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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】介助機器の管理装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/14 20060101AFI20231019BHJP
   A61G 7/14 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
A61G5/14
A61G7/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018075333
(22)【出願日】2018-04-10
(65)【公開番号】P2019180830
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡志
(72)【発明者】
【氏名】平岡 丈弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 立
(72)【発明者】
【氏名】神谷 有城
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-195849(JP,A)
【文献】特開2013-154053(JP,A)
【文献】特開2017-159402(JP,A)
【文献】特開2017-042593(JP,A)
【文献】特開2001-105256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/00 - A61G 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体部に対して可動部を動作させる駆動部、およびシリンダに対するピストンの伸縮によって前記駆動部の動作を補助するガススプリングを有する介助機器を管理する管理装置であって、
前記ガススプリングの反力を直接的にまたは間接的に測定して、前記駆動部が前記ピストンの伸縮を伴う動作をしていないときの前記反力の測定値である静的測定値と、前記駆動部が前記ピストンの伸縮を伴う動作をしているときの前記反力の測定値である動的測定値と、を出力する反力測定部と、
所定のタイミングで繰り返して測定される前記静的測定値および前記動的測定値、ならびに前記静的測定値から前記動的測定値を減算して求めた反力変化量に基づいて前記ガススプリングの消耗レベルを推測する消耗レベル推測部と、
を備える介助機器の管理装置。
【請求項2】
前記反力測定部は、前記ガススプリングの前記反力を直接的に測定するロードセルである、請求項1に記載の介助機器の管理装置。
【請求項3】
前記ロードセルは、前記基体部と前記ガススプリングの間、または、前記ガススプリングと前記可動部の間に配設される、請求項2に記載の介助機器の管理装置。
【請求項4】
前記反力測定部は、前記駆動部から前記可動部に作用する駆動力を測定することにより、前記ガススプリングの前記反力を間接的に求める駆動測定部である、請求項1に記載の介助機器の管理装置。
【請求項5】
前記駆動部はモータであり、前記駆動測定部は、前記モータに流れる電流を測定して前記駆動力に換算する、請求項4に記載の介助機器の管理装置。
【請求項6】
前記消耗レベル推測部は、前記静的測定値が所定の静的閾値を下回った場合に、交換時期の前記消耗レベルと推測する、請求項1~5のいずれか一項に記載の介助機器の管理装置。
【請求項7】
前記消耗レベル推測部は、前記動的測定値が所定の動的閾値を下回った場合に、交換時期の前記消耗レベルと推測する、請求項1~6のいずれか一項に記載の介助機器の管理装置。
【請求項8】
前記消耗レベル推測部は、前記反力変化量が所定の閾変化量を上回った場合に、交換時期の前記消耗レベルと推測する、請求項1~7のいずれか一項に記載の介助機器の管理装置。
【請求項9】
前記可動部は、被介助者の身体を支持する支持部である、請求項1~8のいずれか一項に記載の介助機器の管理装置。
【請求項10】
前記消耗レベル推測部は、前記介助機器から離隔して配置され、かつ、公衆通信回線を介して前記反力測定部に接続される、請求項1~9のいずれか一項に記載の介助機器の管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ガススプリングが組み込まれた介助機器を管理する管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の進展に伴い、介助機器のニーズが増大している。介助機器は、一般的に、駆動部からの駆動により、被介助者の身体の一部を支持した支持部を移動させる。介助機器の導入によって、介助者および被介助者の身体的な負担が軽減されるとともに、介助者の人手不足も緩和される。介助機器の一例として、被介助者の座位姿勢からの移乗動作を介助する介助装置がある。この種の介助機器に関する一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の実施形態に記載される移乗装置は、下部フレーム、被介助者を支持しつつ下部フレームに対して昇降する上部フレーム、およびガススプリングを有する。介助者が上部フレームに設けられた昇降用取手を操作する際に、ガススプリングは、ガス反力を発揮して上部フレームの上昇を補助する。これによれば、被介助者を安全かつ容易に移乗させることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6029126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に例示されるガススプリングが組み込まれた介助機器では、ガススプリングが消耗して、介助機器の動作信頼性が低下するおそれが生じる。このおそれを解消する目的で、定期点検が実施され、必要に応じてガススプリングが交換される。しかしながら、定期点検だけに頼って、介助機器の動作信頼性を確保することは難しい。例えば、定期点検でガススプリングが良好と判定され、あるいはガススプリングが新品に交換されても、短期間のうちにガススプリングが消耗して、介助機器が正常に動作しなくなる場合が生じる。この場合、保守員は、介助機器の設置場所、例えば介護施設を臨時に訪問して対処する必要がある。
【0006】
本明細書では、介助機器に組み込まれているガススプリングの消耗レベルを推測して、介助機器の動作信頼性の向上に資することができる介助機器の管理装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、基体部に対して可動部を動作させる駆動部、および前記駆動部を補助するガススプリングを有する介助機器を管理する管理装置であって、前記ガススプリングの反力を直接的にまたは間接的に測定して、前記反力の測定値を出力する反力測定部と、前記反力の前記測定値に基づいて前記ガススプリングの消耗レベルを推測する消耗レベル推測部と、を備える介助機器の管理装置を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本明細書で開示する介助機器の管理装置によれば、定期点検時以外にも、介助機器に組み込まれているガススプリングの反力を測定して消耗レベルを推測することができ、介助機器の動作信頼性の向上に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態において、管理装置を適用する介助機器の一例である介助装置を斜め後方から見た斜視図である。
図2】介助装置の内部構造を示すとともに、介助装置が被介助者の起立動作を介助する場合の初期状態を示す側面断面図である。
図3】第1実施形態の介助機器の管理装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】消耗レベル推測部の推測方法を模式的に説明する図である。
図5】第2実施形態の介助機器の管理装置のうち介助装置に配設された部分の機能構成を示すブロック図である。
図6】第2実施形態の介助機器の管理装置のうち公衆通信回線を利用した部分の機能構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.介助機器(介助装置1)の構成例
第1実施形態の介助機器の管理装置6について、図1図4を参考にして説明する。まず、管理装置6を適用する介助機器について例示説明する。図1は、第1実施形態において、管理装置6を適用する介助機器の一例である介助装置1を斜め後方から見た斜視図である。図2は、介助装置1の内部構造を示すとともに、介助装置1が被介助者Mの起立動作を介助する場合の初期状態を示す側面断面図である。図2において、柱部20のカバーが取り除かれており、介助装置1の内部構造が示されている。介助装置1は、被介助者Mの胴体を支持して、座位姿勢から立位姿勢への起立動作、および立位姿勢から座位姿勢への着座動作を介助する。介助装置1は、基台10、柱部20、支持部30、駆動機構40、および制御部50などで構成されている。
【0011】
基台10は、フレーム11、足載置台12、および3対の車輪16などで形成される。フレーム11は、床面Bの近くにほぼ水平に設けられる。足載置台12は、フレーム11の上面後方に固定されて、ほぼ水平に設けられる。足載置台12の上面には、被介助者Mの足の位置を案内する接地マーク13が記されている。3対の車輪16は、フレーム11の下側に設けられる。車輪16の転舵機能により、前後方向の移動および方向転換だけでなく、真横への移動や超信地旋回(その場回転)が可能となっている。
【0012】
柱部20は、柱本体部21および昇降柱部22などで構成される。柱本体部21は、フレーム11の前寄りに立設される。昇降柱部22は、柱本体部21の後側に昇降可能に設けられる。下腿当て部23は、柱本体部21から後方に延びるL字状の左右一対の支持アーム24に支持され、接地マーク13よりも少し前側の上方に配設される。昇降柱部22の上部の後側の揺動軸29に、揺動アーム26が揺動可能に設けられる。揺動アーム26の揺動可能な後端寄りに、第一ハンドル25が設けられる。第一ハンドル25は、概ね四角形の枠形状に形成され、前上方向に延びている。第一ハンドル25は、被介助者Mによって把持され、かつ、介助者によって介助装置1を移動させるために把持される。
【0013】
支持部30は、揺動アーム26の後端に固設され、揺動アーム26と一体的に揺動する。支持部30は、胴体支持部31、左右一対の脇支持部32、および第二ハンドル33などで構成される。胴体支持部31は、略矩形に形成され、被介助者Mの胸の辺りを支持する。脇支持部32は、L字状に形成され、胴体支持部31の左右両側の上部寄りから後方に向かって延在する。脇支持部32は、被介助者Mの脇や肩を支持する。第二ハンドル33は、横長のU字状に形成され、第一ハンドル25の下側に配設される。
【0014】
図2に示されるように、駆動機構40は、昇降駆動機構4Uおよび揺動駆動機構4Sからなる。昇降駆動機構4Uは、基体部に相当する柱本体部21に対して、可動部に相当する昇降柱部22を昇降駆動する。昇降駆動機構4Uは、リニアガイド41、昇降駆動部42、および昇降用ガススプリング43などで構成される。揺動駆動機構4Sは、基体部に相当する昇降柱部22に対して、可動部に相当する支持部30を揺動駆動する。揺動駆動機構4Sは、昇降体45、揺動体46、揺動駆動部47、および揺動用ガススプリング48などで構成される。
【0015】
昇降駆動機構4Uのリニアガイド41は、柱本体部21と昇降柱部22の間に配設される。リニアガイド41は、昇降柱部22の昇降を案内して、昇降動作を円滑化する。昇降駆動部42は、柱本体部21に設けられており、その一端が昇降柱部22に係合する。昇降駆動部42として、ボールねじ421、ボールナット422、およびモータ423を有するボールねじ送り機構を例示でき、これに限定されない。昇降駆動部42によって昇降柱部22が上昇駆動されると、支持部30も上昇する。これにより、支持部30は、被介助者Mの起立動作を介助する。
【0016】
昇降用ガススプリング43は、昇降駆動部42を補助する。昇降用ガススプリング43は、ガスが封じ切られたシリンダ431、およびシリンダ431に対して伸縮するピストン432からなる。シリンダ431の上側の基端は、昇降柱部22に固定される。ピストン432の下側の先端は、柱本体部21に固定される。
【0017】
昇降用ガススプリング43は、封じ切られたガスによってピストン432が押し出される押し出し式とされている。したがって、昇降用ガススプリング43は、昇降柱部22を押し上げる押し上げ力を発揮する。シリンダ431と昇降柱部22の間、または、ピストン432と柱本体部21の間に、後述する反力測定部7(図3参照)としてのロードセルを挟設することができる。なお、シリンダ431が柱本体部21に固定され、ピストン432が昇降柱部22に固定されてもよい。
【0018】
揺動駆動機構4Sの昇降体45は、昇降柱部22の上部に昇降可能に設けられる。揺動体46は、昇降体45と揺動アーム26とを連結して配設され、かつ、揺動アーム26と一体的に揺動する。つまり、揺動体46と揺動アーム26とが成す角度は、変化しない。揺動駆動部47は、昇降柱部22に設けられており、その一端が昇降体45に係合する。揺動駆動部47として、ボールねじ471、ボールナット472、およびモータ473を有するボールねじ送り機構を例示でき、これに限定されない。揺動駆動部47によって昇降体45が下降駆動されると、揺動体46および揺動アーム26は、図2の時計回りに一体的に揺動する。これにより、支持部30は、前上方に揺動して被介助者Mの起立動作を介助する。
【0019】
揺動用ガススプリング48は、揺動駆動部47を補助する。揺動用ガススプリング48は、ガスが封じ切られたシリンダ481、およびシリンダ481に対して伸縮するピストン482からなる。シリンダ481の上側の基端は、昇降体45に固定される。ピストン482の下側の先端は、昇降柱部22に固定される。
【0020】
揺動用ガススプリング48は、封じ切られたガスによってピストン482が引き込まれる引き込み式とされている。したがって、揺動用ガススプリング48は、昇降体45を引き下げる引き下げ力を発揮する。シリンダ481と昇降体45の間、または、ピストン482と昇降柱部22の間に、後述する反力測定部7(図3参照)としてのロードセルを挟設することができる。なお、シリンダ481が昇降柱部22に固定され、ピストン482が昇降体45に固定されてもよい。
【0021】
制御部50は、フレーム11の上面の前右寄りのバッテリ59の上側に設けられる。制御部50は、図略の信号ケーブルを用いて図略の操作部に接続される。制御部50は、介助者による操作部の操作にしたがい、昇降駆動機構4Uおよび揺動駆動機構4Sを関連付けて制御する。換言すると、制御部50は、昇降駆動部42のモータ423、および揺動駆動部47のモータ473を関連付けて制御する。また、制御部50は、表示部51を備えて、各種情報を表示する。制御部50、モータ423、およびモータ473は、バッテリ59を動作電源とする。
【0022】
2.第1実施形態の介助機器の管理装置6の構成
第1実施形態の介助機器の管理装置6の説明に移る。図3は、第1実施形態の介助機器の管理装置6の機能構成を示すブロック図である。管理装置6は、介助装置1を管理し、詳細には、昇降用ガススプリング43および揺動用ガススプリング48の状態を管理する。管理装置6は、反力測定部7および消耗レベル推測部8を備える。管理装置6は、さらに、制御部50の表示部51および入出力制御部52を含んで構成される。
【0023】
管理装置6の管理方法は、昇降用ガススプリング43と揺動用ガススプリング48とで共通する。したがって、以降では、昇降用ガススプリング43に関して詳述し、揺動用ガススプリング48に関係する記述を省略する。昇降用ガススプリング43には、反力測定部7が設けられる。反力測定部7は、昇降用ガススプリング43の反力を直接的にまたは間接的に測定して、反力の測定値Fmを入出力制御部52に出力する。反力を直接的に測定する反力測定部7として、ロードセルを例示できる。
【0024】
なお、反力を関接的に測定する反力測定部として、モータ423に流れる電流を測定する駆動測定部を用いてもよい。駆動測定部は、モータ423が昇降柱部22を昇降駆動するとき、モータ423に流れる電流を測定する。駆動測定部は、さらに、電流の大きさを駆動力に換算する。モータ423の駆動力が小さいことは、昇降用ガススプリング43の押し上げ力が大きいことを意味する。逆に、モータ423の駆動力が大きいことは、昇降用ガススプリング43の押し上げ力が小さいことを意味する。この関係を定量化して記憶しておくことにより、駆動測定部は、昇降用ガススプリング43の押し上げ力、すなわち反力を演算により求めることができる。
【0025】
入出力制御部52は、反力測定部7から反力の測定値Fmを取得して、消耗レベル推測部8に受け渡す。また、入出力制御部52は、モータ423に指令を発して、モータ423の回転方向および回転速度を制御する。
【0026】
消耗レベル推測部8は、反力の測定値Fmに基づいて、昇降用ガススプリング43の消耗レベルを推測する。この推測には、自動分析のアプリケーションS/Wなどを適宜利用することができる。ここで、昇降用ガススプリング43は、シリンダ431内にガスを封じ込めて構成されている。このため、長期間にわたる微少な漏気を完全に防止することは難しく、通常時に消耗は徐々に進行する。また、ピストン432が動く際の摺動抵抗の増加によっても、消耗は徐々に進行する。また、昇降用ガススプリング43に何らかの不具合が生じると、消耗は通常時よりも速く進行する。
【0027】
本実施形態において、消耗レベル推測部8は、昇降用ガススプリング43の消耗レベルとして正常状態および交換時期の2レベルを推測する。正常状態という消耗レベルは、昇降用ガススプリング43の消耗があまり進行しておらず、介助装置1を継続して使用できるレベルである。交換時期という消耗レベルは、昇降用ガススプリング43の消耗が進行しており、交換が推奨されるレベルである。交換時期は、介助装置1の使用不可を意味せず、近いうちに介助装置1の通常の使用が難しくなると推測されることを意味する。なお、消耗レベル推測部8は、交換時期の予兆段階として、要注意時期という消耗レベルを推測してもよい。
【0028】
3.消耗レベル推測部8の推測方法
消耗レベル推測部8は、下記のうち一つ以上の推測方法を実施する。
1)反力の静的測定値による推測方法
2)反力の動的測定値による推測方法
3)反力変化量による推測方法
【0029】
図4は、消耗レベル推測部8の推測方法を模式的に説明する図である。図4は、介助装置1が動作したときの昇降用ガススプリング43の反力の時間的な変化の様子を例示している。図4の横軸は時間tを表し、縦軸は反力の測定値Fmを表す。測定値Fmの100%は、反力が定格値であることを示す。実線は、昇降用ガススプリング43が消耗していない通常時を例示し、一点鎖線は、昇降用ガススプリング43の消耗がある程度進んだ低下傾向時を例示している。
【0030】
図4の時刻t1に、モータ423が動作を開始して、昇降柱部22が下側位置から上昇し始める。そして、時刻t2に、モータ423が動作を終了して、昇降柱部22が上側位置に停止する。昇降柱部22が上昇している時間帯において、昇降用ガススプリング43の反力は、昇降柱部22の上昇速度および加速度に依存して減少する。したがって、昇降柱部22が上昇しているときの動的測定値は、昇降柱部22が静止しているときの静的測定値よりも低下する。
【0031】
1)反力の静的測定値による推測方法
消耗レベル推測部8は、モータ423が動作していない時刻t1以前や時刻t2以降に測定された静的測定値に基づいて推測する。図4の例で、昇降用ガススプリング43が通常時の場合に、静的測定値Fs1が測定される。また、低下傾向時の場合に、静的測定値Fs2が測定される。
【0032】
消耗レベル推測部8は、静的測定値Fs1や静的測定値Fs2が所定の静的閾値Jsを下回った場合に、昇降用ガススプリング43の交換時期と推測する。静的閾値Jsは、昇降用ガススプリング43の消耗が進む過程や時間特性などを考慮して、予め決定される。静的閾値Jsは、介助装置1が使用できなくなる以前のレベル、換言すると、昇降用ガススプリング43の消耗の兆候レベルや、不具合の兆候レベルに設定されることが好ましい。後述する動的閾値Jdおよび閾変化量JΔも、介助装置1が使用できなくなる以前のレベルに設定されることが好ましい。
【0033】
図4において、静的測定値Fs1は、静的閾値Jsを上回っている。したがって、消耗レベル推測部8は、昇降用ガススプリング43が正常状態であると推測する。また、静的測定値Fs2も、静的閾値Jsを上回っている。したがって、消耗レベル推測部8は、昇降用ガススプリング43に若干の消耗が認められても未だ正常状態であると推測する。
【0034】
2)反力の動的測定値による推測方法
消耗レベル推測部8は、モータ423が動作している時刻t1から時刻t2までの時間帯に測定された動的測定値に基づいて推測する。図4の例で、昇降用ガススプリング43が通常時の場合に、動的測定値Fd1が推測される。また、低下傾向時の場合に、動的測定値Fd2が推測される。なお、本第1実施形態では、モータ423が動作している時間帯の中で最小の動的測定値を採用する。これに限定されず、モータ423の所定の動作条件、例えば、所定の回転速度における動的測定値を採用してもよい。
【0035】
消耗レベル推測部8は、動的測定値Fd1や動的測定値Fd2が所定の動的閾値Jdを下回った場合に、昇降用ガススプリング43の交換時期または不具合と判定する。動的閾値Jdは、静的閾値Jsと同様に予め決定される。動的閾値Jdは、静的閾値Jsよりも小さい。
【0036】
図4において、動的測定値Fd1は、動的閾値Jdを上回っている。したがって、消耗レベル推測部8は、昇降用ガススプリング43が正常状態であると推測する。また、動的測定値Fd2は、動的閾値Jdを下回っている。したがって、消耗レベル推測部8は、昇降用ガススプリング43の交換時期と推測する。この場合、保守員の対処が必要となる。
【0037】
3)反力変化量による推測方法
消耗レベル推測部8は、通常時の場合について、静的測定値Fs1から動的測定値Fd1を減算して、反力変化量ΔL1を求める。また、消耗レベル推測部8は、低下傾向時の場合について、静的測定値Fs2から動的測定値Fd2を減算して、反力変化量ΔL2を求める。消耗レベル推測部8は、反力変化量ΔL1や反力変化量ΔL2が所定の閾変化量JΔを上回った場合に、昇降用ガススプリング43の交換時期と推定する。閾変化量JΔは、静的閾値Jsや動的閾値Jdと同様に予め決定される。
【0038】
図4において、反力変化量ΔL1は、閾変化量JΔを下回っている。したがって、消耗レベル推測部8は、昇降用ガススプリング43が正常状態であると推測する。また、反力変化量ΔL2は、閾変化量JΔを上回っている。したがって、消耗レベル推測部8は、昇降用ガススプリング43の交換時期と推測する。この場合、保守員の対処が必要となる。
【0039】
上述した1)、2)、3)のうち複数の推測方法を併用することができる。この場合、一つ以上の推測方法で交換時期と推測されたときに、保守員が対処することが望ましい。また、動的測定値や反力変化量による推測方法は、モータ423の逆回転方向の動作によって昇降柱部22が下降するときにも実施可能である。ただし、この場合、昇降用ガススプリング43の反力の動的測定値は、静的測定値よりも大きくなる。このため、反力変化量の求め方、動的閾値、および閾変化量を変更することになる。
【0040】
なお、反力の測定および消耗レベルの推測は、一定期間ごとや、介助装置1が動作するごとや、介助装置1の所定の動作回数ごとに繰り返して実施される。したがって、反力の測定値Fmの時間的変化の傾向に基づいて、昇降用ガススプリング43の交換時期が推測されてもよい。例えば、一定期間における反力の減少率が過大になったときに、交換時期が推測されてもよい。
【0041】
第1実施形態の介助機器の管理装置6によれば、定期点検時以外にも、介助装置1に組み込まれている昇降用ガススプリング43および揺動用ガススプリング48の反力を測定して消耗レベルを推測することができる。したがって、介助装置1の動作信頼性の向上に資することができる。
【0042】
例えば、昇降用ガススプリング43の消耗の進み具合を把握でき、また不具合の兆候を把握できるので、保守員による計画的な交換作業が可能となる。これにより、介助装置1を使用できない不動時間が減少する。また、昇降用ガススプリング43が消耗した状態で、介助装置1を無理して使用するケースも減少する。さらに、定期点検の点検項目を簡素化したり、定期点検の実施間隔を長くしたりできるので、保守員の負担が軽減される。
【0043】
4.第2実施形態の介助機器の管理装置6A
次に、第2実施形態の介助機器の管理装置6Aについて、第1実施形態と異なる点を主にして説明する。第2実施形態では、公衆通信回線の利用により、管理装置6Aの全国規模のシステム化が実現されている。図5は、第2実施形態の介助機器の管理装置6Aのうち介助装置1に配設された部分の機能構成を示すブロック図である。また、図6は、第2実施形態の介助機器の管理装置6Aのうち公衆通信回線を利用した部分の機能構成を示す模式図である。
【0044】
図5に示されるように、第2実施形態の介助機器の管理装置6Aは、介助装置1に、反力測定部7、入出力制御部52、および通信モジュール53を備える。反力測定部7の構成および作用、ならびに入出力制御部52の機能は、第1実施形態と同様である。通信モジュール53は、インターネットなどの公衆通信回線を介して、入出力制御部52とクラウドサービス82の間を通信接続する。通信モジュール53は、入出力制御部52から反力の測定値Fmを取得し、測定値Fmを含んだログデータFdをクラウドサービス82に送信する。
【0045】
図6に示されるように、第2実施形態の介助機器の管理装置6Aは、公衆通信回線を利用した部分にクラウドサービス82および分析報告ツール85を備える。クラウドサービス82は、不特定の利用者がアクセス可能なコンピュータサービスシステムである。クラウドサービス82は、日本全国に分散配置された複数の介助装置1から、ログデータFdを取得する。取得のタイミングは、定期的でもよいし、介助装置1の所定の動作回数ごとでもよい。クラウドサービス82は、さらに、取得したログデータFdをデータベース83に蓄積する。
【0046】
分析報告ツール85は、通信機能を有するコンピュータ装置で構成される。また、分析報告ツール85は、消耗レベル推測部8Aの機能を内蔵する。つまり、消耗レベル推測部8Aは、介助装置1から離隔して配置され、かつ、公衆通信回線を介して反力測定部7に接続される。
【0047】
消耗レベル推測部8Aは、クラウドサービス82からログデータFdをダウンロードする。次に、消耗レベル推測部8Aは、ログデータFd内の測定値Fmに基づいて、各介助装置1の昇降用ガススプリング43の消耗レベルを推測する。すなわち、消耗レベル推測部8Aは、昇降用ガススプリング43が正常状態であるか交換時期であるかを推測する。消耗レベル推測部8Aが用いる推測方法は、第1実施形態と同様である。
【0048】
消耗レベル推測部8Aは、推測結果をクラウドサービス82に送信して、データベース83に蓄積させる。さらに、消耗レベル推測部8Aは、推測結果をオペレータOpに報告する。オペレータOpは、昇降用ガススプリング43の交換時期である旨を、保守員P1および介助装置1の使用者P2(介助者など)の少なくとも一方に連絡する。これにより、保守員P1の迅速な対処が可能になる。なお、分析報告ツール85が保守員P1および使用者P2の携帯電話や携帯端末に自動で連絡するように構成して、オペレータOpを不要とすることもできる。
【0049】
第2実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、次の諸効果が発生する。すなわち、公衆通信回線を利用した遠隔管理、およびリアルタイムの管理が行えるので、保守員P1の迅速な対処が可能になる。また、分析報告ツール85を介助装置1の製造メーカに設置して、出荷済みの全ての介助装置1を製造メーカで一元的に管理することができる。
【0050】
5.実施形態の変形および応用
なお、適用対象となる介助機器は、起立動作および着座動作を介助する介助装置1に限定されず、ガススプリングが組み込まれた様々な介助機器が該当する。また、介護施設などでは、公衆通信回線に代えてLANを利用することにより、複数の介助装置1に対して共通に消耗レベル推測部8Aを設けることができる。その他にも、第1および第2実施形態は、様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1:介助装置 10:基台 20:柱部 21:柱本体部 22:昇降柱部 26:揺動アーム 30:支持部 40:駆動機構 4U:昇降駆動機構 4S:揺動駆動機構 42:昇降駆動部 423:モータ 43:昇降用ガススプリング 431:シリンダ 432:ピストン 47:揺動駆動部 473:モータ 48:揺動用ガススプリング 481:シリンダ 482:ピストン 50:制御部 52:入出力制御部 6、6A:介助機器の管理装置 7:反力測定部 8、8A:消耗レベル推測部 82:クラウドサービス 85:分析報告ツール Fm:測定値 Fd:ログデータ Ls1、Ls2:静的消耗レベル Js:静的閾値 Ld1、Ld2:動的消耗レベル Jd:動的閾値 ΔL1、ΔL2:反力変化量 JΔ:閾変化量
図1
図2
図3
図4
図5
図6