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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】非接触位置決め装置及び検査システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 49/07 20060101AFI20231019BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B65G49/07 E
H01L21/68 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021149241
(22)【出願日】2021-09-14
(65)【公開番号】P2023042120
(43)【公開日】2023-03-27
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】398046921
【氏名又は名称】株式会社ナノテム
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 篤
(72)【発明者】
【氏名】大橋 恭介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大地
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大和
(72)【発明者】
【氏名】磯部 浩已
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-227480(JP,A)
【文献】特開2003-282668(JP,A)
【文献】特開2014-118221(JP,A)
【文献】特開2012-156420(JP,A)
【文献】特開2009-208909(JP,A)
【文献】特開2006-076690(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0001449(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 49/00-49/08
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮上物に正圧の流体及び負圧の流体を同時に供給することにより前記浮上物を浮上面に対して浮上させた状態で前記浮上面から離れないように保持する浮上部と、
前記浮上物の縁部に超音波を供給することにより前記浮上物を浮上した状態で位置決めする位置決め部、及び前記浮上物に超音波を供給することにより浮上した状態の前記浮上物を回転軸を中心に回転させる回転部を有する位置決め回転部と、
前記位置決め回転部を収容する収容凹部と、
前記位置決め回転部が前記浮上物に超音波を供給する際に、前記位置決め回転部に流体を供給することにより前記位置決め回転部を前記収容凹部内で浮いた状態とする流体供給部と、を備える、
非接触位置決め装置。
【請求項2】
浮上物に正圧の流体及び負圧の流体を同時に供給することにより前記浮上物を浮上面に対して浮上させた状態で前記浮上面から離れないように保持する浮上部と、
前記浮上物の縁部に超音波を供給することにより前記浮上物を浮上した状態で位置決めする位置決め部と、
前記浮上面に対して浮上した状態で前記浮上物を移動させる浮上物駆動部と、を備え、
前記浮上物駆動部は、前記浮上部により浮上させられ、かつ前記位置決め部により位置決めされた前記浮上物を前記浮上部及び前記位置決め部と一体的に移動させる、
非接触位置決め装置。
【請求項3】
浮上物に正圧の流体及び負圧の流体を同時に供給することにより前記浮上物を浮上面に対して浮上させた状態で前記浮上面から離れないように保持する浮上部と、
前記浮上物の縁部に超音波を供給することにより前記浮上物を浮上した状態で位置決めする位置決め部と、
前記浮上面に対して浮上した状態で前記浮上物を回転又は移動させる浮上物駆動部と、を備え、
前記浮上部、前記位置決め部及び前記浮上物駆動部は、前記浮上物の裏面側に配置されている、
非接触位置決め装置。
【請求項4】
前記浮上物駆動部は、前記浮上物に超音波を供給することにより浮上した状態の前記浮上物を回転軸を中心に回転させる回転部である、
請求項に記載の非接触位置決め装置。
【請求項5】
前記回転部は、前記浮上物の回転方向に沿って延び、前記浮上部の周囲を囲むように形成され、
複数の前記位置決め部は、前記回転部の周囲に配置され、円板状の前記浮上物の縁部に対向して位置する、
請求項に記載の非接触位置決め装置。
【請求項6】
請求項1、4又は5に記載の非接触位置決め装置と、
前記浮上物であるウエーハの一部である検査領域の欠陥又は汚れの有無を検査する検査部と、を備え、
前記回転部は、前記ウエーハを回転させることにより、前記ウエーハに対する前記検査領域の位置を相対的に移動させる、
検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触位置決め装置及び検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のウエーハ搬送装置は、進行方向に沿って傾斜が付けられるとともにエアの吹き出し口が設けられたウエーハ搬送路と、このウエーハ搬送路の両側に設けられこのエアの吹き出し口が設けられたガイドレ-ルと、を備える。そして、このウエーハ搬送路により非接触にウエーハを浮上させるとともに、このウエーハ搬送路の傾斜により横方向の力をウエーハに与えてウエーハを移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平5-14034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成においては、ウエーハの位置決めが困難であるとともに、浮上するウエーハがエアにより変形するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、浮上物を非接触で精度高く位置決めできるとともに、浮上する浮上物の変形を抑制することができる非接触位置決め装置及び検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る非接触位置決め装置は、浮上物に正圧の流体及び負圧の流体を同時に供給することにより前記浮上物を浮上面に対して浮上させた状態で前記浮上面から離れないように保持する浮上部と、前記浮上物の縁部に超音波を供給することにより前記浮上物を浮上した状態で位置決めする位置決め部、及び前記浮上物に超音波を供給することにより浮上した状態の前記浮上物を回転軸を中心に回転させる回転部を有する位置決め回転部と、前記位置決め回転部を収容する収容凹部と、前記位置決め回転部が前記浮上物に超音波を供給する際に、前記位置決め回転部に流体を供給することにより前記位置決め回転部を前記収容凹部内で浮いた状態とする流体供給部と、を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る非接触位置決め装置は、浮上物に正圧の流体及び負圧の流体を同時に供給することにより前記浮上物を浮上面に対して浮上させた状態で前記浮上面から離れないように保持する浮上部と、前記浮上物の縁部に超音波を供給することにより前記浮上物を浮上した状態で位置決めする位置決め部と、前記浮上面に対して浮上した状態で前記浮上物を移動させる浮上物駆動部と、を備え、前記浮上物駆動部は、前記浮上部により浮上させられ、かつ前記位置決め部により位置決めされた前記浮上物を前記浮上部及び前記位置決め部と一体的に移動させる。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る非接触位置決め装置は、浮上物に正圧の流体及び負圧の流体を同時に供給することにより前記浮上物を浮上面に対して浮上させた状態で前記浮上面から離れないように保持する浮上部と、前記浮上物の縁部に超音波を供給することにより前記浮上物を浮上した状態で位置決めする位置決め部と、前記浮上面に対して浮上した状態で前記浮上物を回転又は移動させる浮上物駆動部と、を備え、前記浮上部、前記位置決め部及び前記浮上物駆動部は、前記浮上物の裏面側に配置されている。
【0009】
また、上記非接触位置決め装置において、前記浮上物駆動部は、前記浮上物に超音波を供給することにより浮上した状態の前記浮上物を回転軸を中心に回転させる回転部である、ようにしてもよい。
【0010】
また、上記非接触位置決め装置において、前記回転部は、前記浮上物の回転方向に沿って延び、前記浮上部の周囲を囲むように形成され、複数の前記位置決め部は、前記回転部の周囲に配置され、円板状の前記浮上物の縁部に対向して位置する、ようにしてもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第の観点に係る検査システムは、前記非接触位置決め装置と、前記浮上物であるウエーハの一部である検査領域の欠陥又は汚れの有無を検査する検査部と、を備え、前記回転部は、前記ウエーハを回転させることにより、前記ウエーハに対する前記検査領域の位置を相対的に移動させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、浮上物を非接触で精度高く位置決めできるとともに、浮上する浮上物の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る非接触位置決め装置の模式的な底面図である。
図2図1のA-A線の断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る回転部の概略的な斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る検査プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
図5】(a)は本発明の第2実施形態に係る非接触位置決め装置の模式的な底面図であり、(b)は(a)のE-E線の模式的な断面図であり、(c)は(b)の一部を拡大した図である。
図6】(a)は本発明の第3実施形態に係る非接触位置決め装置の模式的な底面図であり、(b)は(a)のD-D線の模式的な断面図であり、(c)は(b)の一部を拡大した図である。
図7】(a)~(d)は、本発明の変形例に係る非接触位置決め装置の模式的な底面図である。
図8】本発明の変形例に係る搬送システムの模式的な断面図である。
図9図8のB-B線の断面図である。
図10】本発明の変形例に係る基板授受システムの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明に係る非接触位置決め装置及び検査システムの第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、検査システム1は、非接触位置決め装置2と、検査部3A,3B,3Cと、制御部60と、を備える。
【0016】
検査部3A,3B,3Cは、非接触位置決め装置2により非接触で浮上した状態で停止させられたウエーハWの欠陥又は汚れを検査する。図2に示すように、検査部3A,3B,3Cは、ウエーハWの一部である検査領域Wkを撮像するカメラであり、撮像したデータを制御部60に出力する。検査領域Wkは、ウエーハWの側面の一部を含む範囲に設定される。
【0017】
図1に示すように、検査部3A,3B,3Cは、非接触位置決め装置2の後述する回転部30の外周側に配置され、非接触位置決め装置2により停止させられたウエーハWの側面に対向するように位置する。本例では、ウエーハWは円板状に形成されている。ウエーハWは、例えば、シリコンウエーハである。検査部3A,3B,3Cは、ウエーハWの側周面に等角度間隔、本例では120°間隔で配置されている。
【0018】
図1及び図2に示すように、非接触位置決め装置2は、ウエーハWを非接触でウエーハWの回転軸Oを中心に回転させ、所望の回転位置でウエーハWを非接触で停止させる。
非接触位置決め装置2は、ウエーハWを浮上させる浮上部10と、浮上するウエーハWを非接触で位置決めする位置決め部20A,20B,20Cと、ウエーハWを回転させる回転部30と、を備える。
【0019】
図2に示すように、浮上部10は、正圧のエア等の流体をウエーハWに供給することにより、この流体の正の圧力によってウエーハWを浮上させつつ、負圧のエア等の流体をウエーハWに供給することにより、この流体の負の圧力によって浮上中のウエーハWを浮上部10から離れないように保持する。浮上部10は、流体通過プレート11と、ケース部12と、パイプ部14と、加圧部40と、減圧部50と、を備える。
流体通過プレート11は、板状、例えば、円板状をなす。流体通過プレート11には、流体通過プレート11の厚さ方向に貫通する複数のエア通過孔11a,11bが形成されている。エア通過孔11a,11bは、流体通過プレート11の面方向にマトリクス状に配置されている。エア通過孔11aは、ウエーハWに供給されるエアが通過する孔である。エア通過孔11bは、ウエーハWから浮上部10内に吸い込まれるエアが通過する孔である。
流体通過プレート11は、流体通過プレート11の表面である浮上面11fを備える。ウエーハWは、浮上面11fに対して浮上する。
なお、流体通過プレート11は、流体が通過可能な多孔質セラミック等の多孔質体であってもよい。この場合には、流体通過プレート11の裏面には正圧空間と負圧空間が形成される。
【0020】
ケース部12は、ウエーハWが位置する方向に開口する箱状をなす。ケース部12の開口部には、流体通過プレート11が嵌め込まれている。ケース部12は、内部空間を正圧室12aと負圧室12bに区画する区画壁13を備える。
正圧室12aは、流体通過プレート11の各エア通過孔11aに連通している。負圧室12bは、各パイプ部14を介して流体通過プレート11の各エア通過孔11bに連通している。
【0021】
加圧部40は、制御部60による制御のもと、正圧室12aを正圧とする。これにより、正圧のエアがウエーハWの裏面に供給されることにより、ウエーハWが浮上面11fに対して浮上する。
減圧部50は、制御部60による制御のもと、負圧室12bを負圧とする。これにより、ウエーハWの裏面の各エア通過孔11bに対向する領域が負圧となる。加圧部40及び減圧部50が同時に駆動されることにより、ウエーハWが浮上面11fに対して浮上しつつ浮上面11fに非接触で保持される。また、この際、ウエーハWの裏面側には、正圧空間と負圧空間が交互に形成されているため、ウエーハWがドーム状に変形することが抑制される。
【0022】
回転部30は、浮上部10により浮上させられたウエーハWを、非接触で、回転軸Oを中心に回転方向Cに回転させる。回転部30は、浮上部10の外周に位置し、浮上部10を囲む円環状をなす。回転部30は、超音波を利用してウエーハWを回転させる。
詳しくは、図3に示すように、回転部30は、複数の励振アクチュエータ31と、弾性振動板32と、を備える。
弾性振動板32は、平板リング板状をなし、浮上部10(図2参照)により浮上させられたウエーハWに隙間を持って対面する。複数の励振アクチュエータ31は、弾性振動板32のウエーハWと反対側の面に位置する。複数の励振アクチュエータ31は、弾性振動板32に進行波で超音波振動を与える。これにより、弾性振動板32に撓み進行波Wvが伝搬することで、超音波音響粘性力SがウエーハWに作用する。これにより、ウエーハWが回転方向Cに回転する。
【0023】
図1に示すように、位置決め部20A,20B,20Cは、ウエーハWの側面部分を非接触で把持する。位置決め部20A,20B,20CによるウエーハWの径方向の保持力は、位置決め部20A,20B,20CによるウエーハWの回転方向Cの保持力よりも大きく設定される。位置決め部20A,20B,20CによるウエーハWの回転方向Cの保持力は、回転部30からウエーハWに伝えられる回転力よりも小さく設定されている。これにより、位置決め部20A,20B,20によりウエーハWが保持された状態で、回転部30によりウエーハWが回転可能となる。また、ウエーハWの回転中に回転部30の動作が停止されると、位置決め部20A,20B,20がウエーハWの回転を停止させるブレーキ機能を果たす。
位置決め部20A,20B,20Cは、回転部30の外周側に位置し、ウエーハWの回転方向Cに等角度間隔で配置されている。位置決め部20A,20B,20Cは、回転方向Cにおいて、検査部3A,3B,3Cの中間位置に配置される。位置決め部20A,20B,20Cは、ウエーハWの外周面をウエーハWの径方向に跨がる位置に形成されている。
【0024】
図2に示すように、位置決め部20A,20B,20Cは、それぞれ、振動板21と、コニカルホーン22と、振動子23と、を備える。
振動子23は、超音波を発するランジュバン振動子である。コニカルホーン22は回転軸Oに沿って延び、振動板21と振動子23の間に位置している。コニカルホーン22のウエーハWに近い第1端部には振動板21が固定されている。コニカルホーン22のウエーハWから遠い第2端部には振動子23が固定されている。振動子23からの超音波はコニカルホーン22内を通過して振動板21に伝達する。
振動板21は、浮上部10により浮上させられたウエーハWの裏面の縁部に対向して位置する。振動板21は、振動子23からの超音波により励振される。振動板21は、アルミニウム製の矩形板状で形成されている。振動板21は、周波数28kHzで長手方向(ウエーハWの径方向)に1次の曲げモードを有し、両端と中央部が腹となる。超音波により振動板21が高速で曲がることで負圧の領域を形成し、この負圧の領域によりウエーハWが引き寄せられる。これにより、位置決め部20A,20B,20CがウエーハWの側面部分を非接触で把持する。
【0025】
図2に示すように、制御部60は、加圧部40、減圧部50、位置決め部20A,20B,20C、回転部30及び検査部3A,3B,3Cを制御する。制御部60は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成される。このROMには、例えば、制御部60の制御手順が規定された検査プログラムが記憶されている。制御部60は、この検査プログラムに従って検査システム1を制御する。
【0026】
次に、図4のフローチャートに沿って、制御部60により実行される検査プログラムの手順について説明する。
まず、制御部60は、浮上部10を介してウエーハWを浮上面11fに対して浮上させる(ステップS101)。このステップS101の際、制御部60は、加圧部40及び減圧部50を同時に動作させる。
【0027】
次に、制御部60は、浮上したウエーハWを位置決め部20A,20B,20Cにより非接触で保持する(ステップS102)。これにより、浮上面11fに対して浮上するウエーハWがその径方向にずれることが抑制される。
なお、上記ステップS101,S102の順番は逆であってもよいし、上記ステップS101,S102は同時に実行されてもよい。
【0028】
そして、制御部60は、回転部30を介してウエーハWを回転させつつ、検査部3A,3B,3Cを介してウエーハWの欠陥等の有無を検査し、この検査結果をディスプレイ(図示略)に表示する(ステップS103)。
このステップS103において、詳しくは、制御部60は、回転部30を介してウエーハWを規定角度だけ回転させると、回転部30の動作を停止することによりウエーハWの回転を停止させる。この規定角度は、検査部3A,3B,3Cの検査領域Wkに基づき設定される。制御部60は、ウエーハWの回転を停止させた状態で、検査部3A,3B,3Cを介してウエーハWの検査、本例では撮像を行う。
本例では、複数の検査部3A,3B,3CがウエーハWの周囲に等角度間隔で配置されているため、上記ステップS103において、ウエーハWの全周を検査するために、360°を検査部3A,3B,3Cの数で除した角度、本例では120°にわたってウエーハWを回転させる。
【0029】
そして、制御部60は、回転部30の動作を停止させることにより、位置決め部20A,20B,20CによりウエーハWの回転を停止させ(ステップS104)、このフローチャートを終了する。
【0030】
(効果)
以上、説明した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)非接触位置決め装置2は、浮上物の一例であるウエーハWの異なる位置に正圧の流体及び負圧の流体を同時に供給することによりウエーハWを浮上面11fに対して浮上させた状態で浮上面11fから離れないように保持する浮上部10と、ウエーハWに超音波を供給することによりウエーハWを浮上した状態で位置決めする位置決め部20A,20B,20Cと、浮上した状態でウエーハWを回転させる浮上物駆動部の一例である回転部30と、を備える。
この構成によれば、浮上中のウエーハWに正圧の流体及び負圧の流体が同時に供給されることにより、ウエーハWの変形が抑制される。また、位置決め部20A,20B,20Cにより、非接触で浮上中のウエーハWの位置が精度高く位置決めできる。
また、上記構成によれば、ウエーハWは浮上面11fに対して浮上した状態で浮上面11fから離れない。このため、ウエーハWの重力方向に関わらず、ウエーハWが浮上面11fから離れない。よって、非接触位置決め装置2の設置位置の自由度が高まる。
また、非接触位置決め装置2全体を重力方向に回転させることが可能となる。
さらに、ウエーハWの裏面に負圧のエアが供給されることにより、ウエーハWがドーム状に変形することが抑制され、フラットな状態が保たれやすい。
【0031】
(2)回転部30は、ウエーハWに超音波を供給することにより浮上した状態のウエーハWを回転軸Oを中心に回転させる。
この構成によれば、回転部30によりウエーハWが非接触で回転させられ、位置決め部20A,20B,20CによりウエーハWが非接触で停止させられる。これにより、ウエーハWを治具である固定部材により固定する必要がなくなり、ウエーハWに固定部材から外力が加わることが抑制される。また、例えば、非接触位置決め装置2がウエーハWの検査システム1に適用された場合には、固定部材によりウエーハWの欠陥等が隠されることがないため、ウエーハWの欠陥等を正確に検査することができる。
【0032】
(3)回転部30は、浮上部10の周囲を囲むように円環状に形成されている。複数の位置決め部20A,20B,20Cは、回転部30の周囲に配置され、円板状のウエーハWの縁部に対向して位置する。
この構成によれば、ウエーハWを安定的に浮上、回転及び停止させることができる。
【0033】
(4)浮上部10、位置決め部20A,20B,20C及び回転部30は、ウエーハWの裏面側に配置されている。
この構成によれば、ウエーハWの表面側には非接触位置決め装置2が配置されないため、ウエーハWの表面を露出させることができる。よって、例えば、検査部3A,3B,3CによりウエーハWの表面側を検査しやすくなる。
【0034】
(5)検査システム1は、非接触位置決め装置2と、ウエーハWの一部である検査領域Wkの欠陥又は汚れの有無を検査する検査部3A,3B,3Cと、を備える。回転部30は、ウエーハWを回転させることにより、ウエーハWに対する検査領域Wkの位置を相対的に移動させる。
この構成によれば、検査部3A,3B,3CによりウエーハWの全周が検査可能となる。
【0035】
(第2実施形態)
本発明に係る非接触位置決め装置及び検査システムの第2実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、位置決め部及び回転部が共通の構成である位置決め回転部により実現される。以下では、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0036】
図5(a)に示すように、非接触位置決め装置2Cは、浮上部110と、複数の位置決め回転部121,122,123と、を備える。浮上部110は、上記第1実施形態の浮上部10と形状が異なるが機能が同一である。
浮上部110は、回転軸Oに沿う方向から見てウエーハWを含む略円形をなす。浮上部110は、浮上部110の周囲に形成される切り欠き部110A,110B,110Cを備える。切り欠き部110A,110B,110Cは、ウエーハWの外周側面に対向する位置に設けられ、ウエーハWの径方向外側に向けて開口する。切り欠き部110A,110B,110Cには、それぞれ1つずつ検査部3A,3B,3Cが配置可能である。
【0037】
位置決め回転部121,122,123は、それぞれ、ウエーハWの外周側面に沿う湾曲板状をなす。複数、本例では3つの位置決め回転部121,122,123は、回転方向Cに沿って切り欠き部110A,110B,110Cを介して等角度間隔で配置されている。
図5(b)に示すように、位置決め回転部121,122,123は、浮上部110の流体通過プレート111の浮上面に形成された収容凹部115内に設置されている。位置決め回転部121,122,123は、圧電素子により形成される。位置決め回転部121,122,123には、制御部60による制御のもと、進行波と定在波の何れかの交流電流が選択的に供給される。位置決め回転部121,122,123は、進行波の電流が供給されると、回転部として機能し、ウエーハWを回転させるように進行波として超音波振動を与える。一方、位置決め回転部121,122,123は、定在波の電流が供給されると、位置決め部として機能し、ウエーハWの回転を停止させるように非接触でウエーハWを把持する。
なお、位置決め回転部121,122,123は、それぞれ回転方向Cに分割された複数の圧電素子から構成されてもよい。回転方向Cに隣り合う圧電素子には、位相が180°ずらされた交流電流が供給されてもよい。
【0038】
図5(c)に示すように、位置決め回転部121,122,123は、加圧部40により供給される流体通過プレート111を通過する正圧のエアにより、収容凹部115内で浮いた状態に保たれる。流体通過プレート111は、多孔質体、例えば、多孔質セラミックである。位置決め回転部121,122,123が浮いた状態となることにより、位置決め回転部121,122,123が流体通過プレート111に固定されている場合と比較して、より確実に超音波をウエーハWに供給することができる。また、位置決め回転部121,122,123が浮いた状態となることにより、ウエーハWと位置決め回転部121,122,123の隙間を一定の距離に調整可能である。
【0039】
位置決め回転部121,122,123は、超音波の供給に伴いウエーハWを引くスクイーズ力と位置決め回転部121,122,123の重力の合計と位置決め回転部121,122,123の裏面が受けるエアからの力の釣り合いにより収容凹部115内で浮いた状態に保たれる。また、位置決め回転部121,122,123は、収容凹部115内で浮いた状態で、収容凹部115内の側壁から受けるエアにより流体通過プレート111の面方向に位置決めされる。
また、位置決め回転部121,122,123には、収容凹部115内で浮いた状態で、正圧のエアに加えて、減圧部50により負圧のエアが作用してもよい。これにより、位置決め回転部121,122,123は、収容凹部115内で浮いた状態で姿勢が保たれる。
【0040】
(効果)
以上、説明した第2実施形態によれば、以下の効果を奏する。
非接触位置決め装置2Cは、進行波で超音波を供給することによりウエーハWを非接触で回転させ、定在波で超音波を供給することによりウエーハWを非接触で位置決めする位置決め回転部121,122,123と、位置決め回転部121,122,123を収容する収容凹部115と、位置決め回転部121,122,123がウエーハWに超音波を供給する際に、位置決め回転部121,122,123に流体の一例であるエアを供給することにより位置決め回転部121,122,123を収容凹部115内で浮いた状態とする流体供給部の一例である加圧部40と、を備える。
この構成によれば、位置決め回転部121,122,123が浮いた状態となることにより、位置決め回転部121,122,123は、より確実に超音波をウエーハWに供給することが可能となる。よって、超音波によるウエーハWの回転及び位置決めが容易となる。
【0041】
(第3実施形態)
本発明に係る非接触位置決め装置及び検査システムの第3実施形態について図面を参照して説明する。以下では、上記第2実施形態との相違点を中心に説明する。
図6(a),(b)に示すように、非接触位置決め装置2Dは、上記第1実施形態と同様の浮上部10と、位置決め回転部220と、収容部223と、を備える。
位置決め回転部220は、浮上部10の周囲を囲むように、ウエーハWの外周側面に沿うリング板状をなす。位置決め回転部220は、上記第2実施形態の複数の位置決め回転部121,122,123と同様の機能を有する。図6(c)に示すように、位置決め回転部220は、回転方向Cに沿って分割された複数の圧電素子221と、複数の圧電素子221が固定されるリングステータ222と、を備える。
位置決め回転部220は、収容部223に形成される収容凹部225内に収容されている。収容部223は、上記第2実施形態の流体通過プレート111と同様の材質、例えば、多孔質セラミックである。位置決め回転部220は、上記第2実施形態の位置決め回転部121,122,123と同様に、図示しない加圧部により供給されるエアにより収容凹部225内で浮いた状態とされる。本実施形態でも、上記第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0042】
なお、本開示は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0043】
(変形例)
上記第1実施形態において回転部30及び位置決め部20A,20B,20Cは、上記第2実施形態及び上記第3実施形態と同様に、それぞれ圧電素子を有するタイプであってもよい。
上記各実施形態においては、検査部3A,3B,3Cの数は3つに限らず、1つ、2つ、又は4つ以上であってもよい。
また、上記各実施形態においては、検査部3A,3B,3Cは、ウエーハWの側面を撮像するカメラであったが、ウエーハWの他の部分、例えば、ウエーハWの表面を撮像してもよいし、ウエーハWの全体を撮像してもよい。
さらに、上記各実施形態においては、検査部3A,3B,3Cは、カメラであったが、レーザ等の他の方式でウエーハWを検査してもよい。
また、上記各実施形態においては、検査部3A,3B,3Cは、ウエーハWの表面側に配置されていたが、これに限らず、ウエーハWの裏面側に配置されてもよい。
【0044】
上記各実施形態における浮上部10は、エアによりウエーハWを浮上させていたが、これに限らず、超音波によりウエーハWを浮上させてもよい。また、位置決め部20A,20B,20Cは、超音波をウエーハWの縁部以外に供給することによりウエーハWを位置決めしてもよい。また、位置決め部20A,20B,20Cは、超音波以外の磁気等の手段により非接触でウエーハWを位置決めしてもよい。
上記各実施形態においては、ウエーハWの回転軸Oは、ウエーハWの中心位置を通過していたが、これに限らず、ウエーハWの中心位置からずれた位置を通過していてもよい。
【0045】
上記各実施形態においては、ウエーハWの形状は円板状に形成されていたが、これに限らず、多角形板状をなしていてもよい。
上記第1実施形態において、例えば、図7(a)に示すように、ウエーハWは正方形板状をなし、位置決め部20Dは、ウエーハWの各辺の中央部に配置されていてもよい。
例えば、図7(b)に示すように、ウエーハWは三角形板状をなし、位置決め部20Eは、ウエーハWの各辺の中央部に配置されていてもよい。
例えば、図7(c)に示すように、ウエーハWは長方形板状をなす。そして、位置決め部20Fは、図中の実線で示す第1の回転位置にあるウエーハWの各辺の中央部に配置され、位置決め部20Gは、図中の一点鎖線で示す第2の回転位置にあるウエーハWの各辺の中央部に配置されてもよい。第1の回転位置と第2の回転位置は、回転方向Cに90°離れた位置にある。
例えば、図7(d)に示すように、上記図7(c)と同様に、ウエーハWは長方形板状をなす場合において、図中の実線で示す第1の回転位置のウエーハWと図中の一点鎖線で示す第2の回転位置のウエーハWが交わる4点に位置決め部20Hが配置されてもよい。
また、位置決め部は、上記図7(a)~(d)に示すウエーハWの各角部に配置されていてもよい。
【0046】
上記第1実施形態においては、ウエーハWの裏面側に、浮上部10、位置決め部20A,20B,20C及び回転部30が配置されていたが、これに限らず、ウエーハWの表面側に、浮上部10、位置決め部20A,20B,20C及び回転部30の何れか一つ又は二つが配置されていてもよい。上記第2実施形態及び上記第3実施形態もこれと同様に変更可能である。
上記各実施形態においては、非接触位置決め装置2により回転及び停止させられる浮上物は、ウエーハWであったが、ウエーハW以外の物であってもよい。
【0047】
上記各実施形態においては、非接触位置決め装置2,2C,2Dは、ウエーハWを検査する検査システム1に適用されていたが、これに限らず、浮上物である基板を搬送する搬送システムに適用されてもよい。例えば、図8及び図9に示すように、搬送システム1Aは、非接触位置決め装置2Aと、スライド部19と、浮上物駆動部の一例である基板駆動部70と、制御部60と、を備える。非接触位置決め装置2Aは、浮上部10Aと、位置決め部20D,20E,20F,20Gと、を備える。すなわち、非接触位置決め装置2Aは、上記第1実施形態の非接触位置決め装置2と異なり、回転部30(図1及び図2参照)を有しない。浮上部10Aは、直方体をなし、形状以外については上記実施形態の浮上部10と同様の構造及び機能を有する。浮上部10Aの浮上面11fは矩形状をなす。本例では、基板W1は、矩形板状をなす。基板W1は、浮上部10Aの浮上面11fに対して浮上した状態で保持される。
【0048】
位置決め部20D,20E,20F,20Gは、上記実施形態の位置決め部20A,20B,20Cと同じ構造及び機能を有する。
図9に示すように、位置決め部20D,20Eは、基板W1の第1辺部Waに対向するように第1辺部Waに沿って並べられる。位置決め部20F,20Gは、基板W1の第2辺部Wbに対向するように第2辺部Wbに沿って並べられる。第1辺部Waと第2辺部Wbは互いに直交する方向に延びる。位置決め部20D,20E,20F,20Gは、浮上面11fに対して浮上した状態の基板W1を位置決めする。なお、位置決め部20D,20E,20F,20Gは、基板W1の各辺に1つずつ配置されていてもよい。
【0049】
図8に示すように、スライド部19には、浮上部10A及び位置決め部20D,20E,20F,20Gが設置されている。
基板駆動部70は、制御部60による制御のもと、浮上部10A及び位置決め部20D,20E,20F,20Gとともにスライド部19を移動させる。スライド部19の移動方向は、浮上面11fに沿う方向である。基板W1は、浮上部10Aにより浮上させられて、かつ位置決め部20D,20E,20F,20Gにより位置決めされた状態で、基板駆動部70により移動させられる。これにより、搬送システム1Aは、基板W1を非接触で搬送することができる。基板駆動部70は、例えば、モータ及びボールねじ等を有する。
【0050】
さらに、図10に示すように、基板授受システム4は、複数の搬送システム1A,1Bを備え、複数の搬送システム1A,1B間で基板W1を授受可能に構成されてもよい。複数、本例では2つの搬送システム1A,1Bは、搬送する基板W1の厚さ方向に対向する向きに設けられ、搬送する基板W1の面方向に異なる位置に配置される。搬送システム1Aは、基板W1を浮上部10Aにより浮上させつつ位置決め部20D,20E,20F,20Gにより位置決めされた状態で、矢印Yに示すように、搬送システム1Bの浮上部10Aに対向する位置まで移動させる。そして、搬送システム1Bの浮上部10A及び位置決め部20D,20E,20F,20Gが駆動されることにより、基板W1が搬送システム1Bの浮上部10Aから離れた状態で保持される。次に、搬送システム1Aの浮上部10A及び位置決め部20D,20E,20F,20Gの駆動が停止される。よって、搬送システム1Aの浮上部10A、位置決め部20D,20E,20F,20G及びスライド部19が元の位置に移動しても、基板W1が搬送システム1Bの浮上部10A及び位置決め部20D,20E,20F,20Gに保持された状態に維持される。これにより、搬送システム1A,1B間で非接触で基板W1の授受が可能となる。
【0051】
(効果)
以上、説明した図8図10の変形例によれば、以下の効果を奏する。
浮上物駆動部の一例である基板駆動部70は、浮上部10Aにより浮上させられ、かつ位置決め部20D,20E,20F,20Gにより位置決めされた基板W1を浮上部10A及び位置決め部20D,20E,20F,20Gと一体的に移動させる。
この構成によれば、浮上する基板W1の変形を抑制しつつ、位置決め部20D,20E,20F,20Gにより非接触で精度高く位置決めされた状態で、基板W1を搬送可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1…検査システム、1A,1B…搬送システム、2,2A,2C,2D…非接触位置決め装置、3A,3B,3C…検査部、4…基板授受システム、10,10A…浮上部、11…流体通過プレート、11a,11b…エア通過孔、11f…浮上面、12…ケース部、12a…正圧室、12b…負圧室、13…区画壁、14…パイプ部、20,20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G…位置決め部、21…振動板、22…コニカルホーン、23…振動子、30…回転部、31…励振アクチュエータ、32…弾性振動板、40…加圧部、50…減圧部、60…制御部、221…圧電素子、222…リングステータ、223…収容部、115,225…収容凹部、121,122,123,220…位置決め回転部、C…回転方向、O…回転軸、S…超音波音響粘性力、W…ウエーハ、W1…基板、Wk…検査領域、Wv…撓み進行波
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10