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特許7369472杭打ち船、並びにその姿勢調整、測位制御及び杭打ち方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】杭打ち船、並びにその姿勢調整、測位制御及び杭打ち方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/02 20060101AFI20231019BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20231019BHJP
【FI】
E02D7/02
B63B35/00 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021544680
(86)(22)【出願日】2020-05-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 CN2020089398
(87)【国際公開番号】W WO2020182231
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】201910188578.7
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520154254
【氏名又は名称】江蘇科技大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No.2 Mengxi Road,Zhenjiang,Jiangsu 212003,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タン ウェンシエン
(72)【発明者】
【氏名】クオ ション
(72)【発明者】
【氏名】チャン チエン
(72)【発明者】
【氏名】スー シーチエ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ユン
(72)【発明者】
【氏名】リウ チン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ウェイミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ユエヤン
(72)【発明者】
【氏名】チー チーヤン
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-121219(JP,A)
【文献】特開昭52-048210(JP,A)
【文献】特開平08-048288(JP,A)
【文献】特開2017-190667(JP,A)
【文献】特開2003-105762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリップブレーキ装置が設けられている船体を備え、船首に杭枠がヒンジ接続で設けられており、船首に杭吊り装置が設けられており、杭枠に杭打ち装置及び杭把持装置が設けられており、杭打ち装置が杭枠に設けられている杭打ちガイドレールを含み、杭打ちガイドレールにパイルハンマーが可動に設けられており、パイルハンマーの底部に杭頭キャップが接続されている杭打ち船であって、測位制御システム、船体姿勢調整システムをさらに含み、前記船体姿勢調整システムが、甲板下に対称に配置され、船体の浮き状態を調整する少なくとも4つの浮力調節装置と、船体に設けられているレーダー波浪計とを含み、浮力調節装置が、船体に設けられているバラストタンクと、甲板の下面に設けられている接続板とを含み、接続板に鉛直下向きに設けられている推進装置がヒンジで接続されており、バラストタンクの底部に外界と連通するスルーホールが設けられており、バラストタンク内かつ液面上に水押し板が設けられており、推進装置の端部がバラストタンクの頂板を通過して水押し板とヒンジで接続されており、レーダー波浪計がコンピュータ制御システムと接続されており、レーダー波浪計でデータを検出して各推進装置の必要な運動距離を算出し、水押し板を駆動して上下移動させることによって水を排出又は流入させることにより、船体の浮き状態を制御し、前記測位制御システムが、コンピュータ制御システムと接続され、船体の2つの異なる位置に設けられているGPS信号受信機と、コンピュータ制御システムと接続され、船体に設けられ、少なくとも4つの異なる位置でアンカーを下ろすウインドラスとを含み、船体において、船体のエンドコーナーに配置されているアンカーケーブル接続点が対応的に設けられており、アンカーケーブル接続点に、コンピュータ制御システムと接続され、アンカーケーブルの角度を測定する角度計が取り付けられており、コンピュータ制御システムがGPS信号受信機により船体の位置情報を取得し、絶対座標系及び船上座標系を構築し、さらに、船体の移動時の各アンカーと船体との接続点の絶対座標系におけるリアルタイム位置情報及び各アンカーケーブルの長さを算出し、最終的に各ウインドラスの繰込み/繰出し速度を得て船体の運動を制御することを特徴とする杭打ち船において、
船体にGPS信号受信機及びスキャナを2つ取り付け、平面内に絶対座標系及び船上座標系X’O’Y’を構築するステップ1と、
GPS信号受信機が座標情報を受信し、衛星基地局から発信した差分信号とともに用いてGPS信号受信機の絶対座標系における正確な位置座標を得るステップ2と、
GPS信号受信機のうちの一方の位置座標及び取付位置に基づいて船上座標系の原点の絶対座標系における座標
【数1】
を得るステップ3と、
2つのGPS信号受信機の位置座標に基づいて船上座標系のY’方向を得るステップ4と、
杭打ち船を作業領域に引航してアンカーを下ろし、アンカーケーブル接続点に取り付けられている角度計によりアンカーケーブルの角度を測定し、アンカーケーブルの繰出し長さに基づいて、アンカーの分布点
【数2】
のそれぞれの絶対座標系XOYにおける位置座標
【数3】
を算出するステップ5と、
船体の中心Oの座標を測位し、船が
【数4】
点にあるとき、アンカーと船体との接続点
【数5】
のそれぞれの絶対座標系における座標が
【数6】
であるステップ6と、
船上座標系X’O’Y’において、接続点
【数7】
のそれぞれと船の中心Oとの位置関係に基づいて、測位されたOの座標とともに用いて接続点のそれぞれの絶対座標系XOYにおける座標
【数8】
を得るステップ7と、
縦杭の目標点の位置
【数9】
とし、船体のインポジション姿勢に基づいて杭打ち船のインポジション時の船上座標系の原点O’の位置
【数10】
(θは、船体の回転角度である)を得るステップ8と、
杭打ち船がO点からO’点まで運動する場合の、船体の運動時間をa(s)と設定し、各方向の運動速度
【数11】
(ただし、
【数12】
は、絶対座標系における船体のX方向に沿う運動速度であり、
【数13】
は、絶対座標系における船体のY方向に沿う運動速度であり、
【数14】
は、船体の回転の角速度である)を得るステップ9と、
船体がO’点に運動するときの、アンカーと船体との接続点
【数15】
のそれぞれの絶対座標系における座標を
【数16】
とすると、
時刻tに、
【数17】
の座標が
【数18】
であるステップ10と、
ワイヤロープの長さを算出し、水深をhとし、ワイヤロープの弛みを無視すると、ワイヤロープの長さ
【数19】

【数20】
であるステップ11と、
時刻tに、ウインドラスのそれぞれの繰込み速度
【数21】

【数22】
であるステップ12と、
求められた速度に基づいてそれぞれのウインドラスの繰込み/繰出し速度を制御し、杭打ち船の迅速で正確な運動を実現するステップ13と、を含む
杭打ち船の測位制御方法。
【請求項2】
レーダー波浪計により各方向の波浪の高さと周期を測定し、測定されたデータをコンピュータに伝送するステップ1と、
コンピュータが、ステップ1のデータに基づいて流体力学解析ソフトにより、船体がY軸まわりのピッチング運動する角度
【数23】
、船体がX軸まわりのローリング運動する角度
【数24】
、船体がZ軸に沿ってヒービング運動する変位sを求め、角度と変位のデータをコンピュータに伝送するステップ2と、
船体モデルを構築し、当該杭打ち船を直方体として簡略化し、杭打ち船の浮力中心を円心として直角座標系を作成し、船体の長さ方向に沿ってX軸の正方向を設定し、Y軸及びZ軸を右手の法則により確定し、Y軸が船体の幅方向に沿い、Z軸の正方向が杭打ち船の甲板に垂直でかつ上向きであるステップ3と、
コンピュータがソフトにより求められた角度を受信し、船体がY軸まわりのピッチング運動する場合、船の静止状態における喫水線をMNとしてマークし、杭打ち船がY軸まわりのピッチング運動するときの喫水線をM1N1としてマークし、Y軸まわりの下向きに傾斜する一端の排水体積Vyを測定可能であり、杭打ち船の長さをLとし、幅をbとし、バラストタンクの内径をaとし、M1N1とMNとの間の角度を
【数25】
とし、浮力中心からX軸の正方向の船べりの距離をL2とし、浮力中心からY軸の正方向の船べりの距離をb2とすると、沈下くさび形部体積(immersed wedge volume)Vy部分の水のY軸に対する静的モーメントが
【数26】
であり、
バラストタンク内の水体積のY軸に対する静的モーメントが
【数27】
であり、
沈下くさび形部体積のY軸に対する静的モーメントと、一方側のバラストタンク内の水量のY軸に対する静的モーメントが等しい場合に、
【数28】
となり、
船体の下向きに傾斜する一端の油圧シリンダーの下向きの変位量
【数29】
を得るステップ4と、
船体がX軸まわりのローリング運動する場合、船の静止状態における喫水線をM2N2としてマークし、杭打ち船がX軸まわりのピッチング運動するときの喫水線をM3N3としてマークし、
【数30】
がM2N2とM3N3との間の角度であり、X軸まわりの下向きに傾斜する一端の排水体積Vxが分かり、すると、沈下くさび形部体積Vxの部分の水のX軸に対する静的モーメントが
【数31】
であり、
バラストタンク内の水体積のX軸に対する静的モーメントが
【数32】
であり、
沈下くさび形部体積のX軸に対する静的モーメントと一方側のバラストタンク内の水量のX軸に対する静的モーメントが等しい場合に、
【数33】
となり、
船体の下向きに傾斜する一端の2つの油圧シリンダーの下向きの変位量
【数34】
を得るステップ5と、
船体がZ軸に沿ってヒービング運動する場合、船の静止状態における喫水線をM4N4としてマークし、杭打ち船がZ軸に沿って回転してヒービング運動するときの喫水線をM5N5としてマークし、船体の減少する排水量の体積Vzが分かり、Vz=bhsであり、バラストタンク内から排出すべき水体積を
【数35】
とし、すると、船体の減少する排水量の体積Vzがバラストタンク内から排出される水体積V1と等しい、即ち、
【数36】
であり、これによって、船体の4つの油圧シリンダーの下向きの変位量
【数37】
を得るステップ6と、
コンピュータにより水押し板からバラストタンクの頂部の距離を算出し、続いて、各油圧シリンダーをそれぞれ制御して伸長させ、バラストタンク内の水を海に排水し、船体の下向きの端に対して海水に上向きの反力を発生させ、杭打ち船の浮力を増加させ、杭打ち船に対して姿勢調整を行うステップ7と、を含む
請求項1に記載の杭打ち船の測位制御方法。
【請求項3】
杭打ち船を作業領域に引航し、測位アンカーを下ろし、縦杭が載置された輸送船がインポジションするステップ1と、
杭枠を持ち上げ、請求項1に記載の杭打ち船の測位制御方法により、杭枠の持ち上げ中に船体を水平に維持するステップ2と、
杭打ち船の測位システムにより船体の位置及び縦杭が載置された目標位置を確定してから、請求項1に記載の杭打ち船の測位制御方法により、縦杭が載置された目標位置に運動するように杭打ち船を制御するステップ3と、
ワイヤロープを繰り込む/繰り出すようにフックウインチを制御し、フックを、輸送船まで下ろし、縦杭のシャックルにかけるステップ4と、
ワイヤロープを繰り込む/繰り出すようにフックウインチを制御し、縦杭を吊り上げ、鉛直にするステップ5と、
杭ホルダーを持ち上げて縦杭をクランプするステップ6と、
請求項1に記載の杭打ち船の測位制御方法により、縦杭の杭打ち位置に運動するように杭打ち船を制御し、2つのスキャナにより縦杭の位置にずれがあるか否かを検出し、縦杭の位置と姿勢にずれがある場合、杭ホルダーを制御して小範囲で運動させることで縦杭の位置を調整するステップ7と、
油圧パイルハンマーを所定の高さだけ降下させ、杭頭キャップを縦杭の頂端に被るステップ8と、
油圧パイルハンマーを始動させ、杭打ち作業を開始し、杭打ち中、検出システムにより縦杭の毎回の打撃後の泥への進入深さをリアルタイム検出し、検出結果に基づいて油圧パイルハンマーの打撃エネルギーをリアルタイム調整し、同時に、杭打ち船の姿勢調整システムにより、船体が波浪の影響を受けず、作業中に水平状態を維持することを確保するステップ9と、
縦杭を所定の深さまで打ち込んだ後、杭ホルダーを引き戻すステップ10と、
縦杭1組が全て泥に進入するまでステップ3~10を繰り返し、群杭の杭打ち作業を完成するステップ11と、
杭ホルダーを引き戻し、杭枠を横にし、測位アンカーを回収し、杭打ち船を次の作業領域に引航する準備をするステップ12と、を含む
請求項1に記載の杭打ち船の測位制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打ち船及びその制御方法に関し、具体的に、杭打ち船、並びにその姿勢調整方法、測位制御方法及び杭打ち方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打ち船は海上の杭打ち機器の1種であり、杭打ち船により縦杭を海底の土層に取り付け、縦杭の取り付けが完成すると、縦杭に風力発電などの作業のプラットフォームを取り付けることができる。沿岸地域の開放の拡大と発展の深まりの需要、及び、環海経済圏に対する国家の戦略的レイアウトの促進に伴い、沿海地域での水上工事プロジェクトがますます増加してきており、深海港の埠頭、ベイブリッジ、海上風力発電インフラなどの工事プロジェクトの建設に適応するには、杭打ち船は、大型化、自動化へ徐々に発展している。それとともに、海上の杭基礎工事は、杭打ち船の作業精度と効率に対する要求が高まり続けているが、杭基礎工事の施工が風力、海流、水深、地質などの条件による影響及び環境条件による制約を受け、従来の杭打ちの施工プロセス及び設備では、安全性と工期に対する要求を満たすことができない。
【0003】
特に、海底の地質状況が複雑であるので、杭打ちの前に、地質探査の結果に基づいて杭位置を決定する必要があり、異なる地質条件で提供される耐荷重性が異なり、岩石層や土層の深さ方向における耐衝撃性が異なる。杭打ち位置にずれがあると、杭位置の貫入深さが異なり、杭基礎の耐荷重性が不足しやすくなり、ひいては杭が破断することがあり、深刻な場合に、上部構造が傾いて壊れ、重大な財産損失を引き起こしてしまう。また、杭打ち船が縦杭から離脱した後、自重により斜杭が転位するため、杭位置の設計時、転位値を予め確保することで、ずれを減少させ、杭打ち位置が正確であれば、予め留保される転位値を確保し、縦杭が耐荷重性の低い位置にあることを回避することができる。したがって、海底の岩石や耐荷重性の低い地域などを避けるために、探査で得られる杭打ち可能な範囲が小さいことがあり、この場合、杭打ち作業の円滑な実施を確保するには、高い杭打ち精度が必要である。
【0004】
しかし、現在、杭打ち作業の完成には、人工操作に頼る作業が多くし、杭打ち船は、風波、潮流の影響で杭打ち中に船体の平穏を確保できず、縦杭の位置と傾角の高精度に対する要求を満たすことができない。従来の杭打ち船の安定性の向上方法では、いずれも問題を良好に解決することができない。中国特許ZL201410557626.2に記載されるバラスト機能を持つ大型貨物船の自動バランシング方法及びシステムでは、低いバランスタンク内に位置する水を、高いバランスタンク内に汲み上げて船体のバランスを維持するが、当該方法は、補償遅れが非常に大きい。中国特許ZL201420532754.7に記載される波に耐える杭打ち船では、杭打ち船の縦方向における安定性を向上させたが、主甲板のヒービング運動に対して制御を行っていない。また、中国特許ZL201420532727.Xに記載される波に耐える杭打ち船は、杭打ち船に対する風浪の影響を減少させたが、補償の精度が低く、遅れが大きく、補償性能が不安定である。したがって、現在、杭打ち中に様々な程度の斜杭の問題がしばしば発生し、良好に解決することが困難である。
【0005】
また、群杭の作業中、杭打ち船は、杭打ちエリアと杭吊りエリアとの間で往復運動する必要があり、引航又はその他の方法により船体の運動を制御する場合、船体における杭枠を、杭打ち位置に正確に運動させることができず、船体のインポジション精度に対する要求を満たすことができず、杭打ちの精度に非常に大きく影響してしまう。
【0006】
上記の2つの理由に鑑みて、海上プラットフォームを建設するために正確な杭打ちを必要とする一部の地域は、開発を諦めざるを得ないことが多い。
【発明の概要】
【0007】
本発明が解決しようとする技術課題は、測位が正確でかつ船体の作業時に安定性が良好であり、正確な杭打ちを実現する杭打ち船を提供することである。
【0008】
上記の技術課題を解決するために、本発明で採用される技術方案は、スリップブレーキ装置が設けられている船体を備え、船首に杭枠がヒンジ接続で設けられており、船首に杭吊り装置が設けられており、杭枠に杭打ち装置及び杭把持装置が設けられており、杭打ち装置が杭枠に設けられている杭打ちガイドレールを含み、杭打ちガイドレールにパイルハンマーが可動に設けられており、パイルハンマーの底部に杭頭キャップが接続されている杭打ち船であって、測位制御システム、船体姿勢調整システムをさらに含み、前記船体姿勢調整システムが、甲板下に対称に配置され、船体の浮き状態を調整する少なくとも4つの浮力調節装置と、船体に設けられているレーダー波浪計とを含み、浮力調節装置が、船体に設けられているバラストタンクと、甲板の下面に設けられている接続板とを含み、接続板に鉛直下向きに設けられている推進装置がヒンジで接続されており、バラストタンクの底部に外界と連通するスルーホールが設けられており、バラストタンク内かつ液面上に水押し板が設けられており、推進装置の端部がバラストタンクの頂板を通過して水押し板とヒンジで接続されており、レーダー波浪計がコンピュータ制御システムと接続されており、レーダー波浪計でデータを検出して各推進装置の必要な運動距離を算出し、水押し板を駆動して上下移動させることによって水を排出又は流入させることにより、船体の浮き状態を制御し、前記測位制御システムが、コンピュータ制御システムと接続され、船体の2つの異なる位置に設けられているGPS信号受信機と、コンピュータ制御システムと接続され、船体に設けられ、少なくとも4つの異なる位置でアンカーを下ろすウインドラスとを含み、船体に、船体のエンドコーナーに配置されているアンカーケーブル接続点が対応的に設けられており、アンカーケーブル接続点に、コンピュータ制御システムと接続され、アンカーケーブルの角度を測定する角度計が取り付けられており、コンピュータ制御システムがGPS信号受信機により船体の位置情報を取得し、絶対座標系及び船上座標系を構築し、さらに、船体の移動時の各アンカーと船体との接続点の絶対座標系におけるリアルタイム位置情報及び各アンカーケーブルの長さを算出し、最終的に各ウインドラスの繰込み/繰出し速度を得て船体の運動を制御する杭打ち船である。
【0009】
本杭打ち船の有益な効果は、本杭打ち船には、杭枠に対する正確な測位を採用するとともに、杭打ち時の船体の姿勢に対する調整と組み合わせることで、杭打ちの精度を確保し、鋼杭を設定位置に正確に打ち込むことができるようになり、船体に伴う杭頭キャップの付勢角度の変動による杭の破断などの潜在的なリスクを回避し、その上に設けられる海上プラットフォームの安全性と耐用年数を向上させることである。まず、船体は、GPS信号受信機により船体の位置と姿勢情報を取得し、絶対座標系及び船上座標系を構築し、さらに、船体の移動時の各アンカーと船体との接続点の絶対座標系におけるリアルタイム位置情報及び各アンカーケーブルの長さを算出し、最終的に各ウインドラスの繰込み/繰出し速度を得る。各アンカーの位置が絶対座標系において一定となるので、杭打ち船が作業領域内のある位置にあるとき、各アンカーケーブルが対応的に一定の長さ値を有し、船体が実際位置にある場合と目標位置にある場合の各アンカーケーブルの長さが異なり、アンカーチェーンの繰込み/繰出しにより、船体における杭枠が目標位置に正確に運動するように群杭の作業領域に浮いている杭打ち船の運動を制御することができる。当該方式によれば、従来の引航運動などによる測位精度が悪いことに起因して縦杭の設定位置への正確な打ち込みが困難である問題を克服する。同時に、本杭打ち船に適応性のある船体姿勢調整システムを採用し、波浪検出装置により波浪パラメータを検出し、コンピュータにフィードバックし、ソフトにより船体に対する波浪の影響を算出し、制御システムは、算出結果に応じて即時に応答し、船体の姿勢を能動的に調整するように姿勢調整装置を制御し、杭打ち船のピッチング、ローリング及びヒービングをなくし、船体全体の安定性及び波に耐える能力を向上させ、深海及び急流な海洋環境、特に、うねり、中長周期波の海域での施工作業に適応し、杭打ち作業の安定な進行を確保し、従来、船体の姿勢調整を行うには、先ず静的又は動的測定を行わなければならないという遅滞性を克服し、杭打ち船が作業時に十分に安定な状態にあるようになり、縦杭の打ち込みの正確度を良好に確保する。
【0010】
一方、上下の2つのスキャナが設けられているので、縦杭の位置と設定杭線に夾角があり、或いはその位置と設定位置にずれがあることが走査によって検出された場合に、上下の2つの杭把持装置を調整することで縦杭の位置調整を実現することができ、ずれの補正作用を奏する。船体運動の制御及び縦杭の位置ずれの補正により、悪い海況でも縦杭の測位精度を向上させることができる。
【0011】
本発明の解決しようとする別の課題は、前記杭打ち船の姿勢調整方法を提供することである。
【0012】
前記技術課題を解決するために、本発明で採用される技術方案は、
レーダー波浪計により各方向の波浪の高さと周期を測定し、測定されたデータをコンピュータに伝送するステップ1と、
コンピュータが、ステップ1のデータに基づいてANSYS/AQWA流体力学解析ソフトにより、船体がY軸まわりのピッチング運動する角度
【数1】

、船体がX軸まわりのローリング運動する角度
【数2】

、船体がZ軸に沿ってヒービング運動する変位sを求め、角度と変位のデータをコンピュータに伝送するステップ2と、
船体モデルを構築し、当該杭打ち船を直方体として簡略化し、杭打ち船の浮力中心を円心として直角座標系を作成し、船体の長さ方向に沿ってX軸の正方向を設定し、Y軸及びZ軸を右手の法則により確定し、Y軸が船体の幅方向に沿い、Z軸の正方向が杭打ち船の甲板に垂直でかつ上向きであるステップ3と、
コンピュータがソフトにより求められた角度を受信し、船体がY軸まわりのピッチング運動する場合、船の静止状態における喫水線をMNとしてマークし、杭打ち船がY軸まわりのピッチング運動するときの喫水線をM1N1としてマークし、Y軸まわりの下向きに傾斜する一端の排水体積Vyを測定可能であり、杭打ち船の長さをLとし、幅をbとし、バラストタンクの内径をaとし、M1N1とMNとの間の角度をWyとし、浮力中心からX軸の正方向の船べりの距離をL2とし、浮力中心からY軸の正方向の船べりの距離をb2とすると、沈下くさび形部体積(immersed wedge volume)Vyの部分の水のY軸に対する静的モーメントが
【数3】

であり、
バラストタンク内の水体積のY軸に対する静的モーメントが
【数4】

であり、
沈下くさび形部体積のY軸に対する静的モーメントと、一方側のバラストタンク内の水量のY軸に対する静的モーメントが等しい場合に、
【数5】

となり、
船体の下向きに傾斜する一端の油圧シリンダーの下向きの変位量
【数6】

を得るステップ4と、
船体がX軸まわりのローリング運動する場合、船の静止状態における喫水線をM2N2としてマークし、杭打ち船がX軸まわりのピッチング運動するときの喫水線をM3N3としてマークし、xがM2N2とM3N3との間の角度であり、X軸まわりの下向きに傾斜する一端の排水体積Vxが分かり、すると、沈下くさび形部体積Vxの部分の水のX軸に対する静的モーメントが
【数7】

であり、
バラストタンク内の水体積のX軸に対する静的モーメントが
【数8】

であり、
沈下くさび形部体積のX軸に対する静的モーメントと一方側のバラストタンク内の水量のX軸に対する静的モーメントが等しい場合に、
【数9】

となり、
船体の下向きに傾斜する一端の2つの油圧シリンダーの下向きの変位量
【数10】

を得るステップ5と、
船体がZ軸に沿ってヒービング運動する場合、船の静止状態における喫水線をM4N4としてマークし、杭打ち船がZ軸に沿って回転してヒービング運動するときの喫水線をM5N5としてマークし、船体の減少する排水量の体積Vzが分かり、Vz=bhsであり、バラストタンク内から排出すべき水体積を
【数11】

とし、すると、船体の減少する排水量の体積Vzがバラストタンク内から排出される水体積V1と等しい、即ち、
【数12】

となるはずであり、これによって、船体の4つの油圧シリンダーの下向きの変位量
【数13】

を得るステップ6と、
コンピュータにより水押し板からバラストタンクの頂部の距離を算出し、続いて、各油圧シリンダーをそれぞれ制御して伸長させ、バラストタンク内の水を海に排水し、船体の下向きの端に対して海水に上向きの反力を発生させ、杭打ち船の浮力を増加させ、杭打ち船に対して姿勢調整を行うステップ7と、を含む杭打ち船の姿勢調整方法である。
【0013】
本方法の有益な効果は、本方法では、沈下くさび形部体積部分の水が船体に対して発生する静的モーメントにより、水押し板の必要な調整距離を算出し、能動的に補償することによって、杭打ち船のピッチング及びローリングをなくし、より悪い海况環境に適応し、杭打ちの品質を確保することができることである。
【0014】
本発明の解決しようとする別の技術課題は、前記杭打ち船の異なる杭位置間での正確な測位制御方法を提供することである。
【0015】
前記技術課題を解決するために、本発明で採用される技術方案は、
船体に2つのGPS信号受信機及びスキャナを取り付け、平面内に絶対座標系XOY及び船上座標系X’O’Y’を構築するステップ1と、
GPS信号受信機が座標情報を受信し、衛星基地局から発信した差分信号とともに用いてGPS信号受信機の絶対座標系における正確な位置座標を得るステップ2と、
GPS信号受信機のうちの一方の位置座標及び取付位置に基づいて船上座標系の原点の絶対座標系における座標
【数14】

を得るステップ3と、
2つのGPS信号受信機の位置座標に基づいて船上座標系のY’方向を得るステップ4と、
杭打ち船を作業領域に引航してアンカーを下ろし、アンカーケーブル接続点に取り付けられている角度計によりアンカーケーブルの角度を測定し、アンカーケーブルの繰出し長さに基づいてアンカーの分布点
【数15】

のそれぞれの絶対座標系XOYにおける位置座標
【数16】

を算出するステップ5と、
船体の中心Oの座標を測位し、船が
【数17】

点にあるとき、アンカーと船体との接続点
【数18】

のそれぞれの絶対座標系における座標が
【数19】

であるステップ6と、
船上座標系X’O’Y’において、接続点
【数20】

のそれぞれと船の中心Oとの位置関係に基づいて、測位されたOの座標とともに用いて接続点のそれぞれの絶対座標系XOYにおける座標
【数21】

を得るステップ7と、
縦杭の目標点の位置を
【数22】

とし、船体のインポジション姿勢に基づいて杭打ち船のインポジション時の船上座標系の原点O’の位置
【数23】

(θは、船体の回転角度である)を得るステップ8と、
杭打ち船がO点からO’点まで運動する場合の、船体の運動時間をa(s)と設定し、各方向の運動速度
【数24】

(ただし、
【数25】

は、絶対座標系における船体のX方向に沿う運動速度であり、
【数26】

は、絶対座標系における船体のY方向に沿う運動速度であり、
【数27】

は、船体の回転の角速度である)を得るステップ9と、
船体がO’点に運動するときの、アンカーと船体との接続点
【数28】

のそれぞれの絶対座標系における座標を
【数29】

とすると、
時刻tに、
【数30】

の座標が
【数31】

であるステップ10と、
ワイヤロープの長さを算出し、水深をhとし、ワイヤロープの弛みを無視すると、ワイヤロープの長さ
【数32】


【数33】

であるステップ11と、
時刻tに、ウインドラスのそれぞれの繰込み速度
【数34】


【数35】

であるステップ12と、
求められた速度に基づいてそれぞれのウインドラスの繰込み/繰出し速度を制御し、杭打ち船の迅速で正確な運動を実現するステップ13と、を含む杭打ち船の測位制御方法。
【0016】
本方法の有益な効果は、船体運動自動制御の方法により、杭打ち船を目標位置に迅速に正確に到達させ、杭吊り效率及び杭打ち精度を向上させることである。
【0017】
この船体運動自動制御の方法により、人為作業の強度を軽減することができ、この方法では、経験豊富なオペレーターを必要とせずに、船体が目標位置に到達する作業を迅速に正確に完成することもできる。
【0018】
船体運動自動制御の方法は、簡単で高効率であり、自動制御ソフトのプログラムを実現しやすく、異なるアンカー数の杭打ち船に適用し、適用範囲が広い。
【0019】
本発明の解決しようとする別の技術課題は、前記杭打ち船により正確で安全な杭打ちを行う杭打ち方法を提供することである。
【0020】
前記技術課題を解決するために、本発明で採用される技術方案は、
杭打ち船を作業領域に引航し、測位アンカーを下ろし、縦杭が載置された輸送船がインポジションするステップ1と、
杭枠を持ち上げ、前記杭打ち船の姿勢調整方法により、杭枠の持ち上げ中に船体を水平に維持するステップ2と、
杭打ち船の測位システムにより船体の位置及び縦杭が載置された目標位置を確定してから、前記杭打ち船の運動測位方法により、縦杭が載置された目標位置に運動するように杭打ち船を制御するステップ3と、
ワイヤロープを繰り込む/繰り出すようにフックウインチを制御し、フックを、輸送船まで下ろし、縦杭のシャックルにかけるステップ4と、
ワイヤロープを繰り込む/繰り出すようにフックウインチを制御し、縦杭を吊り上げ、鉛直にするステップ5と、
杭ホルダーの伸縮アームを持ち上げて縦杭をクランプするステップ6と、
前記杭打ち船の運動測位方法により、縦杭の杭打ち位置に運動するように杭打ち船を制御し、2つのスキャナにより縦杭の位置にずれがあるか否かを検出し、縦杭の位置と姿勢にずれがある場合、杭ホルダーを制御して小範囲で運動させることで、ずれの補正作用を奏するステップ7と、
油圧パイルハンマーを所定の高さだけ降下させ、杭頭キャップを縦杭の頂端に被るステップ8と、
油圧パイルハンマーを始動させ、杭打ち作業を開始し、杭打ち中、検出システムにより縦杭の毎回の打撃後の泥への進入深さをリアルタイム検出し、検出結果に基づいて油圧パイルハンマーの打撃エネルギーをリアルタイム調整し、同時に、杭打ち船の姿勢調整システムにより、船体が波浪の影響を受けず、作業中に水平状態を維持することを確保するステップ9と、
縦杭を所定の深さまで打ち込んだ後、杭ホルダーを引き戻すステップ10と、
縦杭1組が全て泥に進入するまでステップ3~10を繰り返し、群杭の杭打ち作業が完成するステップ11と、
杭ホルダーを引き戻し、杭枠を横にし、測位アンカーを回収し、杭打ち船を次の作業領域に引航する準備をするステップ12と、を含む杭打ち船の杭打ち方法である。
【0021】
本方法の有益な効果は、本方法では、船体の位置、及び、縦杭が載置された目標位置を測位してから、杭打ち船の運動測位方法で縦杭が載置された目標位置に運動するように杭打ち船を制御することにより、縦杭の吊り上げを容易にし、そして、本方法により、杭打ち位置を正確に測位しやすくすることができ、杭打ちの前に縦杭の位置を自動調整することにより、杭打ち精度をさらに向上させ、杭打ちの過程全体の自動化程度が高いことである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の杭打ち船の正面図である。
図2】本発明の杭打ち船の下面図である。
図3】本発明の杭打ち船の側面の部分断面図である。
図4】本発明のバラストタンクの断面図である。
図5】杭打ち船の座標系を簡略化した模式図である。
図6】杭打ち船のピッチングの座標系の模式図である。
図7】杭打ち船のローリングの座標系の模式図である。
図8】杭打ち船の上面図である。
図9】杭打ち船の船上座標系の模式図である。
図10】杭打ち船の運動の模式図である。
【0023】
図面において、符号1は船体で、符号101は甲板で、符号2はワイヤロープで、符号3はウインチドラムで、符号4は第1ブレーキ装置で、符号5は第2ブレーキ装置で、符号6は杭ホルダーで、符号7は杭頭キャップで、符号8は自動横臥装置で、符号9はシャックル切断装置で、符号10はガイドレールで、符号11は縦杭で、符号12は杭枠で、符号13はパイルハンマーで、符号14はGPS信号受信機で、符号15はスキャナで、符号16はウインドラスで、符号17は接続板で、符号18はバラストタンクで、符号181は水押し板で、符号182は推進装置で、符号183は関節継手で、符号184はクッションで、符号185はシールリングで、符号19はアンカーケーブル接続点で、符号20はレーダー波浪計である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施方案を詳しく説明する。
【0025】
図1~4に示すように、杭打ち船は、4つのコーナーにそれぞれ浮力調節装置が設けられている船体1を備え、甲板101の下面が浮力調節装置と接続されており、浮力調節装置が、船体1に設けられているバラストタンク18と、甲板101の下面に設けられている接続板17とを含み、接続板17に鉛直下向きに設けられている推進装置182がヒンジで接続されており、バラストタンク18の底部に外部と連通するスルーホールが設けられており、バラストタンク18内かつ液面上に水押し板181が設けられており、水押し板181とバラストタンク18の内壁との間にシールリング185が設けられており、推進装置182の端部がバラストタンク18の頂板を通過して水押し板181とヒンジで接続されており、船体1に海面波の状況を検出するレーダー波浪計20が設けられており、レーダー波浪計20がコンピュータ制御システムと接続されており、レーダー波浪計20でデータを検出して各油圧シリンダー182のピストンロッドの必要な運動距離を算出し、油圧シリンダー182を駆動して水押し板181を上下移動させることによって水を排出又は流入させることにより、船体1の浮き状態を制御する。船体1には、縦杭11を走査する上下の2つのスキャナ15が設けられており、船体1には、2つの異なる位置にGPS信号受信機14が設けられている。船体1には、8つの異なる位置でアンカーを下ろすウインドラス16が設けられており、船体1には、アンカーチェーンを案内するためのアンカーケーブル接続点19が設けられている。船体1には、杭枠12が回転可能に設けられており、船体1には、杭枠12の自動横臥装置8が設けられており、杭枠12には、杭打ちガイドレール10が設けられており、杭打ちガイドレール10には、パイルハンマー13が可動に設けられており、パイルハンマー13には、パイルハンマーの杭打ちガイドレール10における位置を制限する第1ブレーキ装置4が設けられており、杭枠12の上部には、中継ローラーが設けられており、パイルハンマー13の上部は、ワイヤロープ2により船体1に設けられたウインチと接続されており、船体1には、ウインチドラムにブレーキをかけることでパイルハンマー13を引くようにワイヤロープ2を制御してブレーキを実現する第2ブレーキ装置5が設けられている。パイルハンマー13には、杭頭キャップ7が設けられており、杭枠12の下部には、縦杭11を把持する杭ホルダー6が設けられている。
【0026】
図5~7に示すように、杭打ち船の姿勢調整方法は、
レーダー波浪計により各方向の波浪の高さと周期を測定し、測定されたデータをコンピュータに伝送するステップ1と、
コンピュータが、ステップ1のデータに基づいてANSYS/AQWA流体力学解析ソフトにより、船体がY軸まわりのピッチング運動する角度
【数36】

、船体がX軸まわりのローリング運動する角度
【数37】

、船体がZ軸に沿ってヒービング運動する変位sを求め、角度と変位のデータをコンピュータに伝送するステップ2と、
船体モデルを構築し、当該杭打ち船を直方体として簡略化し、杭打ち船の浮力中心を円心として直角座標系を作成し、船体の長さ方向に沿ってX軸の正方向を設定し、Y軸及びZ軸が右手の法則により確定され、Y軸が船体の幅方向に沿い、Z軸の正方向が杭打ち船の甲板に垂直でかつ上向きであるステップ3と、
コンピュータがソフトにより求められた角度を受信し、船体がY軸まわりのピッチング運動する場合、船の静止状態における喫水線をMNとしてマークし、杭打ち船がY軸まわりのピッチング運動するときの喫水線をM1N1としてマークし、Y軸まわりの下向きに傾斜する一端の排水体積Vyを測定可能であり、杭打ち船の長さをLとし、幅をbとし、バラストタンクの内径をaとし、M1N1とMNとの間の角度をWyとし、浮力中心からX軸の正方向の船べりの距離をL2とし、浮力中心からY軸の正方向の船べりの距離をb2とすると、沈下くさび形部体積(immersed wedge volume)Vyの部分の水のY軸に対する静的モーメントが
【数38】

であり、
バラストタンク内の水体積のY軸に対する静的モーメントが
【数39】

であり、
沈下くさび形部体積のY軸に対する静的モーメントと、一方側のバラストタンク内の水量のY軸に対する静的モーメントが等しい場合に、
【数40】

となり、
船体の下向きに傾斜する一端の油圧シリンダーの下向きの変位量
【数41】

を得るステップ4と、
船体がX軸まわりのローリング運動する場合、船の静止状態における喫水線をM2N2としてマークし、杭打ち船がX軸まわりのピッチング運動するときの喫水線をM3N3としてマークし、xがM2N2とM3N3との間の角度であり、X軸まわりの下向きに傾斜する一端の排水体積Vxが分かり、すると、沈下くさび形部体積Vx部分の水のX軸に対する静的モーメントが
【数42】

であり、
バラストタンク内の水体積のX軸に対する静的モーメントが
【数43】

であり、
沈下くさび形部体積のX軸に対する静的モーメントと一方側のバラストタンク内の水量のX軸に対する静的モーメントが等しい場合に、
【数44】

となり、
船体の下向きに傾斜する一端の2つの油圧シリンダーの下向きの変位量
【数45】

を得るステップ5と、
船体がZ軸に沿ってヒービング運動する場合、船の静止状態における喫水線をM4N4としてマークし、杭打ち船がZ軸に沿って回転してヒービング運動するときの喫水線をM5N5としてマークし、船体の減少する排水量の体積Vzが分かり、Vz=bhsであり、バラストタンク内から排出すべき水体積を
【数46】

とし、すると、船体の減少する排水量の体積Vzがバラストタンク内から排出される水体積V1と等しい、即ち、
【数47】

となるはずであり、これによって、船体の4つの油圧シリンダーの下向きの変位量
【数48】

を得るステップ6と、
コンピュータにより水押し板からバラストタンクの頂部の距離を算出し、続いて、各油圧シリンダーをそれぞれ制御して伸長させ、バラストタンク内の水を海に排水し、船体の下向きの端に対して海水に上向きの反力を発生させ、杭打ち船の浮力を増加させ、杭打ち船に対して姿勢調整を行うステップ7と、を含む。
【0027】
図8~10に示すように、杭打ち船の運動測位方法は、
船体にGPS信号受信機及びスキャナを2つ取り付け、平面内に絶対座標系及び船上座標系X’O’Y’を構築するステップ1と、
GPS信号受信機が座標情報を受信し、衛星基地局から発信した差分信号とともに用いてGPS信号受信機の絶対座標系における正確な位置座標を得るステップ2と、
GPS信号受信機のうちの一方の位置座標及び取付位置に基づいて船上座標系の原点の絶対座標系における座標
【数49】

を得るステップ3と、
2つのGPS信号受信機の位置座標に基づいて船上座標系のY’方向を得るステップ4と、
杭打ち船を作業領域に引航してアンカーを下ろし、アンカーケーブル接続点に取り付けられている角度計によりアンカーケーブルの角度を測定し、アンカーケーブルの繰出し長さに基づいて8つのアンカーの分布点
【数50】

の絶対座標系XOYにおける位置座標
【数51】

を算出するステップ5と、
船体の中心Oの座標を測位し、船が
【数52】

点にあるとき、8つのアンカーと船体との接続点
【数53】

の絶対座標系における座標が
【数54】

であるステップ6と、
船上座標系X’O’Y’において、8つの接続点
【数55】

と船の中心Oとの位置関係に基づいて、測位されたOの座標とともに用いて8つの接続点の絶対座標系XOYにおける座標
【数56】

を得るステップ7と、
縦杭の目標点の位置を
【数57】

とし、船体のインポジション姿勢に基づいて杭打ち船のインポジション時の船上座標系の原点O’の位置
【数58】

(θは、船体の回転角度である)を得るステップ8と、
杭打ち船がO点からO’点まで運動する場合の、船体の運動時間をa(s)と設定し、各方向の運動速度
【数59】

(ただし、
【数60】

は、絶対座標系における船体のX方向に沿う運動速度であり、
【数61】

は、絶対座標系における船体のY方向に沿う運動速度であり、
【数62】

は、船体の回転の角速度である)を得るステップ9と、
船体がO’点に運動するときの、8つのアンカーと船体との接続点
【数63】

の絶対座標系における座標を
【数64】

とすると、
時刻tに、
【数65】

の座標が
【数66】

であるステップ10と、
ワイヤロープの長さを算出し、水深をhとし、ワイヤロープの弛みを無視すると、ワイヤロープの長さ
【数67】


【数68】

であるステップ11と、
時刻tに、8つのウインドラスの繰込み速度
【数69】


【数70】

であるステップ12と、
求められた速度に基づいて8つのウインドラスの繰込み/繰出し速度を制御し、杭打ち船の迅速で正確な運動を実現するステップ13と、を含む。
【0028】
図1~10に示すように、杭打ち船の杭打ち方法は、
杭打ち船1を作業領域に引航し、測位アンカーを下ろし、縦杭が載置された輸送船がインポジションするステップ1と、
杭枠12を持ち上げ、前記杭打ち船の姿勢調整方法により、杭枠12の持ち上げ中に船体を水平に維持するステップ2と、
杭打ち船1の測位システムにより船体の位置及び縦杭11が載置された目標位置を確定してから、前記杭打ち船1の運動測位方法により、縦杭11が載置された目標位置に運動するように杭打ち船1を制御するステップ3と、
ワイヤロープを繰り込む/繰り出すようにフックウインチを制御し、フックを、輸送船まで下ろし、縦杭11のシャックルにかけるステップ4と、
ワイヤロープを繰り込む/繰り出すようにフックウインチを制御し、縦杭11を吊り上げ、鉛直にするステップ5と、
杭ホルダー6の伸縮アームを持ち上げ、主駆動機構が杭把持ユニットを駆動して縦杭11に接近させてから、縦杭11を強く押すように第1クランプブロック及び第2クランプブロックを移動するステップ6と、
前記杭打ち船1の運動測位方法により、縦杭11の杭打ち位置に運動するように杭打ち船1を制御し、縦杭11の位置と姿勢にずれがある場合、杭ホルダー6を制御して小範囲で運動させることで、ずれの補正作用を奏するステップ7と、
油圧パイルハンマー13を所定の高さだけ降下させ、杭頭キャップ7を縦杭11の頂端に被るステップ8と、
油圧パイルハンマー13を始動させ、杭打ち作業を開始し、杭打ち中、検出システムにより縦杭11の毎回の打撃後の泥への進入深さをリアルタイム検出し、検出結果に基づいて油圧パイルハンマー13の打撃エネルギーをリアルタイム調整し、同時に、杭打ち船1の姿勢調整システムにより、船体が波浪の影響を受けず、作業中に水平状態を維持することを確保するステップ9と、
縦杭を所定の深さまで打ち込んだ後、杭ホルダー6を引き戻すステップ10と、
縦杭11の1組が全て泥に進入するまでステップ3~10を繰り返し、群杭の杭打ち作業が完成するステップ11と、
杭ホルダー6を引き戻し、杭枠12を横にし、測位アンカーを回収し、杭打ち船1を次の作業領域に引航する準備をするステップ12と、を含む。
【0029】
前述した実施例は、本発明を制限するためのものではなく、本発明の創造原理及びその効果、並びにいくつかの適用例を例示的に説明したものにすぎない。指摘すべきなのは、当業者にとって、本発明の創造的構想を逸脱しない前提で、幾つかの変形及び改良を行ってもよいが、これらは、いずれも本発明の保護範囲に含まれることである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10