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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】反射部材及びガラス積層部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20231019BHJP
   C03B 23/20 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
C03B20/00 C
C03B20/00 G
C03B23/20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019167467
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021042114
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 徹
(72)【発明者】
【氏名】山口 和宏
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 智則
(72)【発明者】
【氏名】藤田 大輝
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-035723(JP,A)
【文献】特開2017-154945(JP,A)
【文献】特開2017-165643(JP,A)
【文献】特開2009-084113(JP,A)
【文献】特表2018-531863(JP,A)
【文献】特開2004-067456(JP,A)
【文献】特開2002-160930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 20/00
C03B 23/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明シリカ質焼結粉体層の上面及び下面に透明石英ガラス部材が貼り合せにより形成されてなる、少なくとも三層の積層構造を有する反射部材であり、
前記不透明シリカ質焼結粉体層と前記透明石英ガラス部材の境界を有し、
前記不透明シリカ質焼結粉体層の厚さが0.1mm以上であり、膜厚の分布が±0.05mm以下であり、
前記積層構造の上面及び下面の透明石英ガラス部材に、積層構造と平行な方向で荷重をかけた時、破壊する荷重が1cmあたり5N以上であり、
前記積層構造の、不透明シリカ質焼結粉体層と透明石英ガラス部材の境目において、両者の中間の不透明度となる半透明度部分の幅が0.01mm以下である、反射部材。
【請求項2】
波長1000nm~2000nmにおける反射率が60%以上である、請求項1記載の反射部材。
【請求項3】
前記シリカ質焼結粉体層のかさ密度が1.3~1.5g/cmである、請求項1又は2記載の反射部材。
【請求項4】
前記シリカ質焼結粉体層を複数層含み、前記シリカ質焼結粉体層及び前記石英ガラス部材が交互に積層されてなる、請求項1~3のいずれか1項記載の反射部材。
【請求項5】
シリカ質焼結粉体層の上面及び下面に石英ガラス部材が貼り合せにより形成されてなる、少なくとも三層のガラス積層部材の製造方法であって、
シリカガラス粒子及び水を含むスラリーを作成する工程と、
第一の石英ガラス部材の表面に前記スラリーを平坦に塗布した後、塗布膜を乾燥させ、平面度0.1mm以下のシリカ粉体層とする工程と、
前記第一の石英ガラス部材上のシリカ粉体層に、平面度0.1mm以下の面を有する第二の石英ガラス部材を載せ、中間積層体を形成する工程と、
前記中間積層体を加熱することにより、前記シリカ粉体層を、層中の粒子が固定され、層厚が0.1mm以上であり、かつ、層厚の分布が±0.05mmのシリカ質焼結粉体層とすると共に前記中間積層体を一体化し、ガラス積層部材を形成する工程と、
を含み、
前記シリカ質焼結粉体層と前記石英ガラス部材の境界を有する、ガラス積層部材の製造方法。
【請求項6】
前記ガラス積層部材の波長1000nm~2000nmにおける反射率が60%以上である、請求項5記載のガラス積層部材の製造方法。
【請求項7】
前記中間積層体を一体化する工程において、1cmあたり1g以上の重りを使用する、請求項5又は6記載のガラス積層部材の製造方法。
【請求項8】
前記中間積層体を加熱する工程において、加熱温度が800~1350℃である、請求項5~7のいずれか1項記載のガラス積層部材の製造方法。
【請求項9】
前記第二の石英ガラス部材が、乾燥したシリカ粉体層が形成された石英ガラス部材であり、
前記第一の石英ガラス部材上のシリカ粉体層と、前記第二の石英ガラス部材上のシリカ粉体層を合わせる形で前記中間積層体を形成する、請求5~8のいずれか1項記載のガラス積層部材の製造方法。
【請求項10】
前記中間積層体を形成する工程において、乾燥したシリカ粉体層が形成された第一の石英ガラス部材を複数用い、且つ前記第二の石英ガラス部材が、乾燥したシリカ粉体層を有しない石英ガラス部材であり、
前記複数の第一の石英ガラス部材をシリカ粉体層同士が接しない形で積層し、且つ最上部の前記第一の石英ガラス部材の前記シリカ粉体層上に、前記第二の石英ガラス部材を配置して、前記中間積層体を形成し、
シリカ質焼結体層を複数層含むガラス積層部材を形成する、請求項5~8のいずれか1項記載のガラス積層部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い反射率を有する反射部材及びガラス積層部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気炉など高温雰囲気を必要とする場合、内部の熱を外部に逃がさないために例えばアルミナ断熱材等の断熱素材で加熱雰囲気を覆うのが一般的である。これらは、半導体工業で使用される熱処理炉であっても同様である。このような断熱材は、自らも熱を吸収することにより保温、均熱性に寄与している。このため、ヒーター等の温度制御において、断熱材の保温性が電気炉内で処理される製品の温度即応性のマイナスとなっていた。特に半導体工業の熱処理工程は、スループットをあげるために、熱を内部から逃がさずにかつ、熱吸収の少ない(熱容量の小さい)断熱手段が必要となっている。
【0003】
従来、これらの対策のために多数の微細気泡を有する不透明石英ガラスの板や円筒リングなどが遮熱手段として使用されているが、効果的な遮熱を行うためには、例えば炉入り口に円盤状の当該不透明石英ガラス板を何枚も並べて配置する必要があり、結果的に熱容量を大きくしてしまっている。このため、特に炉の内部からの熱線を遮蔽し且つ効率よく反射し熱容量の小さい(体積が小さい)断熱遮熱手段が必要であった。
【0004】
このため、例えば石英ガラス板に金コートを行うものや特許文献1に記載されるようなシリカスラリーを塗布した反射層を利用するものが考案されている。しかしながら、例えば金など金属系の反射素材は性能が高いものの、特に半導体工業用などの金属不純物を嫌う用途では使用が困難であった。
【0005】
また、シリカスラリーなどを利用する方法は、高反射性能を得るためにはシリカ粒子同士が部分的に融着して塊となった粒塊構造が必要で、強度的にも不安定で、水分や薬液による洗浄でも溶けたり剥離する問題や、ポーラスである為、汚れが付着すると除去が難しく、高純度を要求する半導体工業用途では使用が難しかった。
【0006】
これらの解決のためさまざまな工夫がなされている。例えば、特許文献2では、スラリーの焼成面や粉体の焼結体の表面に、透明なシリカ層を形成することが試みられた。これらの方法では、透明なシリカ層を形成するために少なくともシリカが溶融するための熱を加える必要があり、その際に反射層である焼結粉体層まで融着し、反射性能が低下したり、透明層形成の際の体積の変化や透明層と焼結粉体層の膨張収縮の差異による歪ができ、クラックなどの発生や破損に至ってしまうという、加熱の制御が難しいという問題があった。
【0007】
一方、特許文献3で提案されているように、スラリーを塗布し、熱反射コーティングを密閉状態で2つの石英ガラスプレートで挟み、その縁部をともに火炎研磨または溶接されている石英プレートが試みられたが、溶接による固定が周囲のみであり、強固に貼り合せられておらず、製作中や、熱反射部材として使用中に破損し易いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5679591号
【文献】特許第5748605号
【文献】特開2009-302547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、使用時にダスト発生がなく、破壊強度が大きく、高い反射率を維持しながら、製作時および使用時の高温環境でも破損を防ぐことができる反射部材、及び該反射部材として好適なガラス積層部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の反射部材は、不透明シリカ質焼結粉体層の上面及び下面に透明石英ガラス部材が形成されてなる積層構造を有する反射部材であり、前記不透明シリカ質焼結粉体層の厚さが0.1mm以上であり、膜厚の分布が±0.05mm以下であり、前記積層構造の上面及び下面の透明石英ガラス部材に、積層構造と平行な方向で荷重をかけた時、破壊する荷重が1cmあたり5N以上であり、前記積層構造の、不透明シリカ質焼結粉体層と透明石英ガラス部材の境目において、両者の中間の不透明度となる半透明度部分の幅が0.01mm以下である、反射部材である。
【0011】
前記反射部材の波長1000nm~2000nmにおける反射率が60%以上であることが好適である。また、前記反射部材は、特定波長に対する反射率の部材の面内分布が±5%であることが好適である。
【0012】
前記シリカ質焼結粉体層のかさ密度が1.3~1.5g/cmであることが好ましい。
【0013】
前記反射部材として、前記シリカ質焼結粉体層を複数層含み、前記シリカ質焼結粉体層及び前記石英ガラス部材が交互に積層されてなる反射部材としてもよい。
【0014】
本発明のガラス積層部材の製造方法は、シリカ質焼結粉体層の上面及び下面に石英ガラス部材が形成されてなるガラス積層部材の製造方法であって、シリカガラス粒子及び水を含むスラリーを作成する工程と、第一の石英ガラス部材の表面に前記スラリーを平坦に塗布した後、前記塗布膜を乾燥させ、平面度0.1mm以下のシリカ粉体層とする工程と、前記第一の石英ガラス部材上のシリカ粉体層に、平面度0.1mm以下の面を有する第二の石英ガラス部材を載せ、中間積層体を形成する工程と、前記中間積層体を加熱することにより、前記シリカ粉体層を、層中の粒子が固定され、層厚が0.1mm以上であり、かつ、層厚の分布が±0.05mmのシリカ質焼結粉体層とすると共に前記中間積層体を一体化し、ガラス積層部材を形成する工程と、を含む、ガラス積層部材の製造方法である。
【0015】
前記ガラス積層部材の波長1000nm~2000nmにおける反射率が60%以上であることが好適である。
【0016】
前記中間積層体を一体化する工程において、1cmあたり1g以上の重り(押し圧)を使用することが好ましい。
【0017】
前記中間積層体を加熱する工程において、加熱温度が800~1350℃であることが好適である。
【0018】
前記第二の石英ガラス部材が、乾燥したシリカ粉体層が形成された石英ガラス部材であり、前記第一の石英ガラス部材上のシリカ粉体層と、前記第二の石英ガラス部材上のシリカ粉体層を合わせる形で前記中間積層体を形成してもよい。
【0019】
前記中間積層体を形成する工程において、乾燥したシリカ粉体層が形成された第一の石英ガラス部材を複数用い、且つ前記第二の石英ガラス部材が、乾燥したシリカ粉体層を有しない石英ガラス部材であり、前記複数の第一の石英ガラス部材をシリカ粉体層同士が接しない形で積層し、且つ最上部の前記第一の石英ガラス部材の前記シリカ粉体層上に、前記第二の石英ガラス部材を配置して、前記中間積層体を形成し、シリカ質焼結粉体層を複数層含むガラス積層部材を形成してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、使用時にダスト発生がなく、破壊強度が大きく、高い反射率を維持しながら、製作時および使用時の高温環境でも破損を防ぐことができる反射部材を提供することができる。また、該反射部材として好適なガラス積層部材を、火炎加工や、制御が難しい加熱工程を必要とせず、容易に製造することができる製造方法を提供することができるという著大な効果を奏する。さらに、反射部材の端面にガラス材を溶接するなどの方法でシリカ質焼結粉体層を覆う事で、フッ酸などの薬液でガラス積層部材の表層を洗浄可能にする事ができるという、副次的な効果も生じせしめる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のガラス積層部材の製造方法の一つの実施の形態を示す概略説明図である。
図2】実施例1のガラス積層部材中のシリカ質焼結粉体層の電子顕微鏡写真を示す。
図3】実施例1のガラス積層部材を示す写真である。
図4】実施例1の厚さ測定の測定点を示す平面図である。
図5】実施例1のガラス積層部材を断面から見た画像を示す顕微鏡写真であり、(a)はサンプルの上から光を当てた照明により撮影した画像を示し、(b)はサンプルの裏から光を当てた透過照明により撮影した画像を示す。
図6】実施例2のガラス積層部材を示す写真である。
図7】透過照明により撮影した比較例1のサンプルの断面観察の画像写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0023】
図1は、本発明のガラス積層部材の製造方法の一つの実施の形態を示す概略説明図である。本発明方法は、シリカ質焼結粉体層16の上面及び下面に石英ガラス部材(10a,10b)が形成されてなるガラス積層部材20の製造方法であって、シリカガラス粒子13及び水Wを含むスラリー12を作成する工程と[図1(a)]、第一の石英ガラス部材10aの表面に前記スラリー12を平坦に塗布した後[図1(b)]、前記塗布膜を乾燥させ、平面度0.1mm以下のシリカ粉体層14とする工程と、前記第一の石英ガラス部材10a上のシリカ粉体層14に、平面度0.1mm以下の面を有する第二の石英ガラス部材10bを載せ、中間積層体を形成する工程と[図1(c)]、前記中間積層体を加熱することにより、前記シリカ粉体層14を、層中の粒子13が固定され、層厚が0.1mm以上であり、かつ、層厚の分布が±0.05mmのシリカ質焼結粉体層16とすると共に前記中間積層体を一体化し、ガラス積層部材20を形成する工程と、を含むものである。
【0024】
前記スラリー12に用いられるシリカガラス粒子13としては、公知のシリカガラス粒子を用いることができるが、平均粒子径が0.1~5μmのシリカガラス粒子が好適である。また、スラリー12に水溶液において熱的要因によるゲル化可能な有機物バインダを添加してもよい。スラリー12中のシリカガラス粒子13の含有量は特に制限はないが、50~80質量%が好適である。なお、図1において、符号22は、スラリー12を含む容器である。
【0025】
前記石英ガラス部材としては、公知の石英ガラス製の部材を用いることができ、特に制限はないが、透明石英ガラス部材が好適である。前記透明石英ガラス部材としては、無色透明な石英ガラス部材が好ましく、厚さ2mm、波長400~2000nmにおける光の透過率が80%以上である無色透明な石英ガラス部材がより好ましい。
また、石英ガラス部材の形状等も特に制限はないが、例えば、板状、円板状、半球状等の厚みが均一な部材が好適である。
石英ガラス部材の厚みは、強度の点からシリカ粉体層15よりも厚いことが好ましく、具体的には、0.5mm以上が好ましい。石英ガラス部材の厚みの上限値は特に制限はないが、加工等の点から10mm以下が実用的である。
【0026】
前記スラリー12の塗布方法としては、石英ガラス部材10aの表面に平坦に塗布可能であれば特に制限はないが、スクレイバー等を用いて、スクレイピング法により平坦な塗布膜を形成することが好適である。本願明細書において、平坦に塗布とは、塗布厚の分布の小さい塗布を意味する。具体的には、塗布膜12を乾燥させたシリカ粉体層14の厚さの分布を0.1mm(±0.05)以内になるように、平坦な塗布膜を形成することが好適である。シリカ粉体層14の厚さの分布が大きいと、平坦度が悪いので、第二の石英ガラス部材10bを載せる工程で、隙間ができる部分が広くなり、密着性が低下し、加熱により一体化させる事が困難となる。
【0027】
本発明方法において、スラリーの塗布膜を乾燥させてシリカ粉体層とすることにより、以後の工程で扱いやすくなる。乾燥が充分でないうちに石英ガラス部材で塗布膜を挟むと、シリカ粉体層の厚みが変化したり、あるいはシリカ粉体層に気泡が噛んでしまい、結果としてシリカ質焼結粉体層の薄い部分ができてしまう。また、乾燥が不十分で水分が多く残留していると石英ガラス部材を貼り合せる加熱の際に、水分が水蒸気になり貼り合せ箇所で膨張して、一体化しないことがある。よって、スラリー中の水分を十分に乾燥させることが好適である。
【0028】
前記塗布膜の乾燥方法は特に制限はないが、例えば、乾燥用の加熱炉内で行ってもよい。乾燥温度はシリカ粉体層のシリカガラス粒子が固定される温度より低いのが望ましい。乾燥温度がシリカ粉体層の粒子が固定される温度以上であると、シリカ粉体層の粒子の一部が固定されてしまい、石英ガラス部材を貼り合せる加熱の際に、既にシリカ粉体層の粒子の一部が固定されているため、貼り合せ、一体化できない場合がある。具体的には、乾燥温度は常温(5~35℃)~100℃程度が好ましい。
【0029】
塗布膜を乾燥して、平面度0.1mm以下のシリカ粉体層とし、該シリカ粉体層に平面度0.1mm以下の面を有する第二の石英ガラス部材10bを載せ、中間積層体を形成する。本願明細書において、平面度は、平坦な定盤の上に測定する材料を載せ、レーザー変位計で測定することができる。シリカ粉体層の平面度は、シリカ粉体層の高さの面内分布から求めることができる。
【0030】
前記中間積層体を加熱する工程において、加熱温度は低温すぎると、粒子が固定されずに剥がれ易くなり、加熱温度が高温すぎると、シリカ質焼結粉体層のかさ密度が高くなり、焼結度合が進んで部分的に透明化し、反射率が低下するため、加熱温度は800~1350℃が好適であり、1100~1300℃がより好適である。加熱雰囲気は特に制限はないが、大気雰囲気が好ましい。
【0031】
また、中間積層体の加熱の際により強固に貼り合せるため、重り(押し圧)を利用しても良く、1cmあたり1g以上の重り(押し圧)を使用することが好適である。
【0032】
得られるシリカ質焼結粉体層のかさ密度が1.3~1.5g/cmであることが好ましい。
前記シリカ質焼結粉体層の厚さは0.1mm以上が好ましく、200μm~1000μmがより好ましい。シリカ質焼結粉体層が厚過ぎると、加熱により、シリカ粉体層の粒子が固定されたシリカ質焼結粉体層とし、同時にシリカ粉体層と石英ガラス部材を一体化する工程において、シリカ粉体層の焼結時の収縮量が、石英ガラス部材に対して大きくなり、一体化できず、剥がれたり、シリカ質焼結粉体層にクラック(ひび割れ)が発生し易くなる。また、シリカ質焼結粉体層の膜厚の分布が±0.05mm以下であることが好ましい。
【0033】
なお、図1では、第二の石英ガラス部材10bとして、乾燥したシリカ粉体層を有しない石英ガラス部材を用い、シリカ質焼結体層16を1層含むガラス積層部材20を製造した例を示したが、シリカ質焼結体層16を複数層含むガラス積層部材を形成してもよい。シリカ質焼結体層16を複数層含むガラス積層部材の製造方法としては、例えば、中間積層体を形成する工程において、前記第二の石英ガラス部材10bとして、乾燥したシリカ粉体層が形成された石英ガラス部材を用い、第一の石英ガラス部材上のシリカ粉体層と、前記第二の石英ガラス部材上のシリカ粉体層を合わせる形で中間積層体を形成する方法や、乾燥したシリカ粉体層が形成された第一の石英ガラス部材を複数用い、且つ前記第二の石英ガラス部材として、乾燥したシリカ粉体層を有しない石英ガラス部材を用い、前記複数の第一の石英ガラス部材をシリカ粉体層同士が接しない形で積層し、且つ最上部の前記第一の石英ガラス部材の前記シリカ粉体層上に、前記第二の石英ガラス部材を配置して、中間積層体を形成する方法、図1(c)で示した第二の石英ガラス部材10bの上部にさらに乾燥したシリカ粉体層が形成された石英ガラス部材をシリカ粉体層が第二の石英ガラス部材10bに接するように積層し、中間積層体を形成する方法等が挙げられる。シリカ質焼結体層16を複数層含む場合、それぞれのシリカ質焼結体層は同一でもよく、異なっていても良い。例えば、シリカガラス粒子の粒径分布が異なる複数のシリカ質焼結体層を含んでいても良い。
【0034】
前記方法により、剥がれやクラック、変形等が生じず、シリカ質焼結粉体層16と石英ガラス部材10a,10bの間に、両者の中間の透明度を有する半透明な部分が実質ない、石英ガラス部材の境目まで反射率の良いシリカ質焼結粉体層を含むガラス積層部材20を容易に製造することができる。
【0035】
前記ガラス積層部材の製造方法により、本発明の反射部材を容易に製造することができる。
本発明の反射部材は、不透明シリカ質焼結粉体層16の上面及び下面に透明石英ガラス部材(10a,10b)が形成されてなる積層構造を有する反射部材であり、前記シリカ質焼結粉体層16の厚さが0.1mm以上であり、膜厚の分布が±0.05mm以下である。
【0036】
本発明の反射部材において、前記不透明シリカ質焼結粉体層は反射材として作用する。前記不透明シリカ質焼結粉体層としては、白色不透明な不透明シリカ質焼結粉体層が好適であり、実質的に光を透過せず、例えば波長400~2000nmにおける光の透過率が1%以下である不透明シリカ質焼結粉体層がより好適である。
熱線は、一般に赤外の範囲が想定されるが、熱処理空間からのエネルギー漏洩を抑制するには、できるだけ可視域から赤外までの広範囲に高い反射能を有するほうが有利である。本発明の反射部材は、波長1000nm~2000nmにおける反射率が60%以上であることが好適である。また、特定波長に対する反射率の部材の面内分布が±5%以下であることが好適である。
【0037】
前記シリカ質焼結粉体層は、明確な粒塊構造を成したものであれば良く、粒子間の空隙はあってもかまわない。反射は空隙と粒子の界面にて発生する為、逆に適度に空隙があった方が好適であるが、あまりに空隙が大きいと、粒子間の融着部分が少なくなり、層としての強度が保てなくなり、剥離したりする。また、空隙が少なく融着部分が多いと反射界面が減少し、熱線の反射効率が低下する。よって、粒子と空隙の体積比率は5:5~8:2の範囲が好適である。また、前記シリカ質焼結粉体層のかさ密度が1.3~1.5g/cmであることが好適である。
反射される波長は、粒塊の粒径等に依存するので、粒子の径も重要な要素となる。粒塊の50%が0.1~5μmの範囲に分布していることが好適である。
なお、シリカ質でなくても反射材の効果は得られるが、高温で使用するには熱膨張率が小さく、耐熱性も高いシリカが最も適している。
【0038】
また、シリカ質焼結粉体層の厚さは、100μm以上が好適であり、200μm~1000μmがより好適である。シリカ質焼結粉体層が薄いと、熱線の反射効率が低下する。熱線の遮熱・断熱特性には、高い反射率がよい。金など金属系の反射素材や既存のシリカスラリーを用いた反射層、あるいは気泡を含有する不透明石英ガラスと同程度以上の反射率が効果的であり、反射率は60%を下回らないのがよく、80%以上がより好ましい。
【0039】
なお、図1では、スラリーを塗布して乾燥したシリカ粉体層を加熱し、シリカ質焼結粉体層を形成した例を示したが、本発明の反射部材においてシリカ質焼結粉体層の形成方法は特に制限はなく、公知の方法、例えば、直接粉を載せて層状にプレス成型してシリカ粉体層を形成し、加熱によりシリカ質焼結粉体層を形成してもよい。
【0040】
前記反射部材の透明石英ガラス部材としては、シリカ質焼結粉体層と熱膨張率が同じように小さい透明石英ガラス部材がより好ましい。気泡を多く含む不透明石英ガラスであると、反射層であるシリカ質焼結粉体層に熱線が届かず、不透明石英ガラスで散乱されるおそれがある。
石英ガラス部材の厚さは、シリカ質焼結粉体層には空隙が必要なため、挟み込む石英ガラス部材で強度を保つ必要があるため、シリカ質焼結粉体層より厚いことが好適である。
【0041】
本発明の反射部材は、前記積層構造の、不透明シリカ質焼結粉体層と透明石英ガラス部材の間に、両者の中間の不透明度となる半透明な部分が実質なく(幅が0.01mm以下)、透明石英ガラス部材の境目まで反射率の良い不透明シリカ焼結粉体層が形成されている。
【0042】
当該焼結粉体層と石英ガラス部材の接着界面は、焼結粉体と同様に融着部が多いと、粒塊側の界面が減少し、反射効率が落ちる。逆に融着部が少ないと、使用時に界面から剥離してしまう危険がある。少なくとも接着界面の面積の1%以上あり、50%未満が融着している事が好適である。
【0043】
本発明の反射部材は強度に優れ、前記積層構造の上面及び下面の石英ガラス部材に、積層構造と平行な方向で荷重をかけた時、破壊する荷重が1cmあたり5N以上であり、20N以上が好ましい。
【0044】
本発明の反射部材は、不透明シリカ質焼結粉体層を1層以上含むものであり、シリカ質焼結粉体層を複数層含み、シリカ質焼結粉体層及び石英ガラス部材が交互に積層されていてもよい。シリカ質焼結粉体層を複数層含む場合は、それぞれのシリカ質焼結粉体層は同一でもよく、異なっていてもよい。反射波長はシリカ質焼結粉体層中の粒径に依存する為、異なった粒塊の粒径分布を持った層を複数配置することにより、効率よく、広範囲の反射が可能となる。
【0045】
本発明の反射部材は、半導体工業用の熱処理工程において、ダスト発生や金属不純物が少なく、温度即応性を求められる高温熱処理炉用の断熱手段に好適に使用される。
【実施例
【0046】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0047】
(実施例1)
平均粒径1.5μmの合成シリカガラス粒子が60質量%となるように、純水中で混合してシリカスラリーを作成した。
平坦な作業台の上に、外径350mm、肉厚3mmの透明研磨した第一の透明石英ガラス円板を置き、円板上にシリカスラリーを流し、表面が平坦になるようにスクレーパーで整えながら塗布した。スクレーパーには石英ガラス円板の上面より0.2mm高くなるようなガイド部材を使用した。
【0048】
前記スラリー塗布後の石英ガラス円板を室温(23℃)で5時間以上乾燥し、シリカ粉体層(平均0.2mm厚)を形成した。下記方法により、該シリカ粉体層の平面度を測定したところ0.07mmであった。
<平面度の測定方法>
平坦な定盤の上で、シリカ粉体層(乾燥済み)付き石英ガラス円板を、レーザー変位計で測定した。シリカ粉体層の高さの面内分布から平面度を求めた。
【0049】
乾燥したシリカ粉体層の上に、外径350mm、肉厚3mmの透明研磨した第二の透明石英ガラス円板を載せ、中間積層体を形成した。石英ガラス円板の載せた面の平面度は0.05mmであった。平面度の測定は前述と同様に行った。
その後、中間積層体を大気雰囲気で1100℃3時間加熱し、不透明なシリカ質焼結粉体層を挟んだ透明石英ガラス円板からなるガラス積層部材が形成された。得られたガラス積層部材中のシリカ質焼結粉体層の電子顕微鏡写真を図2に示す。また、得られたガラス積層部材の全体写真を図3に示す。
【0050】
得られたガラス積層部材について、下記測定を行った。
<1.シリカ質焼結粉体層の厚さ及び石英ガラス部材との境目の幅の測定方法>
ガラス積層部材中の厚さ測定の測定点を図4に示す。図4に示した如く、測定点は、円板中心1点(S1)と、外周付近の90°毎の4点(S2)、及び中心と外周の中間点の90°毎の4点(S3)の計9点で行った。測定用サンプルを幅5mmで切出し、断面を顕微鏡又はマイクロスコープで拡大観察して膜厚計測した。図5(a)にサンプルの上から光を当てた照明により撮影した断面観察の画像写真を示す。
同様に、サンプルの裏から光を当てた透過照明で断面観察を行い、シリカ質焼結粉体層と石英ガラス円板の境目であって、シリカ質焼結粉体層の暗く見える不透明部分と、石英ガラス円板の明るく見える透明部分の、中間で明るさの変化する境目の半透明な部分の幅を測定した(測定可能下限値5μm)。図5(b)に透過照明により撮影した断面観察の画像写真を示す。
【0051】
<2.かさ密度の測定方法>
シリカ質焼結粉体層のかさ密度を、重量/体積で算出した。重量は全体の重量から石英ガラス部材の重量を減じ、体積は塗布面積にシリカ粉体層厚(平均)をかけて算出した。
【0052】
<3.反射率測定>
得られたガラス積層部材に対し、前記シリカ質焼結粉体層の厚さ測定の測定点と同じ位置からサンプリングして反射率測定用サンプルを切り出した。測定器LAMBDA950(パーキンエルマー社製)に積分球を取り付けて反射率を測定した。反射率測定にはスペクトラロン反射材(ラブスフェア社製)を標準反射材として使用し、相対反射率を測定した。
【0053】
<4.強度試験>
得られたガラス積層部材に対し、前記シリカ質焼結粉体層の厚さ測定の測定点と同じ位置から2cmx2cmにサンプリングして、サンプルを5個切出し、強度試験を行った。上側及び下側の石英ガラス板を治具で固定して、治具にガラス板と平行な方向で荷重がかかるように、強度試験機にセットして、荷重をかけ、破壊した時の荷重を測定した。サンプルの面積(4cm)から、1cmあたりの破壊荷重を算出した。
【0054】
<5.高温環境での耐久試験>
得られたガラス積層部材に対して、大気雰囲気で1000℃に加熱し1時間保持した後、室温(23℃)まで冷却した。これを10回繰り返し加熱し、破損や剥れ、クラックが発生しないかを確認した。
【0055】
得られたガラス積層部材には剥れやクラック、変形は見られなかった。
ガラス積層部材中の上面及び下面の透明石英ガラス板は、目視観察で無色透明であった。また、ガラス積層部材中のシリカ質焼結粉体層は、目視観察において白色不透明であった。シリカ質焼結粉体層の各部(端から中心、円周方向)の厚さは、膜厚0.16~0.23mmであり、平均膜厚は0.2mmだった。図5に示した如く、断面観察では不透明シリカ質焼結粉体層と透明石英ガラス板の境界は明瞭であり、中間層のような半透明部は見られなかった(幅<0.005mm)。シリカ質焼結粉体層のかさ密度は1.3g/cmであった。
【0056】
得られたガラス積層部材の波長1000nmにおける反射率は85~90%、波長2000nmにおける反射率は71~76%であり、波長1000~2000nmにおける反射率は71%を下回らなかった。波長1000~2000nmにおいては反射率は2000nmが最小になる傾向があり、以降の実施例では2000nmで反射率を評価した。
ガラス積層部材の強度は10~30N/cmであった。
ガラス積層部材の高温環境での耐久試験では、破損、剥れ、クラックは見られなかった。
【0057】
(実施例2)
シリカスラリーを下記方法により作成したシリカスラリーに変更した以外は実施例1と同様の方法により、ガラス積層部材を得た。得られたガラス積層部材の全体写真を図6に示す。得られたガラス積層部材に対し、実施例1と同様に測定を行った。
平均粒径1.5μmの合成シリカガラス粒子60質量%と、メチルセルロース1質量%となるように、純水中で混合してシリカスラリーを作成した。
シリカ粉体層の膜厚は、平均0.2mm厚、シリカ粉体層の平面度は、0.07mmであった。
【0058】
得られたガラス積層部材には、剥れやクラック、変形は見られなかった。
ガラス積層部材中の上面及び下面の透明石英ガラス板は、目視観察で無色透明であった。また、ガラス積層部材中のシリカ質焼結粉体層は、目視観察において白色不透明であった。シリカ質焼結粉体層の各部の厚さは、0.18~0.23mmであり、平均は0.2mmだった。断面観察では不透明シリカ質焼結粉体層と透明石英ガラス板の境界は明瞭であり、中間層のような半透明部は見られなかった(幅<0.005mm)。シリカ質焼結粉体層のかさ密度は、1.3g/cmであった。
ガラス積層部材の反射率は、波長2000nmで73~78%であり、波長1000~2000nmにおける反射率は73%を下回らなかった。
ガラス積層部材の強度は15~40N/cmであった。
ガラス積層部材の高温環境での耐久試験では、破損、剥れ、クラックは見られなかった。
【0059】
(実施例3)
中間積層体の加熱工程において、1cmあたり5gになるように重しをして加熱処理を行った以外は実施例2と同様の方法によりガラス積層部材を得た。得られたガラス積層部材に対し、実施例1と同様に測定を行った。
【0060】
得られたガラス積層部材には、剥れやクラック、変形は見られなかった。
ガラス積層部材中の上面及び下面の透明石英ガラス板は、目視観察で無色透明であった。また、ガラス積層部材中のシリカ質焼結粉体層は、目視観察において白色不透明であった。シリカ質焼結粉体層の各部の厚さは、0.19~0.23mmであり、平均は0.2mmだった。断面観察では、不透明シリカ質焼結粉体層と透明石英ガラス板の境界は明瞭であり、中間層のような半透明部は見られなかった(幅<0.005mm)。シリカ質焼結粉体層のかさ密度は、1.5g/cmであった。
ガラス積層部材の反射率は、波長2000nmで72~77%であり、波長1000~2000nmにおける反射率は72%を下回らなかった。
ガラス積層部材の強度は20~40N/cmであった。
ガラス積層部材の高温環境での耐久試験では、破損、剥れ、クラックは見られなかった。
【0061】
(実施例4)
実施例2と同様の方法により、透明石英ガラス円板上にシリカ粉体層(平均膜厚0.2mm、平面度0.07mm)を形成した物を2個作成した。一方のシリカガラス円板のシリカ粉体層に、他方のシリカガラス円板のシリカ粉体層の無い面を重ね合せた。更に露出したシリカ粉体層側に、外径350mm、肉厚3mmの透明研磨した第三の透明石英ガラス板(載せた面の平面度:0.05mm)を載せ、シリカ粉体層を2層含む中間積層体を形成した。該中間積層体を実施例3と同様の方法により加熱処理し、不透明シリカ質焼結粉体層(平均0.2mm)を2層挟んだガラス積層部材を得た。得られたガラス積層部材に対し、実施例1と同様に測定を行った。
【0062】
得られたガラス積層部材には、剥れやクラック、変形は見られなかった。
ガラス積層部材中の上面及び下面の透明石英ガラス板は、目視観察で無色透明であった。また、ガラス積層部材中のシリカ質焼結粉体層は、目視観察において白色不透明であった。シリカ質焼結粉体層の各部の厚さは、2層それぞれ0.19~0.23mmであり、2層それぞれの層の平均厚さは共に0.2mmだった。断面観察では、不透明シリカ質焼結粉体層と透明石英ガラス板の境界は明瞭であり、中間層のような半透明部は見られなかった(幅<0.005mm)。シリカ質焼結粉体層のかさ密度は、1.3g/cmであった。
ガラス積層部材の反射率は、波長2000nmで80~85%であり、波長1000~2000nmにおける反射率は80%を下回らなかった。
ガラス積層部材の強度は20~40N/cmであった。
ガラス積層部材の高温環境での耐久試験では、破損、剥れ、クラックは見られなかった。
【0063】
(実施例5)
実施例2と同様の方法により、透明石英ガラス円板上にシリカ粉体層(平均膜厚0.2mm、平面度0.07mm)を形成した物を2個作成した。両方のシリカガラス円板のシリカ粉体層同士を重ね合せ、シリカ粉体層を2層連続して含む中間積層体を形成した。該中間積層体を実施例3と同様の方法により加熱処理し、不透明シリカ質焼結粉体層(平均0.2mm)を2層連続して含むガラス積層部材を得た。得られたガラス積層部材に対し、実施例1と同様に測定を行った。
【0064】
得られたガラス積層部材には、剥れやクラック、変形は見られなかった。
ガラス積層部材中の上面及び下面の透明石英ガラス板は、目視観察で無色透明であった。また、ガラス積層部材中のシリカ質焼結粉体層は、目視観察において白色不透明であった。シリカ質焼結粉体層2層分の各部の厚さは、0.38~0.44mmであり、平均は0.4mmだった。断面観察では、不透明シリカ質焼結粉体層と透明石英ガラス板の境界は明瞭であり、中間層のような半透明部は見られなかった(幅<0.005mm)。シリカ質焼結粉体層2層分のかさ密度は、1.4g/cmであった。
ガラス積層部材の反射率は、波長2000nmで78~83%であり、波長1000~2000nmにおける反射率は78%を下回らなかった。
ガラス積層部材の強度は20~45N/cmであった。
ガラス積層部材の高温環境での耐久試験では、破損、剥れ、クラックは見られなかった。
【0065】
(実施例6)
中間積層体の加熱工程において、1cmあたり5gになるように重しをして、大気雰囲気で1350℃で3時間加熱処理を行った以外は実施例2と同様の方法によりガラス積層部材を得た。得られたガラス積層部材に対し、実施例1と同様に測定を行った。
【0066】
得られたガラス積層部材には、剥れやクラック、変形は見られなかった。
ガラス積層部材中の上面及び下面の透明石英ガラス板は、目視観察で無色透明であった。また、ガラス積層部材中のシリカ質焼結粉体層は、目視観察において白色不透明であった。シリカ質焼結粉体層の各部の厚さは、0.16~0.21mmであり、平均は0.2mmだった。断面観察では、不透明シリカ質焼結粉体層と透明石英ガラス板の境界は明瞭であり、中間層のような半透明部は見られなかった(幅<0.005mm)。シリカ質焼結粉体層のかさ密度は1.5g/cmであった。
ガラス積層部材の反射率は、波長2000nmで65~70%であり、実施例1等に比べてやや反射率が低いが、波長1000~2000nmにおける反射率は65%を下回らなかった。
ガラス積層部材の強度は40~80N/cmであった。
ガラス積層部材の高温環境での耐久試験では、破損、剥れ、クラックは見られなかった。
【0067】
(実施例7)
中間積層体の加熱工程において、1cmあたり5gになるように重しをして、大気雰囲気で800℃3時間加熱処理を行った以外は実施例2と同様の方法によりガラス積層部材を得た。得られたガラス積層部材に対し、実施例1と同様に測定を行った。
【0068】
得られたガラス積層部材には、剥れやクラック、変形は見られなかった。
ガラス積層部材中の上面及び下面の透明石英ガラス板は、目視観察で無色透明であった。また、ガラス積層部材中のシリカ質焼結粉体層は、目視観察において白色不透明であった。シリカ質焼結粉体層の各部の厚さは、0.19~0.23mmであり、平均は0.2mmだった。断面観察では、不透明シリカ質焼結粉体層と透明石英ガラス板の境界は明瞭であり、中間層のような半透明部は見られなかった(幅<0.005mm)。シリカ質焼結粉体層のかさ密度は、1.3g/cmであった。
ガラス積層部材の反射率は、波長2000nmで73~78%であり、波長1000~2000nmにおける反射率は73%を下回らなかった。
ガラス積層部材の強度は5~10N/cmであり、実施例1等に比べて強度が低かった。
ガラス積層部材の高温環境での耐久試験では、破損、剥れ、クラックは見られなかった。
【0069】
(実施例8)
シリカスラリーの石英ガラス円板への塗布工程において、スクレーパーには石英ガラス円板の上面より0.15mm高くなるようなガイド部材を使用した以外は、実施例3と同様の方法により、ガラス積層部材を得た。石英ガラス円板上に形成されたシリカ粉体層の平均膜厚は、0.15mm、平面度は0.07mmであった。得られたガラス積層部材に対し、実施例1と同様に測定を行った。
【0070】
得られたガラス積層部材には、剥れやクラック、変形は見られなかった。
ガラス積層部材中の上面及び下面の透明石英ガラス板は、目視観察で無色透明であった。また、ガラス積層部材中のシリカ質焼結粉体層は、目視観察において白色不透明であった。シリカ質焼結粉体層の各部の厚さは、0.1~0.17mmであり、平均は0.15mmだった。断面観察では、不透明シリカ質焼結粉体層と透明石英ガラス板の境界は明瞭であり、中間層のような半透明部は見られなかった(幅<0.005mm)。シリカ質焼結粉体層のかさ密度は1.4g/cmであった。
ガラス積層部材の反射率は、波長2000nmで60~65%であり、波長1000~2000nmにおける反射率は60%を下回らなかった。
ガラス積層部材の強度は20~40N/cmであった。
ガラス積層部材の高温環境での耐久試験では、破損、剥れ、クラックは見られなかった。
【0071】
(比較例1)
平均粒径1.5μmの合成シリカガラス粒子60質量%と、メチルセルロース1質量%となるように、純水中で混合してシリカスラリーを作成した。
平坦な作業台の上に、外径350mm、肉厚3mmの透明研磨した透明石英ガラス円板を置き、円板上にシリカスラリーを流し、表面が平坦になるようにスクレーパーで整えながら塗布した。スクレーパーには石英ガラス円板の上面より1.8mm高くなるようなガイド部材を使用した。
【0072】
前記スラリー塗布後の石英ガラス円板を、室温(23℃)で5時間以上乾燥させ、シリカ粉体層(平均1.5mm厚)を形成した。乾燥後のシリカ粉体層の表面をバーナー火炎で加熱して表面を透明化し、複層体を得た。バーナー加熱中にシリカ粉体層に一部クラックが入り、またバーナー火炎により透明化した表面には気泡が残留した。得られた複層体に対し、実施例1と同様の方法により測定を行った。図7に、透過照明により撮影した比較例1のサンプルの断面観察の上部の画像写真を示す。
【0073】
バーナー火炎により透明化した透明層28の厚さは0.1~0.5mmとバラつきが大きかった。図7に示した如く、不透明なシリカ粉体層24とバーナー火炎による透明層28の間に半透明部26(幅0.1mm以上)が生じ、シリカ粉体層24と透明部28との間の境目は不明瞭であった。
【0074】
(比較例2)
平均粒径1.5μmの合成シリカガラス粒子が60質量%と、メチルセルロース1質量%となるように、純水中で混合してシリカスラリーを作成した。
平坦な作業台の上に、外径350mm、肉厚3mmの透明研磨した第一の透明石英ガラス円板を置き、円板上にシリカスラリーを流し、表面が平坦になるようにスクレーパーで整えながら塗布した。スクレーパーには石英ガラス円板の上面より0.3mm高くなるようなガイド部材を使用した。
【0075】
前記スラリー塗布後の石英ガラス円板に、シリカ塗布膜が乾燥する前に、外径350mm、肉厚3mmの透明研磨した第二の透明石英ガラス板(載せた面の平面度:0.05mm)を載せ、中間体を形成した。載せた板とスラリーの間に最大3mmの気泡が10個程度入ったのが見られた。
前記中間体を、1cmあたり5gになるように重しをして、大気雰囲気で1100℃5時間加熱したが、閉じ込められた気泡の熱膨張により剥れ、貼り合せできなかった。
【0076】
(比較例3)
平均粒径1.5μmの合成シリカガラス粒子が60質量%と、メチルセルロース1質量%となるように、純水中で混合してシリカスラリーを作成した。
平坦な作業台の上に、外径350mm、肉厚3mmの透明研磨した第一の透明石英ガラス円板を置き、石英ガラス円板上にシリカスラリーを流し、1分間放置した後に円板を傾け余剰なスラリーを流し落とした。
前記スラリー塗布後の石英ガラス円板を、室温(23℃)で5時間以上乾燥させた。スラリーが流れた跡で塗布ムラができたが、シリカ質粉体層が形成された。該シリカ質粉体層の各部の肉厚は0.18~0.47mm、平均厚さは0.3mmであった。シリカ粉体層の平面度は0.2mmであった。
【0077】
乾燥したシリカ粉体層の上に、外径350mm、肉厚3mmの透明研磨した第二の透明石英ガラス板(載せた面の平面度:0.05mm)を載せ、中間積層体を形成した。該中間積層体の加熱処理を実施例3と同様の方法により行い、ガラス積層部材を得た。
【0078】
得られたガラス積層部材は、剥がれ易く、測定用のサンプリング時に剥がれてしまったサンプルがあった。剥れなかったサンプルを用いて測定を行った。
シリカ質焼結粉体層の各部の厚さは、0.23~0.36mmであり、平均は0.3mmだった。断面観察では、不透明シリカ質焼結粉体層と透明石英ガラス板の境界は明瞭であり、中間層のような半透明部は見られなかった(幅<0.005mm)。シリカ質焼結粉体層のかさ密度は1.3g/cmであった。
ガラス積層部材の反射率は、波長2000nmで74~85%であり、波長1000~2000nmにおける反射率は74%を下回らなかった。
ガラス積層部材の強度は2~10N/cmであり、強度が低かった。
【符号の説明】
【0079】
10a,10b:石英ガラス部材、12:スラリー、13:シリカガラス粒子、14,24:シリカ粉体層、16:シリカ質焼結粉体層、20:ガラス積層部材、22:容器、26:半透明部、28:透明層、S1,S2,S3:測定点、W:水。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7