(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04664 20160101AFI20231019BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20231019BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20231019BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20231019BHJP
C01B 3/32 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/12 101
H01M8/04 Z
H01M8/0432
C01B3/32
(21)【出願番号】P 2019170852
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 成門
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-012521(JP,A)
【文献】特開2013-229209(JP,A)
【文献】特開2018-113209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
C01B 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸素含有ガスとで発電を行う燃料電池セルと、
該燃料電池セルに供給する燃料ガスを生成する改質器と、
該燃料電池セルより排出された排ガスを燃焼する燃焼部と、
該燃焼部を介して排出された排ガスを、燃焼触媒を用いて燃焼させるための燃焼触媒部と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
第1時間における改質器の第1平均温度と、前記燃焼触媒部の第1平均温度とを算出する第1工程と、
第2時間経過後において、第1時間における改質器の第2平均温度と、前記燃焼触媒部の第2平均温度とを算出する第2工程と、を有し、
第1工程における各第1平均温度と、第2工程における各第2平均温度とを比較して、燃焼触媒の失活を判定する第3工程と、を備えている、失活判定制御を行う燃料電池装置。
【請求項2】
前記第3工程は、前記改質器の第1平均温度と前記改質器の第2平均温度との差分を算出する第1差分工程と、
前記燃焼触媒部の第1平均温度と前記燃焼触媒部の第2平均温度との差分を算出する第2差分工程と、
前記第1差分工程における差分および前記第2差分工程における差分と、それぞれの差分に対して設定された所定温度差とを比較する差分比較工程と、を有している、請求項
1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記第1差分工程における差分および前記第2差分工程における差分が、いずれも所定温度差以下であって、該失活判定制御を開始してからの期間が所定期間未満の場合に、前記第1工程に戻る、請求項
2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記第1差分工程における差分および前記第2差分工程における差分が、いずれも所定温度差以下であって、該失活判定制御を開始してからの期間が所定期間以上の場合に、運転を停止する、請求項
2に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記改質器と、前記燃焼部と、前記燃焼触媒部との温度に基づき、前記燃焼部が失火したとされた場合に、失火回復制御を行い、該失火回復制御にて失火が回復しない場合に、前記失活判定制御を実行する、請求項1~
4のいずれかに記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形の燃料電池装置(SOFC)は、燃料ガス(水素含有ガス)および空気(酸素含有ガス)を用いて発電を行なう。このような燃料電池装置においては、発電に使用されなかった燃料ガスを燃焼させることが行われるほか、失火が生じた場合、燃料ガス量を増加させたり、着火装置を作動させたりするなどの方法により失火回復制御が行われる。
【0003】
このような失火回復制御については、例えば、温度センサによって検出された燃料電池温度および第二燃焼部温度から、全体的または部分的に吹き消えている第一燃焼部の燃焼復帰を行う燃焼復帰制御が必要であるか否かを判定する判定部と、判定部によって燃焼復帰制御が必要であると判定された場合に、原料ポンプを制御して原燃料の供給量を増大させる原燃料増大部制御と、を備える制御装置により燃焼復帰制御を行う燃料電池システムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような燃焼復帰制御または失火回復制御においては、燃料電池の各部が正常に機能していることを前提として、失火判定が行われる。従って、例えば、排ガスを燃焼させるための燃焼触媒が失活している場合には、正しい失火判定を行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の燃料電池装置は、
燃料ガスと酸素含有ガスとで発電を行う燃料電池セルと、
該燃料電池セルに供給する燃料ガスを生成する改質器と、
該燃料電池セルより排出された排ガスを燃焼する燃焼部と、
該燃焼部を介して排出された排ガスを、燃焼触媒を用いて燃焼させるための燃焼触媒部と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、第1時間における改質器の第1平均温度と、前記燃焼触媒部の第1平均温度とを算出する第1工程と、
第2時間経過後において、第1時間における改質器の第2平均温度と、前記燃焼触媒部の第2平均温度とを算出する第2工程と、を有し、
第1工程における各第1平均温度と、第2工程における各第2平均温度とを比較して、燃焼触媒の失活を判定する第3工程と、を備えている、失活判定制御を行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、燃焼触媒の失活を判定する失活判定制御を行う燃料電池装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態の燃料電池装置の概略構成図である。
【
図3】本開示の実施形態の外装ケース内の燃料電池装置の構成を示す斜視図である。
【
図4】本開示の実施形態の失活判定制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の燃料電池装置の実施形態について説明する。
図1は、本開示の実施形態の燃料電池装置の概略構成図であり、
図2は、燃料電池モジュールの概略構成図である。燃料電池装置100は、燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて発電を行う燃料電池モジュール1、燃料ポンプB1および原燃料流路Fを有する燃料ガス供給部13、空気ブロワB2および空気流路Gを有する酸素含有ガス供給部14、改質水タンク6および改質水ポンプP1などを含む、燃料電池の自立した発電運転を補助するための補機類を備える。
【0010】
燃料ガス供給部13には、燃料ポンプB1より供給される原燃料の流量を測定する燃料流量計FM1が配設されていてもよい。また、酸素含有ガス供給部14には、同様に、空気ブロワB2より供給される酸素含有ガスの量を測定する酸素含有ガス流量計GM1が配設されていてもよい。
【0011】
燃料電池モジュール1は、燃料電池セル10を複数組み合わせてなるセルスタック11、改質器12、これらを収納する収納容器15を備える。改質器12は、セルスタック11の上方に配置される。
【0012】
さらに、燃料電池装置100は、
図1に示すように、排熱回収システム50を備える。排熱回収システム50は、熱交換器2、蓄熱タンク3、ラジエータ4などを含む。
【0013】
燃料電池セル10において発電に使用されなかった燃料ガスは、セルスタック11と改質器12との間の空間である燃焼部16にて燃焼される。燃焼部16には、燃料ガスを着火させるための着火装置17が、収納容器15の側面より挿入されている。着火装置17により燃料電池セル10を通過した燃料ガスを燃焼させることにより、燃料電池モジュール1内の温度を高温とすることができるほか、燃料電池セル10、改質器12の温度を高温にすることができる。
【0014】
燃料電池モジュール1から排出された排ガスは、排ガス流路(図示省略)を通じて収納容器15に設けられた排気口19から排出される。
【0015】
燃料電池装置100は、さらに、燃料電池モジュール1と熱交換器2との間に、燃焼部16を介して燃料電池モジュール1から排出された排ガスを、燃焼触媒を用いて燃焼させる燃焼触媒部20を備えている。なお、燃焼触媒部20は、
図2に示すように、排気口19内に設けられる必要はなく、燃料電池モジュール1と熱交換器2との間に配設されていればよい。
【0016】
排ガスには、燃焼部16の失火などによって燃焼されなかった燃料ガスや、燃焼部16が失火していないが、流量が多く燃焼が不完全な燃料ガスが含まれる場合がある。そのような場合に、燃焼触媒部20によって、燃料電池モジュール1から排出される排ガスが浄化され、浄化された排ガスを燃料電池装置100の外部に排出することができる。
【0017】
燃焼触媒部20において使用する燃焼触媒としては、多孔質の担体に、白金、パラジウム等の貴金属類の他、マンガン、コバルト、銀、銅、ニッケル等を担持させたものを用いることができる。
【0018】
図3は、本開示の実施形態の外装ケース内の燃料電池装置の構成を示す斜視図である。燃料電池装置100は、各フレーム41と各外装パネル42とからなるケース40の中に配設されている。このケース40の中の、燃料電池モジュール1および各補機の周りや流路、配管等には、複数の計測機器やセンサ等が設けられている。
【0019】
燃料電池装置100においては、特に、改質器12内に、改質器12の温度を測定するための第1温度センサ21が設けられている。また、燃焼部16および燃焼触媒部20にも、燃焼部16および燃焼触媒部20の各温度を測定するために、それぞれ第2温度センサ22、第3温度センサ23が設けられている。これらの温度センサとしては、熱電対、測温抵抗体、サーミスタなどを用いることができる。
【0020】
燃料電池装置100は、さらに、制御装置30を備えている。制御装置30は、燃料電池装置100を構成する各種構成部品および温度センサを含む各種センサと接続され、これらの各機能部をはじめとして、燃料電池装置100の全体を制御および管理する。また、制御装置30は、少なくとも1つのプロセッサおよび記憶装置等を含み、記憶装置に記憶されているプログラムを取得して、このプログラムを実行することにより、燃料電池装置100の各部に係る種々の機能を実現する。
【0021】
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路として、または、複数の通信可能に接続された集積回路および/もしくはディスクリート回路として、実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術にしたがって実行されることが可能である。
【0022】
1つの実施形態において、プロセッサは、たとえば、関連するメモリに記憶された指示を実行することによって1以上のデータ計算手続または処理を実行するように構成された、1以上の回路またはユニットを含む。他の実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続きまたは処理を実行するように構成された、ファームウェア、たとえばディスクリートロジックコンポーネントであってもよい。
【0023】
種々の実施形態によれば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路、デジタル信号処理部、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、または、これらのデバイスもしくは構成の任意の組み合わせ、または、他の既知のデバイスおよび構成の組み合わせ、を含み、以下に説明される機能を実行してもよい。
【0024】
制御装置30は、記憶装置および表示装置(ともに図示省略)と、燃料電池装置100を構成する各種構成部品および各種センサと接続され、これらの各機能部をはじめとして、燃料電池装置100の全体を制御および管理する。制御装置30は、それに付属する記憶装置に記憶されているプログラムを取得して、このプログラムを実行することにより、燃料電池装置100の各部にかかる、種々の機能を実現する。
【0025】
制御装置30から、他の機能部または装置に制御信号または各種の情報等を送信する場合、制御装置30と他の機能部とは、有線または無線により接続されていればよい。制御装置30が行う、実施形態に特徴的な制御については、後記で説明する。なお、実施形態において、制御装置30は特に、燃料電池装置に繋がる外部装置の指示、指令や、先に述べた各種センサの指示や計測値に基づいて、各種補機を制御する。図では、制御装置30と、燃料電池を構成する各装置および各センサとを結ぶ接続線の図示を、省略している場合がある。
【0026】
図示しない記憶装置は、プログラムおよびデータを記憶できる。記憶装置は、処理結果を一時的に記憶する作業領域としても利用してもよい。記憶装置は、記録媒体を含む。記録媒体は、半導体記憶媒体、および磁気記憶媒体等の任意の非一時的(non-transitory)な記憶媒体を含んでよい。また、記憶装置は、複数の種類の記憶媒体を含んでいてもよい。記憶装置は、メモリカード、光ディスク、または光磁気ディスク等の可搬の記憶媒体と、記憶の読み取り装置との組合せを含んでいてもよい。記憶装置は、RAM(Random Access Memory)等の一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでいてもよい。
【0027】
なお、燃料電池装置の制御装置30および記憶装置は、燃料電池装置100の外部に有する構成として実現することもできる。さらに、本開示に係る制御装置30における特徴的な制御工程を含む制御方法として実現したり、上記工程をコンピュータに実行させるための制御プログラムとして実現したりすることも可能である。
【0028】
制御装置30は、燃料ガス供給部13および酸素含有ガス供給部14の動作を制御して、燃料電池モジュール1に供給される燃料ガスと酸素含有ガスの量を最適な量に制御し、燃料電池モジュール1に供給する。
【0029】
例えば、外部負荷の要求する電力が低くなった場合、制御装置30は、燃料ガス供給部13および酸素含有ガス供給部14より供給される燃料ガスおよび酸素含有ガスの供給量を、低下した外部負荷に応じて設定された供給量となるよう制御する。しかし、このような場合、燃料電池セル10より排出される燃料ガスの量が低下し、その結果、燃焼部16において燃料ガスの失火が発生することがある。
【0030】
燃料電池装置100における制御装置30は、このような失火が生じた場合に、失火の有無を判定する失火判定制御を行うとともに、失火判定が行われた場合に、該失火判定が正しく行われているかを検証するため、改質器12の温度と、燃焼触媒部20の温度とから、燃焼触媒部20における燃焼触媒の失活を判定する失活判定制御を行う。
【0031】
図4は、本実施形態の燃料電池装置100の失活判定制御の一例を示すフローチャートである。各フローチャート内においては、失活判定制御における「満たす」を〔YES〕で、「満たさない」を〔NO〕で表している。以下では、
図4のフローチャートを用いて、失活判定制御について説明する。
【0032】
制御装置30は、燃焼部16における失火が失火回復制御によっても回復されない場合に、燃焼触媒の失活を判定するための失活判定制御を実行する。なお失活判定制御は、失火が判定された時点で行ってもよい。失火回復制御において、制御装置30は、各温度センサによって計測された改質器12、燃焼部16または燃焼触媒部20の温度に基づき、失火を判定する。失火判定に用いられる温度は、改質器12と、燃焼部16または燃焼触媒部20の各温度の一つだけでもよく、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0033】
また、失火回復制御における失火判定後の失火回復については、燃料ガスの増加、発電量の調整、着火装置の作動など、一般に知られている適宜の方法を用いることができる。
【0034】
失活判定制御は、第1時間aにおける改質器12の第1平均温度Tri_(a)と、燃焼触媒部20の第1平均温度Toc_(a)とを算出する第1工程と、第2時間bの経過後において、第1時間aにおける改質器12の第2平均温度Tri_(a+b)と、燃焼触媒部20の第2平均温度Toc_(a+b)とを算出する第2工程と、を有し、第1工程における各第1平均温度と、第2工程における各第2平均温度とを比較して、燃焼触媒の失活を判定する第3工程と、を備えている。
【0035】
以下では、改質器12の温度を用いて失活判定を行う場合を例に説明するが、改質器12に代えて燃焼部16の温度を用いてもよく、その場合、以下の説明においては、改質器12および第1温度センサ21は、それぞれ、燃焼部16および第2温度センサ22と読み替えるものとする。また、改質器12または燃焼部16の平均温度に代えて、燃料電池モジュール1のその他の部分の平均温度を用いても良い。
【0036】
第1工程(S1)において、制御装置30は、第1温度センサ21によって計測された改質器12の温度の時系列データから、第1時間aにおける改質器12の第1平均温度Tri_(a)を算出する。なお、第1温度センサ21は、燃料ガス供給部13が接続される位置付近に設置されることが好ましい。
【0037】
同様に、燃焼触媒部20に設置された第3温度センサ23によって、燃焼触媒部20の温度が時系列で計測され、これらによって第1時間aにおける燃焼触媒部20の第1平均温度Toc_(a)が算出される。
【0038】
第1時間aは、例えば、1~20分間の範囲で適宜設定することができる。また、第2時間bは、例えば、10~30分間の範囲で適宜設定することができる。改質器12、燃焼部16および燃焼触媒部20の各第1平均温度は、第1時間aにおける各温度の時系列データの移動平均とすることができる。移動平均の計算方法は公知の方法によることができる。
【0039】
次に、制御装置30は、第1工程終了時から第2時間bが経過した後に、第2工程(S2)を開始する。第2工程において、制御装置30は、第1温度センサ21によって計測された改質器12の温度から、第1時間aにおける改質器の第2平均温度Tri_(a+b)を算出する。
【0040】
同様に、燃焼触媒部20に設置された第3温度センサ23によって、第1工程終了時から第2時間bが経過した後の第1時間aにおける燃焼触媒部20の第2平均温度Toc_(a+b)が算出される。
【0041】
第2工程において算出される前記の改質器12および燃焼触媒部20の各第2平均温度は、第1工程における第1平均温度と同様に、第1時間aにおける各温度の時系列データの移動平均とすることができる。移動平均の計算方法は公知の方法によることができる。
【0042】
第3工程は、改質器12の第1平均温度と改質器12の第2平均温度との差分を検出する第1差分工程と、燃焼触媒部20の第1平均温度と燃焼触媒部20の第2平均温度との差分を検出する第2差分工程を有している。
【0043】
第1差分工程における改質器12の第1平均温度と第2平均温度の差分を「改質器差分」、第2差分工程における燃焼触媒部20の第1平均温度と第2平均温度の差分を「燃焼触媒部差分」と定義すると、改質器差分および燃焼触媒部差分は、それぞれ次式で表される。
改質器差分:Tri_(a+b)-Tri_(a)
燃焼触媒部差分:Toc_(a+b)-Toc_(a)
上記の式で表されるように、いずれの差分も、第2時間bが経過した後の平均温度から、前の平均温度を差し引いているので、温度が低下した場合は、差分は「負の値」となり、温度が上昇した場合は、差分は「正の値」となる。
【0044】
次に、制御装置30は、第3工程において、改質器差分および燃焼触媒部差分と、これらの差分のそれぞれに対して設定された次に示す所定温度差c、dとの比較、すなわち、大小の判定を行う差分比較工程を実行する。なおc、dの温度差は、-10~0℃の間で適宜設定することができる。
改質器差分に対する所定温度差:c
燃焼触媒部差分に対する所定温度差:d
【0045】
改質器差分および燃焼触媒部差分のいずれもが、前記各温度差以下の場合、制御装置30は、失活を判定するための成立期間Tmを1増加させる。なお、後述するように、本実施形態では、成立期間Tmを、第1工程~第3工程を1サイクルとしたサイクル数として説明する。燃焼部16で失火している場合、改質器12の温度は、経時的に低下するので、改質器差分は「負の値」となる。燃焼部16で失火している場合、排ガスには、未燃焼の燃料ガスが含まれており、燃焼触媒部20では、未燃焼の燃料ガスの反応によって温度が上昇する。燃焼触媒部20において、燃焼触媒が失活していた場合、排ガスに未燃焼の燃料ガスが含まれていても、温度が上昇しない。これらを考慮して、所定温度差c,dは「負の値」が設定される。そして、次式を満足する場合、フローチャートでは、S3において〔YES〕であり、S4においても〔YES〕である場合、制御装置30は、失活を判定するための成立期間Tmを1増加させる(S5)。
Tri_(a+b)-Tri_(a)≦c
Toc_(a+b)-Toc_(a)≦d
すなわち、改質器12の温度低下がcより大きいことから、燃焼部16の失火可能性が示唆され、燃焼触媒部20の温度低下がdより大きいことから、燃焼触媒の温度が上昇しておらず、燃焼触媒の失活可能性が示唆される。
【0046】
改質器差分および燃焼触媒部差分の少なくとも一つが、各温度差c,dより大きい場合、フローチャートでは、S3において〔NO〕であるか、またはS4において〔NO〕である場合、制御装置30は、成立期間Tmの値をリセットし、初期値0に戻す(S6)とともに、第1工程(S1)に戻る。なお、失火していない(S3において〔NO〕の場合)、または燃焼触媒が失活していない(S4において〔NO〕)と判定された場合に、S6の後、第1工程(S1)に戻らず、本フローを終了させてもよい。
【0047】
制御装置30は、成立期間Tmを1増加させた後は、成立期間Tmが所定の期間eを超えたかどうかを判定する(S7)。S7において、超えてなければ〔NO〕、第1工程(S1)に戻り、超えていれば〔YES〕、燃焼触媒が失活していると判定して、燃料電池の発電運転の停止を実行する(S8)。所定の期間eは、後述するサイクル数とする場合には、1~20の間で適宜設定することができる。
【0048】
なお、上述の例においては、成立期間および所定の期間を、第1工程~第3工程のサイクルを1回として、所定の期間をこのサイクル回数として説明したが、例えば、1サイクルにかかる時間を、サイクル数に掛け合わして時間を算出し、所定の期間を所定の時間として判断してもよい。
【0049】
本開示においては、失火原因を特定するための燃焼触媒部における燃焼触媒の平均温度の差分を用いた失活判定制御を紹介したが、同様の方法は燃料電池モジュールのその他の部分における失火原因の特定にも用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 燃料電池モジュール
10 燃料電池セル
11 セルスタック
12 改質器
13 燃料ガス供給部
14 酸素含有ガス供給部
16 燃焼部
20 燃焼触媒部
30 制御装置
100 燃料電池装置