(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】紫外発光する有機発光体
(51)【国際特許分類】
C09K 11/06 20060101AFI20231019BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231019BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20231019BHJP
【FI】
C09K11/06 610
C09K11/06 645
C09K11/06 660
H05B33/14 B
H01L33/50
(21)【出願番号】P 2019129584
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 正毅
(72)【発明者】
【氏名】西村 賢汰
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】Koji Takagi et al.,Bull. Chem. Soc. Jpn.,2009年,82,236-241,DOI: 10.1246/bcsj.82.236
【文献】Diring, STEPHANE et al.,J. Org. Chem.,2007年,72,10181-10193,DOI: 10.1021/jo7017866
【文献】LARIOS-LOPEZ, L. et al.,Liquid Crystals,2003年,30(4),423-433,DOI: 10.1080/0267829031000083768
【文献】GVISHI R. et al.,Journal of Sol-Gel Science and Technology,1997年,9,157-167
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
H01L 33/50
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される紫外線発光体。
【化1】
(式(I)中、
A
1
及びA
2
はいずれも、置換されていてもよい6員環の単環の芳香族炭化水素環、置換されていてもよい6員環の複素芳香環、又は置換されていてもよい炭素数6~20の縮合環を有する芳香族炭化水素環若しくは複素芳香環であり、
前記6員環の単環の芳香族炭化水素環が置換されている場合の置換基は炭素数1~10のアルキル、ハロゲン原子、アルコキシ、又はシリルであり、
前記6員環の複素芳香環が置換されている場合の置換基は炭素数1~10のアルキル、ハロゲン原子、アルコキシ、又はシリルであり、
前記炭素数6~20の縮合環を有する芳香族炭化水素環若しくは複素芳香環が置換されている場合の置換基は炭素数1~10のアルキル、ハロゲン原子、アルコキシ、又はシリルであり、
B
1
及びB
2
はいずれも、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、置換されていてもよい
メトキシ基、又は置換されていてもよいオルガノシロキシ基である。)
【請求項2】
A
1
及びA
2
が
6員環の単環の芳香族炭化水素環若しくは炭素数6~20の縮合環を有する芳香族炭化水素環であるか、又は6員環の複素芳香環である請求項1に記載の紫外線発光体。
【請求項3】
B
1
及びB
2
が、置換されていてもよい
メトキシ基、又は置換されていてもよいオルガノシロキシ基である請求項1に記載の紫外線発光体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の紫外線発光体と、合成樹脂とを含む光学部材。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の紫外線発光体を備えた発光装置。
【請求項6】
有機発光ダイオードである請求項5に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を発光する有機発光体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光極大波長が380nm以下にある公知の有機蛍光材料として、ジアリールフルオレンの2量体(非特許文献1,2)及びクオーターフェニル(非特許文献3)が報告されている。しかしながら、ジアリールフルオレンの2量体及びクオーターフェニルは、分子改良の余地が非常に小さいため、分子改良によって発光効率の向上、熱安定性の向上等の性能向上を図ることが難しい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Advanced Materials, 2005, Vol 17, 992
【文献】Org. Lett. 2005, Vol 7, No.23, 5131
【文献】J. Phys. Chem. B 2004, 108, 9571
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決すべき課題は、有機材料からなり、分子設計性がより柔軟な紫外線発光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ベンゼン環のそれぞれオルト位同士に二個のアリール又は6員環の複素芳香環と二個のアルキル基、アルコキシ基、又はオルガノシロキシ基とを配置して捩れたターアリレン構造を誘起することにより、発光波長の短波長化に必須の共役系の縮小と、発光効率低下の要因である分子の近接の抑制との両方を実現し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、以下の項に記載の主題を包含する。
【0007】
項1.下記一般式(I)で表される紫外線発光体。
【0008】
【化1】
(式(I)中、
A
1及びA
2はいずれも、置換されていてもよい6員環の単環の芳香族炭化水素環、置換されていてもよい5若しくは6員環の複素芳香環、又は置換されていてもよい炭素数6~20の多環の芳香族炭化水素環若しくは複素芳香環であり、
B
1及びB
2はいずれも、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1~10のアルコキシ基、又は置換されていてもよいオルガノシロキシ基である。)
【0009】
項2.A1及びA2がアリールであるか、又は6員環の複素芳香環である項1に記載の紫外線発光体。
【0010】
項3.B1及びB2が、置換されていてもよい炭素数1~10のアルコキシ基、又は置換されていてもよいオルガノシロキシ基である項1に記載の紫外線発光体。
【0011】
項4.項1~3のいずれか一項に記載の紫外線発光体と、合成樹脂とを含む光学部材。
【0012】
項5.項1~3のいずれか一項に記載の紫外線発光体を備えた発光装置。
【0013】
項6.有機発光ダイオードである項5に記載の発光装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発光効率等の性能が向上された、有機系の紫外線発光体、及びかかる紫外線発光体を備えた有機発光装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】化合物1、9~11、19の粉末状態での発光スペクトル。
【
図4】化合物1、9~11、19をPMMA樹脂に分散させた薄膜の発光スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【0017】
本明細書において、紫外線とは、波長が10~400 nmの光線を指す。
【0018】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「X~Y」は、「X以上、Y以下」を意味する。
【0019】
(I)本発明に係る紫外線発光体
本発明に係る紫外線発光体は、下記一般式(I)で表される化合物からなる。
【0020】
【0021】
式(I)中、
A1及びA2はいずれも、置換されていてもよい6員環の単環の芳香族炭化水素環、置換されていてもよい5若しくは6員環の複素芳香環、又は置換されていてもよい炭素数6~20の多環の縮合環を有する芳香族炭化水素環若しくは複素芳香環である。
【0022】
B1及びB2はいずれも、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1~10のアルコキシ基、又は置換されていてもよいオルガノシロキシ基である。
【0023】
一つの実施形態において、本発明に係る紫外線発光体は、上記一般式(I)で表される化合物であって、A1、A2、B1、及びB2は上述の通りであり、かつ下記の式(1)、(2)、(6)、(7)、(19)及び(i)~(iv)で表される化合物は除く。式中、Meはメチル基、Phはフェニル基、iPrはイソプロピル基である。
【0024】
【0025】
別の実施形態において、本発明に係る紫外線発光体は、上記一般式(I)で表される化合物であって、A1及びA2はいずれも、ジメチルフェニル、ビフェニル、5若しくは6員環の複素芳香環(特にはピリジル)、又は炭素数6~20の多環の芳香族炭化水素環(特にはナフチル)であって、かつB1及びB2はいずれも置換されていてもよい炭素数1~10のアルコキシ基である。
【0026】
別の実施形態において、本発明に係る紫外線発光体は、上記一般式(I)で表される化合物であって、A1及びA2はいずれも、フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、5若しくは6員環の複素芳香環(特にはピリジル基)、又は炭素数6~20の多環の芳香族炭化水素環であって、かつB1及びB2はいずれも、tert-ブチルジメチルシロキシ、tert-ブチルジフェニルシロキシ、トリフェニルシロキシ、又は置換されていてもよいオルガノシロキシ基である。
【0027】
A1及びA2は同一であることもできるし異なることもでき、好ましくは同一である。
【0028】
B1及びB2は同一であることもできるし異なることもでき、好ましくは同一である。
【0029】
6員環の単環の芳香族炭化水素環であるA1及びA2の例としては、フェニルである。
【0030】
5員環の単環の複素芳香環であるA1及びA2の例としては、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル等が挙げられる。
【0031】
6員環の単環の複素芳香環であるA1及びA2の例としては、ピリジル、ピラジル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル等が挙げられる。
【0032】
炭素数6~20の縮合環を有する芳香族炭化水素環の例としては、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニル等が挙げられる。
【0033】
炭素数6~20の縮合環を有する多環の複素芳香環の例としては、インドリル、イソインドリル、ベンゾイミダゾリル、プリニル、ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾピラニル、アクリジニル等が挙げられる。
【0034】
6員環の単環の芳香族炭化水素環、5若しくは6員環の単環の複素芳香環、炭素数6~20の縮合環を有する芳香族炭化水素環、又は炭素数6~20の縮合環を有する多環の複素芳香環が置換される場合の置換基の例としては、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル、置換されていてもよいフェニル、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシル、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルバモイル、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシなど)、アシル(ホルミル、アセチル、プロピオニルなど)、アシルオキシ(ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシなど)、アルコキシカルボニル、(ジ)アルキルアミノ(メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n-ブチルアミノ、イソブチルアミノ、sec-ブチルアミノ、tert-ブチルアミノ、n-ペンチルアミノ、n-ヘキシルアミノなど)、アシルアミノ(ホルミルアミノ、アセチルアミノ、プロピオニルアミノなど)、シリル、ボリル等が挙げられる。
【0035】
6員環の単環の芳香族炭化水素環、5若しくは6員環の単環の複素芳香環、炭素数6~20の縮合環を有する芳香族炭化水素環、又は炭素数6~20の縮合環を有する多環の複素芳香環が置換される場合の置換基の数は、1、2、又は3個であることが好ましい。
【0036】
上記置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル及び上記置換されていてもよいフェニルが置換される場合の置換基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシル、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルバモイル、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシなど)、アシル(ホルミル、アセチル、プロピオニルなど)、アシルオキシ(ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシなど)、アルコキシカルボニル、(ジ)アルキルアミノ(メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n-ブチルアミノ、イソブチルアミノ、sec-ブチルアミノ、tert-ブチルアミノ、n-ペンチルアミノ、n-ヘキシルアミノなど)、アシルアミノ(ホルミルアミノ、アセチルアミノ、プロピオニルアミノなど)、シリル、ボリル等が挙げられる。また前記置換基が存在する場合、その個数はアルキル及びフェニルの各々に対して1、2、又は3個であることが好ましい。
【0037】
一つの実施形態では、A1及びA2が置換されていてもよいアリールであるか、又は置換されていてもよい6員環の複素芳香環である。アリールとしては、置換されていてもよいフェニル、ナフチルが挙げられる。アリール及び6員環の複素芳香環の置換基の例は、「6員環の単環の芳香族炭化水素環、5若しくは6員環の単環の複素芳香環、炭素数6~20の縮合環を有する芳香族炭化水素環、又は炭素数6~20の縮合環を有する多環の複素芳香環が置換される場合の置換基」に関して上述した通りである。
【0038】
別の実施形態では、A1及びA2は同一であって、チエニル、フェニル、炭素数1~10のアルキルで1又は2置換されたフェニル(例、メチルフェニル、ジメチルフェニル)、メトキシフェニル、ビフェニル、ピリジル、ナフチル等が挙げられる。
【0039】
B1及びB2がいずれも置換されていてもよい炭素数1~10のアルキルである場合、B1及びB2は炭素数1~10の直鎖、分枝鎖、又は環式のアルキルである。そのようなB1及びB2の例としては、アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。
【0040】
B1及びB2が置換される炭素数1~10のアルキルの場合の置換基は、ビニル、アルケニル、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシル、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルバモイル、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシなど)、アシル(ホルミル、アセチル、プロピオニルなど)、アシルオキシ(ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシなど)、アルコキシカルボニル、(ジ)アルキルアミノ(メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n-ブチルアミノ、イソブチルアミノ、sec-ブチルアミノ、tert-ブチルアミノ、n-ペンチルアミノ、n-ヘキシルアミノなど)、アシルアミノ(ホルミルアミノ、アセチルアミノ、プロピオニルアミノなど)、シリル、ボリル等が挙げられる。また前記置換基が存在する場合、その個数はB1及びB2の各々に対して1、2、又は3個であることが好ましい。
【0041】
一つの実施形態において、B1及びB2はいずれも、非置換の炭素数1~10のアルキルである。別の実施形態において、B1及びB2は同一の、非置換の炭素数1~10のアルキルである。
【0042】
B1及びB2がいずれも置換されていてもよい炭素数1~10のアルコキシである場合、B1及びB2は炭素数1~10の直鎖、分枝鎖、又は環式のアルコキシである。そのようなB1及びB2の例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソシキ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノニロキシ、デシロキシ、シクロプロポキシ、シクロペントキシ、シクロヘキソシキ等が挙げられる。
【0043】
B1及びB2が置換される炭素数1~10のアルコキシの場合の置換基は、ビニル、アルケニル、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシル、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルバモイル、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシなど)、アシル(ホルミル、アセチル、プロピオニルなど)、アシルオキシ(ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシなど)、アルコキシカルボニル、(ジ)アルキルアミノ(メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n-ブチルアミノ、イソブチルアミノ、sec-ブチルアミノ、tert-ブチルアミノ、n-ペンチルアミノ、n-ヘキシルアミノなど)、アシルアミノ(ホルミルアミノ、アセチルアミノ、プロピオニルアミノなど)、シリル、ボリル等が挙げられる。また前記置換基が存在する場合、その個数はB1及びB2の各々に対して1、2、又は3個であることが好ましい。
【0044】
一つの実施形態において、B1及びB2はいずれも、非置換の炭素数1~10のアルコキシである。別の実施形態において、B1及びB2は同一の、非置換の炭素数1~10のアルコキシである。
【0045】
B1及びB2がいずれも置換されていてもよいオルガノシロキシである場合、B1及びB2はそれぞれ下記の式(II):
-O-SiR1R2R3 (II)
で表される。-SiR1R2R3 はオルガノシリルである。
【0046】
R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して水素、置換若しくは非置換の炭素数1~10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又は置換若しくは非置換のフェニル基であるが、ただしR1、R2、及びR3がすべて水素である場合は除く。好ましくは、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して置換若しくは非置換の炭素数1~10の直鎖、分岐鎖、若しくは環式のアルキル基、又は置換若しくは非置換のフェニル基であり、より好ましくはそれぞれ独立して置換若しくは非置換の炭素数1~8の直鎖、分岐鎖、若しくは環式のアルキル基、又は置換若しくは非置換のフェニル基であり、さらに好ましくはそれぞれ独立して置換若しくは非置換の炭素数1~6の直鎖、分岐鎖、若しくは環式のアルキル基、又は置換若しくは非置換のフェニル基である。
【0047】
アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。
【0048】
R1、R2、及びR3が置換される場合の置換基は、ビニル、アルケニル、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシル、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルバモイル、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシなど)、アシル(ホルミル、アセチル、プロピオニルなど)、アシルオキシ(ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシなど)、アルコキシカルボニル、(ジ)アルキルアミノ(メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n-ブチルアミノ、イソブチルアミノ、sec-ブチルアミノ、tert-ブチルアミノ、n-ペンチルアミノ、n-ヘキシルアミノなど)、アシルアミノ(ホルミルアミノ、アセチルアミノ、プロピオニルアミノなど)等が挙げられる。また前記置換基が存在する場合、その個数はR1、R2、及びR3の各々に対して1、2又は3個であることが好ましい。
【0049】
オルガノシリル基(-SiR1R2R3)の具体例としては、ビニルジメチルシリル、ジエチルメチルシリル、プロピルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、シクロプロピルジメチルシリル、アリルジメチルシリル、ブチルジメチルシリル、イソブチルジメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、シクロブチルジメチルシリル、sec-ブチルジメチルシリル、トリエチルシリル、トリビニルシリル、ペンチルジメチルシリル、シクロペンチルジメチルシリル、メチルジイソプロピルシリル、イソプロピルジエチルシリル、ヘキシルジメチルシリル、シクロヘキシルジメチルシリル、シクロヘキセニルジメチルシリル、テキシルジメチルシリル、1-メチルシクロペンチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル、メチルジフェニルシリル、t-ブチルジフェニルシリル、ブチルジエチルシリル、ヘプチルジメチルシリル、シクロヘプチルジメチルシリル、2-ノルボルニルジメチルシリル、トリルジメチルシリル、ベンジルジメチルシリル、トリイソプロピルシリル、オクチルジメチルシリル、ヘキシルジエチルシリル、デシルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリイソブチルシリル等が挙げられる。
【0050】
R1、R2及びR3は同一であることもできるし異なることもできる。好ましくは、R1、R2及びR3のうちの2つが同一であるか、R1、R2及びR3が3つとも同一である。
【0051】
いくつかの実施形態において、B1及びB2はいずれも上記式(II)で表される非置換のオルガノシロキシであって、R1、R2及びR3のうちの2つが炭素数1~10のアルキル基であり、R1、R2及びR3のうちの残りの1つがそれとは別の炭素数1~10のアルキル基であるか;R1、R2及びR3のうちの2つがフェニル基であり、R1、R2及びR3のうちの残りの1つが炭素数1~10のアルキル基であるか;R1、R2及びR3のうちの3つが同じ炭素数1~10のアルキル基であるか;又はR1、R2及びR3のうちの3つがフェニル基である。
【0052】
紫外線発光体の熱安定性の点からは、B1及びB2の炭素骨格の鎖長が長いことが好ましい。一般に、B1及びB2の炭素骨格の鎖長が長いと、紫外線発光体の熱分解点が上昇し、熱に対して安定となる。同様に、R1、R2及びR3の炭素鎖も長いことが好ましい。
【0053】
さらに、B1及びB2の炭素鎖の嵩が大きくなると、紫外線発光体の立体配座に捩れが生じ、紫外線発光体の発光波長が短波長側にシフトする。このように、B1及びB2の炭素鎖の嵩を調整することにより、所望の発光波長になるよう紫外線発光体を設計することができる。
【0054】
本発明の紫外線発光体は、10~400 nmの波長の領域に発光波長を有する。
【0055】
好ましくは、本発明の紫外線発光体は、10~400 nmの波長の領域に発光極大波長を有し、より好ましくは200~400 nmの領域に発光極大波長を有し、さらに好ましくは250~385 nmの領域に発光極大波長を有する。
【0056】
本発明の紫外線発光体は、粉末状態や結晶状態で紫外発光するものであってもよいし、有機薄膜に分散した状態で紫外発光するものであってもよいし、その両方であってもよい。好ましくは、本発明の紫外線発光体は20℃において固体状態で紫外線を発光する。このため、いわゆる常温で固体として扱うことができて、大気に対して安定なため、取り扱い性に優れている。
【0057】
また本発明の紫外線発光体は、置換基の選択により、熱安定性や発光波長を調整でき、設計性に優れている。さらに、有機溶媒への溶解度も調節できるので、溶液プロセスへの展開も容易である。
【0058】
さらに、本発明の紫外線発光体の固体状態における発光量子収率は好ましくはA1及びA2がアリールでB1及びB2がアルコキシの場合は0.15以上であり、A1及びA2がアリールでB1及びB2がオルガノシロキシ基の場合は0.30以上であり、発光体として優れている。
【0059】
(II)本発明に係る紫外線発光体の製造方法
まず、B1及びB2がアルキル基若しくはアルコキシ基の場合、本発明に係る紫外線発光体は、1,4-ジアルキルベンゼンの臭素化により調製される2,5-ジブロモ-1,4-ジアルキルベンゼン若しくは1,4-ジアルコキシベンゼンの臭素化により調製される2,5-ジブロモ-1,4-ジアルコキシベンゼンに、所望の芳香環の有機金属反応剤を、パラジウム錯体などの遷移金属触媒を用いて順次交差カップリングすることにより、容易に合成することができる。
【0060】
また、B1及びB2がオルガノシロキシ基の場合は、上記の方法により合成した2,5-ジメトキシ-1,4-ジアリールベンゼンに三臭化ホウ素を作用させて脱アルキル化し、得られたジヒドロキノン誘導体を所望のクロロシランでシリル化することにより、容易に合成することができる。
【0061】
上記製造方法は簡便であり、所望の特性を備える紫外線発光体を簡単に得ることができ、用途に合わせた実用性の高い紫外発光素子を製造することができる。
【0062】
(III)本発明に係る紫外線発光体の利用、光学部材、発光装置
本発明に係る紫外線発光体は、単体の化合物として用いることもできるし、他の材料と組み合わせて複合材として用いることもできる。
【0063】
複合材としては、本発明に係る紫外線発光体をマトリックス材に分散させた組成物が挙げられる。マトリックス材は、合成樹脂、エラストマー、ゴム等の高分子化合物からなる有機材料、有機材料、又は無機材料と有機材料のハイブリット材料が挙げられる。有機材料の例としては、
エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、セルロースエステル、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ樹脂、ポリジメシルシロキサン及びシクロオレフィンコポリマーからなる群から選択される1種以上の材料が挙げられる。これらの材料は透明性の点で有利である。無機材料の例としては、ガラス、(溶融)水晶、透過性セラミック材、及びシリコーンからなる群から選択される1種以上の材料が挙げられる。
【0064】
本発明に係る紫外線発光体と、マトリックス材とを含む上記組成物は、発光素子等の光学部材として使用することができる。かかる光学部材は、量子収率が高いため、発光効率の優れた光学部材となり得る。
【0065】
組成物又は光学部材中の紫外線発光体の含有量は、組成物又は光学部材を100質量部%としたとき、0.01~50質量%の範囲内であることが好ましく、0.5~30質量%の範囲内であることがより好ましく、2.0~25質量%の範囲内であることが最も好ましい。発光の点で、含有量が0.01質量%以上であることが好ましく、組成物又は光学部材の成形性の点で、50質量%以下であることが好ましい。
【0066】
光学部材の形状としては、特に制限はなく、所望の形状に成形できる。例えば、平板状、レンズ状、フィルム状、シート状、キャピラリー状、ロッド状、チューブ状、錐状、錐台状等が挙げられる。このうち、フィルム状又はシート状が好ましい。なお、フィルムとは厚さが250μm未満の膜状のものを指し、シートとは厚さが250μm以上の薄板状のものを指す。
【0067】
光学部材としての光学フィルムを製造する方法としては、特に限定されないが、樹脂のモノマー及び紫外線発光体を含む構成材料を溶かした塗布液を調製し、基材上に塗布してUV硬化させる方法、樹脂及び紫外線発光体を含む組成物を分散又は溶解させてドープ液に調製し、キャスト成膜する方法等を挙げることができる。キャスト成膜では、支持体上にドープ液をキャストし、乾燥させた後、支持体から剥離することで光学フィルムを形成する。キャスト成膜によれば、光学フィルムの成膜時に活性種が生じないため、得られたフィルムの発光効率が向上する。
【0068】
本発明に係る紫外線発光体及び光学部材は、半導体発光素子、エレクトロルミネッセンスデバイス等として使用することができる。
【0069】
図1に光学部材の例を示す。光学部材1は、基板2と、基板2の上に配置された本発明に係る紫外線発光体を含む発光層3とを備えている。基板2と発光層3とは面接触している。発光層3は基板2の上に成膜してもよいし、基板2と発光層3を別々に作製し、接着剤やその他の手段によって互いに接触させてもよい。基板2はガラス、石英、シリコン、セラミック、金属、及び有機材料等の公知の材料から形成された基板とすることができる。
【0070】
本発明は、上記の光学フィルムを備えた発光装置をも提供する。本発明の発光装置は、上記の本発明に係る紫外線発光体、又は該紫外線発光体を含有する光学部材としての発光層を備えている。このため、発光効率に優れた装置となる。
【0071】
好ましくは、発光装置は、2つの電極と、前記2つの電極間に配置された本発明に係る紫外線発光体又は該紫外線発光体を含有する発光層とを備えている。
【0072】
図2に、発光装置としての有機発光ダイオード4の例を示す。有機発光ダイオード4は、透明基板5の上に順に積層された、陽極6、正孔注入層7、本発明に係る紫外線発光体を含む発光層3、及び陰極8を備えている。基板5はガラス、石英、シリコン、セラミック、金属、及び有機材料等の公知の材料から形成された基板とすることができる。陽極6を形成する材料にはITO等の公知の陽極材料を使用することができる。正孔注入層7を形成する材料には、PEDOT/PSS等(4-スチレンスルホン酸でドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等の公知の材料を使用することができる。陰極8を形成する材料にはLi、Cs、B、Al、又はこれらの合金等の公知の陰極材料を使用することができる。
【0073】
発光装置としては、照明装置、液晶ディスプレイ装置等が挙げられる。本発明の発光装置は、安価で、加工性が高く、大面積化が可能であり、柔軟性(Flexibility)があり、面光源とすることができる。このため、医療器具、上水道、空気等の殺菌の用途、可視光有機発光ダイオードのホスト材料、蛍光性フィルム又は蛍光センサーの励起光源、記録媒体、ポリマーの硬化の用途、光治療等の広範な用途に使用することができる。
【0074】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0075】
製造例1 化合物1の合成
【0076】
【0077】
フレームドライを施した 80 mL シュレンク管に 1,4-ジヨード-2,5-ジメトキシベンゼン (0.39 g, 1.0 mmol)、フェニルボロン酸 (0.37 g, 3.0 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (0.07 g, 0.06 mmol)、炭酸カリウム (1.38 g, 10 mmol) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。トルエン (7 mL)、水 (3.5 mL) を加え、凍結脱気を 3 回行った後、16 時間加熱還流を行った。反応液を酢酸エチル (100 mL) で希釈し、セライトろ過を行った後、有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (CH2Cl2/MeOH) により精製し、式(1)で表される1,4-ジメトキシ-2,5-ジフェニルベンゼン (0.29 g, 1.0 mmol, 100%) を無色固体として得た。
【0078】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 3.79 (s, 6H), 6.98 (s, 2H), 7.35 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.40 (d, J = 7.2 Hz, 4H), 7.59 (d, J = 7.2 Hz, 4H).
【0079】
製造例2 化合物2の合成
【0080】
【0081】
フレームドライした 80 mL シュレンク管に 1,4-ジヨード-2,5-ジメトキシベンゼン (0.39 g, 1.0 mmol)、2-メチルフェニルボロン酸 (0.41 g, 3.0 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (0.07 g, 0.06 mmol)、炭酸カリウム (1.38 g, 10 mmol) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。トルエン (7 mL)、水 (3.5 mL) を加え、凍結脱気を 3 回行った後、16 時間加熱還流を行った。反応液を酢酸エチル (100 mL) で希釈し、セライトろ過を行った後、有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (CH2Cl2/MeOH) により精製し、式(2)で表される1,4-ビス (2-メチルフェニル)-2,5-ジメトキシベンゼン (0.29 g, 0.92 mmol, 92%) を無色固体として得た。
【0082】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 2.22 (s, 6H), 3.70 (s, 6H), 6.77 (s, 2H), 7.26-7.28 (m, 8H).
【0083】
製造例3 化合物3の合成
【0084】
【0085】
フレームドライした 80 mL シュレンク管に 1,4-ジヨード-2,5-ジメトキシベンゼン (0.78 g, 2.0 mmol)、2,6-ジメチルフェニルボロン酸 (0.41 g, 3.0 mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム (0.18 g, 0.2 mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジメトキシビフェニル (0.16 g, 0.4 mmol)、リン酸三カリウム (4.25 g, 20 mmol) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。1,4-ジオキサン (20 mL)、水 (4 mL) を加え、凍結脱気を 3 回行った後、48 時間加熱還流を行った。反応液を酢酸エチル (200 mL) で希釈し、セライトろ過を行った後、有機層を水 (100 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (CH2Cl2/MeOH) により精製し、式(3)で表される1,4-ビス(2,6-ジメチルフェニル)-2,5-ジメトキシベンゼン (0.29 g, 0.92 mmol, 72%) を無色固体として得た。
【0086】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 2.11 (s, 12H), 3.65 (s, 6H), 6.69 (s, 2H), 7.15 (d, J = 6.8 Hz, 4H), 7.20 (t, J = 6.8 Hz, 2H).
【0087】
製造例4 化合物4の合成
【0088】
【0089】
フレームドライした 80 mL シュレンク管に 2,5-ジメトキシ-1,4-ベンゼンジボロン酸 (0.23 g, 1.0 mmol)、1-ブロモナフタレン (0.42 mL, 3.0 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (0.07 g, 0.06 mmol)、炭酸カリウム (0.69 g, 5 mmol) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。トルエン (14 mL)、エタノール (2 mL)、水 (2 mL) を加え、凍結脱気を 3 回行った後、24 時間加熱還流を行った。反応液をクロロホルム (100 mL) で希釈し、セライトろ過を行った後、有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (CHCl3/hexane) により精製し、式(4)で表される1,4-ビス(1-ナフチル)-2,5-ジメトキシベンゼン (0.25 g, 0.65 mmol, 65%) を無色固体として得た。
【0090】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 3.64 (s, 6H), 7.01 (s, 2H), 7.46-7.57 (m, 6H), 7.76-7.79 (m, 4H), 7.90-7.92 (m, 4H).
【0091】
製造例5 化合物5の合成
【0092】
【0093】
フレームドライした 80 mL シュレンク管に 1,4-ジヨード-2,5-ジメトキシベンゼン (0.78 g, 2.0 mmol)、3-ピリジルボロン酸 (0.74 g, 6.0 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (0.14 g, 0.12 mmol)、炭酸カリウム (2.76 g, 20 mmol) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。ジオキサン (14 mL)、水 (6 mL) を加え、凍結脱気を 3 回行った後、16 時間加熱還流を行った。反応液を酢酸エチル (200 mL) で希釈し、セライトろ過を行った後、有機層を水 (100 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (MeOH) により精製し、式(5)で表される1,4-ビス(3-ピリジル)-2,5-ジメトキシベンゼン (0.25 g, 0.84 mmol, 84%) を無色固体として得た。
【0094】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 3.83 (s, 6H), 6.99 (s, 2H), 7.38 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 7.93 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 8.60 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 8.83 (s, 2H).
【0095】
製造例6 化合物6の合成
【0096】
【0097】
フレームドライした 80 mL シュレンク管に 1,4-ジヨード-2,5-ジメトキシベンゼン (0.39 g, 1.0 mmol)、4-メトキシフェニルボロン酸 (0.46 g, 3.0 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (0.07 g, 0.06 mmol)、炭酸カリウム (1.38 g, 10 mmol) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。トルエン (7 mL)、水 (3.5 mL) を加え、凍結脱気を 3 回行った後、24 時間加熱還流を行った。反応液を酢酸エチル (100 mL) で希釈し、セライトろ過を行った後、有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (CH2Cl2/MeOH) により精製し、式(6)で表される1,4-ビス(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメトキシベンゼン (0.32 g, 0.92 mmol, 92%) を無色固体として得た。
【0098】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 3.79 (s, 6H), 3.86 (s, 6H), 6.94 (s, 2H), 6.98 (d, J = 8.8 Hz, 4H), 7.53 (d, J = 8.8 Hz, 4H).
【0099】
製造例7 化合物7の合成
【0100】
【0101】
フレームドライした 80 mL シュレンク管に 1,4-ジヨード-2,5-ジメトキシベンゼン (0.39 g, 1.0 mmol)、2-メトキシフェニルボロン酸 (0.46 g, 3.0 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (0.07 g, 0.06 mmol)、炭酸カリウム (1.38 g, 10 mmol) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。トルエン (7 mL)、エタノール (3.5 mL)、水 (3.5 mL) を加え、凍結脱気を 3 回行った後、24 時間加熱還流を行った。反応液を酢酸エチル (100 mL) で希釈し、セライトろ過を行った後、有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (CH2Cl2/MeOH) により精製し、式(7)で表される1,4-ビス(2-メトキシフェニル)-2,5-ジメトキシベンゼン (0.29 g, 0.82 mmol, 82%) を無色固体として得た。
【0102】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 3.72 (s, 6H), 3.83 (s, 6H), 6.91 (s, 2H), 6.70-7.03 (m, 4H), 7.33-7.35 (m, 4H).
【0103】
製造例8 化合物8の合成
【0104】
【0105】
フレームドライした 80 mL シュレンク管に 1,4-ジヨード-2,5-ジメトキシベンゼン (0.39 g, 1.0 mmol)、2-ビフェニルボロン酸 (0.59 g, 3.0 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (0) (0.07 g, 0.06 mmol)、炭酸カリウム (1.38 g, 10 mmol) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。トルエン (7 mL)、水 (3.5 mL) を加え、凍結脱気を 3 回行った後、16 時間加熱還流を行った。反応液を酢酸エチル (100 mL) で希釈し、セライトろ過を行った後、有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (CH2Cl2/MeOH) により精製し、式(8)で表される1,4-ビス(2-ビフェニル)-2,5-ジメトキシベンゼン (0.39 g, 0.89 mmol, 89%) を無色固体として得た。
【0106】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 3.16 (s, 6H), 6.53 (s, 2H), 7.16-7.26 (m, 10H), 7.39-7.43 (m, 8H).
【0107】
製造例9 化合物9の合成
【0108】
【0109】
60 mL バイアル管に 2,5-ジフェニルヒドロキノン (0.27 g, 1.0 mmol)、tert-ブチルジメチルクロロシラン (0.60 g, 4.0 mmol)、イミダゾール (0.27 g, 4.0 mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン (触媒量) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。ジクロロメタン (10 mL) を加え、16 時間加熱還流を行った。水 (50 mL) で反応を停止し、水層を酢酸エチル (100 mL×2) で抽出し、得た有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (CH2Cl2/MeOH) により精製し、式(9)で表される1,4-ビス(tert-ブチルジメチルシロキシ)-2,5-ジフェニルベンゼン (0.47 g, 0.95 mmol, 95%) を無色固体として得た。
【0110】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ -0.10 (s, 12H), 0.82 (s, 18H), 6.86 (s, 2H), 7.30 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.39 (t, J = 7.2 Hz, 4H), 7.52 (d, J = 7.2 Hz, 4H).
【0111】
製造例10 化合物10の合成
【0112】
【0113】
60 mL バイアル管に 2,5-ジフェニルヒドロキノン (0.18 g, 0.7 mmol)、イミダゾール (0.19 g, 2.8 mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン (触媒量) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。ジクロロメタン (10 mL)、tert-ブチルジフェニルクロロシラン (0.7 mL, 2.8 mmol) を加え、16 時間加熱還流を行った。水 (50 mL) で反応を停止し、水層を酢酸エチル (100 mL×2) で抽出し、得た有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (CH2Cl2/hexane) により精製し、式(10)で表される1,4-ビス(tert-ブチルジフェニルシロキシ)-2,5-ジフェニルベンゼン (0.48 g, 0.64 mmol, 92%) を無色固体として得た。
【0114】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 0.81 (s, 18H), 6.40 (s, 2H), 7.08-7.21 (m, 10H), 7.34 (t, J = 6.4 Hz, 8H), 7.41 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 7.59 (d, J = 6.4 Hz, 8H).
【0115】
製造例11 化合物11の合成
【0116】
【0117】
60 mL バイアル管に 2,5-ジフェニルヒドロキノン (0.18 g, 0.7 mmol)、トリフェニルクロロシラン (0.83 g, 2.8 mmol)、イミダゾール (0.19 g, 2.8 mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン (触媒量) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。ジクロロメタン (10 mL) を加え、24 時間加熱還流を行った。水 (50 mL) で反応を停止し、水層を酢酸エチル (100 mL×2) で抽出し、得た有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (CH2Cl2/hexane) により精製し、式(11)で表される1,4-ビス(トリフェニルシロキシ)-2,5-ジフェニルベンゼン (0.51 g, 0.66 mmol, 94%) を無色固体として得た。
【0118】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 6.71 (s, 2H), 7.12-7.22 (m, 10H), 7.26-7.29 (m, 12H), 7.38-7.46 (m, 18H).
【0119】
製造例12 化合物12の合成
【0120】
【0121】
60 mL バイアル管に 2,5-ビス(2-メチルフェニル)ヒドロキノン (0.29 g, 1.0 mmol)、tert-ブチルジメチルクロロシラン (0.60 g, 4.0 mmol)、イミダゾール (0.27 g, 4.0 mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン (触媒量) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。ジクロロメタン (10 mL) を加え、24 時間加熱還流を行った。水 (50 mL) で反応を停止し、水層を酢酸エチル (100 mL×2) で抽出し、得た有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (CH2Cl2/MeOH) により精製し、式(12)で表される1,4-ビス(tert-ブチルジメチルシロキシ)-2,5-ビス(2-メチルフェニル)ベンゼン (0.52 g, 1.0 mmol, 100%) を無色固体として得た。
【0122】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ -0.06 (s, 12H), 0.68 (s, 18H), 2.25 (s, 6H), 6.68 (s, 2H), 7.21-7.22 (m, 8H).
【0123】
製造例13 化合物13の合成
【0124】
【0125】
60 mL バイアル管に 2,5-ビス(2-メチルフェニル)ヒドロキノン (0.29 g, 1.0 mmol)、イミダゾール (0.27 g, 4.0 mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン (触媒量) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。ジクロロメタン (10 mL)、tert-ブチルジフェニルクロロシラン (1.0 mL, 4.0 mmol) を加え、24 時間加熱還流を行った。水(50 mL) で反応を停止し、水層を酢酸エチル (100 mL×2) で抽出し、得た有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (CH2Cl2/hexane) により精製し、式(13)で表される1,4-ビス (tert-ブチルジフェニルシロキシ) -2,5-ビス (2-メチルフェニル) ベンゼン (0.62 g, 0.81 mmol, 81%) を無色固体として得た。
【0126】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 0.64 (s, 18H), 1.07 (s, 6H), 6.28 (s, 2H), 7.06-7.12 (m, 8H), 7.38 (t, J = 6.0 Hz, 8H), 7.51-7.53 (m, 8H), 7.71 (d, J = 6.0 Hz, 4H).
【0127】
製造例14 化合物14の合成
【0128】
【0129】
60 mL バイアル管に 2,5-ビス(2-メチルフェニル)ヒドロキノン (0.29 g, 1.0 mmol)、トリフェニルクロロシラン (1.17 g, 4.0 mmol)、イミダゾール (0.27 g, 4.0 mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン (触媒量) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。ジクロロメタン (10 mL) を加え、24 時間加熱還流を行った。水 (50 mL) で反応を停止し、水層を酢酸エチル (100 mL×2) で抽出し、得た有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (CH2Cl2/hexane) により精製し、式(14)で表される1,4-ビス(トリフェニルシロキシ)-2,5-ビス(2-メチルフェニル)ベンゼン (0.69 g, 0.85 mmol, 85%) を無色固体として得た。
【0130】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 1.94 (s, 6H), 6.58 (s, 2H), 6.77 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 7.07 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 7.20-7.26 (m, 28H), 7.35 (t, J = 6.8 Hz, 6H).
【0131】
製造例15 化合物15の合成
【0132】
【0133】
60 mL バイアル管に 2,5-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ヒドロキノン (0.32 g, 1.0 mmol)、tert-ブチルジメチルクロロシラン (0.60 g, 4.0 mmol)、イミダゾール (0.27 g, 4.0 mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン (触媒量) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。ジクロロメタン (10 mL) を加え、24 時間加熱還流を行った。水(50 mL) で反応を停止し、水層を酢酸エチル (100 mL×2) で抽出し、得た有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (CH2Cl2/MeOH) により精製し、式(15)で表される1,4-ビス(tert-ブチルジメチルシロキシ)-2,5-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ベンゼン (0.54 g, 0.99 mmol, 99%) を無色固体として得た。
【0134】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ -0.07 (s, 12H), 0.64 (s, 18H), 2.14 (s, 12H), 6.59 (s, 2H), 7.08-7.14 (m, 6H).
【0135】
製造例16 化合物16の合成
【0136】
【0137】
60 mL バイアル管に 2,5-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ヒドロキノン (0.29 g, 1.0 mmol)、イミダゾール (0.27 g, 4.0 mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン (触媒量) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。ジクロロメタン (10 mL)、tert-ブチルジフェニルクロロシラン (1.0 mL, 4.0 mmol) を加え、24 時間加熱還流を行った。水 (50 mL) で反応を停止し、水層を酢酸エチル (100 mL×2) で抽出し、得た有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (CH2Cl2/hexane) により精製し、式(16)で表される1,4-ビス(tert-ブチルジフェニルシロキシ)-2,5-ビス(2-メチルフェニル)ベンゼン (0.65 g, 0.82 mmol, 82%) を無色固体として得た。
【0138】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 0.62 (s, 18H), 1.91 (s, 12H), 6.27 (s, 2H), 6.98 (d, J = 6.8 Hz, 4H), 7.05 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 7.28 (t, J = 7.2 Hz, 8H), 7.35 (t, J = 7.2 Hz, 4H), 7.55 (d, J = 7.2 Hz, 8H).
【0139】
製造例17 化合物17の合成
【0140】
【0141】
15 mL バイアル管に 1,4-ビス(3-ピリジル)-2,5-ジメトキシベンゼン (0.29 g, 1.0 mmol)、臭化水素の酢酸溶液 (5.1 M, 5 mL) を加え、100 ℃ で 48 時間加熱した。反応溶液に水酸化ナトリウム水溶液 (10 mL) で反応を停止し、水層を酢酸エチル (100 mL) で抽出し、得た有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した。得た粗生成物を 60 mL バイアル管に入れ、tert-ブチルジメチルクロロシラン (0.60 g, 4.0 mmol)、イミダゾール (0.27 g, 4.0 mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン (触媒量) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。ジクロロメタン (10 mL) を加え、16 時間加熱還流を行った。水 (50 mL) で反応を停止し、水層を酢酸エチル (100 mL×2) で抽出し、得た有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル = 4:1) により精製し、式(17)で表される1,4-ビス(tert-ブチルジメチルシロキシ)-2,5-ビス(3-ピリジル)ベンゼン (0.37 g, 0.76 mmol, 76%) を無色固体として得た。
【0142】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ -0.04 (s, 12H), 0.83 (s, 18H), 6.88 (s, 2H), 7.35 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 7.87 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 8.58 (s, 2H), 8.76 (s, 2H).
【0143】
製造例18 化合物18の合成
【0144】
【0145】
15 mL バイアル管に 1,4-ビス(3-ピリジル)-2,5-ジメトキシベンゼン (0.29 g, 1.0 mmol)、臭化水素の酢酸溶液 (5.1 M, 5 mL) を加え、100 ℃ で 48 時間加熱した。反応溶液に水酸化ナトリウム水溶液 (10 mL) で反応を停止し、水層を酢酸エチル (100 mL) で抽出し、得た有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した。得た粗生成物を 60 mL バイアル管に入れ、tert-ブチルジフェニルクロロシラン (1.0 mL, 4.0 mmol)、イミダゾール (0.27 g, 4.0 mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン (触媒量) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。ジクロロメタン (10 mL) を加え、16 時間加熱還流を行った。水 (50 mL) で反応を停止し、水層を酢酸エチル (100 mL×2) で抽出し、得た有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル = 3:1) により精製し、式(18)で表される1,4-ビス(tert-ブチルジフェニルシロキシ)-2,5-ビス(3-ピリジル)ベンゼン (0.55 g, 0.74 mmol, 74%) を無色固体として得た。
【0146】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 0.83 (s, 18H), 6.40 (s, 2H), 7.15-7.19 (m, 4H), 7.36 (t, J = 6.8 Hz, 8H), 7.44-7.48 (m, 6H), 7.58-7.60 (m, 6H), 8.19 (s, 2H), 8.46 (d, J = 3.2 Hz, 2H).
【0147】
製造例19 化合物19の合成
【0148】
【0149】
フレームドライした 80 mL シュレンク管に 1,4-ジブロモ-2,5-ジメチルベンゼン (0.26 g, 1.0 mmol)、フェニルボロン酸 (0.37 g, 3.0 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (0.07 g, 0.06 mmol)、炭酸カリウム (1.38 g, 10 mmol) を入れ、脱気・アルゴン置換を 3 回行った。トルエン (7 mL)、水 (3.5 mL) を加え、凍結脱気を 3 回行った後、16 時間加熱還流を行った。反応液を酢酸エチル (100 mL) で希釈し、セライトろ過を行った後、有機層を水 (50 mL×2)、飽和塩化ナトリウム水溶液 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、再結晶 (CH2Cl2/MeOH) により精製し、式(19)で表される1,4-ジメチル-2,5-ジフェニルベンゼン (0.24 g, 0.94 mmol, 94%) を無色固体として得た。
【0150】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ 2.28 (s, 6H), 7.16 (s, 2H), 7.35-7.43 (m, 10H).
【0151】
化合物1~8はジアルコキシターアリレン、化合物9~18はジシロキシターアリレン、化合物19はジメチルターフェニルである。
【0152】
実施例1 発光の測定
製造例1~19の化合物1~19の発光極大波長及び発光量子収率は、浜松ホトニクス社製絶対PL量子収率測定装置(C9920-02)を用いて室温、大気下、測定した。PMMA薄膜は、紫外発光材料である製造例1~19の化合物1~19の各々とPMMAとをジクロロメタン溶液に溶かし、スピンコート法により成膜して調製した。また、融点、5%分解点は、セイコーインスツルメント社製TG/DTA6200を用いて窒素雰囲気下で測定した。
【0153】
1-1.粉末状態での発光の測定
製造例1~19にて合成した粉末状態の化合物1~19の発光極大波長、発光量子収率、融点、5%分解点を表1に示す。また、粉末状態の化合物1、9~11、19の化合物の蛍光極大波長を
図3に示す。
【0154】
製造例1の化合物1の発光極大波長が 372 nm であるのに対し、製造例2や製造例3の化合物の発光極大波長は、それぞれ 357 nm および 340 nm であった。すなわち、置換基A1およびA2のフェニル基の2位や6位に置換基を導入してターフェニル部位の捻れを大きくすればするほど発光波長を短波長シフトさせることができる。また、製造例1と製造例9の発光極大波長の比較するとわかるように、B1およびB2をメトキシ基からオルガノシロキシ基に代えることによっても、発光波長が短波長シフトする。さらに、B1およびB2としてオルガノシロキシ基を用いたりA1およびA2のフェニル基に置換基を導入すると、融点や熱分解点が向上する。すなわち、嵩高い置換基を導入することにより熱安定性に優れる紫外線発光体を得ることができる。またいずれも、ホスト材料に分散させた状態ではなく、粉末状態において良好な発光量子収率を示すことから、これらの製造例は非ドープ型発光層として利用することが可能である。
【0155】
1-2.PMMA薄膜に分散した状態での発光の測定
製造例1~19にて合成した化合物1~19のPMMA膜中の発光極大波長及び発光量子収率を表1に示す。また、PMMA膜中の化合物1、9~11、19の化合物の蛍光極大波長を
図4に示す。
【0156】
PMMA膜中の発光極大波長は、概して粉末状態での発光極大波長よりも短波長側に現れる。また、粉末状態の場合と同様に、置換基A1およびA2のフェニル基の2位や6位に置換基を導入してターフェニル部位の捻れを大きくすればするほど、若しくはB1およびB2をメトキシ基からオルガノシロキシ基に代えることによって、発光波長を短波長シフトさせることができる。本発明は、PMMA膜に分散した状態においても良好な発光量子収率を示すことから、これらは蛍光ドーパントとして利用することが可能である。
【0157】
【0158】
実施例2 有機発光ダイオードの製造
ITO被覆ガラス基板上に、まずPEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/スチレンスルホン酸塩)の水分散液を塗布し、その後乾燥することによって厚さ100 nm の正孔注入層を形成した。この上に、製造例11の化合物を含有するトルエン溶液をスピンコーティングして、厚さ100 nm の発光層を形成した。積層体を乾燥させてから Ba/Al カソードを該積層体に気相堆積させ、得られた装置を封入し、ITO(アノード)/正孔注入層/発光層/カソードからなる有機発光ダイオードを完成させた。かかる有機発光ダイオードの発光を実施例1と同様に測定したところ、紫外領域に発光極大波長をもつ発光を示した。