(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】飛行体及びモータ
(51)【国際特許分類】
B64D 33/08 20060101AFI20231019BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20231019BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20231019BHJP
B64U 50/19 20230101ALI20231019BHJP
【FI】
B64D33/08
B64C39/02
B64D27/24
B64U50/19
(21)【出願番号】P 2022522452
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2020019348
(87)【国際公開番号】W WO2021229771
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【氏名又は名称】大内 秀治
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】西東 敦教
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏記
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-509332(JP,A)
【文献】特開2006-158134(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0052556(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0252938(US,A1)
【文献】中国実用新案第205256667(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 33/08
B64D 27/24
B64C 39/02
B64U 50/19
H02K 5/20
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラと、
前記プロペラを回転させるモータと、
前記モータを制御するモータ制御部と
を備える飛行体であって、
前記モータ制御部は、前記モータ及び前記プロペラを順方向に回転させる順回転動作を実行させることで前記飛行体を飛行させ、
前記モータは、
ステータと、
前記ステータの外側を回転するロータと
を備え、
前記ステータは、複数のコイルを備え、
前記ロータは、
ロータシャフトと、
ロータフレームと、
複数の永久磁石と
を備え、
前記ロータフレームは、
前記ロータシャフトと連結した頂面部と、
前記頂面部と連結した円筒状の側面部と
を備え、
前記複数の永久磁石は、円周方向に沿って前記側面部に配置されて前記複数のコイルと対向し、
前記ロータフレームの前記側面部には、円周方向に沿って配置された前記複数の永久磁石の間の位置に排気用の複数の第1貫通孔が形成されている
ことを特徴とする飛行体。
【請求項2】
請求項1に記載の飛行体において、
前記ロータの軸方向に対する垂直断面において、前記第1貫通孔は、前記側面部の法線に対して傾斜しており、
前記側面部の外周に設けられる前記第1貫通孔の出口は、前記側面部の内周に設けられる前記第1貫通孔の入口よりも、前記モータの順回転方向において後方に配置されている
ことを特徴とする飛行体。
【請求項3】
請求項2に記載の飛行体において、
前記ロータの軸方向に対する垂直断面において、前記永久磁石の側面は、前記第1貫通孔を形成する前記側面部の内壁と面一になるように前記側面部の法線に対して傾斜している
ことを特徴とする飛行体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の飛行体において、
前記ロータフレームの前記側面部には、前記ロータの回転軸方向において、前記順回転動作時の気流を基準として前記永久磁石よりも下流側に排気用の複数の第2貫通孔が形成されている
ことを特徴とする飛行体。
【請求項5】
請求項4に記載の飛行体において、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが連通している
ことを特徴とする飛行体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の飛行体において、
前記ロータフレームの前記側面部には、前記ロータの回転軸方向において、前記順回転動作時の気流を基準として前記永久磁石よりも上流側に排気用の複数の第3貫通孔が形成されている
ことを特徴とする飛行体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の飛行体において、
前記モータは、前記順回転動作時の気流を基準として、前記コイル及び前記永久磁石の間の隙間の上流側に配置された網状の上流側フィルタを備え、
少なくとも前記隙間の手前において前記上流側フィルタの網目の大きさは、前記隙間より小さい
ことを特徴とする飛行体。
【請求項8】
請求項7に記載の飛行体において、
前記モータは、前記第1貫通孔に対応して配置された網状の下流側フィルタを備え、
少なくとも前記第1貫通孔に対応する位置において前記下流側フィルタの網目の大きさは、前記隙間より大きい
ことを特徴とする飛行体。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の飛行体において、
前記ステータは、前記ステータで発生した熱を放出するヒートシンクを備え、
前記順回転動作時の気流を基準として、前記上流側フィルタは、前記隙間の上流側に加えて、前記ヒートシンクの上流側にも位置する
ことを特徴とする飛行体。
【請求項10】
請求項9に記載の飛行体において、
前記ヒートシンクの上流側において前記上流側フィルタの網目の大きさは、前記隙間より大きい
ことを特徴とする飛行体。
【請求項11】
請求項7又は8に記載の飛行体において、
前記ステータは、前記ステータで発生した熱を放出するヒートシンクを備え、
前記上流側フィルタは、前記ヒートシンクの上流側を避けて配置される
ことを特徴とする飛行体。
【請求項12】
ステータ及びロータを備えるモータであって、
前記ステータは、複数のコイルを備え、
前記ロータは、
ロータシャフトと、
ロータフレームと、
複数の永久磁石と
を備え、
前記ロータフレームは、
前記ロータシャフトと連結した頂面部と、
前記頂面部と連結した円筒状の側面部と
を備え、
前記複数の永久磁石は、円周方向に沿って前記側面部に配置されて前記複数のコイルと対向し、
前記ロータフレームの前記側面部には、円周方向に沿って配置された前記複数の永久磁石の間の位置に複数の第1貫通孔が形成されている
ことを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、熱放散性を高めることでモータ性能の低下を防ぎ、且つ防塵・防滴性能を高めてモータ性能を維持することが可能な耐久性の高い全天候型モータを提供することを目的としている([0005]、要約)。当該目的を達成するため、特許文献1(要約)の全天候型モータでは、回転子14は、吸気用開口部4e及び排気用開口部4fを有する回転ケース体4と、フィン17とを有する。吸気用開口部4eは、固定子コア12の外周側及び軸受ハウジング11の軸方向両端側を覆うと共に、軸方向一端側に軸方向に吸気する。排気用開口部4fは、軸方向他端側に径方向に排気する。フィン17は、回転ケース体4の軸方向他端内面に設けられる。吸気用開口部4e及び排気用開口部4fは、所定の開口径を有する撥水性のフィルタ材18で各々覆われている。
【0003】
一実施形態において、排気用開口部4fは、第2ケース体4bの羽板17cの外周側先端部と対向する側面部に設けられる([0021]、
図2)。また、回転子マグネット4dは、固定子コア12の極歯12aの歯先と対向配置されている([0020]、
図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1では、軸方向他端側に径方向に排気する排気用開口部4fは、第2ケース体4bの羽板17cの外周側先端部と対向する側面部に設けられる([0021]、
図2)。しかしながら、特許文献1では、モータ内部の冷却又はモータ内部若しくはその周辺からの異物放出について改善の余地がある。
【0006】
本発明は上記のような課題を考慮してなされたものであり、モータ内部の冷却又はモータ内部若しくはその周辺からの異物放出を改善可能な飛行体及びモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る飛行体は、
プロペラと、
前記プロペラを回転させるモータと、
前記モータを制御するモータ制御部と
を備えるものであって、
前記モータ制御部は、前記モータ及び前記プロペラを順方向に回転させる順回転動作を実行させることで前記飛行体を飛行させ、
前記モータは、
ステータと、
前記ステータの外側を回転するロータと
を備え、
前記ステータは、複数のコイルを備え、
前記ロータは、
ロータシャフトと、
ロータフレームと、
複数の永久磁石と
を備え、
前記ロータフレームは、
前記ロータシャフトと連結した頂面部と、
前記頂面部と連結した円筒状の側面部と
を備え、
前記複数の永久磁石は、円周方向に沿って前記側面部に配置されて前記複数のコイルと対向し、
前記ロータフレームの前記側面部には、円周方向に沿って配置された前記複数の永久磁石の間の位置に排気用の複数の第1貫通孔が形成されている
ことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ロータフレームの側面部には、円周方向に沿って配置されて複数のコイルと対向する複数の永久磁石の間の位置に排気用の複数の第1貫通孔が形成されている。これにより、ロータの回転時に第1貫通孔を介してモータ内部からモータ外部への気流を発生させることが可能となる。そして、この気流により、モータ内部の冷却又はモータ内部若しくはその周辺の異物放出をすることが可能となる。
【0009】
前記ロータの軸方向に対する垂直断面において、前記第1貫通孔は、前記側面部の法線に対して傾斜してもよい。また、前記側面部の外周に設けられる前記第1貫通孔の出口は、前記側面部の内周に設けられる前記第1貫通孔の入口よりも、前記モータの順回転方向において後方に配置されてもよい。これにより、モータ内部の気流がモータ外部に円滑に放出され易くなる。従って、モータ内部の冷却又はモータ内部若しくはその周辺の異物の放出を促進することが可能となる。
【0010】
前記ロータの軸方向に対する垂直断面において、前記永久磁石の側面は、前記第1貫通孔を形成する前記側面部の内壁と面一になるように前記側面部の法線に対して傾斜してもよい。これにより、モータ内部の気流がモータ外部にさらに円滑に放出され易くなる。従って、モータ内部の冷却又はモータ内部若しくはその周辺の異物の放出をさらに促進することが可能となる。
【0011】
前記ロータフレームの前記側面部には、前記ロータの回転軸方向において、前記順回転動作時の気流を基準として前記永久磁石よりも下流側に排気用の複数の第2貫通孔が形成されてもよい。これにより、モータ内部からモータ外部への気流をさらに大きくすることが可能となる。
【0012】
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが連通してもよい。これにより、モータ内部からモータ外部への気流をさらに大きくすることが可能となる。
【0013】
前記ロータフレームの前記側面部には、前記ロータの回転軸方向において、前記順回転動作時の気流を基準として前記永久磁石よりも上流側に排気用の複数の第3貫通孔が形成されてもよい。これにより、モータ内部からモータ外部への気流をさらに大きくすることが可能となる。
【0014】
前記モータは、前記順回転動作時の気流を基準として、前記コイル及び前記永久磁石の間の隙間の上流側に配置された網状の上流側フィルタを備えてもよい。また、少なくとも前記隙間の手前において前記上流側フィルタの網目の大きさは、前記隙間より小さくてもよい。これにより、飛行体の飛行時にコイル及び永久磁石の間の隙間内に異物が入り込むことを防止し易くなる。
【0015】
前記モータは、前記第1貫通孔に対応して配置された網状の下流側フィルタを備えてもよい。また、少なくとも前記第1貫通孔の位置において前記下流側フィルタの網目の大きさは、前記隙間より大きくてもよい。これにより、飛行体の非飛行時に比較的大きな異物が隙間内に侵入することを防止し易くなる。また、飛行体の飛行時にコイル及び永久磁石の間の隙間内に入り込んだ比較的小さな異物を、第1貫通孔を介してモータ外に放出し易くなる。
【0016】
前記ステータは、前記ステータで発生した熱を放出するヒートシンクを備えてもよい。また、前記順回転動作時の気流を基準として、前記上流側フィルタは、前記隙間の上流側に加えて、前記ヒートシンクの上流側にも位置してもよい。これにより、ヒートシンクに異物が入り込むことを防止することが可能となる。
【0017】
前記ヒートシンクの上流側において前記上流側フィルタの網目の大きさは、前記隙間より大きくてもよい。これにより、ヒートシンク周辺における気流を円滑にし、ヒートシンクへの異物侵入を防ぎつつ、ステータの冷却性能を向上することが可能となる。
【0018】
或いは、前記上流側フィルタは、前記ヒートシンクの上流側を避けて配置されてもよい。これにより、ヒートシンクに当たる気流が上流側フィルタにより遮られることを防止し、冷却性能を高めることが可能となる。
【0019】
本発明に係るモータは、ステータ及びロータを備えるものであって、
前記ステータは、複数のコイルを備え、
前記ロータは、
ロータシャフトと、
ロータフレームと、
複数の永久磁石と
を備え、
前記ロータフレームは、
前記ロータシャフトと連結した頂面部と、
前記頂面部と連結した円筒状の側面部と
を備え、
前記複数の永久磁石は、円周方向に沿って前記側面部に配置されて前記複数のコイルと対向し、
前記ロータフレームの前記側面部には、円周方向に沿って配置された前記複数の永久磁石の間の位置に複数の第1貫通孔が形成されている
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、モータ内部の冷却又はモータ内部若しくはその周辺からの異物放出を改善可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る飛行体としてのドローンを含む営農システムの概要を示す全体構成図である。
【
図2】前記実施形態に係るドローンの構成を簡略的に示す構成図である。
【
図3】前記実施形態に係る前記ドローンの外観斜視図である。
【
図4】前記実施形態に係る前記ドローンの底面図である。
【
図5】前記実施形態におけるプロペラ及びモータの内部構成を簡略的に示す垂直断面図である。
【
図6】前記実施形態における前記モータの内部構成の一部を簡略的に示す水平断面図である。
【
図7】前記実施形態のロータのロータフレームの側面部の内側を展開して示す図である。
【
図8】前記実施形態において前記モータを順方向に回転させて前記ドローンを通常飛行させる際の典型的な気流を示す図である。
【
図9】第1変形例のプロペラ及びモータの内部構成を簡略的に示す垂直断面図である。
【
図10】前記第1変形例のロータのロータフレームの側面部の内側を展開して示す図である。
【
図11】前記第1変形例において前記モータを順方向に回転させてドローンを通常飛行させる際の典型的な気流を示す図である。
【
図12】第2変形例のプロペラ及びモータの内部構成を簡略的に示す垂直断面図である。
【
図13】前記第2変形例のロータのロータフレームの側面部の内側を展開して示す図である。
【
図14】第3変形例のロータのロータフレームの側面部の内側を展開して示す図である。
【
図15】第4変形例のロータのロータフレームの側面部の内側を展開して示す図である。
【
図16】第5変形例におけるモータの内部構成の一部を簡略的に示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.一実施形態
<A-1.構成>
[A-1-1.全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る飛行体としてのドローン24を含む営農システム10の概要を示す全体構成図である。営農システム10(以下「システム10」ともいう。)は、圃場800に生育する作物802の生育診断を行うと共に、作物802に薬剤を散布することができる。本実施形態の作物802は、イネ(水稲)であるが、その他の作物(例えば、陸稲、小麦、大麦)であってもよい。
【0023】
図1に示すように、システム10は、ドローン24に加えて、圃場センサ群20と、営農サーバ22と、ユーザ端末26とを有する。圃場センサ群20、ドローン24及びユーザ端末26は、通信ネットワーク30(無線基地局32を含む。)を介して互いに無線通信が可能であると共に、営農サーバ22と通信可能である。無線通信としては、無線基地局32を介さない通信(例えば、LTE(Long Term Evolution)、WiFi)を用いることができる。
【0024】
[A-1-2.圃場センサ群20]
圃場センサ群20は、水田としての圃場800に設置されて圃場800における各種データを検出して営農サーバ22等に提供する。圃場センサ群20には、例えば、水温センサ、温度センサ、降水量センサ、照度計、風速計、気圧計及び湿度計が含まれる。水温センサは、水田である圃場800の水温を検出する。温度センサは、圃場800の気温を検出する。降水量センサは、圃場800の降水量を検出する。照度計は、圃場800の日照量を検出する。風速計は、圃場800の風速を検出する。気圧計は、圃場800の気圧を検出する。湿度計は、圃場800の湿度を検出する。これらのセンサの値の一部は、図示しない気象情報提供サーバ等から取得してもよい。
【0025】
[A-1-3.営農サーバ22]
営農サーバ22は、生育診断モデルを用いた生育診断を行い、診断結果に基づいてユーザに作業指示を行う。作業指示には、施肥のタイミング、肥料の種類・量、農薬の散布タイミング、農薬の種類・量等が含まれる。営農サーバ22は、入出力部、通信部、演算部及び記憶部(いずれも図示せず)を有する。また、営農サーバ22は、生育診断モデルを用いた生育診断を行う生育診断制御、ドローン24の飛行(飛行タイミング、飛行経路等)を管理する飛行管理制御等を実行する。
【0026】
[A-1-4.ドローン24]
(A-1-4-1.概要)
図2は、本実施形態に係るドローン24の構成を簡略的に示す構成図である。
図3は、本実施形態に係るドローン24の外観斜視図である。
図4は、本実施形態に係るドローン24の底面図である。本実施形態のドローン24は、圃場800(作物802)の画像を取得する手段として機能すると共に、作物802に対する薬剤(液体肥料を含む。)を散布する手段としても機能する。ドローン24は、発着地点810(
図1)において離着陸する。
図2に示すように、ドローン24は、ドローンセンサ群60と、通信部62と、飛行機構64と、撮影機構66と、散布機構68と、ドローン制御部70とを有する。
【0027】
(A-1-4-2.ドローンセンサ群60)
ドローンセンサ群60は、準天頂衛星システムセンサ又はグローバル・ポジショニング・システム・センサ(以下「GPSセンサ」という。)、ジャイロセンサ、液量センサ、速度計、高度計、回転センサ等(いずれも図示せず)を有する。準天頂衛星システムセンサ又はGPSセンサは、ドローン24の現在位置情報を出力する。ジャイロセンサは、ドローン24の角速度を検出する。液量センサは、散布機構68のタンク180(
図4)内の液量を検出する。速度計は、ドローン24の飛行速度を検出する。高度計は、ドローン24下方に位置する対象に対する距離としての高度(いわゆる対地高度)を検出する。回転センサは、各プロペラ130の回転速度を検出する。
【0028】
(A-1-4-3.通信部62)
通信部62(
図2)は、通信ネットワーク30(
図1)を介しての電波通信が可能であり、例えば、電波通信モジュールを含む。通信部62は、通信ネットワーク30(無線基地局32を含む。)を介することで、圃場センサ群20、営農サーバ22、ユーザ端末26等との通信が可能である。
【0029】
(A-1-4-4.飛行機構64)
飛行機構64は、ドローン24を飛行させる機構である。
図3及び
図4に示すように、飛行機構64は、複数のプロペラ130flu、130fll、130fru、130frl、130rlu、130rll、130rru、130rrl(以下「プロペラ130」と総称する。)と、複数の電動モータ132flu、132fll、132fru、132frl、132rlu、132rll、132rru、132rrl(以下「モータ132」と総称する。)と、プロペラガード134fl、134fr、134rl、134rr(以下「プロペラガード134」と総称する。)とを有する。
【0030】
図3及び
図4の矢印Aは、ドローン24の進行方向を示している。
図3に示すように、本実施形態のプロペラ130は、いわゆる二重反転式であり、2つのプロペラ130(例えば、プロペラ130flu、130fll)を同軸に配置し、上下のプロペラ130を相互に逆方向回転させる。本実施形態では、二重反転式のプロペラ130の組が4つある。
【0031】
図3及び
図4に示すように、各プロペラ130は、ドローン24の本体90から延び出たアーム138u、138l、140lu、140ll、140ru、140rlにより本体90の四方に配置されている。すなわち、左前方にプロペラ130flu、130fllが、右前方にプロペラ130fru、130frlが、左後方にプロペラ130rlu、130rllが、右後方にプロペラ130rru、130rrlがそれぞれ配置されている。プロペラ130の回転軸から下方には、それぞれ棒状の足142fl、142fr、142rl、142rr(以下「足142」と総称する。)が延在する。
【0032】
モータ132は、プロペラ130を回転させる手段であり、プロペラ130毎に設けられる。1組の上下のプロペラ130(例えば、プロペラ130flu、130fll)及びそれらに対応するモータ132(例えば、モータ132flu、132fll)は同軸上にある。1組の上下のモータ132は、互いに反対方向に回転する。以下では、プロペラ130とモータ132の対をプロペラユニットUともいう。モータ132の詳細(内部構造等)については、
図5~
図8を参照して後述する。
【0033】
(A-1-4-5.撮影機構66)
撮影機構66(
図2)は、圃場800又は作物802の画像を撮影する機構であり、カメラ160を有する。本実施形態のカメラ160は、マルチスペクトルカメラであり、特に作物802の生育状況を分析できる画像を取得する。撮影機構66は、圃場800に対して特定の波長の光線を照射する照射部をさらに備え、当該光線に対する圃場800からの反射光を受光可能になっていてもよい。特定の波長の光線は、例えば赤色光(波長約650nm)と近赤外光(波長約774nm)であってもよい。当該光線の反射光を分析することで、作物802の窒素吸収量を推定し、推定した窒素吸収量に基づいて作物802の生育状況を分析することができる。
【0034】
カメラ160は、ドローン24の周辺を撮影した周辺画像に関する画像データを出力する。カメラ160は、動画を撮影するビデオカメラである。或いは、カメラ160は、動画及び静止画の両方又は静止画のみを撮影可能としてもよい。
【0035】
カメラ160は、図示しないカメラアクチュエータにより向き(ドローン24の本体90に対するカメラ160の姿勢)を調整可能である。或いは、カメラ160は、ドローン24の本体90に対する位置が固定されてもよい。
【0036】
(A-1-4-6.散布機構68)
散布機構68(
図2)は、薬剤(液体肥料を含む。)を散布する機構である。
図4等に示すように、散布機構68は、タンク180、ポンプ182、配管184、流量調整弁(図示せず)及び薬剤ノズル186l1、186l2、186r1、186r2(以下「ノズル186」と総称する。)を有する。
【0037】
タンク180は、散布される薬剤(散布物)を保管する。ポンプ182は、タンク180内の薬剤を配管184に押し出す。配管184は、タンク180と各ノズル186とを接続する。各ノズル186は、薬剤を下方に向けて散布するための手段(吐出口)である。
【0038】
(A-1-4-7.ドローン制御部70)
ドローン制御部70(
図2)は、ドローン24の飛行、撮影、薬剤の散布等、ドローン24全体を制御する。
図2に示すように、ドローン制御部70は、入出力部190、演算部192及び記憶部194を含む。
【0039】
入出力部190は、ドローン24の各部との信号の入出力を行う。演算部192は、中央演算装置(CPU)を含み、記憶部194に記憶されているプログラムを実行することにより動作する。演算部192が実行する機能の一部は、ロジックIC(Integrated Circuit)を用いて実現することもできる。演算部192は、前記プログラムの一部をハードウェア(回路部品)で構成することもできる。前述した営農サーバ22の演算部、後述するユーザ端末26の演算部等も同様である。
【0040】
図2に示すように、演算部192は、飛行制御部200、撮影制御部202及び散布制御部204を有する。飛行制御部200は、飛行機構64(プロペラ130、モータ132等)を介してドローン24の飛行を制御する。飛行制御部200は、モータ132を制御するモータ制御部としても機能する。飛行制御部200は、プロペラ130及びモータ132を順方向に回転させる順回転動作を実行させることでドローン24を飛行させる。撮影制御部202は、撮影機構66を介してドローン24による撮影を制御する。散布制御部204は、散布機構68を介してドローン24による薬剤散布を制御する。
【0041】
記憶部194は、演算部192が用いるプログラム及びデータを記憶するものであり、ランダム・アクセス・メモリ(以下「RAM」という。)を備える。RAMとしては、レジスタ等の揮発性メモリと、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリとを用いることができる。また、記憶部194は、RAMに加え、リード・オンリー・メモリ(ROM)を有してもよい。前述した営農サーバ22の記憶部、後述するユーザ端末26の記憶部等も同様である。
【0042】
[A-1-5.ユーザ端末26]
ユーザ端末26(
図1)は、圃場800において、操作者としてのユーザ900(
図1)の操作によりドローン24を操作又は制御すると共に、ドローン24から受信した情報(例えば、位置、薬剤量、電池残量、カメラ映像等)を表示する携帯情報端末である。なお、本実施形態では、ドローン24の飛行状態(高度、姿勢等)は、ユーザ端末26が遠隔制御するのではなく、ドローン24が自律的に制御する。従って、ユーザ端末26を介してユーザ900からドローン24に飛行指令が送信されると、ドローン24は自律飛行を行う。但し、離陸や帰還等の基本操作時、及び緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていてもよい。ユーザ端末26は、図示しない入出力部(タッチパネル等を含む。)、通信部、演算部及び記憶部を備え、例えば、一般的なタブレット端末により構成される。
【0043】
また、本実施形態のユーザ端末26は、営農サーバ22からの作業指示等を受信して表示する。ドローン24のコントローラとしてのユーザ端末26に加えて、操作者(ユーザ900)以外の別ユーザが用いる別のユーザ端末を設けてもよい。当該別のユーザ端末は、ドローン24の飛行情報(現在の飛行状況、飛行終了予定時刻等)、ユーザ900に対する作業指示、生育診断の情報等を、営農サーバ22又はドローン24から受信して表示する携帯情報端末とすることができる。或いは、当該別のユーザ端末は、圃場800以外の場所(例えば、ユーザ900が所属する会社)において、営農サーバ22による生育診断を利用するためにユーザ900等が用いる端末であってもよい。
【0044】
[A-1-6.プロペラ130及びモータ132]
(A-1-6-1.概要)
図5は、本実施形態におけるプロペラ130及びモータ132(プロペラユニットU)の内部構成を簡略的に示す垂直断面図である。
図6は、本実施形態におけるモータ132の内部構成の一部を簡略的に示す水平断面図である。
図7は、本実施形態のロータ400u、400lのロータフレーム412u、412lの側面部422u、422lの内側を展開して示す図である。
図5では、上側のプロペラ130及びモータ132をプロペラ130u及びモータ132uとし、下側のプロペラ130及びモータ132をプロペラ130l及びモータ132lとしている。
図6では、下側モータ132lを示しているが、上側モータ132uも同様の構成を有する。
【0045】
上記のように、モータ132は、プロペラ130を回転させることで、ドローン24を飛行させる。本実施形態におけるモータ132は3相交流式である。本実施形態では、下側モータ132lと上側モータ132uとは異なる構成を有する。モータ132の基本的な構成は、例えば特許文献1と同様の構成を用いることができる。
【0046】
図8は、本実施形態においてモータ132u、132lを順方向D1u、D1lに回転させてドローン24を通常飛行させる際の典型的な気流を示す図である。
図8に示すように、ドローン24を通常飛行させる際、上側モータ132uと下側モータ132lを互いに反対方向(順方向D1u、D1l)に回転させる。これに伴い、プロペラ130u、130lの中央付近では、下向きの気流600u、600lが発生する。これにより、それぞれのプロペラ130u、130lの上側に低気圧領域を発生させ、プロペラ130u、130lの下側に高気圧領域を発生させることで、揚力を得る。
【0047】
また、プロペラ130u、130lの中央付近において下向きの気流600u、600lが発生することに伴い、プロペラ130u、130lの根元側(モータ132u、132lの内部を含む。)及び先端側では、低気圧部分に向かって上向きの気流(モータ132u、132lの内部における気流602u、602lを含む。)が発生する。気流602u、602lは、モータ132u、132lの下方から吸気された後、上側に移動する。その後、気流602u、602lは、径方向外側に向かい、第1貫通孔440u、440l及び第2貫通孔442u、442l(下流側フィルタ502u、502l)を通過してモータ132u、132lから排出される。
【0048】
(A-1-6-2.下側モータ132l)
図5に示すように、下側モータ132lは、ステータ300lと、ステータ300lの外側に配置されるロータ400lとを有する。ステータ300lは、ステータボディ310lと、複数のコイル312lと、ベアリング314lと、ステータフレーム316lと、上流側フィルタ500lとを有する。ステータボディ310lは、円筒状の部材であり、コイル312l、ベアリング314l及びステータフレーム316lを支持する。ステータボディ310lは、コイル312lに発生した熱を放出するヒートシンクとしても機能する。
【0049】
コイル312lは、周方向に沿ってステータボディ310lに固定される(
図6)。各コイル312lは、図示しない電源ケーブルを介してドローン本体90(
図3)内の電源(図示せず)に接続されている。前記電源ケーブル上には、図示しないESC(Electric Speed Controller)が設けられる。ベアリング314lは、ロータ400lのロータシャフト410lを回転可能に支持する。
【0050】
ステータフレーム316lは、中央に位置するハブ320lと、ハブ320lから径方向に延在する複数のスポーク322lと、径方向外側で各スポーク322lと連結するリング状部324lとを有する。スポーク322l間には開口部326lが形成される。開口部326lは、モータ132lの軸方向に向かって開口する。
【0051】
上流側フィルタ500lは、モータ132lの底面側(プロペラ130lと反対側)において開口部326lに配置されてモータ132l内への異物(砂、小石、葉、籾等)の侵入を防止する。換言すると、上流側フィルタ500lは、ステータ300lのコイル312l及びロータ400lの永久磁石414lの間の隙間d及びステータボディ310lの下方(順回転動作時における上流側)に配置される。
【0052】
上流側フィルタ500lは、メッシュ(網状部材)である。より具体的には、上流側フィルタ500lは、パンチングメタルで製造されるメタルメッシュであり、網目の形状が六角形状であるが、その他のフィルタであってもよい。上流側フィルタ500lの網目の大きさは、コイル312l及び永久磁石414lの間の隙間dより小さい。
【0053】
下側モータ132lのロータ400lは、ロータシャフト410lと、ロータフレーム412lと、複数の永久磁石414lと、下流側フィルタ502lとを有する。ロータシャフト410lは、ステータ300lのベアリング314lに回転可能に支持されると共に、ロータフレーム412l及びプロペラ130lのプロペラシャフト450lと連結される。
【0054】
ロータフレーム412lは、片側が開口した円筒状の部材であり、頂面部420l及び側面部422lを有する。頂面部420lは、円形状且つ板状の部位であり、ロータシャフト410l及びプロペラシャフト450lと連結される。
【0055】
側面部422lは、底のない円筒状の部位であり、頂面部420lと連結している。
図5、
図6及び
図7に示すように、側面部422lには、複数の第1貫通孔440lと、複数の第2貫通孔442lとが設けられる。第1貫通孔440l及び第2貫通孔442lは、排気用に用いられる。
図6及び
図7に示すように、第1貫通孔440lは、永久磁石414l間に形成される。換言すると、第1貫通孔440lは、下側モータ132lの軸方向(
図5及び
図7の上下方向)において、永久磁石414lと重なっている。ロータ400lの軸方向に対する垂直断面(
図6)において、第1貫通孔440lは、側面部422lの法線方向に形成される。
【0056】
第2貫通孔442l(
図5及び
図7)は、モータ312lの軸方向において、永久磁石414lよりも下流側(
図5及び
図7では上側)に形成される。第1貫通孔440lと同様、ロータ400lの軸方向に対する垂直断面において、第2貫通孔442lは、側面部422lの法線方向に形成される。
【0057】
永久磁石414lは、円筒状の側面部422lの内側に沿って(換言すると、円周方向に沿って)配置される(
図6)と共に、ステータ300lのコイル312lと対向する(
図5及び
図6)。永久磁石414lは、直方体状を基調とするが、側面部422lの内面に沿って若干湾曲している。特許文献1の環状のバックヨーク4c(特許文献1の[0020]、
図2)と同様のヨークを、永久磁石414lの周囲に設けてもよい。
【0058】
下流側フィルタ502lは、ロータフレーム412lの第1貫通孔440l及び第2貫通孔442lに対応する位置に配置されて、モータ132l内に異物が混入することを防止する。下流側フィルタ502lは、パンチングメタルで製造されるメタルメッシュであり、網目の形状が六角形状であるが、その他のフィルタであってもよい。下流側フィルタ502lの網目の大きさは、コイル312l及び永久磁石414lの間の隙間dよりも大きい。
【0059】
(A-1-6-3.上側モータ132u)
図5に示すように、上側モータ132uは、ステータ300uと、ロータ400uとを有する。上側モータ132uの構成要素のうち、下側モータ132lと同様の構成要素については同様の参照符号を付して詳細な説明を省略する(但し、下側モータ132lの構成要素では「l」を付しているのに対し、上側モータ132uの構成要素には「u」を付す。)。ステータ300uは、ステータボディ310uと、複数のコイル312uと、ベアリング314uと、ステータフレーム316uとを有する。ステータフレーム316uは、円形状且つ板状の部位である。上側ステータフレーム316uには、下側ステータフレーム316lの開口部326lのような開口部は設けられていない。
【0060】
上側モータ132uのロータ400uは、ロータシャフト410uと、ロータフレーム412uと、複数の永久磁石414uと、上流側フィルタ500uと、下流側フィルタ502uとを有する。ロータシャフト410uは、ベアリング314uに回転可能に支持されると共に、プロペラ130uのプロペラシャフト450uと連結される。
【0061】
ロータフレーム412uは、片側が開口した円筒状の部材であり、頂面部420u及び側面部422uを有する。頂面部420uは、円形状且つ板状の部位である。頂面部420uは、ロータシャフト410u及びプロペラシャフト450uと連結するハブ430uと、ハブ430uから径方向に延在する複数のスポーク432uと、径方向外側で各スポーク432uと連結するリング状部434uとを有する。スポーク432u間には開口部436uが形成される。開口部436uは、モータ132uの軸方向に向かって開口する。開口部436uには、上流側フィルタ500uが設けられる。
【0062】
ロータフレーム412uの側面部422uは、底のない円筒状の部位である。下側の側面部422lと同様、上側の側面部422uには、複数の第1貫通孔440uと、複数の第2貫通孔442uとが設けられる(
図5及び
図7)。第1貫通孔440uは、永久磁石414u間に形成される(
図7)。換言すると、第1貫通孔440uは、モータ312uの軸方向において、永久磁石414uと重なっている。また、第1貫通孔440uは、ロータフレーム412uの法線方向に形成される。
【0063】
第2貫通孔442u(
図5及び
図7)は、モータ312uの軸方向において、永久磁石414uよりも下流側(
図5では上側)に形成される。第1貫通孔440uと同様、第2貫通孔442uは、ロータフレーム412uの法線方向に形成される。永久磁石414uは、円筒状の側面部422uの内側に沿って配置されると共に、ステータ300uのコイル312uと対向する。
【0064】
図8に示すように、上側プロペラユニット(プロペラ130u及びモータ132u)及び下側プロペラユニット(プロペラ130l及びモータ132l)のいずれにおいても、気流600u、600lの方向は同様である。そのため、下側モータ132lでは、ステータ300lに上流側フィルタ500lが設けられ、ロータ400lに下流側フィルタ502lが設けられている。これに対し、上側モータ132uでは、ロータ400uに上流側フィルタ500u及び下流側フィルタ502uの両方が設けられている。
【0065】
下側モータ132lの上流側フィルタ500lと同様、上側モータ132uの上流側フィルタ500uは、網目の大きさがコイル312u及び永久磁石414uの間の隙間dより小さい(
図5)。下側モータ132lの下流側フィルタ502lと同様、上側モータ132uの下流側フィルタ502uは、網目の大きさが隙間dより大きい。
【0066】
<A-2.本実施形態の制御>
本実施形態の営農サーバ22では、生育診断制御及び飛行管理制御が行われる。生育診断制御は、生育診断モデルを用いた生育診断を行う制御である。ここに言う生育診断には、例えば、圃場800毎の収量の推定値(推定収量)が含まれる。また、生育診断制御では、水田としての圃場800の水管理、施肥、薬剤散布等に関する作業指示も行われる。作業指示は、例えば、ユーザ端末26の表示部等に表示される。生育診断モデルでは、作物802(水稲)の収量、赤色光吸収率、籾数、有効受光面積率、籾内の蓄積デンプン量及び籾内のタンパク質含有率を算出することができる。
【0067】
飛行管理制御は、ドローン24の飛行を管理する制御である。飛行管理制御では、生育診断制御での作業指示等に基づいて、ドローン24の飛行タイミング、飛行経路、目標速度、目標高度、撮影機構66の撮影方法、散布機構68の散布方法等が設定される。
【0068】
本実施形態のドローン24では、飛行制御、撮影制御及び薬剤散布制御が行われる。飛行制御は、撮影、薬剤散布等のため圃場800においてドローン24を飛行させる制御である。飛行制御では、飛行制御部200が、営農サーバ22からの指令に基づいて飛行機構64を制御する。
【0069】
撮影制御は、ドローン24のカメラ160により圃場800(又は作物802)の画像を取得し、営農サーバ22に送信する制御である。撮影制御では、撮影制御部202が、営農サーバ22からの指令に基づいて撮影機構66を制御する。営農サーバ22に送信された圃場画像は、画像処理されて生育診断に用いられる。薬剤散布制御は、ドローン24を用いて薬剤(液体肥料を含む。)を散布する制御である。薬剤散布制御では、散布制御部204が、営農サーバ22からの指令に基づいて散布機構68を制御する。
【0070】
<A-3.本実施形態の効果>
本実施形態によれば、ロータフレーム412u、412lの側面部422u、422lには、円周方向に沿って配置されて複数のコイル312u、312lと対向する複数の永久磁石414u、414lの間の位置に排気用の複数の第1貫通孔440u、440lが形成されている(
図5~
図7)。これにより、ロータ400u、400lの回転時に第1貫通孔440u、440lを介してモータ132u、132l内部からモータ132u、132l外部への気流602u、602lを発生させることが可能となる(
図8)。そして、この気流602u、602lにより、モータ132u、132l内部の冷却又はモータ132u、132l内部若しくはその周辺の異物放出をすることが可能となる。
【0071】
本実施形態において、ロータフレーム412u、412lの側面部422u、422lには、ロータ400u、400lの回転軸方向において、順回転動作時の気流602u、602lを基準として永久磁石414u、414lよりも下流側に排気用の複数の第2貫通孔442u、442lが形成されている(
図5及び
図7)。これにより、モータ132u、132l内部からモータ132u、132l外部への気流602u、602lをさらに大きくすることが可能となる。
【0072】
本実施形態において、モータ132u、132lは、順回転動作時の気流602u、602lを基準として、コイル312u、312l及び永久磁石414u、414lの間の隙間dの上流側に配置された網状の上流側フィルタ500u、500lを備える(
図5及び
図8)。また、隙間dの手前において上流側フィルタ500u、500lの網目の大きさは隙間dより小さい。これにより、ドローン24(飛行体)の飛行時に隙間d内に異物が入り込むことを防止し易くなる。
【0073】
本実施形態において、モータ132u、132lは、第1貫通孔440u、440lに配置された網状の下流側フィルタ502u、502lを備える(
図5及び
図8)。また、第1貫通孔440u、440lの位置において下流側フィルタ502u、502lの網目の大きさは隙間dより大きい。これにより、ドローン24(飛行体)の非飛行時に比較的大きな異物が隙間d内に侵入することを防止し易くなる。また、ドローン24の飛行時に隙間d内に入り込んだ比較的小さな異物を、第1貫通孔440u、440lを介してモータ132u、132l外に放出し易くなる。
【0074】
本実施形態において、下側モータ132lのステータ300lは、ステータ300lで発生した熱を放出するステータボディ310l(ヒートシンク)を備える(
図5)。また、順回転動作時の気流602u、602lを基準として、上流側フィルタ500lは、隙間dの上流側に加えて、ステータボディ310lの上流側にも位置する(
図5)。これにより、ステータボディ310lに異物が入り込むことを防止することが可能となる。
【0075】
B.変形例
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、本明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0076】
<B-1.営農システム10>
上記実施形態の営農システム10は、
図1に示すような構成要素を有していた。しかしながら、例えば、第1貫通孔440u、440lの利用に着目すれば、これに限らない。例えば、営農システム10は、ドローン24と、ユーザ端末26のみを有するものとしてもよい。その場合、ユーザ端末26によりドローン24の飛行を制御してもよい。
【0077】
<B-2.ドローン24>
上記実施形態において、ドローン24は、作物802の撮像及び薬剤の散布を行った(
図1)。しかしながら、例えば、第1貫通孔440u、440lの利用に着目すれば、これに限らない。例えば、ドローン24は、作物802の撮像及び薬剤の散布の一方のみを行うものであってもよい。或いは、ドローン24は、その他の用途(例えば、生育診断以外の空撮)で用いるものであってもよい。
【0078】
上記実施形態のドローン24では、プロペラ130u、130lが対向するようにプロペラユニットU(プロペラ130u、130l及びモータプロペラ132u、132l)を配置した(
図3~
図5)。しかしながら、例えば、第1貫通孔440u、440lの利用に着目すれば、これに限らない。例えば、モータ132u、132lの底面(ステータフレーム316u、316l)が対向するようにプロペラユニットUを配置してもよい。或いは、二重反転式以外の方式を用いてもよい。例えば、ドローン24は、下側のプロペラ130l及びモータ132lの組合せのみ又は上側のプロペラ130u及びモータ132uの組合せのみを有してもよい。
【0079】
<B-3.プロペラユニットU(プロペラ130及びモータ132)>
上記実施形態において、プロペラユニットU(プロペラ130及びモータ132)は、
図5に示す構成を有していた。しかしながら、例えば、第1貫通孔440u、440lの利用に着目すれば、これに限らない。
【0080】
[B-3-1.第1変形例]
図9は、第1変形例のプロペラ130au、130al及びモータ132au、132al(プロペラユニットUa)の内部構成を簡略的に示す垂直断面図である。
図10は、第1変形例のロータ400au、400alのロータフレーム412au、412alの側面部422au、422alの内側を展開して示す図である。
図11は、第1変形例においてモータ132au、132alを順方向D1u、D1lに回転させてドローン24を通常飛行させる際の典型的な気流を示す図である。
【0081】
上記実施形態のプロペラ130u、130lと同様、第1変形例のプロペラ130au、130alは、通常飛行時(正転時)に下向きの気流610u、610lを発生させる(
図11)。
【0082】
上記実施形態では、プロペラ130u、130lの順回転(順方向D1u、D1lの回転)に伴ってモータ132u、132l内部に上側に移動した後、径方向外側に移動する気流602u、602lが発生した(
図8)。これに対し、第1変形例では、プロペラ130au、130alの順回転(順方向D1u、D1lの回転)に伴ってモータ132au、132al内部に気流612u、612lが発生する(
図11)。気流612u、612lは、モータ132au、132alの上側に配置された上流側フィルタ500au、500alを通過して下方に移動する。その後、気流612u、612lは、第1貫通孔440u、440l及び第2貫通孔442au、442alを介してモータ132au、132al外に排出される。
【0083】
これは、プロペラ130au、130alの長さが比較的短いため、プロペラ130au、130alが発生する下向きの気流610u、610lがモータ132au、132al内部にも生じるためである。
【0084】
上記のように第1変形例では、モータ132au、132al内部における気流の向きが第1実施形態と反対になる。そのため、第1変形例の下側モータ132alにおける上流側フィルタ500al及び下流側フィルタ502alの位置は、上記実施形態の下側モータ132lにおける上流側フィルタ500l及び下流側フィルタ502lと逆になる。同様に、第1変形例の上側モータ132auにおける上流側フィルタ500au及び下流側フィルタ502alの位置は、上記実施形態の上側モータ132uにおける上流側フィルタ500u及び下流側フィルタ502uと逆になる。
【0085】
上記のような気流612u、612lを流すため、下側モータ132alのロータフレーム412alの頂面部420alは、ロータシャフト410l及びプロペラシャフト450lと連結するハブ430lと、ハブ430lから径方向に延在する複数のスポーク432lと、径方向外側で各スポーク432lと連結するリング状部434lとを有する。スポーク432l間には開口部436lが形成される。開口部436lは、モータ132alの軸方向に向かって開口する。開口部436lには、上流側フィルタ500alが設けられる。
【0086】
また、上記実施形態では、第2貫通孔442u、442lがそれぞれロータフレーム412u、412lの上側に配置されていた(
図5及び
図7)。これに対し、第1変形例では、第2貫通孔442au、442alがそれぞれロータフレーム412au、412alの下側に配置される(
図9及び
図10)。これに伴って、下流側フィルタ502alの位置も変更となる。加えて、ステータフレーム316alには、上記実施形態の開口部326lのような開口部は設けられない。
【0087】
また、上側モータ132auでは、モータフレーム412auの頂面部420auに、上記実施形態の開口部436u(
図5)のような開口部は設けられない。一方、ステータフレーム316auは、中央に位置するハブ320uと、ハブ320uから径方向に延在する複数のスポーク322uと、径方向外側で各スポーク322uと連結するリング状部324uとを有する。スポーク322u間には開口部326uが形成される。開口部326uは、モータ132auの軸方向に向かって開口する。上流側フィルタ500auは、開口部326uに配置される。
【0088】
[B-3-2.第2変形例]
図12は、第2変形例のプロペラ130bu、130bl及びモータ132bu、132bl(プロペラユニットUb)の内部構成を簡略的に示す垂直断面図である。
図13は、第2変形例のロータ400bu、400blのロータフレーム412u、412lの側面部422bu、422blの内側を展開して示す図である。第2変形例のプロペラ130bu、130blが通常飛行時(正転時)に生成する気流の向きは上記実施形態(
図8)と同様である。
【0089】
上記実施形態のモータ132u、132lでは、第1貫通孔440u、440l及び第2貫通孔442u、442lを離間していた(
図5及び
図7)。これに対し、第2変形例のモータ132bu、132blでは、第1貫通孔440bu、440bl及び第2貫通孔442bu、442blが連通している(
図12及び
図13)。換言すると、第1貫通孔440bu、440blは、永久磁石414u、414lの間のみならず、永久磁石414u、414lの下流側にも形成される。第1貫通孔440bu、440blの端部と第2貫通孔442bu、442blの端部は連続している(
図13)。これにより、モータ132bu、132bl内部からモータ132bu、132bl外部への気流をさらに大きくすることが可能となる。
【0090】
また、
図12に示すように、第2変形例では、ロータシャフト410u、412lにファン460u、460lを設ける。ファン460u、460lは、モータ132bu、132blを順方向に回転させる際、モータ132bu、132bl内に下側から上側に向かう(換言すると、モータ132bu、132blのロータシャフト410u、410lの方向に流れる)気流を発生させる。これにより、モータ132bu、132bl内部の気流を促進することが可能となる。
【0091】
また、上記実施形態のプロペラユニットUでは、下側モータ132lの上流側フィルタ500lはステータボディ310lを覆っていた(
図5)。これに対し、第2変形例のプロペラユニットUbでは、下側モータ132lの上流側フィルタ500blはステータボディ310l(ヒートシンク)を避けて配置されている(
図12)。これにより、例えば、ステータボディ310lに当たる気流が上流側フィルタ500blにより遮られることを防止し、冷却性能を高めることが可能となる。なお、これに伴って、ステータフレーム316blでは、ハブ320blが大きくなり、スポーク322blが短くなり、開口部326blが小さくなる。上流側フィルタ500blは、開口部326blに合わせた大きさとなる。
【0092】
[B-3-3.第3変形例]
図14は、第3変形例のロータ400cu、400clのロータフレーム412cu、412clの側面部422cu、422clの内側を展開して示す図である。第2変形例(
図12及び
図13)では、周方向(
図13の左右方向)において、第1貫通孔440bu、440blの端部と第2貫通孔442bu、442blの端部(左端)が連続していた。これに対し、第3変形例では、周方向(
図14の左右方向)において、第1貫通孔440cu、440clは、第2貫通孔442cu、442clの中央付近に位置している。これに伴って、径方向外側に向かって見た際の下流側フィルタ502bu、502blの形状が第2変形例に対して変化する。第3変形例のその他の構成は、第2変形例(
図12)と同様である。
【0093】
[B-3-4.第4変形例]
図15は、第4変形例のロータ400du、400dlのロータフレーム412du、412dlの側面部422du、422dlの内側を展開して示す図である。上記実施形態(
図5、
図7)では、永久磁石414u、414l間の第1貫通孔440u、440lと、永久磁石414u、414lよりも下流側の第2貫通孔442u、442lとを設けた。第1変形例(
図9)も同様である。
【0094】
これに対し、第4変形例では、第1貫通孔440u、440l及び第2貫通孔442u、442lに加えて、順回転動作時の気流を基準として永久磁石414u、414lよりも上流側の第3貫通孔444u、444lを設ける(
図15)。第3貫通孔444u、444lは、排気用に用いられる。これにより、モータ312内部からモータ312外部への気流をさらに大きくすることが可能となる。
【0095】
[B-3-5.第5変形例]
図16は、第5変形例におけるモータ132elの内部構成の一部を簡略的に示す水平断面図である。上記実施形態では、下側モータ132lの水平断面(
図6)において、永久磁石414l及び第1貫通孔440lは長方形状であった。換言すると、ロータ400lの軸方向に対する垂直断面(
図6)において、永久磁石414l及び第1貫通孔440lは、ロータフレーム412lの円環状の側面部412lの法線方向に配置されていた。
【0096】
これに対し、第5変形例の永久磁石414el及び第1貫通孔440elは平行四辺形状である。換言すると、ロータ400elの軸方向に対する垂直断面(
図6)において、永久磁石414el及び第1貫通孔440elは、側面部422elの法線方向に対して傾斜している。また、側面部422elの外周に設けられる第1貫通孔440elの出口は、側面部422elの内周に設けられる第1貫通孔440elの入口よりも、モータ132elの順回転方向(方向D1l)において後方に配置されている。さらに、永久磁石414elの側面は、第1貫通孔440elを形成する側面部422elの内壁と面一になるように側面部422elの法線に対して傾斜している。
【0097】
これらにより、モータ132el内部の気流がモータ132el外部に円滑に放出され易くなる。従って、モータ132el内部の冷却又はモータ132el内部若しくはその周辺の異物放出を促進することが可能となる。このような傾斜は、上記実施形態の第2貫通孔442l(
図5)、第4変形例の第3貫通孔444l(
図15)等に適用してもよい。なお、ステータ300elは、上記実施形態のステータ300l(
図6)と同様の構成である。
【0098】
[B-3-6.その他]
上記実施形態の第1貫通孔440u、440lは、ロータ400u、400lの軸方向の長さが、永久磁石414u、414lと同等であった(
図5及び
図7)。しかしながら、例えば、第1貫通孔440u、440lの利用に着目すれば、これに限らない。例えば、第1貫通孔440u、440lの軸方向の長さは、永久磁石414u、414lよりも短く又は長くしてもよい。
【0099】
上記実施形態の第1貫通孔440u、440lは、ロータ400u、400lの周方向の長さが、永久磁石414u、414l間の距離と同等であった(
図7)。換言すると、永久磁石414u、414l間の距離全体を第1貫通孔440u、440lが閉めていた。しかしながら、例えば、第1貫通孔440u、440lの利用に着目すれば、これに限らない。例えば、側面部422u、422lにおいて、永久磁石414u、414lの間には、第1貫通孔440u、440lを形成しない部分があってもよい。
【0100】
上記実施形態では、第1貫通孔440u、440l及び第2貫通孔442u、442lを設けた(
図5及び
図7)。しかしながら、例えば、第1貫通孔440u、440lの利用に着目すれば、第2貫通孔442u、442lを省略してもよい。
【0101】
上記実施形態のロータ400u、400lはステータ300u、300lの外側に配置された(
図5)。しかしながら、例えば、第1貫通孔440u、440lの利用に着目すれば、これに限らず、ロータ400u、400lはステータ300u、300lの内側に配置されてもよい。第1~第5変形例(
図10~
図16)も同様である。
【0102】
上記実施形態において、上流側フィルタ500lは、コイル312lと永久磁石414lの間の隙間dとステータボディ310lの両方を覆うものであった(
図5)。そして、隙間dとステータボディ310の下方いずれにおいても上流側フィルタ500lの網目の大きさを隙間dより小さくした。しかしながら、第1貫通孔440u、440lの利用に着目すれば、ステータボディ310lの下方における上流側フィルタ500lの網目の大きさを隙間dより大きくしてもよい。第1~第5変形例(
図10~
図16)も同様である。
【0103】
上記実施形態のプロペラユニットUでは、上流側フィルタ500l、500u及び下流側フィルタ502l、502lを設けた(
図5)。しかしながら、例えば、第1貫通孔440u、440lの利用に着目すれば、これに限らない。例えば、上流側フィルタ500l、500u及び下流側フィルタ502l、502lの一方又は両方を省略してもよい。第1~第5変形例(
図10~
図16)も同様である。
【符号の説明】
【0104】
24…ドローン(飛行体) 130…プロペラ
132…モータ
200…飛行制御部(モータ制御部) 300…ステータ
310…ステータボディ(ヒートシンク)
312…コイル 400…ロータ
410…ロータシャフト 412…ロータフレーム
414…永久磁石 420…頂面部
422…側面部 440…第1貫通孔
442…第2貫通孔 444…第3貫通孔
500…上流側フィルタ 502…下流側フィルタ
602、612…気流 d…隙間