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  • 特許-流量制御方法および流量制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】流量制御方法および流量制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020527444
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2019024323
(87)【国際公開番号】W WO2020004183
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018120719
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】平田 薫
(72)【発明者】
【氏名】小川 慎也
(72)【発明者】
【氏名】杉田 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-092622(JP,A)
【文献】特開2000-136732(JP,A)
【文献】国際公開第2020/004183(WO,A1)
【文献】特表2011-510404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に設けられた第1コントロール弁と、
前記第1コントロール弁の下流側に設けられた第2コントロール弁と、
前記第1コントロール弁の下流側かつ前記第2コントロール弁の上流側の流体圧力を測定する圧力センサと、を備えた流量制御装置を用いて、流量ゼロから第1流量に流量を立上げるときに行う流量制御方法であって、
(a)前記第2コントロール弁を閉鎖した状態で、前記圧力センサの出力に基づいて前記第1コントロール弁の下流に残留する圧力を求めるステップ(a)と、
(b)前記圧力センサの出力に基づいて前記第2コントロール弁の開度を調整することによって、前記第1コントロール弁下流に残留する圧力を制御し、前記第2コントロール弁の下流側に前記第1流量で流体を流すステップ(b)と、
を含み、
前記ステップ(b)において、αを比例定数、ΔP1/Δtを前記圧力センサが出力する上流圧力の変化ΔP1と前記上流圧力の変化ΔP1に要した時間Δtの比である圧力変化率、Vを前記第1コントロール弁と前記第2コントロール弁との間の内容積としたとき、
Q=α・(ΔP1/Δt)・V
で表されるビルドダウン流量Qが前記第1流量に一致するように、前記第2コントロール弁の開度を前記圧力センサが出力する信号に基づいて制御する、流量制御方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)において、前記第1コントロール弁と前記第2コントロール弁との両方を閉鎖した状態で前記残留する圧力を求める、請求項1に記載の流量制御方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)において、前記圧力センサの出力に基づいて求めた圧力が、前記第1流量に相当する圧力よりも低い場合、前記第1コントロール弁の下流に残留する圧力が前記第1流量に相当する圧力よりも高くなるまで前記第1コントロール弁を開き、前記第1流量に相当する圧力を越えた時点で前記第1コントロール弁を閉じるステップを更に含む、請求項2に記載の流量制御方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)において、前記第1コントロール弁は、前記圧力センサの出力に基づいて前記第1コントロール弁の開度を前記第1流量になるように制御する時の開度よりも小さい開度にしており、前記圧力センサの出力に基づいて求めた圧力が閾値以上であるときに、前記第2コントロール弁を開いて前記ステップ(b)を行う、請求項1に記載の流量制御方法。
【請求項5】
前記ステップ(b)を行った後、前記圧力センサの出力が所定値まで低下した時点で、前記圧力センサの出力に基づいて前記第1コントロール弁の開度を制御して前記第1流量で下流に流体を流すステップ(c)をさらに包む、請求項1から4のいずれかに記載の流量制御方法。
【請求項6】
流路に設けられた第1コントロール弁と、
前記第1コントロール弁の下流側に設けられた第2コントロール弁と、
前記第1コントロール弁の下流側かつ前記第2コントロール弁の上流側の流体圧力を測定する圧力センサと、
前記第1コントロール弁および前記第2コントロール弁の動作を制御する制御回路であって、前記圧力センサが出力する信号に基づいて前記第1コントロール弁及び第2コントロール弁を制御することによって流量を制御するように構成された制御回路と
を備える流量制御装置であって、流量ゼロから第1流量に流量を立上げるとき、
前記制御回路は、
(a)前記第2コントロール弁を閉鎖した状態で、前記圧力センサの出力に基づいて第1コントロール弁下流に残留する圧力を求めるステップ(a)と、
(b)前記圧力センサの出力に基づいて、第1コントロール弁下流に残留する圧力を、前記第2コントロール弁の開度を調整することによって制御し、前記第2コントロール弁の下流側に第1流量で流体を流すステップ(b)と、
を実行し、前記制御回路は、
前記ステップ(b)において、αを比例定数、ΔP1/Δtを前記圧力センサが出力する上流圧力の変化ΔP1と前記上流圧力の変化ΔP1に要した時間Δtの比である圧力変化率、Vを前記第1コントロール弁と前記第2コントロール弁との間の内容積としたとき、
Q=α・(ΔP1/Δt)・V
で表されるビルドダウン流量Qが前記第1流量に一致するように、前記第2コントロール弁の開度を、前記圧力センサが出力する信号に基づいて制御する、流量制御装置。
【請求項7】
前記第2コントロール弁の下流側に設けられた別の圧力センサをさらに備える、請求項6に記載の流量制御装置。
【請求項8】
流路に設けられた第1コントロール弁と、
前記第1コントロール弁の下流側に設けられた第2コントロール弁と、
前記第1コントロール弁の下流側かつ前記第2コントロール弁の上流側の流体圧力を測定する圧力センサとを備え、
前記圧力センサが出力する信号に基づいて下流側の流量を制御する流量制御装置であって、
流量ゼロの状態から第1流量に流量を制御する際に、前記第2コントロール弁が閉鎖されて流量ゼロの状態から、前記圧力センサの出力に基づいて前記第2コントロール弁の開度を制御し、前記第1コントロール弁の下流に残留した圧力の変化率が、前記第2コントロール弁から流出する時の流量が前記第1流量になるときの圧力の変化率と一致するように、前記第2コントロール弁の開度を制御するように構成され、このとき、
前記第2コントロール弁の開度は、αを比例定数、ΔP1/Δtを前記圧力センサが出力する上流圧力の変化ΔP1と前記上流圧力の変化ΔP1に要した時間Δtの比である圧力変化率、Vを前記第1コントロール弁と前記第2コントロール弁との間の内容積としたとき、
Q=α・(ΔP1/Δt)・V
で表されるビルドダウン流量Qが前記第1流量に一致するように、前記圧力センサが出力する信号に基づいてフィードバック制御される、流量制御装置。
【請求項9】
前記流量ゼロの状態から前記第1流量に流量を制御する際に、前記第1コントロール弁は閉鎖されている、請求項8に記載の流量制御装置。
【請求項10】
前記流量ゼロの状態から前記第1流量に流量を制御する際に、前記第1コントロール弁は前記第1流量に対応する開度よりも小さい開度に制御される、請求項8に記載の流量制御装置。
【請求項11】
前記第2コントロール弁の下流側に設けられた別の圧力センサをさらに備える、請求項8から10のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項12】
流路に設けられた第1コントロール弁と、
前記第1コントロール弁の下流側に設けられた第2コントロール弁と、
前記第1コントロール弁の下流側かつ前記第2コントロール弁の上流側の流体圧力である上流圧力を測定する第1圧力センサとを備え、
前記第1圧力センサが出力する信号に基づいて下流側の流量を制御する流量制御装置であって、
流量ゼロから第1流量に流量を制御する際、前記第1コントロール弁下流に残留した圧力を用いて、
Q=α・(ΔP1/Δt)・V
によって流量を制御し、
前記第1圧力センサの圧力が、所定の圧力に到達した時点で、
Q=K1・P1
による制御に切り替えて制御することを特徴とし、ここで、Qは流量、αは比例定数、ΔP1/Δtは前記上流圧力の圧力変化率、Vは前記第1コントロール弁と前記第2コントロール弁との間の内容積、K1は流体の種類と流体温度に依存する定数、P1は前記第1圧力センサが出力する上流圧力である、流量制御装置。
【請求項13】
前記第1圧力センサの圧力が、
Q=K1・P1
による制御における、前記第1流量に相当する圧力に到達した時点で制御を切り替えることを特徴とする、請求項12に記載の流量制御装置。
【請求項14】
流路に設けられた第1コントロール弁と、
前記第1コントロール弁の下流側に設けられた第2コントロール弁と、
前記第1コントロール弁の下流側かつ前記第2コントロール弁の上流側の流体圧力である上流圧力を測定する第1圧力センサと、
前記第2コントロール弁の下流側の流体圧力である下流圧力を測定する第2圧力センサと、を備え、
前記第1圧力センサ及び第2圧力センサが出力する信号に基づいて下流側の流量を制御する流量制御装置であって、
流量ゼロから第1流量に流量を制御する際、前記第1コントロール弁下流に残留した圧力を用いて、
Q=α・(ΔP1/Δt)・V
によって流量を制御し、
前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサに基づく圧力が、所定の圧力に到達した時点で、
Q=K2・P2m(P1-P2)n
による制御に切り替えて制御することを特徴とし、ここで、Qは流量、αは比例定数、ΔP1/Δtは前記第1圧力センサが出力する上流圧力の圧力変化率、Vは前記第1コントロール弁と前記第2コントロール弁との間の内容積、K2は流体の種類と流体温度に依存する定数、P1は前記上流圧力、P2は前記第2圧力センサが出力する下流圧力、mおよびnは実際の流量を元に導出される指数である、流量制御装置。
【請求項15】
前記第1及び第2圧力センサの圧力が、
Q=K2・P2m(P1-P2)n
による制御における、前記第1流量に相当する圧力に到達した時点で制御を切り替えることを特徴とする、請求項14に記載の流量制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御方法および流量制御装置に関し、特に、半導体製造装置や化学プラント等において好適に利用される流量制御方法および流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置や化学プラントにおいて、材料ガスやエッチングガス等の流体の流れを制御するために、種々のタイプの流量計や流量制御装置が利用されている。このなかで圧力式流量制御装置は、コントロール弁と絞り部(例えばオリフィスプレート)とを組み合せた比較的簡単な機構によって各種流体の流量を高精度に制御することができるので広く利用されている。また、圧力式流量制御装置は、一次側供給圧が大きく変動しても安定した流量制御を行うことができるという優れた流量制御特性を有している。圧力式流量制御装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
圧力式流量制御装置に用いられるコントロール弁としては、金属ダイヤフラム弁体を、圧電素子駆動装置(以下、ピエゾアクチュエータと呼ぶことがある)によって開閉させる圧電素子駆動式バルブが用いられている。特許文献2に、コントロール弁として用いられるノーマルオープン型の圧電素子駆動式バルブが開示されている。
【0004】
圧力式流量制御装置は、絞り部の上流側の流体圧力(以下、上流圧力と呼ぶことがある)を制御することによって、流量を調整するように構成されている。上流圧力は、絞り部上流側に設けられたコントロール弁の開度を調整することによって制御することができ、上流圧力を所望流量に対応する圧力に適合させることによって、所望流量で流体を流すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-192269号公報
【文献】特許第4933936号公報
【文献】特開2015-138338号公報
【文献】国際公開第2018/021277号
【文献】国際公開第2018/008420号
【文献】国際公開第2013/179550号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の圧力式流量制御装置において、オリフィス下流側またはオリフィス近傍上流側に開閉弁を設けて、これを開閉制御することがある。このような下流側の開閉弁は、例えば、プロセスチャンバへのガスの供給停止を行うために用いられる。また、圧力式流量制御装置を用いてALD(Atomic Layer Deposition)プロセスを行う場合、下流側の開閉弁の開閉動作を繰り返すことによって、周期が短いパルス的な流量制御を行うこともある。
【0007】
しかしながら、コントロール弁および下流側の開閉弁を閉鎖して流量を0にした後にも、コントロール弁を介しての流体の微小リークなどによって、流路内圧が高くなることがある。また、コントロール弁および下流側の開閉弁を閉じるタイミングによって、閉弁前に流していた流体の圧力が閉弁後にも弁間に残り、比較的高い圧力が残留することがある。その結果、再度流量制御を開始したときに、流路内圧が高くなっているため、下流側の開閉弁を開いた際、残留している圧力が一気に下流側に開放され、立上げ時の制御流量に所謂オーバーシュートが生じるという問題がある。
【0008】
流量立上げの際のオーバーシュートを防止する技術として、特許文献3に、コントロール弁とオリフィスとの間に排気ラインを設け、流量制御前に予め排気することによって、上流圧力を低下させることが開示されている。しかしながら、特許文献3に記載の方式では、排気ラインや排気ライン用の開閉弁を別途設ける必要があり、コストの増加や装置の大型化が避けられないという問題がある。また、流量制御前に排気を行ったとしても、上流圧力に基づいてコントロール弁の開度をフィードバック制御する方式では、流量立ち上げ時の応答性を十分に向上させることが困難な場合もあった。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、流量立ち上げの際のオーバーシュートを防止し、また、応答性を向上させて設定流量へ素早く制御することができる流量制御方法および流量制御装置を提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態による流量制御方法は、流路に設けられた第1コントロール弁と、前記第1コントロール弁の下流側に設けられた第2コントロール弁と、前記第1コントロール弁の下流側かつ前記第2コントロール弁の上流側の流体圧力を測定する圧力センサと、を備えた流量制御装置を用いて、流量ゼロから第1流量に流量を立上げるときに行う流量制御方法であって、(a)前記第2コントロール弁を閉鎖した状態で、前記圧力センサの出力に基づいて前記第1コントロール弁の下流に残留する圧力を求めるステップ(a)と、(b)前記圧力センサの出力に基づいて前記第2コントロール弁の開度を調整することによって、前記第1コントロール弁下流に残留する圧力を制御し、前記第2コントロール弁の下流側に前記第1流量で流体を流すステップ(b)とを含む。
【0011】
ある実施形態において、前記ステップ(a)では、前記第1コントロール弁と前記第2コントロール弁との両方を閉鎖した状態で前記残留する圧力を求める。
【0012】
ある実施形態において、上記の流量制御方法は、前記ステップ(a)で前記圧力センサの出力に基づいて求めた圧力が、前記第1流量に相当する圧力よりも低い場合、前記第1コントロール弁の下流に残留する圧力が前記第1流量に相当する圧力よりも高くなるまで前記第1コントロール弁を開き、前記第1流量に相当する圧力を越えた時点で前記第1コントロール弁を閉じるステップを更に含む。
【0013】
ある実施形態において、前記ステップ(a)では、前記第1コントロール弁は、前記圧力センサの出力に基づいて前記第1コントロール弁の開度を前記第1流量になるように制御する時の開度よりも小さい開度に閉じられており、前記圧力センサの出力に基づいて求めた圧力が閾値以上であるときに、前記第2コントロール弁を開いて前記ステップ(b)を行う。
【0014】
ある実施形態において、前記ステップ(b)において、αを比例定数、ΔP1/Δtを前記圧力センサが出力する上流圧力の変化ΔP1と前記上流圧力の変化ΔP1に要した時間Δtの比である圧力変化率、Vを前記第1コントロール弁と前記第2コントロール弁との間の内容積としたとき、Q=α・(ΔP1/Δt)・Vで表されるビルドダウン流量Qが前記第1流量に一致するように、前記第2コントロール弁の開度を前記圧力センサが出力する信号に基づいて制御する。
【0015】
ある実施形態において、上記の流量制御方法は、前記ステップ(b)を行った後、前記圧力センサの出力が所定値まで低下した時点で、前記圧力センサの出力に基づいて前記第1コントロール弁の開度を制御して前記第1流量で下流に流体を流すステップ(c)をさらに包む。
【0016】
本発明の実施形態による流量制御装置は、流路に設けられた第1コントロール弁と、前記第1コントロール弁の下流側に設けられた第2コントロール弁と、前記第1コントロール弁の下流側かつ前記第2コントロール弁の上流側の流体圧力を測定する圧力センサと、前記第1コントロール弁および前記第2コントロール弁の動作を制御する制御回路であって、前記圧力センサが出力する信号に基づいて前記第1コントロール弁及び第2コントロール弁を制御することによって流量を制御するように構成された制御回路とを備え、流量ゼロから第1流量に流量を立上げるとき、前記制御回路は、(a)前記第2コントロール弁を閉鎖した状態で、前記圧力センサの出力に基づいて第1コントロール弁下流に残留する圧力を求めるステップ(a)と、(b)前記圧力センサの出力に基づいて、第1コントロール弁下流に残留する圧力を、前記第2コントロール弁の開度を調整することによって制御し、前記第2コントロール弁の下流側に第1流量で流体を流すステップ(b)とを実行する。
【0017】
ある実施形態において、上記の流量制御装置は、前記第2コントロール弁の下流側に設けられた別の圧力センサをさらに備える。
【0018】
本発明の実施形態による流量制御装置は、流路に設けられた第1コントロール弁と、前記第1コントロール弁の下流側に設けられた第2コントロール弁と、前記第1コントロール弁の下流側かつ前記第2コントロール弁の上流側の流体圧力を測定する圧力センサとを備え、流量ゼロの状態から第1流量に流量を制御する際に、前記第2コントロール弁が閉鎖されて流量ゼロの状態から、前記圧力センサの出力に基づいて前記第2コントロール弁の開度を制御し、前記第1コントロール弁の下流に残留した圧力の変化率が、前記第2コントロール弁から流出する時の流量が前記第1流量になるときの圧力の変化率と一致するように、前記第2コントロール弁の開度を制御する。
【0019】
ある実施形態において、前記流量ゼロの状態から前記第1流量に流量を制御する際に、前記第1コントロール弁は閉鎖されている。
【0020】
ある実施形態において、前記流量ゼロの状態から前記第1流量に流量を制御する際に、前記第1コントロール弁は前記第1流量に対応する開度よりも小さい開度に制御される。
【0021】
ある実施形態において、前記第2コントロール弁の開度は、αを比例定数、ΔP1/Δtを前記圧力センサが出力する上流圧力の変化ΔP1と前記上流圧力の変化ΔP1に要した時間Δtの比である圧力変化率、Vを前記第1コントロール弁と前記第2コントロール弁との間の内容積としたとき、Q=α・(ΔP1/Δt)・Vで表されるビルドダウン流量Qが前記第1流量に一致するように、前記圧力センサが出力する信号に基づいてフィードバック制御される。
【0022】
ある実施形態において、上記の流量制御装置は、前記第2コントロール弁の下流側に設けられた別の圧力センサをさらに備える。
【0023】
本発明の実施形態による流量制御装置は、流路に設けられた第1コントロール弁と、前記第1コントロール弁の下流側に設けられた第2コントロール弁と、前記第1コントロール弁の下流側かつ前記第2コントロール弁の上流側の流体圧力である上流圧力を測定する第1圧力センサとを備え、前記第1圧力センサが出力する信号に基づいて下流側の流量を制御するように構成されており、流量ゼロから第1流量に流量を制御する際、前記第1コントロール弁下流に残留した圧力を用いて、Q=α・(ΔP1/Δt)・Vによって流量を制御し、前記第1圧力センサの圧力が、所定の圧力に到達した時点で、Q=K1・P1による制御に切り替えて制御することを特徴とし、ここで、Qは流量、αは比例定数、ΔP1/Δtは前記上流圧力の圧力変化率、Vは前記第1コントロール弁と前記第2コントロール弁との間の内容積、K1は流体の種類と流体温度に依存する定数、P1は前記第1圧力センサが出力する上流圧力である。
【0024】
ある実施形態において、前記第1圧力センサの圧力が、Q=K1・P1による制御における、前記第1流量に相当する圧力に到達した時点で制御が切り替えられる。
【0025】
本発明の実施形態による流量制御装置は、流路に設けられた第1コントロール弁と、前記第1コントロール弁の下流側に設けられた第2コントロール弁と、前記第1コントロール弁の下流側かつ前記第2コントロール弁の上流側の流体圧力である上流圧力を測定する第1圧力センサと、記第2コントロール弁の下流側の流体圧力である下流圧力を測定する第2圧力センサとを備え、前記第1圧力センサ及び第2圧力センサが出力する信号に基づいて下流側の流量を制御するように構成されており、流量ゼロから第1流量に流量を制御する際、前記第1コントロール弁下流に残留した圧力を用いて、=α・(ΔP1/Δt)・Vによって流量を制御し、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサに基づく圧力が、所定の圧力に到達した時点で、Q=K2・P2m(P1-P2)nによる制御に切り替えて制御し、ここで、Qは流量、αは比例定数、ΔP1/Δtは前記第1圧力センサが出力する上流圧力の圧力変化率、Vは前記第1コントロール弁と前記第2コントロール弁との間の内容積、K2は流体の種類と流体温度に依存する定数、P1は前記上流圧力、P2は前記第2圧力センサが出力する下流圧力、mおよびnは実際の流量を元に導出される指数である。
【0026】
ある実施形態において、前記第1及び第2圧力センサの圧力が、Q=K2・P2m(P1-P2)nによる制御における、前記第1流量に相当する圧力に到達した時点で制御が切り替えられる。
【0027】
本発明の実施形態による流量制御方法は、流路に設けられた開度調整可能な第1コントロール弁と、前記第1コントロール弁の下流側に設けられた開度調整可能な第2コントロール弁と、前記第1コントロール弁の下流側に設けられた開度固定の絞り部と、前記第1コントロール弁の下流側かつ前記第2コントロール弁または前記絞り部の上流側の流体圧力を測定する圧力センサとを備えた流量制御装置を用い、流量ゼロからゼロ超である第1流量に流量を変更するときに行う流量制御方法であって、前記第1コントロール弁と前記第2コントロール弁とが閉じられて流量がゼロの状態から、前記圧力センサの出力に基づいて前記第2コントロール弁の開度を調整することによって、前記第1コントロール弁と前記第2コントロール弁との間の流体を前記第2コントロール弁の下流側に前記第1流量で流すステップ(a)と、前記ステップ(a)の後、前記圧力センサの出力が所定値に低下した時点で前記第1コントロール弁を開き、前記圧力センサの出力に基づいて前記第1コントロール弁の開度を制御することによって前記絞り部の下流側に前記第1流量で流体を流すステップ(b)とを含む。
【0028】
ある実施形態において、前記絞り部と前記第2コントロール弁とは一体的に設けられ、オリフィス内蔵弁を構成している。
【発明の効果】
【0029】
本発明の実施形態によれば、流量立ち上げのときにオーバーシュートを防ぎながら立ち上げ時間の短縮が可能な流量制御方法および流量制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態による流量制御装置の構成を示す模式的な図である。
図2】本発明の実施形態による流量ステップダウン時における流量制御方法を説明するための図であり、(a)は設定流量、(b)は制御流量、(c)は上流圧力P1、(d)は第1コントロール弁駆動電圧、(e)および(f)は第2コントロール弁駆動電圧をそれぞれ示すグラフである。
図3】本発明の実施形態による流量制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0032】
図1は、本発明の実施形態の流量制御方法を行うために用いられる流量制御装置100の構成を示す。流量制御装置100は、図示しないガス供給源に接続されたガスG0の流路1に設けられた第1コントロール弁6と、第1コントロール弁6の下流側に設けられた絞り部2と、第1コントロール弁6および絞り部2の下流側に設けられた第2コントロール弁8と、第1コントロール弁6と絞り部2との間の流体の圧力(上流圧力P1)およびガス温度Tをそれぞれ検出する第1または上流圧力センサ3および温度センサ5とを備えている。
【0033】
本実施形態の流量制御装置100はまた、第2コントロール弁8の下流側の圧力(下流圧力P2)を測定する第2または下流圧力センサ4を備えている。第1圧力センサ3は、第1コントロール弁6と絞り部2との間の流体圧力である上流圧力P1を測定することができ、第2圧力センサ4は、第2コントロール弁8の下流側の圧力である下流圧力P2を測定することができる。ただし、他の態様において、流量制御装置100は第2圧力センサ4および温度センサ5を備えていなくてもよい。
【0034】
本実施形態では、絞り部2と第2コントロール弁8とはオリフィス内蔵弁9として一体的に形成され、絞り部2と第2コントロール弁8の弁体とは近接して配置されている。この場合、上記の態様とは異なり、第2コントロール弁8の弁体の下流側に絞り部2を配置することもできる。また、絞り部2が第2コントロール弁8の弁体の下流側に配置されている場合、第1圧力センサ3は、第1コントロール弁6と第2コントロール弁8との間の流体圧力である上流圧力P1を測定することになる。
【0035】
また、本実施形態のように、第2コントロール弁8の上流側に絞り部2がある場合、流量制御をしている時は、第1コントロール弁6と絞り部2との間の流体圧力である上流圧力P1を測定しているが、第1コントロール弁6と第2コントロール弁8とが閉鎖されている時は、絞り部2の上流側(第1コントロール弁6から絞り部2まで)と絞り部2の下流側(絞り部2から第2コントロール弁8まで)とは同じ圧力となるため、第1圧力センサ3は、第1コントロール弁6から第2コントロール弁8までの間の流体圧力を測定することになる。
【0036】
第1圧力センサ3は、第1コントロール弁6の下流側かつ前記第2コントロール弁8の上流側の流体圧力を検出するように配置されていればよく、第1コントロール弁6と絞り部2との間の流体圧力を測定するものであってもよいし、第1コントロール弁6と第2コントロール弁8との間の流体圧力を測定するものであってもよい。
【0037】
流量制御装置100は、さらに、第1コントロール弁6および第2コントロール弁8に接続された制御回路7を備えている。制御回路7は、第1圧力センサ3が出力する信号に基づいて第1コントロール弁6の開度を制御することによって流量を制御するとともに、流量立ち上げのときには第1圧力センサ3が出力する信号に基づいて第2コントロール弁8の開度を制御するように構成されている。なお、図示する態様では、1つの制御回路7が第1コントロール弁6と第2コントロール弁8との双方に対して共通に設けられているが、これに限られず、第1コントロール弁6および第2コントロール弁8のそれぞれに対して別個の制御回路が設けられていてもよいことは言うまでもない。
【0038】
制御回路7は、流量制御装置100に内蔵されたものであってもよいし、流量制御装置100の外部に設けられたものであってもよい。制御回路7は、典型的には、CPUなどのプロセッサ、ROMやRAMなどのメモリ(記憶装置)、A/Dコンバータ等を内蔵しており、後述する流量制御動作を実行するように構成されたコンピュータプログラムを含んでいてよい。制御回路7は、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって実現され得る。
【0039】
制御回路7は、コンピュータ等の外部装置と情報を交換するためのインターフェイスを備えていてもよく、これにより、外部装置からROMへのプログラム及びデータの書込みなどを行うことができる。制御回路7の構成要素(CPUなど)は、すべてが装置内に一体的に設けられている必要はなく、CPUなどの一部の構成要素を別の場所(装置外)に配置し、バスで相互に接続する構成としても良い。その際、装置内と装置外とを有線だけでなく無線で通信するようにしても良い。
【0040】
以上のように構成された流量制御装置100の下流側は、例えば、図示しない下流弁を介して半導体製造装置のプロセスチャンバに接続されている。プロセスチャンバには真空ポンプが接続されており、典型的には、プロセスチャンバの内部が真空引きされた状態で、流量制御装置100から流量制御されたガスG1がプロセスチャンバに供給される。上記の下流弁としては、例えば、圧縮空気により開閉動作が制御される公知の空気駆動弁(Air Operated Valve)や電磁弁等の開閉弁(オンオフ弁)を用いることができる。
【0041】
本実施形態において、絞り部2は、オリフィスプレートによって構成されている。オリフィスプレートは、オリフィス断面積が固定されているので、開度が固定された絞り部として機能する。なお、オリフィスに詰まりや経年劣化などが生じることによりオリフィス面積は意図せず変化し得るが、本明細書では意図的に開度を制御するように構成されていない絞り部を開度固定の絞り部と呼ぶこととする。また、本明細書において、「絞り部」とは、流路の断面積を前後の流路断面積より小さく制限した部分を意味し、例えば、オリフィスプレートや臨界ノズル、音速ノズル、スリット構造などを用いて構成されるが、他のものを用いて構成することもできる。オリフィスまたはノズルの径は、例えば10μm~500μmに設定される。
【0042】
第1コントロール弁6および第2コントロール弁8としては、任意開度に調整可能なバルブが用いられ、例えば、金属製ダイヤフラム弁体をピエゾアクチュエータを用いて開閉するように構成された公知の圧電素子駆動式バルブが用いられる。圧電素子駆動式バルブは、圧電素子への駆動電圧の制御により、任意開度に調整することが可能である。
【0043】
流量制御装置100の通常の流量制御モードにおいて、第1コントロール弁6の開度は、第1圧力センサ3からの出力に基づいて制御され、第1圧力センサ3から出力される上流圧力P1が設定値に維持されるようにフィードバック制御される。第1コントロール弁6は、流量制御の主要バルブすなわちメイン流量制御バルブとして用いられる。第1コントロール弁6として、ここではノーマルクローズ型のバルブを用いているが、ノーマルオープン型のバルブを用いても良い。
【0044】
一方、第2コントロール弁8は、例えば、流量をゼロから低設定流量に立ち上げるときなどの流量切り替え時に主として用いられるものであり、後述するビルドダウン式の流量制御を行うために用いられる。第2コントロール弁8は、流量切り替え時以外の通常の流量制御時には、全開、または、少なくとも絞り部2の開口面積よりも大きい開口断面積を有する開度に維持されていてよい。第2コントロール弁8としては、ノーマルクローズ型のバルブを用いてよいし、ノーマルオープン型のバルブを用いてもよい。第2コントロール弁8としてノーマルオープン型のバルブを用いれば、流量ゼロ期間および流量立ち上げ期間以外の期間には駆動電圧を印加する必要がなく、低消費電力化を実現し得る。
【0045】
なお、第2コントロール弁8は、流量立ち上げ時以外の流量制御のためにも用いることができ、例えば、高設定流量から低設定流量に流量を変更する流量ステップダウンの際にビルドダウン式流量制御を行うためにも用いられ得る。このような流量制御方法は、本願出願人による国際出願第PCT/JP2019/16763号に開示されている。本発明の実施形態による流量制御装置100は、流量立ち上げの際や、流量ステップダウンの際などの流量変動時に、第2コントロール弁8を用いてビルドダウン式の流量制御を行うことができるように構成されているものである。
【0046】
また、上述したように、本実施形態では、第2コントロール弁8と絞り部2とが一体的に設けられており、オリフィス内蔵弁9を構成している。オリフィス内蔵弁9は、例えば、特許文献4に記載されており、本実施形態でも従来と同様の構成のオリフィス内蔵弁を用いることができる。オリフィス内蔵弁9では、第2コントロール弁8の弁体と絞り部2としてのオリフィスプレートとが近接して配置され、これらの間の流路容積は略ゼロと見なしてよい程度に低減されている。このため、オリフィス内蔵弁9を用いれば、流量の立ち上がりおよび立下りの特性を向上させることができる。また、オリフィス内蔵弁9を用いる場合、第1コントロール弁6と第2コントロール弁8との間の内容積Vは、第1コントロール弁6とオリフィスプレートまでの内容積とほぼ等価と考えることができる。このため、後述するように、上記の内容積Vを用いて流量制御を行う場合に、比較的高い精度で近似的な内容積Vが得やすいという利点がある。
【0047】
オリフィス内蔵弁9において、絞り部2(ここではオリフィスプレート)と第2コントロール弁8とは、何れが上流側に設けられていても良いが、絞り部2と第2コントロール弁8との間の容積(ここではオリフィスプレートと、第2コントロール弁8のダイヤフラム弁体およびシート部とによって囲まれる空間)を極力小さい容積にすることが望まれる。オリフィス内蔵弁9は、上記の容積を極小化するために好適な態様である。
【0048】
以上に説明した流量制御装置100は、通常の流量制御モードにおいて、臨界膨張条件P1/P2≧約2(アルゴンガスの場合)を満たすとき、流量は上流圧力P1によって決まるという原理を利用して流量制御を行う。臨界膨張条件を満たすとき、絞り部2の下流側の流量Qは、Q=K1・P1(ここでK1は流体の種類と流体温度に依存する定数)によって与えられ、流量Qは上流圧力P1に比例する。また、第2圧力センサ4を備える場合、上流圧力P1と下流圧力P2との差が小さく、上記の臨界膨張条件を満足しない場合であっても流量を演算により求めることができ、第1圧力センサ3および第2圧力センサ4によって測定された上流圧力P1および下流圧力P2に基づいて、Q=K2・P2m(P1-P2)n(ここでK2は流体の種類と流体温度に依存する定数、m、nは実際の流量を元に導出される指数)から流量Qを求めることができる。
【0049】
通常の流量制御モードにおいて、外部制御装置等から制御回路7に設定流量信号が送られると、制御回路7は、第1圧力センサ3の出力などに基づいて、臨界膨張条件または非臨界膨張条件における流量計算式を用いて流量を上記のQ=K1・P1またはQ=K2・P2m(P1-P2)nから演算する。そして、絞り部2を通過する流体の流量が設定流量に近づくように(すなわち、演算流量と設定流量との差が0に近づくように)、第1コントロール弁6がフィードバック制御される。演算流量は、例えば制御流量出力値として表示装置に表示されてもよい。
【0050】
本実施形態の流量制御装置100は、また、流量ゼロの状態から任意のゼロ超の第1流量に流量立ち上げを行うときは、以下に説明するようにして流量制御を行うことができる。
【0051】
図2は、本実施形態の流量制御方法によって流量立ち上げを行うときの(a)設定流量、(b)制御流量、(c)上流圧力P1、(d)第1コントロール弁6(第1バルブとも称する)の駆動電圧、(e)ノーマルオープン型のとき第2コントロール弁8(第2バルブとも称する)の駆動電圧、(f)ノーマルクローズ型のときの第2コントロール弁8の駆動電圧のそれぞれを示すグラフである。
【0052】
なお、図2(d)には、第1コントロール弁6がノーマルクローズ型(NC)のときの駆動電圧が示されている。一方、図2(e)および(f)には、第2コントロール弁8がノーマルオープン型(NO)のときと、ノーマルクローズ型(NC)のときとの駆動電圧が示されている。第1コントロール弁6は、駆動電圧が低いほど弁開度が小さく、駆動電圧0の電圧無印加時に完全に閉弁(CLOSE)する。一方、ノーマルオープン型の第2コントロール弁8は、駆動電圧が高いほど弁開度が小さく、駆動電圧が最大の時に全閉(CLOSE)し、駆動電圧0(電圧無印加)時に全開(OPEN)の状態となる。また、ノーマルクローズ型の第2コントロール弁8は、駆動電圧が低いほど弁開度が小さく、駆動電圧0(電圧無印加)時に完全に閉弁(CLOSE)し、駆動電圧が最大の時に全開(OPEN)の状態となる。
【0053】
また、図2には、設定流量を0%から10%に立ち上げるときの例が示されているが、これに限られない。ただし、立ち上げ後の目標設定流量が大きい場合には、残留圧力よりも第1コントロール弁6を開いた後に一次側から供給される圧力の方が高く、オーバーシュートが生じにくいと考えられる。このため、本実施形態の流量制御方法は、特に、0%から低設定流量(例えば50%以下、典型的には20%以下、特定的には10%程度)に立ち上げるときに、好適に利用される。
【0054】
以下、設定流量・目標流量等の流量値はすべて、定格流量値を100%とした比率で表記する。また、臨界膨張条件の成り立つ時は流量と上流圧力P1が比例することを加味して、流量値が100%の時の上流圧力を100%として上流圧力も比率で表記することがある。
【0055】
まず、流量が0%に設定され、ガスの供給が停止されているとき、第1コントロール弁6および第2コントロール弁8は完全に閉鎖(CLOSE)している。ただし、ガス供給の停止の前に、所望流量でガスを流していた場合、第1コントロール弁6および第2コントロール弁8を閉鎖した後にも、第1コントロール弁6と第2コントロール弁8との間の流路内には圧力が残留している。図示する例では、100%流量でガスを流した後に第1コントロール弁6および第2コントロール弁8が閉鎖された状態が示されており、流量0時にも残留する上流圧力P1の値は、本実施例では300kPa absと比較的高くなっている。
【0056】
次に、図2に示す時刻t0において、流量0%の状態から流量10%への立ち上げを開始する。このとき、時刻t0において、図2(d)に示すように、第1コントロール弁6は、完全に閉じられた状態(CLOSE)のまま維持される。
【0057】
一方で、時刻t0において、図2(e)、(f)に示すように、第2コントロール弁8は開かれ、その開度を調節する動作が開始される。
【0058】
時刻t0より後の状態においては、第1コントロール弁6を介しての上流側からのガスの流入がなく、かつ、第2コントロール弁8が開かれているので、第1コントロール弁6と絞り部2との間の残留ガス、より詳細には第1コントロール弁6と第2コントロール弁8との間の残留ガスが、第2コントロール弁8を介して流出する。なお、ここでは、流量制御装置100の下流側は真空に引かれており、下流側が真空圧に維持されている。
【0059】
このとき、残留ガスおよび残留圧力は、第2コントロール弁8の開度調整を行わない場合、流出時間とともに指数関数的に減少し続け、流量も同様に低下することになる。このため、10%流量で一定に流出するよう維持するためには、第2コントロール弁8の開度調整が必要になる。
【0060】
そこで、継続して10%流量に維持するために、本実施形態では、第1圧力センサ3の出力に基づいて、ΔP1/Δtが10%設定に対応する値と一致するように、第2コントロール弁8をフィードバック制御するビルドダウン制御モードに切り替える。ここで、ΔP1/Δtは第1圧力センサ3が出力する上流圧力P1の変化ΔP1と、上流圧力P1の変化ΔP1に要した時間Δtの比であり、時間に対する上流圧力P1の降下率(以下、圧力変化率とよぶことがある)または圧力降下の傾きに対応するものである。
【0061】
これは、第1コントロール弁6が閉じられた状態で、第2コントロール弁8の下流側に流れるガスの流量は、Q=α・(ΔP1/Δt)・Vと表すことができ(ただし、αは比例定数、Vは第1コントロール弁6と第2コントロール弁8との間の内容積)、ΔP1/Δtが一定であれば第2コントロール弁8の下流側における流量も一定に維持されるからである。なお、上記のように、第2コントロール弁8と絞り部2とがオリフィス内蔵弁の形式で一体的に設けられている場合には、上記の内容積Vは、第1コントロール弁6から絞り部2までの流路容積とほぼ同等とみなすことができる。内容積Vは、第1コントロール弁6の下流側の流路の径などから予め求めておくことができる。また、内容積Vは、第1コントロール弁6を閉じてその下流側を真空圧に維持した状態から、第1コントロール弁6を開くとともに第2コントロール弁8を閉じ、容積Vの空間に既知の基準流量でガスを流し込んだ時の圧力上昇率(ΔP1/Δt)を測定することによって、圧力上昇率法を利用して計算により求めることも可能である(例えば、特許文献5に開示)。
【0062】
ΔP1/Δtの測定結果に基づいて流量Qを求める、いわゆるビルドダウン方式(例えば特許文献6に開示)は、典型的には下流側が真空圧などの低圧に維持された状態で上流側の弁を閉じた後の流出ガスのΔP1/Δtを測定することによって流量を求める方式である。より具体的には、例えば特許文献6に記載のように、Q=(1000/760)×60×(273/(273+T))×V×(ΔP/Δt)によって流量を求めることができる。ここで、Tはガス温度(℃)であり、Vは上記の内容積(l)であり、ΔPは圧力降下の大きさ(Torr)であり、ΔtはΔPの圧力降下に要した時間(sec)である。
【0063】
本実施形態においても、公知のビルドダウン方式に基づいて所望流量(すなわち、流量立ち上げ後の目標流量でありここでは10%流量)に対応するΔP1/Δtを求めておき、求めたΔP1/Δtを実現できるように、第1圧力センサ3の出力に基づいて第2コントロール弁8の開度をフィードバック制御することによって、所望の一定流量で残留ガスを第2コントロール弁8の下流側に流し続けることができる。なお、上記式からわかるようにガス温度Tによっても流量が変化するため、ガス温度Tを測定する温度センサ5の出力も用いてΔP1/Δtの制御を行えば、より向上した精度で流量制御を行い得る。
【0064】
上記のビルドダウン方式の流量制御を第2コントロール弁8に適用した場合、第2コントロール弁8が時刻t0後に徐々に開いていくとともに制御流量がゼロから増加し、ΔP1/Δtが10%流量に対応する値に達した時刻t1の後も、ΔP1/Δtを一定の値に維持する制御が継続して行われる。このビルドダウン流量制御期間中、第1コントロール弁6は閉じた状態に維持され、一方で、第2コントロール弁8は、第1圧力センサ3の出力に基づいてΔP1/Δtが一定の値を維持するようにフィードバック制御により開度が調整され続ける。
【0065】
ビルドダウン方式の流量制御を継続する中で、残留ガスは上流圧力P1の直線的な低下を伴いながら一定流量で流出する。そして、第1圧力センサ3の出力値が、第1コントロール弁6を用いた通常流量制御モードにおける10%流量に対応する上流圧力(ここでは30kPa abs)にまで低下したときを時刻t2とすると、本実施形態では、時刻t2に第1コントロール弁6を10%流量に対応する開度(第1コントロール弁6から絞り部2までの内容積の圧力が30kPa absに制御される開度)に開くようにしている。これによって、第1コントロール弁6の上流からガスが流れ込み、時刻t2の後も、絞り部2および第2コントロール弁8の下流に10%流量でガスを流し続けることができる。なお、時刻t2の後は、第2コントロール弁8は、全開に開かれた状態(OPEN)に維持されるか、あるいは少なくとも絞り部2の開口面積以上の開度に開かれた状態に維持される。
【0066】
以上説明したように、本実施形態では、第2コントロール弁8を用いてΔP1/Δtの測定に基づく流量制御(ビルドダウン流量制御)を行うが、流量立ち上げ時にはビルドダウン流量制御モードに移行し、その後、所定圧力に達した時点で第1コントロール弁6を用いた通常流量制御モードに切り替えるように動作が行われている。
【0067】
ただし、ビルドダウン流量制御モードを行うためには、残留圧力がある程度大きい必要がある。これは、残留圧力が低すぎるときには、ΔP1/Δtを所望流量に適合する値に制御することができないからである。また、立ち上げ後の目標流量が大きいときにも、ビルドダウン流量制御のためには残留圧力が不足していることもある。
【0068】
この場合に、例えば、ビルドダウン流量制御モードに移行する前に、第1コントロール弁6を開いて、残留圧力を増加させるようにしてもよい。より具体的には、ビルドダウン流量制御モードに移行する前に、まず、第1コントロール弁6と第2コントロール弁8とを閉鎖した状態で圧力センサ3の出力に基づいて第1コントロール弁の下流に残留する圧力を求め、求めた圧力が目標流量に相当する圧力よりも低い場合、第1コントロール弁6の下流に残留する圧力が目標流量に相当する圧力よりも高くなるまで第1コントロール弁6を開く。そして、圧力センサ3の出力が、目標流量に相当する圧力を越えた時点で、第1コントロール弁6を閉じるようにすれば、ビルドダウン流量制御モードに移行する前に十分な残留圧力が得られる。
【0069】
なお、上記のように残留圧力が低い場合や、立ち上げ後の目標流量が大きい場合、残留圧力による開弁時のオーバーシュートは生じにくいと考えられる。このため、ビルドダウン流量制御モードに移行するための残留圧力の閾値や目標流量の閾値を予め設定しておき、閾値に達しない場合には、ビルドダウン流量制御モードに移行せずに、通常の流量制御モード、すなわち、第1コントロール弁6を圧力センサ3の出力に基づいて開度調整する流量制御モードに移行してもよい。このとき、第2コントロール弁8は、第1コントロール弁6の開動作に連動して全開または絞り部2の開口面積以上の開度に開くように制御すればよい。
【0070】
また、本発明の他の態様において、ビルドダウン流量制御モードに移行する前に、第2コントロール弁8を一定開度まで迅速に開く動作を行うようにしてもよい。この場合、残留圧力および目標流量と弁開度とを関連付けたテーブルを予め記憶装置などに記憶しておき、これを用いて第2コントロール弁8の動作を制御してもよい。テーブルを用いる場合、まずは第2コントロール弁8の開度をテーブルに従う開度付近にまで近づけ、そこから圧力センサ3の出力に基づいてΔP1/Δtを一定に維持するフィードバック制御を行えばよい。
【0071】
上記のテーブルに記憶する項目としては、ガス種、残留圧力、制御流量等の複数のパラメータが考えられる。この場合に、それぞれのパラメータに対応したテーブルを用意しておいてもよいが、基準テーブルを用意するとともに、例えばガス種が違う場合は、ガス種に対応する補正係数を設けてガス種の違いをカバーするようにし、基準テーブルを補正して用いるようにしてもよい。あるいは、補正せずに基準テーブルを用いる場合であっても、第2コントロール弁8を所望開度にある程度は近づけることができるので、第2コントロール弁8の応答性を向上させながら、制御の負荷を小さくすることができる。
【0072】
以上に説明した本実施形態の流量制御方法によれば、図2(b)に示すように、制御流量を時刻t0~t1までの短期間(例えば、0.1秒)において急速に立ち上げることができ、また、第1コントロール弁6を閉じたまま残留圧力を利用してガスを流すので、低設定流量に立ち上げるときにも圧力超過が生じにくく、オーバーシュートの発生を防止することができる。また、第2コントロール弁8の開度調整により、立ち上げ後の流量で安定してガスを流し続けることができ、さらに、残留ガスが所定圧力まで低下した後には、第1コントロール弁6を開けることによって所望流量でガスを流し続けることができる。
【0073】
以下、本実施形態の流量制御方法の例示的なフローチャートについて、図3を用いて説明する。なお、このフローチャートでは、ビルドダウン流量制御モードを実行することを前提としている。
【0074】
図3のステップS1に示すように、まず、0%設定時に、第1コントロール弁6(第1バルブ)および第2コントロール弁8(第2バルブ)が閉鎖された状態で、圧力センサ3を用いて両弁閉鎖時の上流圧力P1すなわち残留圧力が測定される。
【0075】
次に、ステップS2に示すように、測定した上流圧力P1が閾値Pth以上であるか否かが判定される。上流圧力P1が閾値Pth以上である場合(YES)、ステップS4のビルドダウン流量制御モードに移行する。一方、上流圧力P1が閾値未満である場合(NO)、ステップS3-1のように上流圧力P1が閾値以上になるまで、第1コントロール弁6を開く動作を行い、その後、ステップS3-2のように第1コントロール弁6を閉じる。
【0076】
なお、他の態様において、ステップS2において、測定した上流圧力P1が閾値Pth未満であった場合、ビルドダウン流量制御モードに移行せずに、ステップS6に示すように、第1コントロール弁6を開いてその開度を圧力センサの出力に基づいて制御する、通常の流量制御モードに直接移行してもよい。
【0077】
上流圧力P1が十分な大きさである場合、ビルドダウン流量制御モードに移行して流量0%から10%に立ち上げる動作が行われる。具体的には、第1コントロール弁6を閉鎖した状態を継続しながら、第2コントロール弁8を開放するとともに、第1コントロール弁6と第2コントロール弁8(または絞り部2)との間の流路容積を容積Vとして、Q=α・(ΔP1/Δt)・Vによる流量制御、すなわち、ステップS4として示すように、ΔP1/Δtが所定値(10%流量に対応する値)に維持されるように第2コントロール弁8の開度を圧力センサ3の出力に基づいて調整する制御を行う。
【0078】
また、ステップS5に示すように、第1圧力センサ3の出力を監視して、第1圧力センサ3が出力する上流圧力P1が所定値、より具体的には、Q=K1・P1による流量制御における10%流量に対応する所定値に達したかどうかが判定される。所定値に達していないと判断された場合(NO)、ステップS4に戻って第2コントロール弁8の開度制御を続けて10%流量でガスを流すビルドダウン制御モードを継続する。
【0079】
ステップS5において、第1圧力センサ3の出力が所定値に達したと判断されたとき(YES)は、制御の切り替えを行い、ステップS6に示すように、第1コントロール弁6を10%流量に対応する開度に開くとともに第2コントロール弁8を全開または絞り部2の開度以上にする。これにより、通常の流量制御モードに切り替わる。その後、第1コントロール弁6は、第1圧力センサ3の出力に基づいてフィードバック制御され、Q=K1・P1に基づく流量制御によって10%流量でガスを流し続けることができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態を説明したが、種々の改変が可能である。例えば、上記には、流量立ち上げ開始後に第1コントロール弁6を閉鎖状態に維持する態様を説明したが、これに限られない。流量立ち上げ開始後のビルドダウン流量制御モードにおいて、第1コントロール弁6が、目標流量に対応する開度よりも小さい一定開度(例えば、5%設定流量に対応する開度)の状態に開かれ、目標流量未満の流量でガスが流入する状態が継続していてもよい。この場合にも、第1圧力センサ3の出力に基づいて、ΔP1/Δtが所定値を維持するように第2コントロール弁8の開度を調整すれば、第2コントロール弁8の下流側に目標流量で流体を流し得る。また、第1コントロール弁6をビルドダウン流量制御中にもわずかに開いておけば、時刻t2において通常の流量制御モードに切り替える際、第1コントロール弁6を所望の開度までより迅速に開くことができるので、流量制御の安定性を向上させ得る。
【0081】
ただし、ビルドダウン方式で用いられる流量式は、典型的には、上流側のバルブ(第1コントロール弁6)が閉鎖されていることを前提としている式であるため、上流側が開いて流体が容積Vの部分に流れてくる状態だと、そのままの流量式を用いると、流量制御が適切に行われない可能性がある。しかし、上流から容積Vに流れ込む流量が既知であれば、流量式を補正して使用することも可能であると考えられる。したがって、流入量が既知のときには、実質的に上流側のバルブが閉鎖しているのと同じ状況と捉えることができる。
【0082】
また、上記には、流量立ち上げの際に、ステップS1において、第1コントロール弁6および第2コントロール弁8の両方を閉じた状態で上流圧力P1を測定する態様を説明したが、これに限られない。流量立ち上げ直前の流量ゼロのときには、第2コントロール弁8が閉じられていればよく、第1コントロール弁6は、圧力センサ3の出力に基づいて第1コントロール弁6の開度を第1流量になるように制御する時の開度よりも小さい開度に閉じられて、わずかに開いた状態であってもよい。この場合、第1コントロール弁6が開いているとともに第2コントロール弁8が閉じられているため、圧力センサ3の測定圧力は増加するが、最初に測定した圧力が閾値以上であるとき、あるいは、増加した測定圧力が閾値以上に達したときに、第2コントロール弁8を開いて上記のビルドダウン流量制御を行うように動作させればよい。また、上記のように第1コントロール弁6がわずかに開かれた状態は、そのままビルドダウン流量制御中にも継続されてもよい。
【0083】
また、上記には、第1コントロール弁6や第2コントロール弁8が全開になった時点を設定流量の100%として設定した例を説明したが、必ずしもその必要は無く、全開ではない一定の開度の状態を100%設定とすることも可能である。そして、上記の実施例においては、設定流量100%における上流圧力P1は、300kPa absとし、設定流量10%における上流圧力P1は30kPa absとしているが、これに限らず、設定する流量や流量範囲、流体の種類等によって、上流圧力P1は様々な値となることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の実施形態による流量制御方法および流量制御装置は、半導体製造プロセスにおいて材料ガス等を供給する際、特に流量ゼロから立ち上げを行うときに好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0085】
1 流路
2 絞り部
3 第1圧力センサ
4 第2圧力センサ
5 温度センサ
6 第1コントロール弁
7 制御回路
8 第2コントロール弁
9 オリフィス内蔵弁
100 流量制御装置
図1
図2
図3