棚(調剤台1の上部ユニットとしての調剤収納棚)、10は調剤棚2中に多数個引き出し可能に並べられる薬剤ケースである(特許文献1参照)。このような調剤棚2中には多数の薬剤ケースが並べられ、各薬剤ケース内には複数枚のPTPシートなどの薬剤シートが収納されており、調剤時には薬剤師が、処方箋の薬剤に対応する薬剤ケースを調剤棚から前方に引き出して、その薬剤ケースの中から薬剤シートを取り出して調剤を行う。
【0003】
図6(b)はこの調剤棚2中に配置される薬剤ケースの一例を示す斜視図である。この図6(b)に示す薬剤ケースは、一対の側壁3、底壁、前壁4及び後壁5から成り上方が開口された筐体として形成され、底壁上の収容部は、未使用の完全な薬剤シートPを載置する大収容部と一部切り取られた残りの端数シートBを載置する小収容部6とに仕切板などで区画されている。なお、図6(b)において、符号7は、大収容部内のスペースを薬剤シートPの長手方向のサイズに適合させるために、薬剤ケース内の大収容部をその前後方向(長手方向)において区画する可動壁用板であって、一対の側壁3の内面側にそれぞれ形成された複数の縦溝3aのいずれかにその各縁部が嵌め込まれることにより前記大収容部内を区画する可動壁用板である(特許文献2参照)。
【0004】
次に図7(a)は薬剤ケースの他の例を示す斜視図、同(b)はその側断面図である。図7に示す薬剤ケースは、一対の側壁11、底壁12、前壁13及び後壁14から成り、上方が開口された筐体として例えばプラスチック素材により一体に形成されている。この図7に示す薬剤ケースでも、図6に示したものと同様に、薬剤ケース内に、未使用の完全な薬剤シートを重ねて収納する大収容部(図7の底壁12の上側)と、一部が切り取られた後の残りの端数シートが載置される小収容部であって前記大収容部の前方側に凹部状に形成された小収容部15とが互いに区画されて形成されている。また前記大収容部を構成する底壁12は、後方から前方に向けて上昇する傾斜面となるように形成されており、これにより、前記底壁12上に載置された薬剤シートが不用意に前方に移動して落下しないようにすると共に薬剤師が前記底壁12上の大収容部の前方部分2aの上に位置する薬剤シートの端部を手で掴み易くしている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-76810号公報
【文献】実用新案登録第3202361号公報
【文献】実用新案登録第3164924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来より、調剤薬局では、業務に必要な医薬品(平均的な調剤薬局では約1000~1500品目)を保管するために調剤棚の中に多数の薬剤ケースを配置するようにしているが、その薬剤ケースは、通常、その横幅が95mmのものが使用されている。そのような従来の横幅が95mmの薬剤ケースを、横幅が900mmに形成された調剤棚中に並べると、一段の棚では9個(900mm÷95mm=9.47)だけしか並べることができない(そして、そのような調剤棚が上下で8段ある場合、8段の棚全体で計72個だけしか並べることができない)。
【0007】
しかしながら、平均的な調剤薬局で扱われる薬剤シートは、横幅が50mm以下のものが約8~9割を占めているから、前述のように横幅が一律に95mmに形成された従来の薬剤ケースを使用するときは、約8~9割の薬剤ケース内において大きなスペースの無駄が生じてしまい、その結果、調剤棚内においても同様に大きなスペースの無駄が生じていた。
【0008】
本発明はこのような従来技術の問題点に着目してなされたものであって、従来存在していた薬剤ケース内の無駄なスペースを無くし、調剤棚内の無駄なスペースを無くすことができる新たな調剤用薬剤ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上のような課題を解決するための本発明による薬剤保管具は、調剤棚と、複数の薬剤シートを内部に収納した状態で前記調剤棚内に並べて配置される複数の調剤用薬剤ケースとにより構成される調剤薬局用の薬剤保管具であって、前記調剤用薬剤ケースは、薬剤シートが配置される底壁部と前記底壁部上の空間を介して互いに対向する各側壁部とを少なくとも含み、前記各側壁部間の距離が所定の長さと同じかそれよりも小さい第1の形態と、前記各側壁部間の距離が所定の長さよりも大きい第2の形態との間で互いに移行可能に構成されており、横幅が比較的小さい薬剤シートを収納するときは薬剤ケースの横幅を比較的小さい形態とすることにより、調剤棚内に並べて配置される薬剤ケースの総数が増加されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明による調剤棚内に配置される調剤用薬剤ケースは、調剤薬局の調剤棚内に複数個並ぶように配置される調剤用薬剤ケースであって、一方の側壁部並びにこの一方の側壁部にそれぞれ隣接する底壁部、前壁部及び後壁部を含み、これらの底壁部、前壁部及び後壁部がそれぞれ前記一方の側壁部側から後記第2のケース片の側に延びている第1のケース片と、前記一方の側壁部と対向する他方の側壁部並びにこの他方の側壁部にそれぞれ隣接する底壁部、前壁部及び後壁部を含み、これらの底壁部、前壁部及び後壁部がそれぞれ前記他方の側壁部側から前記第1のケース片の側に延びている第2のケース片とを備え、前記第1のケース片及び前記第2のケース片は、それらの互いに対向する各側壁部が所定距離の範囲内で近接又は離反できるように構成されており、横幅が比較的小さい薬剤シートを収納するときは薬剤ケースの横幅を比較的小さい形態とすることにより、調剤棚内に並べて配置される薬剤ケースの総数が増加されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明による調剤棚内に配置される調剤用薬剤ケースは、調剤薬局の調剤棚内に複数個並ぶように配置される調剤用薬剤ケースであって、薬剤シートが配置される底壁部と前記底壁部上の空間を介して互いに対向する各側壁部とを少なくとも含み、前記各側壁部間の距離が所定の長さと同じかそれよりも小さい第1の形態と、前記各側壁部間の距離が所定の長さよりも大きい第2の形態との間で互いに移行可能に構成されており、横幅が比較的小さい薬剤シートを収納するときは薬剤ケースの横幅を比較的小さい形態とすることにより調剤棚内に並べて配置される薬剤ケースの総数が増加されるように構成されていることを特徴とする、請求項1の薬剤保管具に使用されるのに適した、調剤棚内に配置される調剤用薬剤ケース。
【0012】
また、本発明による調剤棚内に配置される調剤用薬剤ケースにおいては、前記薬剤ケースの底壁部側の少なくとも一部に、磁性体材料で形成された調剤棚に吸着し得るマグネットが配置又は備えられていてもよい。
【0013】
さらに、本発明による調剤棚内に配置される調剤用薬剤ケースにおいては、前記薬剤ケースの側壁部側又は後壁部側に、前記薬剤ケース内にどの程度の枚数又は数量の薬剤シートが積ねられ又は存在しているかを知るための目安を示す目安提示部が形成され又は備えられていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の調剤用薬剤ケースにおいては、前記第1のケース片及び前記第2のケース片の互いに対向する各側壁部側を互いに所定距離の範囲内(例えば55~95mm内)で近接又は離反できるように構成したので、横幅が比較的小さい薬剤シートを収納するときは各側壁部側が互いに近接するように構成し、横幅が比較的大きい薬剤シートを収納するときは各側壁部側が互いに離反するように構成することにより、従来存在していた薬剤ケース内の無駄なスペースを無くし、その結果、調剤棚内の無駄なスペースも無くすことができる。例えば、平均的な調剤薬局で扱われる薬剤シート中でその約8~9割を占める横幅が50mm以下の薬剤シートを収容するときは、前記第1のケース片及び前記第2のケース片を互いに近接させて薬剤ケースの横幅を例えば55mmとし、平均的な調剤薬局で扱われる薬剤シート中でその約1~2割に止まる横幅が50mmを超える薬剤シートを収容するときは、前記第1のケース片及び前記第2のケース片を互いに離反させて薬剤ケースの横幅を例えば従来と同じ95mmとすることにより、従来存在していた薬剤ケース内の無駄なスペースを無くし、調剤棚内の無駄なスペースも無くすことができる(例えば、調剤棚の横幅が900mmの場合に、本発明における横幅55mmの薬剤ケースを調剤棚内に並べるときは、一段の棚で薬剤ケース(横幅55mm)を16個も並べることができるので、従来の95mmの薬剤ケースならば9個しか並べられなかった場合と比較して、一段の棚に並べることができる薬剤ケースの数を1.7倍以上に増加させることができる)。
【0015】
また本発明の調剤用薬剤ケースにおいては、横幅(互いに対向する各側壁部間の距離)が所定の長さと同じかそれよりも小さい第1の形態(例えば横幅が55mmに構成された形態)と、横幅(互いに対向する各側壁部間の距離)が所定の長さよりも大きい第2の形態(例えば横幅が95mmに構成された形態)との間で互いに移行できるようにしたので、横幅が比較的小さい薬剤シートを収納するときは前記横幅が小さい第1の形態にし、横幅が比較的大きい薬剤シートを収納するときは前記横幅が大きい第2の形態にすることにより、従来存在していた薬剤ケース内の無駄なスペースを無くし、調剤棚内の無駄なスペースも無くすことができる。すなわち、例えば、平均的な調剤薬局で扱われる薬剤シート中でその約8~9割を占める横幅が50mm以下の薬剤シートを収容するときは、薬剤ケースをその横幅が例えば55mmに構成された第1の形態に移行させ、平均的な調剤薬局で扱われる薬剤シート中でその約1~2割に止まる横幅が50mmを超える薬剤シートを収容するときは、薬剤ケースをその横幅が例えば従来と同じ95mmに構成された第2の形態に移行させることにより、従来存在していた薬剤ケース内の無駄なスペースを無くして調剤棚内の無駄なスペースを無くすことができる(例えば、調剤棚の横幅が900mmの場合に、本発明における第1の形態である横幅55mmに構成した薬剤ケースを調剤棚内に並べるときは、一段の棚で薬剤ケース(横幅55mm)を16個も並べることができるので、従来の95mmの薬剤ケースならば9個しか並べられなかった場合と比較して、一段の棚に並べることができる薬剤ケースの数を1.7倍以上に増加させることができる)。
【0016】
また本発明において、前記薬剤ケースの底壁部側(特にその底面側)の少なくとも一部に、磁性体材料で形成された調剤棚に吸着し得るマグネットを配置又は備えるようにしたときは、前記第1のケース片と前記第2のケース片を互いに近接させて薬剤ケースの横幅を例えば55mmという細長い形態(前記第1の形態)に移行させた場合などでも、前記マグネットが調剤棚側に吸着するため、前記薬剤ケースが横方向に転倒する恐れを無くすことができる。また本発明によれば、前記マグネットが調剤棚に吸着することにより、前記調剤棚内で並べられている薬剤ケースの位置がそれぞれ固定されるため、前記調剤棚内で各薬剤ケースが位置ずれしてしまうことが無くなり、その結果、例えば或る薬剤ケースが隣接する他の薬剤ケースの方向に不用意に移動(位置ずれ)して隣の他の薬剤ケースを押してしまい隣の他の薬剤ケースの横幅が変わってしまうなどの不都合を防止することができる。
【0017】
また本発明において、前記薬剤ケースの側壁部側又は後壁部側に(例えば調剤棚の前方に居る薬剤師側から特に見易い側に)、薬剤師が薬剤ケース内にどの程度の枚数又は数量の薬剤シートが積ねられ又は存在しているかを知るための目安を提示する目安提示部を形成し又は備えるようにしたときは、薬剤師は前記目安提示部を見るだけで、前記薬剤ケース内にどの程度の枚数又は数量の薬剤シート等が積み重ねられているかを知って前記各薬剤ケース内に薬剤シート等を補充すべきタイミングを判断するなど調剤の準備等の作業を効率的に行えるようになる。
【0018】
さらに本発明において、前記薬剤ケースの側壁部側又は後壁部側に(例えば調剤棚の前方に居る薬剤師側から特に見易い側に)上下方向に形成されたスリットと、前記スリット内を上下方向に移動できるように且つ前記上下方向に移動された後の位置で前記スリットの内壁面との摩擦力により保持されるように備えられた移動部と、前記移動部の薬剤師側から見える側に形成され又は備えられた目安提示部とを備えるようにしたときは、薬剤師は前記目安提示部を見るだけで、前記薬剤ケース内にどの程度の枚数又は数量の薬剤シート等が積み重ねられているかを知って前記各薬剤ケース内に薬剤シート等を補充すべきタイミングを判断するなど調剤の準備等の作業を効率的に行えるようになると共に、薬剤師は、個々の薬剤シートの形状・大きさとの関係等に対応して各薬剤ケース毎に前記薬剤ケース中における目安提示部の位置(高さ)を任意に変更できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)、(b)及び(c)は本発明の一実施形態に係る薬剤ケースを示す斜視図である。
図2】(a)及び(b)は本実施形態の使用状態の一例を示す斜視図である。
図3】本実施形態に係る薬剤ケース又はケース片の裏面側を示す斜視図である。
図4】本実施形態に係る薬剤ケース又はケース片の裏面側を示す斜視図である。
図5】(a)、(b)及び(c)は本発明の他の実施形態に係る薬剤ケースを示す斜視図である。
図6】(a)は従来の調剤棚の一例を示す斜視図、(b)は従来の薬剤ケースの一例を示す斜視図である
図7】(a)は従来の薬剤ケースの他の例を示す斜視図、(b)はその側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態(実施形態1)に係る薬剤ケースは、図1(c)及び図2図2の左側の薬剤ケース)に示すように、図示左側の第1のケース片20と同右側の第2のケース片30とを部分的に重ねて組み合わせることにより構成されるものである。すなわち、図1(a)~(c)及び図2図2の左側の薬剤ケース)において、図示左側の第1のケース片20は、側壁部21,これと隣接し且つ一体に形成された底壁部22,後壁部23及び前壁部24により構成されている。また、図示右側の第2のケース片30は、側壁部31,これと隣接し且つ一体に形成された底壁部32,後壁部33及び前壁部34により構成されている。図1(a)~(c)及び図2図2の左側の薬剤ケース)ではいずれも、第1のケース片20と第2のケース片30は、各側壁部21,31が互いに対向するように配置され、それらにそれぞれ隣接する各底壁部22,32、各後壁部23,33及び各前壁部24,34がそれぞれ互いに部分的に重ねられ組み合わせられている。また、第1のケース片20と第2のケース片30は、互いに幅方向(横方向)にスライドさせることにより互いの各側壁部21,31間の距離を所定の範囲内で(例えば約55mmから約95mmの範囲内で)、薬剤師などが任意に変更できるように構成されている。なお、図2の図示右側の薬剤ケースは従来例の一つである。
【0021】
前記第1のケース片20を構成する側壁部21,底壁部22,後壁部23及び各前壁部24、並びに、前記第2のケース片30を構成する側壁部31,底壁部32,後壁部33及び前壁部34は、いずれも、例えば透明なプラスチック素材、又は白色など任意の色のプラスチック素材により一体に形成されている。
【0022】
図1(a)及び(b)並びに図2(a)に示す例では、薬剤ケースは、前記第1のケース片20を構成する底壁部22,後壁部23及び各前壁部24と、前記第2のケース片30を構成する底壁部32,後壁部33及び前壁部34とが、互いにほぼ最大限に重ねられており、調剤薬局で扱う薬剤シートの80~90%を占める横幅50mm以下の薬剤シートを無駄なスペースなく収容するのに適した、例えば55mmの横幅となるように形成されている。
【0023】
また図1(c)及び図2(b)に示す例では、薬剤ケースは、前記第1のケース片20を構成する底壁部22,後壁部23及び各前壁部24と、前記第2のケース片30を構成する底壁部32,後壁部33及び前壁部34とが、互いに相当部分が重なっているが一部だけ重ならないようにされて、例えば横幅60~65mmの薬剤シートを無駄なスペースなく収容するのに適した、例えば70mmの横幅となるように形成されている。さらに図示していないが、薬剤ケースを例えば横幅90mmの薬剤シートを収容するのに適した形態にするときは、前記第1のケース片20を構成する底壁部22,後壁部23及び各前壁部24と、前記第2のケース片30を構成する底壁部32,後壁部33及び前壁部34とを、互いに微小な部分が重なるだけでその他の部分は重ならないようにして、例えば95mmの横幅となるように薬剤ケースを形成する。
【0024】
また図1(a)及び(b)において、32aは、前記第2のケース片30の底壁部32中の前方部分(薬剤師に近い側の部分)に凹状に形成された小収容部である。この小収容部32aには、薬剤シートから一部が切り取られた後の残りの端数シートが配置、収容される。なお、前記第2のケース片30の底壁部32中の前記小収容部32aを除く部分は、未使用の(未だ切断されていない)完全な薬剤シートPが配置される大収容部として使用される。
【0025】
また本実施形態では、図1(c)に示すように、図示右側の第2のケース片30の側壁部31の後方部分の内面側に、縦方向のスリット36が形成されている。また本実施形態では、前記スリット36中を上下方向に移動可能かつ移動後の位置が摩擦力により保持(固定)可能に構成された後端部(図示省略)を有する目安提示部35が上下方向に複数個(図1(c)では3個)配置されている。
【0026】
前記目安提示部35は、その後端部が前記スリット36中を上下方向に移動し且つ移動された後はその移動後の位置において前記スリット36の内壁面と自らとの間の摩擦力により保持されるように構成されている。そのため、前記後端部と一体に形成された(又はこれに固定された)目安提示部35も、前記スリット36の上下方向に沿って任意の高さ位置で保持・固定されるようになっている。また、前記目安提示部35は、前記第2のケース片30の色(例えば透明又は白色などの色)とは異なる目立つ例えば赤色などの色を有するように構成されている。このような目安提示部35は、薬剤師が前記第1のケース片20及び第2のケース片30が組み合わせられて成る薬剤ケースの底壁部22,32上に配置された薬剤シートの枚数もしくは数量を一瞥して知るため(そしてもし薬剤ケース内の薬剤シートが少ないときは補充するため)の目安となり得るものである。
【0027】
次に、図3は前記第1のケース片20と前記第2のケース片30とが互いに重ねられていない状態における、それぞれの各底壁部22,32の裏面側を示す斜視図、図4は前記第1のケース片20と前記第2のケース片30とが互いに一部だけ重ねられている状態における、それぞれの各底壁部22,32の裏面側を示す斜視図である。
【0028】
本実施形態では、図3図4に示すように、第1のケース片20の底壁部22の裏面側の前方(薬剤師に近い側)の一部に、マグネット41が配置、固定されている。よって、第1のケース片20と第2のケース片30が組み合わせられて成る薬剤ケースが薬剤棚(スチールなどの磁性体材料製)内に配置されたとき、前記第1のケース片20の裏面側は前記マグネット41により調剤棚に吸着、固定される。
【0029】
本実施形態では、横幅50mm以下の薬剤シートを収容するときは、薬剤ケースの横幅が従来よりも小さい約55mmに構成されるが、そのような薬剤ケースは、横幅が小さい全体として細長い形状となり、横方向に転倒し易くなるが、本実施形態では前述のように前記マグネット41が調剤棚に吸着されるので、そのような細長い薬剤ケースでも横方向への転倒が防止される。
【0030】
また、本実施形態では、薬剤ケースの横幅が従来の薬剤ケースの95mmと同じかそれに近い横幅に構成されることがある(図2(b)の図示左側の薬剤ケースを参照)が、そのような横幅が例えば80~95mmの横幅に構成されたときの薬剤ケースは、その横隣に配置された薬剤ケース(図2(b)の図示右側の薬剤ケースを参照)から押されて、その横幅が例えば約55~70mmなどに縮んでしまう(図2(a)に示す状態)可能性があるが、本実施形態では、前述のように互いに隣に配置された薬剤ケースはそれぞれ前記マグネット41により調剤棚に吸着されてその位置が固定されるので、隣に配置された薬剤ケースから押される恐れはなくなる。よって、本実施形態では、薬剤ケースの横幅が、その隣に配置された薬剤ケースから押されて例えば約80~95mm(図2(b)に示す状態)から約55~70mm(図2(a)に示す状態)に縮んでしまうなどの不都合が防止される。
【0031】
次に図5は本発明の他の実施形態(実施形態2)を示す斜視図である。この他の実施形態においても、第1のケース片50と第2のケース片60とが組み合わされて薬剤ケースが構成される。
【0032】
すなわち、図5(a)~(c)において、それぞれ図示上側の第1のケース片50は、側壁部51,これと隣接し且つ一体に形成された底壁部52,後壁部53及び前壁部54により構成されている。また、図示下側の第2のケース片60は、側壁部61,これと隣接し且つ一体に形成された底壁部62,後壁部63及び前壁部64により構成されている。図5(a)及び(b)ではいずれも、第1のケース片50と第2のケース片60とは、各側壁部51と61が互いに対向するように配置されると共に、それらと隣接する各底壁部52と62,各後壁部53と63、及び各前壁部54と64がそれぞれ互いに部分的に重ねられている。他方、図5(c)は、第1のケース片50と第2のケース片60とが互いに離れた状態を示している。図5に示すように、第1のケース片50と第2のケース片60は、互いに幅方向(横方向)にスライドさせることにより互いの各側壁部51,61間の距離を所定の範囲内で(例えば約55mmから約95mmの範囲内で)、薬剤師などが任意に変更できるように構成されている。
【0033】
前記第1のケース片50と前記第2のケース片60、すなわち前記第1のケース片50を構成する側壁部51,底壁部52,後壁部53及び前壁部54、並びに、前記第2のケース片60を構成する側壁部61,底壁部62,後壁部63及び前壁部64は、それぞれ、例えば透明なプラスチック素材、又は白色など任意の色のプラスチック素材により一体的に形成されている。
【0034】
図5(a)では、薬剤ケースは、前記第1のケース片50中の底壁部52,後壁部53及び前壁部54と、前記第2のケース片60中の底壁部62,後壁部63及び前壁部64とが、それぞれのほとんどの部分が互いに重ねられて、調剤薬局で扱う薬剤シートの80~90%を占める横幅50mm以下の薬剤シートを無駄なスペースなく収容するのに適した、例えば55mmの横幅となるように形成されている。また図5(b)では、薬剤ケースは、前記第1のケース片50を構成する側壁部51,底壁部52,後壁部53及び前壁部54と、前記第2のケース片60を構成する側壁部61,底壁部62,後壁部63及び前壁部64とが、それぞれの微小な一部のみが互いに重ねられて、例えば横幅60~90mmの薬剤シートを収容するのに適した、95mmの横幅となるように形成されている。
【0035】
また図5において、52a,62aは、前記第1及び第2のケース片50,60の各底壁部52,62中の前方部分(薬剤師に近い側の部分)に凹状に形成された小収容部である。この小収容部52a,62aには、薬剤シートから一部が切り取られた後の残りの端数シートが配置、収容される。なお、前記第1及び第2のケース片50,60の各底壁部52,62中の前記小収容部52a,62aを除く部分は、未使用の(一部が切断されていない)完全な薬剤シートPが配置される大収容部として使用される。
【0036】
また図5において、52b,62bは、前記第1及び第2のケース片50,60中の前記各底壁部52,62により構成される前記大収容部中の、前記小収容部52a,62a側に近い部分に形成された隆起部である。この隆起部52b,62bは、前記大収容部内に配置、収容された未使用の完全な薬剤シートPの端部を薬剤師が手で掴み易くするためものである。
【0037】
以上に説明したように、前記実施形態(図1-4)においては、第1のケース片20及び第2のケース片30の各側壁21,31を互いに所定距離の範囲内(例えば55~95mm内)で近接又は離反できるように構成したので、横幅が50mm以下の比較的小さい薬剤シート(調剤薬局で扱う薬剤シートの約80~90%はこのような横幅である)を収納するときは各側壁部側が互いに近接するように構成し、横幅が50mmを超える比較的大きい薬剤シート(調剤薬局で扱う薬剤シートの約10~20%程度)を収納するときは各側壁21,31側が互いに離反するように構成することにより、従来存在していた薬剤ケース内の無駄なスペースを無くし、調剤棚内の無駄なスペースも無くせるようになる。図5に示す実施形態でも同様である。
【0038】
また前記各実施形態に係る第1のケース片20又は50と第2のケース片30又は60とを組み合わせて成る調剤用薬剤ケースにおいては、横幅が所定の長さと同じかそれよりも小さい第1の形態(例えば横幅が55mmに構成された形態)と、横幅が所定の長さよりも大きい第2の形態(例えば横幅が95mmに構成された形態)との間で互いに移行できるようにしたので、横幅が比較的小さい薬剤シートを収納するときは前記横幅が小さい第1の形態にし、横幅が比較的大きい薬剤シートを収納するときは前記横幅が大きい第2の形態にすることにより、従来存在していた薬剤ケース内の無駄なスペースを無くし、調剤棚内の無駄なスペースも無くすことができる。
【0039】
すなわち、例えば、平均的な調剤薬局で扱われる薬剤シート中でその約8~9割を占める横幅が50mm以下の薬剤シートを収容するときは、前述の第1のケース片20又は50の側壁壁と第2のケース片30又は60の側壁壁を互いに近接させて薬剤ケースの横幅を例えば55mmとし(第1の形態)、平均的な調剤薬局で扱われる薬剤シート中でその約1~2割に止まる横幅が50mmを超える薬剤シートを収容するときは、同第1のケース片20又は50の側壁壁と第2のケース片30又は60の側壁壁を互いに離反させて薬剤ケースの横幅を例えば従来と同じ95mmとする(第2の形態)ことにより、従来存在していた薬剤ケース内の無駄なスペースを無くし、その結果、調剤棚内の無駄なスペースも無くすことができる(例えば、調剤棚の横幅が900mmの場合に、横幅55mmの薬剤ケースだけを調剤棚に並べるときは、一段の棚で薬剤ケース(横幅55mm)を16個も並べることができるので、従来の95mmの薬剤ケースならば9個しか並べられなかった場合と比較して、一段の棚に並べることができる薬剤ケースの数を1.7倍以上に増加させることができる)。
【0040】
また本実施形態においては、図3,4に示すように、前記ケース片20の底壁部22の裏面側の少なくとも一部に、磁性体材料で形成された調剤棚に吸着し得るマグネット41を配置又は備えるようにしたので、前記第1のケース20片及び前記第2のケース片30を互いに近接させて薬剤ケースの横幅を例えば55mmという細長い形態(第1の形態)にした場合でも、前記マグネット41が調剤棚側に吸着するため、前記薬剤ケースが横方向に転倒する恐れを無くすことができる。また前記マグネット41の調剤棚への吸着により各薬剤ケースの位置が固定されるため、各薬剤ケースの調剤棚内での位置ずれが無くなり、その結果、例えば或る薬剤ケースが隣接する他の薬剤ケースの方向に不用意に移動し他の薬剤ケースを押して他の薬剤ケースの横幅が変わってしまうなどの不都合も防止できるようになる。
【0041】
また本実施形態においては、図1(c)などに示すように、前記ケース片30の側壁部31の内面側の部分(例えば調剤棚の前方に居る薬剤師側から特に見え易い部分)に、薬剤師が薬剤ケース内にどの程度の枚数又は数量の薬剤シートが積まれ又は存在しているかを知るための目安を提示する目安提示部35を備えると共に、この目安提示部35の後端部をスリット36中で上下方向に移動可能にし且つ任意の位置で摩擦力により固定(保持)可能にしたので、薬剤師は前記目安提示部を見るだけで、前記薬剤ケース内にどの程度の枚数又は数量の薬剤シート等が積み重ねられているかを知って前記各薬剤ケース内に薬剤シート等を補充すべきタイミングを判断するなど調剤の準備等の作業を効率的に行えるようになると共に、薬剤師は個々の薬剤シートの形状・大きさとの関係等に対応して各薬剤ケース毎に前記薬剤ケース中における目安提示部の位置(高さ)を任意に変更できるようになる。
【0042】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、図3,4に示す例では、前記マグネット41は第1のケース片20の底壁部22の裏面側の前方部分に配置しているが、例えば第1のケース片20及び第2のケース片30の双方の各底壁部22,23にそれぞれマグネット41を配置するようにしてもよいし、また、前記底壁部22の前方部分ではなくその中央部分又は後方部分にマグネット41を配置するようにしてもよい。また図1(c)に示す例では、前記目安提示部35を移動可能に保持するためのスリット36を第2ケース片30の側壁部31側に形成したが、本発明ではこれに限られるものではなく、第1ケース片20又は第2ケース片30の側壁部21もしくは31側又は後壁部23もしくは33側に配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
20,50 第1ケース片
21,31,51,61 側壁部
22,32,52,62 底壁部
23,33,53,63 後壁部
24,34,54,64 前壁部
30,60 第2ケース片
32a,52a,62a 小収容部
35 目安提示部
36 スリット
52b,62b 隆起部
【要約】
【目的】薬剤ケース内の無駄なスペースを無くし、調剤棚内の無駄なスペースを無くすことができる調剤用薬剤ケースを提供する。
【構成】第1のケース片と第2のケース片とを含み前記第1のケース片及び前記第2のケース片は互いの各側壁部が所定距離の範囲内で近接又は離反できるように構成された調剤用錠剤ケース、又は、第1のケース片と第2のケース片の各側壁部間の距離が所定の長さと同じかそれよりも小さい第1の形態(例えば横幅が55mmに構成された形態)と、前記各側壁部間の距離が所定の長さよりも大きい第2の形態(例えば横幅が95mmに構成された形態)との間で互いに移行可能に構成された調剤用錠剤ケースである。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7