(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 37/12 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
D06F37/12 B
(21)【出願番号】P 2019201828
(22)【出願日】2019-11-06
【審査請求日】2022-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】川口 智也
(72)【発明者】
【氏名】永井 孝之
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特許第6608659(JP,B2)
【文献】実開平02-071484(JP,U)
【文献】特開2015-043866(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0036776(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0018780(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00~60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルセータが底部に配置された脱水槽と、
前記脱水槽の内周面に対して周方向に等間隔で配置されるとともに、前記底部近傍で開口し且つ上端部に循環水口が形成された3つ以上の通水管部と、
前記脱水槽の上端部に固定され、前記通水管部の上端部とそれぞれ接続された3つ以上の環状の導水樋が互いに径方向に重層されてなる受水リングユニットと、
各導水樋に個別に調整水を注入可能なノズルユニットとを備え、
前記3つ以上の導水樋の底面の高さは、外周側から内周側に向かって順に低くなることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記3つ以上の導水樋の深さは、外周側から内周側に向かって順に深くなることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記3つ以上の導水樋の幅は、外周側から内周側に向かって順に小さくなることを特徴とする請求項1または2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記3つ以上の導水樋は、その外周壁から径方向内側に向かって突出する突出部をそれぞれ有しており、
前記3つ以上の導水樋に形成された突出部の径方向長さは、外周側から内周側に向かって順に短くなることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の洗濯機。
【請求項5】
前記3つ以上の導水樋より径方向外側に配置された流体バランサを備えることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水槽の回転を継続したまま脱水槽のアンバランスを解消して、脱水時における洗濯物の偏心による振動や騒音を抑制可能な洗濯機に関する。
【0002】
一般家庭あるいはコインランドリーなどに設置される一般的な洗濯機は、脱水時に脱水槽内で洗濯物が偏って振動や騒音が発生する。また、そのときの洗濯物の偏りが大きい場合、回転時の脱水槽の振幅が大きくなり、大きな振動となるので脱水運転を開始することができない。
【0003】
そこで、特許文献1には、脱水時に洗濯槽内の衣類のアンバランス量およびアンバランス位置を検出し、アンバランスがある場合には、脱水槽の周方向に均等に複数設けられたバッフルへの注水を行うことにより脱水槽のアンバランス状態を積極的に解消しようとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の洗濯機では、脱水槽の内周面の上端部に固定された受水リングユニットを介してバッフルへの注水が行われる。受水リングユニットは、径方向に三層重層された3つの導水樋を有し、3つの導水樋には、それぞれ、何れかのバッフルに調整水を流せる通水経路が形成される。この洗濯機において、受水リングユニットの3つの導水樋から3つのバッフルのそれぞれに対して調整水が円滑に流れ難い場合がある。その場合、脱水槽のアンバランス状態を解消する制御を適正に行うことができない。
【0006】
そこで、本発明は、脱水工程時において洗濯槽内に洗濯物の偏在があっても、脱水槽のアンバランス状態を解消する制御をより適正に行うことができる洗濯機を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る洗濯機は、パルセータが底部に配置された脱水槽と、前記脱水槽の内周面に対して周方向に等間隔で配置されるとともに、前記底部近傍で開口し且つ上端部に循環水口が形成された3つ以上の通水管部と、前記脱水槽の上端部に固定され、前記通水管部の上端部とそれぞれ接続された3つ以上の環状の導水樋が互いに径方向に重層されてなる受水リングユニットと、各導水樋に個別に調整水を注入可能なノズルユニットとを備え、前記3つ以上の導水樋の底面の高さは、外周側から内周側に向かって順に低くなることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る洗濯機において、前記3つ以上の導水樋の深さは、外周側から内周側に向かって順に深くなることが好適である。
【0009】
本発明に係る洗濯機において、前記3つ以上の導水樋の幅は、外周側から内周側に向かって順に小さくなることが好適である。
【0010】
本発明に係る洗濯機において、前記3つ以上の導水樋は、その外周壁から径方向内側に向かって突出する突出部をそれぞれ有しており、前記3つ以上の導水樋に形成された突出部の径方向長さは、外周側から内周側に向かって順に短くなることが好適である。
【0011】
本発明に係る洗濯機において、前記3つ以上の導水樋より径方向外側に配置された流体バランサを備えることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、3つ以上の導水樋の底面の高さが外周側から内周側に向かって順に低くなるため、脱水槽の回転による遠心力により各導水樋から通水管部に向かって調整水を円滑に移動させることができる。これにより、脱水槽のアンバランス状態を解消する制御を適正に行うことができる。
【0013】
本発明によれば、3つ以上の導水樋の上端位置を同一にした状態で、導水樋の底面の高さを外周側から内周側に向かって順に低くすることができる。これにより、3つ以上の導水樋に調整水をそれぞれ注水する注水ノズルの配置が容易になる。
【0014】
本発明によれば、3つ以上の導水樋の幅を外周側から内周側に向かって順に小さくして、3つ以上の導水樋のなかで最も内周側の導水樋の内径を大きくすることにより、3つ以上の導水樋の幅が最も外周側の導水樋の幅と同一である場合と比べて、洗濯物の投入口の面積を大きくすることができる。
【0015】
本発明によれば、注水ノズルから注入される調整水が通過する導水樋の上端に形成された開口部の幅(径方向長さ)を同一にした場合でも、3つ以上の導水樋に形成された突出部の径方向長さを外周側から内周側に向かって順に短くして、3つ以上の導水樋のなかで最も内周側の導水樋の内径を大きくすることにより、3つ以上の導水樋の幅が最も外周側の導水樋の幅と同一である場合と比べて、洗濯物の投入口の面積を大きくすることができる。
【0016】
本発明によれば、通水管部は3つ以上の導水樋より径方向外側に配置されるため、通水管部の上方で且つ3つ以上の導水樋より径方向外側にはスペースが形成されるが、そのスペースに流体バランサを配置することにより、スペースを無駄にすることなく縦共振点の通過時の振動をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る洗濯機1の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図1の洗濯機1の一部を上方から見た平面図である。
【
図4】
図1の洗濯機1が有する脱水槽2の横断面図である。
【
図6】
図6(a)は、
図3のa
1-a
1線における断面図であり、
図6(b)は、
図3のa
2-a
2線における断面図であり、
図6(c)は、
図3のa
3-a
3線における断面図である。
【
図7】
図7(a)は、脱水槽2の内周面2a1に形成されるバッフル8を内周側から見た図であり、
図7(b)は、
図7(a)のa1-a1線における断面図である。
【
図8】
図8(a)は、水面に対して作用する重力及び遠心力の合力を示す図であり、
図8(b)は、脱水槽2の回転数を種々変化させたときの水面角度の変化を示している。
【
図10】
図1の洗濯機1の脱水工程での制御の流れを示すフローチャート。
【
図11】
図1の洗濯機1の脱水工程での制御の流れを示すフローチャート。
【
図12】
図1の洗濯機1の脱水工程での制御の流れを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の洗濯機1について、図に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態に係る縦型の洗濯機(以下、「洗濯機」と称す。)1の外観を示す斜視図である。
図2は、本実施形態の洗濯機1の構成を示す模式図である。
図3は、本実施形態の洗濯機1の一部を上方から見た平面図である。
図4は、洗濯機1が有する脱水槽2の横断面図である。
図5は、本実施形態の洗濯機1の部分的な縦断面図である。
【0020】
本実施形態の洗濯機1は、洗濯機本体1aと、脱水槽2と、外槽3と、受水リングユニット5と、ノズルユニット30と、駆動部50と、制御手段60(
図9参照)とを備える。
【0021】
図1に示す洗濯機本体1aは、略直方体形状である。洗濯機本体1aの上面には、脱水槽2に対して洗濯物を出し入れするための開口11が形成されるとともに、この開口11を開閉可能な開閉蓋11aが取り付けられる。
【0022】
外槽3は、洗濯機本体1aの内部に配置された有底筒状の部材であり、内部に洗濯水を貯留可能である。
図2に示すように、外槽3の外周面3aには、左右方向、上下方向及び前後方向の3方向の加速度を検出可能な加速度センサ56が取り付けられる。
【0023】
脱水槽2は、外槽3内において外槽3と同軸に配置されるとともに、回転自在に支持される有底筒状の部材である。脱水槽2は、内部に洗濯物を収容可能で、その壁面2aに多数の通水孔を有する。
【0024】
このような脱水槽2の底部2c中央には、パルセータ(撹拌翼)4が回転自在に配置される。
図2に示すように、パルセータ4は、略円盤形状のパルセータ本体4aと、パルセータ本体4aの上面に形成される複数の上羽根部4bと、パルセータ本体4aの下面に形成される複数の下羽根部4cとを有する。このようなパルセータ4は、外槽3内に貯留された洗濯水を撹拌して水流を発生させる。
【0025】
図4に示すように、脱水槽2の内周面2a1には、周方向に等間隔(等角度)で通水管部としてのバッフル(注水管)8が3つ設けられる。各バッフル8は、脱水槽2の底部2cから上端部に亘って上下方向に延び、脱水槽2の内周面2a1から軸線S1に向けて突出して形成される。また、各バッフル8は、中空状であり、横断面形状が円弧状に形成される。このように、バッフル8の形状が、脱水槽2の軸線S1への突出が小さく、脱水槽2の周方向に沿って広がる形状であることで、脱水槽2の収容空間が狭くなることを抑制できる。
【0026】
図2に示すように、このようなバッフル8の上端部には、横長の循環水口80が形成される。また、バッフル8の下端部には、脱水槽2の底部2c近傍、より具体的にはパルセータ本体4aよりも下方で開口する開口部81が形成される。
【0027】
そのため、排水バルブ10a(
図2参照)が閉じられて外槽3内に洗濯水が貯められた状態にある洗い工程では、
図2において矢印で示すように、パルセータ4の下羽根部4cで撹拌された洗濯水が開口部81より浸入してバッフル8内をかけあがり、循環水口80より吐出され、衣類がシャワー洗いされる。またこの動作が繰り返されることで、洗濯水が脱水槽2内で循環する。すなわち、バッフル8は、洗濯水の循環機能を有する。
【0028】
バッフル8内の上端近傍には、循環水口80から脱水槽2の内周面2a1の近接位置まで延びる仕切片8aが設けられる。仕切片8aは、循環水口80の上端縁から半径方向外側に向かって延びて、その後、下方に湾曲する。このような仕切片8aと脱水槽2の内周面2a1との間には隙間8b(
図2参照)が形成されており、受水リングユニット5から供給される調整水は隙間8bを介して下方に流れ込む。
【0029】
受水リングユニット5は、
図3及び
図5に示すように、上方に向けて開放された環状の導水樋5a,5b,5cが脱水槽2の軸線S1に向けて径方向に三層重層されて構成されるもので、
図2に示すように脱水槽2の内周面2a1の上端部に固定される。導水樋5a,5b,5cは、バッフル8と同数だけ設けられ、単独で何れかのバッフル8に調整水を流せるように形成される。
【0030】
導水樋5a,5b,5cの上端は、
図5に示すように、略同一の高さに配置されており、導水樋5a,5b,5cの深さは互いに異なっている。すなわち、導水樋5a,5b,5cは、外周側から内周側に向かって、導水樋5aの深さn
a、導水樋5bの深さn
b、導水樋5cの深さn
cの順に深くなる。そのため、導水樋5a,5b,5cの底面5
ta,5
tb,5
tcは、互いに異なる高さに配置されており、導水樋5aの底面5
taが最も高い位置に配置され、外周側から内周側に向かって、導水樋5bの底面5
tb、導水樋5cの底面5
tcの順に低い位置に配置される。
【0031】
導水樋5a,5b,5cは、外周側から内周側に向かって、導水樋5aの幅(径方向長さ)ta1、突出部6bの幅(径方向長さ)tb1、突出部6cの幅(径方向長さ)tc1の順に短くなる。
【0032】
導水樋5a,5b,5cの上端には、
図5に示すように、その外周壁から径方向内側に向かって突出する突出部6a,6b,6cをそれぞれ有している。突出部6a,6b,6cは、導水樋5a,5b,5cの全周にわたって形成される。突出部6a,6b,6cの径方向長さは、全周にわたって同一であり、外周側から内周側に向かって、突出部6aの径方向長さt
a2、突出部6bの径方向長さt
b2、突出部6cの径方向長さt
c2の順に短くなる。
【0033】
脱水槽2が回転しているときに導水樋5a,5b,5c内に調整水を注水すると、調整水は遠心力により導水樋5a,5b,5cの外周壁に貼りつくようになる。そのとき、導水樋5a,5b,5cの上端に突出部6a,6b,6cが形成されているため、調整水が導水樋5a,5b,5c内から外部に飛び散るのが防止される。
【0034】
導水樋5cの突出部6cは最も短く形成されているが、導水樋5cの深さが最も深いため、導水樋5cの突出部6cの下方において調整水は外周壁の広い範囲に薄い厚さで貼りつく。これに対して、導水樋5a、5bの突出部6a、6bは、導水樋5cの突出部6cと比べて長く形成されているが、導水樋5a、5bの深さが、導水樋5cより深くないため、導水樋5a、5bの突出部6a、6bの下方において、調整水は外周壁の小さい範囲に厚い厚さで貼りつく。その結果、導水樋5a,5b,5cのいずれにおいても略同一量の調整水が導水樋5a,5b,5cの内部に保持した状態で脱水槽2は回転可能である。
【0035】
なお、
図5に示すように、導水樋5a,5b,5cの上端に突出部6a,6b,6cが形成されているため、導水樋5a,5b,5cの上端には、突出部6a,6b,6cの径方向内側にそれぞれ配置される環状の開口部35a,35b,35cが形成される。そのため、注水ノズル30a,30b,30cは、導水樋5a,5b,5cの上端に形成された開口部35a,35b,35cから、導水樋5a,5b,5cに対して調整水を注水する。本実施形態では、導水樋5a,5b,5cの上端に形成された開口部35a,35b,35cの幅(径方向長さ)は、同一に形成されている。開口部35a,35b,35cの幅は、例えば注水ノズル30a,30b,30cの径を考慮して、注水ノズル30a,30b,30cからの調整水が導水樋5a,5b,5c内に適正に注水されるように設定されている。
【0036】
導水樋5aの下端部には、
図3及び
図6(a)に示すように、径方向外側に向かって開口する開口5Aが形成されており、導水樋5aとバッフル8の内部とは連通している。
【0037】
また、導水樋5bの下端部には、
図3及び
図6(b)に示すように、径方向外側に向かって開口する開口5Bが形成されており、導水樋5aの下方を通過する通水経路5Baを介して、導水樋5bとバッフル8の内部とは連通している。通水経路5Baは、開口5Bから水平方向且つ径方向外側に向かって延びている。
【0038】
また、導水樋5cの下端部には、
図3及び
図6(c)に示すように、径方向外側に向かって開口する開口5Cが形成されており、導水樋5a及び導水樋5bの下方を通過する通水経路5Caを介して、導水樋5cとバッフル8の内部とは連通している。通水経路5Caは、開口5Cから水平方向且つ径方向外側に向かって延びている。
【0039】
受水リングユニット5の外周側には、環状の流体バランサ12が取り付けられている。流体バランサ12は、既知の流体バランサと同様のものである。
【0040】
図7(a)は、脱水槽2の内周面2a1に形成されるバッフル8を内周側から見た図であり、
図7(b)は、
図7(a)のa
1-a
1線における断面図である。
【0041】
バッフル8の内周側壁の下端近傍には、
図7(b)に示すように、径方向内側に突出した突出壁部82を有している。すなわち、バッフル8の内周側壁の一部が径方向内側に向かって突出している。バッフル8の内部には、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、その外周側壁から径方向内側に向かって突出する水受け板85が形成されている。水受け板85は、突出壁部82と同一高さに配置されており、水受け板85の径方向内側端部85aは、突出壁部82の内部に配置される。水受け板85の径方向内側端部85aと突出壁部82の先端内周面との間には、空隙が形成されており、貯水空間8aに供給された調整水は、その空隙を介して排水空間8bに流れ込む。
【0042】
バッフル8の内部空間は、水受け板85が配置された突出壁部82より上方に配置される貯水空間8aと、突出壁部82より下方に配置される排水空間8bとを有している。貯水空間8aは、導水樋5a,5b,5cからの調整水を貯水する空間であり、排水空間8bは、貯水空間8aから流れ出た調整水を排水する空間である。
図7(a)及び
図7(b)に示すように、貯水空間8aの径方向厚さと排水空間8bの径方向厚さとは略同一であるのに対し、排水空間8bの上下方向長さは貯水空間8aの上下方向長さより短く、且つ、排水空間8bの周方向長さは貯水空間8aの周方向長さより短い。そのため、貯水空間8aの体積は、排水空間8bの体積より大きい。
【0043】
バッフル8の貯水空間8aに注水された調整水は、突出壁部82内に配置された水受け板85により下方に流れないように保持され、水受け板85の上面に沿って突出壁部82内を径方向内側に向かって流れる。脱水槽2が回転した状態でバッフル8の貯水空間8aに調整水が注水されると、調整水は遠心力により導水樋5a,5b,5cの外周壁に貼りつくため、調整水は貯水空間8a内に保持される。
【0044】
図8(a)は、導水樋内の水面に対して作用する重力及び遠心力の合力を示す図である。
図8において、水面の水平線に対する角度θ(水面角度θ)である場合、水面に作用する重力はmg、遠心力はmrω
2であり、tanθ=mrω
2/mgである。
【0045】
図8(b)は、脱水槽2の回転数を種々変化させたときの水面角度の変化を示している。但し、脱水槽2の半径を0.24(m)としている。例えば、脱水槽2の回転数が、100rpmの場合、その角速度ωは、10.5である。そのとき、rω
2の値は、26.3であり、重力加速度gを9.8m/s
2とすると、水面角度θは、69.58度となる。
【0046】
脱水槽2が回転しているときの貯水空間内の調整水の水面角度θは、脱水槽2の回転数に応じて変化する。すなわち、
図8(b)に示すように、脱水槽2の回転数が小さい場合、遠心力が小さいため、水面角度θは比較的小さくなり、脱水槽2の回転数が大きい場合、遠心力が大きいため、水面角度θは比較的大きくなる。
【0047】
本実施形態において、水受け板85の位置(上下方向高さ)及び径方向長さは、脱水槽2の回転数が共振回転数を超えるときに、水受け板85より上方に貯水される調整水の重心が、脱水槽2の高さ方向中央と略同一高さ(脱水槽2の高さ方向中央部)にあるように設定される。
【0048】
例えば、
図7(b)には、共振回転数である200rpmの場合の水面を示しており、そのときにバッフル8の水受け板85より上方に貯水される調整水の重心が、脱水槽2の高さ方向中央の近傍にあるように設定される。なお、
図7(b)では、バッフル8の水受け板85より上方に貯水される調整水の水量を導出する際、調整水は貯水空間8aよりも径方向内側には貯水されないため、その水量は差し引かれる。
【0049】
ノズルユニット30は、このような導水樋5a,5b,5cに個別に調整水を注水するものである。ノズルユニット30は、導水樋5a,5b,5cの上方に配置された3本の注水ノズル30a,30b,30cと、これらの注水ノズル30a,30b,30cにそれぞれ接続される給水バルブ31a,31b,31cとを有する。注水ノズル30a,30b,30cは、導水樋5a,5b,5cと同数だけ設けられ、それぞれ別々の導水樋5a,5b,5cに注水可能な位置に、外槽3の上端部に取り付けられる。なお、本実施形態では調整水として水道水が用いられる。また、給水バルブ31a,31b,31cとしては、方向切換給水バルブを採用することも可能である。
【0050】
このような構成であると、排水バルブ10aが開かれて外槽3内の洗濯水が排水口10より排出される脱水工程では、ノズルユニット30の何れかの注水ノズル30a,30b,30cから受水リングユニット5の導水樋5a,5b,5c内に注入された調整水は、バッフル8内に流れ込む。
【0051】
例えば、注水ノズル30aから調整水が注入される場合には、
図6(a)に矢印で示すように、導水樋5aから開口5Aを介してバッフル8aに調整水が流れ込む。同様に、注水ノズル30bから調整水が注入される場合には、
図6(b)に矢印で示すように、導水樋5bから通水経路5Ba及び開口5Bを介してバッフル8bに調整水が流れ込む。注水ノズル30cから調整水が注入される場合には、
図6(c)に矢印で示すように、導水樋5cから通水経路5Ca及び開口5Cを介してバッフル8cに調整水が流れ込む。
【0052】
バッフル8内に流れ込んだ調整水は、脱水槽2が高速回転状態にあると、遠心力により脱水槽2の内周面2a1にはりついて滞留する。これにより、バッフル8の重量が増加し、脱水槽2のバランスが変化する。このようにバッフル8は、遠心力により調整水を貯めることが可能なポケットバッフル構造である。そして、脱水工程が終了に近づいて脱水槽2の回転速度が低下すると、バッフル8内の遠心力が次第に減衰し、調整水が重力によって開口部81から流れ出て、排水管10を介して外槽3外へ排水される。このとき、調整水は開口部81を介してパルセータ本体4aの下方に流れ込む。そのため、調整水は、パルセータ本体4aよりも上方にある衣類を濡らすことなく排水される。
【0053】
図2に示す駆動部50は、モータ51によりプーリー52およびベルト53を回転させるとともに、脱水槽2の底部2cに向けて延出する駆動軸54を回転させて、脱水槽2やパルセータ4に駆動力を与え、脱水槽2やパルセータ4を回転させる。洗濯機1は、洗い工程では主としてパルセータ4のみを回転させ、脱水工程では脱水槽2とパルセータ4とを一体的に高速で回転させる。また、一方のプーリー53の近傍には、プーリー52に形成されたマーク52aの通過を検出できる近接スイッチ55が設けられる。
【0054】
このように本実施形態の洗濯機1は、パルセータ4が底部2cに配置された脱水槽2と、脱水槽2の内周面2a1に対して周方向に等間隔で配置されるとともに、底部2c近傍で開口し且つ上端部に循環水口80が形成された3つの通水管部であるバッフル8と、脱水槽2の上端部に固定され、通水管部であるバッフル8の上端部とそれぞれ接続された3つの環状の導水樋5a,5b,5cが互いに径方向に重層されてなる受水リングユニット5と、各導水樋5a,5b,5cに個別に調整水を注入可能なノズルユニット30とを備え、3つの導水樋5a,5b,5cの底面5ta,5tb,5tcの高さは、外周側から内周側に向かって順に低くなる。
【0055】
このような構成であると、3つの導水樋5a,5b,5cの底面5ta,5tb,5tcの高さが外周側から内周側に向かって順に低くなるため、脱水槽2の回転による遠心力により各導水樋5a,5b,5cからバッフル8に向かって調整水を円滑に移動させることができる。これにより、脱水槽2のアンバランス状態を解消する制御を適正に行うことができる。
【0056】
このように本実施形態の洗濯機1において、3つ以上の導水樋5a,5b,5cの深さは、外周側から内周側に向かって順に深くなる。
【0057】
このような構成であると、3つの導水樋5a,5b,5cの上端位置を同一にした状態で、導水樋5a,5b,5cの底面5ta,5tb,5tcの高さを外周側から内周側に向かって順に低くすることができる。これにより、3つの導水樋5a,5b,5cに調整水をそれぞれ注水する注水ノズル30a,30b,30cの配置が容易になる。
【0058】
このように本実施形態の洗濯機1において、3つの導水樋5a,5b,5cの幅は、外周側から内周側に向かって順に小さくなる。
【0059】
このような構成であると、3つの導水樋5a,5b,5cの幅を外周側から内周側に向かって順に小さくして、3つの導水樋5a,5b,5cのなかで最も内周側の導水樋5cの内径を大きくすることにより、3つの導水樋5a,5b,5cの幅が最も外周側の導水樋5aの幅と同一である場合と比べて、洗濯物の投入口の面積を大きくすることができる。
【0060】
このように本実施形態の洗濯機1において、3つの導水樋5a,5b,5cは、その外周壁から径方向内側に向かって突出する突出部6a,6b,6cをそれぞれ有しており、3つの導水樋5a,5b,5cに形成された突出部6a,6b,6cの径方向長さは、外周側から内周側に向かって順に短くなる。
【0061】
このような構成であると、注水ノズル30a,30b,30cから注入される調整水が通過する導水樋5a,5b,5cの上端に形成された開口部35a,35b,35cの幅を同一にした場合でも、3つの導水樋5a,5b,5cに形成された突出部6a,6b,6cの径方向長さを外周側から内周側に向かって順に短くして、3つの導水樋5a,5b,5cのなかで最も内周側の導水樋5cの内径を大きくすることにより、3つの導水樋5a,5b,5cの幅が最も外周側の導水樋5aの幅と同一である場合と比べて、洗濯物の投入口の面積を大きくすることができる。
【0062】
このように本実施形態の洗濯機1において、3つの導水樋5a,5b,5cより径方向外側に配置された流体バランサ12を備える。
【0063】
このような構成であると、バッフル8は、3つの導水樋5a,5b,5cより径方向外側に配置されるため、バッフル8の上方で且つ3つの導水樋5a,5b,5cより径方向外側にはスペースが形成されるが、そのスペースに流体バランサ12を配置することにより、スペースを無駄にすることなく縦共振点の通過時の振動をより低減することができる。
【0064】
図9は、本実施形態の洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。この洗濯機1の動作は、マイクロコンピュータを含む制御手段60によって制御される。制御手段60は、システム全体の制御を司る中央制御部(CPU)61を備え、この制御手段60に脱水槽2の回転制御に必要な脱水運転開始前の低速回転設定値(N1)、脱水運転開始後の高速回転設定値(N2)、低速脱水運転時のアンバランス量設定値(ma)、高速脱水運転時のアンバランス量設定値(mb)を記憶させたメモリ62を接続する。また、制御手段60により、メモリ62に記憶されたプログラムをマイクロコンピュータが実行することにより、予め定められた運転動作が行われるとともに、メモリ62には、上記プログラムを実行する際に用いられるデータ等が一時的に記憶される。
【0065】
中央制御部61は、回転速度制御部63へ制御信号を出力し、さらにその制御信号をモータ制御部(モータ制御回路)64へ出力してモータ51の回転制御を行う。なお、回転速度制御部63は、モータ制御部64からモータ51の回転速度を示す信号を実時間で入力し、制御要素となるようにしている。アンバランス量検出部55には、加速度センサ56を接続するとともに、アンバランス位置検出部66には、加速度センサ51および近接スイッチ55を接続する。
【0066】
これにより、近接スイッチ55がマーカー52a(
図2参照)を検知すると、加速度センサ56からの水平方向と垂直方向の加速度の大きさから、アンバランス量検出部65においてアンバランス量(M)が算出され、このアンバランス量がアンバランス量判定部67へ出力される。アンバランス位置検出部66は、近接スイッチ55から入力されたマーカー52aの位置を示す信号からアンバランス方向の角度を算出し、アンバランス位置信号を注水制御部68へ出力する。
【0067】
注水制御部68は、アンバランス量判定部67およびアンバランス位置検出部66からのアンバランス量とアンバランス位置を示す信号が入力されると、脱水槽2内の何れのバッフル8に給水を行うかおよびその給水量を予め格納される制御プログラムに基づいて判断する。そして選定した給水バルブ31a,31b,31cを開き、調整水の注入を開始する。脱水槽2にアンバランスが生じたときは、このアンバランス量の算出に基づいて選定された注水ノズル30a,30b,30cから受水リングユニット5の導水樋5a,5b,5cに調整水の注入を開始し、バッフル8によりアンバランスが解消されたとき、調整水の注入を停止する。
【0068】
なお、注水制御部68は、例えば
図4に示すように、アンバランスの要因となっている洗濯物の塊D(X)が脱水槽2のバッフル8aとバッフル8cの間にある場合は、バッフル8bに調整水を供給するよう制御する。また、洗濯物の塊D(Y)がバッフル8bの近傍にある場合は、バッフル8aとバッフル8cの両方に調整水を供給するよう制御する。
【0069】
図10及び
図11は、本実施形態の洗濯機1の制御を示すフローチャートである。
【0070】
本実施形態では、中央制御部61が、図示しない脱水ボタンからの入力信号あるいは洗濯コース運転中に脱水工程を開始すべき旨の信号を受信すると、ステップSP1に進み、脱水工程を開始する。
【0071】
<ステップSP1>
ステップSP1では、中央制御部61は、脱水槽2をほぐし反転させた後、脱水槽2の回転を加速させる。
【0072】
<ステップSP2>
ステップSP2では、中央制御部61は、低速回転設定値(N1)に基づいて、脱水槽2を低速回転させる。
【0073】
<ステップSP3>
ステップSP3では、中央制御部61は、加速度センサ56から与えられた加速度値(加速度センサのx成分)に基づいて、アンバランス量(M)を検出する。
【0074】
<ステップSP4>
ステップSP4では、中央制御部61は、アンバランス量(M)と、メモリ62に格納されたアンバランス量設定値(ma)とを比較し、M<maが成り立つか否か判断する。M<maが成り立つと判断すると、ステップSP6に進む。一方、M<maが成り立たないと判断すると、ステップSP5に進む。ここで、アンバランス量設定値(ma)は、バッフル8に調整水を供給しても解消が難しい程度に洗濯物の偏りが大きいことを示す閾値である。すなわち、ステップSP5に進む場合、バッフル8に調整水を供給しても解消が難しい程度に洗濯物の偏りが大きいと判断されたことを意味する。
【0075】
<ステップSP5>
ステップSP5では、中央制御部61は、脱水槽2の回転を停止させた後、ステップSP1に戻り、ステップS1~S4を繰り返す。
【0076】
<ステップSP6>
ステップSP6では、中央制御部61は、脱水槽2の低速回転を開始してからの経過時間が、低速回転処理を行う予め定められた設定時間以上であると判断すると、ステップSP7に進む。
【0077】
<ステップSP7>
ステップSP7では、中央制御部61は、高速回転設定値(N2)に基づいて、脱水槽2を高速回転させる。
【0078】
<ステップSP8>
ステップSP8では、中央制御部61は、加速度センサ56から与えられた加速度値に基づいて、アンバランス量(M)およびアンバランス位置(N)を検出する。
【0079】
<ステップSP9>
ステップSP9では、中央制御部61は、アンバランス位置(N)に基づいて、
図12に示す給水バルブX、領域Y,給水バルブZをパラメータ表の値に置き換える。
図12は、洗濯機1の脱水工程での制御の流れを説明するための図である。
図12では、また、脱水槽2の横断面を周方向に6等分して、バッフル8との位置関係を模式的に示しており、8(A)と記載されたバッフル8は、
図2に示す注水ノズル31aより調整水が供給されるバッフル8を表す。同様に、8(B)と記載されたバッフル8は、
図2に示す注水ノズル31bより、8(C)と記載されたバッフル8は、
図2に示す注水ノズル31cより、それぞれ調整水が供給されるバッフル8を表す。
【0080】
<ステップSP10>
ステップSP10では、中央制御部61は、
図12のパラメータ表に記載された給水バルブXを開口させる。例えば、アンバランス位置(N)が領域Iの場合、給水バルブXは、領域Iに対向するバッフル8(C)に対応した給水バルブ31cになる。これにより、給水バルブXに対応するバッフル8に調整水が供給され、偏荷重の量および位置が変化していく。
【0081】
<ステップSP11>
図11に示すステップSP11では、中央制御部61は、加速度センサ56から与えられた加速度値に基づいて、アンバランス量(M)およびアンバランス位置(N)を再計算する。
【0082】
<ステップSP12>
ステップSP12では、中央制御部61は、アンバランス量(M)と、メモリ62に格納されたアンバランス量設定値(ma)とを比較し、M<maが成り立つか否か判断する。M<maが成り立つと判断すると、ステップSP13に進む。一方、M<maが成り立たないと判断すると、後述するステップSP21に進む。すなわち、バッフル8に調整水を供給しても解消が難しい程度に洗濯物の偏りが大きいと判断すると、ステップSP21に進む。
【0083】
<ステップSP13>
ステップSP13では、中央制御部61は、アンバランス量(M)と、メモリ62に格納されたアンバランス量設定値(mb)とを比較し、M<mbが成り立つか否か判断する。M<mbが成り立つと判断すると、後述するステップSP23に進む。一方、M<mbが成り立たないと判断すると、ステップSP14に進む。ここで、アンバランス量設定値(mb)は、アンバランス量設定値(ma)よりも小さい値であり、バッフル8への調整水の供給がなくても騒音が発生しない程度に洗濯物の偏りが小さいことを示す閾値である。すなわち、偏荷重が小さいあるいは存在せず、バッフル8へ給水しなくても騒音が発生しないと判断した場合、ステップSP23に進む。
【0084】
<ステップSP14>
ステップSP14では、中央制御部61は、給水バルブXを開口してからの経過時間が、設定時間以上であると判断すると、ステップSP15に進む。ここで、当該設定時間は、1つのバッフル8内が調整水でほぼ満タンになるまで掛かる時間である。
【0085】
<ステップSP15>
ステップSP15では、中央制御部61は、アンバランス位置(N)が
図12のパラメータ表に示す領域Yか否か判断する。アンバランス位置(N)が領域Yであると判断すると、ステップSP16に進む。アンバランス位置(N)が領域Yでないと判断すると、ステップSP11に戻る。例えば、ステップSP11での当初のアンバランス位置(N)が領域Iである場合、その後、再計算が行われなければアンバランス位置(N)は領域Iのままであり、ステップSP16に戻る。ステップSP16での再計算の結果は、給水バルブXからの給水で時間とともに変化するので、給水バルブ26cに対応するバッフル8の重量が増すと、アンバランス位置(N)が領域Iから領域Vに変化し、ステップSP15が複数回繰り返されると、アンバランス位置(N)が領域Yに変化する。
【0086】
<ステップSP16>
ステップSP16では、中央制御部61は、
図12のパラメータ表に記載された給水バルブXを閉止させるとともに、給水バルブZを開口させる。例えば、当初のアンバランス位置(N)が領域Iの場合、給水バルブXは、領域Iに対向するバッフル8に対応した給水バルブ26cになり、給水バルブZは、給水バルブ26cに対応したバッフル8(C)よりも領域Iに近い位置にあるバッフル8(B)に対応した給水バルブ26bとなる。これにより、給水バルブZに対応するバッフル8に調整水が供給され、偏荷重の量および位置が変化していく。
【0087】
<ステップSP17>
ステップSP17では、中央制御部61は、加速度センサ56から与えられた加速度値に基づいて、アンバランス量(M)およびアンバランス位置(N)を再計算する。
【0088】
<ステップSP18>
ステップSP18では、中央制御部61は、アンバランス量(M)と、メモリ62に格納されたアンバランス量設定値(ma)とを比較し、M<maが成り立つか否か判断する。M<maが成り立つと判断すると、ステップSP19に進む。一方、M<maが成り立たないと判断すると、後述するステップSP21に進む。すなわち、バッフル8にこれ以上調整水を供給しても解消が難しい程度に洗濯物の偏りが大きいと判断すると、ステップSP21に進む。
【0089】
<ステップSP19>
ステップSP19では、中央制御部61は、アンバランス量(M)と、メモリ62に格納されたアンバランス量設定値(mb)とを比較し、M<mbが成り立つか否か判断する。M<mbが成り立つと判断すると、後述するステップSP23に進む。すなわち、バッフル8への給水によって騒音が発生しない程度に偏荷重が解消したと判断すると、ステップSP23に進む。一方、M<mbが成り立たないと判断すると、ステップSP20に進む。
【0090】
<ステップSP20>
ステップSP20では、中央制御部61は、給水バルブZを開口してからの経過時間が、設定時間以上であると判断すると、後述のステップSP21に進む。一方、給水バルブZを開口してからの経過時間が、設定時間以上でないと判断すると、ステップSP17に戻る。
【0091】
<ステップSP21>
図10に示すステップSP21では、中央制御部61は、全ての給水バルブX,Zを閉状態にさせる。
【0092】
<ステップSP22>
ステップSP22では、中央制御部61は、脱水槽2の回転を停止させた後、ステップSP1に戻る。
【0093】
このように、バッフル8への給水では解消しないほど偏荷重が大きいと判断した場合、ステップSP21,22の処理を行って、脱水処理を最初からやり直す。
【0094】
<ステップSP23>
図11に示すステップSP23では、中央制御部61は、全ての給水バルブX,Zを閉状態にさせる。
【0095】
<ステップSP24>
ステップSP24では、中央制御部61は、脱水槽2を最高回転数で所定時間回転させ、脱水処理を行う。その後、脱水処理を終了する。
【0096】
このように、本実施形態では、衣類が遠心力により脱水槽2の内周面2a1にへばりつき、かつ脱水回転よりは低い設定回転まで脱水槽2の回転を加速させる。このとき、衣類が脱水槽2内に不均一に分散している場合は、そのアンバランス量(M)により外槽3に円軌道の振動が発生して、加速度センサ56の値が脱水槽2の回転に合わせて正弦波を描く。そして、近接スイッチ55がマーカー52aを検出したときの加速度センサ56の値から、アンバランス量(M)とマーカー52aの位置からの角度を、マイコンで計算し、検出したアンバランス量(M)が設定値以上であれば、その対称な位置にあるバッフル8に注水を行う。
【0097】
調整水を注入させるバッフル8は、アンバランス位置(N)により異ならせる。まず、最初に検出されたアンバランス位置(N)から最も遠い位置にあり、アンバランス量(M)および位置(N)の調整に関して影響が大きいバッフル8のみに給水していき、当該バッフル8への給水を終えると、当該給水によるアンバランス量(M)および位置(N)の変化を考慮しつつ、2つ目のバッフル8へ必要に応じて注水する。これによって、複数のバッフル8へ同時給水する場合のように、導水樋5a,5b,5cの壁面の抵抗等により、各バッフル8に一定量で調整水が供給されないことを考慮する必要がなく、各バッフル8への給水スピード差を給水バルブ31a,31b,31cの開閉によって調節する必要がないので、給水バルブ31a,31b,31cの開閉回数が少なくて済み、給水バルブ31a,31b,31cの耐久性が低下することを抑制することができる。
【0098】
このように
図4に示すD(X)の位置に洗濯物の偏りによるアンバランスがある場合は、バッフル8(A)に注水し、D(Y)の位置に洗濯物の偏りによるアンバランスがある場合は、加速度センサ56で加速度の減少とアンバランス位置の変化をモニターしつつ、バッフル8(B)およびバッフル8(C)に注水する。
【0099】
その後、アンバランス量が設定値以下になると、脱水槽2を高速脱水回転まで加速し、脱水を行う。そして、脱水が終了して脱水槽2の減速が始まり、遠心力が重力加速度を下回ると、バッフル8内の調整水が開口部71より下部に流れ出し、排水される。
【0100】
上記の脱水運転の流れによれば、低速回転時と高速回転時の二段階で脱水槽2のアンバランス状態を検知し、アンバランス状態を解消するようにしたので、脱水運転の開始から終了までのどの過程においても振動や騒音の発生を防止することのできる洗濯機1とすることができる。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本実施形態の構成は上述したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【0102】
例えば、上記実施形態では受水リングユニット5が3つの導水樋5a,5b,5cで構成され、それに対応して3つのバッフル8が設けられるが、これに限らず、バッフル8が3個以上設けられ、かつ導水樋がバッフル8と同数設けられる構成であればよい。
【0103】
上記実施形態では、3つの導水樋5a,5b,5cの深さが外周側から内周側に向かって順に深くなるが、それに限られない。
【0104】
上記実施形態では、3つの導水樋5a,5b,5cの幅が外周側から内周側に向かって順に小さくなるが、それに限られない。
【0105】
上記実施形態では、3つの導水樋5a,5b,5cに形成された突出部6a,6b,6cの径方向長さが外周側から内周側に向かって順に短くなるが、それに限られない。
【0106】
上記実施形態では、複数の導水樋5a,5b,5cの径方向外側に流体バランサ12が配置されているが、洗濯機1は、流体バランサ12を有してなくてよい。
【0107】
上記実施形態では、3つの導水樋5a,5b,5cを互いに径方向に重層されてなる受水リングユニットの例を示したが、それに限られない。本発明の受水リングユニットにおいて、各導水樋5a,5b,5cをバッフル8にそれぞれ連通させる方法は、任意である。
【0108】
上記実施形態において、バッフル8の形状の例を示したが、それに限られない。バッフル8の形状は、任意であり、例えば洗濯機1の動作(状況)に応じて、上広がり、或いは下広がりの形状であってもよい。
【0109】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 洗濯機
2 脱水槽
2c 脱水槽の底部
4 パルセータ
5 受水リングユニット
5a,5b,5c 導水樋
5ta,5tb,5tc 導水樋の底面
6a,6b,6c 突出部
8 バッフル(通水管部)
12 流体バランサ
30 ノズルユニット
80 循環水口