(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】人力駆動車用の制御装置
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20231019BHJP
B62M 9/121 20100101ALI20231019BHJP
【FI】
B62M6/45
B62M9/121
(21)【出願番号】P 2019040068
(22)【出願日】2019-03-05
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松田 浩史
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-239980(JP,A)
【文献】特開2016-007905(JP,A)
【文献】特開2018-070000(JP,A)
【文献】特開2015-164836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/40 - 6/75
B62M 9/00 - 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸の回転速度に対する駆動輪の回転速度の変速比率を変更するための変速機、および、前記クランク軸に入力される人力駆動力の伝達経路において前記変速機よりも上流側にトルクを伝達するように構成され
て人力駆動車に推進力を付加するように構成されるモータを含む人力駆動車用の制御装置であって、
前記モータを制御する制御部を含み、
前記制御部は、
前記人力駆動力に応じて前記モータを制御する第1モード、および、前記モータを駆動しない第2モードの少なくとも1つと、前記人力駆動車の押し歩きをアシストするように前記モータを駆動可能な第3モードと、を切り替え可能に構成され、
前記第1モードおよび前記第2モードの少なくとも1つにおいて、前記人力駆動車の走行速度と、前記クランク軸の回転速度と、に応じて前記変速比率の推定変速比率を推定し、
前記第3モードにおいて、前記推定変速比率に応じて前記モータの回転速度を制御可能に構成される、制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1モードおよび前記第2モードにおいて、前記変速比率を推定できない場合、前記第3モードにおいて、予め定める変速比率に応じて前記モータの回転速度を制御する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第3モードにおいて前記モータを駆動した後、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の前記走行速度とに応じて、前記モータの回転速度を制御可能に構成され、
前記第3モードにおいて、前記予め定める変速比率に応じて前記モータの回転速度を制御する場合において、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の前記走行速度とに基づいて算出される変速比率が、前記予め定める変速比率と実質的に異なる場合、算出される前記変速比率に応じて前記モータの回転速度を制御する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第3モードにおいて前記モータを駆動した後、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の前記走行速度とに応じて、前記モータの回転速度を制御可能に構成される、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第3モードにおいて、前記推定変速比率に応じて前記モータの回転速度を制御する場合において、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の前記走行速度とに基づいて算出される変速比率が、前記推定変速比率と実質的に異なる場合、算出される前記変速比率に応じて前記モータの回転速度を制御する、請求項3または4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第3モードにおいて、前記推定変速比率に応じて前記モータの回転速度を制御する場合において、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の前記走行速度とに基づいて算出される変速比率が、前記推定変速比率よりも大きい場合、前記モータの回転速度を小さくする、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第3モードにおいて、前記推定変速比率に応じて前記モータの回転速度を制御する場合において、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の前記走行速度とに基づいて算出される変速比率が、前記推定変速比率よりも小さい場合、予め定める第1条件を満たすと前記モータの回転速度を大きくする、請求項5または6に記載の制御装置。
【請求項8】
クランク軸の回転速度に対する駆動輪の回転速度の変速比率を変更するための変速機、および、前記クランク軸に入力される人力駆動力の伝達経路において前記変速機よりも上流側にトルクを伝達するように構成され
て人力駆動車に推進力を付加するように構成されるモータを含む人力駆動車用の制御装置であって、
前記モータを制御する制御部を含み、
前記制御部は、
前記人力駆動車の押し歩きをアシストするように前記モータを駆動可能な第3モードで前記モータを制御可能に構成され、
前記第3モードにおいて前記モータの回転速度が予め定める回転速度となるように前記モータを駆動した後、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の走行速度とに応じて、前記変速比率を算出し、
前記第3モードにおいて算出される前記変速比率が、予め定める変速比率とは実質的に異なる場合、前記算出される前記変速比率に応じて、前記走行速度が予め定める第1速度に近づくように前記モータの回転速度を制御する、制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の前記走行速度とに基づいて算出される変速比率が、前記予め定める変速比率よりも大きい場合、前記モータの回転速度を小さくする、請求項3または8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の前記走行速度とに基づいて算出される変速比率が、前記予め定める変速比率よりも小さい場合、予め定める第2条件を満たすと前記モータの回転速度を大きくする、請求項3、8、および、9のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記人力駆動車の前記走行速度を検出するための車速センサを含み、
前記車速センサは、前記人力駆動車の車輪に設けられる磁石を検出するように構成され、前記車輪が1回転する間に、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される、請求項1から10のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記予め定める回数は、1である、請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記第3モードにおいて、操作装置の操作に応じて前記モータを駆動するように構成される、請求項1から12のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記操作装置が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている間、前記モータを駆動するように構成される、請求項13に記載の制御装置。
【請求項15】
前記予め定める第3条件は、前記人力駆動車のクランク軸が回転していない場合、および、前記人力駆動車の走行速度が、予め定める第2速度以下である場合、の少なくとも1つの場合に満たされている、請求項14に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている人力駆動車用制御装置は、人力駆動車両に入力される人力駆動力に対するモータの出力の比率が所定の比率になるようにモータを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の1つは、モータを好適に制御できる人力駆動車用の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、人力駆動車に推進力を付加するように構成されるモータを制御する制御部を含み、前記人力駆動車は、前記人力駆動車のクランク軸の回転速度に対する前記人力駆動車の駆動輪の回転速度の変速比率を変更するための変速機を含み、前記モータは、前記クランク軸に入力される人力駆動力の伝達経路において前記変速機よりも上流側にトルクを伝達するように構成され、前記制御部は、前記人力駆動力に応じて前記モータを制御する第1モード、および、前記モータを駆動しない第2モードの少なくとも1つと、前記人力駆動車の押し歩きをアシストするように前記モータを駆動可能な第3モードと、を切り替え可能に構成され、前記第1モードおよび前記第2モードの少なくとも1つにおいて、前記人力駆動車の走行速度と、前記クランク軸の回転速度と、に応じて前記変速比率を推定し、前記第3モードにおいて、推定された前記変速比率に応じて前記モータの回転速度を制御可能に構成される。
第1側面の制御装置によれば、人力駆動車を押し歩く場合に、モータを好適に制御できる。
【0006】
本開示の第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記制御部は、前記第1モードおよび前記第2モードにおいて、前記変速比率を推定できない場合、前記第3モードにおいて、予め定める変速比率に応じて前記モータの回転速度を制御する。
第2側面の制御装置によれば、比率を推定できない場合であっても、人力駆動車を押し歩く場合に、モータを好適に制御できる。
【0007】
本開示の第2側面に従う第3側面の制御装置において、前記制御部は、前記第3モードにおいて前記モータを駆動した後、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の前記走行速度とに応じて、前記モータの回転速度を制御可能に構成され、前記第3モードにおいて、前記予め定める変速比率に応じて前記モータの回転速度を制御する場合において、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の前記走行速度とに基づいて算出される変速比率が、前記予め定める変速比率と実質的に異なる場合、算出される前記変速比率に応じて前記モータの回転速度を制御する。
第3側面の制御装置によれば、例えば人力駆動車を停車している間に変速比率を変更した場合であっても、人力駆動車を押し歩く場合に、モータを好適に制御できる。
【0008】
本開示の第1または2側面に従う第4側面の制御装置において、前記制御部は、前記第3モードにおいて前記モータを駆動した後、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の前記走行速度とに応じて、前記モータの回転速度を制御可能に構成される。
第4側面に従う制御装置によれば、例えば人力駆動車を停車している間に変速比率を変更した場合であっても、人力駆動車を押し歩く場合に、モータを好適に制御できる。
【0009】
本開示の第3または第4側面に従う第5側面の制御装置において、前記制御部は、前記第3モードにおいて、推定された変速比率に応じて前記モータの回転速度を制御する場合において、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の前記走行速度とに基づいて算出される変速比率が、推定された前記変速比率と実質的に異なる場合、算出される前記変速比率に応じて前記モータの回転速度を制御する。
第5側面の制御装置によれば、例えば人力駆動車を停車している間に変速比率を変更した場合であっても、人力駆動車を押し歩く場合に、モータを好適に制御できる。
【0010】
本開示の第5側面に従う第6側面の制御装置において、前記制御部は、前記第3モードにおいて、推定された変速比率に応じて前記モータの回転速度を制御する場合において、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の前記走行速度とに基づいて算出される変速比率が、推定された前記変速比率よりも大きい場合、前記モータの回転速度を小さくする。
第6側面の制御装置によれば、人力駆動車を押し歩く場合に、人力駆動車の走行速度が速くなり過ぎることを抑制できる。
【0011】
本開示の第5または第6側面に従う第7側面の制御装置において、前記制御部は、前記第3モードにおいて、推定された変速比率に応じて前記モータの回転速度を制御する場合において、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の前記走行速度とに基づいて算出される変速比率が、推定された前記変速比率よりも小さい場合、予め定める第1条件を満たすと前記モータの回転速度を大きくする。
第7側面の制御装置によれば、人力駆動車を押し歩く場合に、人力駆動車の走行速度が遅くなり過ぎることを抑制できる。また予め定める第1条件を満たすまでは、モータの回転速度を大きくしないので、誤検出によって人力駆動車の走行速度が速くなることを抑制できる。
【0012】
本開示の第8側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、人力駆動車に推進力を付加するように構成されるモータを制御する制御部を含み、前記制御部は、前記人力駆動車の押し歩きをアシストするように前記モータを駆動可能な第3モードで前記モータを制御可能に構成され、第3モードにおいて前記モータの回転速度が予め定める回転速度となるように前記モータを駆動した後、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の走行速度とに応じて、前記人力駆動車の変速比率を算出し、算出される前記変速比率が、予め定める変速比率とは実質的に異なる場合、前記算出される前記変速比率に応じて、前記走行速度が予め定める第1速度に近づくように前記モータの回転速度を制御する。
第8側面の制御装置によれば、例えば人力駆動車を停車している間に変速比率を変更した場合であっても、人力駆動車を押し歩く場合に、モータを好適に制御できる。
【0013】
本開示の第3または第8側面に従う第9側面の制御装置において、前記制御部は、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の前記走行速度とに基づいて算出される変速比率が、前記予め定める変速比率よりも大きい場合、前記モータの回転速度を小さくする。
第9側面の制御装置によれば、人力駆動車を押し歩く場合に、人力駆動車の走行速度が速くなり過ぎることを抑制できる。
【0014】
本開示の第3、第8、および、第9側面のいずれか1つに従う第10側面の制御装置において、前記制御部は、前記モータの回転速度と、前記人力駆動車の前記走行速度とに基づいて算出される変速比率が、前記予め定める変速比率よりも小さい場合、予め定める第2条件を満たすと前記モータの回転速度を大きくする。
第10側面の制御装置によれば、人力駆動車を押し歩く場合に、人力駆動車の走行速度が遅くなり過ぎることを抑制できる。また予め定める第2条件を満たすまでは、モータの回転速度を大きくしないので、誤検出によって人力駆動車の走行速度が速くなることを抑制できる。
【0015】
本開示の第1から第10側面のいずれか1つに従う第11側面の制御装置において、前記人力駆動車の前記走行速度を検出するための車速センサを含み、前記車速センサは、前記人力駆動車の車輪に設けられる磁石を検出するように構成され、前記車輪が1回転する間に、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。
第11側面の制御装置によれば、車速センサを簡易な構成によって実現できる。
【0016】
本開示の第11側面に従う第12側面の制御装置において、前記予め定める回数は、1である。
第12側面の制御装置によれば、車速センサを、車輪が1回転する間に1回の検出信号を出力する最も簡単な構成によって実現できる。
【0017】
本開示の第1から第12側面のいずれか1つに従う第13側面の制御装置において、前記制御部は、前記第3モードにおいて、操作装置の操作に応じて前記モータを駆動するように構成される。
第13側面の制御装置によれば、操作装置を操作することによってモータによって人力駆動車の押し歩きをアシストすることができる。
【0018】
本開示の第13側面に従う第14側面の制御装置において、前記制御部は、前記操作装置が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている間、前記モータを駆動するように構成される。
第14側面の制御装置によれば、操作装置が操作されても、予め定める第3条件が満たされなければモータが駆動されない。
【0019】
本開示の第14側面に従う第15側面の制御装置において、前記予め定める第3条件は、前記人力駆動車のクランク軸が回転していない場合、および、前記人力駆動車の走行速度が、予め定める第2速度以下である場合、の少なくとも1つの場合に満たされている。
第15側面の制御装置によれば、クランク軸が回転している場合、人力駆動車の走行速度が速くなった場合では、モータが駆動されない。
【発明の効果】
【0020】
本開示の人力駆動車用の制御装置は、モータを好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の側面図。
【
図2】第1実施形態の人力駆動車用の制御装置の電気的な構成を示すブロック図。
【
図3】
図2の制御部によって実行されるモータを制御する処理の第1例を示すフローチャートの第1部分。
【
図4】
図2の制御部によって実行されるモータを制御する処理の第1例を示すフローチャートの第2部分。
【
図5】第2実施形態の制御部によって実行されるモータを制御する処理の第2例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
図1から
図4を参照して、第1実施形態の人力駆動車用の制御装置60について説明する。人力駆動車10は、少なくとも人力駆動力Hによって駆動することができる車である。人力駆動車10は、車輪の数が限定されず、例えば1輪車および3輪以上の車輪を有する車も含む。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車、ならびに、電動自転車(E-bike)を含む。電動自転車は、電気モータによって車両の推進を補助する電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10を、自転車として説明する。
【0023】
人力駆動車10は、人力駆動車10に推進力を付与するモータ12と、クランク軸14Aと、駆動輪16Aと、クランク軸14Aの回転速度に対する駆動輪16Aの回転速度の変速比率Rを変更するための変速機18と、を含む。人力駆動車10は、従動輪16Bと、クランク14と、フレーム20と、をさらに含む。クランク14には、人力駆動力Hが入力される。クランク14は、フレーム20に対して回転可能なクランク軸14Aと、クランク軸14Aの軸方向の端部にそれぞれ設けられるクランクアーム14Bとを含む。各クランクアーム14Bには、ペダル22が連結される。駆動輪16Aは、クランク14が回転することによって駆動される。駆動輪16Aは、フレーム20に支持される。クランク14と駆動輪16Aとは、駆動機構24によって連結される。駆動機構24は、クランク軸14Aに結合される第1回転体26を含む。クランク軸14Aと第1回転体26とは、第1ワンウェイクラッチを介して結合されていてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランク14が前転した場合に、第1回転体26を前転させ、クランク14が後転した場合に、第1回転体26を後転させないように構成される。第1回転体26は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。駆動機構24は、第2回転体28と、連結部材30とをさらに含む。連結部材30は、第1回転体26の回転力を第2回転体28に伝達する。連結部材30は、例えば、チェーン、ベルト、または、シャフトを含む。
【0024】
第2回転体28は、駆動輪16Aに連結される。第2回転体28は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。第2回転体28と駆動輪16Aとの間には、好ましくは、第2ワンウェイクラッチが設けられている。第2ワンウェイクラッチは、第2回転体28が前転した場合に、駆動輪16Aを前転させ、第2回転体28が後転した場合に、駆動輪16Aを後転させないように構成される。
【0025】
駆動輪16Aおよび従動輪16Bの一方は前輪を含み、駆動輪16Aおよび従動輪16Bの他方は後輪を含む。フレーム20には、フロントフォーク32を介して前輪が取り付けられている。フロントフォーク32には、ハンドルバー34がステム36を介して連結されている。以下の実施形態では、後輪を駆動輪16Aとして説明するが、前輪が駆動輪16Aであってもよい。
【0026】
人力駆動車10は、人力駆動車用のバッテリ38を含む。バッテリ38は、1または複数のバッテリ素子を含む。バッテリ素子は、充電池を含む。バッテリ38は、制御装置60の制御部62に電力を供給する。バッテリ38は、好ましくは、制御装置60の制御部62と有線または無線によって通信可能に接続される。バッテリ38は、例えば電力線通信(PLC;power line communication)によって制御部62と通信可能である。
【0027】
モータ12は、人力駆動車10の推進をアシストする。モータ12は、電気モータを含む。モータ12は、ペダル22から後輪までの人力駆動力Hの動力伝達経路、または、前輪に回転を伝達するように設けられる。ペダル22から後輪までの人力駆動力Hの動力伝達経路は、後輪を含む。本実施形態では、モータ12は、第1回転体26に回転を伝達するように設けられる。モータ12およびモータ12が設けられるハウジングは、ドライブユニットを構成する。モータ12とクランク軸14Aとの間の動力伝達経路には、好ましくは、クランク軸14Aを人力駆動車10が前進する方向に回転させた場合にクランク14の回転力によってモータ12が回転しないように第3ワンウェイクラッチが設けられる。モータ12は、クランク軸14Aに入力される人力駆動力Hの伝達経路において変速機18よりも上流側にトルクを伝達するように構成される。
【0028】
変速機18は、好ましくは、変速比率Rを段階的に変更するように構成される。変速機18は、電動アクチュエータ18Aと、電動アクチュエータ18Aによって駆動される変速機本体18Bとを含む。制御装置60の制御部62は、電動アクチュエータ18Aを制御する。電動アクチュエータ18Aは、電気モータと、電気モータに与える電力を制御する駆動回路と、を含む。電動アクチュエータ18Aは、変速機本体18Bに変速動作を実行させる。電動アクチュエータ18Aに含まれる駆動回路46は、制御部62と有線または無線によって通信可能に接続されている。電動アクチュエータ18Aは、例えば電力線通信(PLC)によって制御部62と通信可能である。電動アクチュエータ18Aは、制御部62からの制御信号に応じて変速機本体18Bに変速動作を実行させる。変速機18は、例えば、内装ハブ変速機および外装変速機(ディレイラ)の少なくとも一方を含む。ディレイラは、フロントディレイラおよびリアディレイラの少なくとも一方を含む。本実施の形態では、変速機18は、リアディレイラを含む。変速機18としては、CVT(Continuously Variable Transmission)など様々な種類の変速機を用いることができる。変速機18は、例えばドライブユニットのハウジング内に設けられてもよい。
【0029】
本実施形態の制御装置60が用いられる人力駆動車10の変速機18は、電動アクチュエータ18Aを用いて変速比率Rを変更可能に構成されてもよいが、例えば、電動アクチュエータ18Aを用いずに変速比率Rを変更可能に構成されていてもよい。例えば、変速機18は、電動アクチュエータ18Aを省略し、ライダが操作可能な操作部とボーデンケーブルで接続され、ライダが手動によって変速する機械式の変速機であってもよい。本実施形態の制御装置60は、制御部62が変速機18と電気的に接続されていない場合において、特に好適に用いることができる。例えば、変速機18は、ライダが操作可能な操作部と電気ケーブルまたは無線通信装置で接続され、ライダが手動によって変速する電気式の変速機であってもよい。
【0030】
制御装置60は、制御部62を含む。制御部62は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。演算処理装置は、相互に離れた複数の場所に設けられてもよい。制御部は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。制御装置60は、記憶部64をさらに含んでいてもよい。記憶部64には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部64は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。記憶部64には、変速機18によって設定可能な変速比の情報が記憶される。記憶部64には、好ましくは、変速機18によって設定可能な全ての変速比の情報が記憶される。
【0031】
制御装置60は、好ましくは、モータ12の駆動回路46をさらに備える。駆動回路46と、制御部62とは、好ましくは、モータ12のハウジングに設けられる。駆動回路46と、制御部62とは、例えば同一の回路基板に設けられる。駆動回路46は、インバータ回路を含む。駆動回路46は、バッテリ38からモータ12に供給される電力を制御する。駆動回路46は、制御部62と有線または無線によって通信可能に接続されている。駆動回路46は、例えばシリアル通信によって制御部62と通信可能である。駆動回路46は、制御部62からの制御信号に応じてモータ12を駆動させる。
【0032】
制御装置60は、人力駆動車10の走行速度V、クランク軸14Aの回転速度N、および、人力駆動力Hに応じてモータ12を制御する。制御装置60は、好ましくは、人力駆動車10の走行速度を検出するための車速センサ48を含む。制御装置60は、好ましくは、クランク軸14Aの回転速度Nを検出するためのクランク回転センサ50、および、人力駆動力Hを検出するためのトルクセンサ52をさらに備える。
【0033】
車速センサ48は、好ましくは、人力駆動車10の車輪に設けられる磁石を検出するように構成される。車速センサ48は、好ましくは、車輪が1回転する間に、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、好ましくは、1である。車速センサ48は、人力駆動車10の車輪の回転速度を検出するために用いられる。車速センサ48は、車輪の回転速度に応じた信号を出力する。制御部62は、車輪の回転速度に基づいて人力駆動車10の走行速度Vを算出できる。車速センサ48は、好ましくは、リードスイッチを構成する磁性体リード、または、ホール素子を含む。車速センサ48は、人力駆動車10のフレーム20のチェーンステイに取り付けられ、後輪に取り付けられる磁石を検出する構成としてもよく、フロントフォーク32に設けられ、前輪に取り付けられる磁石を検出する構成としてもよい。本実施形態において、車速センサ48は、車輪が一回転した場合に、リードスイッチが磁石を1回検出するように構成される。
【0034】
クランク回転センサ50は、クランク軸14Aの回転速度Nを検出するために用いられる。クランク回転センサ50は、例えば、人力駆動車10のフレーム20に取り付けられる。クランク回転センサ50は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含んで構成される。周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石が、クランク軸14A、クランク軸14Aに連動して回転する部材、または、クランク軸14Aから第1回転体26までの間の動力伝達経路に設けられる。クランク軸14Aに連動して回転する部材は、モータ12の出力軸を含む。クランク回転センサ50は、クランク軸14Aの回転速度Nに応じた信号を出力する。磁石は、クランク軸14Aから第1回転体26までの人力駆動力Hの動力伝達経路において、クランク軸14Aと一体に回転する部材に設けられてもよい。例えば、磁石は、クランク軸14Aと第1回転体26との間に第1ワンウェイクラッチが設けられない場合、第1回転体26に設けられてもよい。クランク回転センサ50は、磁気センサに代えて光学センサ、加速度センサ、またはトルクセンサなどを含んでいてもよい。
【0035】
トルクセンサ52は、クランク14に入力される人力駆動力Hのトルクを検出するために用いられる。トルクセンサ52は、例えば、動力伝達経路に第1ワンウェイクラッチが設けられる場合、第1ワンウェイクラッチよりも動力伝達経路の上流側に設けられる。トルクセンサ52は、歪センサ、磁歪センサ、または、圧力センサなどを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。トルクセンサ52は、動力伝達経路、または、動力伝達経路に含まれる部材の近傍に含まれる部材に設けられる。動力伝達経路に含まれる部材は、例えば、クランク軸14A、クランク軸14Aと第1回転体26との間において人力駆動力Hを伝達する部材、クランクアーム14B、または、ペダル22である。トルクセンサ52は、無線または有線の通信部を含んでいてもよい。人力駆動力Hは、人力駆動力Hの仕事率を含んでいてもよい。この場合、トルクセンサ52によって検出されたトルクとクランク回転センサ50によって検出されたクランク軸14Aの回転速度Nとを乗算した値が仕事率である。
【0036】
制御部62は、人力駆動車10に推進力を付加するように構成されるモータ12を制御する。制御部62は、人力駆動力Hに応じてモータ12を制御する第1モード、および、モータ12を駆動しない第2モードの少なくとも1つと、人力駆動車10の押し歩きをアシストするようにモータ12を駆動可能な第3モードと、を切り替え可能に構成される。制御部62は、例えば操作装置66に設けられる操作部が操作されることによって、第1モード、第2モードおよび第3モードを切り替えるように構成される。操作装置66は、操作装置66の操作に応じた信号が制御部62に伝達されるように、制御部62と有線または無線ユニットを介して接続される。第1モードおよび第2モードのうちの1つは、省略してもよい。
【0037】
制御部62は、第1モードにおいて、予め定める人力駆動力Hに対するモータ12によるアシスト力Mのアシスト比率X、および、モータ12によるアシスト力Mの少なくとも1つに関するアシスト状態Aを変更可能に構成される。
【0038】
制御部62は、第1モードにおいて、例えば、人力駆動力Hに対して、モータ12によるアシスト力Mが所定のアシスト比率Xになるように、モータ12を制御する。制御部62は、例えば、人力駆動車10の人力駆動力HのトルクTHに対する、モータ12によるアシスト力Mの出力トルクTMが所定のアシスト比率Xになるように、モータ12を制御してもよい。制御部62は、例えば、アシスト比率Xの異なる複数の制御モードから選択される1つの制御モードでモータ12を制御する。人力駆動車10の人力駆動力HのトルクTHに対するモータ12によるアシスト力Mの出力トルクTMのトルク比率を、アシスト比率Xと記載する場合がある。制御部62は、例えば、人力駆動力Hの仕事率WH(ワット)に対して、モータ12の仕事率WM(ワット)が所定のアシスト比率Xになるように、モータ12を制御してもよい。人力駆動力Hの仕事率WHは、人力駆動力Hとクランク軸14Aの回転速度Nとの乗算によって算出される。モータ12の出力が減速機を介して人力駆動力Hの動力経路に入力される場合は、減速機の出力を、アシスト力Mとする。制御部62は、人力駆動力HのトルクTHまたは仕事率WHに応じて、制御指令をモータ12の駆動回路46に出力する。制御指令は、例えばトルク指令値を含む。
【0039】
制御部62は、アシスト力Mの最大値MXが所定値以下になるようにモータ12を制御する。制御部62は、例えば、最大値MXの異なる複数の制御モードから選択される1つの制御モードでモータ12を制御する。アシスト力Mは、モータ12の出力トルクTMを含む。アシスト力Mは、モータ12の仕事率WMを含んでいてもよい。この場合、制御部62は、モータ12の仕事率WMが所定値WM1以下になるようにモータ12を制御する。所定値WM1は、一例では、500ワットである。所定値WM1は、別の例では、300ワットである。制御部62は、トルク比率ATが所定トルク比率AT1以下になるようにモータ12を制御してもよい。所定トルク比率AT1は、一例では、300%である。
【0040】
制御部62は、好ましくは、走行速度Vおよびクランク軸14Aの回転速度Nの少なくとも一方に応じて、モータ12を制御する。例えば、制御部62は、走行開始時にクランク14の回転量が大きくなるほど、アシスト比率Xおよびアシスト力Mが大きくなるようにモータ12を制御する。具体的には、制御部62は、走行速度Vまたはクランク軸14Aの回転速度Nが0から0よりも大きくなると、クランク14の回転量が大きくなるほど、アシスト比率Xおよびアシスト力Mの少なくとも1つが大きくなるようにモータ12を制御する。例えば、制御部62は、走行速度Vが所定速度VA以上になると、モータ12を停止する。所定速度VAは、例えば、時速45Kmである。所定速度VAは、時速45Km未満であってもよく、例えば、時速25Kmである。
【0041】
制御部62は、第1モードおよび第2モードの少なくとも1つにおいて、人力駆動車10の走行速度Vと、クランク軸14Aの回転速度Nと、に応じて変速比率Rを推定する。制御部62は、第3モードにおいて、推定された変速比率RZに応じてモータ12の回転速度を制御可能に構成される。
【0042】
制御装置60が車速センサ48とクランク回転センサ50とを含む場合、制御部62は、例えば、車速センサ48によって検出される車輪の回転速度をクランク軸14Aの回転速度Nで除算することによって変速比率Rを推定する。本実施形態の制御装置60は、好ましくは、変速状態検出部を備えない。制御装置60は、変速状態検出部をさらに備えていてもよい。変速状態検出部は、例えば、変速機18の可動部の位置に応じた信号を制御部62に出力する。変速機18の可動部の位置は、変速比率Rと対応する。変速状態検出部は、変速機18の電動アクチュエータ18Aのモータの回転位置またはモータ12に連結される減速機における回転部材の回転位置を検出してもよい。
【0043】
制御部62は、第3モードにおいて、好ましくは、操作装置66の操作に応じてモータ12を駆動するように構成される。操作装置66は、例えば、ハンドルバー34に設けられる。操作装置66は、好ましくは、ライダが操作可能なボタンおよびスイッチの少なくとも1つを含む。動作モードを切り替える操作部と、第3モードにおいてモータ12を駆動するための操作部は、別々であってもよく、共通であってもよい。動作モードを切り替える操作部と、第3モードにおいてモータ12を駆動するための操作部とが別々の場合、動作モードを切り替える操作部は、操作装置66に設けられてもよく、操作装置66とは異なる装置に設けられてもよい。第3モードにおいて、制御部62は、操作装置66が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている間、モータ12を駆動するように構成される。予め定める第3条件は、人力駆動車10のクランク軸14Aが回転していないこと、および、人力駆動車10の走行速度Vが、予め定める第2速度VY以下であること、の少なくとも1つを含む。予め定める第3条件は、好ましくは、人力駆動車10のクランク軸14Aが回転していないこと、および、人力駆動車10の走行速度Vが、予め定める第2速度VY以下であること、の両方を含む。本実施形態では、第3モードにおいて、操作装置66が操作されている間、制御部62はモータ12を駆動可能に構成される。制御部62は、第3モードにおいて、操作装置66が操作されなくなった場合、第3モードを維持してもよく、第3モードから第1モードまたは第2モードに切り替えてもよい。制御部62は、第3モードにおいて、予め定める第3条件が満たされなくなった場合、操作装置66が操作されていても、モータ12の駆動を停止させる。制御部62は、第3モードにおいて、予め定める第3条件が満たされなくなった場合、操作装置66が操作されていても、モータ12の駆動を停止させて、第3モードから第1モードまたは第2モードに切り替えてもよい。
【0044】
制御部62は、第1モードおよび第2モードにおいて、変速比率Rを推定できない場合、第3モードにおいて、予め定める変速比率RYに応じてモータ12の回転速度を制御する。制御部62は、第1モードおよび第2モードにおいて、変速比率Rを推定できない場合、かつ、第1モードおよび第2モードの一方から第3モードに切り替えられた場合、第3モードにおいて、予め定める変速比率RYに応じてモータ12の回転速度を制御する。制御部62は、好ましくは、第1モードおよび第2モードの一方から、第3モードに切り替えられる直前の制御周期において、変速比率Rを推定できない場合、かつ、第1モードおよび第2モードの一方から第3モードに切り替えられた場合、第3モードにおいて、予め定める変速比率RYに応じてモータ12の回転速度を制御する。予め定める変速比率RYは、好ましくは、変速比率Rのうちの最大の変速比率Rであるが、変速比率Rのうちの中間の変速比率Rよりも大きい変速比率Rであってもよい。制御部62は、予め定める変速比率RYに応じてモータ12を制御することによって、モータ12を予め定める回転速度となるように駆動した場合に、人力駆動車10の走行速度Vがモータ12の駆動力のみによって予め定める速度VXを超えることを抑制できる。予め定める速度VXは、例えば時速3kmから6Kmの範囲の速度であり、例えば、時速5Kmである。予め定める変速比率RYに関する情報は、記憶部64に記憶されている。
【0045】
制御部62は、第3モードにおいてモータ12を駆動した後、モータ12の回転速度と、人力駆動車10の走行速度Vとに応じて、モータ12の回転速度を制御可能に構成されてもよい。
【0046】
制御部62は、好ましくは、第3モードにおいて、推定された変速比率RZに応じてモータ12の回転速度を制御する場合において、モータ12の回転速度と、人力駆動車10の走行速度Vとに基づいて算出される変速比率RMが、推定された変速比率RZと実質的に異なる場合、算出される変速比率RMに応じてモータ12の回転速度を制御する。制御部62は、例えば、車速センサ48によって検出される車輪の回転速度をモータ12の回転速度で除算することによって変速比率RMを算出する。モータ12とクランク軸14Aとの間に減速機が設けられる場合、制御部62は、好ましくは、減速機の最終出力をモータ12の回転速度として変速比率RMを算出する。
【0047】
制御部62は、好ましくは、第3モードにおいて、推定された変速比率RZに応じてモータ12の回転速度を制御する場合において、モータ12の回転速度と、人力駆動車10の走行速度Vとに基づいて算出される変速比率RMが、推定された変速比率RZよりも大きい場合、モータ12の回転速度を小さくする。制御部62は、好ましくは、第3モードにおいて、推定された変速比率RZに応じてモータ12の回転速度を制御する場合において、モータ12の回転速度と、人力駆動車10の走行速度Vとに基づいて算出される変速比率RMが、推定された変速比率RZよりも小さい場合、予め定める第1条件を満たすとモータ12の回転速度を大きくする。予め定める第1条件は、例えば、変速比率RMを予め定める周期毎に算出し、算出した変速比率RMが予め定める回数連続して推定された変速比率RZよりも小さい場合に満たされる。これによって、例えば、誤検出に応じてモータ12の回転速度が大きくなってしまい、人力駆動車10の走行速度Vが速くなることを抑制できる。予め定める回数は、例えば、2から5の間、好ましくは3である。
【0048】
制御部62は、好ましくは、第3モードにおいて、予め定める変速比率RYに応じてモータ12の回転速度を制御する場合において、モータ12の回転速度と、人力駆動車10の走行速度Vとに基づいて算出される変速比率RMが、予め定める変速比率RYと実質的に異なる場合、算出される変速比率RMに応じてモータ12の回転速度を制御する。
【0049】
制御部62は、好ましくは、モータ12の回転速度と、人力駆動車10の走行速度Vとに基づいて算出される変速比率RMが、予め定める変速比率RYよりも大きい場合、モータ12の回転速度を小さくする。制御部62は、好ましくは、モータ12の回転速度と、人力駆動車10の走行速度Vとに基づいて算出される変速比率Rが、予め定める変速比率RYよりも小さい場合、予め定める第2条件を満たすとモータ12の回転速度を大きくする。予め定める第2条件は、例えば、変速比率RMを予め定める周期毎に算出し、算出した変速比率RMが予め定める回数連続して予め定める変速比率RYよりも小さい場合に成立する。これによって、例えば、誤検出に応じてモータ12の回転速度が大きくなってしまい、人力駆動車10の速度が速くなることを抑制できる。予め定める回数は、例えば、2から5の間、好ましくは3である。
【0050】
図3および
図4を参照して、モータ12を制御する処理について説明する。制御部62は、制御部62に電力が供給されると、処理を開始して
図3に示すフローチャートのステップS40に移行する。制御部62は、
図3および
図4のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、所定周期後にステップS40からの処理を繰り返す。
【0051】
制御部62は、ステップS40において、第1モードまたは第2モードか否かを判定する。制御部62は、第1モードではなく、かつ、第2モードではない場合、ステップS45に移行する。制御部62は、第1モードまたは第2モードの場合、ステップS41に移行する。
【0052】
制御部62は、ステップS41において、クランク軸14Aが回転しており、かつ、車輪が回転しているか否かを判定する。ステップS41において制御部62が、クランク軸14Aが回転しており、かつ、車輪が回転していると判定すると、ステップS42に移行する。ステップS41において制御部62が、クランク軸14Aおよび車輪の少なくとも1つが回転していないと判定すると、ステップS45に移行する。
【0053】
制御部62は、ステップS42において、走行速度Vおよびクランク軸14Aの回転速度Nは安定しているか否かを判定する。制御部62は、ステップS42において、例えば、走行速度Vの直近の複数回数の検出値と、クランク軸14Aの回転速度Nの直近の複数回数の検出値と、からそれぞれの検出周期における変速比率Rを推定する。制御部62は、推定される変速比率RZのうちの、最大の変速比率RZと、最小の変速比率RZとが、変速機18によって形成される隣り合う2つの変速ステージの変速比率Rの範囲を超えない場合、走行速度Vおよびクランク軸14Aの回転速度Nが安定していると判定してもよい。直近の複数回数は、例えば2から5が好ましく、例えば3である。
【0054】
制御部62は、ステップS42において、例えば、走行速度Vの直近の複数回数の検出値と、クランク軸14Aの回転速度Nの直近の複数回数の検出値とから推定される変速比率RZのうちの、最大の変速比率RZと、最小の変速比率RZとの比が、所定範囲内であれば、走行速度Vおよびクランク軸14Aの回転速度Nが安定していると判定してもよい。
【0055】
制御部62は、ステップS42において、例えば、走行速度Vの直近の複数回数の検出値が所定範囲内の場合、走行速度Vが安定していると判定してもよい。制御部62は、例えば、クランク軸14Aの回転速度Nの直近の複数回数の検出値が所定範囲内の場合、クランク軸14Aの回転速度Nが安定していると判定してもよい。
【0056】
制御部62は、ステップS42において、例えば、走行速度Vの直近の複数回数の検出値と、クランク軸14Aの回転速度Nの直近の複数回数の検出値とから推定される変速比率RZのうちの、最大の変速比率RZと、最小の変速比率RZとの差が、所定範囲内であれば、走行速度Vおよびクランク軸14Aの回転速度Nが安定していると判定してもよい。
【0057】
制御部62は、走行速度Vおよびクランク軸14Aの回転速度Nが安定している場合、ステップS43に移行する。制御部62は、ステップS43において、変速比率Rを推定し、推定された変速比率RZを記憶部64に記憶し、ステップS45に移行する。記憶部64は、例えば、推定された変速比率RZを記憶部64に更新して記憶する。
【0058】
制御部62は、ステップS42において、走行速度Vおよびクランク軸14Aの回転速度Nが安定していない場合、ステップS44に移行する。制御部62は、ステップS44において、変速比率Rを推定できなかったことを記憶部64に記憶し、ステップS45に移行する。制御部62は、ステップS44において、変速比率Rを推定できなかったことを示すフラグを設定してもよい。記憶部64には、例えば、推定された変速比率RZ、および、変速比率Rを推定できなかったことを示すフラグのいずれか1つが記憶される。制御部62は、ステップS42における判定がYESの場合、ステップS43において推定された変速比率RZを時刻とともに記憶部64に記憶し、ステップS42における判定がNOの場合、ステップS44において時刻のみを記憶部64に記憶することによって変速比率Rを推定できなかったことを記憶してもよい。この場合、制御部62は、時計機能を有する。初期状態において、例えば、記憶部64には変速比率Rを推定できなかったことを示すフラグが記憶されている。バッテリ38からの電力が供給されると、記憶部64には変速比率Rを推定できなかったことを示すフラグを記憶するように構成されていてもよい。
【0059】
制御部62は、ステップS45において第3モードか否かを判定する。制御部62は、第3モードではない場合、ステップS40に移行する。制御部62は、第3モードの場合、ステップS46に移行する。制御部62は、電力が供給されて起動すると、第1モードまたは第2モードで動作するように構成されてもよく、この場合、ステップS40を省略し、ステップS45における判定がNOの場合、ステップS41に移行してもよい。
【0060】
制御部62は、ステップS46において、変速比率Rを推定できたか否かを判定する。制御部62は、例えば、記憶部64に変速比率Rを推定できなかったことが記憶されている場合、変速比率Rを推定できなかったと判定し、記憶部64に変速比率Rを推定できなかったことが記憶されていない場合、変速比率Rを推定できたと判定する。制御部62は、例えば、第3モードに移行する直前の制御周期と対応する時刻の推定された変速比率RZが記憶部64に記憶されていた場合、変速比率Rを推定できたと判定し、第3モードに移行する直前の制御周期と対応する時刻の推定された変速比率RZが記憶部64に記憶されていない場合、変速比率Rを推定できていないと判定してもよい。
【0061】
制御部62は、ステップS46において、推定された変速比率Rが記憶部64に記憶されている場合、ステップS47に移行する。制御部62は、ステップS47において、操作装置66が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている間、推定された変速比率RZに応じてモータ12の回転速度を制御し、ステップS48に移行する。制御部62は、ステップS48において、走行速度Vおよびモータ12の回転速度が安定しており、かつ、算出される変速比率RMは、推定された変速比率RZと実質的に異なるか否かを判定する。制御部62は、例えば、走行速度Vおよびモータ12の回転速度は安定しており、かつ、算出される変速比率RMは、推定された変速比率RZと第1所定値以上離れている場合、算出される変速比率RMは、推定された変速比率RZと実質的に異なると判定する。制御部62は、算出される変速比率RMが、推定された変速比率RZと実質的に異なる場合、ステップS49に移行する。制御部62は、ステップS48において、例えば、走行速度Vおよびモータ12の回転速度は安定していないと判定する場合は、ステップS50に移行する。ステップS48における走行速度Vおよびモータ12の回転速度が安定しているか否かの判定については、ステップS41の場合のクランク軸14Aの回転速度Nをモータ12の回転速度に置き換えたものと同様である。
【0062】
制御部62は、ステップS49において、操作装置66が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている間、算出される変速比率RMに応じてモータ12の回転速度を制御し、ステップS50に移行する。制御部62は、ステップS48において、走行速度Vおよびモータ12の回転速度は安定しており、かつ、算出される変速比率RMが、推定された変速比率RZと実質的に等しい場合、ステップS50に移行する。制御部62は、ステップS48からステップS50に移行する場合、ステップS47において設定された推定された変速比率RZに応じてモータ12の回転速度を制御する処理を維持する。
【0063】
制御部62は、ステップS46において、変速比率RZが記憶されていない場合、ステップS51に移行する。制御部62は、ステップS51において、操作装置66が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている間、予め定める変速比率RYに応じてモータ12の回転速度を制御し、ステップS52に移行する。制御部62は、ステップS52において、走行速度Vおよびモータ12の回転速度は安定しており、かつ、算出される変速比率RMは、予め定める変速比率RYと実質的に異なるか否かを判定する。制御部62は、例えば、走行速度Vおよびモータ12の回転速度は安定しており、かつ、算出される変速比率RMは、予め定める変速比率RYと第2所定値以上離れている場合、算出される変速比率RMは、予め定める変速比率RYと実質的に異なると判定する。制御部62は、算出される変速比率RMが、予め定める変速比率RYと実質的に異なる場合、ステップS53に移行する。制御部62は、ステップS52において、例えば、走行速度Vおよびモータ12の回転速度は安定していないと判定する場合は、ステップS50に移行する。ステップS52における走行速度Vおよびモータ12の回転速度の回転速度Nは安定しているか否かを判定については、ステップS41の場合のクランク軸14Aの回転速度Nをモータ12の回転速度に置き換えたものと同様である。
【0064】
制御部62は、ステップS53において、操作装置66が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている間、算出される変速比率RMに応じてモータ12の回転速度を制御し、ステップS50に移行する。制御部62は、ステップS52において、操作装置66が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている間に算出される変速比率RMが、予め定める変速比率RYと実質的に異ならない場合、ステップS50に移行する。制御部62は、ステップS52からステップS50に移行する場合、操作装置66が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている間は、ステップS51において設定された予め定める変速比率RYに応じてモータ12の回転速度を制御する処理を維持する。
【0065】
制御部62は、ステップS50において、第3モードか否かを判定する。制御部62は、第3モードの場合、ステップS46に移行する。制御部62は、第3モードではない場合、処理を終了する。
【0066】
図3および
図4に示す処理において、ステップS48を省略し、制御部62は、ステップS47の後、ステップS49に移行するようにしてもよい。
図3および
図4に示す処理において、ステップS48およびステップS49を省略し、制御部62は、ステップS47の後、ステップS50に移行するようにしてもよい。
【0067】
図3および
図4に示す処理において、ステップS52を省略し、制御部62は、ステップS51の後、ステップS53に移行するようにしてもよい。
図3および
図4に示す処理において、ステップS52およびステップS53を省略し、制御部62は、ステップS51の後、ステップS50に移行するようにしてもよい。
【0068】
ステップS49およびステップS53において、制御部62は、操作装置66が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている間、変速比率RMが、予め定める変速比率RYよりも大きい場合、モータ12の回転速度を小さくし、変速比率Rが、予め定める変速比率RYよりも小さい場合、予め定める第2条件を満たすとモータ12の回転速度を大きくする制御を行ってもよい。
【0069】
(第2実施形態)
図2および
図5を参照して、第2実施形態の制御装置60について説明する。第2実施形態の制御装置60は、第3モードにおいてモータ12の回転速度が予め定める回転速度となるようにモータ12を制御する点以外は第1実施形態と同様なので、第1実施形態および第2実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0070】
制御部62は、第3モードにおいてモータ12の回転速度が予め定める回転速度となるようにモータ12を駆動した後、モータ12の回転速度と、人力駆動車10の走行速度Vとに応じて、人力駆動車10の変速比率RMを算出し、算出される変速比率RMが、予め定める変速比率RYとは実質的に異なる場合、算出される変速比率RMに応じて、走行速度Vが予め定める第1速度VZに近づくようにモータ12の回転速度を制御する。制御部62は、好ましくは、モータ12の回転速度と、人力駆動車10の走行速度Vとに基づいて算出される変速比率RMが、予め定める変速比率RYよりも大きい場合、モータ12の回転速度を小さくする。制御部62は、好ましくは、モータ12の回転速度と、人力駆動車10の走行速度Vとに基づいて算出される変速比率Rが、予め定める変速比率RYよりも小さい場合、予め定める第2条件を満たすとモータ12の回転速度を大きくする。予め定める第1速度VZは、例えば時速3kmから6Kmの範囲の速度であり、例えば時速5kmである。
【0071】
図5を参照して、モータ12を制御する処理について説明する。制御部62は、制御部62に電力が供給されると、処理を開始して
図5に示すフローチャートのステップS61に移行する。制御部62は、
図5のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、所定周期後にステップS61からの処理を繰り返す。
【0072】
制御部62は、ステップS61において、第3モードか否かを判定する。制御部62は、第3モードではない場合、処理を終了する。制御部62は、第3モードの場合、ステップS62に移行する。制御部62は、ステップS62において、操作装置66が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている間、モータ12の回転速度が予め定める回転速度になるようにモータ12を駆動し、ステップS63に移行する。予め定める回転速度は、最大の変速比率Rの場合において、人力駆動車10の走行速度Vが予め定める第1速度VZを超えないように設定される。制御部62は、ステップS63において、走行速度Vおよびモータ12の回転速度が安定している状態において、モータ12の回転速度と、人力駆動車10の走行速度Vとに応じて、人力駆動車10の変速比率RMを算出できるか否かを判定する。制御部62は、ステップS63における判定がYESの場合、ステップS64に移行する。制御部62は、ステップS63における判定がNOの場合、フローチャートを終了する。
【0073】
制御部62は、ステップS64において、操作装置66が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている間に算出される変速比率RMは、予め定める変速比率RYと実質的に異なるか否かを判定する。制御部62は、算出される変速比率RMが予め定める変速比率RYと実質的に異なる場合、ステップS65に移行する。制御部62は、ステップS65において、操作装置66が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている間、算出される変速比率RMに応じて走行速度Vが予め定める第1速度VZに近づくようにモータ12の回転速度を制御し、ステップS66に移行する。
【0074】
制御部62は、ステップS64において、操作装置66が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている間に算出される変速比率RMが予め定める変速比率RYと実質的に異ならない場合、ステップS67に移行する。制御部62は、ステップS67において、操作装置66が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている間、予め定める変速比率RYに応じて走行速度Vが予め定める第1速度VZに近づくようにモータ12の回転速度を制御し、ステップS66に移行する。制御部62は、ステップS67において操作装置66が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている間、ステップS62と同様にモータ12を駆動してもよい。予め定める変速比率RYは、好ましくは、変速機18によって設定可能な変速比率Rのうち、最大となる変速比率Rである。
【0075】
制御部62は、ステップS66において、第3モードか否かを判定する。制御部62は、第3モードの場合、ステップS63に移行する。制御部62は、第3モードではない場合、処理を終了する。
【0076】
(変形例)
実施形態に関する説明は、本発明に従う人力駆動車用の制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用の制御装置は、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0077】
・第1、第2実施形態において、操作装置66が操作され、かつ、予め定める第3条件が満たされている場合に、制御部62がモータ12を駆動するが、予め定める第3条件が満たされなくても、操作装置66が操作されると制御部62がモータ12を駆動する構成としてもよい。
【0078】
・クランク回転センサ50は、モータ12の回転を検出するように構成されていてもよい。第1モードにおいて、クランク軸14Aが回転し、モータ12が駆動されている場合は、クランク軸14Aの回転速度Nと、モータ12の回転速度とが比例するので、制御部62は、モータ12の回転からクランク軸14Aの回転速度Nを算出できる。この変形例では、好ましくは、
図4のステップS48およびステップS49の処理が省略され、制御部62は、ステップS47の処理の後、ステップS50に移行する。
【0079】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、その選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、その選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0080】
10…人力駆動車、12…モータ、14A…クランク軸、16A…駆動輪、18…変速機、48…車速センサ、60…制御装置、62…制御部、66…操作装置。