(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】CO2ガスを含む圧入ガスの地下貯留及び石油増進回収の方法
(51)【国際特許分類】
E21B 43/16 20060101AFI20231018BHJP
E21B 43/00 20060101ALI20231018BHJP
E21B 23/00 20060101ALN20231018BHJP
【FI】
E21B43/16
E21B43/00 A
E21B23/00
(21)【出願番号】P 2023500850
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2022005930
(87)【国際公開番号】W WO2022176847
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2021022419
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591090736
【氏名又は名称】石油資源開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 好弘
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 利仁
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-019644(JP,A)
【文献】特開2008-006367(JP,A)
【文献】特開2017-218729(JP,A)
【文献】特開2021-014740(JP,A)
【文献】特許第5315346(JP,B2)
【文献】特許第5399436(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 43/16
E21B 43/00
E21B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本の管により水流路とガス流路との二流路で構成される圧入井において、
前記水流路から圧入水を圧入する工程と、
前記水流路の下端に設置したファインバブル発生装置を通して流体の流れを絞って流速を増加させた高圧水ジェットとして圧入水を噴射し、前記ガス流路から圧入ガスを前記ファインバブル発生装置内に吸い込ませ、前記ガス流路の下端に設置した前記ファインバブル発生装置を通して前記圧入ガスをファインバブル気泡として噴射する工程と、
前記ファインバブル発生装置内で前記圧入水と前記ファインバブル気泡とが混合されることにより生成されるファインバブルを含む気液混合流体が石油貯留層等の浸透性地層に浸透する工程と、からなり、
前記二流路として外管と内管の二重管の構造をもち、前記外管の内側と前記内管の外側との間を前記ガス流路とし、前記内管の内側を前記水流路とし、前記外管の下端に前記ファインバブル発生装置が設置され、
前記ファインバブル発生装置は、前記ガス流路と、前記水流路と、
前記内管の流れ方向終端部に形成され、前記水流路の前記流体の流れを絞って流速を増加させる高圧ノズルと、
前記外管の流れ方向終端部と接続され、流れ方向に向かって拡径する筒状のスロートと、により構成される、
CO2ガスを含む圧入ガスの地下貯留及び石油増進回収の方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記ファインバブル発生装置が坑口装置内に設置されることを特徴とする、
請求項1に記載のCO2ガスを含む圧入ガスの地下貯留及び石油増進回収の方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記ファインバブル発生装置が地表に設置されることを特徴とする、
請求項1に記載のCO2ガスを含む圧入ガスの地下貯留及び石油増進回収の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンチュリ効果を利用したファインバブル発生装置を用いた、CO2ガスを含む圧入ガスの地下貯留及び石油貯留層等の浸透性地層に含まれる石油の増進回収を行うことに関するものである。
本願は、2021年2月16日に、日本に出願された特願2021-022419号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速な経済成長に伴うエネルギー需要の増加による大量の化石燃料使用によって、大気中の二酸化炭素(Carbon Dioxide、以下、本明細書においてはCO2ガスと略記する)濃度は危機的なレベルにまで上昇している。
また、2015年にパリで開かれた「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」では、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」が合意され、2016年11月に発効された。パリ協定では、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べ2.0℃より十分低く保つとともに、上昇幅を1.5℃に抑える努力を追求すること」、「今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去の均衡を達成するために、最新の科学に従って早期の削減を行う」などの重要項目が含まれている。
【0003】
その結果、脱温暖化対策の一つとして世界の二酸化炭素回収・貯留技術(Carbon Dioxide Capture and Storage、以下、本明細書においてはCCSと略記する)や二酸化炭素回収・貯留有効利用技術(Carbon Dioxide Capture, Utilization and Storage、以下、本明細書においてはCCUSと略記する)の早急な導入が求められている。
CCSは、発電所や化学工場などから排出されたCO2ガスを、他の気体から分離して集め、地中深くの安定した地層に圧入・貯留するというものである。CCSは、CO2ガスの排出を大幅に抑制することが可能な技術として、省エネルギー、再生可能エネルギーなどとともに、地球温暖化対策に貢献していくことが期待される。一方で、CCSの世界的な普及は期待通りには進んでいない。その理由は、技術の不確実性や、貯留の安全性への懸念、法規制の未整備、等々幾つかあるが、特にコストの大半を占めるCO2ガス分離回収コストの増加等により、事業性が見通し難いことがある。
そのため、回収したCO2ガスを単に貯留するのではなく、CO2ガスを直接あるいは間接的に利用して付加価値のある製品を生産し、回収に掛かるコストを補填することを目指すCCUSが注目を集めるようになっている。このようなことから、CCUS技術の一つである石油増進回収技術(Enhanced Oil Recovery、以下、本明細書においてはEORと略記する)を利用した石油貯留層へCO2ガスを含むガスを圧入する技術は技術的に確実性のある手法である。このような技術は、地球温暖化対策としてCO2ガスを地下貯留することができるとともに、石油回収率を上げながら経済的な効果を上げられることもあり、EOR技術利用は必要不可欠となっている。
【0004】
石油貯留層から石油を採取する方法には、1次から3次の回収法がある。1次回収法は自噴採油と人工採油による採油であり、2次回収法は石油貯留層に水などを圧入して油層圧を回復させることにより、産油量の増加を行うものである。1次から2次回収法では、石油の回収率を30%から40%程度に高めることができると言われている。3次回収法はEORとも呼ばれ、2次回収法適用後に適用される回収法であり、ケミカル攻法、熱攻法、CO2ガスを含むガス攻法、微生物攻法などが知られている。これは、石油貯留層内に薬剤、水蒸気や熱水を圧入して石油の流動性増進や水と油間の表面張力を減少させたり、CO2ガスを含む圧入ガスと油の間に超臨界領域での混合状態(ミシブル状態)を作り出したりすることにより、石油回収率の向上を図る手法である。これらの回収法の適用により、回収率を50%から60%程度に高めることができると言われている。
【0005】
大量のCO2ガスを地下貯留する方法としては、地下の帯水層へのCO2ガス圧入法があり、特許第5315346号公報においては、CO2ガスタンクに溜められたCO2ガスを圧送装置により昇圧し、地層に垂直に掘削した注入井から圧入することにより、注入井の先端に設けられた多孔質フィルターにより、CO2ガスをマイクロバブル化し、地層水にマイクロバブルを分散させることによりCO2ガスを地下貯留することを特徴とする貯留装置及び貯留方法が提案されている。特許第5399436号公報では地層に水平に掘削した注入井からCO2ガスを圧送装置により圧入し、注入井の先端に設けられた多孔質フィルターにより、CO2ガスをマイクロバブル化し、地層水にマイクロバブルを分散させることによりCO2ガスを地下貯留することを特徴とする貯留装置及び貯留方法が提案されている。
【0006】
また、特開2008-6367号公報に記載された手法は、帯水層にある地層水を一旦汲み上げて、プラント施設の排気ガスから分離回収されたCO2ガスを、坑内でCO2ガスを水中に気泡として放出するインジェクター方式により、CO2ガスをマイクロバブル化したうえで注入水と混合して気液混合状態にして、再び帯水層へ注入している。この方法は、注入井のほかに地層水を汲みあげるための揚水井や、揚水のためのポンプが必要となり、システム全体が大掛かりなものとなり、また、貯留のための動力もかさむといった問題点がある。さらに、帯水層への注入圧力は、揚水井での汲み出し圧力とバランスさせる必要があり、揚水量と注入量とを一致させる必要があることから、CO2ガスを効率的に貯留できないという問題がある。
【0007】
また、特開2008-019644号公報においては、坑内に降下したチュービング管及びマイクロバブル化装置に地表より注入ガスを圧入しながら高速回転させ、ケーシング管とチュービング管の間には地表より注入水を圧入することにより、注入ガスを注入水の中にマクロバブル化して混合し気液混合流体を坑内にて作成し、これを圧入井から油層またはガス層に圧入することにより層内の微細な間隙に浸透させ、注入水中のマイクロバブルによって石油またはガスの増進回収を図ることを特徴とする石油または天然ガスの増進回収方法及び増進回収システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5315346号公報
【文献】特許第5399436号公報
【文献】特開2008-6367号公報
【文献】特開2008-019644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ベンチュリ効果を利用したファインバブル発生装置を用いて圧入ガスからファインバブルを効率よく発生させ、圧入水と混合させることによりファインバブルを含む気液混合流体とし、圧入井を通して地下の石油貯留層等の浸透性地層の間隙に浸透させることにより、CO2ガスを含む圧入ガスの地下貯留並びに石油増進回収のためのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては、圧入水を高圧ポンプにより昇圧しファインバブル発生装置に圧入する工程と、昇圧された圧入水を高圧ノズルより流体の流れを絞って流速を増加させて高圧水ジェットとして噴射することにより、高圧ノズル下流にベンチュリ効果によって発生した負圧のため、圧入ガスがファインバブル発生装置内に吸い込まれる工程と、吸い込まれた圧入ガスが高圧水ジェットのせん断力によりファインバブル気泡となり、圧入水と混ざり合うことによりファインバブルを含む気液混合流体を生成し、これをファインバブル発生装置内のスロート部分で減速しながら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換し、最終的にファインバブルを含む気液混合流体を同じ圧力まで昇圧する工程と、昇圧されたファインバブルを含む気液混合流体を坑口装置や坑井内を移動させ、石油貯留層等の浸透性地層に浸透させる工程からなる、CO2ガスを含む圧入ガスの地下貯留並びに石油増進回収の方法であることを特徴とする。
【0011】
本発明は、二本の管により二流路を構成する圧入管内にファインバブル発生装置を設置する場合において、水流路が水圧入管、ガス流路がガス圧入管、であることを特徴とする構成であってもよい。
【0012】
また本発明は、前記二流路として外管と内管の二重管の構造をもち、前記外管の内側と前記内管の外側との間を水流路とし、前記内管の内側をガス流路とし、前記内管の下端に前記ファインバブル発生装置が設置されることを特徴とする構成であってもよい。
【0013】
また本発明は、前記二流路としてやはり外管と内管の二重管の構造をもち、前記外管の内側と前記内管の外側との間をガス流路とし、前記内管の内側を水流路とし、前記外管の下端に前記ファインバブル発生装置が設置されることを特徴とする構成であってもよい。
【0014】
前記圧入ガスは、炭化水素ガス、油田フレアガス、窒素ガス、CO2ガス、燃焼排ガス、及びこれらを混合したガスであることを意味する。このため、圧入ガスにCO2ガス、油田フレアガス、燃焼排ガス及びこれらを混合したガスを使用する場合、CO2ガスを含む圧入ガスの石油貯留層等の浸透性地層への地下貯留が可能となるため、地球温暖化対策において効果を上げることを特徴とする。
【0015】
前記圧入水は、河川水や海水が使用されるが、生産井から生産される地層水も河川水や海水等の圧入水と混合されることにより再利用されることがある。いずれの場合も地層由来以外の水を含んだ圧入水を圧入するため、圧入水による地層膨潤等による微細な間隙の閉塞を発生させないように、圧入される前に薬剤などを加えて処理される。
【0016】
なお、ファインバブルとは、直径100μm以下の気泡を意味し、マイクロバブル(直径1μmから100μmまでの気泡)とナノバブル(直径数十から数百nmまでの気泡)を含む。
【0017】
また、石油貯留層内においてファインバブルによって微細な間隙から追い出された石油・天然ガス・地層水は、圧入井から圧入され石油貯留層を通して生産井まで移動してきた圧入水・圧入ガスとともに生産井から生産流体として生産される。この生産流体は、地表において比重の違う生産流体を分離する三相気液分離装置により、石油・天然ガス/圧入ガス・地層水/圧入水に分離される。石油は原油タンクに移送し販売され、天然ガス/圧入ガスは圧入ガスタンクに移送し圧入ガスとして再利用され、さらに分離された地層水/圧入水についても、圧入水タンクに移送し圧入水として再利用される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の機構を採用することで、一つの高圧ポンプから高圧の圧入水をファインバブル発生装置内の高圧ノズルに圧入し、高圧ノズルにより流体の流れを絞って流速を増加させて高圧水ジェットとして噴射することにより、高圧ノズル下流にベンチュリ効果による負圧を発生させる。このことにより、圧入ガスをファインバブル発生装置内に吸い込み、高圧水ジェットのせん断力によりファインバブル気泡とし、圧入水と混ざり合うことによりファインバブルを含む気液混合流体を生成することができる。
【0019】
また、ファインバブルを含む気液混合流体を地下の石油貯留層等の浸透性地層の間隙に圧入・浸透させることによって、石油貯留層等の浸透性地層内の微細な間隙から石油・天然ガス・地層水を追い出すことができるため、圧入井と別の地点に掘削された生産井から石油・天然ガスを増進回収する効果がある。また、ファインバブルを含む気液混合流体は地層水との密度差によって沈降流を発生させ地層傾斜に沿って下降するとともに、ファインバブルはその粒径が極めて小さいことによる泡内追加圧(ラプラス圧)と地層圧力によって密度が高くなっているため、地層水に対して非常に小さな相対浮上速度(ストークス速度)となるため、CO2ガスを含む圧入ガスを地下貯留することが可能となる。
【0020】
また、高圧ノズル下流にベンチュリ効果によって発生した負圧のため、圧入ガスはファインバブル発生装置内に自然に吸い込まれることとなり、圧入ガスを圧入するためのガスポンプやガスタンク等の複雑な圧送・貯留システムを使用する必要がなく、設備費用を低減する効果が見込まれる。
【0021】
次に、生産井から生産流体が生産され、地表において比重の違う生産流体を分離する三相気液分離装置により、石油・天然ガス/圧入ガス・地層水/圧入水に分離される。石油は、原油タンクに移送され販売される。ガス相である天然ガス/圧入ガスは、圧入ガスタンクに移送し圧入ガスとして再利用される。また、分離された地層水/圧入水についても、圧入水タンクに移送し圧入水として再利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】二本の管により二流路を構成する圧入管内にファインバブル発生装置を設置するCO2ガスを含む圧入ガスの地下貯留及び石油増進回収の方法を示す図である。
【
図2】坑口装置内にファインバブル発生装置を設置するCO2ガスを含む圧入ガスの地下貯留及び石油増進回収の方法を示す図である。
【
図3】地表にファインバブル発生装置を設置するCO2ガスを含む圧入ガスの地下貯留及び石油増進回収の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照して具体的に説明する。本発明の目的は、ファインバブルを含む気液混合流体を利用して石油貯留層等の浸透性地層の微細な間隙に存在する石油・天然ガスを追い出すことによって、石油増進回収を図るとともにCO2ガスを含む圧入ガスを地下貯留することにある。
【0024】
(第1実施形態)
図1に示す二本の管により二流路を構成する圧入管202aが設置された圧入井101において、圧入水102を高圧ポンプにより昇圧し水圧入管104を通して圧入する工程と、水圧入管104の下端に設置したファインバブル発生装置207の高圧ノズル204を通して流体の流れを絞って流速を増加させた高圧水ジェット206を噴射し、高圧ノズル204下流にベンチュリ効果によって発生した負圧により、ガス圧入管105を通して圧入ガス103が吸い込まれる工程と、吸い込まれた圧入ガス103が高圧水ジェット206のせん断力によりファインバブル気泡となり、圧入水102と混ざり合うことによりファインバブルを含む気液混合流体を生成させる工程と、このファインバブルを含む気液混合流体を直接石油貯留層等の浸透性地層208に浸透する工程とからなる、CO2ガスを含む圧入ガス103の地下貯留及び石油増進回収の方法であることを特徴とする。
【0025】
(第2実施形態)
図2に示すファインバブル発生装置207が坑口装置106内に設置された状態において、前記第1実施形態同様、圧入水102を高圧ポンプにより昇圧し水圧入管104を通して圧入水102を圧入する工程と、坑口装置106内に設置したファインバブル発生装置207の高圧ノズル204を通して流体の流れを絞って流速を増加させた高圧水ジェット206を噴射し、高圧ノズル204下流にベンチュリ効果によって発生した負圧により、ガス圧入管105を通して圧入ガス103が吸い込まれる工程と、吸い込まれた圧入ガス103が高圧水ジェット206のせん断力によりファインバブル気泡となり、圧入水102と混ざり合うことによりファインバブルを含む気液混合流体を生成させる工程と、圧入管202bを通して石油貯留層等の浸透性地層208に浸透する工程とからなる、CO2ガスを含む圧入ガス103の地下貯留及び石油増進回収の方法であることを特徴とする。
【0026】
(第3実施形態)
図3に示すファインバブル発生装置207が地表に設置された状態において、前記第1実施形態同様、圧入水102を高圧ポンプにより昇圧し水圧入管104を通して圧入水102を圧入する工程と、地表に設置したファインバブル発生装置207の高圧ノズル204を通して流体の流れを絞って流速を増加させた高圧水ジェット206を噴射し、高圧ノズル204下流にベンチュリ効果によって発生した負圧により、ガス圧入管105を通して圧入ガス103が吸い込まれる工程と、吸い込まれた圧入ガス103が高圧水ジェット206のせん断力によりファインバブル気泡となり、圧入水102と混ざり合うことによりファインバブルを含む気液混合流体を生成させる工程と、坑口装置106及び圧入管202bを通して石油貯留層等の浸透性地層208に浸透する工程とからなるCO2ガスを含む圧入ガス103の地下貯留及び石油増進回収の方法であることを特徴とする。
【0027】
ファインバブル発生装置207は、ガス圧入管105、水圧入管104、高圧ノズル204及び外筒を形成するスロート205より構成され、硬質金属部材が使用されている。ファインバブル発生装置207が、坑内において二本の管や二重管の内管に設置されるケース、坑口装置106内に設置されるケースや地表に設置されるケースが考えられるが、いずれの場合も中空同軸円筒状となる。なお、ファインバブルの粒子径は高圧水ジェット206のせん断力の程度に依存するため、セラミック等で構成された多孔質フィルターと比較し、圧入水102中の浮遊物質による高圧ノズル204やスロート205の閉塞リスクは大きく低減される。また、高圧ジェット206下流にベンチュリ効果によって発生した負圧により、圧入ガス103はファインバブル発生装置内207に吸い込まれることになり、圧入ガス103の流量を大きくするための圧送装置が大型化することはない。また、高圧ノズル204の孔径を大きくすれば、流体の通過抵抗は小さくなり、圧入ガス103量を増加させることは容易であるが、ファインバブルの気泡径を維持するのに注意を要する。
【符号の説明】
【0028】
101 圧入井
102 圧入水
103 圧入ガス
104 水圧入管
105 ガス圧入管
106 坑口装置
201 地表
202a 二本の管により二流路を構成する圧入管
202b 圧入管
203 パッカー
204 高圧ノズル
205 スロート
206 高圧水ジェット
207 ファインバブル発生装置
208 浸透性地層