(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】紙製チューブ容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 35/10 20060101AFI20231019BHJP
B65D 35/12 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B65D35/10 Z
B65D35/12
(21)【出願番号】P 2023038456
(22)【出願日】2023-03-13
【審査請求日】2023-04-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509029885
【氏名又は名称】株式会社ベッセル・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】滝井 博久
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-104851(JP,A)
【文献】特開2010-083528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/10
B65D 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に熱可塑性樹脂がラミネート加工された紙材で形成された胴部と、胴部の一端部に肩部と口頸部とを備えた熱可塑性樹脂製のショルダーが形成された紙製チューブ容器であって、
前記胴部は、内側から順に内溶着層、接着層、バリア層、接着層、補助溶着層、接着層、紙材層、接着層、補助溶着層、外溶着層を有する積層シートとし、胴部と肩部との接合部は、胴部の内側の熱可塑性樹脂から外側の熱可塑性樹脂の端部までが肩部に溶着されたことを特徴とする紙製チューブ容器。
【請求項2】
前記紙材は、木材又は竹を原料とするパルプからなるクラフト紙とし、前記熱可塑性樹脂はポリエチレンとする請求項1記載の紙製チューブ容器。
【請求項3】
両面に熱可塑性樹脂がラミネート加工された紙材で形成された胴部と、胴部の一端部に肩部と口頸部とを備えた熱可塑性樹脂製のショルダーが形成された紙製チューブ容器の製造方法において、
前記胴部は、内側から順に内溶着層、接着層、バリア層、接着層、補助溶着層、接着層、紙材層、接着層、補助溶着層、外溶着層を有する積層シートとし、
前記胴部を射出成形用マンドリルに外嵌する外嵌工程と、
マンドリルの上部で前記胴部の接合端部の外側に前記ショルダーを形成するキャビ型を装着固定する型締め工程と、
キャビ型内に熱可塑性樹脂を射出して前記ショルダーを形成する際に前記胴部の内側の熱可塑性樹脂から外側の熱可塑性樹脂の端部に至るまで接合溶着する射出成形工程と、
前記ショルダー固化後に前記肩部に接合した前記胴部を前記ショルダーと共に取り出す取出し工程と、を備えたことを特徴とする紙製チューブ容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート加工された紙材をチューブ容器の胴部に使用した紙製チューブ容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラミネート加工された紙材で胴部を形成したチューブ容器は、化石燃料の使用量を大幅に削減する環境保護の観点から注目されている。
【0003】
紙の使用比率の高い液体用紙容器が特許文献1に記載されている。この紙容器の本体胴部2を形成する積層体20は、紙層21の裏面側に、接着層24、バリア層25、接着剤層26、シーラント層27の順に積層されている。一方、紙層21の表面側に、表面樹脂層22とインキ層23とが形成されている。
【0004】
そして、本体胴部2の一端を口栓7の肩シール部13や熱融着部7bに熱シールする際に積層体20のシーラント層27を、口栓7に接着した肩シール部14や口栓7の熱融着部7bに熱シールする構成である。そのため、積層体20の紙層21端部はいわば露出した状態のままで紙層21より内側のシーラント層27のみが口栓7に接合される構造である。
【0005】
一方、特許文献2に記載のチューブ状容器も積層シート10の中央部に紙層20を有するもので、胴部100を構成する積層シート10を注出口部50に熱融着する際に、胴部100の端部が露出した状態で注出口部50に熱融着する構造である。
【0006】
また、このチューブ状容器では、胴部100を構成する積層シート10の内側に第1のシーラント層12を配置し、この第1のシーラント層12を、チューブ状容器300の注出口部50に熱融着する構造である。
【0007】
したがって、積層シート10(ブランクス200)の紙層20端部は、注出口部50に熱融着されず、露出状態のまま胴部100が注出口部50の閉塞部51に熱融着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-25471号公報
【文献】特開2022-26738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、両面に熱可塑性樹脂がラミネートされた紙材は、両面の防水力は高くても、紙材の端部は露出した状態になっている。そのため、紙材の端部から内部に水分等が染み込む可能性がある。
【0010】
したがって、両面がラミネートされた紙材をチューブ容器の胴部に使用した従来の紙製チューブ容器は、露出状態になっている紙層の端部から水分等が浸透するおそれがあり、紙製チューブ容器の防水力は極めて脆弱であった。
【0011】
しかも、いずれの紙製容器も、胴部の片面のシーラント層のみが口部に接合される構造のため、紙材を使用しない合成樹脂製のチューブ容器に比べると、胴部と口部との接合強度も劣る課題もあった。
【0012】
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、ラミネート加工された紙材で胴部を形成した紙製チューブ容器において、従来の合成樹脂製のチューブ容器と同等の防水力と接合強度を有する紙製チューブ容器及びその製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、両面に熱可塑性樹脂がラミネート加工された紙材で形成された胴部1と、胴部1の一端部に肩部3と口頸部4とを備えた熱可塑性樹脂製のショルダー2が形成された紙製チューブ容器であって、前記胴部1は、内側から順に内溶着層11、接着層12、バリア層13、接着層12、補助溶着層14、接着層12、紙材層15、接着層12、補助溶着層14、外溶着層16を有する積層シート10とし、胴部1と肩部3との接合部は、胴部1の内側の熱可塑性樹脂から外側の熱可塑性樹脂の端部までが肩部3に溶着されたことにある。
【0015】
第2の手段の前記紙材は、木材又は竹を原料とするパルプからなるクラフト紙とし前記熱可塑性樹脂はポリエチレンとするものである。
【0016】
第3の手段は、両面に熱可塑性樹脂がラミネート加工された紙材で形成された胴部1と、胴部1の一端部に肩部3と口頸部4とを備えた熱可塑性樹脂製のショルダー2が形成された紙製チューブ容器の製造方法において、前記胴部1は、内側から順に内溶着層11、接着層12、バリア層13、接着層12、補助溶着層14、接着層12、紙材層15、接着層12、補助溶着層14、外溶着層16を有する積層シート10とし、前記紙製チューブ容器の前記胴部1を射出成形用のマンドリルPに外嵌する外嵌工程100と、マンドリルPの上部で前記胴部1の接合端部の外側に前記ショルダー2を形成するキャビ型Qを装着固定する型締め工程200と、キャビ型Q内に熱可塑性樹脂を射出してショルダー2を形成する際に前記胴部1の内側の熱可塑性樹脂から外側の熱可塑性樹脂の端部に至るまで接合溶着する射出成形工程300と、前記ショルダー2固化後に前記肩部3に接合した前記胴部1を前記ショルダー2と共に取り出す取出し工程400と、を備えた製造方法にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明のごとく、両面に熱可塑性樹脂がラミネート加工された紙材で形成された胴部1において、胴部1の内側の熱可塑性樹脂から外側の熱可塑性樹脂の端部まで肩部3に接合溶着したことにより、従来の合成樹脂製のチューブ容器と同等の防水力と接合力を有する効果がある。
【0018】
紙材層14の表裏面に隣接して層を成す補助溶着層14の端部が肩部3に接合溶着することで、紙材層14の端部が完全に密封された状態になる。この結果、防水力に優れた胴部1を形成することができる。
【0019】
二層の補助溶着層14と共に、胴部1内側の内溶着層11と、外側の外溶着層16とが肩部3に接合溶着するので強力な接合力が得られる。
【0020】
胴部1を形成する紙材は、木材又は竹を原料とするパルプからなるクラフト紙とすることで、安価で強度に優れた胴部1を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施例を示す要部縦断面図である。
【
図2】本発明の胴部と肩部とを接合溶着した状態を示す断面図である。
【
図3】
図2に示す「イ」の範囲を示す拡大断面図である。
【
図4】本発明の胴部を構成する積層シートの拡大断面図である。
【
図6】(イ)はキャビ型をセットする工程、(ロ)は射出成形工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明チューブ容器は、略円筒状の胴部1と、胴部1の端部に接合している肩部3及び口頸部4からなるショルダー2とで構成する(
図1参照)。胴部1は紙材の両面に熱可塑性樹脂をラミネート加工した胴部1を使用する。
【0023】
ショルダー2は、肩部3と口頸部4とを備える熱可塑性樹脂製で、胴部1の一端部に射出成形して形成する。このとき、胴部1の端部に肩部3の端部が接合溶着される(
図1参照)。これら胴部1と肩部3との接合部は、胴部1の内側の熱可塑性樹脂から端部の熱可塑性樹脂が肩部3の熱可塑性樹脂に溶着したものである。
【0024】
図示例では、肩部3と胴部1との接合部において、肩部3に接合面3Aを形成している(
図2参照)。そして、胴部1の端部に接合面3Aを接合する構成により、胴部1端部の全ての熱可塑性樹脂を肩部3に確実に溶着することができる(
図3参照)。
【0025】
ショルダー2を形成する熱可塑性樹脂及び胴部1に使用する熱可塑性樹脂は、射出成型時の安定性等からポリエチレンの使用が望ましい。
【0026】
たとえば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどである。また、この熱可塑性樹脂は、この他ポリプロピレンやポリエステルなど任意に変更することが可能である。
【0027】
図示の胴部1は、内側から順に内溶着層11、接着層12、バリア層13、接着層12、補助溶着層14、接着層12、紙材層15、接着層12、補助溶着層14、外溶着層16を有する積層シート10にて構成したものである(
図4参照)。そして、内溶着層11と補助溶着層14と外溶着層16とに、ショルダー2と同じ熱可塑性樹脂を使用することで、胴部1とショルダー2との接合溶着を確実にしている。
【0028】
胴部1を構成する紙材層15の紙材は、木材又は竹を原料とするパルプからなるクラフト紙を使用すると、強度、コストにおいて好ましい。また、他の原料のパルプを利用することも可能である。
【0029】
また、積層シート10の各層を接着する接着層12の材質は、ドライラミネート構造の場合、例えば、ポリエステル系やポリエーテル系などの接着剤があり、有機溶剤で適当な粘度に希釈して使用する。更に、耐熱性や耐薬品性などの機能を追加するために必要な接着剤を選定することができる。また、押出しラミネート構造の場合、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などが接着材として使用される。このように、接着層12の材質も任意の変更が可能である。
【0030】
積層シート10のバリア層13は、胴部1にガスバリア機能を備えるための層で、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムなどが使用される。また、蒸着フィルムや金属箔等を用いたバリア層を形成するなど、バリア層13の材質も任意に変更することができる。
【0031】
本発明の製造方法は、外嵌工程100、型締め工程200、射出成形工程300、取出し工程400を備えている(
図7参照)。
【0032】
外嵌工程100は、マンドリルPに胴部1を外嵌する外嵌工程である(
図5参照)。このマンドリルPは、筒状の胴部1を保持する円柱の上部に、ショルダー2の内側形状を象った金型である(
図6参照)。そして、マンドリルPに筒状の胴部1を外嵌すると、胴部1の端部がマンドリルPの上部に立設した状態になる(
図5参照)。
【0033】
更に、このマンドリルPの上部にキャビ型Qをセットする(
図6(イ)参照)。このキャビ型Qは、熱可塑性樹脂を充填する空洞が形成される雌型となり、この空洞でショルダー2が形成される(
図6(ロ)参照)。このとき、胴部1の端部に肩部3を確実に接合するため、胴部1の接合端面に当接する接合面3Aを肩部3に形成している(
図2参照)。
【0034】
型締め工程200は、マンドリルPの上部にセットしたキャビ型Qを固定する工程である(
図6(ロ)参照)。この工程において、キャビ型Qを胴部1の端部の外側に接触した状態で固定し、マンドリルPと胴部1との間に熱可塑性樹脂を充填するようにセットする。
【0035】
射出成形工程300は、キャビ型Q内に熱可塑性樹脂を射出してショルダー2を形成する工程である(
図6(ロ)参照)。このとき、肩部3を形成する熱可塑性樹脂が、胴部1の内側の熱可塑性樹脂から外側の熱可塑性樹脂の端部に接合溶着する(
図2参照)。
【0036】
この結果、胴部1の接合端面は、射出成形された肩部3の接合面3Aに接合し、胴部1を構成する積層シート10の紙材層15を挟む二層の補助溶着層14と、外溶着層16との各端部が肩部3の接合面3Aに接合溶着される(
図3参照)。この結果、胴部1を構成する紙材の端部は、胴部1の熱可塑性樹脂と肩部3の熱可塑性樹脂とに囲まれて完全に密閉された状態になる。
【0037】
更に、積層シート10の内溶着層11が肩部3の外側に広く面状に接合溶着されているので、胴部1の接合部は、端面から内側にかけて広く溶着されて肩部3と一体化した状態になる(
図2参照)。
【0038】
取出し工程400は、射出した熱可塑性樹脂が固化した後、キャビ型Qを外し、マンドリルPからショルダー2を取り出す工程である。このとき、ショルダー2の肩部3に胴部1が接合した状態のチューブ容器が取り出される(
図1参照)。
【0039】
尚、本発明の各部の形状やサイズ、材質等は実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において自由に変更できるものである。
【符号の説明】
【0040】
P マンドリル
Q キャビ型
1 胴部
2 ショルダー
3 肩部
3A 接合面
4 口頸部
10 積層シート
11 内溶着層
12 接着層
13 バリア層
14 補助溶着層
15 紙材層
16 外溶着層
100 外嵌工程
200 型締め工程
300 射出成形工程
400 取出し工程
【要約】
【課題】両面に熱可塑性樹脂がラミネート加工された紙材で、従来の合成樹脂製のチューブ容器と同等の防水力と接合力を有する紙製チューブ容器を提供する。
【解決手段】円筒状の胴部1の端部にショルダー2を射出成形したチューブ容器を形成する。ショルダー2は、胴部1の一端部に接合される肩部3を備える。胴部1は、両面に熱可塑性樹脂がラミネートされた紙材を使用する。胴部1の内側の熱可塑性樹脂から外側の熱可塑性樹脂の端部まで接合溶着する。
【選択図】
図1