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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】二次電池及び二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20231019BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20231019BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M50/533
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020003347
(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公開番号】P2021111538
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 祐輝
【審査官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/021128(WO,A1)
【文献】特開2001-203001(JP,A)
【文献】特開2001-283897(JP,A)
【文献】特開2019-135746(JP,A)
【文献】特開2016-170909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
H01M 50/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体を有する正極板と、負極集電体を有する負極板とがセパレータを介して積層されてなる電極積層体を備えた二次電池であって、
前記正極集電体は、周端縁の少なくとも一部に、厚さ方向における一方側に向かって突出するバリを有し、
前記負極集電体は、周端縁の少なくとも一部に、厚さ方向における一方側に向かって突出するバリを有し、
前記正極板及び前記負極板は、前記正極集電体のバリの突出方向と前記負極集電体のバリの突出方向を同じ方向とし、前記正極集電体の周端縁と前記負極集電体の周端縁の少なくとも一部が積層方向に重なる形態で積層されており、
前記正極集電体には、前記セパレータから露出するように突出する正極集電部が形成され、
前記正極集電部には、前記正極集電部の突出方向に沿って延びたスリット状をなす切り欠き部が設けられ、
前記正極集電部の前記切り欠き部は、前記正極集電部の突出方向に沿って延びて前記正極板を二等分する中心線に対して、前記正極板が非対称となるように形成されており、
前記負極集電体には、前記セパレータから露出するように突出する負極集電部が形成され、
前記負極集電部には、前記負極集電部の突出方向に沿って延びたスリット状をなす切り欠き部が設けられ、
前記負極集電部の前記切り欠き部は、前記負極集電部の突出方向に沿って延びて前記負極板を二等分する中心線に対して、前記負極板が非対称となるように形成されていることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
正極集電体を有する正極板と、負極集電体を有する負極板とがセパレータを介して積層されてなる電極積層体を備えた二次電池の製造方法であって、
前記正極集電体には、前記セパレータから露出するように突出する正極集電部が形成され、
前記正極集電部には、前記正極集電部の突出方向に沿って延びたスリット状をなす切り欠き部が設けられ、
前記正極集電部の前記切り欠き部は、前記正極集電部の突出方向に沿って延びて前記正極板を二等分する中心線に対して、前記正極板が非対称となるように形成されており、
前記負極集電体には、前記セパレータから露出するように突出する負極集電部が形成され、
前記負極集電部には、前記負極集電部の突出方向に沿って延びたスリット状をなす切り欠き部が設けられ、
前記負極集電部の前記切り欠き部は、前記負極集電部の突出方向に沿って延びて前記負極板を二等分する中心線に対して、前記負極板が非対称となるように形成されており、
前記正極集電体の材料である正極用金属箔に正極活物質が塗布された母材を打ち抜いて、前記正極板を得る工程と、
前記極集電体の材料である負極用金属箔に負極活物質が塗布された母材を打ち抜いて、前記負極板を得る工程と、
前記正極板が打ち抜かれた方向と前記負極板が打ち抜かれた方向を同じ方向とし、前記正極集電体の周端縁と前記負極集電体の周端縁の少なくとも一部が積層方向に重なる形態で前記正極板及び前記負極板を積層する工程と、を含む二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池及び二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、正極および負極が交互に積層された積層体を備えた積層型二次電池が開示されている。そして、正極の縁部および負極の縁部に押圧力が加わらないように構成することにより、正極および負極の形成工程(切断工程)において、正極および負極の切断面にバリ突起が発生している場合でも、このバリ突起によって正極と負極とが短絡するのを抑制することができる、と記載されている。
【0003】
特許文献2には、負極電極層、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層、正極電極層を1単位として構成される全固体電池が開示されている。この全固体電池は、電池外周端部の欠損や電極バリ等による短絡を防止するために、各層の間に絶縁部材が配設された構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-222388号公報
【文献】特開2014-130754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に記載の構成では、正極板及び負極板におけるバリに起因した短絡を十分に抑制することができず、問題がある。
【0006】
本開示は、短絡が抑制された二次電池を提供すること、また、そのような二次電池の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の二次電池は、正極集電体を有する正極板と、負極集電体を有する負極板とがセパレータを介して積層されてなる電極積層体を備えた二次電池であって、前記正極集電体は、周端縁の少なくとも一部に、厚さ方向における一方側に向かって突出するバリを有し、前記負極集電体は、周端縁の少なくとも一部に、厚さ方向における一方側に向かって突出するバリを有し、前記正極板及び前記負極板は、前記正極集電体のバリの突出方向と前記負極集電体のバリの突出方向を同じ方向とし、前記正極集電体の周端縁と前記負極集電体の周端縁の少なくとも一部が積層方向に重なる形態で積層されている。
【0008】
本開示の二次電池の製造方法は、正極集電体を有する正極板と、負極集電体を有する負極板とがセパレータを介して積層されてなる電極積層体を備えた二次電池の製造方法であって、前記正極集電体の材料である正極用金属箔に正極活物質が塗布された母材を打ち抜いて、前記正極板を得る工程と、前記正極集電体の材料である負極用金属箔に負極活物質が塗布された母材を打ち抜いて、前記負極板を得る工程と、前記正極板が打ち抜かれた方向と前記負極板が打ち抜かれた方向を同じ方向とし、前記正極集電体の周端縁と前記負極集電体の周端縁の少なくとも一部が積層方向に重なる形態で前記正極板及び前記負極板を積層する工程と、を含む。
【0009】
本開示によれば、短絡が抑制された二次電池を提供できる。また、そのような二次電池の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態における二次電池の斜視図である。
図2】外装体及びセパレータを省略して、正極板及び負極板を表す平面図である。
図3図2のIII-III断面に対応する断面図である。
図4図2のIV-IV断面に対応する断面図である。
図5】正極板を得る工程を説明するための説明図である。
図6】正極板及び負極板を積層する工程を説明するための説明図である。
図7】正極タブ部を正極端子に溶接する工程を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
図1に示すように、二次電池10は、例えばリチウムイオン電池などによって構成され、矩形状をなす可撓性を有した外装体12と、外装体12内に封止された電極積層体17及び電解液(図示略)と、外装体12から露出する正極端子14及び負極端子15とを備えている。外装体12は、例えばアルミニウムを用いた一対の矩形状をなす可撓性のラミネートフィルムの周縁部同士を溶着することによって形成される。
【0012】
図2及び図3に示すように、電極積層体17は、矩形状の正極板20と、正極板20よりも一回り大きい矩形状の負極板30とを、山折りと谷折りを交互に繰り返すつづら折りされた帯状のセパレータ40を介して交互に複数積層することによって形成される。この場合、セパレータ40の一方側の対向する面同士の間に正極板20がそれぞれ挟まれ、他方側の対向する面同士の間に負極板30がそれぞれ挟まれた状態になっている。
【0013】
セパレータ40は、例えば絶縁性を有する合成樹脂製の不織布によって構成される。セパレータ40における隣り合う2つの折り目間の矩形板状の部分は、負極板30よりも一回り大きくなっている。つまり、図3に示すように、二次電池10において、正極板20、負極板30、及びセパレータ40の大きさを比較すると、セパレータ40が最も大きく、正極板20が最も小さい。
【0014】
図4に示すように、正極板20は、正極集電体21と、正極集電体21の両面に塗布された正極活物質25とを有している。正極集電体21は、例えば厚さが10μm~20μmのアルミニウム箔(正極用金属箔)21Aなどの導電性材料によって構成される。正極活物質25は、例えばリチウムイオンなどの陽イオンを吸蔵及び放出可能な材料によって構成される。
【0015】
正極集電体21は、周端縁22の少なくとも一部に、厚さ方向における一方側に向かって突出するバリ23を有している。バリ23は、後述する正極板20を得る工程において、アルミニウム箔21Aが打ち抜かれる方向に沿って延びる形態で形成される。バリ23は、アルミニウム箔21Aの延性に起因して周端縁22に沿って形成され、例えば、先端に向かうにつれて先細る鋸歯状をなしている。正極集電体21は、厚さ方向においてバリ23とは反対側の縁部に、いわゆるだれと呼ばれるR面を有している。つまり、バリ23は、正極集電体21の厚さ方向における一方側に向かって突出する一方、他方側に突出しない構成となっている。
【0016】
正極集電体21は、図2に示すように、略矩形板状をなしており、その長手方向の一辺側の端部に矩形板状の正極タブ部(正極集電部)27が突出するように形成されている。すなわち、正極タブ部27は、正極集電体21と一体形成されており、セパレータ40から露出するように突出している。各正極タブ部27は、正極端子14に電気的に接続される。正極タブ部27には、正極活物質25が塗布されていない。
【0017】
正極タブ部27は、正極集電体21の周端縁22を一部切り欠いた切り欠き部28を有している。切り欠き部28は、正極板20を二等分する中心線CLに対して、正極板20が非対称となるように形成されている。この中心線CLは、略矩形板状をなす正極集電体21において互いに対向する2辺の中間をとおる線であり、正極タブ部27の突出方向に沿って直線状に延びている。切り欠き部28は、正極タブ部27の突出方向に沿って延びたスリット状をなし、正極タブ部27に設けられている。中心線CLが延びる方向について、切り欠き部28の長さは、後述する第1溶接部29A及び第2溶接部29Bの長さよりも大きい。切り欠き部28は、中心線CLの両側に第1溶接部29Aと第2溶接部29Bをそれぞれ形成するスペースを残して、中心線CLから離れる方向にオフセットして設けられている。
【0018】
複数の正極板20は、複数の正極タブ部27を積層方向に束ねた状態で切り欠き部28の両側において正極端子14に溶接されている。換言すれば、正極タブ部27は、切り欠き部28の両側に、正極端子14に溶接された第1溶接部29A及び第2溶接部29Bを有している。第1溶接部29A及び第2溶接部29Bは、正極集電体21と正極端子14を物理的に固定するとともに電気的に接続する。本実施形態では、複数の正極板20が、複数の溶接部29A,29Bを介して正極端子14に接続されることで、二次電池10の高出力化に適した構成となっている。
【0019】
図4に示すように、負極板30は、負極集電体31と、負極集電体31の両面に塗布された負極活物質35とを有している。負極集電体31は、例えば厚さが10μm~20μmの銅箔(負極用金属箔)などの導電性材料によって構成される。負極活物質35は、例えばリチウムイオンなどの陽イオンを吸蔵及び放出可能な材料によって構成される。
【0020】
負極集電体31は、周端縁32の少なくとも一部に、厚さ方向における一方側に向かって突出するバリ33を有している。バリ33は、後述する負極板30を得る工程において、銅箔が打ち抜かれる方向に沿って延びる形態で形成される。バリ33は、銅箔の延性に起因して周端縁32に沿って形成され、例えば、先端に向かうにつれて先細る鋸歯状をなしている。銅箔は、アルミニウム箔21Aに比して延性が大きく、バリ33の突出高さがバリ23の突出高さよりも大きくなる傾向にある。負極集電体31は、厚さ方向においてバリ33とは反対側の縁部に、いわゆるだれと呼ばれるR面を有している。つまり、バリ33は、負極集電体31の厚さ方向における一方側に向かって突出する一方、他方側に突出しない構成となっている。
【0021】
負極集電体31は、図2に示すように、略矩形板状をなしており、その長手方向の一辺側の端部に矩形板状の負極タブ部(負極集電部)37が突出するように形成されている。すなわち、負極タブ部37は、負極集電体31と一体形成されており、セパレータ40から露出するように突出している。各負極タブ部37は、負極端子15に電気的に接続される。負極タブ部37には、負極活物質35が塗布されていない。
【0022】
負極タブ部37は、負極集電体31の周端縁32を一部切り欠いた切り欠き部38を有している。切り欠き部38は、負極板30を二等分する中心線CLに対して、負極板30が非対称となるように形成されている。この中心線CLは、略矩形板状をなす負極集電体31において互いに対向する2辺の中間をとおる線であり、負極タブ部37の突出方向に沿って直線状に延びている。切り欠き部38は、負極タブ部37の突出方向に沿って延びたスリット状をなし、負極タブ部37に設けられている。中心線CLが延びる方向について、切り欠き部38の長さは、後述する第1溶接部39A及び第2溶接部39Bの長さよりも大きい。切り欠き部38は、中心線CLの両側に第1溶接部39Aと第2溶接部39Bをそれぞれ形成するスペースを残して、中心線CLから離れる方向にオフセットして設けられている。
【0023】
複数の負極板30は、複数の負極タブ部37を積層方向に束ねた状態で切り欠き部38の両側において負極端子15に溶接されている。換言すれば、負極タブ部37は、切り欠き部38の両側に、負極端子15に溶接された第1溶接部39A及び第2溶接部39Bを有している。第1溶接部39A及び第2溶接部39Bは、負極集電体31と負極端子15を物理的に固定するとともに電気的に接続する。本実施形態では、複数の負極板30が、複数の溶接部39A,39Bを介して負極端子15に接続されることで、二次電池10の高出力化に適した構成となっている。
【0024】
正極板20及び負極板30は、正極集電体21の周端縁22と負極集電体31の周端縁32の少なくとも一部が積層方向に重なる形態で積層されている。正極集電体21の周端縁22と負極集電体31の周端縁32の少なくとも一部が積層方向に重なる形態としては、図2に示すように、積層方向から見て正極集電体21の周端縁22と負極集電体31の周端縁32が交差して配置される構成を例示できる。正極板20及び負極板30は、正極タブ部27及び負極タブ部37が互いに反対方向に突出する構成上、周端縁22と周端縁32が積層方向から見て交差して配置される部分を有する。また、正極板20及び負極板30は、積層方向から見て負極板30の周端縁32に対して正極板20の周端縁22が傾いて配置される場合にも、傾斜角度に応じて周端縁22と周端縁32が積層方向から見て交差して配置され得る。その他にも、正極集電体21の周端縁22と負極集電体31の周端縁32の少なくとも一部が積層方向に重なる形態としては、正極集電体21の周端縁22と負極集電体31の周端縁32の一部が積層方向と直交する方向に平行に延びた構成であってもよい。
【0025】
正極板20及び負極板30は、図4に示すように、正極集電体21のバリ23の突出方向と負極集電体31のバリ33の突出方向を同じ方向として積層されている。図4では、セパレータ40の第1部分41、正極板20、セパレータ40の第2部分42、負極板30、セパレータ40の第3部分43が上からこの順に積層されている。正極集電体21のバリ23は図4の下方に向けて突出し、セパレータ40の第2部分42に一部陥入する。負極集電体31のバリ33は図4の下方に向けて突出し、セパレータ40の第3部分43に一部陥入する。つまり、セパレータ40において正極板20と負極板30の間に介在する部分41,42,43には、正極集電体21のバリ23と負極集電体31のバリ33の一方のみが陥入し、他方が陥入しない。正極板20及び負極板30は、正極集電体21の周端縁22と負極集電体31の周端縁32が積層方向に重なる位置において、セパレータ40の表裏両側からバリ23,33が陥入しない構成となっている。セパレータ40の厚さは特に限定しないが、例えば、正極集電体21のバリ23及び負極集電体31のバリ33について想定される最大突出量、本実施形態では、負極集電体31のバリ33における最大突出量より厚いことが好ましい。このような構成によれば、正極集電体21のバリ23及び負極集電体31のバリ33による二次電池10の短絡をより一層抑制できる。
【0026】
次に、二次電池10の製造方法について説明する。二次電池10の製造方法は、正極板20を得る工程と、負極板30を得る工程と、正極板20及び負極板30を積層する工程と、正極タブ部27を正極端子14に溶接する工程と、負極タブ部37を負極端子15に溶接する工程と、を含んでいる。二次電池10の製造方法は、他の任意の工程を有していてもよいが、正極集電体21のバリ23を取り除く工程、及び負極集電体31のバリ33を取り除く工程、を含んでいなくてもよい。二次電池10の製造方法は、このようなバリ23,33を取り除く工程を含まないから、工数低減に寄与することができる。
【0027】
正極板20を得る工程では、アルミニウム箔21Aに正極活物質25が塗布された母材20Aを打ち抜いて、正極板20を得る。正極板20を得る工程は、例えば正極板20の外形と同じ形状の打ち抜き刃を有するプレス機を用いて行うことができる。図5に示すように、母材20Aは、帯状のアルミニウム箔21Aの両面に所定間隔で正極活物質25が塗布されてなる。正極板20を得る工程では、母材20Aにおいて正極活物質25が塗布された領域と塗布されていない領域に跨って打ち抜き刃を当てて、打ち抜き加工をすることで正極板20を形成する。この過程で、正極集電体21には、周端縁22の少なくとも一部に、打ち抜き方向に沿って突出するバリ23が形成される。正極板20の打ち抜かれた方向は、正極板20において、打ち抜き刃が最初に当たった位置から打ち抜き刃が抜けた位置に向かう方向として規定できる。
【0028】
負極板30を得る工程では、銅箔に負極活物質35が塗布された母材を打ち抜いて、負極板30を得る。負極板30を得る工程は、例えば負極板30の外形と同じ形状の打ち抜き刃を有するプレス機を用いて行うことができる。母材は、帯状の銅箔の両面に所定間隔で負極活物質35が塗布されてなる。負極板30を得る工程では、母材における負極活物質35が塗布された領域と塗布されていない領域に跨って打ち抜き刃を当てて、打ち抜き加工をすることで負極板30を形成する。この過程で、負極集電体31には、周端縁32の少なくとも一部に、打ち抜き方向に沿って突出するバリ33が形成される。負極板30の打ち抜かれた方向は、負極板30において、打ち抜き刃が最初に当たった位置から打ち抜き刃が抜けた位置に向かう方向として規定できる。
【0029】
正極板20及び負極板30を積層する工程では、正極板20が打ち抜かれた方向と負極板30が打ち抜かれた方向を同じ方向とし、正極集電体21の周端縁22と負極集電体31の周端縁32の少なくとも一部が積層方向に重なる形態で正極板20及び負極板30を積層する。換言すれば、正極板20及び負極板30を積層する工程では、正極板20を得る工程において、打ち抜き刃が当てられた側の面と、負極板30を得る工程において、打ち抜き刃が当てられた側の負極板30の面とは反対側の面とを、セパレータ40を介して対向させるとともに、正極集電体21の周端縁22と、負極集電体31の周端縁32の少なくとも一部が重なるように正極板20及び負極板30を積層する。図6に示すように、正極板20及び負極板30を積層する工程では、正極板20と負極板30を交互に積層しつつセパレータ40をつづら折りして、正極板20と負極板30の間にセパレータ40を介在させる。この際、正極板20及び負極板30の切り欠き部28,38の位置を目安にして、正極板20及び負極板30が正規の向きから、表裏反転していないことを確認できる。正極板20及び負極板30の正規の向きは、正極板20が打ち抜かれた方向と負極板30が打ち抜かれた方向を同じ方向とした向きであり、すなわち、正極集電体21のバリ23の突出方向と負極集電体31のバリ33の突出方向を同じ方向とした向きである。
【0030】
正極タブ部27を正極端子14に溶接する工程では、複数の正極タブ部27を積層方向に束ねた状態で切り欠き部28の両側において正極端子14に溶接する。図6に示すように、まず、複数の正極タブ部27において切り欠き部28の一方側に位置する部分に超音波振動が印加されたホーン50を押圧し、第1溶接部29Aを形成する。次に、複数の正極タブ部27において切り欠き部28の他方側に位置する部分に超音波振動が印加されたホーン50を押圧し、第2溶接部29Bを形成する。この際、第1溶接部29Aと第2溶接部29Bの間には、切り欠き部28が介在するから、第2溶接部29Bを形成する際の超音波振動や熱が第1溶接部29Aに及びにくくなっている。第1溶接部29Aを形成する前に、切り欠き部28に位置決め用のピンを挿通させて、複数の正極タブ部27の位置を互いに整合させてもよい。例えば、複数の正極板20のうち1つの正極板20が正規の向きから表裏反転した場合には、反転した正極板20の正極タブ部27が位置決め用のピンと干渉することで、複数の正極タブ部27を溶接する前に正極板20の表裏反転を容易に検出できる。
【0031】
負極タブ部37を負極端子15に溶接する工程では、複数の負極タブ部37を積層方向に束ねた状態で切り欠き部38の両側において負極端子15に溶接する。具体的には、まず、複数の負極タブ部37において切り欠き部38の一方側に位置する部分に超音波振動が印加されたホーン50を押圧し、第1溶接部39Aを形成する。次に、複数の負極タブ部37において切り欠き部38の他方側に位置する部分に超音波振動が印加されたホーン50を押圧し、第2溶接部39Bを形成する。この際、第1溶接部39Aと第2溶接部39Bの間には、切り欠き部38が介在するから、第2溶接部39Bを形成する際の超音波振動や熱が第1溶接部39Aに及びにくくなっている。第1溶接部39Aを形成する前に、切り欠き部38に位置決め用のピンを挿通させて、複数の負極タブ部37の位置を互いに整合させてもよい。例えば、複数の負極板30のうち1つの負極板30が正規の向きから表裏反転した場合には、反転した負極板30の負極タブ部37が位置決め用のピンと干渉することで、複数の負極タブ部37を溶接する前に負極板30の表裏反転を容易に検出できる。
【0032】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。例えば、正極集電体の周端縁と負極集電体が積層方向に重なる部位において、正極集電体のバリの突出方向と負極集電体のバリの突出方向が互いに向かう方向である場合、正極集電体のバリと負極集電体のバリがセパレータを貫通してバリ同士が接触する可能性がある。これに対し、本実施形態の二次電池10は、正極集電体21のバリ23の突出方向と負極集電体31のバリ33の突出方向が同じ方向であるから、正極集電体21の周端縁22と負極集電体31の周端縁32が積層方向に重なる部位においてバリ23,33同士が接触することを抑制できる。したがって、短絡が抑制された二次電池10を提供できる。また、そのような二次電池10の製造方法を提供できる。
【0033】
本実施形態では、正極板20及び負極板30の双方は、自身を2等分する中心線CLに対して非対称となるように周端縁を一部切り欠いた切り欠き部28、38を有する。一般的にバリ23,33は視認することが難しい程度のサイズであるため、その突出方向を目視やセンサ等にて判別しにくいという事情がある。正極板20が切り欠き部28を有する構成では、正極板20における切り欠き部28の位置を目安にして、正極板20が正規の向きから表裏反転しているか否かを容易に判別できる。負極板30が切り欠き部38を有する構成では、負極板30における切り欠き部38の位置を目安にして、負極板30が正規の向きから表裏反転しているか否かを容易に判別できる。この結果、確実に、正極集電体21のバリ23の突出方向と負極集電体31のバリ33の突出方向を同じ方向とすることができる。
【0034】
本実施形態では、正極板20は、板状の正極集電体21の両面に正極活物質25が塗布された構成であり、正極集電体21において正極活物質25が塗布されていない正極タブ部27が設けられている。正極タブ部27には、切り欠き部28が設けられている。複数の正極板20は、複数の正極タブ部27を積層方向に束ねた状態で切り欠き部28の両側において正極端子14に溶接されている。この構成によれば、第1溶接部29Aと第2溶接部29Bの間に介在する切り欠き部28を、正極板20が正規の向きから表裏反転しているか否かを判別するために利用することができる。この結果、確実に、正極集電体21のバリ23の突出方向を所定の方向とすることができる。
【0035】
本実施形態では、負極板30は、板状の負極集電体31の両面に負極活物質35が塗布された構成であり、負極集電体31において負極活物質35が塗布されていない負極タブ部37が設けられている。負極タブ部37には、切り欠き部38が設けられている。複数の負極板30は、複数の負極タブ部37を積層方向に束ねた状態で切り欠き部38の両側において負極端子15に溶接されている。この構成によれば、第1溶接部39Aと第2溶接部39Bの間に介在する切り欠き部38を、負極板30が正規の向きから表裏反転しているか否かを判別するために利用することができる。この結果、確実に、負極集電体31のバリ33の突出方向を所定の方向とすることができる。
【0036】
<他の実施形態>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0037】
上記実施形態では、正極板及び負極板の双方が切り欠き部をそれぞれ有する構成を例示したが、これに限られない。例えば、正極板及び負極板の少なくとも一方が切り欠き部を有する構成であっても、上述のような表裏反転を規定する作用が奏される。また、正極板及び負極板は切り欠き部を有していなくてもよい。その他、切り欠き部の形状、配置は適宜変更可能である。
【0038】
セパレータは、必ずしも不織布によって構成する必要はない。すなわち、セパレータは、例えば延伸フィルムによって構成してもよい。
【0039】
正極集電体には、正極活物質を片面だけにのみ塗布するようにしてもよい。負極集電体には、負極活物質を片面だけにのみ塗布するようにしてもよい。
【0040】
二次電池は、リチウムイオン電池以外の二次電池であってもよい。
【0041】
本開示は、次のような実施の形態とされてもよい。
本開示の二次電池において、前記正極板及び前記負極板の少なくとも一方は、自身を2等分する中心線に対して非対称となるように周端縁を一部切り欠いた切り欠き部を有してもよい。
【0042】
本開示の二次電池において、前記正極板は、板状の正極集電体における少なくとも一方の面に正極活物質が塗布された構成であり、前記正極集電体において前記正極活物質が塗布されていない正極集電部が設けられており、前記正極集電部には、前記切り欠き部が設けられており、複数の前記正極板は、複数の前記正極集電部を積層方向に束ねた状態で前記切り欠き部の両側において正極端子に溶接されていてもよい。
【0043】
本開示の二次電池において、前記負極板は、板状の負極集電体における少なくとも一方の面に負極活物質が塗布された構成であり、前記負極集電体において前記負極活物質が塗布されていない負極集電部が設けられており、前記負極集電部には、前記切り欠き部が設けられており、複数の前記負極板は、複数の前記負極集電部を積層方向に束ねた状態で前記切り欠き部の両側において負極端子に溶接されていてもよい。
【0044】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または本質から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【符号の説明】
【0045】
10…二次電池
17…電極積層体
20…正極板
20A…母材
21…正極集電体
21A…アルミニウム箔(正極用金属箔)
22…周端縁
23…バリ
30…負極板
31…負極集電体
32…周端縁
33…バリ
40…セパレータ
図1
図2
図3
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図5
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図7