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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】分析物の検出
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20231019BHJP
   G01N 33/552 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
G01N33/543 545M
G01N33/552
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2018564349
(86)(22)【出願日】2017-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-04
(86)【国際出願番号】 AU2017050584
(87)【国際公開番号】W WO2017210754
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】2016902274
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2016902275
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】505167565
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー オブ クイーンズランド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ユー チェンチョン
(72)【発明者】
【氏名】ユー メイフア
(72)【発明者】
【氏名】レイ チャン
(72)【発明者】
【氏名】カランタリ モハマド
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-517985(JP,A)
【文献】特開2008-139217(JP,A)
【文献】特表2007-521460(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0032244(US,A1)
【文献】特表2005-508493(JP,A)
【文献】国際公開第2015/160317(WO,A1)
【文献】CHEN, P.-J. et al.,Geometrical confinement of quantum dots in porous nanobeads with ultraefficient fluorescence for cell-specific targeting and bioimaging,Journal of Materials Chemistry,2012年,Vol.22,p.9568-9575
【文献】XU, C. et al.,Core-Cone Structured Monodispersed Mesoporous Silica Nanoparticles with Ultra-large Cavity for Protein Delivery,Small,2015年,Vol.11, No.44,p.5949-5955
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
G01N 33/552
G01N 33/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の分析物を検出するための方法であって、前記方法は前記分析物をインビトロでナノ粒子と接触させてその結合を促進するステップを含み、前記ナノ粒子は
(i)コアと、
(ii)前記コアから半径方向に延在し、前記ナノ粒子の前記コアから放射状に広がる樹状スパイクのアレイの間に存在する多孔性で構成される複数の孔であって、かつ10nmから20nmの平均孔径を有する複数の孔と、
(iii)前記分析物をインビトロで結合するための結合剤と、
(iv)前記複数の孔内に固定化された検出剤と
を含むことによって、前記分析物を検出する、方法。
【請求項2】
前記ナノ粒子はシリカナノ粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の孔は円錐形である、請求項1若しくはに記載の方法。
【請求項4】
前記ナノ粒子は50nmから250nmの平均粒径を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記結合剤は抗体またはその機能性フラグメントである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記検出剤は生物発光剤、化学発光剤、および/もしくは蛍光剤であるか、またはそれらを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記検出剤は量子ドットであるか、またはそれを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記検出剤は西洋ワサビペルオキシダーゼであるか、またはそれを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記検出剤からレポーター信号を生成するステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記レポーター信号を生成するステップは、前記検出剤と基質とを接触させることによってそこからの前記レポーター信号の生成を促進するステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記レポーター信号を生成するステップは、前記検出剤に電磁波を照射することによってそこからの前記レポーター信号の生成を促進するステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記レポーター信号を検出するステップをさらに含む、請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
診断キットであって、
(a)分析物をインビトロで検出するためのナノ粒子であって、
(i)コアと、
(ii)前記コアから半径方向に延在し、前記ナノ粒子の前記コアから放射状に広がる樹状スパイクのアレイの間に存在する多孔性で構成される複数の孔であって、かつ10nmから20nmの平均孔径を有する複数の孔と、
(iii)前記分析物をインビトロで結合するための結合剤と、
(iv)前記複数の孔内に固定化された検出剤と
を含む、ナノ粒子と、
(b)使用のための説明書と
を含む、診断キット。
【請求項14】
前記ナノ粒子はシリカナノ粒子である、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記複数の孔は円錐形である、請求項13若しくは14に記載のキット。
【請求項16】
前記ナノ粒子は50nmから250nmの平均粒径を有する、請求項13~15のいずれか一項に記載のキット。
【請求項17】
前記結合剤は抗体またはその機能性フラグメントである、請求項13~16のいずれか一項に記載のキット。
【請求項18】
前記検出剤は生物発光剤、化学発光剤、および/もしくは蛍光剤であるか、またはそれらを含む、請求項13~17のいずれか一項に記載のキット。
【請求項19】
前記検出剤は量子ドットであるか、またはそれを含む、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記検出剤は西洋ワサビペルオキシダーゼであるか、またはそれを含む、請求項18に記載のキット。
【請求項21】
基体の中および/または上に分散されたナノ粒子を含む組成物であって、前記ナノ粒子は
(i)コアと、
(ii)前記コアから半径方向に延在し、前記ナノ粒子の前記コアから放射状に広がる樹状スパイクのアレイの間に存在する多孔性で構成される複数の孔であって、かつ10nmから20nmの平均孔径を有する複数の孔と、
(iii)前記複数の孔内に固定化された複数の量子ドットと
を含む、組成物。
【請求項22】
前記ナノ粒子はシリカナノ粒子である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記複数の孔は円錐形である、請求項21または請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記ナノ粒子は100nmから250nmの平均粒径を有する、請求項2123のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析物を検出するための方法およびキットに関する。特に本発明は、たとえばシリカナノ粒子などのナノ粒子を分析物と接触させることによって、前記分析物を検出するための方法およびキットに関する。加えて本発明は、ナノ粒子を含む組成物と、前記組成物を含む製品とに関する。特に本発明は、量子ドット含有ナノ粒子を含む組成物と、それを含有するたとえば電子ディスプレイ、太陽電池、およびLEDライトなどの製品とに関する。
【背景技術】
【0002】
イムノアッセイは、高分子もしくは小分子の存在または濃度を検出するための生化学的方法である。最も単純な形のイムノアッセイ法は、検出可能なタグまたは標識を、そのタグまたは標識に付着された抗原または抗体を介して、検出されることが望まれる分析物に接合することによって機能する。分析物との結合を促進するために抗体または抗原を用いることによって、特定の分析物に対する高い特異性を達成できる。標識された抗体または抗原が分析物に結合されると、次いでそれはいくつかの機構を介して検出されてもよい。検出可能な標識またはタグは本質的に多様であり、直接検出されてもよいし、検出可能な信号または種を生成してもよい。標識/タグのタイプは酵素、放射性同位元素、DNAレポーター、蛍光発生レポーター、電気化学発光タグ、およびその他の種を含む。
【0003】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA:Enzyme-linked immunosorbent assay)は高い信頼性および感度を有するため、研究および臨床的分析の両方における主要な分析方法の1つである(非特許文献1)。ELISAは、分析物を識別して濃度を測定するために抗体および色変化を用いる。従来のELISAでは、分析物が1つの一次抗体によって特異的に捕捉され、次いでたとえば酵素の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP:horseradish peroxidase)などの1つの検出剤と接合された1つの二次抗体に結合し、それが最終的に基質(たとえば3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(Tetramethylbenzidine)、TMBなど)の添加によって1単位の色変化を生じ、その色変化の強度が定量化のために用いられる(非特許文献1)。しかし、疾患の初期段階における診断および微量しか存在しないバイオマーカーの検出に対しては、こうした検出方法による色変化は検出限界(LOD:limit of detection)未満となり得る。したがって、LOD未満の超低濃度の分析物の検出のために、たとえばELISAなどの検出方法の感度を改善することは、多くの適用にとって非常に重要である。
【0004】
信号増幅は、さまざまな検出方法の感度を増加させるための鍵を有する。たとえば、近年はELISA信号を増幅するための一致団結した努力が行われてきた。さまざまな戦略の中でも、信号増強のために酵素の量を増やすために酵素を装填した粒子を用いることが、有望な方法となっている。過去の研究においては、リポソーム(非特許文献2)、金ナノ粒子(非特許文献3、非特許文献4)、ポリマー(非特許文献5、非特許文献6)、およびシリカナノ粒子(非特許文献7、非特許文献8)が酵素装填のためのマトリックスとして使用された。ポリマーでコートしたシリカ内に酵素を固定化することによって、267倍の感度の改善が報告されており、これは類似したサイズのシリカナノ粒子を用いる類似のイムノアッセイ系よりも大きい(非特許文献5)。
【0005】
これらの戦略の多くは、単一の粒子に、たとえばELISAアッセイにおいて用いられる西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)酵素または量子ドットなどの複数の標識を収容するように設計された粒子に依拠する。したがって、これらの単一粒子が抗体または抗原と接合されるとき、結合する分析物は分析物と複数の標識種とを連結してより強力な検出可能信号を生成するため、検出の限界が低くなる。
【0006】
これらの戦略のいくつかは、いくつかの標識種が表面に装填された固体粒子を用いる。より大きな粒子の表面積は標識付着のためにより広い面積を提供するため、ホスト粒子のサイズを大きくすることによって信号増幅が増強される。しかし、この戦略は顕著な制限を有する。なぜなら、より大きい粒子は立体障害の問題を持ち込み得るからであり、大きいサイズの接合体は、検出のための固体支持と結合する能力が低減することによって検出性が低減することがある。
【0007】
ELISAにおける酵素濃縮ナノ粒子の使用は利点を有し、かつ不利益を有し得る。酵素濃度の増加は信号増幅のために有利であるが、酵素活性はELISAの向上にも重要な役割を演じており、酵素活性は固定化酵素の固有生物活性と、酵素および基質分子の呈色反応効率との両方によって定められる(非特許文献9)。さまざまな方法によって固定化された酵素の固有活性を高めるために、多くの努力がなされてきた(非特許文献5、非特許文献7)。たとえば、酵素活性にほとんど影響せずに酵素を装填するために物理吸着(非特許文献10、非特許文献11)が用いられるが、その装填容量は比較的低く、かつ試験の間に酵素放出をもたらすことがある。加えて、酵素活性のわずかな低減をもたらしながら安定した酵素固定化を達成するために化学結合が使用される(非特許文献5)。しかし、酵素-基質反応に対するナノ粒子構造の影響はほとんど報告されていない。基質は反応して信号を生じるために、酵素装填粒子の中に拡散する必要がある。これに関して、基質が酵素装填ナノ粒子内にアクセスしやすいことは、検出感度を増加させるために有益であると考えられる。
【0008】
メソポーラスシリカナノ粒子(MSN:Mesoporous silica nanoparticles)は、その大きい表面積、高い孔体積、調整可能な孔径、および調節可能な表面化学のために、タンパク質/薬物送達において大きな注目を集めている(非特許文献12、非特許文献13)。信号増幅のために化学結合によって酵素を固定化するためにいくつかのMSNが用いられてきたが、孔径が小さいために酵素は粒子の外表面に装填されており、このことは装填量を制限し、結果として酵素活性の部分的損失をもたらす(非特許文献7、非特許文献14)。いくつかの他の研究においては、物理吸着によってMSNにHRPが装填され、大きくなった孔径によって装填量の増加が観察された(非特許文献10、非特許文献11)。これらの試みにもかかわらず、結果として得られる信号増幅はかなりわずかであった。
【0009】
蛍光標識を用いる標識に基づくイムノアッセイ法の場合には、複数または高密度の標識のアプローチを用いるときにクエンチング効果のために付加的な課題が生じ得る。ナノ粒子またはその他のホストにおける空間位置決めがうまく制御されない個々の蛍光標識は、互いに容易にクエンチされ得るため、結果として人為的に低い信号が生成される。
【0010】
したがって、信号増幅を顕著に高めるナノ粒子を用いることによって分析物を検出する改善された方法がなおも必要とされている。
【0011】
量子ドット増強液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)は、電子情報の表示を促進するために量子ドット(QD:quantum dots)を用いる。これに関して、画像を示すLCDパネルに対する高品質/輝度の白色光を生成するために、典型的には一連の青色LEDからの光によってQDの単層が照らされる。大まかにいうと、QD層は2つのタイプのQDを含み、青色光によって照らされたときに一方のタイプは赤色光を放射するのに対し、他方は緑色光を放射する。次いでLCDに対する青色光が典型的に層を単に通過するLEDからの青色光によって提供されることによって、赤色、緑色および青色(RGB:red,green and blue)がともに存在して白色光を生成する。
【0012】
こうしたディスプレイによる共通の問題点の1つは、従来の設計においてはQDの単層しか用いることができないことである。なぜならQDを近接して詰め込み過ぎると、それらは互いにクエンチしてLCDに低品質の光を放射するからである。加えて、QDの単層は一般的に青色発光ダイオード(LED:light emitting diodes)からの光を捕捉するときの効率があまり良くないため、LEDはQD層を介してLCDパネルを照らすために十分な光を提供するために、比較的強力な光を出力する必要がある。このことは、たとえば過剰な熱を生じ、ディスプレイの電力消費を増加させ、ディスプレイの寿命を短くするおそれがある。
【0013】
このQDの問題は、たとえば携帯電話およびラップトップコンピュータなどの電池式のデバイスに特に関係する。これらのデバイスにおいて、ディスプレイは電池の高い割合のエネルギを消費するため、より低電力消費のディスプレイは電池の寿命を顕著に延長し得る。QDを用いるLEDライトに対しても同様の議論ができる。
【0014】
したがって、より低電力で、よりエネルギ効率が高く、かつ/またはより長寿命のディスプレイを可能にするために、LEDが放射する光のより大きい割合を捕捉してそれをLCDに対する放射光に転換することによって、こうしたQD層の効率を改善することがなおも必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【文献】Crowther, J. R., The ELISA guidebook. 2000; p 1-413.
【文献】Singh, A. K.; Kilpatrick, P. K.; Carbonell, R. G., Noncompetitive Immunoassays Using Bifunctional Unilamellar Vesicles or Liposomes. Biotechnol Progr 1995, 11, 333-341.
【文献】Mani, V.; Chikkaveeraiah, B. V.; Patel, V.; Gutkind, J. S.; Rusling, J. F., Ultrasensitive Immunosensor for Cancer Biomarker Proteins Using Gold Nanoparticle Film Electrodes and Multienzyme-Particle Amplification. Acs Nano 2009, 3, 585-594.
【文献】Zhang, Z. X.; Liu, Y.; Zhang, C. Y.; Luan, W. X., Horseradish peroxidase and antibody labeled gold nanoparticle probe for amplified immunoassay of ciguatoxin in fish samples based on capillary electrophoresis with electrochemical detection. Toxicon 2015, 96, 89-95.
【文献】Qu, Z. Y.; Xu, H.; Xu, P.; Chen, K. M.; Mu, R.; Fu, J. P.; Gu, H. C., Ultrasensitive ELISA Using Enzyme-Loaded Nanospherical Brushes as Labels. Anal Chem 2014, 86, 9367-9371.
【文献】Dhawan, S., Design and construction of novel molecular conjugates for signal amplification (II): use of multivalent polystyrene microparticles and lysine peptide chains to generate immunoglobulinhorseradish peroxidase conjugates. Peptides 2002, 23, 2099-2110.
【文献】Yang, M. H.; Li, H.; Javadi, A.; Gong, S. Q., Multifunctional mesoporous silica nanoparticles as labels for the preparation of ultrasensitive electrochemical immunosensors. Biomaterials 2010, 31, 3281-3286.
【文献】Wu, Y. F.; Xue, P.; Kang, Y. J.; Hui, K. M., Paper-Based Microfluidic Electrochemical Immunodevice Integrated with Nanobioprobes onto Graphene Film for Ultrasensitive Multiplexed Detection of Cancer Biomarkers. Anal Chem 2013, 85, 8661-8668.
【文献】Rodrigues, R. C.; Ortiz, C.; Berenguer-Murcia, A.; Torres, R.; Fernandez-Lafuente, R., Modifying enzyme activity and selectivity by immobilization. Chem Soc Rev 2013, 42, 6290-6307.
【文献】Takahashi, H.; Li, B.; Sasaki, T.; Miyazaki, C.; Kajino, T.; Inagaki, S., Catalytic activity in organic solvents and stability of immobilized enzymes depend on the pore size and surface characteristics of mesoporous silica. Chem Mater 2000, 12, 3301-3305.
【文献】Lin, N.; Gao, L.; Chen, Z.; Zhu, J. H., Elevating enzyme activity through the immobilization of horseradish peroxidase onto periodic mesoporous organosilicas. New J Chem 2011, 35, 1867-1875.
【文献】Slowing, I. I.; Vivero-Escoto, J. L.; Wu, C. W.; Lin, V. S. Y., Mesoporous silica nanoparticles as controlled release drug delivery and gene transfection carriers. Adv Drug Deliver Rev 2008, 60, 1278-1288.
【文献】Vallet-Regi, M.; Colilla, M.; Gonzalez, B., Medical applications of organic-inorganic hybrid materials within the field of silica-based bioceramics. Chem Soc Rev 2011, 40, 596-607.
【文献】Chen, L. L.; Zhang, Z. J.; Zhang, P.; Zhang, X. M.; Fu, A. H., An ultra-sensitive chemiluminescence immunosensor of carcinoembryonic antigen using HRP-functionalized mesoporous silica nanoparticles as labels. Sensor Actuat B-Chem 2011, 155, 557-561.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、分析物を検出するための方法およびキットに向けられたものである。加えて本発明は、量子ドット含有ナノ粒子を含む組成物およびそれを含有する製品に向けられたものである。
【0017】
第1の態様において、本発明はサンプル中の分析物を検出するための方法を提供し、この方法は前記分析物をナノ粒子と接触させてその結合を促進するステップを含み、ナノ粒子は
(i)コアと、
(ii)前記コアから半径方向に延在する孔と、
(iii)分析物を結合するための結合剤と、
(iv)前記孔内に固定化された検出剤と
を含むことによって、前記分析物を検出する。
【0018】
好適には、本態様の方法は、検出剤からレポーター信号を生成するステップをさらに含む。特定の実施形態において、レポーター信号を生成するステップは、検出剤と基質とを接触させることによってそこからの前記レポーター信号の生成を促進するステップを含む。他の実施形態において、レポーター信号を生成するステップは、検出剤と電磁放射線とを接触させることによってそこからの前記レポーター信号の生成を促進するステップを含む。一実施形態において、本態様の方法は、レポーター信号を検出するステップをさらに含む。
【0019】
第2の態様において、本発明は診断キットを提供し、このキットは(i)分析物を検出するためのナノ粒子を含み、このナノ粒子は
(i)コアと、
(ii)前記コアから半径方向に延在する孔と、
(iii)分析物を結合するための結合剤と、
(iv)前記孔内に固定化された検出剤と、
(v)使用のための説明書とを含む。
【0020】
一実施形態において、第1および第2の態様のナノ粒子は、金属またはメタロイドナノ粒子である。
【0021】
好適には、金属またはメタロイドナノ粒子は、金属またはメタロイド酸化物ナノ粒子である。
【0022】
実施形態において、ナノ粒子の金属またはメタロイドは、亜鉛、ジルコニウム、シリカ、チタン、スズ、アルミニウム、セリウム、銅、インジウム、マグネシウム、ニッケル、および鉄からなる群より選択される。
【0023】
こうした金属およびメタロイドは、それらの公知の酸化物の形の任意の1つまたはそれ以上にて、第1および第2の態様のナノ粒子内に見出されてもよい。
【0024】
好ましくは、第1および第2の態様のナノ粒子はシリカナノ粒子である。
【0025】
第1および第2の態様の本発明に関して、孔は好適には実質的に円錐形であるか、または好適には粒子のコアから放射状に広がる樹状スパイクのアレイの間に存在する多孔性で構成される。
【0026】
好適には、第1および第2の態様の本発明に対して、孔は約5nmから約50nmの平均孔径を有する。好ましくは、孔は約10nmから約20nmの平均孔径を有する。
【0027】
第1および第2の態様の本発明の一実施形態において、ナノ粒子は約50nmから約250nmの平均粒径を有する。
【0028】
前述の態様の本発明に関して、結合剤は好適には抗体またはその機能性フラグメントである。
【0029】
第1および第2の態様の本発明に関して、検出剤は好適には生物発光剤、化学発光剤、および/もしくは蛍光剤であるか、またはそれらを含む。一実施形態において、検出剤は量子ドットであるか、またはそれを含む。代替的実施形態において、検出剤は西洋ワサビペルオキシダーゼであるか、またはそれを含む。
【0030】
第3の態様において、本発明はアンカー基を示すナノ粒子を生成するための方法を提供し、この方法は
(i)金属またはメタロイド供給源を提供するステップと、
(ii)液体環境において、金属またはメタロイド供給源を塩基および任意には界面活性剤と接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)の生成物をアンカー基を示す化合物と接触させるステップと
を含むことによって、アンカー基を示すナノ粒子を生成する。
【0031】
好ましくは、ナノ粒子は第1および第2の態様に対して記載されたものから選択されるため、それに従って金属またはメタロイド供給源が選択される。
【0032】
一実施形態において、金属またはメタロイド供給源はシリカであり、アンカー基を示す化合物はアンカー基を示すシリケートである。
【0033】
一実施形態においては、アンカー基が導入される前にある程度のシリカナノ粒子を形成させるために、ステップ(ii)と(iii)との間に少なくとも5分間の遅延期間が提供される。
【0034】
一実施形態において、この方法はさらに、残った界面活性剤テンプレートを除去するために、アンカー基を示すナノ粒子を処理するステップを含む。
【0035】
界面活性剤の除去は、酸処理によるものであってもよい。
【0036】
実施形態において、アンカー基はチオール、アミン、カルボキシル基、ポリエチレングリコール基、炭素鎖、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0037】
好ましくは、アンカー基はチオールであり、アンカー基を示すシリケートはチオール含有アルコキシシランである。
【0038】
一実施形態において、界面活性剤は四級アンモニウム界面活性剤であってもよい。
【0039】
供給源がシリカ供給源であるとき、それは任意の加水分解性シリカ供給源であってもよいが、単なる非限定的な例としてTEOSおよびTMOSを含むアルキルオルトシリケートが好ましい。
【0040】
第4の態様において、本発明は基体の中および/または上に分散されたナノ粒子を含む組成物を提供し、ナノ粒子は
(i)コアと、
(ii)前記コアから半径方向に延在する孔と、
(iii)前記孔内に固定化された複数の量子ドットとを含む。
【0041】
好適には、ナノ粒子は金属またはメタロイドナノ粒子、たとえば金属またはメタロイド酸化物ナノ粒子などである。いくつかの実施形態において、ナノ粒子の金属またはメタロイドは、亜鉛、ジルコニウム、シリカ、チタン、スズ、アルミニウム、セリウム、銅、インジウム、マグネシウム、ニッケル、および鉄からなる群より選択される。こうした金属およびメタロイドは、それらの公知の酸化物の形の任意の1つまたはそれ以上にて、本態様のナノ粒子内に見出されてもよい。
【0042】
好ましくは、ナノ粒子はシリカナノ粒子である。
【0043】
一実施形態において、孔は好適には実質的に円錐形であるか、または好適には粒子のコアから放射状に広がる樹状スパイクのアレイの間に存在する多孔性で構成される。
【0044】
好適には、孔は約5nmから約50nmの平均孔径を有する。好ましくは、孔は約10nmから約20nmの平均孔径を有する。
【0045】
一実施形態において、ナノ粒子は約100nmから約250nmの平均粒径を有する。
【0046】
好適には、複数の量子ドットは第1のグループの量子ドットおよび第2のグループの量子ドットを含み、この第1および第2のグループの量子ドットは、光源からの第1の光の第1の部分を吸収してそれぞれ第2の色の第2の光および第3の色の第3の光を放射するように適合され、さらに第1の光の第2の部分を伝達するように構成される。好ましくは、青色光源による励起の際に、第1のグループの量子ドットは赤色光を放射するように適合され、第2のグループの量子ドットは緑色光を放射するように適合される。
【0047】
一実施形態において、組成物はフィルムであるか、またはそれを含む。
【0048】
一実施形態において、組成物は実質的に透過性の容器内に封止される。
【0049】
好適には、基体は実質的に透過性である。
【0050】
基体は好適にはポリマー、モノマー、樹脂、結合剤、ガラス、金属酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0051】
第5の態様において、本発明はディスプレイデバイスを提供し、このディスプレイデバイスは
(i)光源と、
(ii)第4の態様の組成物を含み、かつ光源に光学的に結合された発光層と、
(iii)発光層から放射された光を少なくとも部分的に受取るためのディスプレイとを含む。
【0052】
好適には、光源は青色光源であるか、またはそれを含む。好ましくは、光源は青色LEDであるか、またはそれを含む。
【0053】
一実施形態において、ディスプレイは液晶モジュールであるか、またはそれを含む。
【0054】
第6の態様において、本発明は発光ダイオードデバイスを提供し、この発光ダイオードデバイスは
(i)陰極と、
(ii)陰極の上の電子輸送層と、
(iii)電子輸送層の上に形成された発光層であって、この発光層は第4の態様の組成物を含む、発光層と、
(iv)発光層の上の正孔輸送層と、
(v)正孔輸送層の上に形成された陽極とを含む。
【0055】
第7の態様において、本発明は太陽電池を提供し、この太陽電池は
(i)電子伝導体層と、
(ii)第4の態様の組成物を含み、かつ電子伝導体層に結合された電子放出層とを含む。
【0056】
第8の態様において、本発明は発光するための方法を提供し、前記方法は
(i)第4の態様の任意の1つの組成物を含む発光層を提供するステップと、
(ii)発光層内の量子ドットの1つまたはそれ以上による吸収が可能な周波数の電磁放射線によって発光層を励起するステップと
を含むことによって発光する。
【0057】
一実施形態において、この態様の方法は、ディスプレイによって放射光を受取るステップをさらに含む。
【0058】
第9の態様において、本発明は電子を放出するための方法を提供し、前記方法は
(i)第4の態様の任意の1つの組成物を含む電子放出層を提供するステップと、
(ii)電子放出層内の量子ドットの1つまたはそれ以上による吸収のために好適な周波数の電磁放射線によって電子放出層を励起するステップと
を含むことによって電子を放出する。
【0059】
一実施形態において、この態様の方法は、太陽電池の電子伝導体層によって放出電子を受取るステップをさらに含む。
【0060】
第10の態様において、本発明は固定化された複数の量子ドットを有するナノ粒子を生成するための方法を提供し、この方法は
(i)金属またはメタロイド供給源を提供するステップと、
(ii)液体環境において、金属またはメタロイド供給源を塩基および任意には界面活性剤と接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)の生成物をアンカー基を示す化合物と接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)の生成物を前記量子ドットと接触させるステップと
を含むことによって、固定化された複数の量子ドットを有するナノ粒子を生成する。
【0061】
一実施形態において、金属またはメタロイド供給源はシリカの供給源であり、アンカー基を示す化合物はアンカー基を示すシリケートである。
【0062】
好適には、アンカー基はチオール、アミン、カルボキシル基、ポリエチレングリコール基、炭素鎖、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。好ましくは、アンカー基はチオールであり、アンカー基を示すシリケートはチオール含有アルコキシシランである。
【0063】
一実施形態において、この態様の方法は、基体の中および/または上にステップ(iv)の生成物を分散させるステップをさらに含む。
【0064】
状況が別様を必要とするときを除き、本明細書において用いられる「含む(comprise)」という用語、ならびにたとえば「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」、および「含んだ(comprised)」などのその用語の変形は、さらなる元素、構成要素、整数、またはステップを除外することを意図するものではなく、1つまたはそれ以上の記載されていないさらなる元素、構成要素、整数、またはステップを含んでもよい。
【0065】
不定冠詞「a」および「an」は、単数形の不定冠詞として、または別様にその不定冠詞が示す対象物の2つ以上もしくは単一よりも多くを除外するものとして読まれないことが認識されるであろう。たとえば「孔(「a」 pore)」は1つの孔、1つまたはそれ以上の孔、および複数の孔を含む。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】(A)従来のサンドイッチ様ELISAと(B)超高感度の検出を達成するための高HRP装填およびアクセス可能な樹状チャネルを有する設計されたメソポーラスシリカナノ粒子(DMSN:designed mesoporous silica nanoparticle)を用いたELISAとの比較を示す図である。
図2】DMSN-2の(a)透過型電子顕微鏡(TEM:transmission electron microscopy)および(b)走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning electron microscopy)画像を示す図である。矢印は開放孔チャネルを示す。
図3】基質としてTMB/Hを用いたエンドポイント法によって測定された、遊離HRPに対する固定化HRPの活性を示す図である。その結果をHRPの濃度に対して正規化した。
図4】異なるインスリン濃度における市販のELISAおよびDMSNに基づくELISAのOD値を示す図である。x軸の数字(1、1/10、1/100、1/1000、および1/2000)は、LODC(市販のELISAキットの検出限界)のインスリンの希釈倍数を表す。DMSN-H-Aのみを有してインスリン添加のない対照グループが含まれており、1LOD濃度グループにおいてDMSN-1-H-A、DMSN-2-H-A、およびDMSN-3-H-Aの値がそれぞれ桃色、緑色、および紫色のバーとして示されている。
図5】ELISAの定量化範囲の標準曲線を示す図である。
図6】HRP固定化の機構を示す図である。
図7】(a)DMSN-1、(c)DMSN-2、(e)DMSN-3;およびアミノ修飾した(b)DMSN-1-NH、(d)DMSN-2-NH、(f)DMSN-3-NHのTEM画像を示す図である。スケールバー:100nm。
図8】(a)DMSN-1、(b)DMSN-2、(c)DMSN-3、およびアミノ修飾した(d)DMSN-1-NH、(e)DMSN-2-NH、(f)DMSN-3-NHの窒素吸着-脱着等温線および孔径分布を示す図である。
図9】チオールアンカー基を取り込んだシリカナノ粒子のTEM顕微鏡写真を示す図であり、ここでシリカナノ粒子はコアから放射状に広がるシリカスパイクを有する放射状の樹状構造を有する。
図10】本発明のディスプレイデバイスの実施形態を示す図である。
図11A】実施例4の単分散メソポーラスシリカナノ粒子のTEM画像(A-B)を示す図である。
図11B】実施例4の単分散メソポーラスシリカナノ粒子のTEM画像(A-B)を示す図である。
図11C】実施例4の単分散メソポーラスシリカナノ粒子のSEM画像(C)を示す図である。
図11D】実施例4の単分散メソポーラスシリカナノ粒子のN吸着/脱着等温線(D)および対応する孔径分布(挿入図)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明は、容易にアクセス可能な放射状の孔チャネルを有する特異的に設計されたメソポーラスシリカナノ粒子が、分析物検出アッセイにおける顕著な信号増幅をもたらしたという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づくものである。任意の理論に結び付けられることなく、大きく開いた放射状チャネルは、極めて大量の検出剤装填を可能にし、さらに基質分子がこうした検出剤と反応するための容易にアクセス可能な空間を提供することが提案され、こうした反応は分析物検出プロセスの一部である。検出剤がフルオロフォアであるか、またはそれを含むような他の場合において、大きく開いた孔構造は粒子内へのフルオロフォアの容易な装填および孔の壁への適切で非制限的な配置を促進することによって、クエンチングを最小化すると考えられる。
【0068】
加えて本発明は、容易にアクセス可能な放射状の孔チャネル内に固定化された量子ドットを有する特異的に設計されたメソポーラスシリカナノ粒子が、たとえば電子ディスプレイ、LED、および太陽電池などの製品における顕著な信号増幅をもたらし得るという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づくものである。任意の理論に結び付けられることなく、大きく開いた孔構造は粒子内への量子ドットの容易な装填および孔の壁への適切な非制限的配置を促進することによって、クエンチングを最小化すると考えられることが提案される。
【0069】
したがって1つの態様において、本発明はサンプル中の分析物を検出するための方法を提供し、この方法は前記分析物をナノ粒子と接触させてその結合を促進するステップを含み、ナノ粒子は
(i)コアと、
(ii)前記コアから半径方向に延在する孔と、
(iii)分析物を結合するための結合剤と、
(iv)前記孔内に固定化された検出剤と
を含むことによって、前記分析物を検出する。
【0070】
本明細書において一般的に用いられる「分析物」とは、その存在、量、および/または同一性を検出または決定するべきである分子、典型的には小分子または高分子、たとえばポリヌクレオチドまたはポリペプチドなどを示す。分析物は、ナノ粒子の特定の結合剤によって認識されることによって分析物/ナノ粒子対を形成する。イムノアッセイ法を用いて検出され得る任意の分析物が、本発明の方法を用いて検出され得る。
【0071】
さまざまな実施形態において、分析物は制限なくタンパク質、ポリペプチド、抗体、オリゴヌクレオチド、多糖、無機ホスフェート、ATP、GTP、UTP、CTP、ADP、GDP、cGMP、cAMP、CoA、FAD、FMN、FADP、NADH、NADPH、チオール、グルタチオン、クレアチニン、クレアチン、過酸化水素、活性酸素種、もしくは酸化窒素であるか、またはそれを含む。
【0072】
「ナノ粒子」という用語は、サブミクロンのサイズである粒子を示すことが認識されるだろう。当該技術分野において公知であるとおり、本発明のナノ粒子は、検出剤を装填するための強固で安定した粒子を提供し、かつイムノアッセイの環境において安定である任意の好適な材料または組成物を含んでもよい。
【0073】
一実施形態において、第1および第2の態様のナノ粒子は、たとえば亜鉛、ジルコニウム、シリカ、チタン、スズ、アルミニウム、セリウム、銅、インジウム、マグネシウム、ニッケル、鉄、およびそれらの任意の組み合わせなどの金属またはメタロイドナノ粒子である。好適には、金属またはメタロイドナノ粒子は、金属またはメタロイド酸化物ナノ粒子である。こうした金属およびメタロイドは、それらの公知の酸化物の形の任意の1つまたはそれ以上にて、本発明のナノ粒子内に見出されてもよい。
【0074】
使用され得る例示的な組成物は、シリカ酸化物、たとえば二酸化シリカなど、チタン酸化物、たとえば二酸化チタンなど、アルミニウム酸化物、たとえばアルミナなど、酸化インジウムスズ(ITO:indium tin oxide)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO:fluorine-doped tin oxide)、ジルコニウム酸化物、たとえばジルコニアなど、およびセリウム酸化物、たとえばセリアなど、ならびにそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0075】
好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子はシリカナノ粒子である。「シリカナノ粒子」とは、シリカまたは二酸化ケイ素(すなわちSiO)を含むナノ粒子を示す。これは実質的または完全にシリカで作られたナノ粒子、およびその他の無機(例、金属酸化物)または有機成分を含むシリカナノ粒子を含む。
【0076】
好適には、ナノ粒子のたとえば1つまたは複数の孔などの孔は、実質的に円錐形もしくは円錐形状であるか、または粒子のコアから放射状に広がる樹状スパイクのアレイの間の空間からもたらされる多孔性を実質的に構成する。これに関して、コアから放射状に広がる樹状スパイクのアレイの間の空間によって孔が定められ得ることを当業者は認識するだろう。
【0077】
本明細書において用いられる「円錐形」という用語は、円錐形、円錐台形、または任意のその他の類似した軸対称形を包含することが容易に明らかになるだろう。他の実施形態において、ナノ粒子の1つまたは複数の孔を含む孔は、実質的に円筒形である。加えて、上述の形状の不規則または不完全な形も本発明に包含されることが容易に明らかになるだろう。
【0078】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるナノ粒子はメソポーラスナノ粒子である。メソポーラス材料は典型的に、2nmから50nmの平均孔径または直径(すなわちミクロ細孔およびマクロ孔性材料を定義する孔径の間)を有する天然または合成材料として定義される。
【0079】
孔径は、当該技術分野において公知の任意の手段で測定されてもよい。好ましくは、孔径値は目的のナノ粒子全体にわたって存在する個々の孔径の複合または平均である。この値はたとえば、窒素吸着法および当該技術分野において周知のバレット・ジョイナー・ハレンダ(BJH:Barrett-Joyner-Halenda)モデルの適用によって定められてもよい。
【0080】
したがって、本発明のナノ粒子は約2nmから約50nm、またはそのうちの任意の範囲、たとえば約5nmから約40nm、もしくは約10nmから約30nmなどであるがそれらに限定されない平均孔径を有してもよい。本発明の特定の実施形態において、ナノ粒子は約2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、11nm、12nm、13nm、14nm、15nm、16nm、17nm、18nm、19nm、20nm、21nm、22nm、23nm、24nm、25nm、26nm、27nm、28nm、29nm、30nm、31nm、32nm、33nm、34nm、35nm、36nm、37nm、38nm、39nm、40nm、41nm、42nm、43nm、44nm、45nm、46nm、47nm、48nm、49nm、50nm、またはそのうちの任意の範囲の平均孔径を有する。本発明のある実施形態において、ナノ粒子は約5nmから約50nmの平均孔径を有する。1つの好ましい実施形態において、ナノ粒子は約10nmから約20nmの平均孔径を有する。
【0081】
本明細書に記載されるナノ粒子の前述の孔径および孔の形状に関して、こうした設計は、装填される検出剤が利用できる著しく大きい表面積を提供するだけでなく、多孔性構造への検出剤の容易な装填、および基質分子がこうした検出剤と反応するための容易にアクセス可能な孔チャネルをも提供することが推定される。したがって、本明細書において実証される分析物検出アッセイの顕著な信号増幅は、少なくとも部分的にはこうした孔設計の機能であることが提言される。
【0082】
孔径はある程度、中に固定化される特定の検出剤によって定められてもよいことが当業者に認識されるだろう。たとえば、より大きい検出剤および/または基質は、典型的により大きな孔径を必要とするだろう。加えて、より大きい孔径は、基質による検出剤へのより容易なアクセスを可能にし得る。したがって、ナノ粒子の平均孔径は、中に固定化される特定の検出剤(例、量子ドット、放射性薬剤、西洋ワサビペルオキシダーゼなど)によって変わり得る。
【0083】
シリカナノ粒子を含むナノ粒子は、粒子の平均最長寸法を示す平均粒径がたとえば1000ナノメートル以下、500ナノメートル以下、200ナノメートル以下、100ナノメートル以下、75ナノメートル以下、50ナノメートル以下、40ナノメートル以下、25ナノメートル以下、または20ナノメートル以下などであってもよい。平均粒径はしばしば透過型電子顕微鏡を用いて定められるが、さまざまな光散乱法(例、レーザー回折)も使用され得る。平均粒径とは典型的に、非集塊および/または非凝集の単一ナノ粒子の平均サイズを示す。
【0084】
本発明のナノ粒子は約50nmから約800nm、またはそのうちの任意の範囲、たとえば約60nmから約400nm、または約80nmから約250nmなどであるがそれらに限定されない平均粒径を有してもよい。本発明の特定の実施形態において、ナノ粒子は約50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、160nm、170nm、180nm、190nm、200nm、210nm、220nm、230nm、240nm、250nm、260nm、270nm、280nm、290nm、300nm、310nm、320nm、330nm、340nm、350nm、360nm、370nm、380nm、390nm、400nm、410nm、420nm、430nm、440nm、450nm、460nm、470nm、480nm、490nm、500nm、510nm、520nm、530nm、540nm、550nm、560nm、570nm、580nm、590nm、600nm、610nm、620nm、630nm、640nm、650nm、660nm、670nm、680nm、690nm、700nm、710nm、720nm、730nm、740nm、750nm、760nm、770nm、780nm、790nm、800nm、またはそのうちの任意の範囲の平均粒径を有する。本発明のある実施形態において、ナノ粒子は約50nmから約250nmの平均粒径を有する。
【0085】
粒径に関しては、特定の適用に対してナノ粒子を設計するとき、装填される検出剤の量を最大化するための装填表面の適切なサイズ(すなわち粒径および/または孔径の増加)と、溶液に懸濁されたままで許容できる拡散動態を有する分析物-ナノ粒子複合体を形成するために十分に小さい粒子体積(すなわち粒径の減少)との繊細なバランスを見出す必要があることが当業者に認識されるだろう。したがって、ナノ粒子の平均粒径は、それが使用されようとする特定の適用(例、ELISA、免疫蛍光法など)によって変わり得る。
【0086】
本発明のナノ粒子は、好適には所与の量の分析物の検出において一貫した強度の信号が生じるように高度の単分散度(すなわち実質的に均一な粒径)を示す。信頼性が高い一貫した検出を確実にするために、粒径の分布を狭くすることによって各ナノ粒子に存在する検出剤種の数の均一性の程度を高めて、均一な信号強度を生成することが有利である。
【0087】
好適には、動的光散乱(DLS:dynamic light scattering)によって測定された本発明のナノ粒子の多分散性指数(PDI:polydispersity index)は約0.2以下である。本発明の特定の実施形態において、動的光散乱(DLS)によって測定された本発明のナノ粒子の多分散性指数(PDI)は約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、またはそのうちの任意の範囲である。
【0088】
特定の実施形態において、ナノ粒子は実質的に球形である。「球形」という用語は、表面のすべての点が中心から等距離にある丸い物体を意味することが理解されるだろう。
【0089】
本明細書において一般的に用いられる「結合剤」という用語は、特異的な分子間相互作用を用いて分析物に結合できる分子を示す。たとえば結合剤は、分析物の特定の空間および極性の組成と特異的に結合する、したがってそれと相補的であるドメインまたは窪みを表面上に有してもよい。結合剤の非限定的な例は抗体、受容体、およびリガンドを含んでもよい。
【0090】
実施形態において、結合剤は問題の分析物を結合する抗体または抗体フラグメントである。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体またはそのフラグメントである。
【0091】
本明細書において用いられる「抗体」は免疫グロブリンであるか、またはそれを含む。「免疫グロブリン」という用語は、哺乳動物の免疫グロブリン遺伝子複合体の任意の抗原結合タンパク質産物を含み、それは免疫グロブリンアイソタイプIgA、IgD、IgM、IgG、およびIgE、ならびにそれらの抗原結合フラグメントを含む。「免疫グロブリン」という用語に含まれるのは、天然に発生するかまたはヒトの介入(例、組み換えDNA技術)によって生成される、キメラもしくはヒト化免疫グロブリン、または別様に変更もしくは変異したアミノ酸残基、配列および/もしくはグリコシル化を含む免疫グロブリンである。
【0092】
抗体フラグメントはFabおよびFab’2フラグメント、部分体、二重特異性抗体、および単鎖抗体フラグメント(例、scV)を含むが、それらに限定されない。典型的に、抗体はそれぞれ軽鎖および重鎖可変領域を含み、その各々はCDR1、2および3アミノ酸配列を含む。好ましい抗体フラグメントは、少なくとも1つの軽鎖可変領域CDRおよび/または少なくとも1つの重鎖可変領域CDRを含む。
【0093】
抗体および抗体フラグメントはポリクローナルであってもよいし、好ましくはモノクローナルであってもよい。モノクローナル抗体は、たとえばKoehler & Milstein,1975,Nature 256,495の論文などに記載された標準的な方法を用いて産生されてもよいし、たとえばColigan et al.,CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGYの第2章などに記載されるそのより近年の修正によって、産生種に由来する脾臓またはその他の抗体産生細胞を不死化することによって産生されてもよい。加えて抗体は、適切な宿主細胞において抗体または抗体フラグメントをコードする核酸を発現させることによって、組み換え合成抗体または抗体フラグメントとして産生されてもよいことが認識されるだろう。組み換え合成抗体または抗体フラグメントの重鎖および軽鎖は、同じ宿主細胞において異なる発現ベクターから共発現されてもよいし、宿主細胞において単鎖抗体として発現されてもよい。組み換え抗体の発現および選択技術の非限定的な例は、Coligan et al.,CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGYの第17章、およびZuberbuhler et al.,2009,Protein Engineering,Design & Selection 22 169に提供されている。
【0094】
モノクローナル抗体は比較的大きいサイズおよび親水性の性質を有するため、典型的には本明細書に記載されるナノ粒子の孔内に適合および/または固定化されることはなく、したがって一般的にはその外表面に付着されることが当業者に認識されるだろう。
【0095】
本明細書において用いられる「検出剤」という用語は、たとえば光学(例、蛍光、化学発光、生物発光、比色定量)、電気、磁気、分光学、光化学、放射化学、放射線学、生化学、免疫化学、または化学的な手段など、当該技術分野において公知の多くの検出技術またはテクノロジーの1つによって検出可能であるか、または検出可能な信号もしくは種を生成する任意の分子、化合物、または材料を示す。こうした検出剤は、好適には標識であるか、またはそれを含む。
【0096】
多様な分子、化合物、または材料が検出剤として用いられてもよい。検出剤の非限定的な例は蛍光剤、酵素、補欠分子族、発光剤、化学発光剤、生物発光剤、蛍光発光金属原子(例、ユーロピウム(Eu))、放射性同位元素、高電子密度試薬、およびハプテン(例、ジゴキシゲニン)を含む。
【0097】
非限定的な例示的蛍光検出剤またはフルオロフォアはフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5-ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリトリン、緑色-、青色-、または赤色蛍光タンパク質、量子ドット、ウンベリフェロン、およびジクロロトリアジニルアミンフルオレセインなどを含む。発光検出剤は、たとえばルミノールなどを適切に酸化できる触媒または酵素のいずれか(例、HRP)を含んでもよく、生物発光検出剤はたとえばルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンなどを含んでもよい。
【0098】
特定の実施形態において、検出剤は蛍光剤および/もしくは発光剤であるか、またはそれらを含む。いくつかの特定の実施形態において、発光剤は化学発光剤または生物発光剤である。
【0099】
1つの特に好ましい実施形態において、検出剤は量子ドットであるか、またはそれを含む。量子ドットは一般的に、量子閉じ込め効果に由来する特定の放射特性を有する100nm以下の粒子直径を有する半導体結晶粒子を含むものと理解される。量子ドットは通常、約1nmから約10nmの粒子直径を有し、この粒子直径を変えることによって放射波長が制御されてもよい。
【0100】
好ましくは、複数の量子ドットは約1~約100nmの範囲の平均粒径を有する。ある実施形態において、量子ドットは約1~約20nmの範囲(例、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20nm、またはそのうちの任意の範囲)の平均粒径を有する。ある実施形態において、量子ドットは約1nmから約20nmまたは約1nmから約10nmの範囲の平均粒径を有する。量子ドットは、約150オングストローム(Å)未満の平均直径を有し得る。ある実施形態においては、約12~約150Åの範囲の平均直径を有する量子ドットが特に望ましくてもよい。しかし、量子ドットの組成、構造、および望ましい放射波長によっては、平均直径がこれらの範囲の外側にあってもよい。
【0101】
量子ドットは、球形、ロッド、ディスク、その他の形状、およびさまざまな形状の粒子の混合物を含むがそれらに限定されないさまざまな形状を有し得る。特定の励起供給源による刺激の際に量子ドットから放射される光の所望の波長を達成するように、量子ドットの特定の組成(単数または複数)、構造、および/またはサイズが選択され得る。本質的に、量子ドットはそのサイズを変えることによって可視スペクトル全体にわたる光を放射するように調整されてもよい。量子ドットの狭いF WHMは、飽和した色放射をもたらし得る。
【0102】
量子ドットは、1つまたはそれ以上の半導体材料を含み得る。量子ドットに含まれ得る半導体材料(例、半導体ナノ結晶を含む)の例は、第IV族元素、第II-VI族化合物、第II-V族化合物、第III-VI族化合物、第III-V族化合物、第IV-VI族化合物、第I-III-VI族化合物、第II-IV-VI族化合物、第II-IV-V族化合物、前述の任意のものを含む合金、および/または前述の任意のものを含む混合物、三元および四元混合物または合金を含むが、それらに限定されない。その例の非限定的なリストはZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgS、MgSe、GaAs、GaN、GaP、GaSe、GaSb、HgO、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InN、InP、InSb、AlAs、A1N、A1P、AlSb、TIN、TIP、TIAs、TISb、PbO、PbS、PbSe、PbTe、Ge、Si、前述の任意のものを含む合金、および/または前述の任意のものを含む混合物(三元および四元混合物または合金を含む)を含む。
【0103】
ある実施形態において、量子ドットは1つまたはそれ以上の半導体材料を含むコアと、1つまたはそれ以上の半導体材料を含むシェルとを含んでもよく、シェルはコアの外表面の少なくとも一部分、好ましくはすべての上に配される。コアおよびシェルを含む量子ドットは「コア/シェル」構造とも呼ばれる。
【0104】
シェルは、コアの組成と同じであるかまたは異なる組成を有する半導体材料であり得る。シェルは、コアの表面上の1つまたはそれ以上の半導体材料を含むオーバーコーティングを含み得る。シェルに含まれ得る半導体材料の例は、第IV族元素、第II-VI族化合物、第II-V族化合物、第III-VI族化合物、第III-V族化合物、第IV-VI族化合物、第I-III-VI族化合物、第II-IV-VI族化合物、第II-IV-V族化合物、前述の任意のものを含む合金、および/または前述の任意のものを含む混合物、三元および四元混合物または合金を含むが、それらに限定されない。その例はZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgS、MgSe、GaAs、GaN、GaP、GaSe、GaSb、HgO、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InN、InP、InSb、AlAs、A1N、A1P、AlSb、TIN、TIP、TIAs、TISb、PbO、PbS、PbSe、PbTe、Ge、Si、前述の任意のものを含む合金、および/または前述の任意のものを含む混合物を含むが、それらに限定されない。たとえば、ZnS、ZnSe、またはCdSオーバーコーティングがCdSeまたはCdTe半導体ナノ結晶の上に成長してもよい。
【0105】
コア/シェル量子ドットにおいて、シェルまたはオーバーコーティングは1つまたはそれ以上の層を含んでもよい。オーバーコーティングは、コアの組成と同じであるかまたは異なる、少なくとも1つの半導体材料を含み得る。好ましくは、オーバーコーティングは約1から約10の単層の厚さを有する。オーバーコーティングは、10の単層よりも大きい厚さも有し得る。ある実施形態において、コアの上に2つ以上のオーバーコーティングが含まれ得る。ある実施形態において、周囲の「シェル」材料は、コア材料のバンドギャップよりも大きいバンドギャップを有し得る。あるその他の実施形態において、周囲のシェル材料は、コア材料のバンドギャップよりも小さいバンドギャップを有し得る。
【0106】
ある実施形態において、シェルは、「コア」基体の原子間隔に近い原子間隔を有するように選択され得る。あるその他の実施形態において、シェルおよびコア材料は同じ結晶構造を有し得る。
【0107】
量子ドットを作製する方法は、当該技術分野において公知である。量子ドットを製造する方法の一例は、コロイド成長プロセスである。コロイド成長は、M供与体およびX供与体を高温の配位性溶媒に注入することによって起こる。単分散量子ドットを調製するための好ましい方法の一例は、高温の配位性溶媒に注入された、たとえばジメチルカドミウムなどの有機金属試薬の熱分解を含む。これは個別の核形成を可能にし、巨視的な量の量子ドットの制御された成長をもたらす。この注入は、量子ドットを形成するために制御された方式で成長し得る核を生成する。反応混合物を穏やかに熱することで、量子ドットを成長およびアニールさせ得る。サンプル中の量子ドットの平均サイズおよびサイズ分布は、どちらも成長温度に依存する。平均結晶サイズの増加とともに、安定した成長を維持するための成長温度も増加する。結果として得られる量子ドットは、量子ドットの集団のメンバーである。個別の核形成および制御された成長の結果として、得られる量子ドットの集団は直径の狭い単分散分布を有する。単分散分布の直径は「サイズ」とも呼ばれ得る。
【0108】
QDによる放射の増強またはクエンチングは、QDのサイズの調整、構造の変化、または他の材料の添加によって達成されてもよい。クエンチングは、光効率を上げることを助け得る。効率が高くなるとは、たとえば同じ光源を用いたときに、赤色QDおよび緑色QDからより多くの赤色光または緑色光が生じることを意味する。QDが互いに付着するとき、たとえば赤色QDが緑色QDに付着するとき、その赤色QDは緑色QDによって再励起するかもしれず、それによって赤色光の光効率は増加するかもしれないが、緑色光の光効率は低減するかもしれない。よって、マトリックス中でQDを互いに分離しておくことが望ましい。本明細書に記載されるナノ粒子の孔の配置および孔径が与えられるとき、固定化されたQDが互いに付着する可能性は低くなるため、この配置は光効率を改善し得る。したがって、クエンチングが最小化されて製造コストが低減され得る。
【0109】
本明細書に記載されるナノ粒子に固定化されるQDは、好ましくは所望のピーク放射波長か、または前記ナノ粒子に対して意図される特定の最終用途適用に対して望まれる波長の組み合わせに基づいて選択される。特定の実施形態において、発光する量子ドットのピーク放射波長が、含まれる他の量子ドットのものと異なるとき、各々の量は所望の光出力に基づいて選択される。こうした決定は、関連技術分野の通常の当業者によって容易に行われ得る。
【0110】
加えて検出剤は、検出可能な酵素または検出可能な種の形成を触媒する酵素、たとえばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、およびグルコースオキシダーゼなどであるか、またはそれらを含み得る。こうした酵素は典型的に、自身の基質を転換することによって検出可能な信号を生じることができる。本発明に対しては、適用される特定の基質およびその後そこから生成されるレポーター信号に依存して、酵素はたとえば発光剤(すなわち化学発光剤および/または生物発光剤)などとみなされてもよいことが理解されるだろう。
【0111】
加えて本発明のナノ粒子は、補欠分子族(例、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチン)によって誘導体化され得る。たとえば、ナノ粒子をビオチンによって誘導体化して、アビジンまたはストレプトアビジン結合の間接的な測定によって検出できる。
【0112】
加えて検出剤は、たとえばα-、β-、もしくはγ-エミッタ;またはβ-およびγ-エミッタなどであるがそれらに限定されない放射性同位元素であるか、またはそれらを含んでもよい。こうした放射性同位元素はヨウ素(131Iまたは125I)、イットリウム(90Y)、ルテチウム(177Lu)、アクチニウム(225Ac)、プラセオジム(142Prまたは143Pr)、アスタチン(211At)、レニウム(186Reまたは187Re)、ビスマス(212Biまたは213Bi)、インジウム(111In)、テクネチウム(99mTc)、リン(32P)、ロジウム(188Rh)、硫黄(35S)、炭素(14C)、トリチウム(H)、クロム(51Cr)、塩素(36Cl)、コバルト(57Coまたは58Co)、鉄(59Fe)、セレン(75Se)、およびガリウム(67Ga)を含んでもよいが、それらに限定されない。
【0113】
好適には、本態様の方法は、前記分析物に結合したナノ粒子を検出するステップをさらに含む。分析物を検出し、さらに分析物のレベルを決定、評価、検査、アッセイ、または測定することは、分析物に結合したナノ粒子の特定の検出剤を検出できる当該技術分野において公知の任意の技術によって行われてもよい。
【0114】
たとえば、検出はフローサイトメトリ、ELISA、イムノブロッティング、免疫沈降、インサイツハイブリダイゼーション、免疫組織化学、免疫細胞化学(immuncytochemistry)、共焦点顕微鏡、共焦点スキャナ、比色検出を含んでもよいが、それらに限定されない。好適な技術は、たとえばそれらに限定されないがTissueMicroArray(商標)(TMA)、MSD MultiArrays(商標)およびマルチウェルELISAなどのタンパク質アレイを用いるものなどの、高スループットおよび/または迅速な分析に適合されてもよい。使用されるべき検出方法は、ナノ粒子の結合剤および/または検出剤に少なくとも部分的に依存し得ることが理解されるだろう。
【0115】
好適には、本態様の方法は、検出剤からレポーター信号を生成するステップをさらに含む。ある実施形態において、レポーター信号を生成するステップは、分析物に結合したナノ粒子と検出剤の基質とを接触させることによってそこからのレポーター信号の生成を促進するステップを含む。例として、ナノ粒子が検出可能な酵素によって機能化されているとき、その酵素が用いる基質を加えて検出可能な反応生成物(すなわちレポーター信号)を生成することによって、そのナノ粒子を検出できる。
【0116】
たとえば、検出剤が西洋ワサビペルオキシダーゼであるとき、基質として過酸化水素およびジアミノベンジジンを加えることによって、検出可能な着色された反応生成物またはレポーター信号がもたらされる。HRPに対する付加的な基質は2,2’-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸]-ジアンモニウム塩(ABTS)、o-フェニレンジアミンジヒドロクロリド(OPD:o-phenylenediamine dihydrochloride)、ルミノール、および3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB:tetramethylbenzidine)を含んでもよいが、それらに限定されない。アルカリホスファターゼに対する基質の非限定的な例は、p-ニトロフェニルホスフェート(PNPP:p-Nitrophenyl Phosphate)、5-ブロモ、4-クロロ、3-インドリルホスフェート(BCIP:5-bromo,4-chloro,3-indolylphosphate)、およびニトロブルーテトラゾリウム(NBT:Nitro-Blue Tetrazolium)を含む。β-ガラクトシダーゼに対する基質の非限定的な例は、o-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド(ONPG:o-nitrophenyl-β-D-galactopyranoside)および5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(5-bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-galactopyranoside)(BCIGまたはX-gal)を含む。
【0117】
あるその他の実施形態において、レポーター信号を生成するステップは、検出剤と電磁放射線とを接触させることによってそこからの前記レポーター信号の生成を促進するステップを含む。これに関して、レポーター信号を生成するステップは、たとえば好適な波長の可視光または赤外光などによって検出剤を励起して、検出剤が蛍光を発して次いで検出され得る特定の波長の光を生成するようにするステップを含んでもよい。例として、量子ドットは特定の波長の光によって励起され、次いで蛍光を発し、その際に検出され得る光を放射してもよい。
【0118】
当業者に理解されるであろうとおり、本明細書に記載されるナノ粒子は、必要に応じて最初に当該技術分野において周知のたとえば本明細書に記載されるものなどの表面処理を受けることによって、アンカー基を適用してナノ粒子への検出剤の固定化を促進してもよい。例として、こうした表面処理は、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、ポリエチレングリコール基、ペプチド基、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアンカー基の付加をもたらしてもよい。
【0119】
この方法は、ナノ粒子によって生成されたレポーター信号を検出するステップをさらに含んでもよいことが認識されるだろう。このステップは、たとえば前述されたものなどの当該技術分野において公知の任意の手段によって行われてもよい。
【0120】
特定の実施形態において、サンプルはたとえば患者または対象から採取されたものなどの生物学的サンプルであるか、またはそれを含む。この目的に対する生物学的サンプルは、対象からの組織(例、生検)、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、もしくはその他の体液、または体液のろ液を含んでもよい。一実施形態において、生物学的サンプルは非細胞性供給源であるか、それを含むか、またはそれから得られる。この目的に対する生物学的サンプルは血清、血漿、または脳脊髄液であってもよいが、それに限定されない。
【0121】
いくつかの実施形態において、分析物を検出するための方法は、たとえば対象が特定の疾患、障害、または目的の状態を有するか否かを判定するためなどに用いられてもよいし、たとえば商業的病理学研究所、診療現場、または病院において行われるものなどの「高スループット」診断試験または手順において行われてもよい。さらに、または代替的に、本態様の方法は、たとえば異なるかまたは代替的な診断試験または手順によって最初に検出されたものなどの特定の疾患、障害、または状態の診断を確認するために用いられてもよい。
【0122】
他の実施形態において、サンプルは環境性サンプルであるか、またはそれを含む。本発明のこの特定の実施形態は、たとえば家庭、学校、商業用建築物、および職場などからの屋内サンプル、および/または屋外サンプルの取得を含んでもよい。たとえば、家庭の環境における毒素またはアレルゲンのレベルなどを検出および/またはモニタするために好適なサンプルは、収集された塵であり得る。その他の好適なサンプルは土壌、水、空気、食品、または飲料を含んでもよいが、それに限定されない。
【0123】
別の態様において、本発明は診断および/またはスクリーニングキットを提供し、このキットは
(a)分析物を検出するためのナノ粒子を含み、このナノ粒子は
(i)コアと、
(ii)前記コアから半径方向に延在する孔と、
(iii)分析物を結合するための結合剤と、
(iv)前記孔内に固定化された検出剤とを含み、このキットはさらに
(b)使用のための説明書を含む。
【0124】
この態様のある実施形態は、対象における1つまたはそれ以上の分析物のレベルを検出および/またはモニタするために用いられてもよいことが認識されるだろう。この態様のさらなる実施形態は、環境中の1つまたはそれ以上の分析物の存在の検出および/またはモニタリングに用いられてもよい。
【0125】
この態様のナノ粒子は、前述されたとおりのものであってもよい。好ましくは、ナノ粒子はシリカナノ粒子である。
【0126】
キットは、たとえば当該技術分野において公知の前述された検出剤に対する基質(例、ルミノール、ABTS、またはNBT)などの付加的な診断試薬をさらに含んでもよい。結合剤および/または検出剤も、前述されたとおりのものであってもよい。
【0127】
好適には、本態様のキットは前の態様の方法において用いるためのものである。
【0128】
さらなる態様において、本発明はアンカー基を示すナノ粒子を生成するための方法を提供し、この方法は
(i)金属またはメタロイド供給源を提供するステップと、
(ii)液体環境において、金属またはメタロイド供給源を塩基および任意には界面活性剤と接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)の生成物をアンカー基を示す化合物と接触させるステップと
を含むことによって、アンカー基を示すナノ粒子を生成する。
【0129】
好ましくは、ナノ粒子は前述されたものから選択されるため、それに従って金属またはメタロイド供給源が選択される。
【0130】
一実施形態において、金属またはメタロイド供給源はシリカであり、アンカー基を示す化合物はアンカー基を示すシリケートである。
【0131】
一実施形態において、この方法はさらに、残った界面活性剤テンプレートを除去するために、アンカー基を示すナノ粒子を処理するステップを含む。
【0132】
一実施形態において、金属またはメタロイド供給源は液体環境において界面活性剤と接触する。代替的実施形態において、金属またはメタロイド供給源は液体環境において界面活性剤と接触しない。
【0133】
界面活性剤の除去は、酸処理によるものであってもよい。
【0134】
一実施形態において、金属またはメタロイド供給源は液体環境においてアルコールとさらに接触する。
【0135】
好適には、アンカー基はチオール、アミン、カルボキシル基、ポリエチレングリコール基、炭素鎖、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。好ましくは、アンカー基はチオールである。これに関して、アンカー基を示すシリケートは好適にはチオール含有アルコキシシラン、たとえばMPTMS(3-メルカプトプロピル)-トリメトキシシラン((3-mercaptopropyl)-trimethoxysilane)およびMPDMS(3-メルカプトプロピル)-メチル-ジメトキシシラン((3-mercaptopropyl)-methyl-dimethoxysilane)などである。
【0136】
一実施形態においては、当該技術分野において周知であるとおり、界面活性剤は四級アンモニウム界面活性剤であってもよい。1つの好ましい実施形態において、界面活性剤はアルキルトリメチルアンモニウムブロミド、たとえばセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB:cetyl trimethylammonium bromide)などであるか、またはそれを含む。
【0137】
供給源がシリカ供給源である実施形態において、供給源は当該技術分野において公知の任意の加水分解性シリカ供給源であってもよい。好ましい実施形態において、加水分解性シリカ供給源は、たとえばTEOSおよびTMOSなどのアルキルオルトシリケートであるか、またはそれを含む。
【0138】
好適には、この態様のシリカナノ粒子は前述されたものである。
【0139】
一実施形態においては、アンカー基が導入される前にある程度のシリカナノ粒子を形成させるために、ステップ(ii)と(iii)との間に少なくとも5分間(例、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、60分、65分、70分、75分、80分、85分、90分、およびそのうちの任意の範囲)の遅延期間が提供される。驚くべきことに、塩基、界面活性剤、および金属またはメタロイド供給源が組み合わされるステップと、アンカー基を示す化合物が導入されるステップとの間に5分間以上の遅延を導入することによって、結果として得られるナノ粒子のより高いチオール含有量を達成できることが見出された。理論に結び付けられることは望まないが、アンカー基化合物の導入の遅延によって、アンカー基がまったく取り込まれることなくナノ粒子の形成が最初にある程度進行することが可能になるために、アンカー基がより多く内面化してより多くの割合の基が表面において利用できなくなり得るときとは反対に、その後のアンカー基化合物の導入によってもたらされるアンカー基が粒子の孔の表面上またはその近くに集中すると考えられる。アンカー基がチオール基である場合、ナノ粒子の1~10重量%の範囲の、CHNS元素分析によって測定される硫黄含有量が達成されてもよい。
【0140】
1つの態様において、本発明は基体の中および/または上に分散されたナノ粒子を含む組成物を提供し、ナノ粒子は
(i)コアと、
(ii)前記コアから半径方向に延在する孔と、
(iii)前記孔内に固定化された複数の量子ドットとを含む。
本態様の量子ドットは、前述されたとおりのものであってもよいことが認識されるだろう。
【0141】
好適には、この態様のナノ粒子は、前述されたとおりのものである。好ましくは、ナノ粒子はシリカナノ粒子である。
【0142】
本明細書に記載されるナノ粒子の前述の孔径および孔の形状に関して、こうした設計は、装填されるQDが利用できる著しく大きい表面積を提供するだけでなく、多孔性構造へのQDの容易な装填をも提供することが推定される。したがって、電子ディスプレイにおける顕著な信号増幅は、少なくとも部分的にはこうした孔設計の機能であり得ることが提言される。
【0143】
孔径はある程度、中に固定化される必要数および/または特定のQDによって定められてもよいことが当業者には明らかであろう。たとえば、より多数のQDおよび/またはより大きなQDは、典型的により大きな孔径を必要とするだろう。したがって、ナノ粒子の平均孔径は、中に固定化される特定のQDによって変わり得る。
【0144】
粒径に関しては、特定の適用に対してナノ粒子を設計するとき、装填されるQDの量を最大化するための装填表面の適切なサイズ(すなわち粒径および/または孔径の増加)と、許容できる寸法の光学またはディスプレイの層または容器に取り込まれるように十分に小さい粒子体積(すなわち粒径の減少)との繊細なバランスを見出す必要があることが当業者に認識されるだろう。したがって、ナノ粒子の平均粒径は、それが使用されようとする特定の適用(例、LCD、太陽電池、LEDなど)によって変わり得る。
【0145】
いくつかの実施形態において、本発明のナノ粒子は、好適には自身に固定化されたQDによって一貫した強度の信号(すなわち放射光)が生じるように高度の単分散度(すなわち実質的に均一な粒径)を示す。QD含有ナノ粒子による信頼性が高い一貫した放射を確実にするために、粒径の分布を狭くすることによって各ナノ粒子に存在するQDの数の均一性の程度を高めて、均一な信号強度を生成することが有利である。この目的に対する本態様のナノ粒子の多分散性指数(PDI)は、前述されたとおりであってもよい。
【0146】
本発明の組成物に含まれる量子ドット含有ナノ粒子の総量は、好ましくは約0.01~約25重量パーセントの範囲(例、約0.01、0.05、0.1、0.25、0.5、0.75、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、11.0、12.0、13.0、14.0、15.0、16.0、17.0、18.0、19.0、20.0、21.0、22.0、23.0、24.0、25重量パーセント)、およびその間の任意の重量パーセントである。たとえば、約0.05重量パーセントから約15重量パーセント、または約0.05重量パーセントから約5重量パーセントの範囲の量がさまざまな適用に対して望ましくなり得る。こうした量は、限定することは意図されない。こうした範囲の外側の量も有用であると判定されてもよい。組成物に含まれる量子ドット含有ナノ粒子の量は、特定の最終適用に基づいて変わり得る。
【0147】
特定の実施形態において、組成物は、たとえば当該技術分野において公知の散乱体、チキソトロープ、および放射安定剤の1つまたはそれ以上などを含むがそれらに限定されない、1つまたはそれ以上の付加的な構成要素または薬剤をさらに含み得る。
【0148】
全体にわたって用いられる「分散された」とは、基体の中および/または上におけるQD含有ナノ粒子の均一(すなわち実質的に均質)および不均一(すなわち実質的に不均質)な分布または配置を含む。加えて、本明細書に記載されるQD含有ナノ粒子は任意の好適な方法を用いて、たとえばマトリックス材料などの基体の中および/または上に分散されてもよく、その方法とはたとえば、QD含有ナノ粒子をポリマー中に混合してフィルムを鋳造すること;QD含有ナノ粒子をモノマーと混合してそれらを一緒に重合すること;QD含有ナノ粒子をゾルゲル中に混合すること、または当業者に公知の任意のその他の方法などである。特定の実施形態において、QD含有ナノ粒子は基体内に封入または内包される。なお、QD含有ナノ粒子は好適には組成物全体に均一に分布するが、さらなる実施形態において、それらは適用に対して特定的な均一性分布関数に従って分布し得る。加えて、QD含有ナノ粒子は単層または複数の層(例、2、3、4、5、6、7、8、9、10...99、100など)のいずれの厚さの層内に配置されてもよい。
【0149】
本明細書に記載される組成物は任意の望ましいサイズ、形状、構成、および厚さであり得る。たとえば、組成物は層の形であってもよいし、たとえばディスク、球形、立方体、ブロック、およびチューブ状の構成などのその他の形状であってもよい。さまざまな組成物は必要または所望の任意の厚さであり得るが、好適には組成物は約100mmのオーダーの厚さ(すなわち1つの寸法)であり、約1mm未満の厚さまで下がり、さらには組成物に含まれる特定のナノ粒子の直径のオーダーの厚さまで下がる。他の実施形態において、組成物はたとえば数十から数百ミクロンなどのオーダーの厚さのフィルムの形であり得る。
【0150】
本明細書に記載されるナノ粒子に固定化されるQDは、好ましくは所望のピーク放射波長か、または前記ナノ粒子に対して意図される特定の最終用途適用に対して望まれる波長の組み合わせに基づいて選択される。QDは上述されたとおりのものであってもよい。
【0151】
特定の実施形態において、発光する量子ドットのピーク放射波長が、含まれる他の量子ドットのものと異なるとき、各々の量は所望の光出力に基づいて選択される。こうした決定は、関連技術分野の通常の当業者によって容易に行われ得る。たとえば、組成物において用いられる異なるピーク放射を有する量子ドットの比率は、使用される量子ドットの放射ピークによって定められる。たとえば、約514nmから約540nmの範囲および重複するか否かにかかわらずその間の任意の波長のピーク中央波長を有する緑色光を放射できる量子ドットと、約615nmから約640nmの範囲および重複するか否かにかかわらずその間の任意の波長のピーク中央波長を有する赤色光を放射できる量子ドットとが組成物に用いられるとき、緑色放射量子ドットの重量パーセント対赤色放射量子ドットの重量パーセントの比率は約12:1から約1:1(例、約12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1)の範囲および重複するか否かにかかわらずその間の任意の比率であり得る。
【0152】
本発明のある実施形態においては、複数の量子ドットが赤色光に特有の波長において発光する。ある好ましい実施形態において、赤色光を放射できる量子ドットは、約615nmから約635nmの範囲および重複するか否かにかかわらずその間の任意の波長のピーク中央波長を有する光を放射する。たとえば、量子ドットはたとえば約630nm、約625nm、約620nm、および/または約615nmなどのピーク中央波長を有する赤色光を放射できてもよい。
【0153】
本発明のある実施形態においては、複数の量子ドットが緑色光に特有の波長において発光する。ある好ましい実施形態において、緑色光を放射できる量子ドットは、約520nmから約545nmの範囲および重複するか否かにかかわらずその間の任意の波長のピーク中央波長を有する光を放射する。たとえば、量子ドットはたとえば約520nm、約525nm、約535nm、および/または約540nmなどのピーク中央波長を有する緑色光を放射できてもよい。
【0154】
全体にわたって用いられる複数のQDとは、2つ以上のQD(すなわち2、3、4、5、10、100、1,000、1,000,000などのQD)を意味する。組成物は、好適には同じ組成を有するQDを含むナノ粒子を含むことになるが、さらなる実施形態において、複数のQDはさまざまな異なる組成であり得る。たとえばQDはすべて同じ波長で放射してもよいし、さらなる実施形態において、組成物は異なる波長で放射するQDを有するナノ粒子を含み得る。
【0155】
したがって一実施形態において、ナノ粒子は、青色光源による励起の際に赤色光を放射できる少なくとも1つの集団のQDと、緑色光を放射できる少なくとも1つの集団のQDとを含む複数の量子ドットを含む。必要とされる光学性能を満たすように、発光ナノ結晶波長および濃度が調整され得る。
【0156】
本明細書において用いられる可視光とは、ヒトの眼に見える約380~約780ナノメートルの波長を有する電磁放射線である。可視光は、たとえば赤色、橙色、黄色、緑色、青色、藍色、および青紫色など、スペクトルのさまざまな色に分離され得る。本明細書において用いられる青色光は約435nmから約500nmの波長の光を含み、緑色光は約520amから565nmの光を含み、赤色光は約625nmから約740nmの光を含む。
【0157】
基体は、当該技術分野において公知の任意の好適な材料であってもよい。好ましくは、基体は光源からの光を通過させる(すなわち、実質的に半透明または実質的に透過性である)。たとえば、ある実施形態において、基体は量子ドットによって色変換される光に対して好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%透過性である。ある実施形態において、基体は量子ドットによって放射される光に対して好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%透過性である。特定の実施形態において、基体は予め定められた範囲内の波長の光に対して透過性の材料を含む。
【0158】
本明細書に記載される本発明のさまざまな実施形態および態様において有用である基体の非限定的な例は、ポリマー、モノマー、樹脂、結合剤、ガラス、金属酸化物、およびその他の非ポリマー材料を含む。
【0159】
好ましい基体は、可視光および非可視光の予め選択された波長およびその範囲を含む波長に対して少なくとも部分的に透過性であり、好ましくは完全に透過性であるポリマーおよび非ポリマー材料を含む。ある実施形態において、予め選択された波長は、電磁スペクトルの可視(例、400~700nm)、紫外(例、10~400nm)、および/または赤外(例、700nm~12μm)領域の光の波長を含み得る。好ましい基体の例はガラスまたは透過性樹脂を含むが、それに限定されない。特にたとえば非硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、または光硬化性樹脂などの樹脂が加工性の観点から好適に用いられる。こうした樹脂の特定の例は、オリゴマーまたはポリマーのいずれかの形のメラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ポリメチルメタクリラート、ポリアクリラート、ポリカルボナート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびこれらの樹脂を形成するモノマーを含有するコポリマーなどである。
【0160】
特定の実施形態において、基体はたとえばポリマーマトリックスなどのマトリックス材料であるか、またはそれを含む。この目的に対する好適なポリマーは、ポリマー材料、有機および無機酸化物を含む、こうした目的に用いられ得る通常の当業者に公知の任意のポリマーを含む。例として、マトリックス材料はポリマー、たとえばポリアクリラート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリビニル、ポリ-ジアセチレン、ポリフェニレン-ビニレン、ポリペプチド、多糖、ポリスルホン、ポリピロール、ポリイミダゾール、ポリチオフェン、ポリエーテル、エポキシ、シリカガラス、シリカゲル、シロキサン、ポリホスフェート、ヒドロゲル、アガロース、およびセルロースなどであってもよい。
【0161】
ある実施形態において、基体は柔軟である。代替的に、基体は剛性であってもよい。
【0162】
本明細書に記載される組成物は層、カプセル材料、コーティング、シート、またはフィルムであり得る。本明細書に記載される実施形態において、層、ポリマー層、マトリックス、シート、またはフィルムに言及するとき、これらの用語は交換可能に用いられており、記載される実施形態は任意の1つのタイプの組成物に限定されず、本明細書に記載されるかまたは当該技術分野において公知の任意の基体または層を包含することが理解されるべきである。
【0163】
当業者に理解されるであろうとおり、本明細書に記載されるナノ粒子は、必要に応じて最初に当該技術分野において周知の表面処理を受けることによって、アンカー基を適用してナノ粒子へのQDの固定化を促進してもよい。例として、こうした表面処理は、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、ポリエチレングリコール基、ペプチド基、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアンカー基の付加をもたらしてもよい。
【0164】
ある実施形態において、量子ドット含有層は、2つまたはそれ以上の基体(たとえば第1の基体および第2の基体など)の間に封止され得る。これに関して好ましい基体の例は、ガラス、ポリカルボナート、アクリル、石英、サファイア、ポリマー材料、たとえばプラスチックまたはシリコーンなど(例、薄いアクリル、エポキシ、ポリカルボナート、PEN、PET、PEだがそれらに限定されない)を含む。
【0165】
他の実施形態において、組成物は、片方または両方の端部が開いていてもよいチューブ様構造部材(例、チューブ、中空毛細管、中空繊維など)の中空の容器または空洞部分に含まれ得る。好ましくは、部材の開放端部(単数または複数)は、部材の中に組成物が含まれた後に気密封止される。封止技術の例は(1)チューブの開放端部にエポキシを接触させること、(2)硬化樹脂の収縮作用によってエポキシを開放端部に引き込むこと、または(3)たとえばガラス接着はんだなどのガラス接着金属もしくはその他のガラス接着材料によって開放端部を覆うこと、(4)高温接着剤、および(5)ガラスの融点よりも高温にガラスを熱することによって開放端部を融解し、壁をつまみ合わせて開口部を閉じて溶融ガラス気密封止を形成することを含むが、それらに限定されない。
【0166】
別の態様において、本発明はディスプレイデバイスを提供し、このディスプレイデバイスは
(i)光源と、
(ii)前述された組成物を含み、かつ光源に光学的に結合された発光層と、
(iii)ディスプレイとを含む。
【0167】
一実施形態において、光源は、たとえば青色LEDなどの青色光源であるか、またはそれを含む。
【0168】
一実施形態において、組成物はフィルムであるか、またはそれを含む。別の実施形態において、組成物は実質的に透過性の容器内に封止される。好ましくは、実質的に透過性の容器は、たとえば上に提供されたものなどの可視光および非可視光の予め選択された波長およびその範囲を含む波長に対して実質的に透過性である。
【0169】
一実施形態において、ディスプレイは液晶モジュールであるか、またはそれを含む。
【0170】
本明細書において用いられる「光学的に結合される」とは、1つの構成要素から別の構成要素に光が実質的な干渉なしに通過できるように構成要素(例、光源および発光層)が位置決めされることを意味する。
【0171】
ある実施形態において、本明細書に記載されるディスプレイデバイスは、好適にはたとえばLEDに基づくディスプレイデバイスなどに従来より見出される1つまたはそれ以上の付加的な構成要素を含む。こうした構成要素は光ガイドプレート、ディフューザ、水平輝度増強フィルム(BEF:brightness enhancement film)、鉛直BEF、および反射体の1つまたはそれ以上を含むが、それらに限定されない。好適には、これらの構成要素の方向付け、製造およびディスプレイシステムへの組み込みは、当該技術分野において周知である。
【0172】
本明細書では実施形態において、任意の数の適用において好適に使用されるさまざまなディスプレイデバイスが提供される。本明細書において用いられる「ディスプレイデバイス」とは、ディスプレイ上でのデータなどの可視表現を可能にする構成要素の配置を示す。好適なディスプレイは、ユーザに視覚的に情報を表示するためのさまざまな平面、曲面、または別様の形状のスクリーン、フィルム、シート、またはその他の構造を含む。本明細書に記載されるディスプレイデバイスは、たとえば液晶ディスプレイ(LCD)、テレビ、コンピュータ、携帯電話、スマートフォン、パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA:personal digital assistants)、ゲーミングデバイス、電子読取りデバイス、およびデジタルカメラなどを包含するデバイスなどに含まれ得る。
【0173】
図10に、本発明のディスプレイデバイス200の例示的実施形態が示される。ディスプレイデバイス200は光源202と、光ガイドパネル(LGP:light guide panel)204と、本明細書に記載される組成物を含む発光層206と、LCDパネル216とを含む。QD増強ディスプレイ200は、任意にはプリズム212および2倍輝度増強フィルム(DBEF:double brightness enhanced film)214をも含んでもよい。光源202は、青色発光ダイオード(LED)または青色窒化ガリウム(GaN)LEDであってもよい。
【0174】
均一な照明を生成するために、光源202からの青色光は最初に、一連の不均一に間隔を置かれた隆起または光抽出機構224と、光抽出機構224の後ろの反射体218とを含み得るLGP204を通過する。青色光220によって示されるとおり、LGP204は一連の不均一に間隔を置かれた隆起または光抽出機構224を通じて青色光を拡散させる。隆起または光抽出機構の密度は、光源202から離れると増加する。LGP204の前面はLCDパネル216に面しており、LGP204の背部は反射体218を有し、反射体218は別様には無駄になる光をLCDパネル216に向けて戻すように誘導する。一実施例において、反射体218はたとえば白色ポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)などの高反射性材料でできていてもよく、一実施形態においては自身の表面に衝突するすべての光の約97%を反射する。
【0175】
加えてLCDパネル216は、当該技術分野において公知の従来のLCDパネルと同様に、サブピクセルにて配置された色フィルタと、前部偏光子と、後部偏光子と、液晶と、電極とを含む。一般的に、LCDパネル216とDBEF214との間には空気の空間がある。
【0176】
一般的に、発光層206は、発光層206から白色光222が出るように光源202からの青色光220の一部を伝達するように構成される。発光層206は、LEDからの青色光220を量子ドットを通じて赤色光および緑色光に能動的に変換する赤色量子ドット(QD)208Aおよび緑色QD208Bのグループを含む。QD208Aおよび208Bが光源202からの青色光によって照射されるとき、青色光はQD208Aおよび208Bの光ルミネセンスを起こすことによって二次的な光を生じる。二次的な光の色は一般的に、QD208Aおよび208Bのサイズ、サイズ分布および組成の関数である。
【0177】
図10に示されるとおり、発光層206はさらに、中にQD208Aおよび208Bが配された基体を含む。基体は光源202からの光を通過させる。
【0178】
QD増強ディスプレイの構成は変わり得ることが当業者に認識されるだろう。たとえば、いくつかの実施形態における直接照明構成を含むその他の照明構成が用いられてもよい。代替的実施形態においては、プリズム212が除去されるか、またはさらなる輝度増強構成要素に置き換えられてもよい。別の実施形態においては、DBEF214が除去されてもよい。
【0179】
さらに別の態様において、本発明は発光ダイオードデバイスを提供し、この発光ダイオードデバイスは
(i)陰極と、
(ii)陰極の上の電子輸送層と、
(iii)電子輸送層の上に形成された発光層であって、この発光層は前述された組成物を含む、発光層と、
(iv)発光層の上の正孔輸送層と、
(v)正孔輸送層の上に形成された陽極とを含む。
【0180】
発光ダイオード(LED)デバイスは半導体発光構成要素であることが認識されるだろう。フィラメントを熱するために印加される高電流によって明るくなる従来の白熱電球と異なり、LEDは同等の光を放射するために低電流しか必要としない。LEDは、半導体材料において電子が正孔と結合するときに、放出されるエネルギが放射光の形で現れるという事実に基づくものである。たとえば小さい体積、長寿命、低駆動電圧、低電力消費、迅速な応答、優れた耐衝撃性、および良好な単色性などの利益を有するため、LEDはたとえばさまざまな電気器具などの発光構成要素に広く用いられる。
【0181】
特定の実施形態において、本発明のQD含有ナノ粒子を含む発光層は、単一波長(例、青色)の光を放射する。代替的実施形態において、発光層は2つまたはそれ以上の波長の光(すなわち第1の光、第2の光など)を放射する。1つの好ましい実施形態において、発光層は同じ区域において3つの異なる波長(例、赤色、青色、および緑色)の光(すなわち第1の光、第2の光、および第3の光)を放射する。したがって、光を混合するために個別のLEDを使用する従来の光源と比較して、このLEDは典型的により良好な色レンダリング指数を示す。
【0182】
さらに別の態様において、本発明は太陽電池を提供し、この太陽電池は
(i)電子伝導体層と、
(ii)前述された組成物を含み、かつ電子伝導体層に結合された電子放出層とを含む。
【0183】
太陽電池に関して、太陽電池は理想的には入射太陽光またはエネルギをできる限り多く収集または捕捉して、その後それを電子に変換できることが当業者に理解されるだろう。このことに関して、本明細書に記載されるQD含有ナノ粒子は、入射光子を高効率で捕捉するための細かい網のように作用する、入射光に対するQDの密な3Dアレイを本質的に提供し、その後生じた電子を電子伝導体層に伝達するように構成され得ることが明らかであろう。
【0184】
好ましい実施形態において、本発明のQD含有ナノ粒子を含む電子放出層は、2つまたはそれ以上の波長の光を吸収するように適合される。1つの特に好ましい実施形態において、電子放出層は実質的に電磁スペクトル全体にわたる光(例、第1の光、第2の光、第3の光など)を吸収するように適合される。
【0185】
したがって、電子放出層は好ましくは2つまたはそれ以上のグループ(すなわち2、3、4、5など)の量子ドットを含有し、各グループの量子ドットは電磁スペクトルの一部分の光を吸収するように適合される。例として、電子放出層は第1のグループの量子ドットと第2のグループの量子ドットとを含み、第1のグループの量子ドットは電磁スペクトルの第1の部分の光を吸収するように適合され、第2のグループの量子ドットは電磁スペクトルの第2の部分の光を吸収するように適合されてもよい。
【0186】
当該技術分野において周知であるとおり、電子伝導体層は、QD太陽電池モジュールまたは構成要素の製造に典型的に用いられる1つまたはそれ以上の好適な伝導材料を含んでもよいことが当業者には明らかであろう。
【0187】
関連する態様において、本発明は発光するための方法を提供し、前記方法は
(i)前述された組成物を含む発光層を提供するステップと、
(ii)発光層内の量子ドットの1つまたはそれ以上による吸収が可能な周波数の電磁放射線によって発光層を励起するステップと
を含むことによって発光する。
【0188】
一実施形態において、本態様の方法は、ディスプレイによって放射光を受取るステップをさらに含む。
【0189】
特定の実施形態において、発光層は、たとえばLCDディスプレイなどのディスプレイデバイスの構成要素部分である。他の実施形態において、発光層は、たとえば青色LEDなどのLEDの構成要素部分である。
【0190】
さらなる態様において、本発明は電子を放出するための方法を提供し、前記方法は
(i)前述された組成物を含む電子放出層を提供するステップと、
(ii)電子放出層内の量子ドットの1つまたはそれ以上による吸収のために好適な周波数の電磁放射線によって電子放出層を励起するステップと
を含むことによって電子を放出する。
【0191】
一実施形態において、本態様の方法は、太陽電池の電子伝導体層によって放出電子を受取るステップをさらに含む。したがって特定の実施形態において、電子放出層は太陽電池の構成要素部分である。
【0192】
さらなる態様において、本発明は固定化された複数の量子ドットを有するナノ粒子を生成するための方法を提供し、この方法は
(i)金属またはメタロイド供給源を提供するステップと、
(ii)液体環境において、金属またはメタロイド供給源を塩基および任意には界面活性剤と接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)の生成物をアンカー基を示す化合物と接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)の生成物を前記量子ドットと接触させるステップと
を含むことによって、固定化された複数の量子ドットを有するナノ粒子を生成する。
【0193】
好ましくは、ナノ粒子は前述されたものから選択されるため、それに従って金属またはメタロイド供給源が選択される。同様に、複数の量子ドットは好適には上述のとおりである。
【0194】
一実施形態において、金属またはメタロイド供給源はシリカの供給源であり、アンカー基を示す化合物はアンカー基を示すシリケートである。
【0195】
一実施形態において、この方法はさらに、残った界面活性剤テンプレートを除去するために、アンカー基を示すナノ粒子を処理するステップを含む。
【0196】
界面活性剤の除去は、酸処理によるものであってもよい。
【0197】
一実施形態において、金属またはメタロイド供給源は液体環境においてアルコールとさらに接触する。
【0198】
好適には、アンカー基はチオール、アミン、カルボキシル基、ポリエチレングリコール基、炭素鎖、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。好ましくは、アンカー基はチオールである。これに関して、アンカー基を示すシリケートは好適にはチオール含有アルコキシシラン、たとえばMPTMS(3-メルカプトプロピル)-トリメトキシシラン((3-mercaptopropyl)-trimethoxysilane)およびMPDMS(3-メルカプトプロピル)-メチル-ジメトキシシラン((3-mercaptopropyl)-methyl-dimethoxysilane)などである。
【0199】
一実施形態においては、アンカー基が導入される前にある程度のシリカナノ粒子を形成させるために、ステップ(ii)と(iii)との間に少なくとも5分間(例、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、60分、65分、70分、75分、80分、85分、90分、およびそのうちの任意の範囲)の遅延期間が提供される。前述のとおり、驚くべきことに、塩基、界面活性剤、および金属またはメタロイド供給源が組み合わされるステップと、アンカー基を示す化合物が導入されるステップとの間に5分間以上の遅延を導入することによって、結果として得られるナノ粒子のより高いチオール含有量を達成できることが見出された。したがって、本方法は好ましくはこの方式で行われる。
【0200】
一実施形態において、金属またはメタロイド供給源は液体環境において界面活性剤と接触する。代替的実施形態において、金属またはメタロイド供給源は液体環境において界面活性剤と接触しない。
【0201】
一実施形態においては、当該技術分野において周知であるとおり、界面活性剤は四級アンモニウム界面活性剤であってもよい。1つの好ましい実施形態において、界面活性剤はアルキルトリメチルアンモニウムブロミド、たとえばC16TABなどであるか、またはそれを含む。
【0202】
供給源がシリカ供給源である実施形態において、供給源は当該技術分野において公知の任意の加水分解性シリカ供給源であってもよい。好ましい実施形態において、加水分解性シリカ供給源は、たとえばTEOSおよびTMOSなどのアルキルオルトシリケートであるか、またはそれを含む。
【0203】
ある実施形態において、この方法は、前述したものなどの基体の中および/または上にステップ(iv)の生成物を分散させるステップをさらに含む。
【0204】
好適には、この態様のシリカナノ粒子は前述されたものである。
【0205】
明細書全体を通じた目的は、本発明を任意の1つの実施形態または特徴の特定の集合に限定することなく、本発明の好ましい実施形態を説明することであった。したがってこの開示に照らして、本発明の範囲から逸脱することなく、例示された特定の実施形態にさまざまな修正および変更が行われ得ることが当業者に認識されるだろう。
【0206】
本明細書において言及されるすべてのコンピュータプログラム、アルゴリズム、特許、および科学文献は、本明細書において引用により援用される。
【0207】
この明細書において引用される出版物に対するあらゆる言及は、その開示がオーストラリアにおける一般常識を構成することを容認するものではない。
【0208】
本発明がより容易に理解されて実現され得るようにするために、これから本発明の1つまたはそれ以上の好ましい実施形態を単なる例として説明する。
【実施例
【0209】
実施例1
この実施例においては、注意深く設計したメソポーラスシリカナノ粒子(DMSN)の使用を通じた、信号増幅による2000倍の感度増強を有する高感度ELISA(ELISA+)の開発について示す。容易にアクセス可能な樹状孔チャネルを有するDMSN(図1を参照)を酵素装填マトリックスとして適用して、次の利点を伴って超低濃度インスリンを検出した。(1)HRPを装填するために大きい表面積(484m-1)、大きい孔体積(1.39cm-1)、および大きい孔径(14.5nm)を有するDMSNを使用することによって、超高度の酵素装填を達成する。(2)大きく開いた樹状チャネルは、基質分子が酵素と反応するための容易にアクセス可能な空間を可能にし、これが超高活性をもたらす。(3)超高度のHRP装填および容易にアクセス可能な孔チャネルによって、試験した市販のELISAキットと比較して血清中のインスリン検出感度の2000倍の増強を達成する。
【0210】
材料および方法
化学物質
セチルメチルアンモニウムクロリド(CTAC:Cetyltrimethylammonium chloride)溶液(25wt%HO溶液)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS:tetraethylorthosilicate)、トリエタノールアミン(TEA:triethanolamine)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES:3-aminopropyltriethoxysilane)、リン酸緩衝食塩水(PBS:phosphate buffered saline)、グルタルアルデヒド(50wt%HO溶液)、シクロヘキサン、クロロベンゼン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、およびトルエンをシグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)より購入した。モルモットポリクローナル対インスリン(二次抗体)をアブカム・オーストラリア社(Abcam Australia Pty Ltd.)に発注した。ヒトインスリンELISAキットをライフテクノロジーズ(Life Technologies)(オーストラリア Pty Ltd)より購入した。すべての化学物質を受取った状態のまま精製せずに用いた。すべての実験に用いた脱イオン(Deionized)水(DI水)(18.2mVcm)は、Milli-Qシステム(ミリポア(Millipore)、ベッドフォード(Bedford)、MA)から得た。
【0211】
材料合成
DMSN-1[15]の合成:100mLの丸底フラスコ内で、24mLのCTAC溶液(25wt%)と、0.18gのTEAと、36mLの水とを混合し、60℃にて1h撹拌した。次いで4mLのTEOSと、16mLのシクロヘキサン(20v/v%)とを混合して、溶液に加えた。溶液を150rpm(12h)の撹拌速度の下で60℃に保った。550℃にて5hの焼成後に生成物を得た。
【0212】
DMSN-2および3[16]の合成:典型的な合成においては、4.8mL CTAC(25%水溶液)と、0.04g TEAと、7.2mL Milli-Q水とを混合して水相を形成し、60℃にて1h撹拌した。次いで、4mLの予備混合した油相(3.5mLクロロベンゼンおよび0.5mL TEOSを含有する)を水相の底部に加えた。MSN-2およびMSN-3それぞれの合成に対して、混合物を150RPM(12h)および500RPM(12h)の撹拌速度の下で60℃にて撹拌した。固体サンプルを15 000RPMにて15分間遠心分離し、エタノールで3回洗浄した。最終ステップにおいて、550℃にて5hの焼成後に生成物を得た。
【0213】
材料の特徴付け
77KにおけるMicromeritics Tristar II 3020システムによって、サンプルの窒素吸着等温線を得た。測定前に、未修飾/アミノ修飾サンプルを真空中で100/80℃にて少なくとも8h脱気した。DMSN-2および3に対するバレット・ジョイナー・ハレンダ(BJH)法と、DMSN-1[15]に対する密度関数理論(DFT:density functional theory)法とによって、孔径分布を算出した。典型的なブルナウアー-エメット-テラー(BET:Brunauer-Emmett-Teller)法を用いることによって、総孔体積および表面積を算出した。炭素フィルムで覆ったCuグリッド上にサンプルを分散させることによって、100kVにて動作するJEOL 1010顕微鏡によってTEM画像を直接取った。ジェントルビームモードを用いて1kVにて動作するJEOL JSM 7800電界放出走査型電子顕微鏡(FE-SEM:field-emission scanning electron microscope)を用いて、SEM画像を得た。サンプルをエタノール中に分散させ、次いでアルミニウム箔片に落とし、伝導性炭素テープに付着させた。次に、サンプルを真空中で60℃にて12時間乾燥した。マルバーン・インスツルメンツ(Malvern Instruments)からのZetasizer Nano-ZSを用いて、25℃にてζ電位測定を行った。島津(Shimadzu)UV-2450ダブルビーム分光光度計によって、UV-vis透過スペクトルを測定した。HRPおよび抗インスリンの吸光度は、それぞれ401nmおよび278nmにおけるものである。
【0214】
DMSNのアミノ修飾
1gのDMSNを30mLのAPTES(4mmol)トルエン溶液に分散させて、110℃にて18h還流した。生成物を遠心分離によって集め、エタノールで3回洗浄した。粉末を室温にて一晩乾燥した。
【0215】
HRPおよび二次抗体の固定化
HRP固定化法を過去の文献[7、14]から修正した。2mgのDMSNを1mLのPBS緩衝液(pH7.4)に懸濁し、次いで1mLの2.5%グルタルアルデヒドを加え、混合物を室温にて1h撹拌した。混合物を遠心分離し、PBSで3回洗浄して余分な試薬を除去した。次のステップにおいて、沈殿物をPBSに再懸濁し、2mgのHRPを加えた。23h撹拌した後、溶液を遠心分離し、沈殿物を洗浄して未結合HRPを除去した。HRP濃度を測定するためのUV試験のために、すべての上清を集めた。結果として得たサンプルをDMSN-1-H、DMSN-2-H、およびDMSN-3-Hと名付けた。
【0216】
二次抗体固定化法を過去の文献[7、14]から修正した。HRPによって6h固定化した後、溶液に1mLの0.2mg/mL抗インスリンを加え、さらに17h撹拌した。生成物を遠心分離し、洗浄して未結合のHRPおよび抗インスリンを除去した。HRPおよび抗インスリンのレベルを測定するためのUV試験のために、すべての上清を集めた。結果として得たサンプルをDMSN-1-H-A、DMSN-2-H-A、およびDMSN-3-H-Aと名付けた。
【0217】
固定化HRPの活性測定
基質としてTMB/Hを用いて固定化HRPの活性測定を行い、その結果を遊離HRPと比較した。異なるHRP濃度(0~0.25μgmL-1)を有するDMSN-HのPBS溶液を調製した。次いでそれらを96ウェルマイクロプレートにおいてTMB/Hと混合し(総体積50μLを与える)、25℃にて10分間インキュベートした。次いで、50μLの1M HClを加えて反応を停止した。マイクロプレートリーダーによって、450nmにおける光学濃度(O.D.:optical density)を読取った。
【0218】
超高感度ELISA
超低濃度(市販のELISAキットのLODの1~1/2000倍=6.86~3.43×10-3pgmL-1)を有する標準インスリン溶液を新しく調製した。それらは、ELISAキットの標準溶液(ヒト血清中に168pgmL-1のインスリンを含有する)から段階希釈した。
【0219】
ELISAは従来のELISAキットの説明書に従って、抗インスリンHRPを機能化DMSN-H-Aに単純に置き換えることによって行った。典型的には、50μLの各標準/対照/サンプルを50μLの抗インスリンHRPとともにウェルに加え、室温にて30分間インキュベートした。ELISAに対しては、抗インスリンHRPと置き換えるために50μL(4μgmL-1)の機能化DMSN-H-Aを使用した。液体を完全にデカントし、ウェルを希釈洗浄溶液で4回洗浄した後に、100μL安定化クロモゲンを加えた。15分後、100μLの停止溶液(1M HCl)を加え、1h以内にSynergy HTマイクロプレートリーダーを用いて450nmにおける吸光度を読取ることによって、プレートを測定した。対照実験に対しては、ネガティブコントロールとしてインスリン含有血清と置き換えるためにPBSを用いた。すべての標準/対照/サンプルを2つ組にて実行した。
【0220】
低濃度(20~100fgml-1)の一連のインスリンサンプルを試験するために、上記手順を用いることによってELISAの標準曲線を構築した。回収率を試験するために、1μlのインスリン(1fg)を50μl(3fg)のインスリン標準溶液に加えると、それは理論上4fgのインスリンを有するサンプルxとなった。次いでELISAによってサンプルxを試験し、標準曲線に従って算出した。回収率は、算出値と理論上の値(4fg)との差である。サンプルは2つ組で実行した。
【0221】
結果および考察
DMSNの合成および特徴付け
HRP装填およびELISA感度に対する孔径の影響を調べるために、類似の構造だが異なる孔径を有する3つのMSNを選択した[15、16]。孔径の増加とともに、3つのMSNをDMSN-1(6.9nm)、DMSN-2(16nm)、およびDMSN-3(40nm)と表示した。HRP固定化のためにDMSN内に-NHをグラフトするためにアミノ修飾を行い(ESMにおけるスキームS1)、機能化の後に3つのDMSNのメソ構造が維持されることを示した。DMSNの構造を特徴付けるために、TEMおよびSEMを用いる。図7のTEM画像は、アミノ修飾の前(図7(a、c、e)および後(図7(b、d、f))のDMSNの球状構造および孔チャネルを表示する。特に、DMSN-2の開放孔チャネルを図2のTEMおよびSEM画像によって明らかにしている。
【0222】
DMSNの孔径を評価するために、窒素吸着を行った。吸着-脱着プロットは、すべてのDMSNに対してIV型の等温線を示す(図8)。DMSN-1[15]に対する密度関数理論(DFT)法と、MSN-2および3に対するバレット・ジョイナー・ハレンダ(BJH)法とによって、孔径分布を算出した。アミノ修飾MSN-1および2は、元のものと比較したときに低減した孔径を有する(DMSN-1:6.9nmから4.9nm;DMSN-2:16nmから14.5nm)のに対し、DMSN-3では有意な減少は観察できない。同様に、典型的なブルナウアー-エメット-テラー(BET)法によって算出した総孔体積および表面積は、アミノ修飾後にすべてのDMSNに対して減少する(表1)が、DMSN-3-NHについては他の2つと比べて少ない低減を観察した。孔径/孔体積/表面積の減少は、アミノ基による内部孔表面の占有によるものであり、この傾向は小さい孔の材料に対してより明白であり、これは過去の報告とも一致している[17、18]。
【0223】
DMSN-1(4.9nm)、DMSN-2(14.5nm)、およびDMSN-3(40nm)の孔径が異なることによって、HRP/二次抗体の装填および最終的にはELISAの感度に対する孔径の影響の調査ができる。3つのうち、HRPよりも大きいが二次抗体よりも小さい孔径を有するDMSN-2は、HRP装填に対してメソ細孔を利用可能にできる一方で、抗原-抗体結合に対する外表面上の二次抗体を制限するため、最高の性能を有することが期待される。ζ電位測定は、元のDMSN-1/2/3に対する電荷がそれぞれ-25、-18.4、および-27.3であるのに対し、アミノ修飾DMSN-1/2/3-NHに対する電荷は36、14、および26であることを示す。電荷は負から正に変化し、アミノ修飾の成功を示した(表1)。
【0224】
HRPの固定化
図6[7]に示した十分に開発された方法を用いて共有結合を通じてHRPの固定化を行い、結合剤としてグルタルアルデヒドを使用した。共有結合は、感度の低下をもたらし得るELISAプロセス中のHRPの漏出を回避するだろう。結果として得た材料をDMSN-1-H、DMSN-2-H、およびDMSN-3-Hと名付け、これらはそれぞれ283、390、および382mgg-1の装填量を有した。DMSN-2(390mgg-1)と比べて、DMSN-1の孔径(4.9nm、NH修飾有)はHRP(6*5*4nm)よりもわずかに小さく、このためHRPがメソ細孔に入る可能性が低くなるため、装填量は少なくなる(283mgg-1)。アミノ修飾DMSN-3の大きい表面積および孔体積は高い装填容量を与えるが、非常に大きい孔径(40nm)はHRPに対する捕捉効果が少ないため、その相乗効果の結果得られるHRP装填量は382mgg-1であり、これはもっと小さい表面積および孔体積を有するDMSN-2(390mgg-1)と類似した量である。
【0225】
HRPの活性試験
固定化HRPの活性を知るために、その触媒特性を遊離HRPと比較した。図3は、HRPの濃度と450nmにおける光学濃度(A450)との線形的関係を示す。各線形回帰曲線の傾斜から算出したDMSN-Hの活性は、DMSN-1-H、DMSN-2-H、およびDMSN-3-Hに対して5%、87%、および85%である。MSN-1におけるHRPの超低活性は、HRPと類似したサイズの小さいメソ細孔によって制限される、装填HRPと基質との限られた反応の結果によるものであろう。DMSN-2-HおよびDMSN-3-Hにおける87%および85%の触媒特性は、容易にアクセス可能な孔チャネルを伴う大きい孔径が高い酵素活性に対して有益であることを示唆する。
【0226】
二次抗体の固定化
固定化HRPの酵素活性の大部分を維持できることを確かめた後に、超高感度ELISAに対する標識としてHRPおよび二次抗インスリン抗体の両方を有するDMSN(DMSN-1-H-A、DMSN-2-H-A、およびDMSN-3-H-Aと示す)を開発した。HRPの装填後に、DMSN上の残りの-CHO基を共有結合に用いて二次抗体の固定化を行い、そのプロセスはHRP装填(スキームS1)と同様である。この条件におけるHRPの装填量は上記と同様である。57、60、55mgg-1(表3)の二次抗体を、それぞれDMSN-1、DMSN-2、およびDMSN-3に接合した。二次抗体の装填量に対するDMSN間の有意差は観察せず、これは供給比率(100mg抗体:1g DMSN)が小さいことによるものであろう。
【0227】
ELISAを用いた血清中のインスリンの高感度検出
HRPおよび二次抗体の両方を有する機能性DMSNを、ヒト血清における超高感度インスリン検出に適用した。市販のELISAキットの説明書に示唆されるとおり7.7pgml-1の検出限界(LOD)を有する標準溶液を希釈することによって、すべてのインスリンサンプル(3.85fgml-1~7.7pgml-1の範囲)を新たに調製する。色信号を増幅するためにDMSN-2-H-AおよびDMSN-3-H-Aを用いるとき(図4)、検出限界は3.85fgml-1に下がり、これはLODの1/2000に等しい。DMSN-2-H-AおよびDMSN-3-H-Aは同じ検出限界を有するが、前者の方が高いOD強度を与えるため、これが3つのDMSNのうちで最良の信号増幅候補である。一方、DMSN-1-H-Aの最低検出可能濃度は7.7fgml-1(LODの1/1000)であり、これは他の2つのDMSNよりも高い。これはHRPの装填が少ないことおよび低活性のためである。
【0228】
市販のELISAキットと比べて、ELISAは検出感度の2000倍の増強を示す。これは、好適な孔径および開放孔チャネルを有するDMSN-2における、酵素の高活性および高い呈色反応効率によって達成される。加えて、二次抗体の分布も高感度に対する重要な役割を果たす。DMSN-1およびDMSN-2の場合、二次抗体のサイズが大きい(約20nm)ことが、それらの場所を外表面に制限している。一方、DMSN-3の大きい孔径(40nm)は孔の内側への二次抗体の装填を可能にするだろうが、それは二次抗体と抗原(インスリン)との結合を妨げ、おそらくはこれがDMSN-2-H-Aと比べてDMSN-3-H-Aの感度が低い理由であろう。
【0229】
洗浄プロセスの後にもウェルにいくらかの遊離ナノ粒子(DMSN-H-A)が固着しているかもしれず、それがいくらかの色を生成する可能性があることを考慮して、残ったDMSN-H-Aからの色信号を評価するために、DMSN-H-Aのみの対照グループ(図4)を設定した。対照グループにもすべてのインキュベーションおよび洗浄ステップを伴う標準的手順を適用したが、インスリン(抗原)は加えなかった。各固着DMSN-H-A(対照グループ)からの平均信号強度はDMSN-1-H-A、DMSN-2-H-A、およびDMSN-3-H-Aに対して0.115、0.594、および0.314であり、これを図4の濃度1の区域に示している。つまり、図4に示した各実験グループの強度値は、検出値から対応する対照の値を引くことによって算出した絶対的色変化を表す。
【0230】
低濃度(20~100fgml-1)の一連のインスリンサンプルを試験することによって、ELISAの定量化能力を確認するための較正曲線を構築した。その曲線を図5に示しており、この曲線は0.9975の線形回帰係数(R)を有し、これはELISAのヒトインスリン定量化に対する信頼性が高いことを示唆する。7.7pgml-1の定量化限界を有する市販のキットと比べて、ELISAは極めて高い感度を示す。ELISAの定量化効率をさらに確認するために、1μlの1pgml-1インスリンを標準溶液に加えることによって、回収率を測定した。ELISAの回収率は81%であり、これは前の報告に匹敵する[19、20]。ある研究において、111pM(640pgml-1)の濃度のインスリンの検出のためにICP-MSを使用したとき、91%の回収率が達成される[20]。別の報告は低存在量(121pgml-1)ヒトインスリン検出のために液体クロマトグラフィーを用いたが、回収率はわずか33.2%~51.7%である[19]。小体積(1μl)による添加の回収率が高いことは、微量または限られた体積の貴重なサンプルの高感度検出を確実にする。
【0231】
結論
色信号増幅のための高HRP装填および容易にアクセス可能な樹状孔チャネルを有するDMSNを用いることによって、超高感度ELISAの開発に成功した。市販のELISAキットと比べて、血清中の検出感度の2000倍の増強を達成する。この研究は、色増幅のためにDMSNを用いることによってELISAの効率を改善するという素晴らしいアイデアを提案する。さらに、他のタンパク質の超高感度検出のためにELISAを広く使用できる。さらに、ELISAを現在の技術と結合させて優れた性能を達成できる可能性が高い。
【0232】
上記に加え、開発したDMSNは大きな開放孔構造を示し、これは量子ドットの容易な装填および孔の壁における適切な制限のない配置を促進することによって、そこからの任意の放射光のクエンチングを最小化してもよい。
【0233】
【表1】
【0234】
実施例2 - チオール修飾樹状シリカ粒子の合成
材料および方法:(チオール)
化学物質:テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、トリエタノールアミン(TEA)、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MPTMS)、サリチル酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、エタノール、および塩酸(37%wt)をシグマアルドリッチより購入した。実験全体にわたり、実験室精製システムから得た二重蒸留水を用いた。すべての実験において、使用前に水を超音波槽内で脱酸素し、次いでNガスを10分間通気した。
【0235】
T-MSNの合成。典型的な合成においては、80℃にて30分間の強力な撹拌の下で、TEA(68mg)を蒸留水(25mL)に溶解した。CTAB(380mg)およびサリチル酸ナトリウム(84mg)を加えた後、得られた混合物を1h撹拌し、次いでTEOS(3.8ml)を加えた。80℃にて30分間さらに撹拌した後、反応溶液にMPTMS(0.1625ml)を加えた。6h後に遠心分離によって生成物を集め、エタノールで数回洗浄して残余反応物を除去し、その後60℃にて6h室温の塩酸エタノール溶液で3回抽出してテンプレートCTABを除去した。最終生成物をT-MSNと示し、水(30ml)中に分散させた。
【0236】
結果。上記合成によって生成した粒子は、図9に示すとおり、中心コアから半径方向に出たスパイクを有する樹状構造を有した。TEMによって測定した平均粒子直径は145nmであることを見出したのに対し、動的光散乱(DLS、Zetasizer)によって測定した平均粒径はわずかに高い164nmであることを見出した。窒素吸着分析は、14.3nmの平均孔径および528m/gのBET表面積を示した。CHNS元素分析計を用いて測定した硫黄含有量は5.97wt.%であると定めた。
【0237】
実施例3 - チオール修飾粒子への量子ドットの装填
直径4nmのCdSe量子ドットを10mg/mLの濃度で1mLのCHClに分散させた。これに実施例2で合成したT-MSN粒子の分散物(1mLエタノール中に1mg)を加えた。T-MSN粒子を量子ドットとともに数分間振とうし、得られた混合物を遠心分離してEtOHで数回洗浄した。T-MSN1グラム当り0.6gの量子ドットの装填量にて、T-MSN粒子への量子ドットの装填を成功させた。
【0238】
実施例4 - シリカナノ粒子合成の代替的方法
方法。この実施例においては、ストーバー(Stoeber)合成条件によるワンポットの無界面活性剤プロセスによって、単分散メソポーラスシリカナノ粒子を合成した。典型的には、撹拌下でエタノール(40mL)と、蒸留水(10mL)と、水酸化アンモニウム(1.56mL)と、エチレンジアミン(ethylenediamine)溶液(EDA、0.225mL)とを混合することによって、アルコール水溶液を調製した。その後、上述の溶液に3-アミノフェノール(0.412g)、ホルムアルデヒド溶液(0.9mL)、TEOS(1.56mL)を加えた。次いで、混合物を5h強く撹拌した。こうして合成した複合体を、遠心分離、エタノール洗浄、および乾燥によって集めた。最後に、空気中での焼成後に単分散メソポーラスシリカナノ粒子を収集した。
【0239】
特徴付け。TEM画像(図11A)は、均一な形態を有する良好に分散されたシリカナノ粒子が得られることを示す。図11Bに示すとおり、平均粒子直径は適切に180±5nmであり、粒子はナノサイズの放射状のスパイクを示すことが明らかである。SEM画像(図11C)はさらに、シリカスパイクの稠密な分布を有する均一なサイズのシリカナノ粒子を示す。窒素吸着および脱着等温線(図11D)は、明確なヒステリシスループを有する典型的なIV型等温線を示し、これは高度のメソ多孔性の存在を示す。吸着枝から導出した対応するバレット・ジョイナー・ハレンダ(BJH)孔径分布曲線(図11D、挿入図の曲線)は、9.1nmを中心とした比較的広いピークを示す。
【0240】
参考文献
【0241】
【表2】
【0242】
【表3】
【0243】
【表4】

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D