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  • 特許-清酒の製造方法、および清酒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】清酒の製造方法、および清酒
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/022 20190101AFI20231019BHJP
【FI】
C12G3/022 119H
C12G3/022 119J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022212871
(22)【出願日】2022-12-30
【審査請求日】2023-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000124052
【氏名又は名称】加藤嘉八郎酒造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】加藤 嘉隆
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-189147(JP,A)
【文献】特開昭57-036975(JP,A)
【文献】特公昭31-001394(JP,B2)
【文献】特許第119066(JP,C2)
【文献】特許第119345(JP,C2)
【文献】特公昭26-001293(JP,B2)
【文献】特開平05-317023(JP,A)
【文献】特公昭31-008692(JP,B2)
【文献】特許第112012(JP,C2)
【文献】特許第127761(JP,C2)
【文献】小澤敦揮ほか,三重県酵母を用いた高品質清酒醸造の為のAB直線の検討,三重県工業研究所 研究報告,2020年,Vol.44,pp.97-106
【文献】白隠正宗 少汲水純米酒,Amazon,2011年,pp.1-2,[online], インターネット, URL:https://amzn.asia/d/aHR7GsF,Amazon.co.jp での取り扱い開始日2011/12/21
【文献】松本武一郎,元禄・享保期の酒造書 「童蒙酒造記」「酒造得度期」「摂州伊丹万願寺屋伝」,日本醸造協会雑誌,1980年,Vol.75, No.1,pp.28-30
【文献】渡會正一,酒造汲水量小史,日本醸造協会雑誌,1943年,Vol.38, No.6,pp. 356-361,DOI:10.6013/jbrewsocjapan1915.38.6_356
【文献】瀬良万葉,水を制するものは日本酒造りを制する - 加水のタイミングと目的を学ぶ,SAKE Street ウェブサイト,2021年07月08日,[online], <検索日:令和5年4月4日>, インターネット, URL:https://sakestreet.com/ja/media/learn-dilution-in-brewing-sake
【文献】佐藤友紀ほか,酢酸の生成に及ぼす清酒もろみへの追い水のタイミングの影響,秋田県総合食品研究センター報告,2018年,Vol.20,pp.33-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
Google
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
醪を仕込む仕込工程と、醪を発酵させる発酵工程とを実施する清酒の製造方法であって、
前記仕込工程における留即時の汲水歩合を115%未満とすることにより、酵母の発酵活性を抑制し、
前記発酵工程においては、醪の発酵を促進させるための追水を、留仕込み後、2日以上、7日以内に、仕込工程において配合した水の量の10容量%以上の総量で実施することを特徴とする清酒の製造方法。
【請求項2】
前記発酵工程における前記追水を行った後で、且つ17日間の発酵工程後に醪の全量の一部を固液分離すると共に、残りの醪は引き続いて発酵工程を行ってから固液分離することにより、1回の仕込みで、味や香りが異なる複数の清酒を製造する、請求項1に記載の清酒の製造方法。
【請求項3】
前記追水は、醪のボーメ度が10以下、及び/又は醪中の酵母生菌数が90,000,000以下の時に、1日のうち、又は3日間以内の期間で実施する、請求項2に記載の清酒の製造方法。
【請求項4】
前記汲水は段仕込みにおける蒸米の量に対応させた量で配合し、
前記追水は、総汲水歩合が120%以上、140%以下となる量で水を配合することにより酵母の発酵を活性化させる、請求項2又は3に記載の清酒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は清酒の製造方法、および清酒に関し、特に糖化と発酵のタイミングを制御した清酒の製造方法、および清酒に関する。
【背景技術】
【0002】
清酒の原料は、米、米麹及び水であり、副原料として、醸造アルコール等が法令による制限のもとに使用が認められている。このように使用原料が制限されている状況下においても、従来、清酒の味や香りを改善するために種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1(特開2006-211976号公報)では、豊かな香味を感じさせながら、キレがいいという独特の個性的な香味を有する清酒の製造方法として、米と水を原料として、麹および清酒酵母の作用によって製造されるアルコール含有生成物を蒸留して得られるアルコール分を、清酒の製造工程に添加する清酒の製造方法が提案されている。
【0004】
また特許文献2(特開平10-276755号公報)では、淡白な味から濃醇な味までの幅広い酒質の清酒を製造する為の糖化物として、蒸米、並びに、麹及び/又は清酒用酵素剤を原料とし、アルコールの存在下、乳酸の存在下及び/又は嫌気条件のもとにおいて、汲水歩合60%以下、好適には50%以下で糖化を行ってなる糖化物を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-211976号公報
【文献】特開平10-276755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り従前においても清酒の味や香りを改善するための技術は提案されている。しかしながら、清酒の製造工程についての手順自体を大幅に変えることなく、濃醇な清酒を製造する技術は提案されていなかった。そこで本発明では、清酒の製造方法における大幅な手順の変更を要することなく、濃醇な清酒を製造する事のできる清酒の製造方法を提供することを課題の1つとする。
【0007】
また従前における清酒の製造方法では、1つの仕込工程で製造される清酒は1つの酒質であり、1つの仕込工程から複数の酒質の清酒を製造することは想定されていなかった。そこで本発明は1つの仕込工程であっても、その後の発酵工程の各段階において複数の酒質の清酒を製造する事のできる清酒の製造方法を提供することも、前記とは別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題の少なくとも何れかを解決するために、本発明では仕込み時における水の配合量をコントロールすることにより酵母の発酵活性を制御し、その後に発酵工程初期の段階で追い水を実施することにより、目的とする酒質の清酒を製造できるようにした清酒の製造方法を提供する。
【0009】
即ち本発明では、醪を仕込む仕込工程と、醪を発酵させる発酵工程とを実施する清酒の製造方法であって、前記仕込工程における汲水歩合を120%未満とすることにより、酵母の発酵活性を抑制する清酒の製造方法を提供する。
【0010】
かかる清酒の製造方法において、前記発酵工程では醪の発酵を促進させるための追水を行うことが望ましい。そして当該追水は、発酵工程の初期の段階、例えば留仕込み後、醪日数(三段仕込みの場合、留添を1日目とする)の2日目以降7日目までの間、特に2日以降4日目までの間以内に実施することが望ましい。留仕込み後2日未満であると酵母の発酵活性の抑止効果を十分に得ることができず、7日目を超えてしまうと、酵母によるアルコール化が遅くなり、発酵期間が長くなってしまうのみならず、発酵期間における品質維持が困難になる為である。
【0011】
以上により、前記仕込工程における汲水歩合を120%未満とすることで、酵母の発酵活性を抑制させ、発酵工程の初期の段階で追水を行うことにより、その後の酵母の発酵活性を促進させる清酒の製造方法が実現する。
【0012】
そして上記追水は、醪のボーメ度が10以下、及び/又は醪中の酵母生菌数が90,000,000以下において行うことが望ましい。ここでボーメ度とは比重の単位であり、清酒において利用されている日本酒度との関係において、日本酒度は大凡「-10×ボーメ度」となる。このボーメ度は、一般的には日本酒度が-30より小さい場合(即ち比重として重い場合)に利用されている。このボーメ度や日本酒度は清酒の甘辛を知るための指標として利用されている。即ち、清酒における甘味は原料米のでん粉から分解された糖分に由来することから、糖含量が多くなれば比重が大きくなり、ボーメ度はプラス側(日本酒度はマイナス側)に傾き、一方で清酒の辛味はアルコールなどに由来することから、アルコール含量が多い場合はボーメ度はマイナス側(日本酒度はプラス側)に傾くことになる。よってこのボーメ度(又は日本酒度)により清酒の甘辛、ひいては糖含有量やアルコール含有量の参考とすることができ、発酵中の醪のボーメ度が10以下、望ましくは9以下となったとき、更には当該ボーメ度が5以上の状態など、ボーメ度を基準として追水を行うこともできる。
【0013】
そして本発明における発酵工程初期の段階における追水は、酵母を活性化させるために行うことができ、その際の追水前の配合量は、望ましくは留即時の汲水歩合が120%未満、更に望ましくは115%以下、特に望ましくは108%以下となる量とする。留即時の汲水歩合を120%未満とすることにより、発酵工程における酵母の増殖や発酵を抑制しながらも、麹菌による糖化を進めることができる。かかる汲水歩合とは、醪仕込の総米重量(kg)に対する汲水の容量(L)の割合である。本発明の清酒の製造方法では、仕込工程と発酵工程の初期の段階において、追水を実施することにより醪の発酵経過をコントロールし、これにより濃醇な清酒を製造するものである。
【0014】
また前記追水は、仕込み段階(即ち留即時まで)における水の配合量の10容量%以上、更に15容量%以上、特に20容量%以上の量とすることが望ましい。10容量%以上とすることにより、追水の後における発酵工程で酵母発酵を促進させることができる為である。かかる追水は、ある程度糖化を優先させてから、酵母の増殖や発酵を促進させることを目的としていることから、1日のうち、多くても3日間以内に配合することが望ましい。3日間以上の日数で当該量の追水を行うことも可能であるが、この場合には、酵母の増殖が遅れ、スムーズに発酵を促進させるという効果が薄れてしまい、発酵期間が長くなってしまうことになる。またこの発酵工程初期の段階における追水を行った後において、総汲水歩合は120%以上、140%以下、望ましくは125%以上、135%以下となるように追水を行う事が望ましい。なお発酵工程の中期あるいは後期においては、常法において更に追水を行う事もでき、その場合の総汲水歩合は120%以上、140%以下の範囲外となっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の清酒の製造方法によれば、仕込工程における留即時の汲水歩合を120%未満、望ましくは115%以下、特に望ましくは108%以下とすることにより、酵母の発酵活性を抑制しながら、麹菌の酵素による糖化を進めることができ、製造工程における大幅な手順の変更を要することなく、濃醇など、任意の酒質の清酒を製造することができる。
【0016】
そして発酵工程の初期の段階において追水を行う事により、その後の発酵活性を任意に調整できることから、1つの仕込工程であっても、その後の発酵工程の各段階において複数の酒質の清酒を製造することができる。
【0017】
特に当該追水は、留仕込み後、醪日数(三段仕込みの場合、留添を1日目とする)2日目以降7日目までに追水を添加することが好ましく、醪日数の4日目までに添加することがさらに好ましい。2日目以降7日目までに追水を実施することにより、その後における酵母の増殖や発酵を円滑に行うことができる。また当該追水を、醪のボーメ度が10以下、及び/又は醪中の酵母生菌数が90,000,000以下で行う事により、清酒の製造期間を最適に調整することができる。そして前記発酵工程初期の段階における追水を、仕込工程で配合した水の量(留即時の汲水歩合)の10容量%以上、更に15容量%以上、特に20容量%以上の量とすることにより、その後の発酵工程における酵母発酵を促進させることができ、その結果、濃醇な清酒を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態にかかる清酒の製造方法を示す工程図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかる清酒の製造方法を具体的に説明する。図1は本実施の形態に係る清酒の製造工程を示す工程図である。この工程図において、実線枠内にアラビア数字と共に表示しているのは通常行われる原料または工程であり、鎖線枠内に片仮名文字とともに表示しているのは使用する場合もある任意の原料または工程であり、二重線枠内にアルファベット文字とともに表示しているのは最終製品である。
【0020】
この図1に示すように、清酒の製造に際しては、先ず原料となる玄米を精米して白米と米糠を分離させ、白米は洗米して水に浸漬し、これを蒸して蒸米を製造する。この蒸米は、その後の製造工程において重要になる麹造り(製麹での米麹)、酒母仕込みによる熟成酒母や醪(もろみ)の仕込みに使用される。麹は前記蒸米に麹菌を植えて作られるものであり、清酒の製造工程において、米のデンプンを糖に変化させる為に、酒母や醪に入れられることになる。酒母は、蒸米、水、麹に酵母を加えたものであり、この後に造られる醪の発酵を促すために必要な酵母を大量に培養したものである。
【0021】
<醪の仕込工程>
こうして出来上がった酒母と、麹と、蒸米と、水とを加えて醪の仕込みをする。この仕込みは、発酵タンクで行うことができ、通常、「段仕込み」が行われ、4日間で複数回(多くは3回)の仕込みが行われる。即ち、初日に第一回目の仕込み(初添え)をし、翌日は仕込みを休んで酵母をゆっくりと増やす踊工程を行い、三日目に第二回目の仕込み(仲添え)をし、四日目に第三回目の仕込み(留添え)をして仕込みを完了する。この段仕込みによって、雑菌の繁殖を抑えながら、酵母の増殖を促進し、醪の温度を管理しやすくして醪(もろみ)を製造する。特に本実施の形態における清酒の製造方法では、この仕込工程における水の配合量を少なくすることにより、酵母の増殖や発酵活性を抑制するものであり、特に汲水歩合を120%未満、望ましくは115%以下、更に望ましくは108%以下とするものである。具体的には、米10kgに対して水の配合量を10.8L以下とするものであり、望ましくは米10kgに対して水の配合量を12L未満、望ましくは11.5L以下、特に望ましくは10.8L以下とするものである。これら水の配合は三段仕込みにおいて、第一回目の仕込み(初添え)時、第二回目の仕込み(仲添え)時、及び三回目の仕込み(留添え)時において、蒸米の量に対応させた量で配合する他、何れかの仕込みにおける水の配合量を多くする事もできる。
【0022】
<醪の発酵工程>
以上のように醪の仕込みが終了した後、十数日間から四十日間、醪を発酵、熟成させる。これが、「発酵工程」である。この発酵工程において、麹の酵素による蒸米のデンプンの糖化と共に、酵母によるアルコール発酵を同時・並行的に進める平行複発酵が行われる。本実施の形態にかかる清酒の製造方法では、仕込工程における汲水歩合を低く抑えていることから、酵母によるアルコール発酵も抑制されている。そこで、発酵工程の初期の段階において追水を行う事により、酵母の活性化を高めて、その後のアルコール発酵を円滑に行う。発酵工程の初期の段階におけるアルコール発酵を抑制することにより、麹の酵素による米の溶解が進み、デンプンの糖化によって生じたブドウ糖は増加することになり、これが追水後にアルコール発酵が促進されても相対的に醪中に残存させることができ、その結果、アルコール度数が15度以下の低アルコール時に上槽した場合であっても、濃醇な清酒を製造することができる。
【0023】
特に本実施の形態において、追水は留仕込み後、3日目に実施している。この時のボーメ度は、8.83であり、酵母生菌数は80,000,000のタイミングであった。また追水に使用する水の量は、仕込工程における汲水量の24容量%以上としている。そして発酵工程初期の段階において追水を行った後における総汲水歩合は、132%となった。
【0024】
<固液分離工程>
以上のようにして醪の発酵工程が終了すると、次に発酵、熟成させた醪を原酒(清酒)と酒粕に分離する「固液分離工程」が行われる。醪を原酒(清酒)と酒粕に分離するためには、布や圧搾機を利用して搾る上槽作業を行う。本実施の形態にかかる清酒の製造方法では、この固液分離工程を2段階で実施することもできる。即ち、醪の状態(比重、アルコール濃度、酸度、アミノ酸度など)が一定の状態において、醪の全量の一部を固液分離して原酒(清酒)とし、残りの醪は、引き続いて発酵工程を行うことができる。このように複数段階で固液分離工程を実施することにより1回の仕込みで、味や香りなどが異なる複数の清酒を製造することができる。
【0025】
<検定工程>
次に、上槽によって分離された清酒は、日本酒の分類を定めるために、酒の成分や量の検査が行われる。これが「検定工程」であり、検定タンクにおいて行われる。
【0026】
そして検定工程において酒の成分や量を検査された清酒は、必要であれば滓引きを行った後、目的とする清酒の特徴(無濾過生酒、無濾過生原酒、生酒、原酒など)に応じた処理を実施した上で瓶詰め工程において瓶詰めを行い、各種清酒として提供される。
【0027】
以上の工程で製造した清酒は、濃醇な味となり、発酵工程が十分でない場合における味うす感や青臭さを無くすことができる。ただし本発明は、以下の実施形態によって制限されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、種々変更することができる。
【実施例1】
【0028】
この実施例では、以下の条件で仕込工程を実施し、その後に発酵工程を経て清酒を製造した。
<実験例1>
この実験例1では、以下の条件で仕込工程を実施して清酒を製造した。
・仕込米 銘柄:はえぬき 仕込量:6300kg
・酵母 YK0107
・水 6653L(留即時汲水歩合:105.60%)
そして上記仕込工程で製造した醪を、17日間の発酵工程で発酵させて半分を搾り、残り半分を24日間の発酵工程で発酵させてから搾り、味わいの異なる二つの清酒を製造した。この発酵工程において留仕込み後2日目(醪3日目)に1,663Lの追い水を行い、留仕込み後11日目(醪12日目)に605Lの追い水を行った。留仕込み後2日目(醪3日目)の追水により、翌日(追水後)のボーメ度は前日(追水前)8.83に対し7.76となり、その後の発酵工程で低下した。また酸度は前日(追水前)0.81に対し翌日(追水後)は1.07となり、その後の発酵工程で多少上下しながらも総じて上昇した。そしてアミノ酸度は前日(追水前)の0.22に対し翌日(追水後)は0.21となり、その後の発酵工程で多少上下しながらも総じて上昇した。また、この製造工程における酵母生菌数、追水の量を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
<実験例2>
この実験例2では、以下の条件で仕込工程を実施し、その後に発酵工程を経て清酒を製造した。
・仕込米 銘柄:はえぬき 仕込量:6296kg
・酵母 山形NF-KA
・水 7560L(留即時汲水歩合:120.07%)
そして上記仕込工程で製造した醪を、20日間の発酵工程で発酵させ、清酒を製造した。留仕込み後2日目(醪3日目)のボーメ度は7.9であり、その後の発酵工程で低下した。また酸度は1.33であり、その後の発酵工程で多少上下しながらも総じて上昇した。そしてアミノ酸度は0.44であり、その後の発酵工程で多少上下しながらも総じて上昇した。また、この製造工程における酵母生菌数、追水の量を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
<実験例3>
この実験例3では、以下の条件で仕込工程を実施し、その後に発酵工程を経て清酒を製造した。
・仕込米 銘柄:はえぬき 仕込量:6325kg
・酵母 山形NF-KA
・水 8840L(留即時汲水歩合:139.76%)
そして上記仕込工程で製造した醪を、21日間の発酵工程で発酵させ、清酒を製造した。この発酵工程において留仕込み後14、15、17、18、19日目の発酵工程の後期に、それぞれ500Lの追い水を行いった。留仕込み後2日目(醪3日目)のボーメ度は7.18であり、その後の発酵工程で低下した。また酸度は0.85であり、その後の発酵工程で総じて上昇した。そしてアミノ酸度は0.29であり、その後の発酵工程で多少上下しながらも総じて上昇した。また、この製造工程における酵母生菌数、追水の量を表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
<実験例4>
この実験例4では、以下の条件で仕込工程を実施し、その後に発酵工程を経て清酒を製造した。
・仕込米 銘柄:出羽の里 仕込量:6303kg
・酵母 山形NF-KAおよび協会1801号
・水 8780L(留即時汲水歩合:139.29%)
そして上記仕込工程で製造した醪を、23日間の発酵工程で発酵させ、清酒を製造した。この発酵工程において留仕込み後10、12、13日目の発酵工程中期、及び留仕込み後20、21日目の発酵工程の後期に、それぞれ400Lの追い水を行いった。留仕込み後2日目(醪3日目)のボーメ度は9.42であり、その後の発酵工程で多少上下しながらも総じて低下した。また酸度は0.73であり、その後の発酵工程で総じて上昇した。そしてアミノ酸度は0.25であり、その後の発酵工程で多少上下しながらも総じて上昇した。また、この製造工程における酵母生菌数、追水の量を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
<実験例の考察>
上記実験例1~4で得られた清酒を試飲した所、以下の通りであった。
実験例1の清酒は非常に濃醇でジューシーな香味で濃厚、芳醇でありながら後キレの良い味わいであった。
実験例2の清酒は濃醇でバランスのとれたやわらかい味わいであった。
実験例3の清酒は軽快さの中に厚みも感じられる味わいであった。
実験例4の清酒は芳醇な香味でやわらかくキレ味の良い味わいであった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の清酒の製造方法、および清酒は、清酒の製造に利用することができる。また清酒の製造方法の他にも、糖化とアルコール発酵を同時・並行的に進める平行複発酵においても利用することができる。
【要約】
【課題】 清酒の製造方法、および清酒を提供する。
【解決手段】 醪を仕込む仕込工程と、醪を発酵させる発酵工程とを実施する清酒の製造方法であって、前記仕込工程における汲水歩合を120%未満とすることで、酵母の発酵活性を抑制させ、望ましくは発酵工程の初期の段階で追水を行うことにより、その後の酵母の発酵活性を促進させる清酒の製造方法とする。
【選択図】図1
図1