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  • 特許-積層シートのロール体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】積層シートのロール体
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20231019BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20231019BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231019BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B7/022
B32B27/00 B
B32B27/00 D
G02B5/02 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019060409
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020157632
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】片桐 麦
(72)【発明者】
【氏名】草間 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】倉本 達己
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-047011(JP,A)
【文献】特開2013-035910(JP,A)
【文献】特開2018-020570(JP,A)
【文献】特開2011-111552(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026622(WO,A1)
【文献】特開2016-066089(JP,A)
【文献】特開2018-104602(JP,A)
【文献】特開2003-202415(JP,A)
【文献】特開2003-90905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/023
B32B 7/022
B32B 27/00
G02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一フィルムと、
前記第一フィルムの片面側に積層された、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を厚さ方向に延在するように備えた内部構造を有する光拡散制御フィルムと、
前記光拡散制御フィルムにおける前記第一フィルムとは反対の面側に積層された第二フィルムと
を備える積層シートを巻き取ってなるロール体であって、
前記内部構造が、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物をフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造であるか、または、屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面に沿った任意の一方向に交互に配置してなるルーバー構造であり、
前記第一フィルムおよび前記第二フィルムの少なくとも一方の厚さが、45μm以上であることを特徴とする積層シートのロール体。
【請求項2】
前記光拡散制御フィルムと前記第二フィルムとの間に設けられた粘着剤層を備えることを特徴とする請求項1に記載の積層シートのロール体。
【請求項3】
前記粘着剤層の厚さが、1μm以上、1000μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の積層シートのロール体。
【請求項4】
前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が、0.01MPa以上、50MPa以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の積層シートのロール体。
【請求項5】
前記第一フィルムおよび前記第二フィルムの厚さが、45μm以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の積層シートのロール体。
【請求項6】
前記第一フィルムおよび前記第二フィルムの少なくとも一方が、光拡散制御フィルム側の面が剥離処理されてなる剥離シートであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の積層シートのロール体。
【請求項7】
前記光拡散制御フィルムの23℃における押込弾性率が、1MPa以上、5000MPa以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の積層シートのロール体。
【請求項8】
前記光拡散制御フィルムの厚さが、20μm以上、700μm以下であることを特徴とする請求項1~7に記載の積層シートのロール体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射角度に依存して入射光を拡散または透過させることができる光拡散制御フィルムを備える積層シートのロール体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機発光デバイス等が属する光学技術分野において、特定の角度範囲からの入射光については特定の方向へ強く拡散させることができる光拡散制御フィルムの使用が検討されている。
【0003】
このような光拡散制御フィルムの一例としては、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造をフィルム内に有するものが存在する。より具体的には、屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面に沿った任意の一方向に沿って交互に配置してなるルーバー構造を有する光拡散制御フィルムや、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造を有する光拡散制御フィルム等が存在する。
【0004】
上述したような光拡散制御フィルムとして、特許文献1には、所定のウレタン(メタ)アクリレート化合物と、芳香族骨格を有する所定の(メタ)アクリル酸エステル化合物と、所定の光重合開始剤を含有する光拡散制御フィルム用樹脂組成物を硬化してなる光拡散制御フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6414883号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光拡散制御フィルムには、製造、搬送、保管等の際において、打痕が生じ易いという問題がある。特に、光拡散制御フィルムを巻き取ってロール体とした状態で、搬送、保管等を行う場合には、光拡散制御フィルム同士の間に異物の挟み込みが生じ易く、その結果、打痕が生じ易くなる。特に、ロール体では、光拡散制御フィルムに異物が押し付けられた状態で長期間保管されてしまうこともあり、それにより、強く打痕が残ることがある。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、光拡散制御フィルムにおける打痕の発生を抑制することができる積層シートのロール体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、第一フィルムと、前記第一フィルムの片面側に積層された、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有する光拡散制御フィルムと、前記光拡散制御フィルムにおける前記第一フィルムとは反対の面側に積層された第二フィルムとを備える積層シートを巻き取ってなるロール体であって、前記第一フィルムおよび前記第二フィルムの少なくとも一方の厚さが、45μm以上であることを特徴とする積層シートのロール体を提供する(発明1)。
【0009】
上記発明(発明1)に係る積層シートのロール体は、光拡散制御フィルムに積層される第一フィルムおよび第二フィルムの少なくとも一方が、上述した厚さを有することにより、ロール体に異物の挟み込みが生じた場合であっても、光拡散制御フィルムの打痕の発生を良好に抑制することができる。
【0010】
上記発明(発明1)において、前記光拡散制御フィルムと前記第二フィルムとの間に設けられた粘着剤層を備えることが好ましい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明2)において、前記粘着剤層の厚さが、1μm以上、1000μm以下であることが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明2,3)において、前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が、0.01MPa以上、50MPa以下であることが好ましい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明1~4)において、前記第一フィルムおよび前記第二フィルムの厚さが、45μm以上であることが好ましい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明1~5)において、前記第一フィルムおよび前記第二フィルムの少なくとも一方が、光拡散制御フィルム側の面が剥離処理されてなる剥離シートであることが好ましい(発明6)。
【0015】
上記発明(発明1~6)において、前記光拡散制御フィルムの23℃における押込弾性率が、1MPa以上、5000MPa以下であることが好ましい(発明7)。
【0016】
上記発明(発明1~7)において、前記光拡散制御フィルムの厚さが、20μm以上、700μm以下であることが好ましい(発明8)。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る積層シートのロール体によれば、打痕の発生が抑制された光拡散制御フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るロール体を構成する積層シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係るロール体を構成する積層シートの断面図が示される。図1に示される積層シート1は、第一フィルム11aと、第一フィルム11aの片面側に積層された光拡散制御フィルム12と、光拡散制御フィルム12における第一フィルム11aとは反対の面側に積層された粘着剤層13と、粘着剤層13における光拡散制御フィルム12とは反対の面側に積層された第二フィルム11bとを備える。本実施形態に係るロール体は、このような層構成を有する積層シート1を巻き取ってなるものである。なお、本実施形態に係るロール体において、上述した粘着剤層13は必須ではなく、省略してもよい。
【0020】
1.積層シートのロール体の構成部材
(1)第一フィルムおよび第二フィルム
本実施形態における積層シート1では、第一フィルム11aおよび第二フィルム11bの少なくとも一方の厚さが45μm以上である。これにより、本実施形態に係るロール体では、異物を挟み込んだ場合であっても、当該異物による光拡散制御フィルム12への影響が、第一フィルム11aおよび第二フィルム11bの少なくとも一方により抑えられる。その結果、光拡散制御フィルム12における打痕の発生が良好に抑制される。この観点から、第一フィルム11aおよび第二フィルム11bの少なくとも一方の厚さは、60μm以上であることが好ましく、特に70μm以上であることが好ましい。一方、第一フィルム11aおよび第二フィルム11bの少なくとも一方の厚さの上限値については特に限定はなく、例えば、1000μm以下であってもよく、特に500μm以下であってもよく、さらには200μm以下であってもよい。
【0021】
なお、本実施形態に係るロール体では、第一フィルム11aおよび第二フィルム11bの一方の厚さのみが45μm以上であり、他方の厚さが45μm未満であったとしても、45μm以上の厚さを有するフィルムによって、異物の影響を十分に抑えることができる。一方、第一フィルム11aおよび第二フィルム11bがともに45μm以上の厚さを有する場合には、これら2つのフィルムによって異物の影響を抑えることが可能となり、さらに良好に打痕の発生を抑制することができる。
【0022】
第一フィルム11aおよび第二フィルム11bは、第一フィルム11aおよび第二フィルム11bにおける上述した厚さの条件を満たすものである限り、それらの構成や材料については特に限定されない。例えば、これらのフィルムは、所望の基材であってもよく、後述するような剥離シートであってもよい。また、これらのフィルムは、樹脂系の材料を主成分とする樹脂系シートから構成されていてもよいし、紙系の材料から構成されていてもよい。なお、第一フィルム11aおよび第二フィルム11bの構成および材料は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0023】
上記樹脂系シートにおける樹脂の成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン-ノルボルネン共重合体、ノルボルネン樹脂等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー等の樹脂が挙げられる。これらの樹脂シートは、単層からなるシートであってもよいし、同種又は異種の複数層を積層したシートであってもよい。上記の中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0024】
第一フィルム11aまたは第二フィルム11bが紙系の材料から構成される場合の具体例としては、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材、および上記の紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙が挙げられる。
【0025】
第一フィルム11aおよび第二フィルム11bの少なくとも一方は、上述した樹脂系シートや紙系の材料からなるシートの片面(好ましくは、光拡散制御フィルム12側の面)に剥離処理が施されてなる剥離シートであってもよい。当該剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
【0026】
(2)光拡散制御フィルム
本実施形態における光拡散制御フィルム12は、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有するものである。さらには、本実施形態における光拡散制御フィルム12は、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を厚さ方向に延在するように備えた内部構造を有するものであることが好ましい。
【0027】
当該内部構造の一例としては、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物をフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造が挙げられる。また、別の例としては、屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面に沿った任意の一方向に交互に配置してなるルーバー構造が挙げられる。
【0028】
(2-1)光拡散制御フィルムの構成
本実施形態における光拡散制御フィルム12の具体的な構成や組成は、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。好ましい光拡散制御フィルム12の例としては、1個または2個の重合性官能基を有する高屈折率成分と、当該高屈折率成分よりも低い屈折率を有するとともに、1個または2個の重合性官能基を有する低屈折率成分とを含有する光拡散制御フィルム用組成物を硬化させてなるものが挙げられる。このような高屈折率成分と低屈折率成分とを使用することにより上述した内部構造を良好に形成し易いものとなる。
【0029】
上記高屈折率成分の好ましい例としては、芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、特に複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく挙げられる。複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラシル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ナフチルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸アントラシルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニルオキシアルキル等、これらの一部がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化アルキル等によって置換されたもの等が挙げられる。これらの中でも、良好な内部構造を形成し易いという観点から、(メタ)アクリル酸ビフェニルが好ましく、具体的には、o-フェニルフェノキシエチルアクリレート、o-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート等が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0030】
高屈折率成分の重量平均分子量は、2500以下であることが好ましく、特に1500以下であることが好ましく、さらには1000以下であることが好ましい。また、高屈折率成分の重量平均分子量は、150以上であることが好ましく、特に200以上であることが好ましく、さらには250以上であることが好ましい。高屈折率成分の重量平均分子が上記範囲であることで、所望の内部構造を有した光拡散制御フィルム12を形成し易くなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0031】
高屈折率成分の屈折率は、1.45以上であることが好ましく、1.50以上であることがより好ましく、特に1.54以上であることが好ましく、さらには1.56以上であることが好ましい。また、高屈折率成分の屈折率は、1.70以下であることが好ましく、特に1.65以下であることが好ましく、さらには1.59以下であることが好ましい。高屈折率成分の屈折率が上記範囲であることで、所望の内部構造を有した光拡散制御フィルム12を形成し易くなる。なお、本明細書における屈折率とは、光拡散制御フィルム用組成物を硬化する前における所定の成分の屈折率を意味し、また、当該屈折率は、JIS K0062:1992に準じて測定したものである。
【0032】
光拡散制御フィルム用組成物中の高屈折率成分の含有量は、低屈折率成分100質量部に対して、25質量部以上であることが好ましく、特に40質量部以上であることが好ましく、さらには50質量部以上であることが好ましい。また、光拡散制御フィルム用組成物中の高屈折率成分の含有量は、低屈折率成分100質量部に対して、400質量部以下であることが好ましく、特に300質量部以下であることが好ましく、さらには200質量部以下であることが好ましい。高屈折率成分の含有量がこれらの範囲であることで、形成される光拡散制御フィルムの内部構造において、高屈折率成分に由来する領域と低屈折率成分に由来する領域とが所望の割合で存在するものとなり、その結果、光拡散制御フィルムが所望の光拡散性を達成し易いものとなる。
【0033】
上記低屈折率成分の好ましい例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリロイル基含有シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられるが、特にウレタン(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0034】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物、(b)ポリアルキレングリコール、および(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから形成されるものであることが好ましい。
【0035】
上述した(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物の好ましい例としては、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、1,3-キシリレンジイソシアナート、1,4-キシリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアナート、およびこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体(例えば、キシリレンジイソシアナート系3官能アダクト体)等が挙げられる。これらの中でも、脂環式ポリイソシアナートであることが好ましく、特にイソシアナート基を2つのみ含有する脂環式ジイソシアナートが好ましい。
【0036】
上述した(b)ポリアルキレングリコールの好ましい例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキシレングリコール等が挙げられ、中でも、ポリプロピレングリコールであることが好ましい。
【0037】
なお、(b)ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、2300以上であることが好ましく、特に4300以上であることが好ましく、さらには6300以上であることが好ましい。また、(b)ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、19500以下であることが好ましく、特に14300以下であることが好ましく、さらには12300以下であることが好ましい。
【0038】
上述した(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの好ましい例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、得られるウレタン(メタ)アクリレートの重合速度を低下させ、所定の内部構造をより効率的に形成できる観点から、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを使用することが好ましい。
【0039】
上述した(a)~(c)の成分を材料としたウレタン(メタ)アクリレートの合成は、常法に従って行うことができる。このとき(a)~(c)の成分の配合割合は、ウレタン(メタ)アクリレートを効率的に合成する観点から、モル比にて、(a)成分:(b)成分:(c)成分=1~5:1:1~5の割合とすることが好ましく、特に1~3:1:1~3の割合とすることが好ましく、さらには2:1:2の割合とすることが好ましい。
【0040】
低屈折率成分の重量平均分子量は、3000以上であることが好ましく、特に5000以上であることが好ましく、さらには7000以上であることが好ましい。また、低屈折率成分の重量平均分子量は、20000以下であることが好ましく、特に15000以下であることが好ましく、さらには13000以下であることが好ましい。低屈折率成分の重量平均分子量の上記範囲であることにより、所望の性能を有した光拡散制御フィルム12を形成し易くなる。
【0041】
低屈折率成分の屈折率は、1.59以下であることが好ましく、1.50以下であることがより好ましく、特に1.49以下であることが好ましく、さらには1.48以下であることが好ましい。また、低屈折率成分の屈折率は、1.30以上であることが好ましく、特に1.40以上であることが好ましく、さらには1.46以上であることが好ましい。低屈折率成分の屈折率が上記範囲であることで、所望の光拡散制御フィルムを形成し易いものとなる。
【0042】
上述した光拡散制御フィルム用組成物は、高屈折率成分および低屈折率成分以外に、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、多官能性モノマー(重合性官能基を3つ以上有する化合物)、光重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、重合促進剤、重合禁止剤、赤外線吸収剤、可塑剤、希釈溶剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
【0043】
上述した添加剤の中でも、光拡散制御フィルム用組成物は、多官能性モノマーを含有することが好ましい。これにより、得られる光拡散制御フィルム12は、比較的高い弾性を有するものとなり、光拡散制御フィルム12を製造する際における打痕の発生や、光拡散制御フィルムをその他の部材に積層する際における潰れの発生をより効果的に抑制し易いものとなる。
【0044】
また、光拡散制御フィルム用組成物は、光重合開始剤を含有することも好ましい。光拡散制御フィルム用組成物が光重合開始剤を含有することで、所望の内部構造を有する光拡散制御フィルムを効率的に形成し易いものとなる。
【0045】
光重合開始剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン]等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
光重合開始剤を使用する場合、光拡散制御フィルム用組成物中の光重合開始剤の含有量は、高屈折率成分と低屈折率成分との合計量100質量部に対して、0.2質量部以上とすることが好ましく、特に0.5質量部以上とすることが好ましく、さらには1質量部以上とすることが好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、高屈折率成分と低屈折率成分との合計量100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましく、特に15質量部以下とすることが好ましく、さらには10質量部以下とすることが好ましい。光拡散制御フィルム用組成物中の光重合開始剤の含有量を上記範囲とすることで、光拡散制御フィルム12を効率的に形成し易いものとなる。
【0047】
光拡散制御フィルム用組成物は、前述した高屈折率成分および低屈折率成分、並びに、所望によりその他の添加剤を均一に混合することで調整することができる。混合の際には、40~80℃の温度に加熱しながら撹拌し、均一な光拡散制御フィルム用組成物を得てもよい。また、得られる光拡散制御フィルム用組成物が所望の粘度となるように、希釈溶剤を添加して混合してもよい。
【0048】
(2-2)光拡散制御フィルムの押込弾性率
本実施形態における光拡散制御フィルム12の23℃における押込弾性率は、下限値として、1MPa以上であることが好ましく、特に10MPa以上であることが好ましく、さらには20MPa以上であることが好ましい。押込弾性率の下限値が上記範囲であることで、光拡散制御フィルム12における打痕の発生をより効果的に抑制することが可能となる。また、上記押込弾性率は、上限値として、5000MPa以下であることが好ましく、1000MPa以下であることがより好ましく、特に300MPa以下であることが好ましく、さらには40MPa以下であることが好ましい。押込弾性率の上限値が上記範囲であることで、光拡散制御フィルム12が適度な柔軟性を有するものとなり、光拡散制御フィルム12の所望のハンドリング性を有し易いものとなる。なお、上記押込弾性率の測定方法の詳細は、後述する実施例に記載の通りである。
【0049】
(2-3)光拡散制御フィルムの厚さ
本実施形態における光拡散制御フィルム12の厚さは、下限値として、20μm以上であることが好ましく、特に40μm以上であることが好ましく、さらには60μm以上であることが好ましい。光拡散制御フィルム12の厚さの下限値が上記範囲であることで、所望の光拡散性を発揮し易いものとなる。また、光拡散制御フィルム12の厚さは、上限値として、700μm以下であることが好ましく、特に400μm以下であることが好ましく、さらには200μm以下であることが好ましい。光拡散制御フィルム12の厚さの上限値が上記範囲であることで、打痕の発生をより効果的に抑制し易いものとなる。
【0050】
(2-4)光拡散制御フィルムの厚さ方向における内部構造の割合
本実施形態における光拡散制御フィルム12は、前述した通り、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を厚さ方向に延在するように備えた内部構造を有するものであることが好ましい。ここで、当該内部構造の厚さ方向に延在する割合としては、光拡散性をより効率的なものとする観点から、光拡散制御フィルム12厚さの10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることが特に好ましい。なお、上限値は制約がなく、100%、すなわち、厚さ方向全てに内部構造が形成されていてもよい。
【0051】
(3)粘着剤層
本実施形態における積層シートは、粘着剤層13を備えていてもよい。粘着剤層13を備えることにより、本実施形態に係るロール体から供給される光拡散制御フィルム12を、上記粘着剤層13を介して、所望の部材に固定することが容易となる。なお、本実施形態に係るロール体では、前述した通り、第一フィルム11aおよび第二フィルム11bが前述した厚さの条件を満たすことにより、打痕の発生が抑制されるものである。そのため、打痕発生を抑制する観点からは、粘着剤層13を敢えて設ける必要はない。
【0052】
粘着剤層13を構成する粘着剤としては、所望の粘着性を有するとともに、前述した打痕発生を抑制する効果を損なわないものであれば特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。例えば、当該粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を使用することができ、中でも、良好な粘着性および透明性を達成し易いアクリル系粘着剤が好ましい。
【0053】
上述したアクリル系粘着剤の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体および架橋剤を含有する粘着性組成物を架橋してなる粘着剤が挙げられる。なお、本明細書において「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0054】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、架橋剤と反応する反応性基を分子内に有する反応性基含有モノマーを含むことが好ましい。当該反応性基が後述の架橋剤と反応することにより、得られる粘着剤の凝集力を制御し、貯蔵弾性率を好適な範囲に調節しやすくなる。当該官能基含有モノマーとしては、重合性の二重結合と、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基等の官能基とを分子内に有するモノマーが好ましく、これらの中でも、官能基としてカルボキシ基を含有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)およびヒドロキシ基を含有するモノマー(ヒドロキシ基含有モノマー)の少なくとも一方を使用することが好ましい。
【0055】
上記カルボキシ基含有モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられ、これらの中でも、アクリル酸が好ましい。また、上記ヒドロキシ基含有モノマーの好ましい例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げらる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を1質量%以上含有することが好ましく、特に5質量%以上含有することが好ましい。また、上記重合体は、上記構成単位を40質量%以下で含有することが好ましく、特に20質量%以下で含有することが好ましい。
【0057】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、粘着力を発現させる観点から、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル含有することも好ましく、特に、アルキル基の炭素数が1~18であるアクリル酸アルキルエステルを使用することが好ましい。その具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、粘着力と貯蔵弾性率との両立の観点から、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構成単位を、50質量%以上含有することが好ましく、特に80質量%以上含有することが好ましい。また、上記重合体は、上記構成単位を、99質量%以下で含有することが好ましく、特に95質量%以下で含有することが好ましい。
【0059】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、上述した官能基含有モノマーおよび(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、その他のモノマーを共重合したものであってもよい。また、当該重合体の重合態様については、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。また、当該重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は、貯蔵弾性率を好適なものとする観点から、30万以上であることが好ましく、特に100万以上であることが好ましい。また、上記重量平均分子量は、250万以下であることが好ましく、特に200万以下であることが好ましい。
【0061】
上記架橋剤としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体が有する反応性官能基と反応するものであればよく、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤等を使用することが好ましい。なお、架橋剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
粘着性組成物中における架橋剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以下であることが好ましい。
【0063】
粘着性組成物には、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。
【0064】
粘着性組成物が活性エネルギー線硬化性成分を含有する場合、活性エネルギー線硬化性の粘着剤から構成される粘着剤層13を形成することができる。活性エネルギー線硬化性成分は、活性エネルギー線の照射によって粘着剤層13を硬化させることができる成分であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。中でも、(メタ)アクリル酸エステル共重合体等との相溶性に優れる多官能アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。なお、活性エネルギー線硬化性成分を使用することにより得られる粘着剤の貯蔵弾性率を高めに導くことができる。
【0065】
粘着性組成物は、(メタ)アクリル酸エステル重合体を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体と、架橋剤と、所望により添加剤とを混合することで製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。粘着性組成物は、希釈溶剤を添加して、十分に混合することにより、粘着性組成物の塗布溶液としてもよい。
【0066】
本実施形態における粘着剤層13の23℃における貯蔵弾性率は、0.01MPa以上であることが好ましく、0.11MPa以上であることがより好ましく、特に0.20MPa以上であることが好ましく、さらには0.40MPa以上であることが好ましい。また、粘着剤層13の23℃における貯蔵弾性率は、50MPa以下であることが好ましく、特に10MPa以下であることが好ましく、さらには1MPa以下であることが好ましい。粘着剤層13の23℃における貯蔵弾性率が上記範囲であることで、粘着力を確保しながら、ロール体に挟み込まれた異物の影響を、粘着剤層13によっても低減し易いものとなる。特に、貯蔵弾性率が0.01MPa以上であることにより、第一フィルム側(光拡散制御フィルムにおける粘着剤層と接しない側に積層されたフィルム)からの打痕解消にも効果を発揮し易いものとなる。これにより、光拡散制御フィルム12における打痕の発生をより効果的に抑制することができる。なお、粘着剤層13の23℃における貯蔵弾性率とは、当該粘着剤層13が、前述した活性エネルギー線硬化性の粘着剤からなる場合には、活性エネルギー線の照射により硬化した後の粘着剤層13の貯蔵弾性率をいうものとする。また、上記貯蔵弾性率の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0067】
粘着剤層13の厚さは、1000μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、特に50μm以下であることが好ましく、さらには20μm以下であることが好ましい。粘着剤層13の厚さが1000μm以下であることで、粘着剤層13における打痕の発生を抑制し易いものとなる。また、粘着剤層13の厚さは、1μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましく、さらには10μm以上であることが好ましい。粘着剤層13の厚さが1μm以上であることで、所望の粘着性を発揮し易いものとなる。
【0068】
(4)その他
本実施形態における積層シート1は、打痕抑制の効果を阻害しない限り、前述した層以外の層を備えていてもよい。また、本実施形態に係るロール体は、積層シート1を芯材に巻回してなるものであってもよい。
【0069】
上記巻芯としては、本実施形態における積層シート1を巻き取ることが可能である限り特に限定されず、公知のものを使用することができる。芯材を構成する材料は、積層シート1を巻回するための十分な強度を有するものであることが好ましく、例えば、樹脂、金属、木材等が挙げられる。
【0070】
2.積層シートのロール体の製造方法
本実施形態に係る積層シートのロール体の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。
【0071】
一例としては、第一フィルム11aと光拡散制御フィルム12とを積層してなる積層体(第1の積層体)を得た後、当該第1の積層体における光拡散制御フィルム12側の面に対し、第二フィルム11bを貼合する。これにより得られた、第一フィルム11aと光拡散制御フィルム12と第二フィルム11bとがこの順に積層してなる積層シート1を巻き取ることで、本実施形態に係る積層シートのロール体を得ることができる。
【0072】
また、第一フィルム11aと光拡散制御フィルム12とを積層してなる積層体(第1の積層体)とともに、第二フィルム11bと粘着剤層13とを積層してなる積層体(第2の積層体)を用意する。そして、第1の積層体における光拡散制御フィルム12側の面と、第2の積層体における粘着剤層13側の面とを貼合する。これにより得られた、第一フィルム11aと光拡散制御フィルム12と粘着剤層13と第二フィルム11bとがこの順に積層してなる積層シート1を巻き取ることによっても、本実施形態に係る積層シートのロール体を得ることができる。
【0073】
上述した、第一フィルム11aと光拡散制御フィルム12とを積層してなる積層体(第1の積層体)の製造方法も特に限定されず、従来公知の方法によって製造することができる。例えば、工程シートの片面に、前述した光拡散制御フィルム用組成物を塗布し、塗膜を形成した後、当該塗膜における工程シートとは反対側の面に、第一フィルム11aの片面を貼合する。続いて、第一フィルム11a越しに、上記塗膜に対して活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、光拡散制御フィルム12を形成する。このように、上記塗膜に第一フィルム11aを積層することにより、第一フィルム11aと工程シートとのギャップを保ち、塗膜が押しつぶされることを抑制して、均一な厚さを有する光拡散制御フィルム12を形成し易いものとなる。以上のようにして光拡散制御フィルム12を形成することにより、第一フィルム11aと光拡散制御フィルム12とからなる第1の積層体を、光拡散制御フィルム12の面に工程フィルムが付いた状態で得ることができる。
【0074】
上述した塗布の方法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、およびグラビアコート法等が挙げられる。また、光拡散制御フィルム用組成物は、必要に応じて溶剤を用いて希釈してもよい。
【0075】
塗膜に対する活性エネルギー線の照射は、形成しようとする内部構造に応じて、異なる態様により行う。このような照射は従来公知の方法により行うことができる。例えば、前述したカラム構造を形成する場合には、塗膜に対して、光線の平行度が高い平行光を照射する。一方、前述したルーバー構造を形成する場合には、活性エネルギー線の光源として線状光源を用い、積層体表面に対して幅方向(TD方向)にはランダムかつ流れ方向(MD方向)には略平行な帯状(ほぼ線状)の光を照射する。
【0076】
なお、上記活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0077】
活性エネルギー線として紫外線を用い、カラム構造を形成する場合、その照射条件としては、塗膜表面におけるピーク照度を0.1~10mW/cmとすることが好ましい。なお、ここでいうピーク照度とは、塗膜表面に照射される活性エネルギー線が最大値を示す部分での測定値を意味する。さらに、塗膜表面における積算光量を、5~200mJ/cmとすることが好ましい。
【0078】
活性エネルギー線として紫外線を用い、ルーバー構造を形成する場合、その照射条件としては、塗膜表面におけるピーク照度を0.1~50mW/cm以下とすることが好ましい。さらに、塗膜表面における積算光量を、5~300mJ/cm以下とすることが好ましい。
【0079】
なお、より確実な硬化を完了させる観点から、前述したような平行光や帯状の光を用いた硬化を行った後に、通常の活性エネルギー線(平行光や帯状の光に変換する処理を行っていない活性エネルギー線,散乱光)を照射することも好ましい。
【0080】
前述した、第二フィルム11bと粘着剤層13とを積層してなる積層体(第2の積層体)の製造方法も特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。例えば、第二フィルム11bの片側の面に対して、粘着剤層13を構成する粘着剤の材料を塗布する。これにより得られた塗膜を乾燥等することにより、粘着剤層13を形成することができる。
【0081】
以上のように製造された積層シート1を巻回することで積層シートのロール体が得られる。このとき、前述した芯材に対して積層シート1を巻回してもよい。また、前述した第1の積層体(および第2の積層体)の製造、積層シート1の形成、形成された積層シート1の巻回を連続的に行ってもよい。例えば、流れ方向の上流において、第1の積層体および第2の積層体の製造を行うとともに、得られた第1の積層体および第2の積層体を流れ方向の下流において積層し、これによって得られた積層シート1をさらに巻回することでロール体を得てもよい。
【0082】
3.積層シートのロール体の使用
本実施形態に係る積層シートのロール体は、光拡散制御フィルム12の提供のために使用することができる。例えば、ロール体から積層シート1を繰り出し、所望の形状にカットし、第一フィルム11aおよび第二フィルム11bを所望のタイミングで剥離した上で、所望の形状にカットされた光拡散制御フィルム12(積層シート1が粘着剤層13を備えている場合には、光拡散制御フィルム12と粘着剤層13との積層体)を提供することができる。このような光拡散制御フィルム12は、液晶表示装置、有機発光デバイス、電子ペーパー等を製造するために良好に使用することができる。
【0083】
特に、本実施形態に係る積層シートのロール体によれば、光拡散制御フィルム12の打痕の発生を良好に抑制することができる。そのため、本実施形態に係るロール体から提供される光拡散制御フィルム12では、光拡散性といった性能が損なわれることがない。そして、このような光拡散制御フィルムを用いることで、所望の性能を有する装置を製造することが可能となる。
【0084】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例
【0085】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0086】
〔実施例1〕
(1)光拡散制御フィルムの形成
低屈折率成分としての、ポリプロピレングリコールとイソホロンジイソシアナートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとを反応させて得られた重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレート40質量部(固形分換算値;以下同じ)に対し、高屈折率成分としての、分子量268のo-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート60質量部と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン8質量部とを添加した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、光拡散制御フィルム用組成物を得た。
【0087】
得られた光拡散制御フィルム用組成物を、工程シートとしての、長尺のポリエチレンテレフタレートシートの片面に塗布し、塗膜を形成した。続いて、当該塗膜における工程シートとは反対側の面に、第一フィルムとしての、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381130」,厚さ:38μm)の剥離面を積層した。
【0088】
これにより得られた、第一フィルムと上記塗膜と工程シートとからなる積層体を、コンベア上に載置した。このとき、積層体における第一フィルム側の面が上側となるとともに、積層体の長手方向がコンベアの流れ方向と平行になるようにした。そして、積層体を載置したコンベアに対して、中心光線平行度を±3°以内に制御した紫外線スポット平行光源(ジャテック社製)を設置した。このとき、当該光源が、積層体における第一フィルム側の面の法線方向に対して、コンベアの流れ方向と反対側に15°傾斜した方向の平行光を照射できるように設置した。また、上記第一フィルムの表面と上記光源との距離が240mmとなるように設置した。
【0089】
その後、コンベアを作動させて、積層体を0.2m/分の速度で移動させながら、塗膜表面におけるピーク照度2.00mW/cm、積算光量53.13mJ/cmの条件で、平行度が2°以下の平行光(主ピーク波長365nm、その他254nm、303nm、313nmにピークを有する高圧水銀ランプからの紫外線)を照射することにより、積層体中の塗膜を硬化させた。これにより、上述した塗膜が硬化してなる、厚さ60μmの光拡散制御フィルムを形成した。さらに、上記積層体から工程シートを剥離することで、第一フィルムと、光拡散制御フィルムとがこの順に積層されてなる第1の積層体を得た。
【0090】
なお、得られた光拡散制御フィルムの23℃における押込弾性率を、超微小硬度計(島津製作所社製,「島津ダイナミック超微小硬度計DUH-W201S」)を使用して測定したところ、27MPaであった。また、形成された光拡散制御フィルムの断面の顕微鏡観察等を行ったところ、光拡散制御フィルムの内部に、厚さ方向全体に複数の柱状物を林立させてなるカラム構造が形成されていることが確認された。すなわち、得られた光拡散制御フィルム内部におけるカラム構造領域の厚さ方向に延在する割合は、100%であった。また、上述した柱状物は、光拡散制御フィルムの厚さ方向に対してコンベアの進行方向と反対側に20°傾斜している(傾斜角-20°)ことが確認された。なお、当該傾斜角は、フィルム面法線方向を0°とし、コンベア進行方向をプラス、その反対方向をマイナスと表記する。
【0091】
また、上述したピーク照度および積算光量は、受光器を取り付けたUV METER(アイグラフィックス社製,製品名「アイ紫外線積算照度計UVPF-A1」)を上記塗膜の位置に設置して測定したものである。光拡散制御フィルムの厚さは、定圧厚さ測定器(宝製作所社製,製品名「テクロック PG-02J」)を用いて測定したものである。
【0092】
(2)粘着剤層の形成
アクリル酸n-ブチル90質量部と、アクリル酸10質量部とを、溶液重合法により重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を得た。この(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量(Mw)を後述する方法により測定したところ、40万であった。
【0093】
上記で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部と、架橋剤としての1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製,製品名「TETRAD-C」)0.05質量部とを溶媒中で混合し、粘着剤組成物の塗布液を得た。
【0094】
続いて、得られた粘着剤組成物の塗布液を、第二フィルムとしての、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」,厚さ:75μm)の剥離面上に塗布し、90℃で1分間加熱することで、第二フィルム上に厚さ25μmの粘着剤層を形成した。これにより、第二フィルムと粘着剤層とが積層されてなる第2の積層体を得た。
【0095】
なお、形成された粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率を、後述する試験例1により測定したところ、0.16MPaであった。また、粘着剤層の上述した厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
【0096】
(3)積層シートの形成
上記工程(1)で得られた第1の積層体における光拡散制御フィルム側の面と、上記工程(2)で得られた第2の積層体における粘着剤層側の面とを貼り合わせた後、温度23℃、相対湿度50%の環境下で168時間シーズニングを行うことで、第一フィルムと、光拡散制御フィルムと、粘着剤層と、第二フィルムとがこの順に積層されてなる積層シートを得た。
【0097】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0098】
〔実施例2~4,比較例1〕
第一フィルムおよび第二フィルムの厚さを表1に示すように変更した以外、実施例1と同様にして積層シートを製造した。
【0099】
〔実施例5〕
アクリル酸n-ブチル98.5質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル1.5質量部とを、溶液重合法により重合させて、重量平均分子量(Mw)200万の(メタ)アクリル酸エステル重合体Aを得た。
【0100】
また、アクリル酸n-ブチル95質量部と、アクリル酸5質量部とを、溶液重合法により重合させて、重量平均分子量(Mw)200万の(メタ)アクリル酸エステル重合体Bを得た。
【0101】
なお、これらの(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量(Mw)は実施例1と同様の条件により測定した。
【0102】
続いて、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体A100質量部と、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体B10質量部と、活性エネルギー線硬化性成分としてのトリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(東亞合成社製,製品名「アロニックス315」)15質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)1.4質量部とを溶媒中で混合し、粘着剤組成物の塗布液を得た。
【0103】
上述した粘着剤組成物の塗布液を、第二フィルムとしての、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」,厚さ:75μm)の剥離面上に、ナイフ式塗工機で塗布したのち、90℃で1分間乾燥処理して塗膜を形成した。
【0104】
次いで、形成された塗膜における第二フィルムとは反対側の面に対し、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382120」,厚さ:38μm)の剥離面を貼合した。貼合してから30分後に第二フィルム越しに、紫外線(UV)を下記の条件で照射し、上記塗膜が硬化してなる厚さ15μmの粘着剤層を形成した。そして、当該粘着剤層から(厚さ38μmの)剥離シートを剥離することで、第二フィルムと粘着剤層とが積層されてなる第2の積層体を得た。
<UV照射条件>
・フュージョン社製無電極ランプ Hバルブ使用
・照度:600mW/cm、光量:150mJ/cm
・UV照度・光量計は、アイグラフィックス社製「UVPF-36」を使用
【0105】
上記の通り得られた第2の積層体を使用した以外、実施例1と同様にして積層シートを製造した。
【0106】
なお、形成された粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率を、後述する試験例1により測定したところ、0.59MPaであった。
【0107】
〔実施例6,比較例2〕
第一フィルムおよび第二フィルムの厚さを表2に示すように変更した以外、実施例5と同様にして積層シートを製造した。
【0108】
〔試験例1〕(粘着剤層の貯蔵弾性率の測定)
実施例および比較例で得られたシーズニング後の粘着剤層を複数層積層し、厚さ3mmの積層体とした。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ3mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
【0109】
上記サンプルについて、JIS K7244-6に準拠し、粘弾性測定器(REOMETRIC社製,製品名「DYNAMIC ANALAYZER」)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率(G’)(MPa)を測定した。
測定周波数:1Hz
測定温度:23℃
【0110】
〔試験例2〕(打痕の測定)
(1)実施例1、実施例2および比較例1について
実施例1、実施例2および比較例1の積層シートを、その第二フィルム側の面が上となるように、水平に設置したガラス板上に固定した。そして、積層シートにおける第二フィルム側の面に対し、押芯の先端が直径2.54mmの半球となっている硬度計(高分子計器社製,製品名「アスカー硬度計C2」)を用いて、荷重225gで10秒間、点荷重を印加した。
【0111】
上記点荷重の印加から5分経過した後、積層シートから第二フィルムを剥離し、それにより露出した粘着剤層の露出面に残る打痕の深さ(μm)を、光干渉顕微鏡(Veeco社製,製品名「表面形状測定装置 WYKO NT110」)を用いて測定した。結果を表1に示す。また、比較例1に測定された深さを基準とした割合(%)を算出し、その結果も表1に示す。
【0112】
また、荷重を443gに変更して、上記と同様の測定を行った。それにより得られた打痕の深さ(μm)および比較例1に測定された深さを基準とした割合(%)も表1に示す。
【0113】
(2)実施例3、実施例4および比較例1について
実施例3、実施例4および比較例1の積層シートを、その第一フィルム側の面が上となるように、水平に設置したガラス板上に固定した。そして、積層シートにおける第一フィルム側の面に対し、上記(1)と同様にして、荷重225gまたは443gの点荷重を印加した。
【0114】
上記点荷重の印加から5分経過した後、積層シートから第一フィルムを剥離し、それにより露出した光拡散制御フィルムの露出面に残る打痕の深さ(μm)を、光干渉顕微鏡(Veeco社製,製品名「表面形状測定装置 WYKO NT110」)を用いて測定した。結果を表1に示す。また、比較例1に測定された深さを基準とした割合(%)を算出し、その結果も表1に示す。
【0115】
(3)実施例5および比較例2について
実施例5および比較例2の積層シートについて、上記(1)と同様にして、荷重225gまたは443gの点荷重の印加により生じる打痕の深さ(μm)を測定した。さらに、比較例2に測定された深さを基準とした割合(%)も算出した。これらの結果を表2に示す。
【0116】
(4)実施例6および比較例2について
実施例6および比較例2の積層シートについて、上記(2)と同様にして、荷重225gまたは443gの点荷重の印加により生じる打痕の深さ(μm)を測定した。さらに、比較例2に測定された深さを基準とした割合(%)も算出した。これらの結果を表2に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
表1および表2にから明らかな通り、実施例に係る積層シートでは、点荷重が印加された場合でも、生じた打痕の深さを良好に低減できた。この結果から、実施例に係る積層シートのロール体において、異物の挟み込みが生じた場合であっても、打痕の発生を良好に抑制できることが推定される。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の積層シートのロール体は、光拡散制御フィルムを備える装置等の製造に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0121】
1…積層シート
11a…第一フィルム
11b…第二フィルム
12…光拡散制御フィルム
13…粘着剤層
図1