(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】クロスクリップ
(51)【国際特許分類】
F16G 11/06 20060101AFI20231019BHJP
E02B 15/00 20060101ALN20231019BHJP
【FI】
F16G11/06 E
F16G11/06 F
E02B15/00 B
(21)【出願番号】P 2018158455
(22)【出願日】2018-08-27
【審査請求日】2021-08-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000229162
【氏名又は名称】日本ソリッド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 倫
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】中屋 裕一郎
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-129308(JP,U)
【文献】特開平9-210141(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0091690(US,A1)
【文献】実開平4-88324(JP,U)
【文献】特開2006-125532(JP,A)
【文献】特開2009-281543(JP,A)
【文献】特開2006-307996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部が螺刻さ
れ、かつ溝部の幅を線材の太さに合わせたUボルトを十字状に係合したクロスボルトと、四隅に線材挟持爪を設け、かつ線材挟持爪間を溝状として線材挟持部を設け、さらに線材を挟持するのに邪魔にならない部位にUボルト挿通口を設けてなる挟持プレートおよび挟持プレートを十字状に結合したクロスボルトに固着するナットからなる、線材十字状係合クロスクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤロープ等の線材を挟持する際に使用されるワイヤクリップに関し、特に線材を十字状に交差させて挟持するクロスクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品吊下げ用あるいは補強用として使用されるワイヤロープは、通常ワイヤロープの端部を折り返し、その折返し端部とワイヤロープの端部の重なり部をワイヤクリップで挟持することによって行われていた。
またワイヤロープを交差させて挟持するクロスクリップも種々知られている。
【0003】
従来のクロスクリップとしては、例えば(1)第一部材と第二部材の各々に重合交差する線材のいずれか一方の線材を収容する溝を設け、第一部材と第二部材とを連結固定して交差する線材の重合交差を挟み込んで固定するように構成し、第一部材、第二部材のいずれか一方若しくは双方に撓み弾性を有する係止爪部を設けると共に、係止爪部が係止する係止受部を第二部材のいずれか一方若しくは双方に設け、第一部材と第二部材とを係止爪部と係止受部とが係止するように重合した際、互いに連通する止孔を第一部材と第二部材に設け、第一部材若しくは第二部材に設けた一方の止孔を他方の止孔を貫通したネジ体を蝶着し得るネジ孔としたクロスクリップが知られている(特許文献1)。また(2)縦横に敷設されたワイヤロープの交差部を一対の金具の合わせ面に形成したロープ嵌着溝に配置し、その交差位置を避けた部位で金具をねじ締結することによってワイヤロープを保持するようにしたクロスクリップにおいて、ワイヤロープと前記ロープ嵌着溝との間に、硬化結合材を介在させていることを特徴とするワイヤロープ用クロスクリップが知られている(特許文献2)。さらに(3)対面する挟圧部材間にワイヤロープの交差部を位置させ、その交差位置を避けた部位で挟圧部材をねじ締結し、ワイヤロープを固縛するようにしたクロスクリップにおいて、挟圧部材の各合わせ面には、交差するワイヤロープのそれぞれを半没させて嵌着する交差したロープ溝が形成され、挟圧部材のロープ溝には、そのワイヤロープ交差位置とその前後領域において空間を深くした凹陥部が、対面する挟圧部材におけるそれとはロープ溝を違えて設けられ、前記凹陥部に向けて対面する挟圧部材から迫り出す押圧突起が、ワイヤロープの交差部位を挟む二つの隆起部で形成され、ねじ締結力を上げていくことにより迫り出す押圧突起によってワイヤロープに生じさせた曲がり部を凹陥部に収容させ、交差するワイヤロープを挟圧部材で固縛しても、ワイヤロープが交差部位で相互に強い力を及ぼしあうことなく、各ワイヤロープの引き抜き耐力が向上するようにしたことを特徴とするクロスクリップが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1 特開2009-281543
特許文献2 特開2006-125532
特許文献3 特開2006-307996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のクロスクリップは、いずれも交差する線材をクリップで同時に挟着し、締着しなければならないために、それぞれ別々に締着することが不可能であった。
【0006】
例えば
図1に示す線材の挿通口1を有するフロート2に垂下膜3を設けた汚濁防止膜4を用いて円形型シックナーに展張する場合、まず
図2に示すように汚濁防止膜4のフロート2の挿通口1に線材を通して複数個連設し、かつ適宜の間隔でクロスクリップをフロート2間に介在させ、この連設された汚濁防止膜4を放射状に複数列展張し、同時に汚濁防止膜4を連設して円形状に展張固着することは極めて困難なために作業性が著しく損なわれていた。そこで本発明者は、線材をクロスに装着する時に線材を個々に挟持し、固着できるクロスクリップについて種々研究を重ねた結果本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、二個の∪ボルトを咬合させて十字状に係合したクロスボルトと、四隅に線材挟持爪を設け、かつ線材挟持爪間を円弧状として線材挟持部を設け、さらに線材を挟持するのに邪魔にならない部位に∪ボルト挿通口を設けてなる挟持プレートとからなり、前記クロスボルトに線材を挿通して、該クロスボルトを挟持プレートの∪ボルト挿通孔に挿着した後ナットで挟持プレートを固着するようになしたクロスクリップである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のクロスクリップは縦および横方向の線材を別々に挟持、固着することができるので作業性が著しく向上すると共に、複数本の線材も重層状として挟持、固着できるので使用方法も種々選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図6】
図4の挟持プレートの裏面部の平面図である。
【
図8】本発明のクロスクリップを用いて線材を挟持固着した状態を示す側面図である。
【
図9】
図8に示した線材保持状態を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のクロスクリップは、
図3に示すように二個の∪ボルトBを咬合させて十字状に係合する。∪ボルトBの両端部はナット9を螺合するために螺刻されている。また∪ボルトBの溝部の幅Wは挿通する線材の太さに合わせて選択することができる。∪ボルトBの長さLも線材を挿通する本数および太さを考慮して選択することができる。
【0011】
∪ボルトBに挿着して線材を挟持、固定するために用いられる挟持プレート5は、四隅に線材挟持爪6が設けられている。線材を挟持する線材挟持爪6間の底部7は
図5に示すように線材が嵌合し、固着しやすいように溝状を呈していることが好ましい。また挟持プレート5には、∪ボルトBに挿通する∪ボルト挿通口8を線材を挟持するときに邪魔にならない部位に設ける。
【0012】
本発明のクロスクリップは十字状に係合したクロスクリップの∪ボルトBの溝部に線材を挿入し、その後挟持プレート5の線材挟持爪6を下面にして挟持プレート5の挿通口8を∪ボルトBに合わせて挿着し、次にナット9を∪ボルトBに螺着して固定することによって使用することができる。
また∪ボルトBに予め挟持プレート5を緩めに装着しておき次に∪ボルトBの底部7の溝部に線材を挿通した後挟持プレート5をナット9によって締着することもできる。
【0013】
本発明のクロスクリップ10は使用に際して
図7に示すように組立てられて使用される。すなわち
図8および
図9に示すようにクロスクリップ10の∪ボルトBの底部7の溝部に線材11を十字状に挿通して挟持固着することによって線材11を十字状に展張することができる。
更に、本発明のクロスクリップ10の四方の∪ボルトBの底部7の溝部に線材11を十字状に挿通して挟持固着することによって線材11を四方に展張することができる(図示せず)。線材11の強度によっては、2つの線材11が重なる所にワイヤークリップ12を設けることができる。ワイヤークリップ12は1個以上使用することができる。
【0014】
次に
図2に示す円形型シックナーに
図1に示す汚濁防止膜4を展張する方法を説明する。
汚濁防止膜4の挿通口1に線材11を挿入し、所望する数の汚濁防止膜4を連設する。この連設された汚濁防止膜4は、円形型シックナーの中心部から放射状に所望の列だけ展張する。放射状に展張された汚濁防止膜4列には、円形状に展張する汚濁防止膜4を設けるための交差部に本発明のクロスクリップ10を介在させておく。
次に汚濁防止膜4を円形状に展張するための一本の線材を用意し、放射状に展張された隣接する汚濁防止膜列間に円形にするために必要な汚濁防止膜4を連設し、その線材11を放射状の汚濁防止膜4列に設けられたクロスクリップ10の他の一つの∪ボルトBに通し挟着固定し、この作業を順次行うことによって汚濁防止膜4列を円形状固定展張することができる。円形に多重展張する場合は、この作業を繰り返すことによって
図2に示すように汚濁防止膜4を展張固着することができる。
【符号の説明】
【0015】
B ・・・∪ボルト
5・・・挟持プレート
6・・・線材挟持爪
8・・・∪ボルト挿通口
9・・・ナット