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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】顔料分散体及び塗膜形成用着色組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20231019BHJP
   C09B 57/00 20060101ALI20231019BHJP
   C09B 47/04 20060101ALI20231019BHJP
   C09B 1/22 20060101ALI20231019BHJP
   C09B 57/04 20060101ALI20231019BHJP
   C09B 48/00 20060101ALI20231019BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20231019BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231019BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20231019BHJP
【FI】
C09D17/00
C09B57/00 Z
C09B47/04
C09B1/22
C09B57/04
C09B48/00 Z
C09B67/20 F
C09D201/00
C09D7/41
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019044081
(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2020147632
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000180058
【氏名又は名称】山陽色素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】牧野 利明
(72)【発明者】
【氏名】川井 康裕
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-262382(JP,A)
【文献】特開2018-080217(JP,A)
【文献】特開2014-136709(JP,A)
【文献】特開2009-179789(JP,A)
【文献】特開2008-138037(JP,A)
【文献】特開2009-120777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
C09B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種の顔料誘導体、顔料、分散剤及び溶剤を含有し、
式(1)中のQが、フタロシアニン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料及びキナクリドン系顔料から選択される顔料の残基である顔料分散体。
【化1】
(式(1)中、Qは色素残基、Xはメチレン基(-CH-)、アゾ基(-N=N-)又は下記式(1-2)で示される連結基を示す。)
【化2】
(式(1-2)中、*及び**は結合手を示す。)
【請求項2】
請求項1記載の顔料分散体及び塗膜形成成分を含む塗膜形成用着色組成物。
【請求項3】
前記塗膜形成成分として、光重合性成分を含む請求項2記載の塗膜形成用着色組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散体及び塗膜形成用着色組成物に関し、特に、画像表装置のカラーフィルターに適用可能な顔料分散体及び塗膜形成用着色組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルターは、例えば液晶ディスプレイ(LCD)や有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の構成部材として広く用いられている。例えばLCDは、モニター、テレビ、ノート型パソコン、タブレット型パソコン、スマートフォン等の表示装置に広く用いられている。これらの表示装置では高画質化が要求されるようになっている。そのため、それを構成することになるカラーフィルターには高コントラスト化等が要求されるようになっている。
【0003】
カラーフィルターは、赤色、緑色及び青色の染料や顔料などの着色剤を感光性樹脂に溶解又は分散させた着色感光性組成物を塗布液として用い、フォトリソグラフィ工程により塗膜を形成して作製されることが広く行われている。前述のようにカラーフィルターの高画質化を図るための方法として、着色感光性組成物中の染料や顔料の濃度を高める等して色純度を向上させることが考えられる。また、高コントラスト化を図るためには、顔料の大粒径粒子をなくし、顔料を光の波長以下の小粒径粒子として着色感光性組成物中に分散させることが考えられる。しかし、顔料は粒子径が小さくなるほど凝集し、粘度が高くなる傾向にあり、着色感光性組成物中に均一に分散せることが困難になる傾向にある。
【0004】
そのため、この改善策として、顔料等の色素に酸性基等の官能基を導入した顔料誘導体や分散剤を用いて組成物中の粒子の分散性の向上を図ることが広く行われている。(特許文献1)。特許文献1には、インドリンおよびバルビツール部位から構成されるスルホン酸又はその金属塩若しくは四級アンモニウム塩である、特定のピラゾロン骨格を有するイソインドリン誘導体を分散剤として用いることで、イソインドリンおよびバルビツール酸に基づく構造を有する黄色系の顔料を用いた顔料組成物において、分散直後の高粘度化、凝集、沈降、経時的な粘度の増加を伴うことなく、分散組成物中で微粒子化・高濃度化することが可能となり、カラーフィルター用レジストやインクジェット用インクの着色剤として、安定な顔料組成物を提供可能であることが記載されている。
【0005】
しかし、このような分散剤を用いても、市場における高画質な表示装置への要求には十分には応えられていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-120777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、分散性が良好で、かつ、高コントラストのカラーフィルターを実現可能な顔料分散体及びそれを含む塗膜形成用着色組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前述の課題解決のため鋭意検討を行った。その結果、特定の構造の顔料誘導体を用いることで、前述の課題が解決されることを見出した。
【0009】
本発明の第一は、下記式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種の顔料誘導体、顔料、分散剤及び溶剤を含有する顔料分散体に関する。
【0010】
【化1】
【0011】
(式(1)中、Qは色素残基、Xはメチレン基(-CH-)、アゾ基(-N=N-)又は下記式(1-2)で示される連結基を示す。)
【0012】
【化2】
【0013】
(式(1-2)中、*及び**は結合手を示す。)
【0014】
本発明の実施形態では、式(1)中の色素残基Qが、顔料残基であってよい。また、色素残基Qは、フタロシアニン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料及びキナクリドン系顔料から選択される顔料の残基であってよい。
【0015】
本発明の第二は、前述の顔料分散体及び塗膜形成成分を含む塗膜形成用着色組成物に関する。
【0016】
本発明の実施形態では、前記塗膜形成成分として、光重合性成分を含んでもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、分散性が良好で、かつ、高コントラストのカラーフィルターを実現可能な顔料分散体及びそれを含む塗膜形成用着色組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
本発明の実施形態に係る顔料分散体は、下記式(1)で示される化合物から選択される少なくとも一種の顔料誘導体、顔料、分散剤及び溶剤を含有する。
【0020】
【化3】
【0021】
(式(1)中、Qは色素残基、Xはメチレン基(-CH-)、アゾ基(-N=N-)又は下記式(1-2)で示される連結基を示す。)
【0022】
【化4】
【0023】
(式(1-2)中、*及び**は結合手を示す。)
【0024】
このような特定の顔料誘導体を用いることで、顔料分散体中の粒子の凝集を防止して粘度の上昇を防止することができる。また、顔料分散体を含む塗膜形成用着色組成物を用いて得られる塗膜のコントラストを従来よりも向上することができる。この理由は、必ずしも明らかではないが、塗膜中の分散粒子の配列が、比較的光を散乱させにくい状態に近づいたものと推測される。
【0025】
顔料誘導体は、式(1)で示される化合物であればよい。連結基Xが式(1-2)で示される連結基の場合、色素残基Qと連結する結合手は、*で示す側の結合手でもよいし、**で示す側の結合手であってもよいが、本発明の効果をより良好に発揮させる観点からは、*で示す側の連結手が色素残基Qと連結するのが好ましい。
【0026】
色素残基Qのもととなる色素は、顔料、染料何れでもよい。顔料としては、有機顔料が好ましく、例えば、アントラキノン系顔料、アミノアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、アントアントロン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ジスアゾ縮合物系顔料、アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ピラントロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料、フタロシアニン系顔料等が挙げられる。このうち、本発明の効果をより好適に発揮させる観点からは、フタロシアニン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料及びキナクリドン系顔料が好ましい。フタロシアニン系顔料としては、カラーインデックス(C.I.)番号で示すと、例えば、C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、16等が挙げられる。アントラキノン系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド177等が挙げられる。ジケトピロロピロール系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド254、255、272、291等が挙げられる。キナクリドン系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド122、202、209等が挙げられる。
【0027】
染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、メチン系染料等が挙げられる。
【0028】
前述の特定の顔料誘導体は、1種用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0029】
このような特定の顔料誘導体以外に、他の顔料誘導体を組み合わせて用いてもよい。このような他の顔料誘導体としては、例えば、特開平11-49974号公報、特開平11-189732号公報、特開平10-245501号公報、特開2006-265528号公報、特開平8-295810号公報、特開平11-199796号公報、特開2005-234478号公報、特開2003-240938号公報、特開2001-356210号公報、特開2007-186681号公報、特開2003-167112号公報、特開2013-199470号公報等に記載されているものが挙げられる。
【0030】
顔料誘導体の顔料分散体中の含有量(固形分)は、分散性及びコントラスト向上の観点から、顔料100重量部に対して2~15重量部が好ましく、5~10重量部がより好ましい。ただし、顔料誘導体の最適な添加量は、使用する顔料及び分散剤の種類との組み合わせなどにより、適宜、調整するとよい。尚、他の顔料誘導体を用いる場合は合計量である。
【0031】
顔料分散体に含まれる顔料は、有機顔料、無機顔料のいずれでもよいが、有機顔料が好ましい。有機顔料としては、カラーインデックス番号で示すと、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0032】
赤色顔料としては、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、21、22、23、31、32、38、41、48、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49、52、52:1、52:2、53:1、54、57:1、58、60:1、63、64:1、68、81:1、83、88、89、95、112、114、119、122、123、129、136、144、146、147、149、150、164、166、168、169、170、171、172、175、176、177、178、179、181、183、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、211、213、214、216、220、221、224、226、237、238、239、242、245、247、248、251、253、254、255、256、257、258、260、262、263、264、266、268、269、270、271、272、279、291等が挙げられる。
【0033】
青色顔料としては、C.I.ピグメントブルー 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、16、17:1、24、24:1、25、26、56、60、61、62、63、75、79、80等が挙げられる。
【0034】
黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 138、139、150、180、185等が挙げられる。
【0035】
橙色顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ 43、71、73等が挙げられる。
【0036】
緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン 1、4、7、8、10、36、58、59、63等が挙げられる。
【0037】
紫色顔料としては、C.I.ピグメントバイオレッド 1、2、3、3:1、3:3、5:1、13、17、19、23、25、27、29、31、32、36、37、38、42、50等が挙げられる。
【0038】
顔料は、前述した顔料を1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。顔料の含有量は、良好な分散性を確保する観点からは、顔料分散体中8~25重量%が好ましく、10~20重量%がより好ましい。尚、顔料の含有量は、顔料誘導体との合計量を意味する。
【0039】
顔料の粒径は、用途等に応じて適宜決定することができ、概ね一次粒子の平均粒子径即ち平均一次粒子径が20~200nmであるものを好ましく用いることができる。平均一次粒子径は、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)による撮像中の複数(例えば50個)の一次粒子の最大幅の算術平均として算出することができる。
【0040】
顔料の種類によっては、コントラスト向上の観点、平均粒子径を調整する観点、等から、予めミリング処理を行ってもよい。ミリング処理は有機顔料の種類等に応じて定法に従って行うことができる。このようなミリング処理としては、例えば、ソルベントソルトミリング法等が挙げられる。
【0041】
分散剤としては、例えば、樹脂型分散剤、界面活性剤型分散剤等が挙げられる。樹脂型分散剤の具体例として、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、不飽和ポリアミド、燐酸エステル、ポリカルボン酸及びそのアミン塩・アンモニウム塩・アルキルアミン塩、ポリカルボン酸エステル、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、ポリシロキサン、変性ポリアクリレート等の油性分散剤、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体等の水溶性樹脂や水溶性高分子化合物が挙げられる。
【0042】
樹脂型分散剤は、市販のものを用いることができる。市販品の具体例は以下の通りであるが、これらに限定されるわけではない。
日本ルーブリゾール株式会社製:ソルスパース 3000、9000、13240、17000、20000、24000、26000、27000、28000、32000、32500、36000、38500、39000、55000、41000、
ビックケミー・ジャパン株式会社製:Disperbyk 108、110、112、140、142、145、161、162、163、164、166、167、171、174、182、190、2000、2001、2050、2070、2150、LPN6919、LPN22101、LPN21116、
BASF社製:EFKA 4401、4403、4406、4330、4340、4010、4015、4046、4047、4050、4055、4060、4080、5064、5207、5244、
味の素ファインテクノ株式会社製:アジスパー-PB821(F)、PB822、PB880、
川研ファインケミカル株式会社製:ヒノアクトT-8000、
楠本化成株式会社製:ディスパロンPW-36、ディスパロンDA-325、375、7301、
大塚化学株式会社製:TERPLUS D2015等。
【0043】
樹脂型分散剤の分子量は、各成分の特性を考慮して適宜選択することができる。例えば、重量平均分子量は1000~100000であるものを用いることができる。
【0044】
界面活性剤型分散剤としては、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル等のアニオン活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン活性剤、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン活性剤等が挙げられる。
【0045】
界面活性剤型分散剤は、市販のものを用いることができる。市販品の具体例は以下の通りであるが、これらに限定されるわけではない。
花王株式会社製:デモール N、RN、MS、SN-B、エマルゲン 120、430、アセタミン 24、86、コータミン24P、
日光ケミカルズ株式会社製:NIKKOL BPS-20、BPS-30、DHC-30、BPSH-25、
第一工業製薬株式会社製:プライサーフ AL、A208F、
ライオン株式会社製:アーカード C-50、T-28、T-50、など。
【0046】
分散剤は、1種又は2種以上含まれていてもよい。分散剤の含有量(固形分又は有効成分)は、良好な分散性を確保する観点から、顔料及び顔料誘導体の合計100重量部に対して10~40重量部が好ましい。ただし、分散剤の最適な添加量は、使用する顔料の種類との組み合わせなどにより、適宜、調整するとよい。
【0047】
顔料分散体には、顔料等の分散性をより向上させる観点から、分散助剤として分散樹脂を用いてもよい。このような分散樹脂は、特に、後述する塗膜形成成分が重合性成分、とりわけ、光重合性成分を含む場合に用いるのが好適である。重合性成分を添加する前に、分散樹脂、顔料、顔料誘導体、分散剤、溶媒を含む顔料分散体を調製することで、重合性成分を添加した時の各固形分の分散性が良好となる。このような分散樹脂としては、後述するアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。分散樹脂は、塗膜形成成分として用いるアルカリ可溶性樹脂と同種の樹脂種でもよいし、異種の樹脂種であってもよい。分散樹脂の含量は、顔料及び顔料誘導体の合計100重量部に対し、10~50重量部であるのが好ましい。
【0048】
溶剤は、後述する塗膜形成成分の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族系、ケトン系、エステル系、グリコールエーテル系、アルコール系、脂肪族系等の各種の有機溶剤が挙げられる。このうち、塗膜形成性の観点からは、芳香族系、ケトン系、エステル系、グリコールエーテル系から選択される有機溶剤が好ましい。有機溶剤は、1種のみでもよいし、2種以上組み合わせたものでもよい。
【0049】
芳香族系の有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。
【0050】
ケトン系の有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトン、イソホロン、アセトフェノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0051】
エステル系の有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、酢酸-3-メトキシブチル、エチルグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル、モノクロロ酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ブチルカルビトールアセテート、乳酸ブチル、エチル-3-エトキシプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸プロピル、1,3-ブチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
【0052】
グリコールエーテル系の有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、1-メチル-1-メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等の水溶性のグリコールエーテル類、
エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコール-n-ヘキシルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート等の非水溶性のグリコールエーテル類等が挙げられる。
【0053】
アルコール系の有機溶剤としては、例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1~4のアルキルアルコール類、
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0054】
脂肪族系の有機溶剤としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。
【0055】
溶剤の添加量は、取り扱い性の観点から、顔料等を含む固形分濃度が顔料分散体中10~30重量%となるように添加することができる。
【0056】
本発明の顔料分散体の実施形態には、前述した成分以外に他の添加剤を含んでもよい。他の添加剤としては、酸化防止剤、凝集防止剤、表面調整剤(レベリング剤)等が挙げられる。
【0057】
顔料分散体は、例えば、前述の各成分をビーズミル、サンドミル、ディスパー等の公知の分散機に添加し、分散することで得ることができる。各成分の添加の仕方は特に限定はなく、各成分を同時に混合したものを分散処理してもよいし、例えば顔料を複数種用いる場は、顔料毎に予め分散体を調製した後それらを混合して再度分散処理を行ってもよい。
【0058】
本発明の実施形態に係る塗膜形成用着色組成物(以下、「着色組成物」と称する場合がある。)は、前述の顔料分散体及び塗膜形成成分を含む。このように、特定の顔料分散体を含むため、当該塗膜形成用着色組成物を用いて得られる塗膜は、コントラストが良好である。
【0059】
塗膜形成成分としては、例えば、重合性成分、重合体、これらの混合物等が挙げられる。
【0060】
重合体としては、例えば、熱可塑性ウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレン・マレイン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、カルド樹脂などが挙げられる。
【0061】
重合体の着色組成物中における含有量としては、着色組成物の全固形分中で、10~40重量%が好ましく、より好ましくは、20~30重量%である。顔料分散体に分散樹脂としても含まれる場合は、合計量である。重合体の分子量は適宜決定することができる。
【0062】
前述のような重合体うち、アルカリ領域の溶液に溶解性を示すアルカリ可溶性樹脂が好ましい。
【0063】
アルカリ可溶性樹脂を含有すると、例えばカラーフィルターの製造時のフォトリソグラフィ工程において、パターン形成に顔料組成物を適用した際に、パターン形成性をより向上させることができる。
【0064】
このようなアルカリ可溶性樹脂としては、特開2009-179789号公報に記載のものを用いることができる。簡単に述べると、アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。このうち、更に好ましくは、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものである。
【0065】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、現像性の観点からは、5000~50000が好ましい。
【0066】
アルカリ可溶性樹脂は、種々のものが市販されており、その具体例は以下の通りであるが、これらに限定されるわけではない。
昭和高分子株式会社製:リポキシSPC-2000、
三菱レイヨン株式会社製:ダイヤナ-ルNRシリーズ、
Diamond hamrock Co.Ltd.,製:Photomer6173(COOH含有Polyurethane acrylic oligomer)、
大阪有機化学工業株式会社製:ビスコートR-264、KSレジスト106、SOP-005、
ダイセル化学工業株式会社製:サイクロマーPシリーズ、プラクセルCF200シリーズ、
ダイセルユーシービー株式会社製:Ebecryl 3800、
株式会社日本触媒:アクリキュアー(登録商標)RD-Y-503、RD-Y-702-A、BX-Y-10等。
【0067】
重合性の成分としては、現像(ネガ現像)により、パターニングを施すことが容易であることから、光重合性成分が好ましい。
【0068】
使用可能な光重合性成分としては、光重合性化合物及び光重合開始剤を含む。このような光重合性化合物及び光重合開始剤は、例えば、特開2009-179789号公報に記載のものを用いることができる。詳述すると、このような光重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該技術分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。光重合性化合物は、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
【0069】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0070】
光重合性化合物は、着色組成物中の不揮発性成分に対して、好ましくは5~70重量%、より好ましくは10~60重量%含まれる。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。その他、光重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択できる。
【0071】
前記光重合開始剤としても、特開2009-179789号公報に記載のものを用いることができる。
例えば、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾイル系、キサントン系、活性ハロゲン化合物(トリアジン系、オキサジアゾール系、クマリン系)、アクリジン系、ビイミダゾール系、オキシムエステル系等である。
これらの具体例は、ベンゾフェノン系光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン等が挙げられる。
【0072】
光重合開始剤の着色組成物中における含有量としては、着色組成物の全固形分に対して、0.1~10質量%が好ましく、より好ましくは0.5~5質量%である。光重合開始剤の含有量がこの範囲内であると、重合反応を良好に進行させて強度の良好な膜形成が可能である。
【0073】
着色組成物には、塗膜形成成分として光重合性成分を含む場合に、前述のアルカリ可溶性樹脂を含有してもよい。
【0074】
着色組成物には、必要に応じて、増感剤(増感色素)、連鎖移動剤、フッ素系有機化合物、熱重合開始剤、熱重合成分、充填剤、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、表面調整剤(レベリング剤)等の各種の添加剤を添加しても良い。
【0075】
着色組成物は、例えば、前述の各成分をビーズミル、サンドミル、ディスパー等の公知の分散機に添加し、分散することで得ることができる。
【0076】
以上のような着色組成物は、分散性が良好であり、これを用いて得られる塗膜は良好なコントラストを有することができる。そのため、着色組成物は、液晶ディスプレイ(LCD)や有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の構成部材として広く用いられているカラーフィルターに良好に適用可能である。
【実施例
【0077】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明する。
【0078】
(製造例1):顔料誘導体1の製造
濃硫酸(98%):1000gの液温を10℃に冷却した後、ジケトピロロピロール(DPP)系顔料(BASF社製、Irgazin Scaret L 3550 HD、C.I.ピグメントレッド255):28.8g(100mmol)、パラホルムアルデヒド:1.9g、1-(3’-スルフォフェニル)-3-メチル-5-ピラゾロン(3PY):16.4gを投入した。その後、55℃まで昇温して、この温度で3時間撹拌した。この反応液を冷水:2Lに排出した後、吸引ろ過し、イオン交換水で洗浄した。得られた水ペースト:186gを80℃で20時間乾燥して、顔料誘導体1:36.4gを得た。
【0079】
MALDI-TOF-MS質量分析計AXIMA CFR plus(島津製作所製)にて得られた、マトリックスに2,5-ジヒドロキシ安息香酸(2,5-Dihydroxybenzoic acid、DHBA)を用いたネガティブモードのスペクトルに、目的物(m/z=544)のピークがあることを確認した。即ち、顔料誘導体1は、式(1)で示される化合物(色素残基QがDPP系顔料の残基、Xがメチレン基である)を含有することを確認した。
【0080】
(製造例2):顔料誘導体2の製造
BASF社製、Irgazin Scaret L 3550 HDに替えて、BASF社製、Irgazin Frame Red K 3800(ジケトピロロピロール(DPP)系顔料、C.I.ピグメントレッド272)を用いた以外は、製造例1と同様にして、顔料誘導体2:34.3gを得た。製造例1と同様にして、マトリックスにDHBAを用いたネガティブモードのスペクトルに、目的物(m/z=582)のピークがあることを確認した。即ち、顔料誘導体2は、式(1)で示される化合物(色素残基QがDPP系顔料の残基、Xがメチレン基である)を含有することを確認した。
【0081】
(製造例3):顔料誘導体3の製造
濃硫酸(98%):150gの液温を10℃に冷却した後、DPP系顔料(BASF社製、Irgazin Scaret L 3550 HD、C.I.ピグメントレッド255):8.65g(30.0 mmol)、4-アミノフタルイミド:6.1g、パラホルムアルデヒド:1.2gを投入した。27.5℃に昇温した後、この温度で1時間撹拌した。この反応液を冷水:0.6Lに排出した。氷を加えて、硫酸濃度を約20%として、0℃以下に冷却した。ここへ亜硝酸ナトリウム水溶液:7.0g(8.0mol/L)をゆっくり滴下して、5℃以下で1時間撹拌し、ジアゾ化液とした。
【0082】
イオン交換水:103gに30%水酸化ナトリウム水溶液:8.4gと3PY:8.3gを加えて溶解させた。さらに50%酢酸ナトリウム水溶液:813gを加え、液温を20℃に調整した。この時のpHは11.2であった。ここへ、先のジアゾ化液を滴下ロートより滴下した。滴下後のpHは3.9であった。20℃で1時間撹拌した後、60℃まで昇温し、さらにこの温度で1時間撹拌した。反応後、反応液を50℃まで冷却した後、35%塩酸にてpH<2とし、吸引ろ過した。濾過物を5Lのイオン交換水で洗浄し、80℃で乾燥し、顔料誘導体3:20.9gを得た。
【0083】
製造例1と同様にして、マトリックスにDHBAを用いたネガティブモードのスペクトルに、目的物(m/z=729)のピークがあることを確認した。即ち、得られた顔料誘導体3は、式(1)で示される化合物(色素残基QがDPP系顔料の残基、Xが式(1-2)で示される連結基であり、式(1-2)の*で示される連結手がQ側である)を含有することを確認した。
【0084】
(製造例4):顔料誘導体4の製造
濃硫酸(98%)630g中にDPP系顔料(BASF社製、Irgazin Scaret L 3550 HD、C.I.ピグメントレッド255):35.0g(121mmol)とパラホルムアルデヒド:4.50gおよび4-アミノフタルイミド:24.7gとを添加し、30℃で5時間反応させた。次に、この反応液を冷水:3Lに排出し、濾過および水洗を行うことにより、4-アミノフタルイミドメチル基1個を導入した4-アミノフタルイミドメチルDPP系顔料誘導体の水ペースト:400g(固形分:11.2%)を得た。
【0085】
次に、水:90.0gにオルタニル酸:3.90gと炭酸ナトリウム:1.20gを加えて溶解させ、5℃以下に冷却した。ここへ、塩化シアヌル:4.20gを加え、5℃で1時間反応させた。次に、上記の4-アミノフタルイミドメチル基を1個導入したDPP系顔料誘導体の水ペースト:58.0g(固形分:11.2%)を加え、85℃で1時間反応させた。反応後、吸引ろ過し、イオン交換水で洗浄した。得られた水ペースト:86.0gを100℃で20時間乾燥して、下記式(2)の構造を有する顔料誘導体4:8.03gを得た。製造例1と同様にして、マトリックスにDHBAを用いたネガティブモードのスペクトルに、目的物(m/z=728)のピークがあることを確認した。
【0086】
【化5】
【0087】
(製造例5):顔料誘導体5の製造
BASF社製、Irgazin Scaret L 3550 HDに替えて、珠海東洋色材有限公司社製、T-99 CRUDE BLUE(フタロシアニン系顔料、C.I.ピグメントブルー15)を用いた以外は、製造例1と同様にして、顔料誘導体5:74.3gを得た。製造例1と同様にして、マトリックスにDHBAを用いたネガティブモードのスペクトルに、目的物(m/z=840)のピークがあることを確認した。即ち、顔料誘導体5は、式(1)で示される化合物(色素残基Qがフタロシアニン系顔料の残基、Xがメチレン基である)を含有することを確認した。
【0088】
(製造例6):顔料誘導体6の製造
78%硫酸:175gに、Cinic社製、Cinilex Red SR3C(アントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド177):22.2g(50.0 mmol)を投入した。0℃以下に冷却した後、亜硝酸ナトリウム水溶液:23.3g(8.0mol/L)をゆっくり滴下して、5℃以下で1時間撹拌し、ジアゾ化液とした。イオン交換水:360gに30%水酸化ナトリウム水溶液:28.0gと3PY:28.6gを加えて溶解させた。さらに50%酢酸ナトリウム水溶液:600gを加え、液温を20℃に調整した。ここへ、先のジアゾ化液を滴下ロートより滴下した。滴下後のpHは4.4であった。20℃で1時間撹拌した後、60℃まで昇温し、さらにこの温度で1時間撹拌した。反応後、反応液を50℃まで冷却した後、35%塩酸にてpH<2とし、吸引ろ過した。濾過物を3Lのイオン交換水で洗浄し、80℃で乾燥し、顔料誘導体6:48.1gを得た。
【0089】
製造例1と同様にして、マトリックスにDHBAを用いたネガティブモードのスペクトルに、目的物(m/z=709)のピークがあることを確認した。即ち、顔料誘導体6は、式(1)で示される化合物(色素残基Qがアントラキノン系顔料の残基、Xがアゾ基である)を含有することを確認した。
【0090】
(製造例7):顔料誘導体7の製造
BASF社製、Irgazin Scaret L 3550 HDに替えて、Cinic社製、Cinilex Red SR3C(アントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド177)を用いた以外は、製造例4と同様にして、下記式(3)の構造を有する顔料誘導体7:42.8gを得た。製造例1と同様にして、マトリックスにDHBAを用いたネガティブモードのスペクトルに、目的物(m/z=884)のピークがあることを確認した。
【0091】
【化6】
【0092】
(製造例8):顔料誘導体8の製造
BASF社製、IRGAZIN DPP Scaret EKに替えて、DIC株式会社製、Fastogen Super RED 209 228-6736(キナクリドン系顔料、C.I.ピグメントレッド209)を用いた以外は、製造例3と同様にして、顔料誘導体8:22.6gを得た。製造例1と同様にして、マトリックスにDHBAを用いたネガティブモードのスペクトルに、目的物(m/z=820)のピークがあることを確認した。即ち、顔料誘導体8は、式(1)で示される化合物(色素残基Qがキナクリドン系顔料の残基、Xが式(1-2)で示される連結基であり、式(1-2)の*で示される連結手がQ側である)を含有することを確認した。
【0093】
以下の実施例及び比較例で用いた表1に標記した成分は以下のとおりである。尚、表1中に標記した成分を括弧書きで示している。
【0094】
<顔料>
1)C.I.ピグメントブルー15:6(PB15:6)
FASTOGEN Blue EP-207、DIC株式会社製
2)C.I.ピグメントレッド254(PR254)
Iragzin(登録商標)Red L3630、BASF社製
3)C.I.ピグメントイエロー139(PY139)
Iragzin(登録商標)Yellow S2150CF、BASF社製
4)C.I.ピグメントレッド209(PR209)
Fastogen Super RED 209 228-6736、DIC株式会社製
【0095】
<分散剤>
1)Disperbyk LPN6919(LPN6919)、ビックケミー・ジャパン株式会社製
2)Disperbyk LPN21116(LPN21116)、ビックケミー・ジャパン株式会社製
【0096】
<分散樹脂>
SPC-2000(SPC2000)、昭和電工株式会社製
【0097】
<顔料誘導体>
ソルスパース12000(ソルスパース)、日本ルーブリゾール株式会社製
【0098】
<溶剤>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、協和発酵ケミカル株式会社製
【0099】
(実施例1~6、比較例1~4)
<顔料分散体の調製>
表1に示すような組成になるように、顔料誘導体、顔料、分散剤、分散樹脂、溶剤をサンドミルに投入した。2000回転で10分間撹拌した後、φ0.5mmジルコニアビーズを800g投入し、2000回転で2時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズを除去して顔料分散体1~10を得た。尚、比較例4では、顔料誘導体に替えて、製造例8の原料の顔料であるピグメントレッド209を用いた。また、表1中成分組成の単位は重量%である。
【0100】
<塗膜形成用着色組成物の調製>
アルカリ可溶性樹脂(株式会社日本触媒製、アクリキュアー(登録商標)BX-Y-10、アクリル系重合体):12.0重量%、光重合性成分として多官能アクリレート単量体(ジペンタエリスリトール(ヘキサ/ペンタ)アクリレート、日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA):26.0重量%、光重合開始剤(BASFジャパン製、Irgacure369):4.0重量%、溶剤としてPMA:58.0重量%を含有する塗膜形成成分を調製した。
【0101】
得られた顔料分散体1~10:6.0g及び塗膜形成成分:4.0gを混合してディスパーにて撹拌し、塗膜形成用着色組成物を得た。
【0102】
<評価>
<<<顔料分散体の粘度>>
得られた顔料分散体1~10の、調製直後の粘度を、東機産業社製、E型粘度計「RE-80L」を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【0103】
<<塗膜のコントラスト>>
実施例4及び比較例2で調製された青色の塗膜形成用着色組成物の場合は色度がy=0.107、それ以外の実施例及び比較例で調製された赤色の塗膜形成用着色組成物の場合は色度x=0.648となる回転数に調整したスピンコーター(ミカサ株式会社製、スピンコーターMS-150A)を用いて、厚さ1mm、100mm角のガラス板に、前述のようにして得られた塗膜形成用着色組成物を塗布した。この塗布板を室温で5分間静置した後、80℃で2分間エアバスにて乾燥(プリベイク)した。さらに、露光装置(株式会社三永電機製作所製、商品名:UVE-1001S 型露光光源装置、YSH-100SA 型超高圧水銀ランプ)を用いて60mJ/cmの露光強度となるよう紫外線(UV)を塗布板に照射し、235℃で、30分間ポストベイクを実施した。ポストベイク後の塗布板を、ランプ(商品名:HF-LS-100WLCG)の上に偏光板(商品名:POLAX-38S、株式会社ルケオ製)で挟んで設置した。偏光板がクロスニコルの位置にある時の輝度と、偏光板がパラレルの位置にある場合の輝度を、色彩輝度計(商品名:LS-100、コニカミノルタセンシング株式会社製)を用いて測定し、その比(%)をコントラスト(CR)として算出した。値は、実施例1~3では比較例1に、実施例4~6ではそれぞれ比較例2~4に対する比率で示した。結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示すように、実施例1~3と比較例1、実施例4と比較例2、実施例5と比較例3、実施例6と比較例4との対比から、特定の顔料誘導体を用いることで、顔料分散体の分散性が良好で、塗膜のコントラストが向上することが分かる。