(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】計量装置及びその計量方法
(51)【国際特許分類】
G01G 23/00 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
G01G23/00 D
(21)【出願番号】P 2023103619
(22)【出願日】2023-06-23
【審査請求日】2023-06-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522193547
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】館野 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】長根 吉一
(72)【発明者】
【氏名】井原 健
(72)【発明者】
【氏名】野村 麻衣
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02375194(EP,A1)
【文献】特開2005-265448(JP,A)
【文献】特開2009-106193(JP,A)
【文献】特開平08-114489(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0306924(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0119028(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 1/00-23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量皿に接続された重量センサと、
前記重量センサの仮想水平面にxとy、前記仮想水平面に直交する方向にzを設定して、x,y,zの三軸の加速度変化を検出する、三軸加速度センサと、
温度センサと、
前記重量センサが水平かつ基準温度下の基準位置に設置された際の前記三軸加速度センサの前記三軸の基準出力と、前記重量センサが基準温度以外の温度下に設置された場合の前記三軸加速度センサの前記三軸の温度出力と、を記憶する記憶部と、
演算処理部と、を計量装置に備え、
前記演算処理部は、
前記温度センサで検出された、前記計量装置の設置位置における現在温度に対応して前記三軸加速度センサに発生する前記温度出力に基づき、前記設置位置における現在出力を補正出力に補正し、
前記補正出力を前記基準出力と比較し、前記三軸加速度センサのxおよび/またはyに発生した出力変化を前記計量装置に発生した傾斜として検出し、ユーザーに通知
し、
前記補正出力を前記基準出力と比較し、前記三軸加速度センサのzに発生した出力変化を基準位置からの設置位置の変化に伴って生じる重力加速度の変化として検出し、ユーザーに通知することを特徴とする、計量装置。
【請求項2】
前記演算処理部は、三軸加速度センサのxおよび/またはyの出力変化Xh、Yhが、式(4)及び(5)において、前記計量装置を水平に設置出来たと判断出来る、0に近似する所定の閾値範囲内から外れた数値となった場合、前記計量装置に傾斜が発生しているものとしてユーザーに通知することを特徴とする、請求項1に記載の計量装置。
Xh=Xout(θ)-Xtout(t)-Xout(0) 式(4)
Yh=Yout(θ)-Ytout(t)-Yout(0) 式(5)
但し、
Xout(θ):角度θで三軸加速度センサが出力するx成分
Yout(θ):角度θで三軸加速度センサが出力するy成分
Xtout(t):温度t時の三軸加速度センサが出力するx成分の補正分
Ytout(t):温度t時の三軸加速度センサが出力するy成分の補正分
Xout(0):三軸加速度センサの基準出力のx成分
Yout(0):三軸加速度センサが基準出力のy成分
【請求項3】
前記計量装置は、電磁石を有する電磁式の計量装置であって、
前記温度センサが、前記電磁石の温度検出用の温度センサであることを特徴とする、請求項1または2に記載の計量装置。
【請求項4】
前記演算処理部は、
三軸加速度センサのzの出力変化Zhが、式(6)において、計量装置を基準位置に設置しているものと判断出来る、0に近似する所定の閾値内の数値から外れた数値となった場合、基準位置からの重量加速度の変化が発生しているものとしてユーザーに通知することを特徴とする、請求項
1または2に記載の計量装置。
但し、
Zh=Zout(p)-Ztout(t)-Zout(0) 式(6)
但し、
Zout(p):計量装置の設置位置で三軸加速度センサが出力するz成分
Zout(0):三軸加速度センサの基準出力のz成分
Ztout(t):温度t時の三軸加速度センサが出力するz成分の補正分
【請求項5】
計量皿に接続された重量センサと、前記重量センサの仮想水平面にxとy、前記仮想水平面に直交する方向にzを設定して、x,y,zの三軸の加速度変化を検出する、三軸加速度センサと、温度センサと、前記重量センサが水平かつ基準温度下に設置された際の前記三軸加速度センサの前記三軸の基準出力と、前記重量センサが基準温度以外の環境温度下に設置された場合の前記三軸加速度センサの前記三軸の温度出力と、を記憶する記憶部と、演算処理部と、を有する計量装置を用いて、
前記演算処理部は、
計量装置の前記三軸加速度センサの前記三軸のx,yの現在出力を取得
し、更に前記三軸加速度センサの前記三軸のzの現在出力を取得する現在出力取得ステップと、
前記温度センサを介して計量装置の設置位置における現在温度を検出する現在温度検出ステップと、
検出された現在温度に対応した前記三軸加速度センサの前記三軸のx,yの温度出力を前記記憶部から取得
し、更に検出された現在温度に対応した前記三軸加速度センサの前記三軸のzの温度出力を前記記憶部から取得する温度出力取得ステップと、
前記温度出力取得ステップで、検出された現在温度に対応した前記三軸加速度センサの前記三軸のzの温度出力を前記記憶部から更に取得し、
前記温度出力から前記現在出力を補正出力に補正する補正出力生成ステップと、
前記補正出力を前記基準出力と比較し、前記三軸加速度センサのxおよび/またはyの出力変化を前記計量装置の傾斜として検出する傾斜検出ステップと、
前記計量装置の傾斜検出時にユーザーに通知する傾斜通知ステップと、
前記補正出力を前記基準出力と比較し、前記三軸加速度センサのzの出力変化を前記計量装置の設置位置における重力加速度の変化として検出する重力加速度変化検出ステップと、
前記計量装置の重力加速度変化の検出時にユーザーに通知する重力加速度変化通知ステップと、
を実行することを特徴とする計量方法。
【請求項6】
前記演算処理部は、
前記傾斜検出ステップで、三軸加速度センサのxおよび/またはyの出力変化Xh、Yhを式(4)及び(5)から算出し、Xhおよび/またはYhが、計量装置を水平に設置出来たと判断出来る、0に近似する所定の閾値範囲内から外れた数値となったことを前記計量装置の傾斜として検出することを特徴とする、請求項5に記載の計量方法。
Xh=Xout(θ)-Xtout(t)-Xout(0) 式(4)
Yh=Yout(θ)-Ytout(t)-Yout(0) 式(5)
但し、
Xout(θ):角度θで三軸加速度センサが出力するx成分
Yout(θ):角度θで三軸加速度センサが出力するy成分
Xtout(t):温度t時の三軸加速度センサが出力するx成分の補正分
Ytout(t):温度t時の三軸加速度センサが出力するy成分の補正分
Xout(0):三軸加速度センサの基準出力のx成分
Yout(0):三軸加速度センサが基準出力のy成分
【請求項7】
前記演算処理部は、
前記重力加速度変化検出ステップで、三軸加速度センサのzの出力変化Zhを式(6)から算出し、Zhが、計量装置を基準位置に設置しているものと判断出来る、0に近似する所定の閾値内の数値から外れた数値となったことを基準位置からの重量加速度の変化として検出することを特徴とする、請求項5または6に記載の計量方法。
Zh=Zout(p)-Ztout(t)-Zout(0) 式(6)
但し、
Zout(p):計量装置の設置位置で三軸加速度センサが出力するz成分
Zout(0):三軸加速度センサの基準出力のz成分
Ztout(t):温度t時の三軸加速度センサが出力するz成分の補正分
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境温度にかかわらず水平調整の必要性をユーザーに正確に通知可能な計量装置及びその計量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、
図1に示すような電子式の計量装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の計量装置を設置場所に設置する場合、計量装置を水平に設置しないと正確な計量値を得られないため、ユーザーは、計量装置の水平を保つように姿勢調整(以降は水平調整という)をする必要があり、ユーザー側で計量装置の設置や設置場所の変更時に水平調整を忘れる場合があるため、計量装置は、水平調整の必要性をユーザー側に警告する手段を有することが望ましい。
【0005】
一方で、計量装置の傾き検出機構は、設置場所の環境温度に基づいて検出結果に誤差を生じる場合がある。このような傾き検出機構における検出誤差は、水平調整の必要性を正確にユーザーに通知できないおそれがある点で問題がある。
【0006】
上記課題に鑑みて、本願発明は、設置場所の環境温度による影響を受けること無く、計量装置の水平調整の必要性を正確に検出してユーザーに通知可能な計量装置及びその計量方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
計量皿に接続された重量センサと、前記重量センサの仮想水平面にxとy、前記仮想水平面に直交する方向にzを設定して、x,y,zの三軸の加速度変化を検出する、三軸加速度センサと、温度センサと、前記重量センサが水平かつ基準温度下の基準位置に設置された際の前記三軸加速度センサの前記三軸の基準出力と、前記重量センサが基準温度以外の温度下に設置された場合の前記三軸加速度センサの前記三軸の温度出力と、を記憶する記憶部と、演算処理部と、を計量装置に備え、前記演算処理部は、前記温度センサで検出された、前記計量装置の設置位置における現在温度に対応して前記三軸加速度センサに発生する前記温度出力に基づき、前記設置位置における現在出力を補正出力に補正し、前記補正出力を前記基準出力と比較し、前記三軸加速度センサのxおよび/またはyに発生した出力変化を前記計量装置に発生した傾斜として検出し、ユーザーに通知することとした。
【0008】
(作用)計量装置が設置されると、演算処理部は、温度センサによって検出された現在温度から、記憶部を参照し、温度に基づいて三軸加速度センサに発生する温度出力を特定する。また、演算処理部は、計量装置の設置位置において三軸加速度センサに発生した現在出力および前記温度出力から、温度の影響を排除した現在出力である補正出力を算出する。演算処理部は、算出した補正出力を、基準温度下の基準位置で計量装置を水平設置した際に三軸加速度センサに発生する基準出力と比較し、補正出力のxおよび/またはyの値が基準出力から変化していた場合に計量装置の傾斜を検出してユーザーに通知する。
【0009】
また、前記演算処理部は、三軸加速度センサのxおよび/またはyの出力変化Xh、Yhが、式(4)及び(5)において、計量装置を水平に設置出来たと判断出来る、0に近似する所定の閾値範囲内から外れた数値となった場合、前記計量装置に傾斜が発生しているものとしてユーザーに通知することが望ましい。
【0010】
Xh=Xout(θ)-Xtout(t)-Xout(0) 式(4)
Yh=Yout(θ)-Ytout(t)-Yout(0) 式(5)
但し、
Xout(θ):角度θで三軸加速度センサが出力するx成分
Yout(θ):角度θで三軸加速度センサが出力するy成分
Xtout(t):温度t時の三軸加速度センサが出力するx成分の補正分
Ytout(t):温度t時の三軸加速度センサが出力するy成分の補正分
Xout(0):三軸加速度センサの基準出力のx成分
Yout(0):三軸加速度センサが基準出力のy成分
とする。
【0011】
(作用)計量装置の演算処理部は、式(4)および(5)からxおよび/またはyの出力変化の有無を算出し、計量装置の傾斜を検出する。
【0012】
また、前記計量装置が電磁石を有する電磁式の計量装置であって、前記温度センサは、前記電磁石の温度検出用の温度センサであることが望ましい。
【0013】
(作用)電磁式の計量装置は、電磁石の温度検出用の温度センサを有するため、電磁石用の温度センサによって計量装置の測定場所の環境温度が検出される。
【0014】
また、前記演算処理部は、前記補正出力を前記基準出力と比較し、前記三軸加速度センサのzに発生した出力変化を基準位置からの設置位置の変化に伴って生じる重力加速度の変化として検出し、ユーザーに通知することが望ましい。
【0015】
計量装置は、設置する場所の標高の変化(万有引力の変化に伴う重力加速度の変化)に基づいて測定される計量値に変化を生じるため、天秤の設置位置(現地)で分銅を用いて現地の重力加速度の変化がない計量結果を得られるようにユーザーが調整する必要がある。
【0016】
(作用)設置場所の変更に伴って重力加速度に変化が生じた場合、本願の計量装置の演算処理部は、三軸加速度センサの温度の影響を排除した現在出力である補正出力のzを算出する。更に演算処理部は、補正出力を、基準温度下の基準位置で計量装置を水平設置した際に三軸加速度センサのzに発生する基準出力と比較し、補正出力zの値が基準出力のzの値から変化していた場合、当該変化を基準位置からの設置位置の変化に伴って生じる重力加速度の変化として検出し、ユーザーに通知し、自己補正可能な天秤の場合、内蔵分銅などで調整を行う。
【0017】
また、前記演算処理部は、三軸加速度センサのzの出力変化Zhが、式(6)において、計量装置を基準位置に設置しているものと判断出来る、0に近似する所定の閾値内の数値から外れた数値となった場合、基準位置からの重量加速度の変化が発生しているものとしてユーザーに通知することが望ましい。但し、
Zh=Zout(p)-Ztout(t)-Zout(0) 式(6)
但し、
Zout(p):計量装置の設置位置で三軸加速度センサが出力するz成分
Zout(0):三軸加速度センサの基準出力のz成分
Ztout(t):温度t時の三軸加速度センサが出力するz成分の補正分 とする。
【0018】
(作用)計量装置の演算処理部は、式(6)から三軸加速度センサのzの出力変化の有無を算出し、計量装置に発生した基準位置からの重力加速度の変化を検出する。
【0019】
計量皿に接続された重量センサと、前記重量センサの仮想水平面にxとy、前記仮想水平面に直交する方向にzを設定して、x,y,zの三軸の加速度変化を検出する、三軸加速度センサと、温度センサと、前記重量センサが水平かつ基準温度下に設置された際の前記三軸加速度センサの前記三軸の基準出力と、前記重量センサが基準温度以外の環境温度下に設置された場合の前記三軸加速度センサの前記三軸の温度出力と、を記憶する記憶部と、演算処理部と、を有する計量装置を用いた計量方法において、前記演算処理部は、計量装置の前記三軸加速度センサの前記三軸のx,yの現在出力を取得する現在出力取得ステップと、前記温度センサを介して計量装置の設置位置における現在温度を検出する現在温度検出ステップと、検出された現在温度に対応した前記三軸加速度センサの前記三軸のx,yの温度出力を前記記憶部から取得する温度出力取得ステップと、前記温度出力から前記現在出力を補正出力に補正する補正出力生成ステップと、前記補正出力を前記基準出力と比較し、前記三軸加速度センサのxおよび/またはyの出力変化を前記計量装置の傾斜として検出する傾斜検出ステップと、前記計量装置の傾斜検出時にユーザーに通知する傾斜通知ステップと、を実行することが望ましい。
【0020】
(作用)設置位置(測定現場)に設置された計量装置の演算処理部は、現在出力取得ステップを実行することで三軸加速度センサの三軸のx,yの現在出力を取得し、現在温度検出ステップを実行することで設置位置における現在温度を取得し、温度出力取得ステップ温度を実行することにより、現在温度に基づいて三軸加速度センサに生じる三軸のx,yの温度出力を記憶部から取得し、補正出力生成ステップを実行することで現在出力を温度出力の影響のない補正出力に補正し、傾斜検出ステップの実行により、補正出力を基準出力と比較して三軸加速度センサのxおよび/またはyに生じた出力変化を計量装置の傾斜として検出し、傾斜通知ステップの実行により、検出された計量装置の傾斜をユーザーに通知する。
【0021】
また、前記演算処理部は、前記傾斜検出ステップで、三軸加速度センサのxおよび/またはyの出力変化Xh、Yhを式(4)(5)から算出し、Xhおよび/またはYhが、計量装置を水平に設置出来たと判断出来る、0に近似する所定の閾値範囲内から外れた数値となったことを前記計量装置の傾斜として検出することが望ましい。
【0022】
Xh=Xout(θ)-Xtout(t)-Xout(0) 式(4)
Yh=Yout(θ)-Ytout(t)-Yout(0) 式(5)
但し、
Xout(θ):角度θで三軸加速度センサが出力するx成分
Yout(θ):角度θで三軸加速度センサが出力するy成分
Xtout(t):温度t時の三軸加速度センサが出力するx成分の補正分
Ytout(t):温度t時の三軸加速度センサが出力するy成分の補正分
Xout(0):三軸加速度センサの基準出力のx成分
Yout(0):三軸加速度センサが基準出力のy成分
とする。
【0023】
(作用)計量装置の演算処理部が、傾斜検出ステップにおいて、式(4)(5)からxおよび/またはyの出力変化の有無を算出し、計量装置の傾斜を検出する。
【0024】
また、前記演算処理部は、前記現在出力取得ステップで、前記三軸加速度センサの前記三軸のzの現在出力を更に取得し、前記温度出力取得ステップで、検出された現在温度に対応した前記三軸加速度センサの前記三軸のzの温度出力を前記記憶部から更に取得し、前記補正出力を前記基準出力と比較し、前記三軸加速度センサのzの出力変化を前記計量装置の設置位置における重力加速度の変化として検出する重力加速度変化検出ステップを前記補正出力生成ステップの後に実行し、前記計量装置の重力加速度変化の検出時にユーザーに通知する重力加速度変化通知ステップと、を実行することが望ましい。
【0025】
(作用)設置位置(測定現場)に設置された計量装置の演算処理部は、設置位置において三軸加速度センサに生じるzの現在出力から温度出力の影響を除いた補正出力と、基準位置において三軸加速度センサに生じるzの基準出力から設置位置における重力加速度の変化を検出し、ユーザーに通知する。
【0026】
また、前記演算処理部は、前記重力加速度変化検出ステップで、三軸加速度センサのzの出力変化zhを式(6)から算出し、zhが、計量装置を基準位置に設置しているものと判断出来る、0に近似する所定の閾値内の数値から外れた数値となったことを基準位置からの重量加速度の変化として検出することが望ましい。
【0027】
Zh=Zout(p)-Ztout(t)-Zout(0) 式(6)
但し、
Zout(p):計量装置の設置位置で三軸加速度センサが出力するz成分
Zout(0):三軸加速度センサの基準出力のz成分
Ztout(t):温度t時の三軸加速度センサが出力するz成分の補正分
とする。
【0028】
(作用)計量装置の演算処理部が、重力加速度変化検出ステップにおいて、式(6)からzの出力変化の有無を算出し、計量装置に生じる基準位置からの重力加速度の変化を検出する。
【発明の効果】
【0029】
本願の計量装置及びその計量方法によれば、三軸加速度センサが、環境温度に基づく出力の影響を排除された状態で計量装置の傾斜を検出するため、測定場所の環境温度に関わらず、水平調整の必要性をユーザーに正確に通知することが出来る。
【0030】
また、本願の計量装置及び計量方法によれば、電磁式の計量装置は、電磁石の温度検出用の温度センサを有するため、電磁石の温度検出用の温度センサを使って計量装置の測定場所の環境温度も検出すれば、新たな温度センサを設ける必要が無く、温度センサの追加コストを発生すること無く、温度による悪影響を排除した上で水平調整の必要性をユーザーに正確に通知することが出来る。
【0031】
また、本願の計量装置及びその計量方法によれば、三軸加速度センサが、環境温度に基づく出力の影響を排除された状態で、基準位置からの設置位置の変化に伴って計量装置に発生する重力加速度の変化を検出し、ユーザーに通知するため、測定場所の環境温度に関わらず、重力加速度の変化がない計量結果を得るための内蔵分銅を用いた調整の必要性をユーザーに正確に警告することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態にかかる計量装置の外観を示す斜視図である。
【
図3】本発明の計量装置の全体構成に係るブロック図である。
【
図4】本発明の計量装置を利用した計量方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明の好適な実施形態を
図1から
図3により説明する。
【0034】
図1は、本発明の計量方法を実施する計量装置1の外観を示す斜視図であり、
図2は、計量装置1の平面図である。計量装置1は、電磁式の計量装置であって、操作表示部2と本体部3とこれらを連結させる連結部8によって構成される。
【0035】
図1及び
図2に示すように操作表示部2は、液晶画面や有機EL画面などから構成される表示部4と、複数の操作ボタン5を有する。また、本体部3は、本体ケース6と、計量皿7と、水平器9を有する。表示部4は、計量皿7に搭載した計量対象の計量値や計量結果などを表示し、計量装置複数の操作ボタン5は、それぞれの役割に基づき、表示部4の表示内容の変更や、計量装置1の計量モードの変更、計量値のリセット等、計量装置1の設定変更に利用される。本体ケース6の内側には、後述する計量機構13等が収納される。計量皿7は、計量機構13に設けられ、計量対象物を搭載される。水平器9は、図示しない容器の内側に1つの気泡9cを形成された状態の液体9bを充填され、透明または半透明の上面カバー9aによって上端開口部を閉塞される。気泡9cは、計量装置1が水平に設置されている場合に水平器9の中心に位置する。水平器9の内側には、点灯時に上面カバー9aを光らせるためのLED10が設けられる。
【0036】
尚、
図2及び
図3に示す表示部4及びLED10のうち少なくとも一方は、設置した計量装置1が傾斜していることを警告表示する警告装置として機能し、傾斜した計量装置1が水平状態に設置し直されると警告表示を停止する。
【0037】
次に、
図1から
図3により、本発明の計量装置1の詳細な全体構成を説明する。操作表示部2は、外部に露出するように設置された表示部4及び操作ボタン5の他、内側に演算処理部11と記憶部12を有する。演算処理部11は、CPU等の演算制御装置によって構成される。表示部4、操作ボタン5及び記憶部12は、それぞれ演算処理部11に接続されて演算処理部11によって制御される。
【0038】
また、
図3に示す通り、本体部3は、水平器9と、内側に計量機構13を有する。計量機構13は、電磁式の計量機構であって、重量センサ14a、ロバーバル機構14b、加除ユニット15a、内蔵分銅15b、分銅受け皿15c、電磁石16、温度センサ17、A/D変換器18及び三軸加速度センサ28を有する。
【0039】
図3に示すように計量皿7は、ロバーバル機構14bに設けられ、ロバーバル機構14bは、重量センサ14aに接続される。ロバーバル機構14bは、計量皿7が受けた計量対象の荷重を重量センサ14aに伝達する機構である。重量センサ14aには、分銅受け皿15cを介して加除ユニット15aが接続される。加除ユニット15aは、内蔵分銅15bを分銅受け皿15cに搭載し、または分銅受け皿15cから除去することを自動的に切り換え可能なユニットであり、重量センサ14aは、分銅受け皿15cに搭載された際の内蔵分銅15bの荷重を伝達される。電磁式の計量機構13に用いられる電磁石16は、重量センサ14aの一部であり、温度センサ17によって温度を検出される。重量センサ14a、加除ユニット15a、温度センサ17は、いずれもA/D変換器を介して演算処理部11に接続され、演算処理部11の制御を受ける。
【0040】
図3に示す三軸加速度センサ28は、設置方向、設置する高さ及び設置場所の環境温度の変化に伴って電圧変化を発生させるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサなどの制静電容量式の加速度センサから構成され、演算処理部11に接続される。計量装置1に固定された三軸加速度センサ28は、計量装置1を基準位置から測定現場に設置した際に生じる電圧値の変化から、x,y,zの三軸の重力加速度と傾斜角等の出力値を検出する。
【0041】
また、
図3に示す通り、操作表示部2は、内側に演算処理部11及び記憶部12を有する。演算処理部11は、CPU等の演算処理装置等であって、現在出力取得部19,現在温度検出部20、温度出力取得部21、補正出力生成部22、傾斜検出部23、通知発生部24,通知終了部25、重力加速度変化検出部26
を有する。表示部4及び操作ボタン5は、それぞれ演算処理部11に接続され、表示部4は、演算処理部11によって表示内容と、その表示または非表示を制御される。
【0042】
記憶部12には、所定の基準温度下の基準位置(例えば、基準となる環境温度20℃、所定の緯度、経度、標高)に計量装置1を水平に設置した場合における、内蔵する三軸加速度センサ28のx,yの角度の出力値であるXout(0),Yout(0)と、zの出力値であるZout(0)が基準出力として予め記憶される。
【0043】
記憶部12には、環境温度に伴って三軸加速度センサ28に発生するx,y,zの温度出力であるXtout(t)、Ytout(t)、Ztout(t)があらかじめ記憶される。温度出力は、三軸加速度センサ28について、基準となる環境温度から温度が変化した毎に三軸加速度センサ28に生じるx,y,zの出力値(温度出力)であって、予め計測されたものである。温度出力は、例えば、基準位置において、基準となる環境温度を20℃とした場合、20℃から0.1℃ずつ所定の範囲内(-20℃~50℃等)で温度を増加させ、または20℃から減少させた状況で計測され、予め記憶部12に記憶される。尚、基準となる環境温度と、増減させる温度の数値は、上記に限られない。
【0044】
次に本実施例の計量装置の傾斜検出方法を説明する。計量装置1が測定現場に設置されると、計量装置1の演算処理部11は、現在出力取得部19によって現在出力取得ステップS1を実行し、測定現場で計測された三軸加速度センサ28のx,yの角度に関する現在出力:Xout(θ),Yout(θ)と、三軸加速度センサ28のzに関する現在出力:Zout(p)を取得して、記憶部12に記憶する。
【0045】
次に、演算処理部11は、現在温度検出部20によって現在温度検出ステップS2を実行し、電磁石16の温度センサ17によって検出された温度を測定現場の現在温度として取得する。更に演算処理部11は、温度出力取得部21によって温度出力取得ステップS3を実行し、記憶部12を参照し、検出された現在温度tに対応する温度出力:Xtout(t)、Ytout(t)、Ztout(t)を取得する。
【0046】
次に演算処理部11は、補正出力生成部22によって補正出力生成ステップS4を実行し、現在出力から温度の影響を除外した補正出力を算出する。具体的には、取得した温度出力と、記憶部12に記憶された、三軸加速度センサのx,yの現在出力から、以下の式(1)~(3)により、補正出力:Xam(θ)、Yam(θ)、Zam(p)を生成する。補正出力は、現在出力から温度出力による影響を取りのぞいた測定現場における三軸加速度センサ28の角度の出力である。
【0047】
Xam(θ)=Xout(θ)-Xtout(t) 式(1)
Yam(θ)=Yout(θ)-Ytout(t) 式(2)
Zam(p)=Zout(p)-Ztout(t) 式(3)
次に演算処理部11は、傾斜検出部23によって傾斜検出ステップS5,S6を実行し、取得した補正出力と基準出力から、式(1)および式(2)により前記三軸加速度センサ28のxおよび/またはyに発生した出力変化Xh,Yhを算出(符号S5)し、Xhおよび/またはYhが、計量装置1を水平に設置出来たと判断出来る0に近似する所定の閾値内の数値から外れた数値となった場合、前記計量装置が傾斜して設置されているものとして検出する(符号S6)。
【0048】
Xh=Xam(θ)-Xout(0)=Xout(θ)-Xtout(t)-Xout(0) 式(4)
Yh=Yam(θ)-Yout(0)=Yout(θ)-Ytout(t)-Yout(0) 式(5)
そして、演算処理部11は、Xh,Yhから傾斜を検出した場合、傾斜通知ステップS7を実行し、計量装置が傾斜して設置されていること、即ち、計量装置を水平に設置し直すこと(水平調整)が必要であることをユーザーに通知する。具体的には、演算処理部11は、通知発生部24によって計量装置の表示部4の表示制御または、LED10を点灯制御し、水平調整をユーザーに求める表示である「TILT」の文字等を表示部4に表示させ、または、LED10を通知表示として点灯状態に維持する。尚、通知表示は、表示部4およびLED10のうちいずれか一方を行えばよく、計量装置の傾斜設置時にのみ表示される構成であれば、表示部4またはLED10に限られない。ユーザーは、警告表示の点灯によって計量装置1の水平調整の必要性を認識し、傾斜した計量装置1を水平に設置し直す作業を行う。
【0049】
ユーザーにより計量装置1の水平調整が行われ、式(1)および(2)の算出結果であるXhおよび/またはYhが、計量装置1を水平に設置出来たと判断出来る0に近似する所定の閾値内の数値となった場合、演算処理部11は、計量装置1が水平に設置し直されたと判定し、傾斜通知終了ステップS8を実行する。その際、表示部4は、演算処理部11の通知終了部25による制御に基づいて「TILT」の文字等の表示を終了させる制御を行い、LED10は、消灯する。ユーザーは、通知表示の終了により、計量装置が水平状態に正しく設置されたことと、水平調整を終了して良いことを認識することが出来る。
【0050】
次に演算処理部11は、重力加速度変化検出部26によって重力加速度変化検出ステップS9、S10を実行し、取得した補正出力と基準出力から、式(6)により前記三軸加速度センサ28のzに発生した出力変化Zhを算出し(符号S9)、Zhが、計量装置1を基準位置に設置していると判断出来る0に近似する所定の閾値内の数値から外れた数値となった場合、演算処理部11は、計量装置1を設置した位置(測定現場、現地)の緯度、経度および標高が、所定の基準位置のものと異なるために重力加速度が基準位置から変化したものとして検出する(符号S10)。
【0051】
Zh=Zam(θ)-Zout(0)=Zout(θ)-Ztout(t)-out(0) 式(6)
そして演算処理部11は、測定現場における重力加速度の変化を検出した場合、重力加速度変化通知ステップS11を実行し、計量装置を設置した測定現場における重力加速度が基準位置の重力加速度から変化していること、即ち、内蔵分銅を利用した重力加速度の調整が計量上必要であることをユーザーに通知する。具体的には、演算処理部11は、通知発生部24によって計量装置の表示部4の表示制御または、LED10の点灯制御を行い、内蔵分銅を用いた調整をユーザーに求める表示である「CAL」の文字等を表示部4に表示させ、または、LED10を通知表示として、水平調整の通知と異なる点灯態様、例えば、水平調整通知が常時点灯なら、点滅表示などに維持する。
【0052】
尚、通知表示は、表示部4およびLED10のうちいずれか一方を行えばよく、計量装置の傾斜設置時にのみ表示される構成であれば、表示部4またはLED10に限られない。または、表示部4およびLED10のうち一方を要水平調整の通知とし、もう一方を要重力加速度調整の通知としても良い。ユーザーは、通知表示の点灯態様によって計量装置1の重力加速度調整の必要性を認識し、加除ユニット15aの内蔵分銅15bを用いた重力加速度の調整を行う。
【0053】
そしてユーザーにより計量装置1の重力加速度調整が行われ、式(6)の算出結果であるZhが、計量装置1を基準位置に設置していると判断出来る、0に近似する所定の閾値内の数値となった場合、演算処理部11は、基準位置からの重力加速度変化の無い状態で計量が行えるようになったと判定し、重力加速度変化通知終了ステップS12を実行する。その際、表示部4は、演算処理部11の通知終了部25の制御に基づいて「CAL」の文字等の表示を終了させる制御を行い、LED10は、消灯する。ユーザーは、重力加速度変化の通知表示の終了により、計量装置における重力加速度調整を終了して良いことを認識することが出来る。
【符号の説明】
【0054】
1 計量装置
7 計量皿
11 演算処理部
12 記憶部
14a 重量センサ
17 温度センサ
28 三軸加速度センサ
Xout(0),Yout(0)Zout(0) 基準出力
Xtout(t)、Ytout(t)、Ztout(t) 温度出力
Xam(θ)、Yam(θ)、Zam(p) 補正出力
【要約】
【課題】環境温度にかかわらず水平調整の必要性を正確に通知する計量装置及びびその計量方法の提供。
【解決手段】重量センサの仮想水平面にxとy、これらに直交するzを設定し、x,y,zの三軸の加速度変化を検出する、三軸加速度センサと、温度センサと、重量センサが水平かつ基準温度下の基準位置に設置された際の三軸加速度センサの基準出力と、重量センサが基準温度以外の温度下に設置された際の三軸加速度センサの温度出力と、を記憶する記憶部と、演算処理部と、を備え、演算処理部は、温度センサで検出された、計量装置の設置位置の現在温度に対応して三軸加速度センサに発生する温度出力により、設置位置における現在出力を補正出力に補正し、補正出力を基準出力と比較し、三軸加速度センサのxおよび/またはyに発生した出力変化を計量装置に発生した傾斜として検出し、通知する。
【選択図】
図3