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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】引戸のアシスト装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 1/16 20060101AFI20231019BHJP
   E05F 3/04 20060101ALI20231019BHJP
   E06B 3/46 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
E05F1/16 B
E05F3/04
E06B3/46
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020026437
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021130959
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390021153
【氏名又は名称】株式会社SKB
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】山元 達矢
(72)【発明者】
【氏名】大野 修平
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-119956(JP,A)
【文献】特開2017-82519(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129494(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02886769(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-13/04
E05F 17/00
E06B 3/42- 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドレール(4)と戸パネル(1)の間に、開放操作される戸パネル(1)を全開放位置の手前の引残し位置へ向かって移動操作するアシスト構造と、戸パネル(1)を引残し位置から全開放位置まで移動可能とする位置保持構造とが配置されており、
アシスト構造は、戸パネル(1)と同行移動するケーシング(20)と、ケーシング(20)内に配置されるシリンダー型のダンパー(21)と、蓄力ばね(22)と、トリガー体(23)と、トリガー体(23)を待機姿勢と作動姿勢に切り換え操作するトリガー切換え具(27)を備えており、
位置保持構造は、ガイドレール(4)でスライド可能に案内支持されるスライドベース(33)と、スライドベース(33)を所定位置で閉じ移動不能に受止めるベースブロック(34)と、スライドベース(33)の開放端側に配置されるシーソーアーム(35)と、ガイドレール(4)に設けられるアーム係合穴(36)と、シーソーアーム(35)をアーム係合穴(36)に向かって揺動付勢する付勢ばね(54)と、シーソーアーム(35)を付勢ばね(54)の付勢力に抗して揺動操作するアーム切換え具(37)とを備えており、
シーソーアーム(35)は、スライドベース(33)でシーソー揺動可能に支持されて、同アーム(35)に設けた係脱ピン(51)がアーム係合穴(36)と係合する位置保持姿勢と、係脱ピン(51)がアーム係合穴(36)から分離する保持解除姿勢とに揺動変位可能であり、
トリガー切換え具(27)はスライドベース(33)に設けられ、アーム切換え具(37)はケーシング(20)の開放端側に設けられており、
戸パネル(1)がアシスト構造で引残し位置に向って開放操作される状態では、位置保持姿勢に切換ったシーソーアーム(35)の係脱ピン(51)がアーム係合穴(36)と係合して、スライドベース(33)が移動不能に保持されており、
戸パネル(1)が引残し位置まで開放移動する間に、シーソーアーム(35)がアーム切換え具(37)で自動的に保持解除姿勢に切換えられて、係脱ピン(51)とアーム係合穴(36)の係合が解除され、戸パネル(1)を引残し位置から全開放位置へ向かって開放操作することができるように構成されていることを特徴とする引戸のアシスト装置。
【請求項2】
スライドベース(33)の開放端側に配置したシーソーアーム(35)が、水平の支軸(53)の回りにシーソー揺動可能に支持されて、付勢ばね(54)で位置保持姿勢に向って揺動付勢されており、
シーソーアーム(35)の一端にアーム係合穴(36)に係脱する係脱ピン(51)が形成され、シーソーアーム(35)の他端にアーム切換え具(37)で切換え操作される受動部(52)が設けられている請求項1に記載の引戸のアシスト装置。
【請求項3】
スライドベース(33)が、シーソーアーム(35)を支持する開放端側の第1ベース(41)と、ベースブロック(34)で受止め保持される閉じ端側の第2ベース(42)と、これら両ベース(41・42)を連結する連結枠(43)とで構成されており、
第1ベース(41)の下面にトリガー切換え具(27)が設けられ、第1ベース(41)の開放端側にシーソーアーム(35)を支持するアームブラケット(44)が二又状に形成されており、
シーソーアーム(35)が一対のアームブラケット(44)に設けた水平の支軸(53)で揺動可能に支持されて、支軸(53)の両端に装着した付勢ばね(54)で位置保持姿勢に向って揺動付勢されている請求項1、または2に記載の引戸のアシスト装置。
【請求項4】
ガイドレール(4)と戸パネル(1)の間に、開放操作される戸パネル(1)を全開放位置の手前の引残し位置へ向かって移動操作するアシスト構造と、戸パネル(1)を引残し位置から全開放位置まで移動可能とする位置保持構造とが配置されており、
アシスト構造は、戸パネル(1)と同行移動するケーシング(20)と、ケーシング(20)内に配置されるシリンダー型のダンパー(21)と、蓄力ばね(22)と、トリガー体(23)と、トリガー体(23)を待機姿勢と作動姿勢に切り換え操作するトリガー切換え具(27)とを備えており、
位置保持構造は、ガイドレール(4)でスライド可能に案内支持されるスライドベース(33)と、スライドベース(33)を所定位置で閉じ移動不能に受止めるベースブロック(34)と、ベースブロック(34)の開放端側に配置されるシーソーアーム(35)と、スライドベース(33)の閉じ端側に設けられるアーム係合爪(56)と、シーソーアーム(35)をアーム係合爪(56)と係合する向きに揺動付勢する付勢ばね(54)と、シーソーアーム(35)を付勢ばね(54)の付勢力に抗して揺動操作するアーム切換え具(37)とを備えており、
シーソーアーム(35)は、ベースブロック(34)に設けた垂直の支軸(53)でシーソー揺動可能に支持されて、同アーム(35)に設けた係脱爪(57)がアーム係合爪(56)と係合する位置保持姿勢と、係脱爪(57)がアーム係合爪(56)から分離する保持解除姿勢とに揺動変位可能であり、
トリガー切換え具(27)はスライドベース(33)に設けられ、アーム切換え具(37)はアシスト構造のケーシング(20)の閉じ端側に設けられており、
戸パネル(1)がアシスト構造で引残し位置に向って開放操作される状態では、位置保持姿勢に切換ったシーソーアーム(35)の係脱爪(57)がアーム係合爪(56)と係合して、スライドベース(33)が移動不能に保持されており、
戸パネル(1)が引残し位置まで開放移動する間に、シーソーアーム(35)がアーム切換え具(37)で自動的に保持解除姿勢に切換えられて、係脱爪(57)とアーム係合爪(56)の係合が解除され、戸パネル(1)を引残し位置から全開放位置へ向かって開放操作することができるように構成されていることを特徴とする引戸のアシスト装置。
【請求項5】
ベースブロック(34)の開放端側に配置したシーソーアーム(35)が、垂直の支軸(53)の回りにシーソー揺動可能に支持されて、付勢ばね(54)で位置保持姿勢に向って揺動付勢されており、
アシスト構造のケーシング(20)の閉じ端側にアーム切換え具(37)が設けられており、
シーソーアーム(35)の一端に係脱爪(57)が形成され、シーソーアーム(35)の他端にアーム切換え具(37)で切換え操作される受動部(52)が設けられており、
位置保持姿勢における係脱爪(57)が、スライドベース(33)の閉じ端側に設けたアーム係合爪(56)と係合して、スライドベース(33)の開放方向への移動を規制している請求項4に記載の引戸のアシスト装置。
【請求項6】
戸パネル(1)がアシスト構造で引残し位置に向って開放移動操作されるときのアシストストロークの終端寄りにおいて、戸パネル(1)の開放方向への移動を一時停止させる緩衝構造がスライドベース(33)とランナー(5)の間に設けられており、
緩衝構造は、スライドベース(33)に設けられる緩衝体(63)と、ランナー(5)のランナーブロック(13)で水平揺動可能に支持される揺動レバー(64)と、揺動レバー(64)を待機姿勢に向かって揺動付勢するレバーばね(65)とを備えており、
緩衝体(63)には、揺動レバー(64)の受動ピン(66)を移動案内する緩衝溝(67)と、受動ピン(66)の閉じ方向への通過を許す復帰溝(68)とが形成されており、
緩衝溝(67)は、入口ガイド溝(69)と中央ガイド溝(70)と出口ガイド溝(71)とでZ字状に構成されて、各溝(69・70・71)が階段状に連続しており、
戸パネル(1)を引き残し位置から開放操作すると、揺動レバー(64)の受動ピン(66)が入口ガイド溝(69)から中央ガイド溝(70)へ落込み係合し、揺動レバー(64)の受動ピン(66)が中央ガイド溝(70)の横受壁(70a)で受止め支持されて戸パネル(1)が一時停止しており、
一時停止した戸パネル(1)を閉じ移動することにより、揺動レバー(64)の受動ピン(66)が中央ガイド溝(70)から出口ガイド溝(71)へ落込み係合して、出口ガイド溝(71)を開放端側へ通り抜け可能であり、
全開放位置にある戸パネル(1)が閉じ操作される状態では、揺動レバー(64)の受動ピン(66)が復帰溝(68)から入口ガイド溝(69)へ落込み係合して緩衝体(63)を通り抜けることができる請求項1から5のいずれかひとつに記載の引戸のアシスト装置。
【請求項7】
戸パネル(1)に設けたランナー(5)がガイドレール(4)で開閉自在に案内支持されており、
ランナー(5)の移動領域とガイドレール(4)の上壁との間に設けた補助レール(12)の内部に、帯板状のスライドベース(33)とベースブロック(34)とシーソーアーム(35)とが配置されており、
アシスト構造ないしランナー(5)に設けたアーム切換え具(37)でシーソーアーム(35)を切換え操作する請求項1から6のいずれかひとつに記載の引戸のアシスト装置。
【請求項8】
ベースブロック(34)が、引残し位置における戸パネル(1)の閉じ端よりガイドレール(4)の閉じ端側へ偏寄した位置に固定されており、
ベースブロック(34)で受止め保持されたスライドベース(33)の閉じ端が、戸パネル(1)の閉じ端から突出されている請求項1から7のいずれかひとつに記載の引戸のアシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸パネルを開閉ストローク端の近傍においてストローク端へ向かって移動操作する引戸のアシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引戸のアシスト装置に関して、本出願人は特許文献1のアシスト装置を提案している。特許文献1のアシスト装置は、ランナーと同行移動するケーシングの内部に、シリンダー型のダンパーと、ダンパーの一端に接合されるスライダーと、トリガー体と、蓄力ばねなどを収容して構成されている。また、ガイドレールにはトリガー体を待機姿勢と作動姿勢に切換え操作する切換え具が固定されている。
【0003】
戸袋から出し入れされる引戸においては、戸パネルに設けた把手が戸袋内へ入り込むのを防ぐ必要上、戸パネルの開放限界を把手が戸袋の外に露出する位置に設定している。こうした引戸においては、戸パネルの一部が戸袋から出ている分(以下引残しと言う)だけ開口部幅が小さくなってしまう。そのため、引っ越し時や部屋の模様替えのために大形のたんす等を移動させるような場合には、戸パネルの全体を戸袋内に収容して、全開時の開口部幅を大きくできることが望まれる。こうした要請に応えるために、必要時には戸パネルの全体を戸袋内に収容できるようにした可動トリガー装置が特許文献2に開示されている。
【0004】
特許文献2の第1の可動トリガー装置は、レール内部に可動具と、トリガー部材を収容しており、可動具に設けた突出部材をレールの係止部に係合させることにより、戸パネルを引残し位置で停止できるようにしている。可動具は帯板状のトリガー部材の開放端に固定されており、必要時には、突出部材を付勢部材のばね力に抗して引下げ操作して、突出部材をレールの係止部から抜外すことにより、戸パネルの全体を引残し位置から戸袋内に収容することができる。また、戸パネルを戸袋内の全開位置から閉じ操作すると、トリガー部材がアシスト装置に同行して閉じ移動し、その閉じ端がレール内部に固定したブロック部材に接当した時点で、突出部材がレールの係止部に落込み係合する。特許文献2の第2の可動トリガー装置では、突出部材の先端部とレールの係止部の互いに接する面の一方を傾斜面で形成して、可動具に所定以上の外力が作用すると突出部材と係止部の係合が解除されて、戸パネルの全体を引残し位置から戸袋内に収容できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-119390号公報
【文献】特開2017-119956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の第1の可動トリガー装置によれば、戸パネルを引残し位置で停止したのち、突出部材を付勢部材のばね力に抗して引下げ操作することにより、戸パネルの全体を戸袋内に収容することができる。しかし、戸パネルを引残し位置まで開放したのち、ユーザー自身が突出部材を付勢部材のばね力に抗して引下げ操作する必要があるので、余分な手間が掛かる。また、戸袋の片面が室内に向かって開口していない場合には、突出部材を引下げ操作することができない不利もある。
【0007】
その点、可動具に所定以上の外力を作用させて、突出部材と係止部の係合を解除する特許文献2の第2の可動トリガー装置の場合には、突出部材を引下げ操作する手間を省くことができるうえ、戸袋の片面が室内に向かって開口していない場合であっても、突出部材と係止部の係合を解除して、戸パネルの全体を引残し位置から戸袋内に収容することができる。しかし、戸パネルがアシスト装置の作動が終了した時点、つまり戸パネルが引残し位置までゆっくりと開放されてから、改めて戸パネルを戸袋内へ押込み操作して、突出部材と係止部の係合を解除する必要があるため手間がかかり煩わしい。
【0008】
本発明の目的は、引残し位置における戸パネルの開放操作をより少ない手間で簡便に行うことができる引戸のアシスト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ガイドレール4と戸パネル1の間に、開放操作される戸パネル1を全開放位置の手前の引残し位置へ向かって移動操作するアシスト構造と、戸パネル1を引残し位置から全開放位置まで移動可能とする位置保持構造とが配置されている引戸のアシスト装置を対象とする。アシスト構造は、戸パネル1と同行移動するケーシング20と、ケーシング20内に配置されるシリンダー型のダンパー21と、蓄力ばね22と、トリガー体23と、トリガー体23を待機姿勢と作動姿勢に切り換え操作するトリガー切換え具27とを備えている。位置保持構造は、ガイドレール4でスライド可能に案内支持されるスライドベース33と、スライドベース33を所定位置で閉じ移動不能に受止めるベースブロック34と、スライドベース33の開放端側に配置されるシーソーアーム35と、ガイドレール4に設けられるアーム係合穴36と、シーソーアーム35をアーム係合穴36に向かって揺動付勢する付勢ばね54と、シーソーアーム35を付勢ばね54の付勢力に抗して揺動操作するアーム切換え具37とを備えている。シーソーアーム35は、スライドベース33でシーソー揺動可能に支持されて、同アーム35に設けた係脱ピン51がアーム係合穴36と係合する位置保持姿勢と、係脱ピン51がアーム係合穴36から分離する保持解除姿勢に揺動変位可能である。トリガー切換え具27はスライドベース33に設けられ、アーム切換え具37はアシスト構造のケーシング20の開放端側に設けられている。戸パネル1がアシスト構造で引残し位置に向って開放操作される状態では、位置保持姿勢に切換ったシーソーアーム35の係脱ピン51がアーム係合穴36と係合して、スライドベース33が移動不能に保持されている。そして、戸パネル1が引残し位置まで開放移動する間に、シーソーアーム35がアーム切換え具37で自動的に保持解除姿勢に切換えられて、係脱ピン51とアーム係合穴36の係合が解除され、戸パネル1を引残し位置から全開放位置へ向かって開放操作することができるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
スライドベース33の開放端側に配置したシーソーアーム35は、水平の支軸53の回りにシーソー揺動可能に支持されて、付勢ばね54で位置保持姿勢に向って揺動付勢されている。シーソーアーム35の一端にアーム係合穴36に係脱する係脱ピン51が形成され、シーソーアーム35の他端にアーム切換え具37で切換え操作される受動部52が設けられている。
【0011】
スライドベース33は、シーソーアーム35を支持する開放端側の第1ベース41と、ベースブロック34で受止め保持される閉じ端側の第2ベース42と、これら両ベース41・42を連結する連結枠43とで構成されている。第1ベース41の下面にトリガー切換え具27が設けられ、第1ベース41の開放端側にシーソーアーム35を支持するアームブラケット44が二又状に形成されている。シーソーアーム35が一対のアームブラケット44に設けた水平の支軸53で揺動可能に支持されて、支軸53の両端に装着した付勢ばね54で位置保持姿勢に向って揺動付勢されている。
【0012】
本発明は、ガイドレール4と戸パネル1の間に、開放操作される戸パネル1を全開放位置の手前の引残し位置へ向かって移動操作するアシスト構造と、戸パネル1を引残し位置から全開放位置まで移動可能とする位置保持構造とが配置されている引戸のアシスト装置を対象とする。アシスト構造は、戸パネル1と同行移動するケーシング20と、ケーシング20内に配置されるシリンダー型のダンパー21と、蓄力ばね22と、トリガー体23と、トリガー体23を待機姿勢と作動姿勢に切り換え操作するトリガー切換え具27とを備えている。位置保持構造は、ガイドレール4でスライド可能に案内支持されるスライドベース33と、スライドベース33を所定位置で閉じ移動不能に受止めるベースブロック34と、ベースブロック34の開放端側に配置されるシーソーアーム35と、スライドベース33の閉じ端側に設けられるアーム係合爪56と、シーソーアーム35をアーム係合爪56と係合する向きに揺動付勢する付勢ばね54と、シーソーアーム35を付勢ばね54の付勢力に抗して揺動操作するアーム切換え具37とを備えている。シーソーアーム35は、ベースブロック34でシーソー揺動可能に支持されて、同アーム35に設けた係脱爪57がアーム係合爪56と係合する位置保持姿勢と、係脱爪57がアーム係合爪56から分離する保持解除姿勢に揺動変位可能である。トリガー切換え具27はスライドベース33に設けられ、アーム切換え具37はアシスト構造のケーシング20の閉じ端側に設けられている。戸パネル1がアシスト構造で引残し位置に向って開放操作される状態では、位置保持姿勢に切換ったシーソーアーム35の係脱爪57がアーム係合爪56と係合して、スライドベース33が移動不能に保持されている。そして、戸パネル1が引残し位置まで開放移動する間に、シーソーアーム35がアーム切換え具37で自動的に保持解除姿勢に切換えられて、係脱爪57とアーム係合爪56の係合が解除され、戸パネル1を引残し位置から全開放位置へ向かって開放操作することができるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
ベースブロック34の開放端側に配置したシーソーアーム35は、垂直の支軸53の回りにシーソー揺動可能に支持されて、付勢ばね54で位置保持姿勢に向って揺動付勢されている。アシスト構造のケーシング20の閉じ端側にアーム切換え具37が設けられている。シーソーアーム35の一端に係脱爪57が形成され、シーソーアーム35の他端にアーム切換え具37で切換え操作される受動部52が設けられている。位置保持姿勢における係脱爪57が、スライドベース33の閉じ端側に設けたアーム係合爪56と係合して、スライドベース33の開放方向への移動を規制している。
【0014】
戸パネル1がアシスト構造で引残し位置に向って開放移動操作されるときのアシストストロークの終端寄りにおいて、戸パネル1の開放方向への移動を一時停止させる緩衝構造がスライドベース33とランナー5の間に設けられている。緩衝構造は、スライドベース33に設けられる緩衝体63と、ランナー5のランナーブロック13で水平揺動可能に支持される揺動レバー64と、揺動レバー64を待機姿勢に向かって揺動付勢するレバーばね65とを備えている。緩衝体63には、揺動レバー64の受動ピン66を移動案内する緩衝溝67と、受動ピン66の閉じ方向への通過を許す復帰溝68とが形成されている。緩衝溝67は、入口ガイド溝69と中央ガイド溝70と出口ガイド溝71でZ字状に構成されて、各溝69・70・71が階段状に連続している。戸パネル1を引き残し位置から開放操作すると、揺動レバー64の受動ピン66が入口ガイド溝69から中央ガイド溝70へ落込み係合し、揺動レバー64の受動ピン66が中央ガイド溝70の横受壁70aで受止め支持されて戸パネル1が一時停止している。一時停止した戸パネル1を閉じ移動することにより、揺動レバー64の受動ピン66が中央ガイド溝70から出口ガイド溝71へ落込み係合して、出口ガイド溝71を開放端側へ通り抜け可能である。全開放位置にある戸パネル1が閉じ操作される状態では、揺動レバー64の受動ピン66が復帰溝68から入口ガイド溝69へ落込み係合して緩衝体63を通り抜けることができる。
【0015】
戸パネル1に設けたランナー5がガイドレール4で開閉自在に案内支持されている。ランナー5の移動領域とガイドレール4の上壁との間に設けた補助レール12の内部に、帯板状のスライドベース33とベースブロック34とシーソーアーム35が配置されている。アシスト構造ないしランナー5に設けたアーム切換え具37でシーソーアーム35を切換え操作する。
【0016】
ベースブロック34が、引残し位置における戸パネル1の閉じ端よりガイドレール4の閉じ端側へ偏寄した位置に固定されている。ベースブロック34で受止め保持されたスライドベース33の閉じ端が、戸パネル1の閉じ端から突出されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る引戸のアシスト装置では、ガイドレール4と戸パネル1の間に戸パネル1を引残し位置へ向かって移動操作するアシスト構造と、戸パネル1を引残し位置から全開放位置まで移動可能とする位置保持構造を配置するようにした。位置保持構造は、ガイドレール4で案内支持されるスライドベース33と、スライドベース33を所定位置で受止めるベースブロック34と、シーソーアーム35と、アーム係合穴36と、シーソーアーム35を揺動付勢する付勢ばね54と、シーソーアーム35を揺動操作するアーム切換え具37とを備えるようにした。
【0018】
上記のように位置保持構造を備えたアシスト装置によれば、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置に向って開放操作される状態では、スライドベース33がベースブロック34で閉じ移動不能に受止められる。さらに、位置保持姿勢に切換ったシーソーアーム35の係脱ピン51がアーム係合穴36と係合して、スライドベース33が開放移動不能に保持される。しかし、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置まで開放操作されると、シーソーアーム35が戸パネル1と同行移動するアーム切換え具37で自動的に保持解除姿勢に切換えられて、係脱ピン51とアーム係合穴36の係合が解除される。その結果、スライドベース33の開放方向への移動が可能となり、戸パネル1を引残し位置から全開放位置へ向かって開放操作することが可能となる。
【0019】
以上のように本発明のアシスト装置によれば、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置まで開放移動される動作を利用して、位置保持構造のシーソーアーム35を位置保持姿勢から保持解除姿勢に自動的に切換えるので、アシスト構造による戸パネル1の開放移動に連続して、戸パネル1を手動で全開放位置へ押込み操作するだけでよく、従来のこの種のアシスト装置に比べて、引残し位置における戸パネル1の開放操作をより少ない手間で簡便に行える。また、位置保持構造のシーソーアーム35が保持解除姿勢に切換った状態では、戸パネル1を軽く押込み操作するだけで全開放位置へ収納できるので、戸パネル1に大きな外力を作用させて係合状態を解除する必要があった従来のアシスト装置に比べて、引残し位置から全開放位置までの戸パネル1の開放操作を軽快に行える。さらに、戸パネル1が引残し位置まで開放操作された状態におけるアシスト装置は、待機状態にあって戸パネル1の開閉移動に関して移動を妨げることがなく、従って全開位置まで開放されて戸袋3内に収まっている状態の戸パネル1の引き出し操作を軽快に行える。
【0020】
スライドベース33に配置したシーソーアーム35を、水平の支軸53でシーソー揺動可能に支持し、付勢ばね54で位置保持姿勢に向って揺動付勢されるようにした。また、アーム係合穴36に係脱する係脱ピン51と、アーム切換え具37で切換え操作される受動部52をシーソーアーム35に設けて、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置まで開放操作されるとき、アーム切換え具37が受動部52に接当して、シーソーアーム35を位置保持姿勢から保持解除姿勢に切換えるようにした。こうしたアシスト装置によれば、スライドベース33、ベースブロック34、シーソーアーム35、付勢ばね54などの位置保持構造の構成部品を、アシスト構造の移動領域とガイドレール4の上壁の間のスペースを利用して配置できるので、既存のアシスト構造およびガイドレール4の構造を変更する必要もなく位置保持構造を追加すればよく、位置保持機能を備えたアシスト装置の全体コストを削減できる。また、戸パネル1が大きな力で急速に開放操作されるような場合でも、シーソーアーム35がアーム切換え具37で確実に位置保持姿勢から保持解除姿勢に切換えられるので、シーソーアーム35に外力が集中して破損するのを確実に防止できる。
【0021】
シーソーアーム35を支持する第1ベース41と、ベースブロック34で受止められる第2ベース42と、これら両ベース41・42を連結する連結枠43でスライドベース33を構成し、第1ベース41の下面にトリガー切換え具27を設けるようにした。こうした位置保持構造によれば、長尺のスライドベース33の構造がいたずらに複雑化するのを解消して、位置保持構造の主要部品であるスライドベース33を低コスト化できる。また、第1ベース41のアームブラケット44に設けた水平の支軸53でシーソーアーム35を揺動可能に支持し、支軸53の両端に装着した付勢ばね54で同アーム35を位置保持姿勢に向って揺動付勢するので、シーソーアーム35のアーム係合穴36に対する係脱動作を確実に行うことができ、位置保持構造の切換え動作の信頼性を向上できる。
【0022】
本発明に係る別の引戸のアシスト装置においては、位置保持構造は、ガイドレール4で案内支持されるスライドベース33と、スライドベース33を所定位置で受止めるベースブロック34と、シーソーアーム35と、アーム係合爪56と、シーソーアーム35を位置保持姿勢と保持解除姿勢に切換え操作するアーム切換え具37とを備えるものとした。
【0023】
上記のように位置保持構造を備えたアシスト装置によれば、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置に向って開放操作される状態では、スライドベース33がベースブロック34で閉じ移動不能に受止められる。さらに、位置保持姿勢に切換ったシーソーアーム35の係脱爪57がアーム係合爪56と係合して、スライドベース33が開放移動不能に保持される。しかし、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置まで開放操作されると、戸パネル1と同行移動するアーム切換え具37でシーソーアーム35が自動的に保持解除姿勢に切換えられて、係脱爪57とアーム係合爪56の係合が解除される。その結果、スライドベース33の開放方向への移動が可能となり、戸パネル1を引残し位置から全開放位置へ向かって開放操作することが可能となる。
【0024】
以上のように本発明の別のアシスト装置によれば、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置まで開放移動される動作を利用して、位置保持構造のシーソーアーム35を位置保持姿勢から保持解除姿勢に自動的に切換えるので、アシスト構造による戸パネル1の開放移動に連続して、戸パネル1を手動で全開放位置へ押込み操作するだけでよく、従来のこの種のアシスト装置に比べて、引残し位置における戸パネル1の開放操作をより少ない手間で簡便に行える。また、位置保持構造のシーソーアーム35が保持解除姿勢に切換った状態では、戸パネル1を軽く押込み操作するだけで全開放位置へ収納できるので、戸パネル1に大きな外力を作用させて係合状態を解除する必要があった従来のアシスト装置に比べて、引残し位置から全開放位置までの戸パネル1の開放操作を軽快に行える。さらに、戸パネル1が引残し位置まで開放操作された状態におけるアシスト装置は、待機状態にあって戸パネル1の開閉移動に関して移動を妨げることがなく、従って全開位置まで開放されて戸袋3内に収まっている状態の戸パネル1の引き出し操作を軽快に行える。
【0025】
ベースブロック34に配置したシーソーアーム35を、垂直の支軸53でシーソー揺動可能に支持し、付勢ばね54で位置保持姿勢に向って揺動付勢されるようにした。また、アーム係合爪56に係合する係脱爪57と、アーム切換え具37で切換え操作される受動部52をシーソーアーム35に設けて、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置まで開放操作されるとき、アーム切換え具37が受動部52に接当して、シーソーアーム35を位置保持姿勢から保持解除姿勢に切換えるようにした。こうしたアシスト構造によれば、スライドベース33、ベースブロック34、シーソーアーム35、付勢ばね54などの位置保持構造の構成部品を、アシスト構造の移動領域とガイドレール4の上壁の間のスペースを利用して配置できるので、既存のアシスト構造およびガイドレール4の構造を変更する必要もなく位置保持構造を追加すればよく、位置保持機能を備えたアシスト装置の全体コストを削減できる。また、戸パネル1が大きな力で急速に開放操作されるような場合でも、シーソーアーム35がアーム切換え具37で確実に位置保持姿勢から保持解除姿勢に切換えられるので、シーソーアーム35に外力が集中して破損するのを確実に防止できる。
【0026】
戸パネル1がアシスト装置で引残し位置に向って開放移動操作されるときのアシストストロークの終端寄りに緩衝構造を設けて、戸パネル1の開放方向への移動を一時停止できるようにした。緩衝構造は、スライドベース33に設けた緩衝体63と、ランナーブロック13で水平揺動可能に支持される揺動レバー64と、揺動レバー64を待機姿勢に向かって揺動付勢するレバーばね65で構成した。また、緩衝体63には、揺動レバー64の受動ピン66を移動案内する緩衝溝67を設けて、同溝67を入口ガイド溝69と中央ガイド溝70と出口ガイド溝71でZ字状に構成し、各溝69・70・71を階段状に連続させるようにした。
【0027】
上記のように、緩衝構造を備えたアシスト装置によれば、戸パネル1が引き残し位置から開放操作されるとき、揺動レバー64の受動ピン66が入口ガイド溝69から中央ガイド溝70へ落込み係合し、さらに揺動レバー64の受動ピン66が中央ガイド溝70の横受壁70aで受止め支持されて戸パネル1を一時停止させることができる。つまり、開放アシストストロークの終端寄りにおいて、戸パネル1の開放方向への移動を緩衝構造で一時的に停止させて、戸パネル1が開放アシストストロークの終端から全開放位置へ一気に開放操作されるのを防止できる。従って、戸パネル1を引残し位置から全開放操作するとき、把手10に掛けた指先が戸パネル1と戸袋3の開口縁、あるいは厚み方向に隣接する戸パネル1の間に挟まれるのを解消して安全性を向上できる。また、一時停止した戸パネル1を閉じ移動することにより、揺動レバー64の受動ピン66を中央ガイド溝70から出口ガイド溝71へ落込み係合させて、出口ガイド溝71を開放端側へ通り抜け可能となる。さらに、緩衝体63に受動ピン66の閉じ方向への通過を許す復帰溝68を設けているので、戸パネル1を全開放位置から閉じ移動するときは、受動ピン66が復帰溝68に案内されて緩衝構造を支障なく通過でき、戸パネル1の全開放位置からの閉じ操作を容易にしかも簡便に行える。
【0028】
ランナー5の移動領域とガイドレール4の上壁との間に設けた補助レール12の内部に、スライドベース33とベースブロック34とシーソーアーム35を配置して、アシスト構造ないしランナー5に設けたアーム切換え具37でシーソーアーム35を切換操作できるようにした。こうしたアシスト装置によれば、スライドベース33、ベースブロック34、シーソーアーム35などの、アーム切換え具37を除く位置保持構造の構成部品を補助レール12の内部に収容して保護できる。また、スライドベース33を補助レール12でスライド案内するので、スライドベース33が蛇行するのを防止して、ランナー5およびアシスト構造に同期した状態で正しく開閉移動させることができる。
【0029】
引残し位置における戸パネル1の閉じ端よりガイドレール4の閉じ端側へ偏寄した位置にベースブロック34を固定し、ベースブロック34で受止め保持されたスライドベース33の閉じ端を、戸パネル1の閉じ端から突出させるようにした。こうしたアシスト装置によれば、ベースブロック34をガイドレール4から分離することで、スライドベース33とアシスト装置を、両者が一体になった状態でガイドレール4から抜外すことができるので、シーソーアーム35や付勢ばね54のメンテナンスを簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例1に係る本発明の引戸のアシスト装置の作動状況を示す動作説明図である。
図2】アシスト装置を備えた引戸の正面図である。
図3】アシスト装置の縦断正面図である。
図4】アシスト装置の分解正面図である。
図5】スライドベースおよびガイドレールの斜視図である。
図6】スライドベースおよびガイドレールの縦断正面図である。
図7】位置保持姿勢に切換った状態のシーソーアームの縦断正面図である。
図8】保持解除姿勢に切換った状態のシーソーアームの縦断正面図である。
図9図7におけるA-A線断面図である。
図10】実施例2に係る本発明の引戸のアシスト装置を示す分解斜視図である。
図11】アシスト装置の縦断正面図である。
図12】位置保持姿勢に切換った状態のシーソーアームの横断平面図である。
図13】シーソーアームの作動状況を示す動作説明図である。
図14】実施例3に係る本発明の引戸のアシスト装置を示す縦断正面図である。
図15】緩衝構造の揺動レバーを示す正面図である。
図16】緩衝構造の揺動レバーを示す平面図である。
図17】緩衝構造の作動状況を示す動作説明図である。
図18】実施例4に係る本発明の引戸のアシスト装置を示す縦断正面図であり、シーソーアームの別の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施例1) 本発明に係る引戸のアシスト装置の実施例1を図1から図9に示す。本実施例における前後、左右、上下とは、図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍の前後、左右、上下の各表記に従う。図2に示す引戸は、ウォークインクローゼットや室内に面して設けた収納室の出入口を1枚の戸パネル1で開閉するものであり、開口枠2の右隣には戸袋3が設けられている。
【0032】
図2において、開口枠2の上部には、戸パネル1を開閉案内するガイドレール4が固定されており、その内部には戸パネル1を支持する左右一対のランナー5と、アシスト構造と、位置保持構造などが収容されている。ランナー5は垂直のランナー軸6を介してランナー台7と連結されており、ランナー台7は戸パネル1の上隅に装着されている。開閉時の戸パネル1の前後へのふらつきを防ぐために、戸パネル1の下面にはスライド溝8が設けられており、同溝8を床面に固定したガイドローラー9で案内している。図2において符号10は戸パネル1に凹み形成した把手である。
【0033】
図5および図9に示すようにガイドレール4は、下向きに開口する断面がC字状のアルミニウム条材からなり、その下端の前後にランナー5を案内するレール壁4aが張出し形成され、上壁の内面に補助レール12が設けられている。図3に示すように、ランナー5は、左右に長いランナーブロック13と、同ブロック13の前後面の左右に配置される4個のローラー14、およびローラー軸15などで構成される。ランナーブロック13の一側(開放端側)上部には、アシスト構造を連結するための連結座16が突設されている。ランナー5は、戸パネル1の閉じ端側と開放端側を吊持するが、閉じ端側のランナー5の連結座16にアシスト構造のケーシング20がボルト17により連結されている。
【0034】
図4においてアシスト構造は、上向きに開口するケーシング20と、ケーシング20内に配置されるシリンダー型のダンパー21と、2個の蓄力ばね22と、2個のトリガー体23と、ダンパー21の一端および他端に接合される一対のスライダー24と、各スライダー24をスライド案内する2個のガイド軸25と、トリガー体23を待機姿勢と作動姿勢に切り換え操作するトリガー切換え具26・27(図6参照)などで構成されており、戸パネル1の閉じ動作と開放動作をアシストする。ケーシング20の両端には、それぞれエンドブロック28・29が固定されており、両ブロック28・29と各スライダー24の間に、圧縮ばねからなる蓄力ばね22が配置されている。符号30は、2個のガイド軸25の隣接端を支持する軸ブロックであり、ケーシング20の内部中央に固定されている。アシスト構造は、戸パネル1の閉じ動作時には閉じ端寄りから閉じ位置まで戸パネル1をゆっくりと閉じ操作し、戸パネル1の開放動作時には開放操作される戸パネル1を開放端寄りから戸袋3の外の引残し位置へ向かって移動操作する。
【0035】
戸パネル1がアシスト構造で引残し位置へ向かって移動操作されたのち、戸パネル1を引残し位置から全開放位置まで移動可能とするために、ガイドレール4の内部に位置保持構造を設けている。図5に示すように位置保持構造は、ガイドレール4の補助レール12でスライド可能に案内支持されるスライドベース33と、スライドベース33を所定位置で閉じ移動不能に受止めるベースブロック34と、スライドベース33でシーソー揺動可能に支持されるシーソーアーム35と、シーソーアーム35が係脱するアーム係合穴36と、戸パネル1と同行移動してシーソーアーム35を位置保持姿勢と保持解除姿勢に切換え操作するアーム切換え具37(図8参照)とを備えている。アーム係合穴36は、ガイドレール4の上壁に形成した貫通穴からなる。アーム切換え具37は、ケーシング20の開放端側に設けられており、この実施例ではケーシング20の開放端に固定したエンドブロック29の上面に、アーム切換え具37は膨出形成されている。アーム切換え具37とトリガー切換え具27は、互いに干渉するのを避けるために前後にずらして設けられている(図9参照)。
【0036】
図5に示すように、スライドベース33はシーソーアーム35を支持する第1ベース41と、ベースブロック34で受止め保持される閉じ端側の第2ベース42と、これら両ベース41・42を連結する金属板製の連結枠43とで構成されている。第1ベース41は帯板状のプラスチック成形品からなり、その下面にトリガー切換え具27が設けられ、同ベース41の開放端側にシーソーアーム35を支持するアームブラケット44が二又状に形成されている。また、第1ベース41の前後面の3個所には、補助レール12のレール溝12aで案内支持されるスライド片45が突設されている。第2ベース42は長方形状のプラスチック成形品からなり、その前後面にレール溝12aで案内支持されるスライド片46が突設されている。第1ベース41と第2ベース42にはそれぞれ連結座47が設けられており、これらの連結座47に連結枠43の両端をリベット48で締結することにより、両ベース41・42と連結枠43が一体化されてスライドベース33を構成している。
【0037】
ベースブロック34は長方形状のプラスチック成形品からなり、引残し位置における戸パネル1の閉じ端よりガイドレール4の閉じ端側へ偏寄した位置に配置されて、ガイドレール4の上壁にビス38で固定されている。そのため、スライドベース33がベースブロック34で受止められた状態においては、スライドベース33の閉じ端が戸パネル1の閉じ端から突出する。こうしたスライドベース33によれば、ビス38を緩めてベースブロック34をガイドレール4から分離することで、スライドベース33をケーシング20とガイドレール4の間から抜外すことができるので、シーソーアーム35や付勢ばね54(後述)のメンテナンスを簡便に行うことができる。より詳しくは、位置保持構造が保持解除姿勢に切換った状態で、ベースブロック34をガイドレール4から分離すると、スライドベース33とアシスト装置を、両者が一体になった状態でガイドレール4から抜外すことができる。
【0038】
シーソーアーム35はプラスチック成形品からなり、その右半側のアームの上面にガイドレール4のアーム係合穴36に係脱する係脱ピン51が設けられ、左半側のアームの下面にアーム切換え具37で切換え操作される部分円弧状の受動部52が設けられている。シーソーアーム35は、一対のアームブラケット44に設けた水平のピン(支軸)53で上下揺動可能に支持されて、位置保持姿勢と保持解除姿勢の間で姿勢変更可能であり、ピン53の両端に装着した捻じりコイル形の付勢ばね54で位置保持姿勢に向って揺動付勢されている。
【0039】
位置保持姿勢におけるシーソーアーム35は、図7に示すように係脱ピン51がアーム係合穴36に係合しており、さらにスライドベース33の第2ベース42がベースブロック34で受止められているので、スライドベース33は開放方向と閉じ方向のいずれにも移動できない。しかし、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置へ向かって開放操作されると、アシストストロークの終端において、アーム切換え具37が受動部52に接当してシーソーアーム35を時計回転方向へ回動操作し、図8に示すようにシーソーアーム35を保持解除姿勢に自動的に切換えて、係脱ピン51をアーム係合穴36から分離させる。以後は、ユーザーが戸パネル1を引残し位置から戸袋3内に押込み操作するだけで、戸パネル1を全開放位置まで開放でき、スライドベース33は戸パネル1に同行して開放移動する。この間シーソーアーム35は保持解除姿勢を維持し続ける(図1(b・c)参照)。
【0040】
図2に示すように戸パネル1の閉じ端には、戸袋3内に収容された戸パネル1を引出し操作するための補助把手55が起伏自在に埋設されており、この補助把手55を埋設姿勢から突出姿勢にすることで、戸パネル1を戸袋3の外へ引出して把手10を露出させることができる。戸パネル1を全開放位置から閉じ方向へ移動させると、スライドベース33も同行移動するので、戸パネル1が引残し位置を越え、第2ベース42がベースブロック34で受止められた時点で、係脱ピン51がアーム係合穴36に落込み係合して、シーソーアーム35の姿勢が位置保持姿勢に切換わる。以後は、戸パネル1の閉じ動作に伴って、開放端側のトリガー体23の姿勢がトリガー切換え具27で作動姿勢に切換えられて、ケーシング20の底壁に設けたキャッチ部に落込み係合し、その間に片方の蓄力ばね22が圧縮変形して蓄力される。
【0041】
以上のように、位置保持構造を備えた実施例1のアシスト装置によれば、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置に向って開放操作される状態では、スライドベース33がベースブロック34で閉じ移動不能に受止められる。さらに、位置保持姿勢に切換ったシーソーアーム35の係脱ピン51がアーム係合穴36と係合して、スライドベース33が開放移動不能に保持される。しかし、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置まで開放操作されると、戸パネル1と同行移動するアーム切換え具37でシーソーアーム35が自動的に保持解除姿勢に切換えられて、シーソーアーム35とアーム係合穴36の係合が解除される。その結果、スライドベース33の開放方向への移動が可能となり、戸パネル1を引残し位置から全開放位置へ向かって開放操作することができる。
【0042】
以上のように実施例1の引戸のアシスト装置によれば、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置まで開放移動される動作を利用して、位置保持構造のシーソーアーム35を位置保持姿勢から保持解除姿勢に自動的に切換えるので、アシスト構造による戸パネル1の開放移動に連続して、戸パネル1を手動で戸袋3内へ押込み操作するだけでよく、従来のこの種のアシスト装置に比べて、引残し位置における戸パネル1の開放操作をより少ない手間で簡便に行える。また、位置保持構造のシーソーアーム35が保持解除姿勢に切換った状態では、戸パネル1を軽く押込み操作するだけで戸袋3内へ収納できるので、戸パネル1に大きな外力を作用させて係合状態を解除する必要があった従来のアシスト装置に比べて、引残し位置から全開放位置までの戸パネル1の開放操作を軽快に行える。さらに、戸パネル1が引残し位置まで開放操作された状態におけるアシスト装置は、待機状態にあって戸パネル1の開閉移動に関して移動を妨げることがなく、従って全開位置まで開放されて戸袋3内に収まっている状態の戸パネル1の引き出し操作を軽快に行える。
【0043】
スライドベース33に配置したシーソーアーム35を、水平のピン53でシーソー揺動可能に支持し、付勢ばね54で位置保持姿勢に向って揺動付勢するようにし、また、ガイドレール4のアーム係合穴36に係脱する係脱ピン51と、ケーシング20の開放端側に設けたアーム切換え具37で切換え操作される受動部52をシーソーアーム35に設けて、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置まで開放操作されるとき、アーム切換え具37が受動部52に接当して、シーソーアーム35を位置保持姿勢から保持解除姿勢に切換えるようにしたので、スライドベース33、ベースブロック34、シーソーアーム35、付勢ばね54などの位置保持構造の構成部品を、アシスト構造の移動領域とガイドレール4の上壁の間のスペースを利用して配置することが可能となり、既存のアシスト構造およびガイドレール4の構造を変更する必要もなく位置保持構造を追加すればよく、位置保持機能を備えたアシスト装置の全体コストを削減できる。また、戸パネル1が大きな力で急速に開放操作されるような場合でも、シーソーアーム35がアーム切換え具37で確実に位置保持姿勢から保持解除姿勢に切換えられるので、シーソーアーム35に外力が集中して破損することを確実に防止できる。
【0044】
シーソーアーム35を支持する第1ベース41と、ベースブロック34で受止められる第2ベース42と、これら両ベース41・42を連結する連結枠43でスライドベース33を構成し、第1ベース41の下面にトリガー切換え具27を設けたので、長尺のスライドベース33の構造がいたずらに複雑化するのを解消して、位置保持構造の主要部品であるスライドベース33を低コスト化できる。また、第1ベース41のアームブラケット44に設けた水平のピン53でシーソーアーム35を揺動可能に支持し、このピン53の両端に装着した付勢ばね54で同アーム35を位置保持姿勢に向って揺動付勢するので、シーソーアーム35のアーム係合穴36に対する係脱ピン51の係脱動作を確実に行うことができ、位置保持構造の切換え動作の信頼性を向上できる。
【0045】
ランナー5の移動領域とガイドレール4の上壁との間に設けた補助レール12の内部に、スライドベース33とベースブロック34とシーソーアーム35を配置して、アシスト構造ないしランナー5に設けたアーム切換え具37でシーソーアーム35を切換操作できるようにしたので、スライドベース33、ベースブロック34、シーソーアーム35などのアーム切換え具37を除く位置保持構造の構成部品を補助レール12の内部に収容して保護できる。また、スライドベース33を補助レール12でスライド案内するので、スライドベース33が蛇行するのを防止して、ランナー5およびアシスト構造に同期した状態で正しく開閉移動させることができる。
【0046】
(実施例2) 本発明に係る引戸のアシスト装置の実施例2を図10から図13に示す。実施例2に係る引戸のアシスト装置では、シーソーアーム35をベースブロック34に設けて、垂直のピン53の回りに前後方向へシーソー揺動可能に支持し、圧縮コイル形の付勢ばね54によりシーソーアーム35を位置保持姿勢に向って揺動付勢している。また、スライドベース33の閉じ端にアーム係合爪56を設けて、シーソーアーム35が位置保持姿勢に切換った状態において、アーム係合爪56をシーソーアーム35と係合させるようにした。そのために、シーソーアーム35の一端には、アーム係合爪56と係合する係脱爪57を設け、シーソーアーム35の他端にアーム切換え具37で切換え操作される傾斜面状の受動部52を設けた。
【0047】
ベースブロック34の開放端側の下面にはアーム凹部58が形成されており、その内部にシーソーアーム35を収容して、アーム凹部58の周囲壁とシーソーアーム35の受動部52側のアームの間に圧縮コイル形の付勢ばね54を配置している。アーム凹部58とベースブロック34の閉じ端の間には、アーム切換え具37の通過を許す通過溝59が形成されており、ベースブロック34の前後面には、レール溝12aで案内されるスライド片60が設けられている。アーム切換え具37はケーシング20の閉じ端側に設けられており、この実施例では、図12に示すようにケーシング20に連結される連結座16の上面にアーム切換え具37を固定するようにした。スライドベース33は第1ベース41のみで構成されている。
【0048】
位置保持姿勢におけるシーソーアーム35は、図12に示すように係脱爪57がスライドベース33のアーム係合爪56と係合しているので、スライドベース33は開放方向と閉じ方向のいずれにも移動できない。しかし、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置へ向かって開放操作されると、アシストストロークの終端において、アーム切換え具37が受動部52に接当してシーソーアーム35を時計回転方向へ回動操作し、図13(a)に示すようにシーソーアーム35を保持解除姿勢に自動的に切換えて、係脱爪57をアーム係合爪56から分離させる。以後は、ユーザーが戸パネル1を引残し位置から戸袋3内に押込み操作するだけで、戸パネル1を全開放位置まで開放でき、スライドベース33は戸パネル1に同行して開放移動する。アーム切換え具37が戸パネル1と共に開放方向へ移動した状態では、図13(b)に示すようにシーソーアーム35は付勢ばね54で位置保持姿勢側の傾動限界まで揺動して、アーム凹部58の開口縁で受止められる。戸パネル1が全開位置から引残し位置へ閉じ操作されると、アーム切換え具37がシーソーアーム35に接当して、同アーム35を保持解除姿勢に切換えて、アーム係合爪56を係脱爪57と正対する状態で係合させたのち、シーソーアーム35から分離して通過溝59を通り抜ける。他の構造は実施例1と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付して、その説明を省略する。実施例3、4においても同じとする。
【0049】
以上のように構成した実施例2のアシスト装置によれば、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置まで開放移動される動作を利用して、位置保持構造のシーソーアーム35を位置保持姿勢から保持解除姿勢に自動的に切換えるので、アシスト構造による戸パネル1の開放移動に連続して、戸パネル1を手動で全開放位置へ押込み操作するだけでよく、従来のこの種のアシスト装置に比べて、引残し位置における戸パネル1の開放操作をより少ない手間で簡便に行える。また、位置保持構造のシーソーアーム35が保持解除姿勢に切換った状態では、戸パネル1を軽く押込み操作するだけで全開放位置へ収納できるので、戸パネル1に大きな外力を作用させて係合状態を解除する必要があった従来のアシスト装置に比べて、引残し位置から全開放位置までの戸パネル1の開放操作を軽快に行える。さらに、戸パネル1が引残し位置まで開放操作された状態におけるアシスト装置は、待機状態にあって戸パネル1の開閉移動に関して移動を妨げることがなく、従って全開位置まで開放されて戸袋3内に収まっている状態の戸パネル1の引き出し操作を軽快に行える。
【0050】
ベースブロック34に配置したシーソーアーム35を、垂直のピン53でシーソー揺動可能に支持し、付勢ばね54で位置保持姿勢に向って揺動付勢されるようにし、また、アーム係合爪56に係合する係脱爪57と、アーム切換え具37で切換え操作される受動部52とをシーソーアーム35に設けて、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置まで開放操作されるとき、アーム切換え具37が受動部52に接当して、シーソーアーム35を位置保持姿勢から保持解除姿勢に切換えるようにしたので、シーソーアーム35を水平のピン53でシーソー揺動可能に支持した実施例1の位置保持構造と同様に、スライドベース33、ベースブロック34、シーソーアーム35、付勢ばね54などの位置保持構造の構成部品を、アシスト構造の移動領域とガイドレール4の上壁の間のスペースを利用して配置できるので、既存のアシスト構造およびガイドレール4の構造を変更する必要もなく位置保持構造を追加すればよく、位置保持機能を備えたアシスト装置の全体コストを削減できる。また、戸パネル1が大きな力で急速に開放操作されるような場合でも、実施例1の位置保持構造と同様に、シーソーアーム35に外力が集中して破損するのを確実に防止できる。さらに、ベースブロック34に設けたシーソーアーム35を、スライドベース33に設けたアーム係合爪56に係脱させるので、実施例1の位置保持構造に比べてスライドベース33の構造を簡素化し、全長寸法を小さくできる。
【0051】
(実施例3) 本発明に係る引戸のアシスト装置の実施例3を図14から図17に示す。実施例3に係る引戸のアシスト装置では、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置に向って開放移動操作されるときのアシストストロークの終端寄りにおいて、戸パネル1の開放方向への移動を緩衝構造で一時停止させるようにした。図14に示すように緩衝構造は、スライドベース33の連結枠43に形成した緩衝体63と、ランナー5のランナーブロック13で水平揺動可能に支持される揺動レバー64と、揺動レバー64を待機姿勢に向かって揺動付勢するレバーばね65とを備えている。レバーばね65は捩じりコイルばねからなる。この実施例における連結枠43はプラスチック成形品からなる。
【0052】
図14に示すように緩衝体63の下面には、揺動レバー64の受動ピン66をZ字状に移動案内する緩衝溝67と、受動ピン66の閉じ方向への通過を許す復帰溝68とが形成されている。緩衝溝67は、緩衝体63の閉じ端側の入口ガイド溝69と、傾斜する中央ガイド溝70と、開放端側の出口ガイド溝71でZ字状に構成されて、各溝69・70・71が階段状に連続している。入口ガイド溝69の上壁は中央ガイド溝70に向かって上り傾斜しており、中央ガイド溝70の上壁は出口ガイド溝71に向かって上り傾斜している。復帰溝68は、出口ガイド溝71と平行に形成されて、入口ガイド溝69と階段状に連続している。図15に示すように、揺動レバー64はピン74で揺動可能に軸支されており、その中途部に設けたストップ腕75がランナーブロック13で受止められる待機姿勢と、図16に想像線で示すように揺動レバー64がレバーばね65のばね力に抗して時計回転方向へ揺動した作動姿勢に変位できる。実施例3におけるシーソーアーム35は、実施例1のシーソーアーム35と同じである。
【0053】
開放アシストストロークの終端寄りにおいて、ユーザーが戸パネル1を開放方向へ移動させると、揺動レバー64の受動ピン66が緩衝体63の入口ガイド溝69内に入込み、図17(a・b)に示すように、入口ガイド溝69に案内されながら受動ピン66が入口ガイド溝69から中央ガイド溝70へ落込み係合する。このとき、受動ピン66は上り傾斜する入口ガイド溝69の上壁に受止められて、揺動レバー64が僅かに下向きに弾性変形した状態で入口ガイド溝69の上壁の階段部分を乗越えて、中央ガイド溝70へと急速に落込む。また、中央ガイド溝70に落込んだ受動ピン66は、図17(b)に示すように中央ガイド溝70の横受壁70aで受止め支持されるので、戸パネル1はそれ以上開放方向へ移動できず一時停止している。
【0054】
上記の状態から、戸パネル1を閉じ方向へ移動させると、受動ピン66は横受壁70aに案内されて、レバーばね65のばね力に抗しながら平面から見て時計回転方向(図17は緩衝溝67と受動ピン66を下面側から見上げた図になっている)へ揺動しながら、中央ガイド溝70の上壁の階段部分を乗越えて、出口ガイド溝71へ急速に落込む。出口ガイド溝71に落ち込んだ受動ピン66は、図17(c)に示すように横受壁71aで受止め支持されるので、戸パネル1はそれ以上閉じ方向へ移動できず一時停止する。この状態で、戸パネル1を開放方向へ移動させると、受動ピン66は出口ガイド溝71に案内されながら、同溝71を開放端側へ通り抜けたのち、図17(d)に示すようにレバーばね65のばね力を受けて待機姿勢に復帰する。受動ピン66が緩衝体63を通り抜けた直後に、図14に示すように、アーム切換え具37が受動部52に接当してシーソーアーム35を保持解除姿勢に切換えるので、戸パネル1を全開放位置まで開放操作できる。戸パネル1を全開放位置から閉じ操作すると、受動ピン66は中央ガイド溝70および入口ガイド溝69に臨む、復帰溝68の前後幅が小さな溝部分68aに案内されて移動し、前後幅が小さな溝部分68aから入口ガイド溝69に落ち込み係合して同溝69を通り抜ける。
【0055】
以上のように、緩衝構造を備えた実施例3のアシスト装置によれば、開放アシストストロークの終端寄りにおいて、戸パネル1の開放方向への移動を緩衝構造で一時的に停止させるので、戸パネル1が開放アシストストロークの終端から全開放位置へ一気に開放操作されるのを防止できる。従って、戸パネル1を引残し位置から全開放操作するとき、把手10に掛けた指先が戸パネル1と戸袋3の開口縁の間に挟まれるのを解消して安全性を向上できる。また、一時停止した戸パネル1を閉じ移動することにより、揺動レバー64の受動ピン66を中央ガイド溝70から出口ガイド溝71へ落込み係合させて、出口ガイド溝71を開放端側へ通り抜け可能となる。さらに、緩衝構造は戸パネル1を引残し位置から全開放操作するときに限って機能させ、戸パネル1が全開放位置から閉じ移動するときは、受動ピン66が復帰溝68に案内されて緩衝構造を支障なく通過できるようにするので、戸パネル1の全開放位置からの閉じ操作を容易にしかも簡便に行える。
【0056】
(実施例4) 本発明に係る引戸のアシスト装置の実施例4を図18に示す。実施例4に係る位置保持構造においては、シーソーアーム35を実施例1の場合とは左右逆向きに配置して、アームブラケット44に設けた水平のピン53で上下揺動可能に支持するようにした。詳しくは、図18においてシーソーアーム35の左半側のアームの上面に係脱ピン51を設け、右半側のアームの下面に部分円弧状の受動部52を設けるようにした。これに伴って、ガイドレール4のアーム係合穴36の位置を閉じ端側へずらすようにした。シーソーアーム35のピン周りの前後に段部76を形成し、この段部76とアームブラケット44の間に付勢ばね54を配置するようにした。さらに、係脱ピン51は、その閉じ端側の基端部分から開放端側の突端にわたって上り傾斜する逃げ面77を備えるようにした。
【0057】
上記の位置保持構造は、実施例1の位置保持構造と同様に、係脱ピン51がアーム係合穴36と係合することで、スライドベース33を開放移動不能に保持できる。また、戸パネル1がアシスト構造で引残し位置まで開放操作されると、戸パネル1と同行移動するアーム切換え具37でシーソーアーム35が自動的に保持解除姿勢に切換えられて、シーソーアーム35とアーム係合穴36の係合が解除される。従って、スライドベース33の開放方向への移動が可能となり、戸パネル1を引残し位置から全開放位置へ向かって開放操作することができる。
【0058】
また、実施例4に係る位置保持構造においては、実施例1の位置保持構造と同様に、ベースブロック34をガイドレール4から分離すると、スライドベース33とアシスト装置を、両者が一体になった状態でガイドレール4から抜外すことができる。さらに、係脱ピン51に逃げ面77が形成してあるので、スライドベース33を含む位置保持構造のみをガイドレール4から抜外すことができる。詳しくは、位置保持構造をガイドレール4から抜外すとき、逃げ面77はアーム係合穴36の下穴縁に接当して、シーソーアーム35が下穴縁で付勢ばね54の付勢力に抗しながら反時計回転方向へ押下げ操作され、アーム係合穴36から離脱できる。
【0059】
上記の実施例以外に、本発明のアシスト装置は複数の戸パネル1が引違い開閉される引戸にも適用でき、必ずしも開放操作された戸パネル1が戸袋3内に収容される引戸である必要はない。
【符号の説明】
【0060】
1 戸パネル
3 戸袋
4 ガイドレール
5 ランナー
12 補助レール
13 ランナーブロック
20 ケーシング
21 ダンパー
22 蓄力ばね
23 トリガー体
27 トリガー切換え具
33 スライドベース
34 ベースブロック
35 シーソーアーム
36 アーム係合穴
37 アーム切換え具
41 第1ベース
42 第2ベース
43 連結枠
44 アームブラケット
51 係脱ピン
52 受動部
53 支軸(ピン)
54 付勢ばね
56 アーム係合爪
57 係脱爪
64 揺動レバー
66 受動ピン
68 復帰溝
69 入口ガイド溝
70 中央ガイド溝
71 出口ガイド溝
図1
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図18