(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】角形鋼管柱の継手構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20231019BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
E04B1/58 503H
E04B1/24 P
(21)【出願番号】P 2019233472
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田原 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聡
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-269233(JP,A)
【文献】実開平04-120802(JP,U)
【文献】特開2016-069902(JP,A)
【文献】特開2009-249990(JP,A)
【文献】特開2002-106065(JP,A)
【文献】特開平05-179702(JP,A)
【文献】特開昭50-010237(JP,A)
【文献】特開平09-221831(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0178551(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38-1/61
E04B 1/24
E04C 3/00-3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の鋼管柱の一端に設けられた第1のダイアフラムと、
前記第1の鋼管柱の材軸方向と略平行にフランジ面が配置され、前記第1のダイアフラムと接合された第1のフランジ及び第2のフランジと、
第2の鋼管柱の一端に設けられた第2のダイアフラムと、
前記第2の鋼管柱の材軸方向と略平行にフランジ面が配置され、前記第2のダイアフラムと接合された第3のフランジ及び第4のフランジと、
第1の添え板と、第2の添え板と、を含み、
前記第1のダイアフラムと前記第2のダイアフラムとが対向するように、前記第1の鋼管柱の上に前記第2の鋼管柱が配置され、
前記第1の鋼管柱は前記第2の鋼管柱より太く、
前記第1のフランジ及び前記第3のフランジのそれぞれのフランジ面が第1の方向に向けられ、前記第2のフランジ及び前記第4のフランジのフランジ面が前記第1の方向と交差する第2の方向に向けられ、
前記第1のフランジの一辺と前記第2のフランジの一辺とが隣り合い、かつ
ハンドホールとして用いることができるように離隔して配置され、
前記第3のフランジの一辺と前記第4のフランジの一辺とが隣り合い、かつ
ハンドホールとして用いることができるように離隔して配置され、
前記第1のフランジのフランジ面と前記第3のフランジのフランジ面とが面一に配置され、前記第1の添え板を介してボルト接合され、
前記第2のフランジのフランジ面と前記第4のフランジのフランジ面とが面一に配置され、前記第2の添え板を介してボルト接合されている
ことを特徴とする鋼管柱の継手構造。
【請求項2】
前記第1の添え板に対向する第3の添え板と、前記第2の添え板に対向する第4の添え板と、を有し、
前記第1のフランジと前記第3のフランジとが、前記第1の添え板と前記第3の添え板とに挟まれてボルト接合され、
前記第2のフランジと前記第4のフランジとが、前記第2の添え板と前記第4の添え板とに挟まれてボルト接合されている
請求項1に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項3】
前記第1のフランジ及び前記第2のフランジの一方又は両方と接続される第1の補強板と、前記第3のフランジ及び前記第4のフランジの一方又は両方と接続される第2の補強板と、を有する
請求項1に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項4】
第
5の添え板
及び第6の添え板を有し、
前記第1の補強板と前記第2の補強板とが、前記第
5の添え板
及び前記第6の添え板を介してボルト接合されている
請求項3に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項5】
前記第1の鋼管柱及び前記第2の鋼管柱が角形鋼管柱であり、
前記第1の鋼管柱の第1面に対応して前記第1のフランジが配置され、第2面に対応して前記第2のフランジが配置され、
前記第2の鋼管柱の第1面に対応して前記第3のフランジが配置され、第2面に対応して前記第4のフランジが配置されている
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項6】
第1の鋼管柱の一端に設けられた第1のダイアフラムと、
前記第1の鋼管柱の材軸方向と略平行にフランジ面が配置され、前記第1のダイアフラムと接合された第1のボルト孔及び
ハンドホールとして用いられる第1の貫通孔を有する第1のフランジと、第2のボルト孔を有し
ハンドホールとして用いられる貫通孔を有しない第2のフランジと、
第2の鋼管柱の一端に設けられた第2のダイアフラムと、
前記第2の鋼管柱の材軸方向と略平行にフランジ面が配置され、前記第2のダイアフラムと接合された第3のボルト孔及び
ハンドホールとして用いられる第2の貫通孔を有する第3のフランジと、第4のボルト孔を有し
ハンドホールとして用いられる貫通孔を有しない第4のフランジと、
第1の添え板と、第2の添え板と、を含み、
前記第1のダイアフラムと前記第2のダイアフラムとが対向するように、前記第1の鋼管柱の上に前記第2の鋼管柱が配置され、
前記第1の鋼管柱は前記第2の鋼管柱より太く、
前記第1のフランジ及び前記第
4のフランジのそれぞれのフランジ面が第1の方向に向けられ、前記第2のフランジ及び前記第
3のフランジのフランジ面が前記第1の方向と交差する第2の方向に向けられ、
前記第1のフランジと前記第2のフランジとが隣接し、前記第3のフランジと前記第4のフランジとが隣接して配置され、
前記第1のフランジのフランジ面と前記第4のフランジのフランジ面とが面一に配置され、前記第1の添え板を介してボルト接合され、
前記第2のフランジのフランジ面と前記第3のフランジのフランジ面とが面一に配置され、前記第2の添え板を介してボルト接合されている
ことを特徴とする鋼管柱の継手構造。
【請求項7】
前記第1の添え板に対向する第3の添え板と、前記第2の添え板に対向する第4の添え板と、を有し、
前記第1のフランジと前記第4のフランジとが、前記第1の添え板と前記第3の添え板とに挟まれてボルト接合され、
前記第2のフランジと前記第3のフランジとが、前記第2の添え板と前記第4の添え板とに挟まれてボルト接合されている
請求項6に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項8】
前記第1のフランジは前記第2のフランジに対して前記材軸方向に長く、前記第1の貫通孔が前記第1のダイアフラム側に設けられ、
前記第3のフランジは前記第4のフランジに対して前記材軸方向に長く、前記第2の貫通孔が前記第2のダイアフラム側に設けられている
請求項6又は7に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項9】
前記第1のフランジは、前記第1のボルト孔が設けられた第1の領域を有し、
前記第2のフランジは、前記第2のボルト孔が設けられた第2の領域を有し、
前記第3のフランジは、前記第3のボルト孔が設けられた第3の領域を有し、
前記第4のフランジは、前記第4のボルト孔が設けられた第4の領域を有し、
前記第1の貫通孔は、前記第1のフランジの前記第1のダイアフラム側の一端と前記第1の領域との間に配置され、
前記第2の貫通孔は、前記第3のフランジの前記第2のダイアフラム側の一端と前記第3の領域との間に配置され、
前記第1の添え板は、前記第1の領域と前記第4の領域と当接し、
前記第2の添え板は、前記第2の領域と前記第3の領域と当接している
請求項6乃至8のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項10】
前記第1のダイアフラム上に、対向配置された2つの前記第1のフランジと、対向配置された2つの前記第2のフランジと、によって囲まれた領域が形成され、
前記第2のダイアフラム上に、対向配置された2つの前記第3のフランジと、対向配置された2つの前記第4のフランジと、によって囲まれた領域が形成される
請求項6乃至8のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項11】
前記第1のダイアフラム上に、L字形に配置された2つの前記第1のフランジと、L字形に配置された2つの前記第2のフランジと、によって囲まれた領域が形成され、
前記第2のダイアフラム上に、L字形に配置された2つの前記第3のフランジと、L字形に配置された2つの前記第4のフランジと、によって囲まれた領域が形成される
請求項6乃至8のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項12】
前記第1のダイアフラム上に、前記第1のフランジと、コの字形を形成するように配置された3つの第2のフランジと、によって囲まれた領域が形成され、
前記第2のダイアフラム上に、前記第4のフランジと、コの字形を形成するように配置された3つの第3のフランジと、によって囲まれた領域が形成される
請求項6乃至8のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項13】
前記第1のフランジ及び前記第2のフランジの一方又は両方と接続される第1の補強板と、前記第3のフランジ及び前記第4のフランジの一方又は両方と接続される第2の補強板と、を有する
請求項6乃至12のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項14】
第
5の添え板
及び第6の添え板を有し、
前記第1の補強板と前記第2の補強板とが、前記第
5の添え板
及び前記第6の添え板を介してボルト接合されている
請求項13に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項15】
前記第1の鋼管柱及び前記第2の鋼管柱が角形鋼管柱である
請求項6乃至14のいずれ一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項16】
前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔が斜かい状に配置されている
請求項6乃至15のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項17】
前記第1のダイアフラムは前記第2のダイアフラムより厚い
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項18】
前記第1のダイアフラム及び前記第2のダイアフラムの一方又は両方に貫通孔が設けられている
請求項1乃至17のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、建造物に用いられる鋼管柱の継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の施工現場において、鉄骨部材を接合する方法として溶接接合とボルト接合が用いられている。溶接接合は、原理的に十分な強度を確保することができる反面、高度な技能と作業時間を要し、接合強度については作業者の技量が影響を与える。これに対し、ボルト接合は、工期の短縮を図ることができ、作業者の技量の影響を受けにくく、品質管理が容易であるという利点を有する。ボルト接合の方式は様々であり、例えば、鋼管柱とH型鋼とを接合する方式、鋼管柱同士を接合する方式が開示されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-179702号公報(特許第3146209号)
【文献】特開2004-293196号公報(特許第4038449号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄骨部材をボルト接合する場合、H型鋼のような解放された断面形状を有する部材であれば容易にボルト接合をすることができる。しかし、角形鋼管柱のような管状の部材をボルト接合で繋ぐ場合、閉じた断面形状を有しているため施工が容易でないという問題がある。また、ボルト接合の施工を容易にするために鋼管柱の一部を加工することも考えられるが、それによって継手部分の強度が低下することが懸念される。
【0005】
柱脚側と柱頭側で鋼管柱の太さを変えたい場合、梁と同じ高さで切り替えることが行われている。しかし、そのような構造では柱頭が必要以上に太くなり、地震等により水平方向の力が生じたとき、柱頭と柱脚では発生する曲げ応力が異なる場合がある。また、柱脚側で必要な太さを柱頭側まで一定としてしまうことが多く、柱頭側では必要以上に太い柱になってしまい、非合理な状態となってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、鋼管柱の合理的な箇所で柱脚側と柱頭側の太さを変更しつつ、強度を低下させない継手構造を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、第1の鋼管柱の一端に設けられた第1のダイアフラムと、第1の鋼管柱の材軸方向と略平行にフランジ面が配置され、第1のダイアフラムと接合された第1のフランジ及び第2のフランジと、第2の鋼管柱の一端に設けられた第2のダイアフラムと、第2の鋼管柱の材軸方向と略平行にフランジ面が配置され、第2のダイアフラムと接合された第3のフランジ及び第4のフランジと、第1の添え板と、第2の添え板と、を含む。第1のダイアフラムと第2のダイアフラムとが対向するように、第1の鋼管柱の上に第2の鋼管柱が配置され、第1の鋼管柱は第2の鋼管柱より太く、第1のフランジ及び第3のフランジのそれぞれのフランジ面が第1の方向に向けられ、第2のフランジ及び第4のフランジのフランジ面が第1の方向と交差する第2の方向に向けられ、第1のフランジの一辺と第2のフランジの一辺とが隣り合い、かつ離隔して配置され、第3のフランジの一辺と第4のフランジの一辺とが隣り合い、かつ離隔して配置され、第1のフランジのフランジ面と第3のフランジのフランジ面とが面一に配置され、第1の添え板を介してボルト接合され、第2のフランジのフランジ面と第4のフランジのフランジ面とが面一に配置され、第2の添え板を介してボルト接合されている。
【0008】
本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、第1の鋼管柱の一端に設けられた第1のダイアフラムと、第1の鋼管柱の材軸方向と略平行にフランジ面が配置され、第1のダイアフラムと接合されたボルト孔及び第1の貫通孔を有する第1のフランジと、ボルト孔を有し貫通孔を有しない第2のフランジと、第2の鋼管柱の一端に設けられた第2のダイアフラムと、第2の鋼管柱の材軸方向と略平行にフランジ面が配置され、第2のダイアフラムと接合されたボルト孔及び第2の貫通孔を有する第3のフランジと、ボルト孔を有し貫通孔を有しない第4のフランジと、第1の添え板と、第2の添え板と、を含む。第1のダイアフラムと第2のダイアフラムとが対向するように、第1の鋼管柱の上に第2の鋼管柱が配置され、第1の鋼管柱は第2の鋼管柱より太く、第1のフランジ及び第3のフランジのそれぞれのフランジ面が第1の方向に向けられ、第2のフランジ及び第4のフランジのフランジ面が第1の方向と交差する第2の方向に向けられ、第1のフランジと第2のフランジとが隣接し、第3のフランジと第4のフランジとが隣接して配置され、第1のフランジのフランジ面と第4のフランジのフランジ面とが面一に配置され、第1の添え板を介してボルト接合され、第2のフランジのフランジ面と第3のフランジのフランジ面とが面一に配置され、第2の添え板を介してボルト接合されている。
【0009】
本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、第1の鋼管柱の一端に設けられた第1のダイアフラムと、第1の鋼管柱の材軸方向と平行にフランジ面が配置され、第1のダイアフラムに接合された第1のL形フランジ及び第2のL形フランジと、第2の鋼管柱の一端に設けられた第2のダイアフラムと、第2の鋼管柱の材軸方向と平行にフランジ面が配置され、第2のダイアフラムに接合された第3のL形フランジ及び第4のL形フランジと、第1の添え板及び第2の添え板と、を含む。第1のダイアフラムと第2のダイアフラムとが対向するように、第1の鋼管柱の上に第2の鋼管柱が配置され、第1の鋼管柱は第2の鋼管柱より太く、第1のL形フランジと第2のL形フランジとが離隔して配置され、第3のL形フランジと第4のL形フランジとが離隔して配置され、第1のL形フランジと第3のL形フランジとは、それぞれのフランジ面が面一に配置され、第2のL形フランジと第4のL形フランジとは、それぞれのフランジ面が面一に配置され、第1のL形フランジと第3のL形フランジとは、第1の添え板を介してボルト接合され、第2のL形フランジと第4のL形フランジとは、第2の添え板を介してボルト接合されている。
【0010】
本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、第1の鋼管柱の一端に設けられた第1のダイアフラムと、第1の鋼管柱の材軸方向と平行にフランジ面が配置され、第1のダイアフラムに接合された、両端が同じ方向に溝形に曲がった第1の溝形フランジ及び第2の溝形フランジと、第2の鋼管柱の一端に設けられた第2のダイアフラムと、第2の鋼管柱の材軸方向と平行にフランジ面が配置され、第2のダイアフラムに接合され、両端が同じ方向に溝形に曲がった第3の溝形フランジ及び第4の溝形フランジと、第1の添え板及び第2の添え板と、を含む。第1のダイアフラムと第2のダイアフラムとが対向するように、第1の鋼管柱の上に第2の鋼管柱が配置され、第1の鋼管柱は第2の鋼管柱より太く、第1の溝形フランジと第2の溝形フランジとは、屈曲された端部が離隔して対向配置され、第3の溝形フランジと第4の溝形フランジとは、屈曲された端部が離隔して対向配置され、第1の溝形フランジと第2の溝形フランジとが対向する方向と、第3の溝形フランジと第4の溝形フランジとが異なり、第1の溝形フランジと第3の溝形フランジとは、それぞれのフランジ面が面一に配置され、第2の溝形フランジと第4の溝形フランジとは、それぞれのフランジ面が面一に配置され、第1の溝形フランジと第3の溝形フランジとは、第1の添え板を介してボルト接合され、第2の溝形フランジと第4の溝形フランジとは、第2の添え板を介してボルト接合されている。
【0011】
本発明の一実施形態において、第1のダイアフラムは第2のダイアフラムより厚いことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、太さの異なる鋼管柱を階の途中で繋ぐことができる。それにより、柱脚側を太く丈夫な構造とし、柱頭側を細くして軽量化、省材料化、省スペース化すると共に、曲げモーメントの小さい柱頭部に適した構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図であり、(A)は展開図を示し、(B)は2つの鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部を示す。
【
図2】
図1に示す鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の断面構造を示し、(A)は第1の鋼管柱側の断面構造、(B)は第2の鋼管柱側の断面構造を示す。
【
図3】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の平面模式図を示し、(A)及び(B)は、第2の鋼管柱の柱頭側からみた構造を示す。
【
図4】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造を有する建築物の1階部分の柱梁構造の概略を示す。
【
図5】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図であり、(A)は展開図を示し、(B)は2つの鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部を示す。
【
図6】
図5に示す鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の断面構造を示し、(A)は第1の鋼管柱側の断面構造、(B)は第2の鋼管柱側の断面構造を示す。
【
図7】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図であり、(A)は展開図を示し、(B)は2つの鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部を示す。
【
図8】
図7に示す鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の断面構造を示し、(A)は第1の鋼管柱側の断面構造、(B)は第2の鋼管柱側の断面構造を示す。
【
図9】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図であり、(A)は展開図を示し、(B)は2つの鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部を示す。
【
図10】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の正面図を示す。
【
図11】
図10に示す鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の断面構造を示し、(A)は第1の鋼管柱側の断面構造、(B)は第2の鋼管柱側の断面構造を示す。
【
図12】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図であり、(A)は展開図を示し、(B)は2つの鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部を示す。
【
図13】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の正面図を示す。
【
図14】
図13に示す鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の断面構造を示し、(A)は第1の鋼管柱側の断面構造、(B)は第2の鋼管柱側の断面構造を示す。
【
図15】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図であり、(A)は展開図を示し、(B)は2つの鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部を示す。
【
図16】
図15に示す鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の断面構造を示し、(A)は第1の鋼管柱側の断面構造、(B)は第2の鋼管柱側の断面構造を示す。
【
図17】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図であり、(A)は展開図を示し、(B)は2つの鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部を示す。
【
図18】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の正面図を示す。
【
図19】
図18に示す鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の断面構造を示し、(A)は第1の鋼管柱側の断面構造、(B)は第2の鋼管柱側の断面構造を示す。
【
図20】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造の展開図を示す。
【
図21】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図であり、(A)は展開図を示し、(B)は2つの鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部を示す。
【
図22】
図21に示す鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の断面構造を示し、(A)は第1の鋼管柱側の断面構造、(B)は第2の鋼管柱側の断面構造を示す。
【
図23】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図であり、(A)は展開図を示し、(B)は2つの鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部を示す。
【
図24】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の正面図を示す。
【
図25】
図24に示す鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の断面構造を示し、(A)は第1の鋼管柱側の断面構造、(B)は第2の鋼管柱側の断面構造を示す。
【
図26】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図であり、(A)は展開図を示し、(B)は2つの鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部を示す。
【
図27】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造を示し、(A)はL形フランジの分部の斜視図、(B)はL形フランジの部分の平面図を示す。
【
図28】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図であり、(A)は展開図を示し、(B)は2つの鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部を示す。
【
図29】
図28に示す鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の断面構造を示し、(A)は第1の鋼管柱側の断面構造、(B)は第2の鋼管柱側の断面構造を示す。
【
図30】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の断面構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の内容を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様を含み、以下に例示される実施形態の内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、それはあくまで一例であって、本発明の内容を限定するものではない。また、本明細書において、ある図面に記載されたある要素と、他の図面に記載されたある要素とが同一又は対応する関係にあるときは、同一の符号(又は符号として記載された数字の後にa、b等を付した符号)を付して、繰り返しの説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0015】
以下の説明では、鋼管柱が角形鋼管柱の場合を例示するが、本発明はこれに限定されず、丸形鋼管柱、異形鋼管柱等に適宜適用することができる。
【0016】
[第1の実施形態]
本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造を、
図1(A)及び
図1(B)を参照して説明する。
図1(A)は、鋼管柱の接合部の展開図を示し、
図1(B)は角形鋼管柱の接合部の斜視図を示す。なお、
図1(A)において、ボルト、ナット等の締結具は省略されている。
【0017】
図1(A)及び
図1(B)は、第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112とその継手部分の構造を示す。
図1(A)及び
図1(B)に示すように、第1の鋼管柱102は4つの面を有し、便宜上各面を時計回りに第1面11、第2面12、第3面13、及び第4面14と符号を付けて示し、第2の鋼管柱112も同様に、各面を時計回りに第1面21、第2面22、第3面23、及び第4面24と符号を付けて示す。また、特に断りのない限り、鋼管柱を立てたとき、その材軸方向において、第1の鋼管柱102は下側に配置され、第2の鋼管柱112は上側に配置されるものとする。
【0018】
本実施形態において、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112とは、柱径(柱の太さ)が異なっている。下側に配置される第1の鋼管柱102に対し、上側に配置される第2の鋼管柱112の柱径は細いものが用いられる。本実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、柱径の異なる(太さの異なる)鋼管柱を繋ぎ合わせた構造を有している。
【0019】
図1(A)に示すように、第1の鋼管柱102に第1のダイアフラム104が設けられ、第2の鋼管柱112に第2のダイアフラム114が設けられる。第1のダイアフラム104は第1の鋼管柱102の一端を塞ぐように溶接により取り付けられ、第2のダイアフラム114は第2の鋼管柱112の一端を塞ぐように溶接により取り付けられる。第1のダイアフラム104及び第2のダイアフラム114は平板状の部材であり、平面視における形状は任意である。例えば、第1のダイアフラム104及び第2のダイアフラム114の平面視における形状は、
図1(A)に示すように正方形である。また、図示されないが、第1のダイアフラム104及び第2のダイアフラム114は、平面視で円形であってもよい。
【0020】
第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112は柱径(太さ)が異なるため、それに応じて第1のダイアフラム104と第2のダイアフラム114の平面視における面積が異なっていてもよい。すなわち、ダイアフラムは鋼管柱の端面を塞ぐことのできる大きさを有していればよく、第1のダイアフラム104対し、第2のダイアフラム114の平面視における面積は小さくてもよい。一方、下側に配置される第1のダイアフラム104は、剛性および耐力を高めるために第2のダイアフラム114に対して板厚が厚い方が好ましい。
【0021】
第1のダイアフラム104の上面に、第1のフランジ106a、106b、及び第2のフランジ108a、108bが設けられる。第1のフランジ106a、106b、及び第2のフランジ108a、108bは板状の部材であり、フランジ面に複数のボルト孔122が設けられている。第1のフランジ106a、106b、及び第2のフランジ108a、108bは、それぞれのフランジ面が第1の鋼管柱102の材軸方向と平行に配置される。第1のフランジ106a、106b、及び第2のフランジ108a、108bは、第1のダイアフラム104の面上に立設され溶接により接合される。
【0022】
第1のフランジ106aは第1面11側に配位され、第1のフランジ106bは第3面13側に配置される。第1のフランジ106aと第1のフランジ106bとは、第1のダイアフラム104上で内側のフランジ面が対向するように離隔して配置される。同様に、第2のフランジ108aは第2面12側に配置され、第2のフランジ108bは第4面14側に配置され、第1のダイアフラム104上で内側のフランジ面が対向するように離隔して配置される。このように、第1のフランジ106a、106b及び第2のフランジ108a、108bは、第1の鋼管柱102の4面に対応するように配置される。
【0023】
図1(A)に示すように、隣接するフランジ同士は接触しないように離隔して配置される。別言すれば、第1のフランジ106aと第2のフランジ108aとは、隣り合う一辺が離隔して配置され、離隔する領域は第1の鋼管柱102の角部に対応する位置に設けられている。隣接するフランジ同士はこのような位置関係を有するため、第1のダイアフラム104上には、第1の鋼管柱102の各角部に対応して離隔する領域が設けられている。
【0024】
なお、本実施形態では詳細に示されないが、第1のダイアフラム104に設けられるフランジの数は適宜選択することができる。例えば、3つのフランジが三面を形成するように配置されてもよく、6枚のフランジにより6面を形成するように配置されてもよい。いずれの場合にも、隣接するフランジ同士は接触しないように配置されることで、フランジで遮蔽されない部分が形成されないように配置されていればよい。
【0025】
第2のダイアフラム114に、第3のフランジ116a、116b、及び第4のフランジ118a、118bが設けられる。第3のフランジ116a、116b、及び第4のフランジ118a、118bは板状の部材であり、フランジ面に複数のボルト孔122が設けられている。第3のフランジ116a、116b、及び第4のフランジ118a、118bは、それぞれのフランジ面が第2の鋼管柱112の材軸方向と平行に配置される。第3のフランジ116a、116b、及び第4のフランジ118a、118bは、第2のダイアフラム114の面上に立設され溶接により接合される。
【0026】
図1(A)に示すように、第1のフランジ106aと第3のフランジ116aは、それぞれのフランジ面が同じ方向(第1の方向)に向けられて配置される。また、第2のフランジ108aと第4のフランジ118aは、それぞれのフランジ面が同じ方向(第2の方向)に向けられて配置される。第2の方向は第1の方向と交差する方向である。例えば、第2の方向は第1の方向に対して90度回転した方向である。
【0027】
第1のフランジ106aと第3のフランジ116a、及び第2のフランジ108aと第4のフランジ118aとは、フランジ面が面一になるように配置される。第1のフランジ106b及び第3のフランジ116b、並びに第2のフランジ108b及び第4のフランジ118bについても同様に配置される。このような配置にすると、第3のフランジ116a、116b、及び第4のフランジ118a、118bの外側のフランジ面を、第2の鋼管柱112の外面と略一致するように配置すると、第1のフランジ106a、106b、及び第2のフランジ108a、108bは、第1の鋼管柱102の外面よりも内側に配置されることになる。すなわち、第1の鋼管柱102は第2の鋼管柱112よりも太いので、上下のフランジのフランジ面を面一に配置させると、第1のフランジ106a、106b、及び第2のフランジ108a、108bは第1のダイアフラム104の面内においてより内側に配置されることとなる。
【0028】
このように、鋼管柱の端部にダイアフラムを設けることで、太さの異なる鋼管柱を接合する場合においても、フランジの配置に自由度を与えることができる。それに加え、鋼管柱に対しフランジの材質、厚さを変えることができる。例えば、鋼管柱の厚さに対しフランジの板厚を厚くすることができ、ボルト接合部の強度を高めることができる。また、鋼管柱が鉄鋼材で形成されるとき、フランジの材質は、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)の含有量を高めた素材を用いることができ、ボルト接合部において、高い引張強さと高いじん性の両方を高めることができる。さらに、ダイアフラムを設けそこにフランジを接合することで、フランジの座屈を抑制することができる。また,複数のフランジに応力が分散され、特定のフランジに応力が集中することを防ぐことが可能となる。
【0029】
図1(B)は、第1のダイアフラム104と第2のダイアフラム114とが対向するように第1の鋼管柱102の上に第2の鋼管柱112が配置され、接合された態様を示す。第1のフランジ106aと第3のフランジ116aとは、外側のフランジ面に第1の添え板130aが当接され、内側のフランジ面に第3の添え板140aが当接され、それぞれのボルト孔122に挿通されたボルトとナットにより締結されて第1のボルト接合部100aが形成される。第2のフランジ108aと第4のフランジ118aとも同様に、外側のフランジ面に第2の添え板132aが当接され、内側のフランジ面に第4の添え板142aが当接され第2のボルト接合部100bが形成される。隣接するフランジ同士は離隔して配置されているため、
図1(B)に示すように第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112を接合したとき第1の開口部120aが形成される。第1の開口部120aは、第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112の角部に対応して形成される。別言すれば、第1の開口部120aは、第1のボルト接合部100aと第2のボルト接合部100bとの間に形成される。
【0030】
図1(B)において、矢印A1、A2で示す部位を断面視したときの構造を
図2(A)及び
図2(B)に示す。
図2(A)は第1の鋼管柱102側の接合部の断面構造を示し、
図2(B)は第2の鋼管柱112側の接合部の断面構造を示す。
【0031】
図2(A)に示すように、第1のダイアフラム104には、第1の鋼管柱102の第1面11に対応して第1のフランジ106a、第2面12に対応して第2のフランジ108a、第3面13に対応して第1のフランジ106b、第4面14に対応して第2のフランジ108bが設けられる。また、
図2(B)に示すように、第2のダイアフラム114には、第2の鋼管柱112の第1面21に対応して第3のフランジ116a、第2面22に対応して第4のフランジ118a、第3面23に対応して第3のフランジ116b、第4面24に対応して第4のフランジ118bが設けられる。
【0032】
本実施形態において、第1の鋼管柱102の柱径に対して第2の鋼管柱112の柱径が細いため、第1のフランジ106a、106b、及び第2のフランジ108a、108bの配置は、第3のフランジ116a、116b、及び第4のフランジ118a、118bの配置によって制約を受ける。すなわち、第3のフランジ116a、116b、及び第4のフランジ118a、118bが第2のダイアフラム114の側端部に沿って配置されるのに対し、第1のフランジ106a、106b、及び第2のフランジ108a、108bは、第1のダイアフラム104の端部から内側の領域に配置される。
【0033】
第1のボルト接合部100aは、上下に配置される第1のフランジ106aと第3のフランジ116aとが第1の添え板130a及び第3の添え板140aを介してボルト接合される部位であり、第2のボルト接合部100bは、上下に配置される第2のフランジ108aと第4のフランジ118aとが第2の添え板132a及び第4の添え板142aを介してボルト接合される部位であり、第3のボルト接合部100cは、上下に配置される第1のフランジ106bと第3のフランジ116bとが第1の添え板130b及び第3の添え板140bを介してボルト接合される部位であり、第4のボルト接合部100dは、上下に配置される第2のフランジ108bと第4のフランジ118bとが第2の添え板132b及び第4の添え板142bを介してボルト接合される部位である。
【0034】
図2(A)及び
図2(B)に示されるように、本実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、第1のボルト接合部100aと第2のボルト接合部100bとの間には第1の開口部120aを有し、第2のボルト接合部100bと第3のボルト接合部100cとの間には第2の開口部120bを有し、第3のボルト接合部100cと第4のボルト接合部100dとの間には第3の開口部120cを有し、第4のボルト接合部100dと第1のボルト接合部100aとの間には第4の開口部120dを有する。これらの開口部は、各フランジが離隔して配置されることにより形成され、鋼管柱の各角部に対応して設けられる。
【0035】
図1(B)、並びに
図2(A)及び
図2(B)に示すように、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112とを材軸方向に上下に配置して接合すると、第1の開口部120a、第2の開口部120b、第3の開口部120c、第4の開口部120dが形成される。これらの開口部は、角形鋼管柱の外側の空間と、フランジによって囲まれる内側の空間とを連接する部位となる。このような構成により、作業者は、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112とを接合する作業現場において、開口部となる部位をハンドホールとして利用することができ、フランジの内側から工具等を当てることができ、ボルト接合の作業を容易に施工することができる。
【0036】
第1のフランジ106a、106b、及び第2のフランジ108a、108b、並びに第3のフランジ116a、116b、並びに第4のフランジ118a、118bの幅は、形成される開口部がハンドホールとして用いることのできる範囲において適宜設定することができる。また、これらのフランジは、鋼管柱の肉厚よりも厚くすることができ、それによりボルト接合部の強度を高めることができる。別言すれば、フランジの板厚を大きくすることで、開口部を形成しつつ、ボルト接合部の強度の低下を防ぐことができる。
【0037】
なお、
図2は、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112とが、それぞれの鋼管柱の中心軸が一致するように配置された態様を示すが、本発明はこのような鋼管柱の配置に限定されない。例えば、
図3(A)の平面模式図に示すように、第1の鋼管柱102の一つの角部の位置と第2の鋼管柱112の一つの角部の位置が一致するように配置することもできる。また、
図3(B)の平面模式図に示すように、第1の鋼管柱102の一辺と第2の鋼管柱112の一辺とが一致するように配置することもできる。このように、本発明の一実施形態によれば、ボルト接合によって太さの異なる2つの鋼管柱を繋ぐことで、柱脚側と柱頭側で柱の太さを変えると共に、柱芯をずらして設けることができる。
【0038】
第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112は鉄鋼材料で形成される。第1のダイアフラム104、第2のダイアフラム114、第1のフランジ106a、106b、第2のフランジ108a、108b、第3のフランジ116a、116b、第4のフランジ118a、118b、第1の添え板130a、130b、第2の添え板132a、132b、第3の添え板140a、140b、第4の添え板142a、142bも同様に鉄鋼材料で形成される。例えば、鉄鋼材料として構造用圧延鋼材が用いられる。なお、
図1(A)は、外側に配置される第1の添え板130a、130b、及び第2の添え板132a、132bと、内側に配置される第3の添え板140a、140b、及び第4の添え板142a、142bとを示すが、ボルト接合部の強度が十分保てる場合には、内側又は外側に当接させる添え板を省略することもできる。
【0039】
本実施形態によれば、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112をボルト接合によって繋ぎ合わせる際に、ハンドホールとして用いることのできる開口部が形成されるようにフランジを配置することで、施工現場での作業を容易に行うことができ、品質の高いボルト接合を形成することができる。
【0040】
図4は、建築物の1階部分の柱梁構造の概略を示す。基礎梁200の上に柱202が立てられる。柱202の柱脚側は、基礎梁200にアンカーボルト等で固定され、柱頭側には梁204が設けられる。
図4は、柱202が、本実施形態に示す第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112がボルト接合部100で接合された構造を有する場合を示す。
【0041】
一般に、柱に係る応力は柱脚側と柱頭側で大幅に異なる。例えば、1階部分の柱においては、柱脚側が剛性の高い基礎梁に接合されるので、材端固定度が高くなり、地震等で柱が変形するときの応力は柱脚側の方が柱頭側より大きくなる。すなわち、1階部分に設置される柱は、柱脚側が剛度の高い基礎に固定されるため、柱脚側の固定度が柱頭側に比べて高くなり、それだけ曲げモーメントが高くなる。
【0042】
従来の柱梁構造は、柱脚で必要とされる太さと同じ太さで柱頭まで柱を構成し、上階の梁から上の柱を細い柱に切り替える構造を有している。また、特に高層建築物では埋め込み脚柱方式が採用される場合がある。この場合、施工の都合により(柱の位置の微調整等)、柱を1階途中より下部分(ゼロ節)と、それより上部分(1節)に分けて施工現場に搬送し、施工現場にて上下の柱を溶接により接合して組み立てが行われる(現場接合)。溶接は、上下の柱(鋼管)の位置を同じにしなければならないので、上下に配置される柱(鋼管)の位置も同じにする必要がある。柱として用いられる鋼管の太さは脚柱側を基準に定められるため、柱頭側では過剰な設計になってしまう。
【0043】
これに対し、本実施形態に係る鋼管柱の継手構造によれば、
図4に示すように、1階部分の途中で柱の太さを変えることが可能となる。すなわち、1階部分の途中にボルト接合部100を設けて第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112を繋ぐことで、柱脚側(第1の鋼管柱102)の柱径を太くし、柱頭側(第2の鋼管柱112)の柱径を細くすることができ、曲げモーメントの小さい柱頭部に適した構造を作ることができる。なお、接合部100を柱の中央より下に設けることで、作業性が高まる。また、接合部100を柱の中央より上に設けることで、第2の鋼管柱112の太さをより小さくすることが可能であり、コスト削減及び専有面積の低減が可能である。
【0044】
なお、本実施形態では、ハンドホールとして用いることのできる開口部が4箇所に設けられる態様示すが、本発明はこのような態様に限定されず、施工性に影響を与えない場合には(十分な口径の開口部が得られる場合には)、4箇所より少ない数で開口部を設けることができる。このような開口部の数の変更は、ダイアフラムに接合されるフランジの配置により適宜行うことができる。
【0045】
[第2の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態で示す鋼管柱の継手構造において、さらに補強板(「ウエブ」であるともいえる)が設けられた構造を示す。以下の説明においては第1の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0046】
図5(A)は本実施形態に係る角形鋼管柱の接合部の展開図を示し、
図5(B)は角形鋼管柱の接合部の斜視図を示す。
図5(A)に示すように、第1の鋼管柱102の側に第1の補強板160が設けられ、第2の鋼管柱112の側に第2の補強板162が設けられる。第1の補強板160は、第1のフランジ106a、106b、及び第2のフランジ108a、108bで囲まれる内側の領域に配置され、第2の補強板162は、第3のフランジ116a、116b、及び第4のフランジ118a、118bで囲まれる内側の領域に配置される。
【0047】
第1の補強板160は、第1のダイアフラム104上に対して垂直に配置され、第1のフランジ106a、106b、第2のフランジ108a、108bの内側のフランジ面に接して設けられる。第2の補強板162は、第2のダイアフラム114に対して垂直に配置され、第3のフランジ116a、116b、及び第4のフランジ118a、118bの内側のフランジ面に接して設けられる。第1の補強板160と第2の補強板162とは厚さが異なっていてもよい。すなわち、上側に配置される第2の補強板162に対して下側に配置される第1の補強板160は厚くてもよい。
【0048】
ボルト接合を形成するためにフランジの外側に第1の添え板130a、130b、第2の添え板132a、132bが配置され、内側に第3の添え板140a、140b、第4の添え板142a、142bが配置される。添え板は、第1の実施形態と同様に内側又は外側の一方を省略することもできる。第1の補強板160、第2の補強板162は、ボルト孔と重ならない位置で各フランジに当接される。第3の添え板140a、140b、及び第4の添え板142a、142bは、第1の補強板160及び第2の補強板162と干渉しないように左右2つに分割された構造を有している。
【0049】
図5(B)に示すように、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112とが接合された状態では、第1の開口部120aが形成され、第1の補強板160及び第2の補強板162はボルト接合部の内側に隠れ、外部に露出しない構造を有する。
【0050】
図5(B)において、矢印A3、A4で示す部位を断面視したときの構造を
図6(A)及び
図6(B)に示す。
図6(A)は第1の鋼管柱102側の接合部の断面構造を示し、
図6(B)は第2の鋼管柱112側の接合部の断面構造を示す。
【0051】
第1の実施形態と同様に、鋼管柱の各面にボルト接合部100(第1のボルト接合部100a、第2のボルト接合部100b、第3のボルト接合部100c、第4のボルト接合部100d)が形成される。第1の補強板160は、第1のフランジ106a、106b、第2のフランジ108a、108bの内側のフランジ面の略中央部に当接し、第2の補強板162は第3のフランジ116a、116c、第4のフランジ118a、118bの略中央部に当接するように設けられる。第1の補強板160及び第2の補強板162は、平面視で十字形の形状を有しているため、第1の開口部120a、第2の開口部120b、第3の開口部120c、第4の開口部120dを塞がないように配置することができる。このため、第1の補強板160及び第2の補強板162を設けたとしても、これらの開口部をハンドホールとして用いて、施工現場においてボルト接合の作業を行うことができる。
【0052】
なお、本実施形態では、平面視で十字形の補強板を示すが、本発明はこれに限定されず、I形の補強板が用いられてもよい。すなわち、対向する2つのフランジのみと当接する補強板が設けられてもよい。
【0053】
このように、第1の補強板160、第2の補強板162が設けられることで、ボルト接合部100の機械的な強度を高めることができる。例えば、ボルト接合部100に作用する剪断力に対する耐性を高めることができる。本実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、第1の補強板160、第2の補強板162が設けられたこと以外は第1の実施形態に係る構成と同様であり、同様の作用効果を奏することができる。
【0054】
図5(A)及び
図5(B)に示す鋼管柱の継手構造において、上下に配置される補強板同士がボルト接合されてもよい。
図7(A)は本実施形態に係る角形鋼管柱の接合部の展開図を示し、
図7(B)は角形鋼管柱の接合部の斜視図を示す。
図7(A)に示すように、第1の補強板160及び第2の補強板162と接するように第5の添え板144a、第6の添え板146aが設けられる。
図7(B)に示す第5のボルト接合部101a、第6のボルト接合部101bは、第1の開口部120aから視認可能な位置に形成される。
【0055】
図7(B)において、矢印A5、A6で示す部位を断面視したときの構造を
図8(A)及び
図8(B)に示す。
図8(A)は第1の鋼管柱102側の接合部の断面構造を示し、
図8(B)は第2の鋼管柱112側の接合部の断面構造を示す。
図8(A)及び
図8(B)に示すように、第1の補強板160と第2の補強板162を接合するボルト接合部101(第5のボルト接合部101a、第6のボルト接合部101b、第7のボルト接合部101c、第8のボルト接合部101d)が設けられる。第5のボルト接合部101aは、第1の補強板160及び第2の補強板162が第5の添え板144a及び第6の添え板146aに挟まれた構造を有する。同様に、第6のボルト接合部101bは第5の添え板144b及び第6の添え板146bを用いて形成され、第7のボルト接合部101cは第5の添え板144c及び第6の添え板146cを用いて形成され、第8のボルト接合部101dは第5の添え板144d及び第6の添え板146dを用いて形成される。
【0056】
第5のボルト接合部101aは、第1の開口部120aと第2の開口部120dとに挟まれており、施工現場においてはこの両方の開口部を用いてボルト接合の作業を行うことができる。第1の補強板160と第2の補強板162をボルト接合する他のボルト接合部も同様に2つの開口部に挟まれて配置されるので、施工現場においてボルト接合の作業を容易に行うことができる。
【0057】
このように、第1の補強板160と第2の補強板162とがボルト接合されることで、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112とを繋ぐ接合部の強度をより高くすることができる。第1の補強板160と第2の補強板162のボルト接合部101は、フランジに囲まれた内側の領域に形成されるが、開口部120に囲まれていることで、施工現場においても容易にボルト締めの作業を行うことができる。
【0058】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に1階部分の途中で鋼管柱の太さを変えることが可能となる。すなわち、1階部分の途中にボルト接合部100を設けて第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112を繋ぐことで、柱脚側(第1の鋼管柱102)の柱径を太くし、柱頭側(第2の鋼管柱112)の柱径を細くすることができ、曲げモーメントの小さい柱頭部に適した構造を作ることができる。
【0059】
[第3の実施形態]
本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造を、
図9(A)及び
図9(B)を参照して説明する。
図9(A)は、鋼管柱の接合部の展開図を示し、
図9(B)は角形鋼管柱の接合部の斜視図を示す。なお、
図9(A)において、ボルト、ナット等の締結具は省略されている。
【0060】
図9(A)に示すように、第1の鋼管柱102の一端に第1のダイアフラム104が設けられ、第2の鋼管柱112の一端に第2のダイアフラム114が設けられる。第1のダイアフラム104及び第2のダイアフラム114は、それぞれ第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112に溶接により接合されている。
【0061】
第1の実施形態と同様に、本実施形態においても、第1の鋼管柱102の柱径(太さ)は第2の鋼管柱112の柱径(柱の太さ)よりも太いものが用いられる。また、第1のダイアフラム104の板厚は第2のダイアフラム114の板厚よりも厚いものが用いられる。
【0062】
第1のダイアフラム104には、第1のフランジ106a、106b、第2のフランジ108a、108bが接合される。第1のフランジ106a、106bは略同一の形状を有し、フランジ面が第1の鋼管柱102の材軸方向と平行に配置され、所定の間隔で対向するように設けられる。第2のフランジ108a、108bは、フランジ面が第1の鋼管柱102の材軸方向と平行な方向に配置され、第1のフランジ106a、106bが対向する方向と交差する方向に向けられ、所定の間隔で対向するように設けられる。
図9(A)は、第1のフランジ106aが第1の鋼管柱102の第11面に、第1のフランジ106bが第13面に、第2のフランジ108aが第12面に、第2のフランジ108bが第14面に対応して配置される態様を示す。図示されるように、各フランジは、隣接する端部が接するように設けられる。このようなフランジの配置により、第1のダイアフラム104上には、第1のフランジ106a、106b、及び第2のフランジ108a、108bにより囲まれる領域が形成されている。
【0063】
第1のフランジ106aは平板状であり、複数のボルト孔122の他に第1の貫通孔124aを有する。第1のフランジ106aを縦方向に見たとき、第1の貫通孔124aは第1のダイアフラム104に近い側に配置される。すなわち、第1の貫通孔124aは、第1のフランジ106aが第1のダイアフラム104と接する一辺と、複数のボルト孔122が設けられる領域との間に配置される。第1のフランジ106bは、第1のフランジ106aと同じ形態を有し、複数のボルト孔に加え第3の貫通孔124cを有する。一方、第2のフランジ108a、108bには、複数のボルト孔122のみが設けられ、第1の貫通孔124a及び第3の貫通孔124cに相当する貫通孔は有していない。
【0064】
第2のダイアフラム114には、第3のフランジ116a、116b、第4のフランジ118a、118bが接合される。第3のフランジ116a、116bは略同一の形状を有し、フランジ面が第2の鋼管柱112の材軸方向と平行な方向に配置され、所定の間隔で対向するように設けられる。第4のフランジ118a、118bは、フランジ面が第2の鋼管柱112の材軸方向と平行な方向に配置され、第3のフランジ116a、116bが対向する方向と交差する方向に向けられ、所定の間隔で対向するように設けられる。
図9(A)は、第3のフランジ116aが第2の鋼管柱112の第22面に、第3のフランジ116bが第24面に、第4のフランジ118aが第21面に、第4のフランジ118bが第23面に対応して配置される態様を示す。図示されるように、各フランジは、隣接する端部が接するように設けられる。このようなフランジの配置により、第2のダイアフラム114上には、第3のフランジ116a、第3のフランジ116b、第4のフランジ118a、及び第4のフランジ118bにより囲まれる領域が形成される。
【0065】
第3のフランジ116aは平板状であり、第2の貫通孔124b及び複数のボルト孔122を有する。第3のフランジ116aを縦方向に見たとき、第2の貫通孔124bは第2のダイアフラム114に近い側に配置される。すなわち、第2の貫通孔124bは、第3のフランジ116aが第2のダイアフラム114と接する一辺と、複数のボルト孔122が設けられる領域との間に配置される。第3のフランジ116bは、第3のフランジ116aと同じ形態を有し、複数のボルト孔に加え図示されない第4の貫通孔124dを有する。一方、第4のフランジ118a、118bには、複数のボルト孔122のみが設けられ、第2の貫通孔124b及び第4の貫通孔124dに相当する貫通孔は設けられていない。
【0066】
第1の貫通孔124a、第2の貫通孔124b、第3の貫通孔124c、及び図示されない第4の貫通孔124dの大きさに限定はない。これらの貫通孔はハンドホールとして用いられるため、作業者が工具等を入れてボルト接合の施工を行うことのできる孔径を有することが好ましい。これらの貫通孔の形状に限定はなく、
図9(A)に示すように円形であってもよいし、楕円形、矩形、又は任意の多角形であってもよい。また、それぞれのフランジに設けられる複数のボルト孔122は、締結具であるボルトを挿通可能な口径を有し、適宜配置される。
【0067】
第1の添え板130a、130bは、第1のフランジ106a、106b、及び第4のフランジ118a、118bの外側に配置され、第2の添え板132a、132bは、第2のフランジ108a、108b、及び第3のフランジ116a、116bの外側に配置される。第3の添え板140a、140bは、第1のフランジ106a、106b、及び第4のフランジ118a、118bの内側に配置され、第4の添え板142a、142bは、第2のフランジ108a、108b、及び第3のフランジ116a、116bの内側に配置される。各添え板にはボルト孔122が設けられている。
【0068】
図9(A)に示すように、第1のフランジ106aと第3のフランジ116aは、それぞれのフランジ面が同じ方向(第1の方向)に向けられて配置される。また、第2のフランジ108aと第4のフランジ118aは、それぞれのフランジ面が同じ方向(第2の方向)に向けられて配置される。第2の方向は第1の方向と交差する方向である。例えば、第2の方向は第1の方向に対して90度回転した方向である。
【0069】
第1のフランジ106aのフランジ面と第4のフランジ118aのフランジ面とは、フランジ面が面一に配置される。第2のフランジ108aと第3のフランジ116a、第1のフランジ106bと第4のフランジ118b、第2のフランジ108bと第3のフランジ116bも同様に、各フランジ面が面一になるように配置される。
【0070】
第1のフランジ106a、106b及び第3のフランジ116a、116bは、第2のフランジ108a、108b及び第4のフランジ118a、118bに対し、材軸方向の長さが長くなるように形成されている。別言すれば、第1のフランジ106aは、第1の貫通孔124aが設けられることにより複数のボルト孔122が設けられる領域が、第2のフランジ108aにおいて複数のボルト孔122が設けられる領域よりも高い位置に配置される。また、第3のフランジ116aは、第2の貫通孔124bが設けられることにより複数のボルト孔122が設けられる領域が、第4のフランジ118aにおいて複数のボルト孔122が設けられる領域よりも低い位置に配置される。このような位置関係は、第1のフランジ106bと第2のフランジ108bとにおける位置関係、第3のフランジ116bと第4のフランジ118bとにおける位置関係についても同様である。
【0071】
図9(B)は、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112が上下方向に配置され、第1のボルト接合部100a、第2のボルト接合部100bが形成される態様を示す(図示されないが、背面側には第3のボルト接合部100c、第4のボルト接合部100dが形成される)。第1のボルト接合部100aは、第1のフランジ106aと第4のフランジ118aとが、第1の添え板130aと第3の添え板140aとに挟まれてボルト及びナットによって締結されることで形成される。同様に、第2のボルト接合部100bは、第2のフランジ108aと第3のフランジ116aとが、第2の添え板132aと第4の添え板142aとに挟まれてボルト及びナットによって締結されることで形成される。なお、本実施形態においても、ボルト接合部の強度が十分保てる場合には、内側又は外側に当接させる添え板を省略することができる。
【0072】
図10は、本実施形態に係る鋼管柱の継手構造の正面図を示す。第1のボルト接合部100aにおいて、第1の添え板130a及び第3の添え板140a(図示せず)は、第1のフランジ106a及び第4のフランジ118aの両方に当接し、第1の貫通孔124aを塞がない大きさを有する。このような構成は、第2のボルト接合部100b、第3のボルト接合部100c(図示せず)、及び第4のボルト接合部100dについても同様である。
【0073】
図9(A)及び
図9(B)を参照して説明したように、第1のフランジ106aのボルト孔122が形成される領域と、第2のフランジ108a、108bのボルト孔122が形成される領域の高さは異なっている。また、第3のフランジ116aのボルト孔122が形成さえる領域と、第4のフランジ118a、118bのボルト孔122が形成される領域の高さは異なっている。そため、第1のボルト接合部100aの高さと、第2のボルト接合部100b及び第4のボルト接合部100dの高さは異なっている。そして、第1の貫通孔124aは、第1のボルト接合部100aの下側に位置しており(図示されないが、第3の貫通孔124cも同様)、第2の貫通孔124bは第2のボルト接合部の上側に位置し、第4の貫通孔124dは第4のボルト接合部100dの上側に位置している。
【0074】
このように、隣接する面に形成されるボルト接合部及び貫通孔の高さを異ならせ、斜かい状に配置することとで、鋼管柱の各面に配置される貫通孔の全てが同じ高さに配置されないことにより、鋼管柱に働く軸力や、剪断力や、曲げ応力に対する耐力を高めることができる。
【0075】
図10に示すように、第1のボルト接合部100aに対して、第1の貫通孔124aが下側に配置され、第2の貫通孔124b及び第4の貫通孔124dが隣接する面において上側に配置される。このように、一つのボルト接合部に対して、高さが異なる複数の貫通孔が配置されることにより、施工現場における作業が容易になる。すなわち、作業者は、高さ及び方向が異なる複数の貫通孔から工具等を入れて、ボルト接合の作業を容易に行うことができる。
【0076】
図11(A)は、
図10において矢印A5で示す部位を断面視したときの構造を示し、
図11(B)は、
図10において矢印A6で示す部位を断面視したときの構造を示す。
【0077】
図11(A)に示すように、第1のダイアフラム104の上に、第1のフランジ106aと第1のフランジ106bが対向するように配置され、第2のフランジ108aと第2のフランジ108bとが対向するように配置される。このようなフランジの配置により、第1の鋼管柱102の第1面11側に第1の貫通孔124aが配置され第3面13側に第3の貫通孔124cが配置される。また、第1の鋼管柱102の第2面12側に第2のボルト接合部100bが形成され、第4面14側に第4のボルト接合部100dが形成される。
図11(B)に示すように、第2のダイアフラム114の上に、第3のフランジ116aと第3のフランジ116bとが対向するように配置され、第4のフランジ118aと第4のフランジ118bとが対向するように配置される。このようなフランジの配置により、第2の鋼管柱112の第2面22側に第2の貫通孔124bが配置され、第4面24側に第4の貫通孔124dが配置される。また、第2の鋼管柱112の第1面21側に第1のボルト接合部100aが形成され、第3面23に第3のボルト接合部100cが形成される。
【0078】
図11(A)に示すように、第2のボルト接合部100bは、第1の添え板130b、と第3の添え板140bが第2のフランジ108aを挟み、ボルト孔122にボルト150が挿通されナット152により締結することで形成される。第2のフランジ108aは、ボルト孔122が形成されることにより、その部分の断面積が他の部分の断面積と比較して小さくなるが、第1の添え板130b、第3の添え板140bが設けられることにより、断面積の減少を補い剪断強度の低下を抑制することができる。第1の添え板130a及び第3の添え板140aの板厚は適宜設定することができる。このような構成は、第1のボルト接合部100a、第3のボルト接合部100c、第4のボルト接合部100dについても同様である。
【0079】
図11(A)及び
図11(B)を参照すれば明らかなように、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112との継手部分には、ボルト接合部に挟まれるように4方向に貫通孔が配置される。このような継手構造において、貫通孔が設けられるフランジに対して貫通孔を設けないフランジの材軸方向の長さを異ならせ、この2種類のフランジをボルト接合することで、
図9(B)及び
図10に示すように、貫通孔の位置、及びボルト接合の位置を斜かい状に配置することができる。継手部分に設けられるフランジがこのような構成を有することにより、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112と繋ぐためのボルト接合の施工性を高めることができる。
【0080】
本実施形態によれば、第1の貫通孔124a、第2の貫通孔124b、第3の貫通孔124c、及び第4の貫通孔124dをハンドホールとして用い、フランジが配置される継手部分の内側からボルトをセットし,ボルト締めを行うことで2つの鋼管柱を施工現場で接合することができる。ボルト接合は溶接接合より技能的に易しく、手順を守ることで品質も安定させることができる。そして、ハンドホールとして用いることのできる複数の貫通孔を(開孔の方向を異ならせて)斜かい状に配置することで、施工現場における溶接量を極力少なくし、ボルト接合の作業性を向上させ、接合部分の強度が他の部分と同等かそれ以上の強度を有する継手構造を得ることができる。
【0081】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に1階部分の途中で鋼管柱の太さを変えることが可能となる。すなわち、1階部分の途中にボルト接合部100を設けて第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112を繋ぐことで、柱脚側(第1の鋼管柱102)の柱径を太くし、柱頭側(第2の鋼管柱112)の柱径を細くすることができ、曲げモーメントの小さい柱頭部に適した構造を作ることができる。
【0082】
[第4の実施形態]
本実施形態は、第4の実施形態に示す鋼管柱の継手構造に対し、貫通孔が設けられたフランジの配置が異なる態様を示す。以下においては、第4の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0083】
図12(A)は、本実施形態に係る鋼管柱の継手部の展開図を示し、
図12(B)は鋼管柱の継手部の斜視図を示す。なお、
図12(A)において、ボルト、ナット等の締結具は省略されている。
【0084】
図12(A)に示すように、第1のダイアフラム104上に、第1面11に対応して第1の貫通孔124aを有する第1のフランジ106aが設けられ、第2面12に対応して第2の貫通孔124bを有する第1のフランジ106bが設けられる。また、第3面13に対応して第2のフランジ108a(図示されず)が設けられ、第4面14に対応して第2のフランジ108bが設けられる。第2のダイアフラム114には、第1面21に対応して第4のフランジ118aが設けられ、第2面22に対応して第4のフランジ118bが設けられる。また、第3面23に対応して第3の貫通孔124c(図示されず)を有する第3のフランジ116aが設けられ、第4面24に対応して第4の貫通孔124d(図示されず)を有する第3のフランジ116bが設けられる。
【0085】
すなわち、本実施形態においては、第1のダイアフラム104側、第2のダイアフラム114側の双方において、貫通孔を有するフランジが隣接して配置された構造を有する。別言すれば、本実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、第1のフランジ106a及び第1のフランジ106bと、第3のフランジ116a及び第3のフランジ116bとは、それぞれL字を形成するように配置された構成を有する。
【0086】
図12(B)に示すように、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112とを接合するとき、この2つのL字形の構造が咬み合うように配置される。その結果、第1のボルト接合部100aと第2のボルト接合部100bとは同じ高さに形成され、第1の貫通孔124aと第2の貫通孔124bとは同じ高さに配置される。
【0087】
図13は、本実施形態に係る鋼管柱の継手構造の正面図を示す。鋼管柱の第1面11及び第1面21の側に第1のボルト接合部100aが形成され、第2面12及び第2面22の側に第2のボルト接合部100bが形成され、第4面14及び第4面24の側に第4のボルト接合部100dが形成される(図示されないが、第3面13及び第3面23の側には第3のボルト接合部100cが形成される)。
【0088】
図13に示すように、第1の貫通孔124aと第2の貫通孔124bとは、隣接する2つの面に同じ高さで配置される。別言すれば、第1のボルト接合部100aの下側に第1の貫通孔124aが配置され、第2のボルト接合部100bの下側に第2の貫通孔124bが配置される。また、第4の貫通孔124dは第3の貫通孔124c(図示されず)と同じ高さで配置される。そして、第4の貫通孔124dは、第4のボルト接合部100dの上側に配置される。
【0089】
図14(A)は、
図13において矢印A7で示す部位を断面視したときの構造を示し、
図14(B)は、
図13において矢印A8で示す部位を断面視したとき構造を示す。
【0090】
図14(A)に示すように、第1のダイアフラム104の上に、第1のフランジ106aと第1のフランジ106bがL字形に配置され、第2のフランジ108aと第2のフランジ108bとがL字形に配置される。このようなフランジの配置により、第1の鋼管柱102の第1面11側に第1の貫通孔124aが配置され、第2面12側に第2の貫通孔124bが同じ高さで配置される。また、第1の鋼管柱102の第3面13側に第3のボルト接合部100cが形成され、第4面14側に第4のボルト接合部100dが同じ高さで形成される。また、
図14(B)に示すように、第2のダイアフラム114の上に、第3のフランジ116aと第3のフランジ116bとがL字形に配置され、第4のフランジ118aと第4のフランジ118bとがL字形に配置される。このようなフランジの配置により、第2の鋼管柱112の第3面23側に第3の貫通孔124cが配置され、第4面24側に第4の貫通孔124dが同じ高さで配置される。また、第2の鋼管柱112の第1面21側に第1のボルト接合部100aが形成され、第2面22に第2のボルト接合部100bが同じ高さに形成される。
【0091】
本実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、隣接する2つの面に同じ高さの貫通孔を設け、この隣接する2つの面に対向する他の隣接する2つの面に同じ高さの貫通孔を設け、隣接する2つの面と、他の隣接する2つの面との間で、貫通孔の高さが異なる構造を有する。このような貫通孔の配置によれば、例えば、両腕を使ってボルト接合を施工するときの作業性を向上させることができる。そして、このような一組の貫通孔を、高さを異ならせて斜かい状に配置することで、各面にボルト接合を形成するときの作業性を向上させることができ、施工現場における溶接量を極力少なくし、ボルト接合の作業性を向上させ、接合部分の強度が他の部分と同等かそれ以上の強度を有する継手構造を得ることができる。また、鋼管柱の各面に配置される貫通孔の全てが同じ高さに配置されないことにより、継手部分の強度の低下を抑制することができる。
【0092】
なお、貫通孔が設けられたフランジの配置は、
図12(A)に示すものと異なっていてもよい。
図15(A)は、本実施形態の他の形態に係る鋼管柱の継手部の展開図を示し、
図15(B)は鋼管柱の継手部の斜視図を示す。また、
図15(B)に示す矢印A9で示す部位を断面視したときの構造を
図16(A)に示し、矢印A10で示す部位を断面視したときの構造を
図16(B)に示す。
【0093】
図15(A)に示すように、第1の鋼管柱102の側には、第1面11に対応して第1のフランジ106aが設けられ、第12面、第13面、第14面に対応して第2のフランジ108a、108b、108cがコの字形を形成するように設けられる。第1のフランジ106aには第1の貫通孔124aが設けられている。第2のフランジ108a、108b、108cにはボルト孔122のみが設けられ、ハンドホールを形成する貫通孔は設けられていない。第2の鋼管柱112側には、第21面に対応して第4のフランジ118aが設けられ、第22面、第23面、及び第24面に対応して第3のフランジ116a、116b、116cがコの字形を形成するように設けられる。第3のフランジ116aには第2の貫通孔124bが設けられる。また、
図15(A)には図示されないが、第3のフランジ116bには第3の貫通孔124cが設けられ、第3のフランジ116cには第4の貫通孔124dが設けられる。第4のフランジ118aは、ボルト孔122のみが設けられ、ハンドホールを形成する貫通孔は設けられていない。
【0094】
図15(B)は、このような配置を有する第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112とをボルト接合で繋ぎ合わせた構造を示す。
図15(B)に示すように、第1の貫通孔124aは、第1の鋼管柱102に近い側に配置されるのに対し、第2の貫通孔124b(及び第3の貫通孔124c、第4の貫通孔124d)は、第2の鋼管柱112に近い側に配置される。このように、本実施形態の他の形態に係る鋼管柱の継手部の構造は、第1の貫通孔124aに対し、第2の貫通孔124b(及び第3の貫通孔124c、第4の貫通孔124d)が異なる高さに配置される。別言すれば、第1の貫通孔124aに対し、第2の貫通孔124b(及び第3の貫通孔124c、第4の貫通孔124d)は斜かい状に配置される。
【0095】
図16(A)に示すように、第1面11側に第1の貫通孔124aが配置され、第2面12側に第2のボルト接合部100bが、第3面13側に第3のボルト接合部100cが、第4面14側に第4のボルト接合部100dが配置される。一方、
図16(B)に示すように、第2面22側に第2の貫通孔124bが、第3面23側に第3の貫通孔124cが、第4面24側に第4の貫通孔124dが配置され、第1面21側に第1のボルト接合部100aが配置される。このように、フランジの配置を変えることで、3つの面に設けられる貫通孔を同じ高さとし、他の1つの面に設けられる貫通孔の高さを異ならせることができる。そして、高さに3つの貫通孔を配置することで、複数人で施工に当たる場合でも、互いに干渉することなく同時に作業を行うことができる。この場合において、少なくとも一つの貫通孔の高さを異ならせることで、異なる角度から工具等を挿入することができ、ボルト接合の作業性を高めることができる。第1の貫通孔124aに対し、第2の貫通孔124b、第3の貫通孔124c、及び第4の貫通孔124dはそれぞれ斜かい状に配置されることにより、各面にボルト接合を形成するときの作業性を向上させることができ、施工現場における溶接量を極力少なくし、ボルト接合の作業性を向上させ、接合部分の強度が他の部分と同等かそれ以上の強度を有する継手構造を得ることができる。また、鋼管柱の各面に配置される貫通孔の全てが同じ高さに配置されないことにより、継手部分の強度の低下を抑制することができる。
【0096】
さらに、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に1階部分の途中で鋼管柱の太さを変えることが可能となる。すなわち、1階部分の途中にボルト接合部100を設けて第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112を繋ぐことで、柱脚側(第1の鋼管柱102)の柱径を太くし、柱頭側(第2の鋼管柱112)の柱径を細くすることができ、曲げモーメントの小さい柱頭部に適した構造を作ることができる。
【0097】
[第5の実施形態]
第4の実施形態に示す鋼管柱の継手構造において、第2の実施形態と同様に補強板が設けられてもよい。本実施形態は、貫通孔を有するフランジに補強板が設けられたときの鋼管柱の継手構造を示す。
【0098】
図17(A)は本実施形態に係る鋼管柱の継手構造における継手部分の展開図を示し、
図17(B)は本実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図を示す。なお、
図17(A)において、ボルト及びナット等の締結部材は省略されている。
【0099】
図17(A)及び
図17(B)に示すように、第1の補強板160が、第1のフランジ106a、106b、第2のフランジ108a、108bに囲まれた領域に設けられる。第1の補強板160は、第1の鋼管柱102の材軸方向と平行な方向に立てられ、少なくとも、第1のフランジ106a、106bの内側のフランジ面と接するように設けられる。また、第1の補強板160は、第2のフランジ108a、108bの内側のフランジ面と接するように平面視において十字型の形状を有していてもよい。第2の鋼管柱112の側においても、同様の構造を有する第2の補強板162が設けられる。
【0100】
図18は、本実施形態に係る鋼管柱の継手構造の正面図を示す。第1の鋼管柱102の側には、第1の貫通孔124a(及び図示されない第3の貫通孔124c)が設けられる部位と同じ高さに第1の補強板160が設けられる。また、第2の鋼管柱112の側には、第2の貫通孔124b及び第4の貫通孔124dが設けられる部位と同じ高さに第2の補強板162が設けられる。
【0101】
第1の補強板160は、一方の端部が第1のフランジ106aの第1の貫通孔124aが設けられる位置と当接するように配置される(図示されない第1のフランジ106bに対しても同様である)。また、第1の補強板160が十字型の形状を有する場合は、第2のフランジ108a、108bとも当接するように設けられる。第2の補強板162は、一方の端部が第3のフランジ116aの第2の貫通孔124bが設けられる位置で当接し、他方の端部が第3のフランジ116bの第4の貫通孔124dが設けられる位置と当接するように設けられる。また、第2の補強板162が十字型の形状を有する場合は、第4のフランジ118a、118bとも当接するように設けられる。第1の補強板160及び第2の補強板162は、当接するそれぞれのフランジと溶接により固定される。
【0102】
このように、第1のフランジ106a、106bの貫通孔が設けられる位置に、第1の補強板160を設けることでその部位の強度を高めることができる。すなわち、第1のフランジ106a、106bにおいて、第1の貫通孔124a、第3の貫通孔124cが設けられる部位の強度を補うことができる。同様に、第3のフランジ116a、116bの貫通孔が設けられる位置に、第2の補強板162を設けることで、その部位の強度を高めることができる。
【0103】
第1の補強板160は、第1の貫通孔124a(及び図示されない第3の貫通孔124c)と重なる位置に第1の切欠き部164aが設けられていてもよく、第2の補強板162は、第2の貫通孔124b及び第4の貫通孔124dと重なる位置に第2の切欠き部164bが設けられていてもよい。第1の切欠き部164a、第2の切欠き部164bの形状は任意であるが、例えば、それぞれの貫通孔と略同一の直径を有する半円状の形状を有していてもよい。第1の補強板160、第2の補強板162に第1の切欠き部164a、第2の切欠き部164bを設けることで、補強板が貫通孔の一部を塞がないようにすることができる。それにより、それぞれの貫通孔から工具等を挿入して作業する場合においても、補強板が邪魔をせず、作業性が低下しないようにすることができる。
【0104】
図19(A)は、
図18において矢印A11で示す部位を断面視したときの構造を示し、
図19(B)は、
図18において矢印A12で示す部位を断面視したときの構造を示す。
【0105】
図19(A)に示すように、第1のフランジ106a及び第1のフランジ106bの内側のフランジ面と接するように第1の補強板160が設けられる。また、図示されるように第1の補強板160が、平面視で十字型の形状を有する場合は、第2のフランジ108a及び第2のフランジ108bの内側のフランジ面と接するように設けられる。第1の補強板160は、第1の貫通孔124a及び第3の貫通孔124cと重なる位置に設けられる。第1の補強板160の端部には、これらの貫通孔の一部を塞がないように第1の切欠き部164aが設けられる。
図19(B)に示す第2の補強板162も同様の構成を有し、第2の貫通孔124b及び第4の貫通孔124dと重なる端部に第2の切欠き部164bが設けられる。
【0106】
図19(A)及び
図19(B)に示すように、フランジが設けられる部位に補強板を設けることで、その部位の強度を高めることができる。特に、フランジに貫通孔を設ける場合において、補強板を設けることで、貫通孔を設けたことによる強度(剛性)の低下を補うことができる。
【0107】
さらに、第1の補強板160と第2の補強板162とは、ボルト接合により接合されてもよい。例えば、
図20に示すように、第1の補強板160及び第2の補強板162に連接する第5の添え板144、第6の添え板146を設け、第2の実施形態に示す例と同様にしてボルト接合を形成することができる。第5の添え板144、第6の添え板146は、第1の補強板160に形成される第1の切欠き部164a、第2の補強板162に形成される第2の切欠き部164bと重ならない幅を有していることが好ましい。
【0108】
本実施形態に係る鋼管柱の他の構成は、第4の実施形態に係るものと同様であり、同様の作用効果を奏することができる。すなわち、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に1階部分の途中で鋼管柱の太さを変えることが可能であり、柱脚側(第1の鋼管柱102)の柱径を太くし、柱頭側(第2の鋼管柱112)の柱径を細くすることができ、曲げモーメントの小さい柱頭部に適した構造を作ることができる。
【0109】
[第6の実施形態]
本実施形態は、第3の実施形態に示す鋼管柱の継手構造において、フランジの構成が異なる態様を示す。以下においては、第3の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0110】
図21(A)は、本実施形態に係る鋼管柱の継手部の展開図を示し、
図21(B)は鋼管柱の継手部の斜視図を示す。また、
図22(A)は、
図21(B)において矢印A13で示す部位を断面視したときの構造を示し、
図22(B)は、
図21(B)において矢印A14で示す部位を断面視したときの構造を示す。なお、
図21(A)において、ボルト、ナット等の締結具は省略されている。以下の説明においては、
図21(A)及び
図21(B)、並びに
図22(A)及び
図22(B)を参照して説明するものとする。
【0111】
本実施形態において、第1の貫通孔124aが設けられる第1のフランジ106aは、第1の鋼管柱102の肉厚より大きな板厚を有し、第2の貫通孔124bが設けられる第3のフランジ116aは、第2の鋼管柱112の肉厚より大きな板厚を有する。このように、第1のダイアフラム104に加え、貫通孔が設けられるフランジの板厚を鋼管柱の肉厚より大きくすることで、貫通孔が設けられ、またボルト孔が設けられたことによる剪断力,曲げ応力,軸応力に対する強度(剛性)の低下を補うことができる。
【0112】
なお、第3のフランジ116aの板厚に対し、第2のフランジ108aの板厚は相対的に薄くてもよい。第2の添え板132a及び第4の添え板142aで、第2のフランジ108aと第3のフランジ116aとを挟むとき、板厚の差によって隙間ができないように第2のフランジ108aの背面にスペーサ148bが設けられる。スペーサ148bは、第2のフランジ108aと第3のフランジ116aとの板厚の差と同程度の厚さを有し、ボルト孔が設けられており、第2のフランジ108aと第4の添え板142aとの間に挟まれて隙間が出来ないようにボルト接合を形成することができる。
図22(A)及び
図22(B)に示すように、スペーサは各ボルト接合部に設けられる(第1のボルト接合部100aにスペーサ148a、第2のボルト接合部100bにスペーサ148b、第3のボルト接合部100cにスペーサ148c、第4のボルト接合部100dにスペーサ148dが設けられる)。
【0113】
なお、貫通孔が設けられない第2のフランジ108及び第4のフランジ118についても、同様に板厚を大きくすることによってボルト孔が設けられたことによる剪断力,曲げ応力,軸応力に対する強度(剛性)の低下を補うことができる。
【0114】
本実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、フランジの厚さが厚くなったこと以外は第3の実施形態と同様である。したがって、上記の効果に加え、第3の実施形態と同様の有利な効果を得ることができる。なお、本実施形態は、第4乃至第5の実施形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0115】
[第7の実施形態]
本実施形態の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造を、
図23(A)及び
図23(B)を参照して説明する。
図23(A)は、鋼管柱の接合部の展開図を示し、
図22(B)は角形鋼管柱の接合部の斜視図を示す。なお、
図23(A)において、ボルト、ナット等の締結具は省略されている。
【0116】
図23(A)において、第1の鋼管柱102及び第1のダイアフラム104、並びに第2の鋼管柱112及び第2のダイアフラム114の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0117】
第1のダイアフラム104の上に、第1のL形フランジ107a、107b、及び第2のL形フランジ109a、109bが接合される。第1のL形フランジ107a、107b、及び第2のL形フランジ109a、109bは、図示されるように2つの平板状のフランジをL字形に繋ぎ合わせた形状を有していてもよいし、図示されないが山形鋼や金属の無垢材で形成されていてもよい。また、第1のL形フランジ107a、107b、及び第2のL形フランジ109a、109bのそれぞれは、2枚の平板状のフランジをL字形に配置したもの(一体化されてないもの)、さらに2枚の平板状のフランジがL字状に配置されつつも相互に接触しないように配置したものであってもよい。各L形フランジには複数のボルト孔122が設けられている。
【0118】
図23(A)は、第1のL形フランジ107a、107b、第2のL形フランジ109a、109bが、第1のダイアフラム104の角部に対応して配置される態様を示す。第1のL形フランジ107aが第1面11及び第4面14の角部に、第2のL形フランジ109aが第1面11及び第2面12の角部に、第1のL形フランジ107bが第2面12及び第3面13の角部に、第2のL形フランジ109bが第3面13及び第4面14の角部に対応して配置される態様を示す。このようなL形フランジの配置により、第1のダイアフラム104上には、第1のL形フランジ107a、107b、第2のL形フランジ109a、109bで囲まれる領域が形成される。
【0119】
第1のL形フランジ107aの幅L1、L2は、第1のダイアフラム104の幅LD1の1/2よりも小さくされている。第1のL形フランジ107b、及び第2のL形フランジ109a、109bは、第1のL形フランジ107aの幅も同様の大きさを有する。このため、第1のL形フランジ107aと第2のL形フランジ109aとの間に第1の間隙110aが形成され、第2のL形フランジ109aと第1のL形フランジ107bとの間に第2の間隙110bが形成され、第1のL形フランジ107bと第2のL形フランジ109bとの間に第3の間隙110cが形成され、第2のL形フランジ109bと第1のL形フランジ107aとの間に第4の間隙110dが形成される。
【0120】
第2のダイアフラム114には、第3のL形フランジ117a、117b、及び第4のL形フランジ119a、119bが接合される。第3のL形フランジ117a、117b、及び第4のL形フランジ119a、119bは、第1のL形フランジ107aと略同一の形態を有する。第3のL形フランジ117a、117b、及び第4のL形フランジ119a、119bは、第1のL形フランジ107a、107b、及び第2のL形フランジ109a、109bと同様に、第2のダイアフラム114の角部に対応して配置される。それにより、第2のダイアフラム114の側には、第3のL形フランジ117a、117b、第4のL形フランジ119a、119bで囲まれる領域が形成される。そして、第3のL形フランジ117aと第4のL形フランジ119aとの間に第5の間隙111aが形成され、第4のL形フランジ119aと第3のL形フランジ117bとの間に第6の間隙111bが形成され、第3のL形フランジ117bと第4のL形フランジ119bとの間に図示されない第7の間隙(111c)が形成され、第4のL形フランジ119b(図示されず)と第3のL形フランジ117aとの間に図示されない第8の間隙(111d)が形成される。
【0121】
第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112が上下に配置されるとき、第1のL形フランジ107aと第3のL形フランジ117aとは上下に並び、それぞれのフランジ面が面一になるように配置される。第2のL形フランジ109aと第4のL形フランジ119aも同様に上下に並び、それぞれのフランジ面が面一になるように配置される。第1のL形フランジ107bと第3のL形フランジ117bとの配置、及び第2のL形フランジ109bと第4のL形フランジ119bとの配置についても同様である。
【0122】
第1のL形フランジ107a及び第3のL形フランジ117aの外側のフランジ面には第1の添え板130a、130bが当接される。第2のL形フランジ109a及び第4のL形フランジ119aの外側のフランジ面には第2の添え板132a、132bが当接される。また、第1のL形フランジ107a及び第3のL形フランジ117aの内側のフランジ面には、第3の添え板140a、140bが当接され、第2のL形フランジ109b及び第4のL形フランジ119aの内側のフランジ面には第4の添え板142a、142bが当接される。第1の添え板130a、130bは板状の部材であり、複数のボルト孔122が設けられる。他の添え板も同様の構成を有する。
【0123】
図23(B)は、第1のL形フランジ107aと第3のL形フランジ117aが、第1の添え板130a、130bと第3の添え板140a、140bとに挟まれて第1のボルト接合部100aが形成された構造を示す。第2のボルト接合部100b、第3のボルト接合部100c(及び図示されない第4のボルト接合部100d)も同様に、上下に配置されたL形フランジと添え板によってボルト接合された構造を有する。
【0124】
図23(B)は、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112が上下方向に配置されて、第1のボルト接合部100a、第2のボルト接合部100b、第3のボルト接合部100c(及び図示されない第4のボルト接合部100d)によって接合された構造を示す。
【0125】
図23(B)に示すように、第1のボルト接合部100aと第2のボルト接合部100bとの間には、第1の間隙110aと第5の間隙111aとによって第1の開口部120aが形成される。また、第2のボルト接合部100bと第3のボルト接合部100cとの間には、第2の間隙110bと第6の間隙111bとによって第2の開口部120bが形成される。第1の開口部120aは、第1の鋼管柱102の第1面11及び第2の鋼管柱112の第1面21に面し、第1の開口部120aは、第1の鋼管柱102の第2面12及び第2の鋼管柱112の第2面22に面している。
【0126】
図24は、本実施形態に係る鋼管柱の継手構造の正面図を示す。
図24は、第1の鋼管柱102の第1面11及び第4面14が隣接する角部、並びに第2の鋼管柱112の第1面21及び第4面24が隣接する角部に第1のボルト接合部100aが形成され、第1の鋼管柱102の第1面11及び第2面12が隣接する角部、並びに第2の鋼管柱112の第1面21及び第2面22が隣接する角部に第2のボルト接合部100bが形成される。
【0127】
第1の開口部120aは、第1のL形フランジ107a及び第3のL形フランジ117aと、第2のL形フランジ109a及び第4のL形フランジ119aと、第1のダイアフラム104と、第2のダイアフラム114とに囲まれた領域である。第1の開口部120aは、第1のL形フランジ107a及び第3のL形フランジ117aの高さ、及び幅方向の長さ(
図23(A)に示すL2)によって、その大きさを設定することができる。
【0128】
図25(A)は、
図24において矢印A15で示す部位を断面視したときの構造を示し、
図25(B)は、
図24において矢印A16で示す部位を断面視したときの構造を示す。
【0129】
図25(A)に示すように、第1のダイアフラム104の上に、第1のL形フランジ107a、107b、第2のL形フランジ109a、109bが第1の鋼管柱102の各角部に対応して配置される。各フランジは離隔して配置され、第1面11に第1の間隙110a、第2面12に第2の間隙110b、第3面13に第3の間隙110c、第4面14に第4の間隙110dが形成される。
図25(B)に示すように、第2のダイアフラム114の上に、第3のL形フランジ117a、117b、第4のL形フランジ119a、119bが第2の鋼管柱112の各角部に対応して配置される。各フランジは離隔して配置され、第1面21に第5の間隙111a、第2面22に第6の間隙111b、第3面23に第7の間隙111c、第4面24に第8の間隙111dが形成される。
【0130】
図25(A)及び
図25(B)に示すように、第1のL形フランジ107a及び第3のL形フランジ117aに対して、外側から第1の添え板130a、130bが当接され、内側から第3の添え板140a、140bが当接され、ボルト孔122に挿通されたボルト150とナット152により第1のボルト接合部100aが形成される。また、第2のL形フランジ109a及び第4のL形フランジ119aに対して、外側から第2の添え板132a、132bが当接され、内側から第4の添え板142a、142bが当接され第2のボルト接合部100bが形成される。第1のL形フランジ107b及び第3のL形フランジ117b、並びに第2のL形フランジ109bと第4のL形フランジ119bについても、同様に第3のボルト接合部100c、第4のボルト接合部100dが形成される。
【0131】
第1の間隙110aと第5の間隙111aとは重なる位置に配置されて第1の開口部120aが形成され、第2の間隙110bと第6の間隙111bとは重なる位置に配置されて第2の開口部120bが形成され、第3の間隙110cと第7の間隙111cとは重なる位置に配置されて第3の開口部120cが形成され、第4の間隙110dと第8の間隙111dとは重なる位置に配置されて第4の開口部120dが形成される。
【0132】
図25(A)及び
図25(B)に示すように、第1のL形フランジ107a、107b、第2のL形フランジ109a、109bは第1のダイアフラム104に取り付けられるため、第1の鋼管柱102の肉厚より厚くすることができる。同様に、第3のL形フランジ117a、117b、第4のL形フランジ119a、119bは第2のダイアフラム114に取り付けられるため、第2の鋼管柱112の肉厚より厚くすることができる。これにより、ボルト接合部の強度を高めることができる。一方、各L形フランジは、間隙をもって配置されるため、継手部分の重量の増加を抑えることができる。なお、本実施形態においても、ボルト接合部の強度が十分に確保できる場合には、外側に配置される添え板及び内側に配置される添え板の内、一方の側の添え板を省略することもできる。
【0133】
本実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、L形フランジを用いることによってハンドホールとして用いられる開口部が形成される。
図23(A)及び
図23(B)に示す構造は、第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112の両側にL形フランジを配置する構成を示すが、本発明はこの態様に限定されない。例えば、
図26(A)及び
図26(B)に示すように、L形フランジと平板状のフランジとが組み合わされてもよい。
【0134】
図26(A)の展開図に示すように、第1の鋼管柱102の側には第1のダイアフラム104上に、第1のL形フランジ107a、107b、第2のL形フランジ109a、109bが接合され、第2の鋼管柱112の側には第2のダイアフラム114上に第4のフランジ118a、118b、118c(図示されず)、118dが接合されている。第1のL形フランジ107a、107b、第2のL形フランジ109a、109bは、第4のフランジ118a、118b、118c(図示されず)、118dの各フランジ面と面一になるように配置される。第1のL形フランジ107a及び第4のフランジ118a、118dには、第1の添え板130a、130b、第3の添え板140a、140bが当接されボルト接合され、第2のL形フランジ109a及び第4のフランジ118a、1198bには、第2の添え板132a、132b、第4の添え板142a、142bが当接されボルト接合される。
【0135】
図26(B)に示すように、第1のボルト接合部100aと第2のボルト接合部100bとの間に第1の開口部120aが形成され、第2のボルト接合部100bと第3のボルト接合部100cとの間に第2の開口部120bが形成される。第1の開口部120a及び第2の開口部120bの高さは、第1のL形フランジ107a及び第2のL形フランジ109aの高さ(材軸方向の長さ)と略一致する。また、図示されないが、第3面13側には第3の開口部、及び第4面14側には第4の開口部が同様に形成される。
【0136】
なお、
図26(A)及び
図26(B)は、第1の鋼管柱102の側にL形フランジが設けられ、第2の鋼管柱112の側には平板状のフランジが設けられる態様を示すが、これは一例であり、第1の鋼管柱102の側に平板状のフランジが設け、第2の鋼管柱112の側にL形フランジを設けてもよい。
【0137】
また、L形フランジにはリブが設けられてもよい。
図27(A)は、リブが設けられた第1のL形フランジ107a、107b、及び第2のL形フランジ109a、109bの斜視図を示し、
図27(B)はその平面図を示す。リブ166aは、第1のL形フランジ107aの内側に設けられる。第1のL形フランジ107b、第2のL形フランジ109a、109bにも同様に、それぞれリブ166b、166c、166dが設けられる。このようにリブを設けることで、L形フランジの面外剛性を高めることができる。それにより、ボルト接合部に作用する圧縮軸力に対する局部座屈耐力を高めることができ、丈夫な継手構造を提供することができる。
【0138】
本実施形態によれば、L形フランジにより形成される4箇所のボルト接合部の間にハンドホールとして用いることのできる開口部が設けられることで、ボルト接合の作業を容易に行うことができる。別言すれば、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112との継手部分において、異なる方向を向く開口部を4箇所設けることで、ボルト接合の作業が容易となる。このような継手の構造において、4箇所にL形フランジを配置することで、鋼管柱に働く剪断力や、曲げ応力に対する耐力を高めることができる。このように、本実施形態によれば、建設現場における溶接量を極力少なくし、ボルト接合の作業性を向上させ、接合部分の強度が他の部分と同等かそれ以上の強度を有する継手構造を得ることができる。
【0139】
また、ボルト接合を形成するために材軸方向に上下に配置されるフランジの一方をL形フランジとし、他方を平板状のフランジとすることで、鋼管柱に働く剪断力や、曲げ応力に対する耐力を高めることができる。本実施形態によっても、建設現場における溶接量を極力少なくし、ボルト接合の作業性を向上させ、接合部分の強度が他の部分と同等かそれ以上の強度を有する継手構造を得ることができる。
【0140】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に1階部分の途中で鋼管柱の太さを変えることが可能であり、柱脚側(第1の鋼管柱102)の柱径を太くし、柱頭側(第2の鋼管柱112)の柱径を細くすることができ、曲げモーメントの小さい柱頭部に適した構造を作ることができる。
【0141】
[第8の実施形態]
本実施形態は、第7の実施形態に示すL形のフランジに替えて溝形のフランジが設けられた態様を示す。以下の説明においては第7の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0142】
図28(A)は本実施形態に係る鋼管柱の継手構造の展開図を示し、
図28(B)はその斜視図を示す。なお、
図28(A)において、ボルト及びナット等の締結部材は省略されている。
【0143】
図28(A)に示すように、第1のダイアフラム104に、第1の溝形フランジ170と第2の溝形フランジ172が接合される。第1の溝形フランジ170及び第2の溝形フランジ172は、平板状のフランジの両端が同じ方向に曲がった溝形の形状を有する。第1の溝形フランジ170と第2の溝形フランジ172とは、溝形に曲がった側が相互に対向するように配置される。別言すれば、第1の溝形フランジ170と第2の溝形フランジ172とは、第1のダイアフラム104上で、溝形に曲がった面が内向きに配置されている。また、第1の溝形フランジ170及び第2の溝形フランジ172は、フランジ面が第1の鋼管柱102の材軸方向と平行な方向に向けられている。第1の溝形フランジ170及び第2の溝形フランジ172は、第1のダイアフラム104の一辺に沿った平板部と、溝形に曲がった部分にフランジ面を有し、それぞれ複数のボルト孔122が設けられている。
【0144】
第1の溝形フランジ170の溝形に折れ曲がった部分の長さL3、及び第2の溝形フランジ172の溝形に折れ曲がった部分の長さL4の合計は、第1のダイアフラム104の幅LD1の1/2よりも小さい値を有する。そのため、第1の溝形フランジ170と第2の溝形フランジ172とを対向して配置させたとき、溝形に折れ曲がった端部同士が接触せず、第1の間隙110a、第2の間隙110bを有するように配置することができる。
【0145】
第2のダイアフラム114には、第3の溝形フランジ180と第4の溝形フランジ182が接合される。第3の溝形フランジ180及び第4の溝形フランジ182は、第1の溝形フランジ170及び第2の溝形フランジ172と同様の構成を有し、第2のダイアフラム114に同様に接合される。但し、第1の間隙110aが第1面11の側に、第2の間隙110bが第3面13の側に形成されるのに対し、第3の溝形フランジ180及び第4の溝形フランジ182によって形成される第5の間隙111aは第2面22の側に、第6の間隙111bは第4面24の側に配置される。
【0146】
第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112が上下に配置されるとき、第1の溝形フランジ170と第3の溝形フランジ180とは、それぞれのフランジ面が面一になるように配置される。第2の溝形フランジ172と第4の溝形フランジ182も同様に、それぞれのフランジ面が面一になるように配置される。
【0147】
第1の溝形フランジ170及び第3の溝形フランジ180の外側のフランジ面には第1の添え板130a、130bが当接され、内側のフランジ面には第3の添え板140a、140bが当接されてボルト接合部が形成される。第1の添え板130a、130b及び第2の添え板132a、132bは、第1の溝形フランジ170及び第3の溝形フランジ180の両方に当接することのできる長さを有する。また、第2の溝形フランジ172及び第4の溝形フランジ182の外側のフランジ面には、第2の添え板132a、132bが当接され、内側のフランジ面には第4の添え板142a、142bが当接されてボルト接合部が形成される。
【0148】
図28(B)は、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112が上下方向に配置されて繋ぎ合わせることによって、第1のボルト接合部100a、第2のボルト接合部100b、第3のボルト接合部100cが形成される態様を示す(図示されないが、背面側には第4のボルト接合部100dが形成される)。第1のボルト接合部100aは、第1の溝形フランジ170と第3の溝形フランジ180とが、第1の添え板130aと第3の添え板140a、及び第1の添え板130bと第3の添え板140b(図示されない)とによって挟まれてボルト及びナットによって締結されることで形成される。また、第2のボルト接合部100bは、第2の溝形フランジ172と第4の溝形フランジ182とが、第2の添え板132aと第4の添え板142a(図示されない)と、第2の添え板132bと第4の添え板142b(図示されない)とによって挟まれてボルト及びナットによって締結されることで形成される。第3のボルト接合部100cは第2の溝形フランジ172及び第4の溝形フランジ182により、また第4のボルト接合部100dは第1の溝形フランジ170及び第4の溝形フランジ182により、添え板を介して同様に形成される。
【0149】
図28(B)に示すように、第1の鋼管柱102の第1面11及び第2の鋼管柱112の第1面21側には、第1の開口部120aが形成される。第1の鋼管柱102の第2面12及び第2の鋼管柱の第2面22側には、第2の開口部120bが形成される。第1の開口部120aは、第1の溝形フランジ170及び第2の溝形フランジ172と、第3の溝形フランジ180と、第1のダイアフラム104とに囲まれた領域に形成され、第2の開口部120bは、第2の溝形フランジ172と、第3の溝形フランジ180及び第4の溝形フランジ182と、第2のダイアフラム114とに囲まれた領域に形成される。
【0150】
図28(B)に示す矢印A17で示す部位の断面構造を
図29(A)に示し、他印A18で示す部位の断面構造を
図29(B)に示す。
図29(A)に示すように、第1の溝形フランジ170と第2の溝形フランジ172とが離隔して配置されることにより、第1面11側に第1の間隙110aが形成され、第3面13側に第2の間隙110bが形成される。第1の間隙110aは第1の開口部120aを形成し、第2の間隙110bは第3の開口部120cを形成する。
図29(B)に示すように、第3の溝形フランジ180と第4の溝形フランジ182とが離隔して配置されることにより、第2面22側に第5の間隙111aが形成され、第4面24側に第6の間隙111bが形成される。第5の間隙111aは第2の開口部120bを形成し、第6の間隙111bは第4の開口部120dを形成する。
【0151】
図29(A)及び
図29(B)に示すように、第1の開口部120a及び第3の開口部120cは第1の溝形フランジ170及び第2の溝形フランジ172によって形成され、第2の開口部120b及び第4の開口部120dは第3の溝形フランジ180及び第4の溝形フランジ182によって形成される。そのため、第1の開口部120a及び第3の開口部120cと、第2の開口部120b及び第4の開口部120dとは、異なる高さに形成される。すなわち、
図28(B)に示すように、第1の開口部120aに対して第2の開口部120bは高い位置に形成される。
【0152】
このように、本実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、隣接する2つの面に異なる高さの開口部を設けることができる。このような開口部の配置によれば、例えば、両腕を使ってボルト接合を施工するときの作業性を向上させることができる。そして、このような一組の開口部を、高さを異ならせて斜かい状に配置することで、各面にボルト接合を形成するときの作業性を向上させることができ、建設現場における溶接量を極力少なくし、ボルト接合の作業性を向上させ、接合部分の強度が他の部分と同等かそれ以上の強度を有する継手構造を得ることができる。また、鋼管柱の各面に配置される開口部の全てが同じ高さに配置されないことにより、継手部分の強度の低下を抑制することができる。
【0153】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に1階部分の途中で鋼管柱の太さを変えることが可能であり、柱脚側(第1の鋼管柱102)の柱径を太くし、柱頭側(第2の鋼管柱112)の柱径を細くすることができ、曲げモーメントの小さい柱頭部に適した構造を作ることができる。
【0154】
[第9の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態に対し、ダイアフラムの構成が異なる態様について示す。以下においては、第1の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0155】
図30に示すように、第1のダイアフラム104には貫通孔126が設けられていてもよい。また、図示しないが第2のダイアフラム114には貫通孔が設けられていてもよい。
図30は、第1のダイアフラム104の略中央に貫通孔126が設けられる態様を示す。貫通孔126の数は限定されず、第1のダイアフラム104の中に複数設けられていてもよい。第1のダイアフラム104に貫通孔126が設けられることで、接合部の軽量化を図ることができ、柱体の軽量化を図ることができる。第2のダイアフラム114においても同様に貫通孔が設けられていてもよい。
【0156】
また、本実施の形態に示す柱202をコンクリート充填鋼管構造(Concrete Filled Steel Tube,CFTともいう。)に応用することができる。第1のダイアフラム104、第2のダイアフラム114に設けられた貫通孔を介して、繋ぎ合わされた第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112の内側にコンクリートが充填される。この結果、第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112の断面積を小さくしても強靱な構造を形成することができる。
【0157】
本実施形態に係る構成は、第2乃至第8の実施形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0158】
[付記]
上記で開示された例示的な実施形態の全体又は一部は、以下の付記のように記載される態様を含み得るが、本発明の一実施形態はこれに限定されない。
【0159】
[付記1]
第1の鋼管柱の一端に設けられた第1のダイアフラムと、前記第1の鋼管柱の材軸方向と平行にフランジ面が配置され、前記第1のダイアフラムに接合された第1のL形フランジ及び第2のL形フランジと、第2の鋼管柱の一端に設けられた第2のダイアフラムと、前記第2の鋼管柱の材軸方向と平行にフランジ面が配置され、前記第2のダイアフラムに接合された第3のL形フランジ及び第4のL形フランジと、第1の添え板及び第2の添え板と、を含み、前記第1のダイアフラムと前記第2のダイアフラムとが対向するように、前記第1の鋼管柱の上に前記第2の鋼管柱が配置され、前記第1の鋼管柱は前記第2の鋼管柱より太く、前記第1のL形フランジと前記第2のL形フランジとが離隔して配置され、前記第3のL形フランジと前記第4のL形フランジとが離隔して配置され、前記第1のL形フランジと前記第3のL形フランジとは、それぞれのフランジ面が面一に配置され、前記第2のL形フランジと前記第4のL形フランジとは、それぞれのフランジ面が面一に配置され、前記第1のL形フランジと前記第3のL形フランジとは、前記第1の添え板を介してボルト接合され、前記第2のL形フランジと前記第4のL形フランジとは、前記第2の添え板を介してボルト接合されていることを特徴とする鋼管柱の継手構造。
【0160】
[付記2]
前記第1のL形フランジ及び前記第3のL形フランジと、前記第2のL形フランジ及び前記第4のL形フランジと、前記第1のダイアフラムと、前記第2のダイアフラムと、に囲まれた開口部を有する付記1に記載の鋼管柱の継手構造。
【0161】
[付記3]
前記第1の鋼管柱及び前記第2の鋼管柱は角形鋼管柱であり、前記第1のL形フランジ及び前記第2のL形フランジは、前記第1の鋼管柱の角部に対応して設けられ、前記第3のL形フランジ及び前記第4のL形フランジは、前記第2の鋼管柱の角部に対応して設けられている付記1又は2に記載の鋼管柱の継手構造。
【0162】
[付記4]
前記第1の添え板に対向する第3の添え板と、前記第2の添え板に対向する第4の添え板と、を有し、前記第1のL形フランジと前記第3のL形フランジとが、前記第1の添え板と前記第3の添え板とに挟まれてボルト接合され、前記第2のL形フランジと前記第4のL形フランジとが、前記第2の添え板と前記第4の添え板とに挟まれてボルト接合されている付記1乃至3のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【0163】
[付記5]
第1の鋼管柱の一端に設けられた第1のダイアフラムと、前記第1の鋼管柱の材軸方向と平行にフランジ面が配置され、前記第1のダイアフラムに接合された第1のL形フランジ及び第2のL形フランジと、第2の鋼管柱の一端に設けられた第2のダイアフラムと、前記第2の鋼管柱の材軸方向と平行にフランジ面が配置され、前記第2のダイアフラムの面に接合された第3のフランジと、第1の添え板及び第2の添え板と、を含み、前記第1のダイアフラムと前記第2のダイアフラムとが対向するように、前記第1の鋼管柱の上に前記第2の鋼管柱が配置され、前記第1の鋼管柱は前記第2の鋼管柱より太く、前記第1のL形フランジと前記第2のL形フランジとが離隔して配置され、前記第1のL形フランジ及び前記第2のL形フランジと前記第3のフランジとは、それぞれのフランジ面が面一に配置され、前記第1のL形フランジと前記第3のフランジとは、前記第1の添え板を介してボルト接合され、前記第2のL形フランジと前記第3のフランジとは、前記第2の添え板を介してボルト接合されていることを特徴とする鋼管柱の継手構造。
【0164】
[付記6]
前記第1のL形フランジ及び前記第2のL形フランジと、前記第3のフランジと、前記第1のダイアフラムと、に囲まれた開口部を有する付記5に記載の鋼管柱の継手構造。
【0165】
[付記7]
前記第1の鋼管柱及び前記第2の鋼管柱は角形鋼管柱であり、前記第1のL形フランジ及び前記第2のL形フランジは、前記第1の鋼管柱の角部に対応して設けられ、前記第3のフランジは、前記第2の鋼管柱の1つの面に対応して設けられている付記5又は6に記載の鋼管柱の継手構造。
【0166】
[付記8]
前記第1の添え板に対向する第3の添え板と、前記第2の添え板に対向する第4の添え板と、を有し、前記第1のL形フランジと前記第3のフランジとが、前記第1の添え板と前記第3の添え板とに挟まれてボルト接合され、前記第2のL形フランジと前記第3のフランジとが、前記第2の添え板と前記第4の添え板とに挟まれてボルト接合されている付記5乃至7のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【0167】
[付記9]
第1の鋼管柱の一端に設けられた第1のダイアフラムと、前記第1の鋼管柱の材軸方向と平行にフランジ面が配置され、前記第1のダイアフラムに接合された、両端が同じ方向に溝形に曲がった第1の溝形フランジ及び第2の溝形フランジと、第2の鋼管柱の一端に設けられた第2のダイアフラムと、前記第2の鋼管柱の材軸方向と平行にフランジ面が配置され、前記第2のダイアフラムに接合され、両端が同じ方向に溝形に曲がった第3の溝形フランジ及び第4の溝形フランジと、第1の添え板及び第2の添え板と、を含み、前記第1のダイアフラムと前記第2のダイアフラムとが対向するように、前記第1の鋼管柱の上に前記第2の鋼管柱が配置され、前記第1の鋼管柱は前記第2の鋼管柱より太く、前記第1の溝形フランジと前記第2の溝形フランジとは、屈曲された端部が離隔して対向配置され、前記第3の溝形フランジと前記第4の溝形フランジとは、屈曲された端部が離隔して対向配置され、前記第1の溝形フランジと前記第2の溝形フランジとが対向する方向と、前記第3の溝形フランジと前記第4の溝形フランジとが異なり、前記第1の溝形フランジと前記第3の溝形フランジとは、それぞれのフランジ面が面一に配置され、前記第2の溝形フランジと前記第4の溝形フランジとは、それぞれのフランジ面が面一に配置され、前記第1の溝形フランジと前記第3の溝形フランジとは、前記第1の添え板を介してボルト接合され、前記第2の溝形フランジと前記第4の溝形フランジとは、前記第2の添え板を介してボルト接合されていることを特徴とする鋼管柱の継手構造。
【0168】
[付記10]
前記第1の溝形フランジ、前記第2の溝形フランジ、前記第3の溝形フランジ、及び前記第1のダイアフラムに囲まれた第1の開口部と、前記第3の溝形フランジ、前記第4の溝形フランジ、前記第1の溝形フランジ、及び前記第2のダイアフラムに囲まれた第2の開口部を有する付記9に記載の鋼管柱の継手構造。
【0169】
[付記11]
前記第1の開口部と前記第2の開口部が斜かい状に配置されている付記10に記載の鋼管柱の継手構造。
【0170】
[付記12]
前記第1の添え板に対向する第3の添え板と、前記第2の添え板に対向する第4の添え板と、を有し、前記第1の溝形フランジと前記第3の溝形フランジとが、前記第1の添え板と前記第3の添え板とに挟まれてボルト接合され、前記第2の溝形フランジと前記第3の溝形フランジとが、前記第2の添え板と前記第4の添え板とに挟まれてボルト接合されている付記9乃至11のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【0171】
[付記13]
前記第1の鋼管柱及び前記第2の鋼管柱は角形鋼管柱であり、前記第1の溝形フランジ及び前記第2の溝形フランジは、前記屈曲された端部が前記第1の鋼管柱の角部に対応して設けられ、前記第3の溝形フランジ及び前記第4の溝形フランジは、前記屈曲された端部が前記第2の鋼管柱の角部に対応して設けられている付記9乃至12のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【符号の説明】
【0172】
100・・・ボルト接合部、101・・・ボルト接合部、102・・・第1の鋼管柱、104・・・第1のダイアフラム、106・・・第1のフランジ、107・・・第1のL形フランジ、108・・・第2のフランジ、109・・・第2のL形フランジ、110・・・間隙、111・・・間隙、112・・・第2の鋼管柱、114・・・第2のダイアフラム、116・・・第3のフランジ、117・・・第3のL形フランジ、118・・・第4のフランジ、119・・・第4のL形フランジ、120・・・開口部、122・・・ボルト孔、124・・・貫通孔、126・・・貫通孔、130・・・第1の添え板、132・・・第2の添え板、140・・・第3の添え板、142・・・第4の添え板、144・・・第5の添え板、146・・・第6の添え板、148・・・スペーサ、150・・・ボルト、152・・・ナット、160・・・第1の補強板、162・・・第2の補強板、164・・・切欠き部、166・・・リブ、170・・・第1の溝形フランジ、172・・・第2の溝形フランジ、180・・・第3の溝形フランジ、182・・・第4の溝形フランジ、200・・・基礎梁、202・・・柱、204・・・梁、