(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】包装箱およびブランクシート
(51)【国際特許分類】
B65D 5/468 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
B65D5/468 100
(21)【出願番号】P 2018192312
(22)【出願日】2018-10-11
【審査請求日】2020-12-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌弘
【合議体】
【審判長】山崎 勝司
【審判官】西本 浩司
【審判官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-97979(JP,A)
【文献】実開平1-168418(JP,U)
【文献】特開2017-149431(JP,A)
【文献】特開平8-301268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/462 - 5/468
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ面同士と幅面同士とが対面位置にある筒状に形成されて、対面接触する外フラップおよび内フラップが接合されることにより、当該筒状の両端側開口が閉止されて直方体形状に作製される包装箱であって、
前記外フラップおよび前記内フラップは、前記筒状の両端側開口の閉止時に互いの端辺同士が離隔して開口を形成する程度の幅に形成され、
天面に位置する前記長さ面に連続して上側に位置する前記外フラップの一方に利用可能に配置されている手掛け穴を備え、
前記手掛け穴は、前記外フラップに長穴形状で開口可能に形成されて、当該長穴形状の両端部が前記内フラップの端辺よりも前記幅面側に位置し、該長穴形状の上側をヒンジ部として当該外フラップ
の本体に連結されている蓋部により閉止可能に作製され、
前記内フラップの端辺側には、当該手掛け穴の両端部に重ならないように切り欠き部が形成されており、
前記外フラップ
の本体を前記蓋部に連結する前記ヒンジ部は、前記内フラップ
の前記端辺よりも内側に位置する前記切り欠き部内まで延在して当該切り欠き部の縁に接近し、
前記外フラップの前記手掛け穴内に位置する前記蓋部は、前記ヒンジ部を機能させて内方に折り曲げられた状態で前記内フラップに重なる形状に形成されていることを特徴とする包装箱。
【請求項2】
前記手掛け穴は、底辺の長い三角の長穴形状に開口可能に形成されて、当該三角の斜辺側を前記ヒンジ部として機能させるように作製されており、
前記蓋部は、前記三角の底辺に沿うように連続的あるいは断続的に切り込まれている底辺スリットと、当該三角の頂角から下方に向かって連続的あるいは断続的に切り込まれている降下スリットとを備えて開口可能に作製されていることを特徴とする請求項1に記載の包装箱。
【請求項3】
前記手掛け穴は、下側が上方および下方の一方あるいは双方に屈曲する形状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の包装箱。
【請求項4】
前記手掛け穴は、下側の両端部が上方に延長された後に降下するまで湾曲することにより上方への裂け目の開始箇所となることを抑制する形状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の包装箱。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の包装箱を組み立て可能に形成されているブランクシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手掛け穴を備えて、商品等を可搬可能に収納する包装箱およびそのブランクシートに関する。
【背景技術】
【0002】
商品等を収納して運搬や陳列を可能にする厚紙や段ボール製の包装箱が普及しており、例えば、重量のある飲料商品は、特に、段ボール製の包装箱(所謂、段ボール箱)に収納されて、そのままの形態で販売等される場合もある。
【0003】
この種の段ボール製の包装箱は、手先を差し込む手掛け穴が側面に形成準備されており、例えば、商品の陳列時や購入時に、その手掛け穴に人差し指や中指などの複数本の指先を差し込んで吊り下げる形態で運搬可能に作製されている。
【0004】
この手掛け穴としては、例えば、所謂、俵型の開口形状が多用されているが、近年には、特許文献1に記載のように、概略三角形状にするとともに、その両端部の形状を工夫することにより、荷重による裂けを抑制するなど、その開口形状を工夫することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような包装箱にあっては、コストダウンのために、薄めの段ボールで作製することが行われている。また、商品等が完全に隠れる状態で収納する必要がない場合には、包装箱に開口が存在しても良く、外フラップおよび内フラップの幅を狭くすることにより、使用する段ボールの量(面積)を削減することでコストダウンを図ることもできる。
【0007】
この外フラップおよび内フラップの幅を狭くする包装箱では、その外フラップおよび内フラップの端辺の間に、内部を視認可能な開口(露出窓)が形成されることから、その開口を側面(側壁)側に位置させて収納商品を目視可能に横積みできるように、その側壁となる外フラップに手掛け穴が配置されている。
【0008】
しかしながら、重量のある飲料商品などを収納する包装箱では、手掛け穴の開口形状を工夫するにしても、強度の弱い薄めの段ボールを採用することができず、厚めの段ボールで頑丈に作製せざるを得なかった。
【0009】
そこで、本発明は、外フラップに形成される手掛け穴に発生する損傷を効果的に抑制することのできる構造を備える包装箱を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する包装箱の発明の一態様は、長さ面同士と幅面同士とが対面位置にある筒状に形成されて、対面接触する外フラップおよび内フラップが接合されることにより、当該筒状の両端側開口が閉止されて直方体形状に作製される包装箱であって、前記外フラップおよび前記内フラップは、前記筒状の両端側開口の閉止時に互いの端辺同士が離隔して開口を形成する程度の幅に形成され、天面に位置する前記長さ面に連続して上側に位置する前記外フラップの一方に利用可能に配置されている手掛け穴を備え、前記手掛け穴は、前記外フラップに長穴形状で開口可能に形成されて、当該長穴形状の両端部が前記内フラップの端辺よりも前記幅面側に位置し、該長穴形状の上側をヒンジ部として当該外フラップ本体に連結されている蓋部により閉止可能に作製されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明の一態様によれば、ヒンジ部を介して折り曲げ可能な蓋部を備える手掛け穴が外フラップに形成されて、その手掛け部の両端部が内フラップに重なって蓋部を折り曲げることで重ねることができ、荷重が掛かっても裂け難い状態で包装箱を吊り下げることができる。
【0012】
この結果、運搬時に裂け目などの損傷が発生することを効果的に抑制する手掛け穴を備える包装箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る包装箱の一例を示す一部切り欠き外観斜視図である。
【
図2】
図2は、その包装箱の組み立て用のブランクシートを示す平面図である。
【
図3】
図3は、その手掛け穴を示す拡大正面図である。
【
図4】
図4は、その手掛け穴の使用時の状況を説明する一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1~
図4は本発明の一実施形態に係る包装箱を示す図である。
【0015】
図1において、包装箱10は、例えば、ペットボトル内に各種飲料を充填して密封した飲料ボトルBの複数本を収納するダンボール製のケース、所謂、段ボール箱であり、
図2に示すブランクシート10Sを組み立てることによって、その飲料ボトルBの収納空間を内部に形成するように作製されている。なお、
図2のブランクシート10Sは、包装箱10における各部位の該当箇所の符号を付して図示している。
【0016】
また、包装箱10は、互いに対面する長さ面11、13の両端側に、折り曲げ面として機能する上側の外フラップ21と下側の外フラップ23(
図2に図示)とがそれぞれ連続するように延長形成されており、同様に、互いに対面する幅面12、14の両端側にも、折り曲げ面として機能する側方の内フラップ22と内フラップ24(
図2に図示)とがそれぞれ連続するように延長形成されている。これらフラップ21~24は、直交する折り目となるスコアS11~S14を介して長さ面11、13および幅面12、14に対して折り曲げ可能に連結形成されている。
【0017】
この包装箱10は、複数本の飲料ボトルBの底部と頭部とに長さ面11、13を突き当てるように対面接触させて、その飲料ボトルBの側部に幅面12、14と共に外フラップ21、23および内フラップ22、24を沿わせて対面接触する状態で収納するように作製されている。ブランクシート10Sでは、長さ面11、13と幅面12、14とがそれぞれ交互に位置して、そのうちの一端部側の長さ面11の端辺11aに反対側他端部側の幅面14の端辺14b側に接着接合させる継ぎしろ15が連続するように延長形成されている。この長さ面11、13と幅面12、14と継ぎしろ15との間には、平行の折り目となるクリーズC1~C4が形成されて、折り曲げ可能に連結形成されている。
【0018】
この構造により、包装箱10は、一端部側の長さ面11の端辺11aの継ぎしろ15を反対側他端部の幅面14の端辺14bに接着接合されることによって、飲料ボトルBの縦方向の周囲を囲む角筒状に形成されている。この包装箱10は、これら長さ面11、13と幅面12、14の両端側開口を外フラップ21、23および内フラップ22、24を折り曲げて、互いの対面接触箇所Gを接着接合することにより閉止状態にして収納するように形成されている。すなわち、包装箱10は、所謂、ラップラウンドの形態に作製されて、運搬時に無用に揺れることを制限可能に対面接触するように組み立てられている。
【0019】
なお、ブランクシート10Sは、これらの長さ面11、13、幅面12、14、継ぎしろ15、外フラップ21、23、および、内フラップ22、24を備えるようにダンボールの打ち抜きにより作製されており、それぞれの間で折り曲げ可能にクリーズC1~C4およびスコアS11~S14がその打ち抜き時に形成される。
【0020】
そして、包装箱10は、飲料ボトルBを収納して運搬する際に、外フラップ21、23および内フラップ22、24の対面する接合接着箇所Gが直方体形状を崩すことのない強度を発揮する面積で接着接合されつつ、これらフラップ21~24の幅Wを狭くしてブランクシート10Sの面積を小さくしてコストダウンを図っている。具体的には、包装箱10は、スコアS11~S14の反対側に位置する外フラップ21、23の端辺21e、23e同士および内フラップ22、24の端辺22e、24e同士が互いに離隔して露出窓(開口)19を形成しており、その露出窓19から収納する飲料ボトルBを目視して確認することができる。
【0021】
また、包装箱10は、飲料ボトルBの頭部側の天面に位置する長さ面11の長手方向(スコアS11側)に連続する両側面(側壁)の外フラップ21に手掛け穴30がそれぞれ形成されている。
【0022】
手掛け穴30は、
図3に示すように、外フラップ21の中央に概略二等辺三角形状で開口しており、その底辺30B側が手先を差込可能に幅広の長穴形状で開口するように形成されている。この手掛け穴30は、その底辺30Bの両端部30Be側が両側の内フラップ22、24の端辺22e、24eよりも幅面12、14(スコアS12、14)側に位置するように形成(配置)されている。この内フラップ22、24は、その手掛け穴30の両端部30Beに重ならないように、対応する位置の端辺22e、24eが幅面12、14側に窪む切り欠き部22c、24cを形成されている。
【0023】
この手掛け穴30は、二等辺三角形状の底辺30Bに沿うように底辺スリット31が形成されて開口可能に作製されており、また、二等辺三角形状の上側の頂角30Tから底辺30Bに向かう垂線に一致する降下スリット32を形成可能にミシン目32mが形成されて開口可能に作製されている。この手掛け穴30は、その二等辺三角形状の頂角30Tと底辺30Bの両端部30Beとの間の上側に位置する斜辺30Sをヒンジ部33としてスコアと同様に折り曲げ可能に形成されている。
【0024】
この構造により、包装箱10は、手掛け穴30の利用前(手先の差し込み前)には降下スリット32のミシン目32mの連結箇所32mcが破断されることなく三角形状の蓋部39が存在して、その手掛け穴30を閉止する状態にある。
【0025】
そして、この包装箱10は、その手掛け穴30内に手先を差し込んでミシン目32mの連結箇所32mcを破断して降下スリット32を形成しつつ底辺スリット31を広げることができる。このとき、包装箱10は、
図4に示すように、ヒンジ部33(斜辺30S)で蓋部39を内側に折り曲げることにより、底辺スリット31(底辺30B)側を長さ面11の下面(天面)に突き当てて、その蓋部39を斜めの姿勢にすることができ、指先を第2関節程度まで手掛け穴30内に差し込んで吊り下げるようにして可搬可能に持ち上げることができる。
【0026】
この状態では、包装箱10は、外フラップ21の手掛け穴30内に押し込んだ蓋部39の二等辺三角形状の底辺30Bの両端部30Be側が内フラップ22、24の切り欠き部22c、24c内で折れ曲がって端辺22e、24eの内側に重なる状態になる。
【0027】
このため、包装箱10は、段ボール製の外フラップ21の手掛け穴30の周囲(本体)と蓋部39との間に内フラップ22、24を挟んで重ねる状態にすることができ、吊り下げ負荷に抗する強度を確保することができる。これにより、包装箱10では、外フラップ21だけで吊り下げる構造の場合よりも薄め段ボールを選択してブランクシート10Sを作製することができ、コストダウンを図ることができる。なお、この包装箱10では、内フラップ22、24を挟んで外フラップ21の蓋部39をヒンジ部33で折り曲げるので、外フラップだけを折り曲げて吊り下げる場合よりも厚めに折り曲げることができ、運搬時の手先への食い込みを軽減して苦痛を和らげることができる。
【0028】
また、外フラップ21の手掛け穴30内に押し込まれた蓋部39は、その手掛け穴30における二等辺三角形状の底辺30B側が長さ面11(天面)側に突き当てるように傾斜する姿勢(状態)になることで、包装箱10(飲料ボトルB)の荷重を外フラップ21および内フラップ22、24と共に、その長さ面11にも吊り下げ支持する負荷を掛けることができ、また、運搬時の荷重による手先への食い込みによる苦痛をより軽減することができる。
【0029】
さらに、包装箱10は、手掛け穴30の底辺スリット31の両端部30Beが上方に延長された後に降下するまで湾曲する形状に形成されている。
【0030】
これにより、包装箱10は、蓋部39を内側に折り曲げて吊り下げた際の荷重が一点に集中することなく、その両端部30Beの湾曲形状の全体で受けるようにすることができ、裂け目が直ちに形成されて開始箇所になることを効果的に抑制することができる。
【0031】
また、この手掛け穴30の底辺スリット31(二等辺三角形状の底辺30B)は、両端部30Beと中央付近30Bc(降下スリット32下部)との間に、斜辺30Sに接近する方向への屈曲形状30Bbが形成されており、その中央付近30Bcが最下辺に位置する形状に形成されている。
【0032】
これにより、包装箱10は、その手掛け穴30内に指先を押し込む際の負荷をその中央付近30Bcに集中的に掛けることができ、そこから降下スリット32のミシン目32mを破断してヒンジ部33(斜辺30S)を折り曲げることができる。なお、手掛け穴30の底辺スリット31は、上下させる屈曲形状30Bbを形成することなく、単に降下させる形状にして、指先を押し込む際の負荷を中央付近30Bcに集中的に掛けるようにしてもよい。
【0033】
このように、本実施形態の包装箱10にあっては、手掛け穴30から内側に折り曲げられる蓋部39が内フラップ22、24を外フラップ21との間に挟み込むようにして重なるので、飲料ボトルBの荷重が掛かっても1枚の外フラップ21の場合よりも裂け難い状態で吊り下げ可搬することができ、また、その吊り下げ時に生じる手先への食い込みを軽減することができる。
【0034】
したがって、運搬時に生じする裂け目などの損傷や荷重による苦痛を効果的に抑制する手掛け穴30を備える包装箱10を提供することができる。
【0035】
ここで、本実施形態の包装箱10の手掛け穴30では、二等辺三角形状に開口する場合を一例にして説明するが、これに限るものではなく、例えば、図示することは省略するが、俵型に開口しつつ、蓋部の両端部が内フラップを挟み込むようにようにしてもよい。ただし、本実施形態の手掛け穴30と蓋部39では、二等辺三角形状に開口することで、
図4に示すように、蓋部39の両端部30Be側で内フラップ22、24を挟み込みつつ、中央付近30Bcを長さ面11に突き当てることができるので、本実施形態の方が好適である。
【0036】
また、本実施形態の包装箱10では、連続的な底辺スリット31を形成するが、断続的なミシン目としてしてもよく、また、降下スリット32をミシン目に代えて連続的なスリットとしてもよいことはいうまでもない。
【0037】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0038】
10……包装箱
10S……ブランクシート
11、13……長さ面
12、14……幅面
19……露出窓
21、23……外フラップ
21e、22e、23e、24e……端辺
22、24……内フラップ
22c、24c……切り欠き部
30……手掛け穴
30B……底辺
30Bb……屈曲形状
30Bc……中央付近
30Be……端部
30S……斜辺
30T……頂角
31……底辺スリット
32……降下スリット
33……ヒンジ部
39……蓋部
B……飲料ボトル
C1~C4……クリーズ
S11~S14……スコア