(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】非接触給電式のエレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 1/34 20060101AFI20231019BHJP
B66B 7/06 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B66B1/34 A
B66B7/06 R
(21)【出願番号】P 2022145887
(22)【出願日】2022-09-14
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】平田 智之
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-043833(JP,A)
【文献】特開2008-094597(JP,A)
【文献】特開2005-047630(JP,A)
【文献】特開2005-219836(JP,A)
【文献】特開平01-209287(JP,A)
【文献】特開2010-215480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路と、
前記走行路内を移動するかごユニットと、
前記かごユニットの移動経路に沿って配置されるかご用レールと、
前記走行路内の前記かごユニットの移動経路に沿って配置され且つ電力が供給されることによって磁界を発生させるように構成される磁界発生部を有する送電部と、
前記磁界の中に位置することによって電力が発生する受電部と、を備え、
前記かごユニットは、
前記かご用レールによって案内されるかご枠と、
かご室が形成される乗りかごと、を有し、
前記受電部は、前記かご枠に取り付けら
れ、
前記かごユニットは、前記かご枠に固定され且つ前記かご用レールを受けるように構成されるレール受部を有し、
前記レール受部は、
前記かご用レールに当接するように配置される当接部であって、前記かご用レールに接離する方向において動く当接部と、
前記当接部に前記かご用レール側に向かう付勢力を与える付勢部と、
前記付勢部が前記当接部を付勢する方向とは反対側の方向への前記当接部の可動範囲を設定する規制構造と、を有し、
前記規制構造によって設定される前記当接部の前記可動範囲が、前記受電部と前記磁界発生部との距離よりも狭くなっている、
非接触給電式のエレベータ。
【請求項2】
前記かご用レールに固定された状態で前記磁界発生部を保持する保持具を備える、
請求項1に記載の非接触給電式のエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電により乗りかごに電力を供給する非接触給電式のエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昇降路内に設置され、且つ電力が供給されることによって磁界を発生させる磁界発生部を有する送電部と、かごに取り付けられる受電部であって、磁界発生部によって発生させた磁界の中に位置することによって電力が生じるように構成される受電部と、を備える非接触給電式のエレベータが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているエレベータは、昇降路と、昇降路内を移動するかごと、昇降路内においてかごの移動経路に沿って配線されている給電線であって、電流が流れると磁界を発生させる給電線(送電部の磁界発生部)と、給電線が発生させている磁界の中に位置することによって電力が生じるように構成される磁気コアであって、かごの側面に取り付けられている磁気コア(受電部)と、を備えている。
【0004】
かかる非接触給電式のエレベータでは、給電線が磁界を発生させると、この磁界に磁気コアが入った状態になり、磁気コアに生じた電力がかごに搭載されている負荷に供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のエレベータのかごは荷重のかかり方に応じて傾くことがある。これに伴い、従来のエレベータでは、給電線と磁気コアとの距離が変わってしまい、電力供給の状態が不安定になるという問題が起こることがあった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、電力の供給状態を安定させることができる非接触給電式のエレベータの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の非接触給電式のエレベータは、
走行路と、
前記走行路内を移動するかごユニットと、
前記かごユニットの移動経路に沿って配置されるかご用レールと、
前記走行路内の前記かごユニットの移動経路に沿って配置され且つ電力が供給されることによって磁界を発生させるように構成される磁界発生部を有する送電部と、
前記磁界の中に位置することによって電力が発生する受電部と、を備え、
前記かごユニットは、
前記かご用レールによって案内されるかご枠と、
かご室が形成される乗りかごと、を有し、
前記受電部は、前記かご枠に取り付けられている。
【0009】
上記構成の非接触給電式のエレベータは、傾きにくいかご枠に受電部が取り付けられているため、乗りかごが傾いても受電部と磁界発生部との距離が変わりにくくなっている。そのため、前記非接触給電式のエレベータでは、電力の供給状態が安定する。
【0010】
本発明の非接触給電式のエレベータは、
前記かご用レールに固定された状態で前記磁界発生部を保持する保持具を備えるようにしてもよい。
【0011】
このようにすれば、設置位置が固定されているかご用レールに磁界発生部を保持具によって連結できるため、磁界発生部の動きが制限されやすくなり、受電部と磁界発生部との距離が変わりにくくなる。
【0012】
本発明の非接触給電式のエレベータは、
前記かごユニットは、前記かご枠に固定され且つ前記かご用レールを受けるように構成されるレール受部を有し、
前記レール受部は、
前記かご用レールに当接するように配置される当接部であって、前記かご用レールに接離する方向において動く当接部と、
前記当接部に前記かご用レール側に向かう付勢力を与える付勢部と、
前記付勢部が前記当接部を付勢する方向とは反対側の方向への前記当接部の可動範囲を設定する規制構造と、を有し、
前記規制構造によって設定される前記当接部の前記可動範囲が、前記受電部と前記磁界発生部との距離よりも狭くなっている構成であってもよい。
【0013】
このようにすれば、かご枠が磁界発生部に接近する方向に動いたとしても、かご枠が磁界発生部に接触する前にかご枠の磁界発生部に接近する動きが規制構造によって規制されるため、受電部と磁界発生部との接触を防止できる。
【0014】
このように、前記非接触給電式のエレベータは、レール受部を利用して受電部と磁界発生部との接触を防止できるようになっている。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の非接触給電式のエレベータは、電力の供給状態を安定させることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る非接触給電式のエレベータの走行路内の概要を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係る非接触給電式のエレベータの走行路内の概略を示す平面図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係る非接触給電式のエレベータのかごユニットの正面図である。
【
図4】
図4は、同実施形態に係る非接触給電式のエレベータのかごユニットの側面図である。
【
図5】
図5は、同実施形態に係る非接触給電式のエレベータのかごユニットの背面図である。
【
図6】
図6は、同実施形態に係る非接触給電式のエレベータにおけるレール受部の平面図である。
【
図7】
図7は、同実施形態に係る非接触給電式のエレベータのレール受部を
図6のVIIの方向から見た図である。
【
図8】
図8は、同実施形態に係る非接触給電式のエレベータのレール受部を
図6のVIIIの方向から見た図である。
【
図9】
図9は、同実施形態に係る非接触給電式のエレベータの保持具の説明図であって、一対の挟持部を開いた状態の説明図である。
【
図10】
図10は、同実施形態に係る非接触給電式のエレベータの保持具の説明図であって、一対の挟持部を閉じた状態の説明図である。
【
図11】
図11は、本発明の別の実施形態に係る非接触給電式のエレベータの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態にかかる非接触給電式のエレベータ(以下、エレベータと称する)について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0018】
本実施形態に係るエレベータ1は、
図1に示すように、走行路2と、走行路2内を移動するかごユニット3と、走行路2内でのかごユニット3の移動経路に沿って配置される磁界発生部40であって、電力が供給されることによって磁界が発生する磁界発生部40を有する送電部4と、磁界発生部40が発生させている磁界の中に位置すると電力が生じる受電部5であって、磁界発生部40に対向可能な状態でかごユニット3に取り付けられる受電部5と、走行路2内のかごユニット3の周囲に設置されている路内構造物6と、走行路2内で磁界発生部40を保持する保持具7と、を備えている。
【0019】
路内構造物6とは、例えば、かごユニット3を移動経路に沿って案内するためのかご用レール60や、かごユニット3に連結されるカウンターウェイト61、かごユニット3を上方に向けて引き操作する巻上機62や、かごユニット3の駆動を制御する制御盤63等のことである。
【0020】
かご用レール60は、かごユニット3の移動経路が延びる方向(かごユニット3の移動方向)と同じ方向に延びている。また、本実施形態のエレベータ1では、一対のかご用レール60が対向配置されており、該一対のかご用レール60の間にかごユニット3が配置されている。
【0021】
カウンターウェイト61は、かごユニット3の移動経路が延びる方向(かごユニット3の移動方向)と同じ方向で延びる一対の錘用レール610と、該一対の錘用レール610に案内されて移動する錘部611と、錘部611とかごユニット3とを連結する錘用索状体612と、を有する。
【0022】
走行路2は、上下方向に延びている。そして、かごユニット3の移動経路は上下方向に沿って設定されている。
【0023】
かごユニット3は、内部にかご室が形成される乗りかご30と、乗りかご30の外面に固定されるかご枠31と、かご枠31に取り付けられる被案内部32であって、かご用レール60によって案内される被案内部32と、かご枠31に取り付けられるかご受部33であって、巻上機62につながる巻上用索状体(図示しない)を受けるかご受部33と、かご枠31に取り付けられ、且つ受電部5を載置可能な34(
図3、
図4参照)と、を有する。
【0024】
乗りかご30は、かご室に連続する出入口が形成される前壁300と、前壁300に対向配置されている後壁301と、前壁300と後壁301の間に配置されている一対の側壁302と、を有する。
【0025】
なお、以下の説明においては、走行路2内における後壁301が面する領域を後方領域S1と称し、走行路2内における一方の側壁302が面する領
域と、走行路2内における他方の側壁302が面する領域とを側方領域S2と称する(
図2参照)。
【0026】
かご枠31は、乗りかご30よりも上方側に配置される上枠部310と、乗りかご30よりも下方側に配置される下枠部311と、上枠部310と下枠部311とを連結する中枠部312と、を有する。
【0027】
被案内部32は、かごユニット3の側方に隣り合う位置に配置された状態でかご枠31に固定されるベース部320と、かご用レール60を受けた状態でベース部320の上端部と下端部とに取り付けられる一対のレール受部321と、を有する。
【0028】
なお、本実施形態のエレベータ1では、一方のかご用レール60とかごユニット3の間と、他方のかご用レール60とかごユニット3の間とに一つずつ被案内部32が配置されている(
図3参照)。
【0029】
ベース部320は、かごユニット3の移動方向に沿って延びている。ベース部320の長手方向における一端部は上枠部310に連結され、ベース部320の長手方向における他端部は下枠部311に連結されている。
【0030】
レール受部321は、いわゆる、ローラーガイドである。
【0031】
より具体的に説明すると、レール受部321は、
図6に示すように、ベース部320に固定される台部322と、台部322に取り付けられた状態でかご用レール60の外面を付勢するように構成される複数の受部ユニット323と、を有する。
【0032】
受部ユニット323は、かご用レール60の外面に当接する当接部3230と、台部322上に設けられ、且つ当接部3230を、当接部3230とかご用レール60とが並ぶ方向(以下、並び方向と称する)で動くようにして保持する可動保持部3231と、可動保持部3231をかご用レール60に向けて付勢する付勢構造3232と、可動保持部3231のかご用レール60から離れる方向への可動範囲を設定する規制構造3233(
図7、
図8参照)と、を有する。
【0033】
以下の説明においては、可動保持部3231がかご用レール60に接近する方向を前方向と称し、可動保持部3231がかご用レール60から離れる方向を後方向と称する。
【0034】
当接部3230は、ローラーである。
【0035】
可動保持部3231は、
図7、
図8に示すように、台部322上に設けられる基部3231aと、棒状であり、長手方向における一端部(基端部)が基部3231aに対して回転可能に連結されている傾動部3231bと、を有する。
【0036】
傾動部3231bは、基端部を起点として前方向側と後方向側とに傾動可能である。傾動部3231bの先端部と当接部3230の中心部には、回転軸が挿通されている。これにより、傾動部3231bの先端部には、当接部3230が回転可能に連結されている。
【0037】
付勢構造3232は、傾動部3231bに挿通されている付勢軸部3232aと、付勢軸部3232aの後方向側の端部に設けられる付勢頭部3232bであって、付勢軸部3232aよりも外径が大きい付勢頭部3232bと、付勢軸部3232aに挿通され且つ付勢頭部3232bと傾動部3231bとの間に配置されている付勢ばね3232cと、を有する。
【0038】
付勢軸部3232aは、台部322上に立設されているベースブロック324に固定されている。本実施形態では、付勢軸部3232aの前方向側の端部がベースブロック324に固定されている。
【0039】
付勢ばね3232cは、圧縮ばねであり、付勢頭部3232bによって付勢軸部3232aに対して抜止された状態になっている。付勢構造3232は、付勢ばね3232cによって傾動部3231bを後方向側から前方向に向けて付勢するように構成されており、これにより、当接部3230に対して後方向側に向かう外力が加わったとしても、当接部3230とかご用レール60とが当接した状態を維持できるようになっている。
【0040】
規制構造3233は、傾動部3231bに挿通されている規制軸部3233aと、規制軸部3233aの後方向側の端部に設けられる規制頭部3233bであって、規制軸部3233aよりも外径が大きい規制頭部3233bと、を有する。
【0041】
規制軸部3233aは、台部322上に立設されているベースブロック324に固定されている。本実施形態では、規制軸部3233aの前方向側の端部がベースブロック324に固定されている。
【0042】
規制頭部3233bは、後方向側に傾動した傾動部3231bが当接可能な位置に配置されている。また、規制頭部3233bは、並び方向での配置位置が変更されると、傾動部3231bの基部3231aに対する後方向側への傾動範囲も変更されるようになっている。
【0043】
そして、傾動部3231bの基部3231aに対する後方向側への傾動範囲が変わると、かご枠31の前方向側に傾く範囲も変わるようになっている。すなわち、傾動部3231bの基部3231aに対する後方向側への傾動範囲が広くなると、かご枠31の前方向側に傾く範囲も広くなり、傾動部3231bの基部3231aに対する後方向側への傾動範囲が狭くなると、かご枠31の前方向側に傾く範囲も狭くなる。
【0044】
ここで、
図6に示すように、本実施形態のレール受部321は、3つの受部ユニット323を有しており、この3つの受部ユニット323には、並び方向が受電部5と磁界発生部40が対向する対向方向に一致している第一ユニット323(
図3参照)と、並び方向が対向方向に対して直交する直交方向に一致している第二ユニット323と、が含まれている。なお、本実施形態の複数の受部ユニット323には、1つの第一ユニット323と、2つの第二ユニット323(
図4参照)が含まれている。
【0045】
第一ユニット323は、自身の前方向が対向方向のうち受電部5から送電部4に向かう方向に一致しているものである場合(例えば、
図3の紙面右側に図示されているレール受部321の第一ユニット323のように、かごユニット3における受電部5が設置されている一方側に設置されているものである場合)、かかる第一ユニット323の規制頭部3233bと傾動部3231bとの間の間隔(すなわち、規制構造3233によって設定されている傾動部3231bの後方向側への可動範囲)が送電部4と受電部5との間隔よりも狭くなっていれば、かご枠31が送電部4側に傾いたとしても、受電部5が送電部4に接触する前にかご枠31の傾きを止めることができるようになる。
【0046】
なお、第一ユニット323は、自身の前方向が対向方向のうち送電部4から受電部5に向かう方向に一致しているものである場合(例えば、
図3の紙面左側に図示されているレール受部321の第一ユニット323のように、かごユニット3における受電部5が設置されている一方側とは反対側の他方側に設置されているものである場合)、かかる第一ユニット323の規制頭部3233bと傾動部3231bとの間隔(すなわち、規制構造3233によって設定されている傾動部3231bの後方向側への可動範囲)が狭いほど、かご枠31が送電部4から離れる方向に傾いたとしても、受電部5と送電部4との間隔が広がりにくくなる。
【0047】
かご側受部33は、いわゆる、シーブであり、一方のかご用レール60側と、他方のかご用レール60側とに一つずつ配置されている(
図3参照)。
【0048】
載置部34は、乗りかご30よりも下方側の位置でかご枠31に固定されている(
図3、
図4参照)。
【0049】
送電部4は、
図1に示すように、上記の磁界発生部40と、磁界発生部40に電力を供給する電源41と、を有する。
【0050】
本実施形態の磁界発生部40は、送電線によって構成されている。磁界発生部40を送電線40として以下の説明を行う。送電線40は、電源41に接続された状態で閉回路を形成するように構成されている。
【0051】
送電線40は、かごユニット3の移動方向と同じ方向に沿って延びるように配置されている。そのため、送電線40には、かごユニット3の移動方向と同じ方向に沿って配置される一対の平行部400であって、互いに平行な状態である一対の平行部400が含まれている。
【0052】
受電部5は、
図3、及び
図4に示すように、かごユニット3に取り付けられるケース50と、ケース50に内装される受電コイル51と、を有する。
【0053】
配線方向(かごユニット3の移動方向)における受電部5の長さは、配線方向における乗りかご30の長さよりも長くなっている。また、受電部5は、乗りかご30と送電線40との間の領域に配置されており、前記配線方向における前記領域の全域に亘って、乗りかご30と送電線40との間を遮っている。
【0054】
受電部5は、配線方向における乗りかご30の全長に亘って対向するように配置される。また、受電部5の長手方向における一端部は、乗りかご30の上端部と同一の位置に配置され、受電部5の長手方向における他端部は、乗りかご30の下端部よりも下方側の位置に配置されている。
【0055】
本実施形態の受電部5は、配線方向に並べて配置される複数の52を有する。受電モジュール52は、モジュール用ケース520と、モジュール用ケース520に内装されるモジュール用コイル521と、を有する。
【0056】
なお、モジュール用ケース520は受電部5のケース50を構成し、モジュール用コイル521は受電部5の受電コイル51を構成している。また、受電モジュール52は、別の受電モジュール52と電気的に接続されることによって、一つの電力供給源として用いることができるようになっている。
【0057】
複数の受電モジュール52には、モジュール用ケース520の長さ(配線方向における長さ)が異なるものが含まれていてもよい。また、複数の受電モジュール52には、モジュール用ケース520に内装されているモジュール用コイル521の数が異なるものが含まれていてもよい。
【0058】
本実施形態の受電部5は、4つの受電モジュール52によって構成されている。また、受電部5には、長さが異なる受電モジュール52が2つずつ含まれている。そして、長い方の2つの受電モジュール52は、それぞれ3つのモジュール用コイル521を有し、短い方の2つの受電モジュール52は、それぞれ2つのモジュール用コイル521を有している。
【0059】
ここで、走行路2内における送電部4と受電部5の配置について説明する。二つの側方領域S2のうちの一方の側方領域S2には、路内構造物6であるカウンターウェイト61が配置されており、送電部4と受電部5は、二つの側方領域S2のうちの他方の側方領域S2に配置されている。すなわち、送電部4及び受電部5と、路内構造物6であるカウンターウェイト61とは、別々の領域に配置されている。
【0060】
このように、受電部5は、
図2に示すように、他方の側方領域S2(すなわち、かごユニット3の側方の領域)に配置され、下端部が載置部34に載置されている状態でかご枠31に固定されている。
【0061】
受電部5がかご枠31に固定されている状態において、モジュール用コイル521のコイル面は、一対の平行部400のそれぞれに対向する方向に向いた状態になっている。そして、送電線40が発生させた磁界の中にモジュール用コイル521が位置すると、磁界の振動がモジュール用コイル521に伝わり、モジュール用コイル521に電力が発生する(いわゆる、磁界共鳴が起きる)。
【0062】
保持具7は、
図2に示すように、路内構造物6であるかご用レール60に固定される70と、保持用アーム部70に固定される保持具本体部71であって、送電線40を保持可能に構成される保持具本体部71と、を有する。
【0063】
保持用アーム部70は、長尺に形成されており、長手方向における一端部がかご用レール60に固定され、長手方向における他端部に保持具本体部71がつながっている。
【0064】
本実施形態の保持具本体部71は、一対の平行部400を一括して保持可能に構成されている。より具体的に説明すると、保持具本体部71は、
図9に示すように、平行部400を挟持する一対の挟持部710と、一対の挟持部710で平行部400を挟持している状態を維持するための拘束部711と、一対の挟持部710を、互いの対向面を付き合わせた閉状態と互いの対向面を離反させた開状態とに切り替わるように回転可能に連結する回転連結部712と、を有する。
【0065】
一対の挟持部710のそれぞれは、送電線40(平行部400)を挟持する際に対向配置させる対向面を有する。そして、各挟持部710の対向面のそれぞれには、平行部400を配置するための配置用凹部7100が形成されている。挟持部710の対向面に形成される配置用凹部7100の数は、挟持する対象となる平行部400に合わせて設定されており、本実施形態では2つに設定されている。
【0066】
拘束部711は、一対の挟持部710の閉状態を維持できるように構成されていればよい。本実施形態の拘束部711は、一方の挟持部710から他方の挟持部710に向かって延出する拘束延出部7110と、一対の挟持部710が閉状態のときに他方の挟持部710に掛止可能な拘束掛止部7111と、を有する。
【0067】
本実施形態の保持具本体部71によれば、一対の挟持部710によって一対の平行部400を挟持すると、一方の平行部400が各挟持部710の一方の配置用凹部7100の間に配置され、他方の平行部400が各挟持部710の他方の配置用凹部7100の間に配置された状態になる。これにより、一対の平行部400の間の間隔が一定に保たれるようになっている(
図10参照)。
【0068】
また、保持具本体部71は、保持用アーム部70を介してかご用レール60に固定されるため、各平行部400は、走行路2内での位置も保持されるようになっている。
【0069】
本実施形態のエレベータ1は、保持具7を複数備えている。そして、複数の保持具7は、送電線40の配線方向に沿って並べて設置されるため、送電線40(一対の平行部400)は、全長に亘って互いの間隔と、走行路2内での配置位置が保持されるようになっている。
【0070】
本実施形態に係るエレベータ1の構成は、以上の通りである。続いて、添付図面を参照しつつ、エレベータ1における送電部4と受電部5の設置作業を説明する。
【0071】
送電部4の設置作業では、走行路2内に磁界発生部40である送電線40を配置する作業と、走行路2内に配置した送電線40を保持具7によって位置決めする作業とが行われる。
【0072】
走行路2内に送電線40を配置する作業では、送電線40を走行路2内でのかごユニット3の移動経路に沿って配置する。より具体的に説明すると、送電線40を受電部5の軌道に合わせて配置する。
【0073】
本実施形態の送電部4は、上述のように送電線40によって磁界発生部40が構成されているため、送電線40を走行路2内でのかごユニット3の移動経路に沿って延びるように配置し、一対の平行部400が形成された状態にする。
【0074】
送電線40を保持具7によって位置決めする作業では、保持用アーム部70が昇降路2内に固定され、且つ一対の送電線40を挟持している一対の挟持部710の閉状態を拘束部711が維持している状態にする。
【0075】
そして、複数の保持具7を用いて上記の送電線40の位置決め作業を繰り返し行うことによって、一対の平行部400の互いの間隔と走行路2内での配置位置が全長に亘って保持された状態になる。
【0076】
続いて、受電部5をかごユニット3に取り付ける作業では、一つの受電モジュール52を載置部34に乗せてかご枠31に固定する作業が行われる。続いて、かご枠31に固定した受電モジュール52の上端部に別の受電モジュール52を重ねて配置し、該別の受電モジュール52もかご枠31に固定する。
【0077】
さらに、かご枠31に固定されている複数の受電モジュール52のうち、最も上方に配置されている受電モジュール52に別の受電モジュール52を重ねて配置し、該別の受電モジュール52をかご枠31に固定する作業を繰り返し行うことによって、各受電モジュール52がかご枠31に固定された状態になる。このようにして、受電部5がかご枠31に固定される。
【0078】
そして、受電モジュール52同士を電気的に接続する作業を行い、複数の受電モジュール52の全てが互いに電気的に接続された状態にする。
【0079】
載置部34は、乗りかご30よりも下方側に配置されているため、受電部5は、乗りかご30の下端部よりも下方側の位置から乗りかご30の上端部と同一の位置に亘る範囲に配置される。
【0080】
そのため、乗りかご30と送電線40との間の領域は、送電線40の配線方向における全域に亘って受電部5によって遮られる。
【0081】
また、送電部4も受電部5も、カウンターウェイト61が配置されていない他方の側方領域S2に配置されているため、送電部4と受電部5とは、カウンターウェイト61から離れた位置に配置されている。
【0082】
そのため、送電線40が発生させた磁界のエネルギーは、乗りかご30に到達する前に受電部5によってエネルギーが消費され、また、カウンターウェイト61には到達しにくくなっている。
【0083】
以上のように、エレベータ1によれば、受電部5が傾きにくいかご枠31に取り付けられているため、乗りかご30が傾いても受電部5と磁界発生部40との距離が変わりにくくなり、これにより、電力の供給状態を安定させることができるという優れた効果を奏し得る。
【0084】
また、本実施形態のエレベータ1では、かご用レール60に固定された状態で磁界発生部40を保持する保持具7を備えているため、設置位置が固定されているかご用レール60に磁界発生部40を保持具7によって連結することができ、これにより、磁界発生部40の動きを制限しやすくなる。従って、受電部5と磁界発生部40との距離が変わりにくくなる。
【0085】
特に、本実施形態の磁界発生部40は、走行路2内で揺れやすい送電線40によって構成されているため、保持具7で送電線40の配置位置を保持することで電力の供給状態を安定させる効果がより顕著になる。
【0086】
さらに、本実施系形態のエレベータ1では、乗りかご30の重心から側壁302までの距離が乗りかご30の重心から後壁301までの距離よりも短くなっているため、前後方向(乗りかご30の前壁300と後壁301が並ぶ方向)で傾く範囲に比べて、左右方向(乗りかご30の一方の側壁302と他方の側壁302が並ぶ方向)で傾く範囲の方が小さくなる。
【0087】
そして、受電部5は、この側壁302に対向する位置でかご枠31に固定されているため、送電部4に接離する方向で動く範囲が抑えられるようになっている。
【0088】
また、本実施形態のエレベータ1では、規制構造3233によって設定される当接部3230の可動範囲が受電部5と磁界発生部40との距離よりも狭くなっているため、かご枠31がかご用レール60に接近する方向に動いたとしても、かご枠31が磁界発生部40に接触する前にかご枠31のかご用レール60に接近する動きが規制構造3233によって規制されるため、受電部5と磁界発生部40との接触を防止できる。
【0089】
このように、エレベータ1は、レール受部321を利用して受電部5と磁界発生部40との接触を防止できるようになっている。
【0090】
なお、本発明に係る非接触給電式のエレベータは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0091】
上記実施形態において、走行路2は、上下方向に沿って延びるように形成されていたが、この構成に限定されない。例えば、走行路2は、水平方向に沿って延びるように形成されていてもよい。この場合、エレベータ1は、かごユニット3が走行路2内において水平方向に沿って走行するように構成される。
【0092】
上記実施形態では、配線方向における受電部5の長さが、配線方向における乗りかご30の長さよりも長くなっていたが、この構成に限定されない。配線方向における受電部5の長さと、配線方向における乗りかご30の長さは同じであってもよいし、配線方向における受電部5の長さが、配線方向における乗りかご30の長さよりも短くなっていてもよい。
【0093】
ただし、配線方向における受電部5の長さが、配線方向における乗りかご30の長さよりも長くなっているか、配線方向における乗りかご30の長さと同じになっている方が、受電部5によって乗りかご30と送電線40との間の領域を配線方向における全域に亘って遮ることができるため、送電部4が発生させる磁界によって乗りかご30に電力が誘起されてしまうことを抑制しやすくなる。
【0094】
上記実施形態の受電部5の上端部は、乗りかご30の上端部と同一の位置に配置されていたが、この構成に限定されない。例えば、受電部5の上端部は、乗りかご30の上端部よりも上方側に配置されていてもよいし、乗りかご30の上端部よりも下方側に配置されていてもよい。
【0095】
上記実施形態の受電部5の下端部は、乗りかご30の下端部よりも下方側に配置されていたが、この構成に限定されない。例えば、受電部5の下端部は、乗りかご30の下端部と同一の位置に配置されていてもよい。
【0096】
上記実施形態では、送電部4及び受電部5が、カウンターウェイト61とは異なる領域に配置されていたが、この構成に限定されない。送電部4及び受電部5は、例えば、かご用レール60とカウンターウェイト61の両方と異なる領域に配置されていてもよいし(
図11参照)、かご用レール60とカウンターウェイト61のうちのかご用レール60のみと異なる領域に配置されていてもよい。
【0097】
このように、送電部4及び受電部5は、かご用レール60及びカウンターウェイト61のうちの少なくとも何れか一方と異なる領域に配置されていることが好ましい。
【0098】
上記実施形態では、受電モジュール52同士を電気的に接続する作業において、複数の受電モジュール52を互いに電気的に接続された状態にしていたが、この構成に限定されない。受電モジュール52同士を電気的に接続する作業では、例えば、複数の受電モジュール52のうちの一部の受電モジュール52同士を電気的に接続してもよい。
【0099】
上記実施形態の磁界発生部40は、送電線40によって構成されていたが、この構成に限定されない。磁界発生部40は、例えば、複数の送電コイルを移動経路に沿って並べることによって構成されていてもよい。
【0100】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、送電部4では、磁界発生部40が移動経路のうちの一部の領域に配置されていてもよい。また、送電部4では、複数の磁界発生部40が移動経路内に配置されていてもよい。このようにする場合、複数の磁界発生部40は、互いの間に間隔をあけた状態で移動方向に沿って並べて配置されていてもよいし、互いに隣接した状態で移動方向に沿って並べて配置されていてもよい。
【0101】
上記実施形態の説明において、特に言及しなかったが、送電線40を磁界発生部40とする場合、平行部400の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0102】
なお、エレベータ1は、何れの場合においても、送電線40の構成によらず、かごユニット3と送電線40との間が受電部5によって遮られるように構成されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0103】
1…エレベータ、2…走行路、3…かごユニット、4…送電部、5…受電部、6…路内構造物、保持具…7、30…乗りかご、31…かご枠、32…被案内部、33…かご側受部、34…載置部、40…磁界発生部(送電線)、41…電源、50…ケース、51…受電コイル、52…受電モジュール、60…かご用レール、61…カウンターウェイト、62…巻上機、70…保持用アーム部、71…保持具本体部、300…前壁、301…後壁、302…側壁、310…上枠部、311…下枠部、312…中枠部、320…ベース部、321…レール受部、322…台部、323…受部ユニット、324…ベースブロック、3230…当接部、3231…可動保持部、3231a…基部、3231b…傾動部、3232…付勢構造、3232a…付勢軸部、3232b…付勢頭部、3232c…付勢ばね、3233…規制構造、3233a…規制軸部、3233b…規制頭部、400…平行部、520…モジュール用ケース、521…モジュール用コイル、610…錘用レール、611…錘部、612…錘用索状体、710…挟持部、711…拘束部、712…回転連結部、7100…配置用凹部、7110…拘束延出部、7111…拘束掛止部、S1…後方向領域、S2…側方領域
【要約】
【課題】電力の供給状態を安定させることができる非接触給電式のエレベータの提供。
【解決手段】走行路2と、走行路2内を移動するかごユニット3と、かごユニット3の移動経路に沿って配置されるかご用レール60と、走行路2内のかごユニット3の移動経路に沿って配置される磁界発生部40であって、電力が供給されることによって磁界を発生させるように構成される磁界発生部40を有する送電部4と、磁界の中に位置することによって電力が発生する受電部5と、を備え、かごユニット3は、かご用レール60によって案内されるかご枠31と、かご室が形成される乗りかご30と、を有し、受電部5は、かご枠31に取り付けられる。
【選択図】
図1