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特許7369362ブラスト加工用研磨材の製作および樹脂フィルムのブラスト加工方法
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  • 特許-ブラスト加工用研磨材の製作および樹脂フィルムのブラスト加工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】ブラスト加工用研磨材の製作および樹脂フィルムのブラスト加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24C 11/00 20060101AFI20231019BHJP
   B24C 1/06 20060101ALI20231019BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20231019BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231019BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B24C11/00 D
B24C1/06
B29C59/02 Z
C08J5/18 CER
C08J7/00 CEZ
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022183056
(22)【出願日】2022-11-16
【審査請求日】2022-11-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】722013678
【氏名又は名称】井上 義英
(73)【特許権者】
【識別番号】501428176
【氏名又は名称】平岡 重道
(72)【発明者】
【氏名】井上 義英
(72)【発明者】
【氏名】平岡 重道
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04125969(US,A)
【文献】特開昭57-083366(JP,A)
【文献】特公昭48-005261(JP,B1)
【文献】特開2009-000766(JP,A)
【文献】特開平11-090833(JP,A)
【文献】特開平11-010543(JP,A)
【文献】特開平03-136770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 1/00 - 11/00
B29C 59/02
B08B 7/02
C08J 5/18
C08J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸ナトリウム(Na2O・nSiO)の水溶液(水ガラス)を乾燥し、含水分量を20重量%以下に調整した固化物を粉砕し、粉末にしたブラスト加工用の研磨材を用いて樹脂フィルムに凹凸を付けるブラスト加工を施し、前記ブラスト加工を施された樹脂フィルムに残留している研磨材を水又は水溶液により溶解除去することを特徴とする樹脂フィルムのブラスト加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラスト加工用研磨材の製作および樹脂フィルムのブラスト加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂フィルムの表面をマット状あるいは艶消し状にする方法として、塗料などを塗布するコーティング方法や珪砂、炭化珪素やアルミナなどの粉末を樹脂表面に投射して凹凸を付与するブラスト加工方法が一般的に使用されている。
【0003】
樹脂フィルムのブラスト加工用研磨材として珪砂、炭化珪素およびアルミナが使用されているが、
それらの研磨材の微細粉末がブラスト加工後、樹脂フィルムの表面に微細粉末の付着及び研磨材の突き刺さりがあり容易に除去できない課題があった。
【0004】
しかし、ブラスト加工された樹脂フィルム面に微細な研磨材が残存することは異物として後工程の妨げになるので極力ブラスト加工面が清浄な樹脂フィルムを提供することが求められていた。
【0005】
ブラスト加工面の精度を向上させるために色々な手法が検討されており、シリカ粒子およびシリカゾルなどが研磨材とした特許文献1,特許文献2,特許文献3および特許文献4が開示されている。
【0006】
しかしながらシリカ粒子およびシリカゾルなどを使用しても研磨材が多量に残存する課題を解決することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-273757
【文献】特開2021-175774
【文献】特開2022-109711
【文献】特開2020-183329
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はブラスト加工後の樹脂フィルムに研磨材の微細粉末が、突き刺さるなど残留し、除去困難な研磨材を除去できるようなブラスト加工用研磨材を作製し、その作製したブラスト加工用研磨材を用いた樹脂フィルムに凹凸を付けるブラスト加工方法を施して得られる樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、珪酸ナトリウム(NaO・nSiO)の水溶液(水ガラス)を乾燥し、含水分量を20重量%以下に調整した固化物を粉砕し、粉末にすることを特徴としたブラスト加工用の研磨材を提供する
【0010】
また、前記粉末の粒度は、JIS-G-5901による1700μm(3号)から53μm(8号)であることを特徴としたブラスト加工用研磨材である。
【0011】
本発明では、前記ブラスト加工用に製作された研磨材を用いて樹脂フィルムにブラスト加工を施すことにより、前記ブラスト加工を施された前記樹脂フィルムに残留している前記研磨材を水又は水溶液により溶解除去できることを課題解決としている。
【0012】
本発明は、請求項1に記載するように樹脂フィルム面に凹凸を付けるブラスト加工方法に用いる研磨材が水または水溶液により溶解除去できるので、ブラスト加工面に研磨材が残らない清浄な樹脂フィルムのブラスト加工品を提供するものである
【発明の効果】
【0013】
本発明のブラスト加工に使用する研磨材は、水または水溶液で溶解する珪酸ナトリウムの水溶液の固化物であるので、ブラスト加工後の樹脂フィルム面に研磨材が大小問わず突き刺さり、または付着するなど残留しても、水または水溶液で溶解洗浄除去できるので、研磨材が残らない樹脂フィルムのみのブラスト加工品であり、以後の樹脂フィルムの使用に対して支障の出ないものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の珪酸ナトリウムの研磨材作製の工程図
図2】本発明の樹脂フィルムのブラスト研磨工程図
図3】本発明の珪酸ナトリウム水溶液の乾燥固化物の粉末150~300μmの顕微鏡写真
図4】本発明の珪酸ナトリウム水溶液の乾燥固化物の粉末300~500μmの顕微鏡写真
図5】本発明による黒色ポリエステルフィルムのブラスト加工直後の状況写真
図6】本発明による黒色ポリエステルフィルムのブラスト加工面の水洗乾燥後の写真
図7】本発明によるポリイミドフィルムのブラスト加工直後の状況写真
図8】本発明によるポリイミドフィルムのブラスト加工面の水洗乾燥後の写真
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず初めに発明の実施の概要について説明する。
本発明の1つの実施の形態は、水ガラスのJIS規格K1408に規定される1号、2号および3号より選ばれるいずれか1種類の珪酸ナトリウム(NaO・nSiO)の水溶液(水ガラス)を加熱乾燥し、含水分量を20重量%以下に調整した固化物を粉砕した粉末を樹脂フィルムのブラスト加工用の研磨材として使用し、ブラスト加工後に付着した微細粉末を水にて溶解洗浄除去することにより、清浄な樹脂フィルムのブラスト加工品を提供する。
【0016】
水ガラスの含水分量が20重量%以下では、粉砕可能であり、それを超えると粉砕が容易でなくなる。含水分量が20重量%とは、固化物の重量を100とした時の水分の重量が20であることを意味する。
【0017】
本発明の別の実施の形態では、ブラスト加工用の研磨材は、前記珪酸ナトリウムの水溶液を140℃で約800~900分加熱乾燥することにより固化し、粉砕可能な固化物となり、クラッシャー機にてJIS-G-5901(鋳型用珪砂)による1700μm(3号)から53μm(8号)の粒度にすることが可能であり、ブラスト加工用の研磨材として使用する。また、樹脂フィルムのブラスト加工面の仕上がりを考慮して研磨材の粒度を選択する。図3は前記JIS規格(JIS-G-5901(鋳型用珪砂))による6.5号から5.5号に該当する150~350μmの研磨材である。図4は粉末粒度が、前記JIS規格(JIS-G-5901(鋳型用珪砂))による5.5号から4.5号に該当する300~600μmの研磨材の例である。
【0018】
上記に述べた珪酸ナトリウム水溶液の固化物の硬度は、珪酸ナトリウムの号数(1号から号)にかかわらずR380~400(但し、Rはロックウェル硬度)であり、樹脂フィルムの硬度は、R125以下であるので樹脂フィルムに対するブラスト研磨材として充分使用可能である。
【0019】
本発明に使用する樹脂フィルムは、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、アクリル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂フィルム、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、およびポリアセタール樹脂を挙げることができる。
【0020】
本発明の実施の形態のブラスト加工に使用する研磨材の珪酸ナトリウムの研磨材作製の工程を図1
に示す。また樹脂フィルムのブラスト加工方法の工程を図2に示す。
図1は珪酸ナトリウムの水溶液から固化物を作成し、粉砕する工程までを示し、図2ではブラスト加工による樹脂フィルムの研磨工程と洗浄および乾燥工程までを示す。図1図2の工程の詳細は後述する。
【0021】
本発明の実施の形態によれば、ブラスト加工に使用する研磨材は、硬くても水または水溶液で溶解する珪酸ナトリウムの水溶液の固化物であるので、ブラスト加工後の樹脂フィルム面に研磨材が大小問わず残留付着しても水または水溶液で溶解洗浄除去できる。このため研磨材が残らない樹脂フィルムのみのブラスト加工品が仕上がり、以後の樹脂フィルム使用に対して支障の出ないものを提供することができる。水溶液は、例えば弱アルカリ性の苛性ソーダ水溶液がより好ましい。珪酸ナトリウムの水溶液の固化物はモル比が高くなれば硬度も高くなるが水に対する溶解度が低くなる傾向にあり、前記固化物の溶解速度を上げるために苛性ソーダ水溶液の洗浄液を使用するのが好ましいが、ブラスト面に苛性ソーダ成分が残らないように再度水洗を行い除去する必要がある。
【0022】
また、本発明の実施の形態によれば、ブラスト加工後にブラスト加工面を洗浄した水または水溶液
は、珪酸ナトリウムを含む水溶液であるので、この水溶液を回収して再度水分を調整することにより珪酸ナトリウムの固化物に再生することができる。すなわちリサイクルが可能であり、環境にも配慮でき、経済的な効果がある。
【0023】
本発明の実施の形態による研磨剤製造の工程を、図1を参照しつつ説明する。
図1に示すように、3号珪酸ナトリウムの水溶液の乾燥工程101においては、一例として、140℃にて12時間乾燥し、含水分量を15重量%に調整する。それによりできた固化物の大きさは、乾燥時に使用した内容器(例えば、フッ素樹脂製の内寸縦26cm横17cm深さ4cm)のトレー内寸とほぼ同じ外形で厚みが2cmである。まずは前記大きさの固化物を丈夫な、例えばナイロン製の袋に前記固化物を入れて外部からハンマーにてクラッシャー機に投入できる3~5cm程度に粉砕し、クラッシャー機にて1~2mmにする2段階の粉砕工程102、そしてさらにワンダークラッシャ機にて任意の粒度に粉砕する工程103に分けて3号珪酸ナトリウムの固化物に粉砕、細粒化する。所要の用途に供するために、分級工程104では細目用のJIS標準ふるい規格28801に適合した呼び寸法が、例えば590,350μmの篩を使って目の粗い方を通過し、目の細かい方に残った粉末を選び出すことにより、多角形粒度350~590μmの大きさの粉末を作製し、珪酸ナトリウムのブラスト研磨材105とした。
【0024】
樹脂フィルムのブラスト加工に対しては粒度が600μmを超えると樹脂フィルムに与えるダメージが大きく適切な加工面が得られず、また53μm未満になるとブラスト粒子が微細過ぎてブラスト加工できないので多角形研磨材の粒度53μm~600μmとするのが好ましい。なお、600μm以上は再粉砕し、53μm以下は溶解し、再利用とした。
【0025】
本発明の実施の形態によるブラスト加工の工程を、図2を参照しつつ説明する。ブラスト加工において用いる樹脂フィルムを選定201し、図1の工程で作成した珪酸ナトリウム製の研磨材をブラスト研磨機(図示せず)に投入202し、樹脂フィルムに投射203し、ブラスト加工を実施した。樹脂フィルムには研磨材が付着しているので粒度の粗い研磨材を送風にて除去204し、さらに、樹脂フィルムのブラスト加工面の微細な除去困難な研磨材を水または水溶液にて溶解洗浄205を実施し、樹脂フィルムに付着した洗浄水を温風機にて乾燥206して清浄なブラスト加工した樹脂フィルムとした。
【0026】
(実施例1)
ブラスト加工を施す樹脂フィルムとして、東レ製の黒色ポリエステルフィルム125μm厚さで200mm正方形の大きさを用意した。研磨材として図1の工程で製造された珪酸ナトリウムの固化物の53~600μm粉末からJIS標準ふるいの呼び寸法149と350μmの2つの篩を使用して、粒度149~350μmの多角形粉末を作製した研磨材をブラスト研磨機に充填し、10cmの高さから前記黒色ポリエステルフィルムの 全面に吹き付けてブラスト加工を実施した。図5はブラスト加工後の樹脂フィルム1aの表面写真である。
図5に示すように黒色ポリエステル1aの表面はマット状の凹凸と研磨材2aが付着しているのが確認できた。研磨材2aが付着しているのが確認できたので、40℃の水で洗浄除去し、乾燥した。その結果、研磨材2aはきれいに除去できた清浄なブラスト加工された黒色ポリエステルフィルム1aが確認できた。その表面の写真を図6に示す。
【0027】
(実施例2)
ブラスト加工を施す樹脂フィルムとして、東レ・デュポン株式会社製のポリイミドフィルム0.4mm厚さで200mm正方形の大きさを用意した。研磨材として、図1の工程で製造された珪酸ナトリウムの固化物の実施例1で使用したものと同じ粒度149~350μmの粉末の研磨材をブラスト研磨機に充填し、10cmの高さから前記ポリイミドフィルムの全面に吹き付けてブラスト加工を実施した。図7にブラスト加工後の状況を示すようにポリイミドフィルム3aの表面はマット状の凹凸があり、研磨材2aが付着しているのが確認できた。研磨材2aが付着しているのが確認できたので40℃の水で洗浄除去し、乾燥した。その結果、研磨材2aはきれいに除去できた清浄なブラスト加工されたポリイミドフィルム3aが確認できた。その表面の写真を図8に示す。
【符号の説明】
【0028】
1a 黒色ポリエステルフィルム
2a 珪酸ナトリウム固化物の粉末
3a ポリイミドフィルム
101 珪酸ナトリウム水溶液の乾燥
102 乾燥固化物の粗粉砕
103 粗粉砕物の細粒化
104 細粒粉末の分級
105 珪酸ナトリウムの研磨材
201 樹脂フィルムの選定
202 ブラスト研磨機に研磨材の充填
203 樹脂フィルムへ投射加工
204 樹脂フィルムから研磨材の除去
205 ブラスト加工面の研磨材溶解洗浄
206 樹脂フィルムの付着洗浄水乾燥

【要約】      (修正有)
【課題】ブラスト加工後の樹脂フィルムに研磨材の微細粉末が、突き刺さるなど残留し、除去困難な研磨材を除去する。
【解決手段】珪酸ナトリウム(Na2O・nSiO2)の水溶液(水ガラス)を乾燥し、含水分量を20重量%以下に調整した固化物を粉砕し、粉末にすることによりブラスト加工用の研磨材を得る。製造されたブラスト加工用の研磨材を用いて樹脂フィルムにブラスト加工を施し、ブラスト加工を施された樹脂フィルムに残留している研磨材を水又は水溶液により溶解除去する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8