(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】コンクリート部材の連結装置及びコンクリート構造体
(51)【国際特許分類】
E02B 5/02 20060101AFI20231019BHJP
E04B 1/61 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
E02B5/02 J
E04B1/61 502D
(21)【出願番号】P 2023096205
(22)【出願日】2023-06-12
【審査請求日】2023-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592086880
【氏名又は名称】丸栄コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 肇
(72)【発明者】
【氏名】渡部 健
(72)【発明者】
【氏名】阪口 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】水野 克基
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴彦
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-070494(JP,A)
【文献】特許第6683381(JP,B2)
【文献】特開平09-291926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/02
E04B 1/38-1/61
F16B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合うコンクリート部材を連結するための連結装置であって、
前記隣り合うコンクリート部材のうち一方のコンクリート部材に一体で設けられる第1連結具と、
他方のコンクリート部材に一体で設けられる第2連結具と、
前記第1連結具及び前記第2連結具を連結する軸部と、を備え、
前記第1連結具には、前記軸部が挿通される挿通孔が形成され、
前記挿通孔には、前記軸部が挿通され、
前記軸部のうち前記挿通孔から反第2連結具側に突出する部分には、前記隣り合うコンクリート部材が互いに離間する方向の引張荷重に対して弾性変形する弾性変形部が設けられ、
前記弾性変形部は、
弾性材料により環状に形成され、内側に前記軸部を挿通した状態で前記軸部に沿って並んで配置される複数の弾性環状部材と
、
硬質材料により環状に形成され、内側に前記軸部を挿通した状態で設けられる硬質環状部材と、を有して
おり、
前記複数の弾性環状部材には、互いに異なる材料により形成されている、又は、互いに異なる硬度を有している複数種類の弾性環状部材が含まれており、
前記複数種類の弾性環状部材が重ねて配置されることにより弾性積層体が形成されており、
前記硬質環状部材と前記弾性積層体とが交互に並んで複数ずつ配置されている、コンクリート部材の連結装置。
【請求項2】
前記弾性積層体を形成する前記複数種類の弾性環状部材は、同じ外径を有している、請求項1に記載のコンクリート部材の連結装置。
【請求項3】
前記弾性積層体を挟んだ両側においてそれぞれ
当該弾性積層体に重ねられた状態で配置され
た各
前記硬質環状部材の外径は、
当該弾性積層体の外径よりも大きい、請求項
1又は2に記載のコンクリート部材の連結装置。
【請求項4】
請求項1に記載のコンクリート部材の連結装置と、
前記連結装置により連結された前記隣り合うコンクリート部材と、
を備える、コンクリート構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート部材の連結装置、及び、その連結装置により隣り合うコンクリート部材が連結されてなるコンクリート構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、隣り合うコンクリート部材を連結するための連結装置が知られている。特許文献1には、かかる連結装置として、隣り合うコンクリート部材にそれぞれ埋設される第1連結具及び第2連結具と、それら各連結具を連結するボルトとを備えたものが開示されている。この連結装置では、各連結具にボルトの軸部が挿通される挿通孔が形成されている。各連結具の挿通孔にはボルトの軸部が挿通され、そのボルトにナットが締結されている。
【0003】
ところで、地震や地盤沈下等により地盤に変位が生じた場合には、地盤に埋設された隣り合うコンクリート部材が互いに離間する方向に変位することが想定される。その場合、コンクリート部材同士を連結する連結装置に引張荷重が作用し、それによって連結装置が破損するおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1の連結装置では、そのような点に鑑み、連結装置に作用する引張荷重を吸収する外力吸収部材を設けている。外力吸収部材は、ボルトの軸部のうち、第1連結具の挿通孔から反第2連結具側に突出する部分に設けられている。外力吸収部材は、ゴム等の弾性変形可能な材料により筒状に形成され、内側にボルトの軸部を挿通した状態で1つだけ配置されている。この場合、外力吸収部材は、ボルトの頭部と第1連結具との間に位置している。
【0005】
上記の構成によれば、地盤に変位が生じて隣り合うコンクリート部材が互いに離間する方向に変位すると、外力吸収部材がボルトの頭部と第1連結具との間に挟まれて圧縮変形(弾性変形)し、それにより連結装置に作用する引張荷重が吸収されるようになっている。そのため、引張荷重により連結装置が破損するのを抑制することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、大きな地震が発生したことによりコンクリート部材同士が互いに離間する場合には、連結装置に作用する引張荷重が大きくなることが想定される。そこで、そのような場合を想定して、外力吸収部材として、厚み(軸線方向の長さ)の大きなものを用いることが考えられる。その場合、外力吸収部材が圧縮変形できる圧縮変形量を大きく確保することができるため、大きな引張荷重が作用した場合でも引張荷重を吸収することが可能となる。そのため、連結装置の破損を好適に抑制することが可能となる。
【0008】
しかしながら、厚みの大きい外力吸収部材を用いると、外力吸収部材が圧縮変形する際に外力吸収部材が外周側に大きく拡がることになってしまう。そうすると、実質的に連結装置の大型化を招くことになり、好ましくない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、大型化するのを抑制しながら、地盤変位が生じた際に破損するのを好適に抑制できるコンクリート部材の連結装置及びコンクリート構造体を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明のコンクリート部材の連結装置は、
隣り合うコンクリート部材を連結するための連結装置であって、
前記隣り合うコンクリート部材のうち一方のコンクリート部材に一体で設けられる第1連結具と、
他方のコンクリート部材に一体で設けられる第2連結具と、
前記第1連結具及び前記第2連結具を連結する軸部と、を備え、
前記第1連結具には、前記軸部が挿通される挿通孔が形成され、
前記挿通孔には、前記軸部が挿通され、
前記軸部のうち前記挿通孔から反第2連結具側に突出する部分には、前記隣り合うコンクリート部材が互いに離間する方向の引張荷重に対して弾性変形する弾性変形部が設けられ、
前記弾性変形部は、弾性材料により環状に形成され、内側に前記軸部を挿通した状態で前記軸部に沿って並んで配置される複数の弾性環状部材を有している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の連結装置は、隣り合うコンクリート部材にそれぞれ一体で設けられる第1連結具及び第2連結具と、それら各連結具を連結する軸部とを備える。これにより、連結装置を介して隣り合うコンクリート部材が互いに連結される。第1連結具には、軸部が挿通される挿通孔が形成され、その挿通孔には軸部が挿通される。軸部のうち挿通孔から反第2連結具側に突出する部分には、隣り合うコンクリート部材が互いに離間する方向の引張荷重に対し弾性変形する弾性変形部が設けられている。かかる構成によれば、地震等により地盤変位が生じて隣り合うコンクリート部材が互いに離間する方向に変位した場合、その変位に伴い連結装置に作用する引張荷重が弾性変形部による弾性変形によって吸収される。
【0012】
弾性変形部は、弾性材料により環状に形成され、内側に軸部を挿通した状態で軸部に沿って並ぶ複数の弾性環状部材を有している。この場合、隣り合うコンクリート部材が互いに離間する方向の引張荷重が作用すると、各弾性環状部材がそれぞれ同方向に弾性変形(換言すると圧縮変形)して引張荷重が吸収される。そのため、連結装置に大きな引張荷重が作用した場合にも、その引張荷重を各弾性環状部材により吸収することができ、その結果、連結装置が破損するのを好適に抑制することができる。
【0013】
また、上記の構成では、複数の弾性環状部材により連結装置に作用する引張荷重を分散させて吸収することができるため、一の弾性環状部材により引張荷重を吸収する場合と比べ、各弾性環状部材の厚みを小さくすることができる。そのため、各弾性環状部材が圧縮変形する際に、各弾性環状部材が外周側に拡がる拡がり量を抑えることができる。これにより、連結装置の大型化を抑制しながら、地盤変位が生じた際に連結装置が破損するのを好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】コンクリート部材用連結装置により隣り合うコンクリート部材が連結された状態を示す正面図。
【
図2】コンクリート部材用連結装置により隣り合うコンクリート部材が連結された状態を示す断面図。
【
図4】
図1において、コンクリート部材の作業用空間にモルタルが充填された状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、コンクリート部材用連結装置10により隣り合うコンクリート部材20が連結された状態を示す正面図であり、
図2は断面図である。
図3は、コンクリート部材用連結装置10を示す正面図である。
【0016】
図1及び
図2に示すように、コンクリート部材用連結装置10(以下、単に連結装置10という)は、隣り合うコンクリート部材20を連結するために用いられる。各コンクリート部材20は、例えばため池用の底樋管(コンクリート構造体に相当)を構成するものであり、地盤の内部に埋設されている。各コンクリート部材20は、互いに対向する対向面20aを有しており、それら各対向面20aの間に目地が形成されている。
【0017】
図1~
図3に示すように、連結装置10は、各コンクリート部材20にそれぞれ埋設された一対の連結具11と、各連結具11を連結する軸部12とを備える。各連結具11は、本体部15と、一対のアンカー部16とを有する。本実施形態では、各連結具11として同じものが用いられている。
【0018】
各連結具11の本体部15は、各コンクリート部材20の並ぶ方向に並んでおり、互いに隣接して配置されている。本体部15は、例えば金属製のブロック材により形成されている。但し、本体部15は、一対の金属製プレートが組み合わせられて構成されてもよい。また、各連結具11の本体部15には、各本体部15の並ぶ方向に本体部15を貫通する孔部17が形成されている。
【0019】
一対のアンカー部16は、鉄筋により形成されている。各連結具11において、一対のアンカー部16は、基端部が本体部15における孔部17を挟んだ両側にそれぞれ固定され、先端側が各本体部15の境界部とは反対側に延びている。
【0020】
以下の説明では、各コンクリート部材20のうち一方のコンクリート部材20Aに設けられた連結具11の符号にAを付し、他方のコンクリート部材20Bに設けられた連結具11の符号にBを付す。また、連結具11Aを構成する各部の符号にAを付し、連結具11Bを構成する各部の符号にBを付す。なお、連結具11Aが第1連結具に相当し、連結具11Bが第2連結具に相当する。
【0021】
各連結具11A,11Bの孔部17A,17Bには、金属製の軸部12が挿通されている。軸部12の両端側には、その外周面におねじ部が形成されている。軸部12のうち、連結具11Aの孔部17Aから反連結具11B側に突出する部分にはナット18が締結されている。また、軸部12のうち、連結具11Bの孔部17Bから反連結具11A側に突出する部分にはナット19が締結されている。この場合、軸部12を介して各連結具11A,11B(詳しくは各本体部15A,15B)が連結され、ひいては隣り合うコンクリート部材20A,20Bが連結されている。なお、孔部17Aが挿通孔に相当する。
【0022】
コンクリート部材20Aには、ナット18を軸部12に締め付ける際に用いられる作業用空間21が形成されている。また、コンクリート部材20Bには、ナット19を軸部12に締め付ける際に用いられる作業用空間22が形成されている。各作業用空間21,22は、コンクリート部材20A,20Bの側面においてそれぞれ開放されている。各作業用空間21,22においてナット18,19が軸部12に締め付けられた後、各作業用空間21,22にはモルタル25が充填される。モルタル25は、例えば無収縮モルタルからなる。
図1及び
図2では、作業用空間21,22にモルタル25が充填される前の状態を示しており、
図4では、モルタル25が充填された後の状態を示している。
【0023】
図4に示すように、コンクリート部材20Aの作業用空間21には、その一部にモルタル25が充填されていない空洞領域27が形成されている。空洞領域27の周囲には、空洞領域27にモルタル25が流れ込むのを阻止する筒状部材28が設けられている。筒状部材28は有底円筒状に形成され、例えばボイド管からなる。筒状部材28は、軸部12及びナット18を内側に収容した状態で配置されている。作業用空間21にモルタル25が充填される際には、筒状部材28が上記のように配置された状態でモルタル25が充填される。これにより、筒状部材28の内側にはモルタル25が流れ込まず、その結果、筒状部材28の内側に円柱状の空洞領域27が形成される。
【0024】
連結具11Aの本体部15Aには、孔部17Aの延びる方向において互いに反対側を向く一対の端面15a,15bが形成されている。各端面15a,15bのうち、端面15aが連結具11B側(詳しくは本体部15B側)の面であり、端面15bが反連結具11B側の面である。端面15aは、コンクリート部材20Aの対向面20aにおいて露出しており、端面15bは、コンクリート部材20Aの作業用空間21に面している。この場合、端面15bは、軸部12の長手方向(孔部17Aの延びる方向)においてナット18と離間対向している。なお、ナット18は、軸部12の外周側に拡がって設けられ、本体部15(端面15b)と対向する対向部に相当する。
【0025】
ここで、地震や地盤沈下等により地盤の変位が生じた場合には、隣り合うコンクリート部材20A,20B同士が互いに離間する方向に変位することが想定される。その場合、連結装置10には、上記離間する方向の引張荷重が作用する。そのため、その引張荷重により連結装置10が破損することが懸念される。そこで、本連結装置10には、その点を鑑み、連結装置10に作用する引張荷重を吸収する弾性変形部30が設けられている。以下、弾性変形部30の構成について説明する。
【0026】
弾性変形部30は、軸部12のうち、連結具11Aの孔部17Aから反連結具11B側に突出する部分に設けられている。この場合、弾性変形部30は、本体部15Aの端面15bとナット18との間に配置され、それら本体部15Aとナット18との間に挟まれている。弾性変形部30は、複数の弾性ワッシャ31,32と、複数の金属ワッシャ33とを有している。各ワッシャ31~33はいずれも円環板状に形成され、内側に軸部12を挿通した状態で設けられている。この場合、各ワッシャ31~33は、軸部12に沿って並んで配置されている。
【0027】
各ワッシャ31~33は、コンクリート部材20Aの作業用空間21に配置されている。各ワッシャ31~33は、ナット18が軸部12に締結される前に、内側に軸部12を挿通した状態で配置され、その配置状態でナット18が軸部12に締結されるようになっている。ナット18の締結後、筒状部材28が各ワッシャ31~33(ひいては弾性変形部30)を内側に収容した状態で配置され、その配置状態で作業用空間21にモルタル25が充填される。これにより、空洞領域27には弾性変形部30が配置される(
図4参照)。なお、弾性変形部30は、空洞領域27の周面から離間して配置されている。
【0028】
複数のワッシャ31~33には、弾性材料により形成された複数の弾性ワッシャ31,32と、金属材料(硬質材料に相当)により形成された複数の金属ワッシャ33とが含まれている。また、複数の弾性ワッシャ31,32には、複数の第1弾性ワッシャ31と複数の第2弾性ワッシャ32とが含まれている。この場合、弾性ワッシャ31,32が弾性環状部材に相当し、金属ワッシャ33が硬質環状部材に相当する。また、第1弾性ワッシャ31が第1弾性環状部材に相当し、第2弾性ワッシャ32が第2弾性環状部材に相当する。
【0029】
第1弾性ワッシャ31と第2弾性ワッシャ32とは、同じ弾性材料により形成され、例えばクロロプレンゴム(CR)により形成されている。また、第1弾性ワッシャ31の硬度(ショア硬度)は、第2弾性ワッシャ32の硬度よりも大きくなっている。本実施形態では、第1弾性ワッシャ31の硬度が90°とされ、第2弾性ワッシャ32の硬度が60°とされている。また、第1弾性ワッシャ31と第2弾性ワッシャ32とはいずれも同じ大きさからなる。つまり、各弾性ワッシャ31,32は、同じ外径及び内径を有するとともに、同じ厚みを有している。なお、各弾性ワッシャ31,32が複数種類の弾性環状部材に相当する。
【0030】
第1弾性ワッシャ31と第2弾性ワッシャ32とは互いに重ねられて配置されている。それら重ねられた各弾性ワッシャ31,32により弾性積層体35が形成されている。詳しくは、一の第1弾性ワッシャ31と一の第2弾性ワッシャ32とが重ねられることにより弾性積層体35が形成されている。弾性積層体35は、軸部12に沿って複数配置され、本実施形態では3つ配置されている。各弾性積層体35ではいずれも、第1弾性ワッシャ31が軸部12の長手方向における一方側(本実施形態では、ナット18側)に配置され、第2弾性ワッシャ32が他方側(本実施形態では、本体部15A側)に配置されている。つまり、各弾性積層体35ではいずれも、各弾性ワッシャ31,32の並びが同じとなっている。
【0031】
金属ワッシャ33は、例えばステンレス材料により形成されている。金属ワッシャ33は、弾性積層体35と交互に並んで複数(本実施形態では4つ)配置されている。この場合、金属ワッシャ33と弾性積層体35とが、交互に並んで複数ずつ配置されている。また、この場合、弾性積層体35ごとに、弾性積層体35を挟んだ両側に金属ワッシャ33が配置され、それら両側の金属ワッシャ33がそれぞれ弾性積層体35に重ねられている。
【0032】
金属ワッシャ33の内径は、各弾性ワッシャ31,32の内径と同じ大きさとなっている。また、金属ワッシャ33の外径D1は、各弾性ワッシャ31,32の外径D2よりも大きくなっており、換言すると弾性積層体35の外径D2よりも大きくなっている。具体的には、金属ワッシャ33の外径D1は、弾性積層体35の外径D2の1.3倍以上とされている。なお、各金属ワッシャ33のうち、最も連結具11Aの本体部15A寄りに配置され本体部15Aの端面15bに重ねられた金属ワッシャ33aは、他の金属ワッシャ33bよりも外径が大きくなっている。
【0033】
金属ワッシャ33の外径D1についてより詳しく説明すると、弾性積層体35(各弾性ワッシャ31,32)は、後述するように、厚み方向に圧縮変形(弾性変形)することで外周側に拡がる。つまり、弾性ワッシャ31,32は、上記圧縮変形に伴い外径が大きくなる。ここで、弾性ワッシャ31,32は、最も厚み方向に圧縮変形して、それ以上圧縮変形することが不可能な状態となった場合に外径D2が最大となる。この場合における弾性ワッシャ31,32の外径D2を最大外径D2(max)とした場合、金属ワッシャ33の外径D1は、弾性ワッシャ31,32の最大外径D2(max)よりも大きくなっている。
【0034】
続いて、弾性変形部30の作用について説明する。
【0035】
地震や地盤沈下等により地盤変位が生じて隣り合うコンクリート部材20A,20Bが互いに離間する方向に変位した場合、それらコンクリート部材20A,20Bに埋設された各連結具11A,11Bが互いに離間する方向に変位する。この場合、連結装置10には、上記離間する方向の引張荷重が作用する。
【0036】
各連結具11A,11Bが互いに離間する方向に変位すると(換言すると、連結装置10に上記離間する方向の引張荷重が作用すると)、連結具11Aの本体部15Aとナット18との間に挟まれた弾性変形部30の各弾性ワッシャ31,32が上記離間する方向に弾性変形(圧縮変形)する。そして、かかる弾性ワッシャ31,32の弾性変形により、連結装置10に作用する引張荷重が吸収される。これにより、大きな地震が発生することで連結装置10に大きな引張荷重が作用した場合にも、その引張荷重を各弾性ワッシャ31,32により吸収することができる。そのため、連結装置10が破損するのを好適に抑制することができる。
【0037】
また、上記の構成では、複数の弾性ワッシャ31,32により連結装置10に作用する引張荷重を分散させて吸収することができるため、一の弾性ワッシャにより引張荷重を吸収する場合と比べ、各弾性ワッシャ31,32の厚みを小さくすることができる。そのため、各弾性ワッシャ31,32が圧縮変形する際に、各弾性ワッシャ31,32が外周側に拡がる拡がり量を抑えることができる。これにより、連結装置10が大型化するのを抑制することができる。
【0038】
なお、各弾性ワッシャ31,32は、上述したように、空洞領域27に配置されているため、圧縮変形した際に十分に外周側に拡がることが可能となっている。このため、空洞領域27を弾性ワッシャ31,32の拡がりを許容する拡がり許容空間ということもできる。
【0039】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0040】
地震等により地盤変位が生じた際には、隣り合うコンクリート部材20A,20Bが互いの境界部で屈曲するように、互いに離間する方向に変位することが想定される。この場合、それらコンクリート部材20A,20Bに一体で設けられた各連結具11A,11Bは、上記屈曲に伴って変位することになる。その点、本実施形態では、複数の弾性ワッシャ31,32が重ねて配置されることにより比較的厚みの大きい弾性積層体35が形成されている。この場合、コンクリート部材20A,20B同士の屈曲に伴い各連結具11A,11Bが変位した際に、それに追従させて弾性積層体35(各弾性ワッシャ31,32)を圧縮変形させ易く、その結果、引張荷重を好適に吸収することができる。
【0041】
弾性積層体35を挟んだ両側にそれぞれ金属ワッシャ33が配置され、それら各金属ワッシャ33がそれぞれ弾性積層体35に重ねられている。この場合、弾性積層体35は、各金属ワッシャ33の間で挟まれて圧縮変形(弾性変形)することになる。また、各金属ワッシャ33の外径D1は弾性積層体35の外径D2よりも大きいため、この場合、弾性積層体35の全体を圧縮変形させることが可能となる。これにより、弾性積層体35による荷重吸収効果を好適に発揮させることができる。
【0042】
金属ワッシャ33と弾性積層体35とが交互に並んで複数ずつ配置されている。この場合、連結装置10に作用することが想定される引張荷重の大きさに応じて、弾性積層体35の個数を適宜調整することが可能となる。また、各弾性積層体35それぞれにおいて、弾性積層体35による荷重吸収効果を好適に発揮させるという上述の効果を得ることが可能となる。
【0043】
弾性変形部30は、互いに異なる硬度を有する第1弾性ワッシャ31及び第2弾性ワッシャ32を有している。この場合、各弾性ワッシャ31,32は、互いの硬度が異なることにより、弾性変形のし易さが互いに相違している。かかる構成によれば、連結装置10に作用する引張荷重が小さい場合には、弾性変形し易い第2弾性ワッシャ32が圧縮変形することで引張荷重を吸収することができる。また、連結装置10に作用する引張荷重が大きい場合には、弾性変形しにくい第1弾性ワッシャ31が圧縮変形することで引張荷重を吸収することができる。これにより、連結装置10に作用する引張荷重の大きさにかかわらず、好適に引張荷重を吸収することができる。
【0044】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0045】
(1)上記実施形態では、弾性積層体35を形成する第1弾性ワッシャ31及び第2弾性ワッシャ32の硬度を互いに異ならせたが、これを変更して、各弾性ワッシャ31,32の材質を異ならせてもよい。この場合にも、各弾性ワッシャ31,32の材質を異ならせることで、各弾性ワッシャ31,32の弾性変形のし易さを異ならせることが可能である。そのため、連結装置10に作用する引張荷重の大きさにかかわらず、好適に引張荷重を吸収することが可能となる。
【0046】
例えば、第1弾性ワッシャ31をクロロプレンゴム(CR)により形成し、第2弾性ワッシャ32をウレタンゴムにより形成することが考えられる。ウレタンゴムは圧縮復元性が高い材料である。ここで、地盤の変位に伴い各コンクリート部材20A,20Bが互いに離間して各弾性ワッシャ31,32が圧縮変形した場合、その後、各コンクリート部材20A,20Bは再び接近して元の位置関係に戻ることになる。この際、ウレタンゴムにより形成された第2弾性ワッシャ32については速やかに元の圧縮前の状態に復帰させることが可能となる。
【0047】
なお、各弾性ワッシャ31,32を同じ材料でかつ同じ硬度で形成してもよい。
【0048】
(2)上記実施形態では、弾性積層体35を2つの弾性ワッシャ31,32を重ねることにより形成したが、弾性積層体を3つ以上の弾性ワッシャを重ねることにより形成してもよい。
【0049】
(3)上記実施形態では、弾性積層体35を3つ設けたが、弾性積層体35を1つだけ設けたり、2つ設けたり、4つ以上設けたりしてもよい。要するに、連結装置10に作用する引張荷重の大きさに応じて、弾性積層体35の個数を適宜設定すればよい。
【0050】
(4)上記実施形態では、弾性積層体35(2つの弾性ワッシャ31,32)と金属ワッシャ33とを交互に並べて配置したが、これを変更して、弾性ワッシャと金属ワッシャとを交互に並べて複数ずつ配置してもよい。
【0051】
(5)上記実施形態において、軸部12に代えて、ボルトを用いてもよい。ボルトは、軸部と、軸部の一端部に設けられた頭部とを有する。この場合、対向部としてのナット18に代えて、ボルトの頭部(対向部に相当)が設けられることになる。そして、ボルトの頭部と連結具11Aの本体部15Aとの間に弾性変形部30が挟まれて配置されることになる。
【0052】
(6)上記(5)で説明したボルトを用いる構成において、各連結具11A,11Bのうち、コンクリート部材20B側の連結具11B(第2連結具に相当)を、ボルトの軸部をねじ込み可能なねじ孔を有するジョイント部材(第2連結具に相当)に変更してもよい。この場合、ボルトの軸部がジョイント部材のねじ孔にねじ込まれる。
【0053】
(7)上記実施形態では、各連結具11A,11Bのうち、連結具11A側に弾性変形部30を設けたが、これに加えて、連結具11B側に弾性変形部30を設けてもよい。この場合、弾性変形部30は、軸部12のうち連結具11Bの孔部17Bから反連結具11A側に突出する部分に設けられる。
【0054】
(8)上記実施形態では、本発明の連結装置を、底樋管を構成するコンクリート部材20同士を連結する連結装置10として具体化したが、本発明の連結装置は、必ずしも底樋管用のコンクリート部材に適用する必要はなく、他の用途で用いられるコンクリート部材同士を連結する場合にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0055】
10…コンクリート部材用連結装置、11A…第1連結具としての連結具、11B…第2連結具としての連結具、12…軸部、17A…挿通孔としての孔部、30…弾性変形部、31…弾性環状部材としての弾性ワッシャ、32…弾性環状部材としての弾性ワッシャ、33…硬質環状部材としての金属ワッシャ、35…弾性積層体。
【要約】
【課題】大型化するのを抑制しながら、地盤変位が生じた際に破損するのを好適に抑制できるコンクリート部材の連結装置及びコンクリート構造体を提供する。
【解決手段】コンクリート部材用連結装置10は、隣り合うコンクリート部材20A,20Bのうち一方のコンクリート部材20Aに埋設された連結具11Aと、他方のコンクリート部材20Bに埋設された連結具11Bと、各連結具11A,11Bを連結する軸部12とを備える。軸部12は、連結具11Aに形成された孔部17Aに挿通されている。軸部12のうち孔部17Aから反連結具11B側に突出する部分には、隣り合うコンクリート部材20A,20Bが互いに離間する方向の引張荷重に対して弾性変形する弾性変形部30が設けられている。弾性変形部30は、弾性材料により円環状に形成され、内側に軸部12を挿通した状態で軸部12に沿って並んで配置される複数の弾性ワッシャ31,32を有する。
【選択図】
図2