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特許7369527マルチキャスト配信システム及びコアネットワークノード装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】マルチキャスト配信システム及びコアネットワークノード装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/06 20090101AFI20231019BHJP
   H04W 4/08 20090101ALI20231019BHJP
   H04W 72/121 20230101ALI20231019BHJP
【FI】
H04W4/06 150
H04W4/08
H04W72/121
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019016526
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020123943
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】新井 国充
(72)【発明者】
【氏名】北田 大己
(72)【発明者】
【氏名】勝又 貞行
【審査官】桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-512167(JP,A)
【文献】特表2013-545322(JP,A)
【文献】特開2011-114485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアネットワークノード装置と、前記コアネットワークノード装置と物理回線により接続される無線基地局と、該無線基地局と無線接続される移動端末とを有し、前記コアネットワークノード装置から前記移動端末にMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)に準拠したマルチキャストデータを配信可能に構成され、
前記コアネットワークノード装置には、
前記移動端末からのマルチキャストグループ参加要求を、マルチキャストグループのグループIPアドレスを前記移動端末から前記無線基地局を経由して受信することにより受け付けるマルチキャスト参加受付部と、
前記マルチキャストグループ参加要求をマルチキャスト参加リストに登録するマルチキャスト参加リスト登録部と、
上位ネットワークから配信されるマルチキャストデータを受信するマルチキャストデータ受信部、前記マルチキャスト参加リストに登録されている前記移動端末との間に個別のユニキャストベアラを構築するためのユニキャストベアラ構築指示を前記無線基地局に向けて送信するユニキャストベアラ構築指示送信部、及び前記無線基地局に前記マルチキャストデータを転送するマルチキャストデータ転送部を有するマルチキャストプロキシ部とが設けられ、
前記無線基地局には、
前記ユニキャストベアラ構築指示を受信するユニキャストベアラ構築指示受信部と、該ユニキャストベアラ構築指示を受けて前記マルチキャスト参加リストに登録されている前記移動端末との間に個別のユニキャストベアラを構築するユニキャストベアラ構築部と、該ユニキャストベアラを介して前記移動端末に前記マルチキャストデータを送信するマルチキャストデータ送信部が設けられ、
前記マルチキャストデータが、前記コアネットワークノード装置から前記無線基地局を経由して前記マルチキャスト参加リストに登録された前記移動端末に対し、個別の前記ユニキャストベアラを介して分配送信されることを特徴とするマルチキャスト配信システム。
【請求項2】
前記コアネットワークノード装置において、
前記マルチキャスト参加受付部は前記移動端末からのマルチキャストグループ参加要求を当該移動端末の端末アドレスとともに受け付けるものであり、
前記マルチキャスト参加リスト登録部は前記移動端末からの前記マルチキャストグループ参加要求を前記端末アドレスと対応付けて前記マルチキャスト参加リストに登録するものであり、
前記マルチキャストプロキシ部の前記ユニキャストベアラ構築指示送信部は、前記マルチキャスト参加リストにて前記端末アドレスに基づき前記ユニキャストベアラの構築先となる前記移動端末を特定し、当該移動端末に対する前記ユニキャストベアラの構築指示を前記無線基地局に対して送信するものである請求項1記載のマルチキャスト配信システム。
【請求項3】
前記マルチキャストプロキシ部は、パケットのヘッダ部に送信先アドレスとしてマルチキャストアドレスが格納された状態の前記マルチキャストデータを、前記送信先アドレスを変更することなく前記無線基地局に転送するものであり、
前記無線基地局の前記マルチキャストデータ送信部は前記マルチキャストデータを、前記送信先アドレスを変更することなく前記ユニキャストベアラを介して前記移動端末に送信する請求項2記載のマルチキャスト配信システム。
【請求項4】
前記コアネットワークノード装置は、マルチキャストグループ退出要求を前記移動端末から受信するに伴い、前記マルチキャスト参加リストから当該移動端末の登録を削除する登録削除制御部と、前記登録が削除された前記移動端末への前記マルチキャストデータの分配送信を停止するマルチキャストデータ送信停止制御部と、前記マルチキャスト参加リストから前記移動端末の登録が全て削除されるに伴い前記上位ネットワークに対し前記マルチキャストデータの配信停止を要求する配信停止要求部とを備え、
前記無線基地局の前記ユニキャストベアラ構築部は、前記移動端末との間に構築されている前記ユニキャストベアラの構築状態を、前記マルチキャスト参加リスト登録部から当該移動端末が削除されるに伴い解除する請求項3記載のマルチキャスト配信システム。
【請求項5】
移動端末からのマルチキャストグループ参加要求を、マルチキャストグループのグループIPアドレスを前記移動端末から無線基地局を経由して受信することにより受け付けるマルチキャスト参加受付部と、
前記マルチキャストグループ参加要求をマルチキャスト参加リストに登録するマルチキャスト参加リスト登録部と、
上位ネットワークから配信されるマルチキャストデータを受信するマルチキャストデータ受信部、前記マルチキャスト参加リストに登録されている前記移動端末との間に個別のユニキャストベアラを構築するためのユニキャストベアラ構築指示を前記無線基地局に向けて送信するユニキャストベアラ構築指示送信部、及び前記無線基地局に前記マルチキャストデータを転送するマルチキャストデータ転送部を有するマルチキャストプロキシ部と、
を備えたことを特徴とするコアネットワークノード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は携帯端末等の移動端末を含んだマルチキャスト配信システムに関するものであり、特にLTE(Long Term Evolution)システムなどにおいてマルチキャストデータの配信機能を、eMBMS(evolved Multimedia Broadcast Multicast Service)よりも簡便なネットワーク構成にて実現するためのマルチキャスト配信システムと、それに用いるコアネットワークノード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムの標準化プロジェクトである3GPP(Third Generation Partnership Project)において、マルチキャスト/ブロードキャストサービスを提供するために、MBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)が仕様化されている。現行のMBMSにおいては、複数のセルからなるMBSFN(Multicast-Broadcast Single-Frequency Network)のエリア単位で、マルチキャスト専用の物理チャネルであるPMCH(Physical Multicast Channel)を介してマルチキャストデータが送信される(MBSFN伝送)。この場合、無線基地局と移動端末との間にはマルチキャスト専用の無線ベアラであるマルチキャストベアラが構築され、マルチキャストデータは該マルチキャストベアラを介して各移動端末へ配信される(特許文献1,2)。
【0003】
また、特許文献3に開示されている方式も、その段落0045に「さらに、基地局装置12は、MBMS無線チャネル指示(MBMS Radio Channel Indication)メッセージで無線チャネルを端末13に通知する」と記載され、段落0077に「MBMSデータを転送するベアラ(transport bearer for MBMS)は、IPマルチキャストアドレスによって識別することができる。」と記載されているごとく、特許文献1及び特許文献2に開示されているのと同様のマルチキャストベアラを用いた配信方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-146109号公報
【文献】特開2018-113706号公報
【文献】特許5641088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マルチキャストベアラを用いてマルチキャスト配信を行なうためには、コアネットワーク及び無線基地局だけでなく、移動端末も含めてMBMS仕様の無線インターフェース、すなわちマルチキャストベアラ構築が可能な無線インターフェースを備えていなければならない。3GPPにおけるMBMSサービスはサービス共用されてからまだ間もないことから、MBMSに対応した移動端末の普及が追い付いておらず、MBMS未対応の移動端末しか保有していないユーザは、マルチキャストデータの配信を受けることが受けることができない問題がある。
【0006】
本発明の課題は、コアネットワークノード装置の処理負荷の増大させることなく、コアネットワークから無線基地局が受信するマルチキャストデータをMBMSに未対応の移動端末でも問題なく配信できるマルチキャスト配信システム及びそれに用いるコアネットワークノード装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明のマルチキャスト配信システムは、以下のように構成されることを特徴とする。すなわち、該マルチキャスト配信システムは、コアネットワークノード装置と、コアネットワークノード装置と物理回線により接続される無線基地局と、該無線基地局と無線接続される移動端末とを有し、コアネットワークノード装置から移動端末にMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)に準拠したマルチキャストデータを配信可能に構成される。コアネットワークノード装置には、移動端末からのマルチキャストグループ参加要求を、マルチキャストグループのグループIPアドレスを移動端末から無線基地局を経由して受信することにより受け付けるマルチキャスト参加受付部と、マルチキャストグループ参加要求をマルチキャスト参加リストに登録するマルチキャスト参加リスト登録部と、上位ネットワークから配信されるマルチキャストデータを受信するマルチキャストデータ受信部、マルチキャスト参加リストに登録されている移動端末との間に個別のユニキャストベアラを構築するためのユニキャストベアラ構築指示を無線基地局に向けて送信するユニキャストベアラ構築指示送信部、及び無線基地局にマルチキャストデータを転送するマルチキャストデータ転送部を有するマルチキャストプロキシ部と、が設けられる。また、無線基地局には、ユニキャストベアラ構築指示を受信するユニキャストベアラ構築指示受信部と、該ユニキャストベアラ構築指示を受けてマルチキャスト参加リストに登録されている移動端末との間に個別のユニキャストベアラを構築するユニキャストベアラ構築部と、該ユニキャストベアラを介して移動端末にマルチキャストデータを送信するマルチキャストデータ送信部とが設けられる。そして、マルチキャストデータが、コアネットワークノード装置から無線基地局を経由してマルチキャスト参加リストに登録された移動端末に対し、個別のユニキャストベアラを介して分配送信される。
【0008】
また、本発明のコアネットワークノード装置は、移動端末からのマルチキャストグループ参加要求を、マルチキャストグループのグループIPアドレスを移動端末から無線基地局を経由して受信することにより受け付けるマルチキャスト参加受付部と、マルチキャストグループ参加要求をマルチキャスト参加リストに登録するマルチキャスト参加リスト登録部と、上位ネットワークから配信されるマルチキャストデータを受信するマルチキャストデータ受信部、マルチキャスト参加リストに登録されている移動端末との間に個別のユニキャストベアラを構築するためのユニキャストベアラ構築指示を無線基地局に向けて送信するユニキャストベアラ構築指示送信部、及び無線基地局にマルチキャストデータを転送するマルチキャストデータ転送部を有するマルチキャストプロキシ部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマルチキャスト配信システムにおいては、移動端末からのマルチキャストグループ参加要求を受け付けて登録するマルチキャスト参加リスト登録部をコアネットワークノード装置に設ける。また、該コアネットワークノード装置には、無線基地局に対してマルチキャストグループ参加要求のあった移動端末との間にユニキャストベアラを個別に構築する指示を行なうとともに、上位ネットワークから受信するマルチキャストデータを無線基地局に転送するマルチキャストプロキシ部が設けられる。マルチキャストデータは、コアネットワークノード装置から無線基地局を経由してマルチキャスト参加リストに登録された移動端末に対し、上記の個別のユニキャストベアラを介して分配送信される。該構成により、無線基地局及び移動端末との間にマルチキャストデータを伝送する無線ベアラとして張られるのがユニキャストベアラとなり、マルチキャストベアラを構築できないMBMS未対応の移動端末でもマルチキャストデータを問題なく受信できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態であるマルチキャスト配信システムのブロック図。
図2】コアネットワークノード装置のブロック図。
図3】eNodeB(無線基地局)のブロック図。
図4】UE(移動端末)のブロック図。
図5】IPパケットの概念図。
図6】3GPPのコントロールプレーンのプロトコルスタックを概念的に示す図。
図7】3GPPのユーザープレーンのプロトコルスタックを概念的に示す図。
図8】本発明における下りリンクのチャネルマッピングを概念的に示す図。
図9】リソースブロックの概念図。
図10】UEがコアネットワークにアタッチする際の処理の流れを示す通信フロー図。
図11】本発明のマルチキャスト配信システムにおいてUEをマルチキャストグループに登録する処理の流れを示す通信フロー図。
図12】本発明のマルチキャスト配信システムにおいて、登録済みのUEに個別のユニキャストベアラを用いてデータストリーミングを行なう処理の通信フロー図。
図13】本発明のマルチキャスト配信システムにおいて、データストリーミングが終了したUEがマルチキャストグループを退出する処理の通信フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるマルチキャスト配信システムの全体構成を示すブロック図である。マルチキャスト配信システム1は3GPP(Third Generation Partnership Project)仕様に従う発展型無線通信網、具体的にはLTEシステムとして構成されている。ネットワークの要部は、コアネットワーク(あるいはEPC:Evolved Packet Core)と、無線基地局をなすeNodeB4と、これらを接続する物理回線網をなすE-UTRAN7(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network:図示の部分はS1回線と称される)からなり、eNodeB4には複数のUE5(User Equipment:移動端末)が無線接続される。また、図示はしていないが、E-UTRAN7は、eNodeB4を他のeNodeB4と接続するためのハンドオーバー用のX2回線を含む。
【0012】
コアネットワーク(EPC)にはコアネットワークノード装置3が設けられている。後述のごとく、本発明においては該コアネットワークノード装置3にマルチキャストプロキシ部3cが機能的に組み込まれる。該マルチキャストプロキシ部3cは、本実施形態においては、IGMP(Internet Group Management Protocol)のバージョン3(IGMPv3)に準拠したプロキシ機能を具現化するものとして構築されている。
【0013】
eNodeB4はE-UTRAN7を介して該コアネットワークノード装置3に接続されている。そしてコアネットワークノード装置3はマルチキャストプロキシ部3cにて、配信コンテンツを構成するマルチキャストデータをメディアサーバ6からマルチキャストルータ8を経由して受信するとともに、コアネットワークノード装置3からeNodeB4を経由してUE5に、個別のユニキャストベアラ12を経由してMBMS(evolved Multimedia Broadcast Multicast Service)に準拠したマルチキャストデータを配信するようになっている。
【0014】
マルチキャストルータ8は、メディアサーバ6から送信されるマルチキャストデータを複数のコアネットワークノード装置3に分配する役割を担う。具体的には、接続先のコアネットワークノード装置3からのマルチキャスト参加要求を受けて、該コアネットワークノード装置3をプロキシリストに登録するためのプロキシリスト登録部8aを備え、該プロキシリストに登録されたコアネットワークノード装置3にのみマルチキャストデータの配信を行なう。なお、コアネットワークノード装置3の設置数が1台のみである場合は、マルチキャストルータ8は省略することができる。
【0015】
図2はコアネットワークノード装置3の構成例を示すブロック図である。コアネットワークノード装置3は、MPU(Micro Processor Unit)にて構成された制御部3aと、メディアサーバ6からマルチキャストルータ8を経由してマルチキャストデータを受信するための上位側送受信部3kと、コア側送受信部3fとがバス接続されたハードウェア構成を有する。コア側送受信部3fは、eNodeB4との間でユニキャストデータ及びマルチキャストデータをE-UTRAN7の物理回線(S1回線)を介して送受信するためのものである。
【0016】
コアネットワークノード装置3には、制御部3aが実行するソフトウェアモジュール(又は制御部3aからの指令により動作するハードウェアロジック)により機能実現する以下の要素が設けられている(図1も参照)。
<マルチキャスト参加管理部3b>
以下の機能実現モジュールが組み込まれている。
・マルチキャスト参加受付部3b1:eNodeB(無線基地局)4を経由したUE(移動端末)5からのマルチキャストグループ参加要求を受け付ける。具体的には、UE5からのマルチキャストグループ参加要求を当該UE5の端末アドレスとともに受け付ける。
・マルチキャスト参加リスト登録部3b2:半導体メモリあるいは固定記憶装置として構成され、各UE5からのマルチキャストグループ参加要求をマルチキャスト参加リストに記憶・登録する。具体的には、UE5からのマルチキャストグループ参加要求を端末アドレスと対応付けてマルチキャスト参加リストに登録する
【0017】
・登録削除制御部3b3:マルチキャストグループ退出要求をUE(移動端末)5から受信するに伴い、マルチキャスト参加リスト登録部3b2から当該移動端末の登録を削除する。
・プロキシ登録要求部3b4:上位ネットワーク装置であるマルチキャストルータ8に対し、該マルチキャストルータ8内に設けられたプロキシリスト登録部8aにマルチキャストデータの配信先としてコアネットワークノード装置3を登録する要求(プロキシ登録要求)を、上位側送受信部3kに送信させる。該プロキシ登録要求は、コアネットワークノード装置3が、UE5からマルチキャストグループ参加要求を最初に受信するに伴い、マルチキャストルータ8に送信される。なお、後述のごとく、マルチキャストルータ8が省略される場合は、該プロキシ登録要求部3b4も省略される。
【0018】
<マルチキャストプロキシ部3c>
以下の機能実現モジュールが組み込まれている。
・マルチキャストデータ受信指令部3c1:上位ネットワーク(本実施形態では、メディアサーバ6及びマルチキャストルータ8)から配信されるマルチキャストデータの受信を上位側送受信部3kに指令する。該上位側送受信部3kと連携し、マルチキャストデータ受信部の機能を実現する。
・コア側ユニキャストベアラ構築指示送信指令部3c2:マルチキャスト参加リストに登録されているUE5(移動端末)との間に個別のユニキャストベアラ12を構築するための、ユニキャストベアラ構築指示をeNodeB4(無線基地局)に向けて送信することを、コア側送受信部3fに対し指令する。コア側送受信部3fと連携し、ユニキャストベアラ構築指示送信部の機能を実現する。具体的には、マルチキャスト参加リストにて端末アドレスに基づきユニキャストベアラ12の構築先となるUE5を特定し、当該UE5に対するユニキャストベアラ12の構築指示をeNodeB4に対して送信する。
【0019】
・マルチキャストデータ転送指令部3c3:eNodeB4(無線基地局)へのマルチキャストデータの転送をコア側送受信部3fに対して指令する。コア側送受信部3fと連携し、マルチキャストデータ転送部の機能を実現する。
・マルチキャストデータ送信停止指令部3c4:コア側送受信部3fに対し、登録が削除されたUE5へのマルチキャストデータの分配送信を停止する指令を行なう。コア側送受信部3fと連携し、マルチキャストデータ送信停止制御部の機能を実現する。
【0020】
・配信停止要求指令部3c5:マルチキャスト参加リスト登録部3b2からUE5の登録が全て削除されるに伴い、マルチキャストデータの配信停止要求をマルチキャストルータ8(上位ネットワーク装置)に対し上位側送受信部3kに送信させる指令を行なう。上位側送受信部3kと連携し、配信停止要求部の機能を実現する。
【0021】
<UE接続管理部3d>
eNodeB4を介してコアネットワークノード装置3に接続(アタッチ)するUE5にIPアドレスを割り振り、ユニキャストベアラ12を含むEPSベアラを構築する処理を管理する。EPSベアラは、UE5とeNodeB4との間の無線ベアラである上記ユニキャストベアラ12と、eNodeB4よりもコアネットワーク側の有線ベアラとを合わせた概念である。有線ベアラが構築される物理回線は、E-UTRAN7をなす物理回線(具体的にはeNodeB4とのコントロールプレーン側ノードをなすMMEとを結ぶS1-MME回線、及びeNodeB4とのユーザープレーン側ノードをなすS-GW(Serving Gateway)とを結ぶS1-U回線)と、コアネットワーク内のS-GW(Serving Gateway)と外部ネットワークとの接続ノードをなすP-GW(Packet data network Gateway)とを結ぶS5回線とからなるものである。EPSベアラは、コアネットワークにアタッチするUE5毎に生成され、各々ベアラIDが付与される。また、UE5のアタッチシーケンスにおいては、各UE5にベアラIDとは別に固有のIPアドレスが付与される。そして、各UE5のベアラIDとIPアドレスとは互いに対応付けられた形でUEアドレス・ベアラリスト記憶部3dに記憶される。
【0022】
図3は、eNodeB4の構成例を示すブロック図である。eNodeB4はMPUにて構成された制御部4aと、コアネットワークノード装置3との間でE-UTRAN7を経由してデータを送受信するための上位側送受信部4kと、基地局側無線送受信部4fとがバス接続されたハードウェア構成を有する。該eNodeB4には、制御部4aが実行するソフトウェアモジュール又は制御部4aからの指令により動作するハードウェアロジックにより機能実現する以下の要素が設けられている(図1も参照)。
【0023】
・ユニキャストベアラ構築指示受信指令部4b:コアネットワークノード装置3からのユニキャストベアラ構築指示の受信を上位側送受信部4kに指令する。
・基地局側ユニキャストベアラ構築指示部4c:コアネットワークノード装置3からのユニキャストベアラ構築指示を受け基地局側無線送受信部4fに対し、マルチキャスト参加リストに登録されているUE5(移動端末)との間に個別のユニキャストベアラ12の構築を指令する。基地局側無線送受信部4f及びUE5と連携し、ユニキャストベアラ構築部の機能を実現する。
・マルチキャストデータ送信指令部4d:構築されたユニキャストベアラ12を介したUE5(移動端末)へのマルチキャストデータの送信を基地局側無線送受信部4fに指令する。基地局側無線送受信部4fと連携し、マルチキャストデータ送信部の機能を実現する。
【0024】
図4はUE5の構成例を示すブロック図である。UE5はMPUにて構成された制御部5aと、端末側無線送受信部5fとがバス接続されたハードウェア構成を有する。また、制御部5aが実行するソフトウェアモジュール又は制御部5aからの指令により動作するハードウェアロジックにより機能実現する以下の要素が設けられている。
・ユニキャストベアラ構築指令部5b:eNodeB4からのユニキャストベアラ構築指示を受け、端末側無線送受信部5fにeNodeB4との間のユニキャストベアラ12の構築を指令する。端末側無線送受信部5f及び基地局側無線送受信部4fと連携し、ユニキャストベアラ構築部の機能を実現する。
・マルチキャスト参加要求送信指令部5c:端末側無線送受信部5fに対し、eNodeB4へのマルチキャスト参加要求の送信を指令する。
【0025】
図5は、マルチキャストにて配信されるIPパケットの一例を示す模式図である。IPパケット300はIPヘッダ301とIPペイロード302とからなり、IPヘッダ301にはIPペイロード302へ書き込まれるデータの送信元IPアドレス301a、同じく送信先IPアドレス301bが書き込まれる。また、IPペイロード302には、ユーザーデータの場合は配信コンテンツの主体となるデータが、制御データの場合は種々の制御コマンドなどが書き込まれる。マルチキャストパケットの場合は、送信先アドレス301bとしてマルチキャストグループを特定するための特有のIPアドレスが書き込まれる。
【0026】
図6及び図7は、LTEシステムにおける無線インターフェースのプロトコルスタックを示し、図6はユーザープレーンのプロトコルスタックを、図7はコントロールプレーンのプロトコルスタックを示している。無線インターフェースプロトコルは、OSI参照モデルのレイヤ1~レイヤ3に区分されており、レイヤ1はPHY(物理)層である。レイヤ2は、MAC(Medium Access Control:メディアアクセス制御)層、RLC(Radio Link Control:無線リンク制御)層、及びPDCP(Packet Data Convergence Protocol:パケットデータ暗号化)層を含む。レイヤ3は、RRC(Radio Resource Control:無線リソース制御)層及びNAS(Non-Access Stratum:非アクセス)層を含む。
【0027】
各層の役割は以下の通りである。
・PHY層:符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。UE5のPHY層とeNodeB4のPHY層との間では、物理チャネルを介してデータ及び制御信号が伝送される。
・MAC層:データの優先制御、HARQ(Hybrid ARQ)による再送処理、及びランダムアクセス手順等を行う。UE5のMAC層とeNodeB4のMAC層との間では、トランスポートチャネルを介してデータ及び制御信号が伝送される。eNodeB4のMAC層は、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS))及びUE5への割当リソースブロックを決定するスケジューラを含む。
【0028】
・RLC層:MAC層及びPHY層の機能を利用してデータを受信側のRLC層に伝送する。UE5のRLC層とeNodeB4のRLC層との間では、論理チャネルを介してデータ及び制御信号が伝送される。
・PDCP層:ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行う。
・RRC層:制御信号を取り扱う制御プレーンでのみ定義される。UE5のRRC層とeNodeB4のRRC層との間では、各種設定のためのメッセージ(RRCメッセージ)が伝送される。RRC層は、無線ベアラ(ユニキャストベアラ)の確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル及び物理チャネルを制御する。UE5のRRCとeNodeB4のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE5はRRCコネクティッドモードとなり、そうでない場合はRRCアイドルモードとなる。
【0029】
以上の層はコントロールプレーン及びユーザープレーンの双方にて使用される。一方、コントロールプレーンのみ、UE5及びコアネットワークノード装置3には、RRC層よりさらに上位に、セッション管理及びモビリティ管理等を行うNAS層が設けられる。
【0030】
次に、図8は、LTEシステムにおける下りリンクのチャネルマッピングを示す。ここでは、論理チャネル(Downlink Logical Channel)、トランスポートチャネル(Downlink Transport Channel)及び物理チャネル(Downlink Physical Channel)相互間のマッピング関係を示している。以下、順に説明する。
・DTCH(Dedicated Traffic Channel:専用トラフィックチャネル)は、データの送信のための個別論理チャネルである。DTCHは、トランスポートチャネルであるDLSCH(Downlink Shared Channel:下りシェアドチャネル)にマッピングされる。
・DCCH(Dedicated Control Channel:専用制御チャネル):UE5とネットワークとの間の個別制御情報を送信するための論理チャネルである。DCCHは、UE5がRRC接続を有する場合に用いられる。DCCHは、DLSCHにマッピングされる。
・CCCH(Common Control Channel:共通制御チャネル):UE5とeNodeB4との間の送信制御情報のための論理チャネルである。CCCHは、UE5がeNodeB4(ネットワーク)との間でRRC接続を有していない場合に用いられる。CCCHはDLSCHにマッピングされる。
【0031】
・BCCH(Broadcast Control Channel:放送制御チャネル):システム情報配信のための論理チャネルである。BCCHは、トランスポートチャネルであるBCH(Broadcast Channel、放送チャネル)又はDLSCHにマッピングされる。
・PCCH(Paging Control Channel:ページング制御チャネル):ページング情報、及びシステム情報変更を通知するための論理チャネルである。PCCHは、トランスポートチャネルであるPCH(Paging Channel:ページングチャネル)にマッピングされる。
【0032】
・MCCH(Multicast Control Channel:マルチキャスト制御チャネル):マルチキャスト伝送のための論理チャネルである。MCCHは、eNodeB4からUE5へのMTCH用のMBMS制御情報の送信のために用いられる。MCCHは、トランスポートチャネルであるMCH(Multicast Channel:マルチキャストチャネル)にマッピングされる。
・MTCH(Multicast Traffic Channel:マルチキャストトラフィックチャネル):eNodeB4からUE5へのマルチキャストデータ(コンテンツ)を伝送するための論理チャネルである。MTCHは、MCHにマッピングされる。
本発明においては、図2のコアネットワークノード装置3のマルチキャストプロキシ部3cの機能により、マルチキャストデータがeNodeB4を経てUE5に対しDLSCHを用いたユニキャストベアラにより配信されるため、MBMS専用に用意されたこれらのマルチキャストチャネル群(図8において破線で示した部分50)は使用されない、という点が重要である。
【0033】
また、トランスポートチャネルと物理チャネルとの間のマッピング関係は以下の通りである。
DLSCH及びPCH:PDSCH(Physical Downlink Shared Channel:物理下りシェアドチャネル)にマッピングされる。DLSCHは、HARQ、リンクアダプテーション、及び動的リソース割当をサポートする。
・BCH:PBCH(Physical Broadcast Channel:物理ブロードキャストチャネル)にマッピングされる。
・MCH:PMCH(Physical Multicast Channel:物理マルチキャストチャネル)にマッピングされる。MCHは、複数のセルによるMBSFN伝送をサポートするが、本発明においては使用されない。
【0034】
次に、LTEシステムにおいては、UE5はeNodeB4に対してOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing、直交周波数分割多重)アクセス(OFDMA)により無線接続する。OFDMA方式は、周波数分割多重と時間分割多重とを複合させた二次元の多重化アクセス方式として特徴づけられる。具体的には、直交する周波数軸と時間軸のチャネル(サブキャリア)を分割してUE5に割り振り、各サブキャリアの信号がゼロ(0点)になるように周波数軸上で直交するサブキャリアを分割する。サブキャリアを分割して周波数軸上に割り当てることにより、あるサブキャリアがフェージングの影響を受けても影響のない別のサブキャリアを選択することがでるので、ユーザは無線環境に応じてより良好なサブキャリアを使用でき、無線品質を維持できる利点が生ずる。
【0035】
そして、OFDMA方式においては、周波数軸と時間軸とが張る仮想平面上で定義されるリソースブロック(Resource Block:以下、RBともいう)が無線リソースとして採用される。RBは図9に示すように、上記平面を180kHz/0.5msecでマトリックスに区切ったブロックとして定義され、各ブロックは周波数軸上では15kHz間隔で隣接する12個のサブキャリアを、時間軸上ではフレームの1スロット分(7シンボル)を含む。このRBは時間軸上で隣接する2つ(1msec)を1組としてUE5に割り当てられる。
【0036】
本発明においては、従来のMBMSシステムと同様に、マルチキャストグループ参加要求のあったUE5がマルチキャストグループに登録され、その登録されたUE5に対してマルチキャストデータ(コンテンツ)が配信される。しかし、そのマルチキャストグループの登録管理を行なうコアネットワークノード装置3は、登録されているUE5のIPアドレスを特定しつつ、そのIPアドレスによりコンテンツ配信先となるUE5との間に個別のユニキャストベアラ12を構築し、そのユニキャストベアラ12によりマルチキャストデータの配信を行なう。
【0037】
すなわち、周波数帯域占有幅が小さくかつ周波数リソースがダイナミックに割り当て制御される該ユニキャストベアラを、マルチキャストグループに参加するUE5の台数分だけ構築すればよいので、マルチキャストに参加するUE5の数によらず周波数帯域占有幅の大きいマルチキャストベアラを使用する従来のMBMS方式と比較して、限られた無線リソースをより有効に活用することができる。また、UE5としては、マルチキャストベアラを構築できないMBMS非対応の機器であっても、マルチキャストデータの受信が可能となる(MBMS対応機器ももちろん使用可能であるが、ユニキャスト部分だけが使用される形となる)。
【0038】
また、マルチキャストデータ(コンテンツ)の配信が終了したUE5はマルチキャストグループから順次退出し、張られているユニキャストベアラが順次切断されるので、マルチキャストデータ(コンテンツ)の配信があるUE5に対して終了するたびに、占有されていた無線リソースは解放されることとなる。これにより、マルチキャストグループに参加するUE5のうち、コンテンツ配信が継続しているUE5についてのみ、ユニキャストベアラを張るための無線リソースを割り当てればよくなる。
【0039】
以下、図1のマルチキャスト配信システム1の動作について、図10図13の通信フロー図を用いて説明する。図10は、電源投入(立ち上げ)に伴いUE5がLTEネットワークに接続(アタッチ)するときの処理の流れを示すものである。図10においては、例示として、2つのUE(I)及びUE(II)が順次、eNodeB4に対して接続する状況を示している。すなわち、TS901ではUE(I)の電源が投入される。これに伴いUE(I)、eNodeB4及びコアネットワークノード装置3の間では、初期接続のためのアタッチシーケンスが実行される。このアタッチシーケンスは、LTEシステムにおける通常のユニキャスト通信と同様の手順にて実施される。
【0040】
上記のアタッチシーケンスが完了すると、TS902では、UE(I)、eNodeB4及びコアネットワークノード装置3の間にEPSベアラ(I)が構築される。このとき、UE(I)にはIPアドレス(11.11.15.105)が割り振られるとともに、構築されたEPSベアラ(I)にはベアラIDとしてBID#1が割り振られ、TS903にて、これらが互いに対応付けられてUEアドレス・ベアラリスト記憶部3d1に記憶される。
【0041】
続いて、TS904ではUE(II)の電源が投入される。これに伴い、UE(II)、eNodeB4及びコアネットワークノード装置3の間では、初期接続のためのアタッチシーケンスが実行される。そして、TS905では、UE(II)、eNodeB4及びコアネットワークノード装置3の間にEPSベアラ(II)が構築される。このとき、UE(II)にはIPアドレス(11.11.15.106)が割り振られるとともに、構築されたEPSベアラ(II)にはベアラIDとしてBID#2が割り振られ、TS906にて、これらが互いに対応付けられてUEアドレス・ベアラリスト記憶部3d1に追加記憶される。以降、さらに新たなUE5の接続があった場合も、同様の処理が繰り返される。
【0042】
図11は、各UE5がマルチキャストグループ参加要求を行なう際の処理の流れを示している。eNodeB4と各UE5(UE(I),UE(II),・・・)との間は無線ベアラ接続、eNodeB4とコアネットワークノード装置3との間はS1及びS5回線を用いた有線ベアラ接続である。前述の通り、UE(I)及びUE(II)のIPアドレスは、それぞれ「11.11.15.105」及び「11.11.15.106」である。また、マルチキャストグループのグループIPアドレスは「239.255.0.1」である。他方、マルチキャストルータ8と対応付けて示されているIPアドレス:「224.0.0.22」は、IGMPv3固有に割り振られたリンクローカルアドレスである。このIPアドレスにより指定される宛先は、マルチキャストルータ8が属するローカルネットワークエリア内の全てのホストノード装置であり、当該宛先を示すIPパケットによりマルチキャストグループへの参加・離脱の制御メッセージが送信される。結果的にマルチキャストルータ8はこれを受信することで、グループへの参加・離脱を管理する役割を果たす。
【0043】
マルチキャストのストリーム開始前の状態では、コアネットワークノード装置3のマルチキャスト参加リスト登録部3b2には、マルチキャストグループのIPアドレスも、参加UEのIPアドレスも登録されていない空の状態となっている(TS1001)。そして、TS1002では、UE(I)からマルチキャストグループ参加要求が、グループIPアドレス「239.255.0.1」を指定する形でeNodeB4を経由してコアネットワークノード装置3に送信される。なお、以下も同様であるが、データ送信方向を示す矢印の下には、送信されるパケットのIPヘッダに記入される送信元アドレスと送信先アドレスとを表示している(例えばTS1002では「送信元:11.11.15.105, 送信先 224.0.0.22」)。
【0044】
コアネットワークノード装置3ではこれを受信し、TS1003でマルチキャスト参加リスト登録部3b2にグループIPアドレス(「239.255.0.1」)と参加UEのIPアドレス(ここでは、UE(I)の「11.11.15.105」)が登録される。また、コアネットワークノード装置3において、これが最初のマルチキャストグループ参加要求であるため、TS1004にて、上位ネットワーク装置であるマルチキャストルータ8にマルチキャストグループ参加要求を送信する。マルチキャストルータ8においてはプロキシリスト登録部8aに、グループIPアドレス(「239.255.0.1」)とコアネットワークノード装置3を特定するためのIPアドレス(ここでは、コアネットワークノード装置3に対し最初のマルチキャストグループ参加要求を送信したUE(I)のIPアドレス「11.11.15.105」)が登録される(プロキシリスト登録)。
【0045】
続いて、TS1006では、UE(II)からマルチキャストグループ参加要求が同様にeNodeB4を経由してコアネットワークノード装置3に送信される。コアネットワークノード装置3ではこれを受信し、TS1007でマルチキャスト参加リスト登録部3b2にUE(II)のIPアドレス「11.11.15.106」が追加登録される。ここでは、すでにTS1004にてマルチキャストルータ8へのプロキシリスト登録は終了しているので、新たな登録のための情報送信は行われない。以下、マルチキャストグループに参加するUE5がさらに存在する場合にはTS1006及びTS1007の手順が繰り返され、マルチキャスト参加リスト登録部3b2に各UE5のIPアドレスが順次登録される。
【0046】
各UE5のマルチキャストグループ参加要求のマルチキャスト参加リスト登録部3b2への登録処理が終了すれば、図12に示すコンテンツ配信処理のシーケンスに移る。マルチキャストルータ8はメディアサーバ6からコンテンツのストリームデータ(マルチキャストデータ)を受信し、プロキシリスト登録部8a(図2)に登録されているコアネットワークノード装置3に対し、これを送信する(TS2001)。マルチキャストルータ8はプロキシリスト登録部8aにプロキシ登録されているコアネットワークノード装置3に該ストリームデータを転送する(プロキシ登録されているコアネットワークノード装置3が複数ある場合は、各コアネットワークノード装置3にストリームデータを分配転送する)。
【0047】
このとき、メディアサーバ6からマルチキャストルータ8を経てコアネットワークノード装置3に送信されるストリームデータのパケットのIPヘッダの内容は、「送信元:192.168.12.4(メディアサーバ)、 送信先 239.255.0.1(マルチキャストグループ)」となっている。送信先アドレスをアンダーラインにて強調して示す通り、これは、特定のUE5を送信先とするユニキャストパケットではなく、IPアドレスが示すマルチキャストグループに参加したUE5を送信対象とするマルチキャストパケットであることを意味している。
【0048】
従来のMBMSシステムでは、該マルチキャストパケットはコアネットワークノード装置3からeNodeBを経て各UEに対し、MBMS専用のマルチキャストベアラを用いて配信されていた。通常のMBMS規格では、マルチキャストベアラが構築されるトランスポートチャネルは前述のごとく専用のMCHであり、下りリンク専用の一対多通信の伝送容量を確保するために、通信チャネルは固定化され、かつ帯域幅も広く確保されている(例えば20~80MHz)。他方、図12においてコアネットワークノード装置3から各UE5に張られるのはユニキャストベアラ12(あるいはEPSベアラ)である。3GPPのプロトコルに従えば、ユニキャストベアラ上に送信可能なデータパケットは、送信先IPアドレスとして送信先UEのIPアドレスが書き込まれているユニキャストパケットのみであり、送信先IPアドレスがグループアドレスとなっているマルチキャストパケットはコアネットワークノード装置3にて破棄され、通常はユニキャストベアラ12上に流れることがない。
【0049】
しかし、図12のマルチキャスト配信システム1においては、コアネットワークノード装置3に組み込まれたマルチキャストプロキシ部3cの機能により、マルチキャスト参加リスト登録部3b2に登録されたIPアドレスにより送信先のUE5が特定され、コンテンツ配信時刻が到来してマルチキャストデータが上位ネットワーク(マルチキャストルータ8)から送られてくると、それら送信先のUE5との間にユニキャストベアラ1(EPSベアラ)がマルチキャストデータ配信に特化した形で個別に構築される。マルチキャストプロキシ部3cは、受信するストリームデータのパケットのIPヘッダの送信先アドレスの内容を確認し、該送信先アドレスがそれらUE5の参加しているマルチキャストグループのIPアドレスであった場合に、送信先アドレスを変更することなく、ユニキャストベアラ12が張られている各UE5に分配転送する。つまり、ストリームデータがマルチキャストデータパケットのフォーマットのままユニキャストベアラ12上を流れるようになる。これにより、コアネットワークノード装置3は、従来、マルチキャストパケットのトンネリングに必要であったTEID等の追加や書き換えを行なうことなくマルチキャストデータを配信することが可能となり、処理負荷の軽減が実現する。
【0050】
具体的には、図12において、コアネットワークノード装置3は、TS2003及びTS2004にて、マルチキャスト参加リスト登録部3b2を参照し、受信したマルチキャストのIPアドレスから、マルチキャストデータを配信すべきUE5のIPアドレスをリストアップする。コアネットワークノード装置3は、そのリストアップされたUE5のIPアドレスに基づき、UEアドレス・ベアラリスト記憶部3d1の記憶内容を参照して、マルチキャストデータを配信すべきベアラIDを特定し、該ベアラIDが示すEPSベアラ(及びeNodeB4)を介して各UE5(UE(I),UE(II),・・・)にストリームデータ(マルチキャストデータパケット)を分配転送する。
【0051】
UE5は、ユニキャストベアラを構築可能な無線インターフェースを備えたものであれば、特にMBMSに対応したものでなくとも、マルチキャストコンテンツの配信を受けることが可能となる。3GPP仕様の無線通信網においては、個々のユニキャストベアラ12は事前に無線リソースブロックを予約する必要がなく、配信データが存在するときにのみダイナミックに割り当てられ、かつ各UE5に最適な変調度が選択されてデータ送信がなされる。そして、本発明の方式では、これをマルチキャストデータ配信に利用することでマルチキャストベアラを利用する一般的な方式と比較して無線リソースの有効活用に大きく貢献できる。特にマルチキャストに参加するUE5の台数が少ない場合には、該効果はより顕著となる。
【0052】
図13は、ストリーミングが終了したUE5が順次マルチキャストグループから退出し、コンテンツ配信終了に至る処理の流れを示している。TS2001~TS2006では、図12を用いて説明したストリームデータの各UE5への配信が継続中である。次に、TS3001では、UE(I)(「11.11.15.105」)においてコンテンツのストリームデータの配信が終了し、UE(I)からのマルチキャストグループ退出要求が、グループIPアドレス「239.255.0.1」を指定する形でeNodeB4を経由してコアネットワークノード装置3に送信される。コアネットワークノード装置3ではこれを受信し、TS3002でマルチキャスト参加リスト登録部3b2からUE(I)のIPアドレス(「11.11.15.105」)を削除する。
【0053】
このとき、グループから退出したUE(I)に対し、eNodeB4はユニキャストベアラ(EPSベアラ)構築のセッション終了を通知する。これを受けてUE(I)は無線接続状態を切断する。eNodeB4は、当該ユニキャストベアラ(EPSベアラ)構築に割り当てていた無線リソースを解放する。他方、UE(II)「11.11.15.106」へのストリームデータ配信(TS2001’、2002’、2004’、2006’)は継続している。
【0054】
続いて、TS3003では、UE(II)(「11.11.15.106」)においてコンテンツのストリームデータの配信が終了し、UE(II)からマルチキャストグループ退出要求が、グループIPアドレス「239.255.0.1」を指定する形でeNodeB4を経由してコアネットワークノード装置3に送信される。コアネットワークノード装置3ではこれを受信し、TS3004でマルチキャスト参加リスト登録部3b2からUE(II)のIPアドレス(「11.11.15.106」)を削除する。これにより、UE(II)との無線接続も切断され、EPSベアラ構築に割り当てられていた無線リソースが解放される。これらの処理が、全てのUE5に対するストリーミングが終了するまで繰り返される。
【0055】
そして、例えばTS3004にて、マルチキャスト参加リスト登録部3b2のUE5(IPアドレス)の登録が全て削除されるとTS3005に進み、コアネットワークノード装置3はマルチキャストルータ8に対し、グループIPアドレス「239.255.0.1」を指定する形でマルチキャストグループの退出を要求する。マルチキャストルータ8はこれを受け、TS3006にてプロキシリスト登録部8aからコアネットワーク装置3を特定するためのIPアドレス(コアネットワークノード装置3に対し最初のマルチキャストグループ参加要求を送信したUE(I)のIPアドレス「11.11.15.105」)を削除し、ストリームデータの配信を停止する。
【0056】
このように、UE5とeNodeB4との間にマルチキャストデータ配信用に張られるユニキャストベアラ12(EPSベアラ)は、UE5がマルチキャストグループを退出するごとに切断され、その都度占有されていた無線リソースが解放される。よって、マルチキャスト配信の通信状況に応じて無線リソースの使用状況が随時適正化されるので、限られた無線リソースの有効活用に貢献することができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、あくまで例示であって、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図1において、メディアサーバ6からのマルチキャストのストリームデータの配信先となるコアネットワークノード装置3が1つだけである場合は、マルチキャストルータ8を省略できるので、図11図13においてコアネットワークノード装置3とマルチキャストルータ8との間のプロキシ登録処理の流れは不要となる。
【符号の説明】
【0058】
1 マルチキャスト配信システム
3 コアネットワークノード装置
3a 制御部(MPU)
3b マルチキャスト参加管理部
3b1 マルチキャスト参加受付部
3b2 マルチキャスト参加リスト登録部
3b3 登録削除制御部
3b4 プロキシ登録要求部
3c マルチキャストプロキシ部
3c1 マルチキャストデータ受信指令部
3c2 コア側ユニキャストベアラ構築指示送信指令部
3c3 マルチキャストデータ転送指令部
3c4 マルチキャストデータ送信停止指令部
3c5 配信停止要求指令部
3f コア側送受信部
3k 上位側送受信部
4 eNodeB(無線基地局)
4a 制御部(MPU)
4b ユニキャストベアラ構築指示受信指令部
4c 基地局側ユニキャストベアラ構築指示部
4d マルチキャストデータ送信指令部
4f 基地局側無線送受信部
4k 上位側送受信部
5 UE(移動端末)
5a 制御部(MPU)
5b ユニキャストベアラ構築指令部
5c マルチキャスト参加要求送信指令部
5f 端末側無線送受信部
6 メディアサーバ
7 E-UTRAN
12 ユニキャストベアラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13