(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】マクロファージ上のFc受容体結合の破壊による抗SlRPα抗体療法の効果増強
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20231019BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231019BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231019BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231019BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 111
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2019505387
(86)(22)【出願日】2017-07-26
(86)【国際出願番号】 US2017043935
(87)【国際公開番号】W WO2018026600
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-08
(32)【優先日】2016-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(73)【特許権者】
【識別番号】518247726
【氏名又は名称】フォーティー セブン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ジー
(72)【発明者】
【氏名】リング,アーロン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】フォルクマー,ジェンス-ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ワイスマン,アービング エル.
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】松本 淳
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/138600号(WO,A2)
【文献】特表2014-519338号公報(JP,A)
【文献】特表2013-541522号公報(JP,A)
【文献】Shields RL et al、J Biol Chem、2001年、Vol.276、No.9、p.6591-6604
【文献】Review Invivogen、2011年、URL、https://www.invivogen.com/sites/default/files/invivogen/resources/documents/reviews/review-Engineered-Fc-Regions-invivogen.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/WPIDS/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
SwissProt/Geneseq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された治療用の抗体であって、
(i)ヒトSIRPαに特異的に結合する可変領域と、
(ii)ヒトFc受容体に対する結合を低減する改変を含むヒトFc領域と
を含んでおり、
前記ヒトFc領域のグリコシル化が、グリコシル化に必要なアミノ酸残基の改変によって低減され、
前記グリコシル化に必要なアミノ酸残基は、EUインデックス位置のアスパラギン297であ
り、
配列番号3~5及び6~8に記述されるCDR配列のそれぞれを含むヒト化抗体である
抗体。
【請求項2】
N297A/Q/D/H/G/Cのアミノ酸置換を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記改変は、CH2領域内のEUインデックス位置234、235、または237におけるアミノ酸置換である、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記改変は、L234A/L235Aである、請求項2に記載の抗体。
【請求項5】
改変K322Aをさらに含む、請求項3に記載の抗体。
【請求項6】
前記改変は、E233P/L234V/L235A/G236+A327G/A330S/P331Sを含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
2つ以上の異なるヒトSIRPαアイソタイプに特異的に結合する、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
ヒトSIRPαアイソタイプに特異的である、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項9】
配列番号1及び配列番号2、配列番号9及び配列番号10、またはそれらに由来する生物学的に活性なバリアントの可変領域配列を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の抗体を含む、医薬組成物。
【請求項11】
単位用量製剤中にある、請求項
10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
希釈剤を伴う単位用量での滅菌プレパックとして提供される、請求項
11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
第2の治療用抗体をさらに含む、請求項
10~
12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
ヒト対象における標的細胞の食作用を増加させるための組成物であって、
請求項1~
9のいずれか1項に記載の抗体を、前記標的細胞の食作用を増加させるために有効な量だけ含む、組成物。
【請求項15】
前記標的細胞はがん細胞である、請求項
14に記載の組成物。
【請求項16】
第2の治療用抗体をさらに含む、請求項
14または
15に記載の組成物。
【請求項17】
前記第2の治療用抗体は、がん細胞の表面のたんぱく質に結合する、請求項
16に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
細胞のターンオーバーは、アポトーシスプログラム、または除去するものとして細胞に印を付ける他の細胞の変化の誘導、及び後に続く、マクロファージ、樹状細胞等を含む食細胞によるマーカーの認識によって開始する。このプロセスは、不要な細胞の特異的かつ選択的な除去を必要とする。健康な細胞とは異なり、不要な/老化した/死につつある細胞は、「イートミー(eat me)」シグナル、すなわち、「自己改変(altered self)」と呼ばれるマーカーまたはリガンドを示し、これは次に食細胞上の受容体によって認識され得る。健康な細胞は、食作用を能動的に阻害する「ドントイートミー(don’t eat me)」シグナルを示すことができ、これらのシグナルはまた、死につつある細胞において下方制御されるか、異なる構造で存在するか、または「イートミー」もしくは食作用誘発性シグナルの上方制御によって取って代わられている。健康な細胞上の細胞表面タンパク質CD47、及びその食細胞受容体、SIRPαの結合は、アポトーシスによる細胞排除及びFcR媒介食作用を含む複数の様式により媒介される貪食を止めることができる、重要な「ドントイートミー」シグナルを構成する。食細胞上のSIRPαのCD47媒介性結合を遮断することは、「イートミー」シグナルを持つ生細胞の除去を引き起こすことができる。
【0002】
CD47は、単一のIg様ドメイン及び5つの膜貫通領域を有する、広範囲に発現する膜貫通糖タンパク質であり、SIRPαの細胞リガンドとして機能し、結合は、SIRPαのNH2末端V様ドメインにより媒介される。SIRPαは、マクロファージ、顆粒球、骨髄樹状細胞(DC)、マスト細胞、及び造血幹細胞を含むそれらの前駆体を含む骨髄性細胞上に主として発現する。CD47結合を媒介するSIRPα上の構造決定基は、Lee et al.(2007)J. Immunol.179:7741-7750、Hatherley et al.(2007)J.B.C.282:14567-75において論じられ、CD47結合におけるSIRPαシス二量体化の役割は、Lee et al.(2010)J.B.C.285:37953-63に論じられている。正常細胞の食作用を阻害するCD47の役割と一致して、それが造血幹細胞(HSC)及び前駆細胞上において、その移動段階の直前またはその間に一時的に上方制御され、これらの細胞上のCD47のレベルが、それらがインビボで貪食される確率を決定するという証拠が存在する。
【0003】
プログラム細胞死(PCD)及び食作用の細胞除去は、生物が損傷を受けた細胞、前がん性の細胞、または感染した細胞を除去するために応答する、共通の方法である。この宿主の応答を生き延びる細胞(例えば、がん細胞、慢性感染細胞等)は、PCD、及び/または食作用の細胞除去を回避する方法を工夫している。CD47、すなわち「ドントイートミー」シグナルは、多種多様な病的な細胞、がん細胞、及び感染細胞において構成的に上方制御され、これらの細胞が食作用を回避することを可能にする。細胞(例えば、がん細胞、感染細胞等)上のCD47と別の細胞(例えば、食細胞)上のSIRPαとの間の相互作用を遮断する抗CD47剤は、CD47発現の増加に対抗し、がん細胞及び/または感染細胞の食作用を促進する。したがって、抗CD47剤は、多種多様な状態/障害を治療及び/またはそれを防ぐために使用することができる。実際、抗CD47及び抗SIRPα遮断抗体は、インビボ及びインビトロにおいてがん細胞の食作用を大幅に増加させる。それらは、白血病から固形腫瘍にわたる広範囲のヒトがんを移植されたマウスの治療において有効であることが示されている。しかしながら、いくつかの場合において、抗CD47剤の初期の高用量が、マウス及び非ヒト霊長類(NHP)のモデルにおいて、赤血球(RBC)表面上のCD47に対する結合による用量依存的なRBCの損失を引き起こし得る。この貧血の重篤度が、治療有効性と関連する持続血清濃度を達成するために必要とされる、より高い用量の使用を妨げ得る。
【発明の概要】
【0004】
抗CD47剤の代替として、抗SIRPα抗体は、細胞型に関して比較的制限された発現プロファイルに関連する潜在的な利点を有する。抗SIRPα抗体の態様及びそれらの使用が本明細書において提供される。
【0005】
SIRPαに結合し、CD47とSIRPαとの相互作用を遮断する抗体に関する組成物及び方法が提供される。CD47-SIRPα経路を遮断することは、標的細胞の食作用を媒介し、非限定的に、がん特異的抗体、病原体特異的抗体等の他の細胞標的化剤と相乗作用することができる。驚くべきことに、エフェクター細胞に対する抗SIRPα抗体の活性は、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB1、FcγRIIB2、FcγRIIIA、FcγRIIIBの受容体1つ以上を非限定的に含む、エフェクター細胞表面上のFc受容体に、抗体が生産的に結合するとき、実質的に低減され得ることが示されている。有効性の低減は、患者の応答性の個体間の変動をもたらし得る。FcRn以外の1つ以上のFc受容体に対する結合を低減することによって生産的なFc受容体の結合を不可能にし、Fc受容体が単量体IgG及び/または多量体免疫複合体に結合すると、抗体の活性が回復し、改善された治療プロファイルを提供する。
【0006】
いくつかの実施形態において、(i)SIRPα、例えばヒトSIRPαに特異的に結合する可変領域、及び(ii)野生型Fc領域と比較して低減した、ヒトFcγ受容体を含むFc受容体に対する結合を有するFc領域を含むか、または機能的なFc領域を欠く抗体が提供される。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒトSIRPαに特異的に結合する。いくつかの実施形態において、抗体はヒトSIRP-βとヒトSIRPγとの1つまたは両方に結合する。他の実施形態において、抗体はヒトSIRP-βとヒトSIRPγとの1つまたは両方との実質的な結合を欠く。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒトSIRPαのV1及びV2のアイソタイプに特異的に結合する。いくつかのそのような実施形態において、Fc領域はヒトFc領域であり、ここでFcは、Fc受容体結合を低減するように1つ以上のアミノ酸の変更によって改変されている。抗体は、検出可能な標識によって標識され、固相上に固定化され、及び/または異種化合物とコンジュゲートしていてもよい。
【0007】
抗体はまた、特にがん抗原、免疫チェックポイント阻害剤、免疫共刺激アゴニスト、慢性感染の抗原等を含む第2の抗原に応答性である、二重特異性抗体または多重特異性抗体として提供されてもよい。いくつかの実施形態において、二重特異性抗原は、活性を有するFc領域を有する。
【0008】
いくつかの実施形態において、配列番号1に記述される重鎖可変領域と配列番号2に記述される軽鎖可変領域との1つまたは両方、またはそれらに由来する生物学的に活性なバリアントを含む、ヒト化抗SIRPα抗体が提供される。いくつかの実施形態において、抗体は、Fc領域を含み、そのFc領域は、任意選択で、Fc受容体に対する低減した結合を有するFc領域である。他の実施形態において、抗体はFc領域を欠き、例えば、F(ab)2 抗体として供給される。
【0009】
本発明の組成物及び方法は、ヒトの疾患の治療に使用でき、ここで抗SIRPα抗体は、例えば、標的細胞表面の抗原に結合する第2の抗体と組み合わせて、標的細胞の食作用を増加させる。例えばマクロファージを含む食細胞のエフェクター細胞は、多くのFcγ受容体を発現し、低減したFcR結合を有する抗SIRPα抗体の使用の恩恵を受ける。
【0010】
いくつかの実施形態において、例えばヒト対象の治療において使用するための医薬製剤が提供され、ここで製剤は、(i)SIRPα、例えばヒトSIRPαに特異的に結合する可変領域、及び(ii)Fc受容体、例えばヒトFcγ受容体に対する低減した結合を有するFc領域を含むか、または機能的なFc領域を欠く抗体を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒトSIRPαに特異的に結合する。いくつかの実施形態において、抗体はヒトSIRP-βとヒトSIRPγとの1つまたは両方に結合する。他の実施形態において、抗体はヒトSIRP-βとヒトSIRPγとの1つまたは両方との実質的な結合を欠く。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒトSIRPαのV1及びV2のアイソタイプに特異的に結合する。いくつかのそのような実施形態において、Fc領域はヒトFc領域であり、ここでFcは、Fc受容体結合を低減するように1つ以上のアミノ酸の変更によって改変されている。医薬製剤は、凍結乾燥された抗体を含み得、及び/または薬学的に許容可能な賦形剤を含み得る。医薬製剤は、単位用量として、例えば、希釈剤及び送達デバイス、例えば、吸入器、シリンジ等を伴う、単位用量での滅菌プレパックとして提供され得る。医薬組成物またはキットは、第2の抗原、例えばがん細胞マーカー、免疫チェックポイント阻害剤、免疫共刺激アゴニスト、慢性感染のマーカー等に結合する第2の抗体をさらに含み得る。
【0011】
対象の抗体は、様々な治療方法、例えば、ヒトにおけるCD47に関連する疾患、例えばがん、慢性感染、アテローム性動脈硬化、動脈瘤等の治療のための治療方法における使用を見出だす。いくつかの実施形態において、個体を有効量の本発明の抗体に接触させることを含み、ここで有効量が、本発明の抗体の食細胞への結合を提供し、それによってCD47を発現する標的細胞の食作用を増加させる、治療方法が提供される。治療は全身性または局所的であり得、例えば、腫瘍内注入等による送達等であり得る。
【0012】
本開示はさらに、抗体及びそれらのバリアントをコードする単離された核酸、任意選択で、ベクターで形質転換した宿主細胞によって認識される制御配列に制御可能に連結されたその核酸を含むベクター、そのベクターを含む宿主細胞、宿主細胞を培養し、核酸が発現するようにすること、及び任意選択で、宿主細胞培養物から(例えば、宿主細胞培地から)抗体を回収することを含む、抗体の産生プロセスを提供する。
【0013】
本発明は、添付の図面と併せて読まれるとき、以下の詳細な説明から最もよく理解される。慣例に従って、図面の様々な特徴は一定の縮尺ではないことが強調される。逆に、様々な特徴の寸法は、明確さのために任意に拡大または縮小されている。図面に含まれるものは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】抗CD47(Hu5F9-G4)またはマウス抗SIRPα(mKWAR)抗体の、抗CD20(リツキシマブ)抗体との組み合わせは、対照のIgG抗体またはリツキシマブ単独の治療と比較して、リンパ腫がん細胞(Raji)の食作用を増強させ、KWARのヒトIgGまたはヒトIgG4とのキメラ(マウス抗原結合領域、ヒト定常Fc領域)抗体バリアントは、機能しない(dead)FcとのキメラKWAR抗体と比較して、食作用増強効果を低下させることを示すパネルである。
【
図2-1】マクロファージ媒介性のRajiリンパ腫細胞の食作用を促進する、抗SIRPα抗体KWARとリツキシマブのバリアントの相乗効果を決定することを示すパネルA~Dである。
【
図2-2】マクロファージ媒介性のRajiリンパ腫細胞の食作用を促進する、抗SIRPα抗体KWARとリツキシマブのバリアントの相乗効果を決定することを示すパネルE~Jである。
【
図3】9B11及び7E11はリツキシマブと相乗作用してマクロファージ媒介性のRaji細胞の食作用を促進することを示すパネルA及びBである。
【
図4】ヒト化KWAR重鎖(パネルA)及びヒト化KWAR軽鎖(パネルB)のアミノ酸配列を示すパネルA及びBである。
【
図5】ヒト化KWARは治療用抗体と相乗作用して食作用を促進することを示すパネルA及びBである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の方法及び組成物を説明する前に、本発明は記載された特定の方法または組成物に限定されず、よって当然のことながら変化し得ることが理解されるべきである。本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを目的とするものではないことも理解されるべきである。
【0016】
一定の範囲の値が提供されるとき、文脈が他を明確に指示しない限り、その範囲の上限と下限との間における、各々の中間の値は、その下限の単位の10分の1まで本発明に包含される。任意の述べられる値の間の各々のより小さな範囲または述べられる範囲の中間の値、及びその述べられる範囲内の任意の他の述べられる値または中間の値は、本発明に包含される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は独立して、範囲内に含まれても排除されていてもよく、いずれかの限界、または両方の限界がより小さな範囲に含まれているか、両方の限界がより小さな範囲に含まれていない各々の範囲はまた、本発明に包含され、述べられる範囲の任意の具体的に排除される限界に従う。述べられる範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれた限界のいずれかまたは両方を除外する範囲はまた、本発明に含まれる。
【0017】
別途定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書において記載されているものと類似または同等の任意の方法及び物質は、本発明の実施または試験において使用することができるが、いくつかの考え得る、好ましい方法及び物質はここに記載される。本明細書において述べられた全ての刊行物は、共に刊行物が引用されている方法及び/または物質を開示及び記載するための参照により本明細書に組み込まれる。本開示は、矛盾がある限りにおいて、組み込まれた刊行物のいかなる開示にも優先することが理解される。
【0018】
本開示を読む当業者には明らかなように、本明細書に記載され図示された個別の実施形態の各々は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく他のいくつかの実施形態の特徴から容易に分離または組み合わされ得る個別の構成要素及び特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序で、または論理的に可能である任意の他の順序で実行され得る。
【0019】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含することは留意すべきである。したがって、例えば「細胞」に対する言及は、複数のそのような細胞を含み、「ペプチド」に対する言及は、1つ以上のペプチド及び当業者に公知のそれらの同等物、例えばポリペプチドを含むというような具合である。
【0020】
本明細書において述べられている刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示についてのみが提供されている。本明細書中のいかなるものも、先行発明のために、本発明がそのような刊行物に先行する権利がないということの承認として解釈されるべきではない。さらに、提示される公開日が、実際の公開日と異なることがあり得、それは、個別に確認する必要がある場合がある。
【0021】
用語「治療」、「治療すること」「治療する」等は、概して所望の薬理学的及び/または生理学的効果を得ることを指すために本明細書において使用される。効果は、疾患またはその病状(複数可)を完全にまたは部分的に予防することに関して予防的であり得、及び/または疾患及び/または疾患に起因する有害作用の部分的もしくは完全な安定化もしくは治癒に関して治療的であり得る。用語「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療を包含し、(a)疾患や病状にかかりやすいが、まだそれを有していると診断されていない対象において疾患及び/または病状(複数可)が生じることを予防すること、(b)疾患及び/または病状(複数可)を阻害すること、すなわちそれらの発症を阻止すること、または(c)疾患の病状(複数可)を緩和する、すなわち疾患及び/または病状(複数可)を後退させることを含む。治療の必要があるものは、すでに罹患しているもの(例えば、がんを有するもの、感染しているもの等)、及び予防が望ましいもの(例えば、がんに対する高い感受性を有するもの、感染の高い可能性を有するもの、がんがあると疑われるもの、感染があると疑われるもの等)を含む。
【0022】
治療的処置は、対象が投与前に罹患しているものであり、予防的処置は対象が投与前に罹患していないものである。いくつかの実施形態において、対象は、罹患する可能性が高いか、または治療前に罹患していると疑われる。いくつかの実施形態において、対象は、罹患する可能性が高いと疑われる。
【0023】
用語「レシピエント」、「個体」、「対象」、「宿主」、及び「患者」は、本明細書において交換可能に使用され、診断、治療または療法が望まれる任意の哺乳動物対象、特にヒトを指す。治療の目的に関して「哺乳動物」は、ヒト、家畜、農場の動物、及び動物園、スポーツ、またはペットの動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等を含む、哺乳動物であると分類される任意の動物を指す。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0024】
本発明において使用されるとき、用語「エピトープ」は、抗体のパラトープが結合する抗原上の任意の抗原決定基を意味する。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面群からなり、通常、特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を有する。
【0025】
本明細書で使用されるとき、用語「標識」は、抗体に直接または間接的にコンジュゲートしている検出可能な化合物または組成物を指す。標識はそれ自体で検出可能であり得(例えば放射性同位体標識または蛍光標識)、または酵素標識の場合には検出可能な基質化合物または組成物の化学的変化を触媒し得る。
【0026】
「固相」によって、本発明の抗体が付着することができる非水性マトリックスを意味する。本明細書に包含される固相の例は、ガラス(例えば制御細孔ガラス(controlled pore glass))、多糖類(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコーンから部分的または全体的に形成されたものを含む。ある特定の実施形態において、文脈に応じて、固相はアッセイプレートのウェルを構成することができ、他の場合において、それは精製カラム(例えばアフィニティークロマトグラフィーカラム)である。この用語はまた、米国特許第4,275,149号に記載されるもの等の離散粒子の不連続固相をも含む。
【0027】
用語「特異的結合」、「特異的に結合する」等は、溶液または反応混合物における、他の分子または部分と比較した、分子への非共有または共有の優先的な結合を指す(例えば、抗体は、他の利用可能なポリペプチドと比較して、特定のポリペプチドまたはエピトープに特異的に結合する)。いくつかの実施形態において、1つの分子の、それが特異的に結合する別の分子への親和性は、10-5M以下(例えば、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10 M以下、10-11 M以下、10-12 M以下、10-13 M以下、10-14 M以下、10-15 M以下、10-16 以下)のKd (解離定数)を特徴とする。「親和性」は、結合の強さを指し、増加する結合親和性は、低下するKd と相関する。
【0028】
本明細書において使用されるとき、用語「特異的結合メンバー」は、特異的結合の対(すなわち、分子の1つ、例えば第1の特異的結合メンバーが、他の分子、例えば第2の特異的結合メンバーに非共有結合の手段で特異的に結合する、2つの分子、通常2つの異なる分子)のメンバーを指す。
【0029】
Fc受容体
ヒトIgG受容体ファミリーは、hFcγRI、hFcγRIIA、hFcγRIIC、hFcγRIIIA、hFcγRIIB、hFcRIIIBを含む多くの受容体からなる。IgGはまた、IgGの再利用及び輸送に関与するFcRnに結合する。Fc受容体の活性化は、細胞表面において発現及び機能するためにFcRサブユニットを必要とし得る。他のFc受容体は、例えば、FcαRI(CD89)、Fcα/μR、FcεRI等を含む。Fc受容体の発現は、免疫エフェクター細胞間で変動する。hFcγRI(CD64)は、単球/マクロファージ及び樹状細胞(DC)に限定され、誘導されて好中球及び肥満細胞に発現し、hFcγRIIA(CD32A)は、全ての骨髄細胞に発現するがリンパ球に発現せず、hFcγRIIB(CD32B)は、循環B細胞及び好塩基球においてのみ高発現し、組織マクロファージ及びDCにおいて発現するが、肥満細胞において発現せず、hFcγRIIC(CD32C)は、NK細胞、単球、及び好中球において発現し、hFcγRIIIA(CD16A)は、NK細胞及び単球/マクロファージで発現し、hFcγRIIIB(CD16B)は、好中球、及び好塩基球のサブセットで発現する。
【0030】
血中の抗体の生物学的半減期に大きく寄与するFcRnは、抗原提示細胞、単球/マクロファージ、好中球、血管内皮細胞、腸上皮細胞、及び合胞体栄養膜細胞で発現する。
【0031】
Fcγ受容体は、IgGに対するそれらの親和性において異なり、そして同様に、異なるIgGサブクラスは、Fcγ受容体の各々に対して独自の親和性を有する。これらの相互作用は、例えばIgGのCH2-84.4の位置におけるグリカン(オリゴ糖)によってさらに調整される。例えば、立体障害を生じることによって、CH2-84.4グリカンを含有するフコースは、FcγRIIIAに対するIgGの親和性を低減する。
【0032】
Fcドメインまたは領域
抗体のFc領域は、その血清半減期、ならびに補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、及び抗体依存性細胞食作用(ADCP)等のエフェクター機能を媒介する。治療用モノクローナル抗体またはFc融合タンパク質のFc領域を遺伝子操作することは、それらに要求される薬理活性により良好に適した分子の産生を可能にする。IgGの半減期は、新生児受容体FcRnへのそのpH依存性結合に依存する。内皮細胞表面に発現するFcRnは、pH依存性の様式でIgGに結合し、それを分解から保護する。
【0033】
「野生型Fc領域」は、天然配列のFc領域のエフェクター機能を有し、特に、本発明の目的に関して、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB1、FcγRIIB2、FcγRIIIA、FcγRIIIB受容体等の1つ以上のFc受容体と相互作用し、例えば本明細書において定義で開示される様々なアッセイを用いて評価することができる。「機能しない(dead)」Fcは、例えば、FcRnとの相互作用を介して血清半減期を延長させることに関する活性を保持するが、非限定的に上記で列挙されるようなヒトFcγRを含む1つ以上の他のFc受容体(複数可)への結合が低減されるかまたは不存在であるように変異されたものである。
【0034】
「天然配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域は、天然配列ヒトIgG Fc領域(非A及びAアロタイプ)、天然配列ヒトIgG2 Fc領域、天然配列ヒトIgG3 Fc領域、及び天然配列ヒトIgG4 Fc領域、ならびに天然に存在するそれらのバリアントを含む。
【0035】
「バリアントFc領域」または「遺伝子操作を受けたFc領域」は、天然配列Fc領域のものとは、少なくとも1つのアミノ酸修飾のために、好ましくは1つ以上のアミノ酸置換(複数可)のために、異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、バリアントFc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比べて少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域において、または親ポリペプチドのFc領域において約1つ~約10個のアミノ酸置換、及び好ましくは約1つ~約5つのアミノ酸置換を有する。本明細書におけるバリアントFc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域及び/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも80%の相同性、最も好ましくはそれらと少なくとも90%の相同性、より好ましくはそれらと少なくとも95%の相同性を有する。
【0036】
「機能しないFc」のバリアントFc配列は、EUインデックス位置234、235、及び237におけるFcγRIを低減するCH2領域における3つのアミノ酸置換を含み得る(Duncan et al.,(1988)Nature332:563を参照)。EUインデックス位置330及び331における補体C1q結合部位における2つのアミノ酸置換は、補体結合を低減する(Tao et al., J. Exp. Med.178:661(1993)、及びCanfield and Morrison, J. Exp. Med.173:1483(1991)を参照)。IgG2の233~236の位置の残基、ならびにIgG4の327、330、及び331の位置の残基の、ヒトIgG1に対する置換は、ADCC及びCDCを大幅に低減する(例えば、Armour KL. et al.,1999 Eur J Immunol. 29(8):2613-24、及びShields RL. et al.,2001.J Biol Chem.276(9):6591-604を参照)。
【0037】
IgGのFcγRまたはC1qに対する結合は、ヒンジ領域及びCH2ドメインに位置する残基に依存する。CH2ドメインの2つの領域は、FcγR及びC1qの結合にとって極めて重要であり、IgG2及びIgG4において特有の配列を有する。ヒトIgG1またはIgG2の233~236の位置の残基ならびにIgG4の327、330、及び331の位置の残基に対する置換は、ADCC及びCDCを大幅に低減する。ヒトIgG1のCH2ドメインにおいて数多くの変異がなされている。
【0038】
三重アミノ酸置換、L234A、L235A、及びG237Aは、FcγR及び補体エフェクター機能を大幅に除去する(例えばUS20100266505を参照)。
【0039】
いくつかの実施形態において、Fc領域は、天然のタンパク質と比べて低減したグリコシル化及びFcγRへの結合を有するために、発現宿主の選択、アミノ酸置換の酵素処理によって改変されている。FcγRへの結合を低減する変異は、非限定的に、最適なFcR相互作用に必要であることが知られている、Fcドメインのアスパラギン297上のグリコシル化の修飾を含む。例えば、既知のアミノ酸置換は、N297変異、例えば、N297A/Q/D/H/G/Cを含み、これらの変化はタンパク質のグリコシル化部位の喪失をもたらす。酵素的に脱グリコシル化したFcドメイン、グリコシル化阻害剤の存在下で組換え発現された抗体、及び細菌におけるFcドメインの発現は、グリコシル化、及び続くFcγRへの結合の同様の喪失を有する。
【0040】
LALA変異、L234A/L235Aはまた、E233P/L234V/L235A/G236+A327G/A330S/P331Sのような、大幅に低減したFcγR結合を有する。例えば、Armour et al.(1999)Eur J Immunol.29(8):2613-24を参照のこと。一連の変異:K322A、L234A、及びL235Aは、FcγR及びC1qの結合をほぼ完全に無効にするために十分である。一連の3つの変異、L234F/L235E/P331S(TMと呼ばれる)は、非常に類似した効果を有する。
【0041】
ジスルフィド結合を形成することができる領域が欠失されているもの、または、天然Fc形態のN末端においてある特定のアミノ酸残基が除外されているか、またはメチオニン残基がそこに付加されているものを非限定的に含む、他のFcバリアントもまた可能である。
【0042】
Fcは、天然糖鎖を有する形態、天然形態と比べて増加した糖鎖を有する形態、もしくは天然形態と比べて減少した糖鎖を有する形態であり得、またはグリコシル化されていないかもしくは脱グリコシル化された形態であり得る。糖鎖の増加、減少、除去、または他の改変は、化学的方法、酵素的方法等の当該技術分野において一般的な方法によって、またはそれを、遺伝的に操作を受けた産生細胞株において発現することによって、達成することができる。そのような細胞株は、微生物、例えば、Pichia Pastoris、及び、グリコシル化酵素を通常発現している哺乳動物細胞株、例えばCHO細胞を含み得る。さらに、微生物または細胞は、グリコシル化酵素を発現するように遺伝子操作を受け得るか、または、グリコシル化酵素を発現することができないようにされ得る(例えば、Hamilton, et al., Science,313:1441(2006)、Kanda, et al, J. Biotechnology,130:300(2007)、Kitagawa, et al., J. Biol. Chem.,269(27):17872(1994)、Ujita-Lee et al., J. Biol. Chem.,264(23):13848 (1989)、Imai-Nishiya, et al, BMC Biotechnology 7:84(2007)、及びWO07/055916を参照)。改変されたシリル化活性を有するように遺伝子操作を受けた細胞の1つの例として、α-2,6-シリルトランスフェラーゼ1遺伝子がチャイニーズハムスター卵巣細胞及びsf9細胞内で遺伝子操作されている。したがって、これらの遺伝子操作を受けた細胞によって発現される抗体は、外来性遺伝子産物としてシリル化されている。複数の天然分子と比べて改変された量の糖残基を有するFc分子を得るためのさらなる方法は、例えば、レクチン親和性クロマトグラフィーを用いて上記複数の分子をグリコシル化及び非グリコシル化画分へと分離することを含む(例えばWO07/117505を参照)。特定のグリコシル化部分の存在は、免疫グロブリンの機能を改変することが示されている。例えば、Fc分子からの糖鎖の除去は、第1の補体成分C1のC1q部分に対する結合親和性の急激な低下、及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)または補体依存性細胞傷害(CDC)における低下または喪失をもたらし、これによってインビボでの不要な免疫応答を誘導しない。さらなる重要な改変は、シリル化及びフコシル化を含み、IgGにおけるシアル酸の存在は、抗炎症性活性と相関しており(例えば、Kaneko, et al, Science 313:760(2006)を参照)、一方で、IgGからのフコースの除去は、増強されたADCC活性をもたらす(例えば、Shoj-Hosaka, et al, J. Biochem.,140:777(2006)を参照)。
【0043】
用語「Fc領域含有抗体」は、Fc領域を含む抗体を指す。例えば、抗体の精製の最中に、または抗体をコードする核酸の組換え操作によって、Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムによる残基447)を除去することができる。したがって、本発明によるFc領域を有する抗体は、K447を有するかまたは有しない抗体を含み得る。
【0044】
免疫グロブリンとも呼ばれる抗体は、少なくとも1つの重鎖及び1つの軽鎖を含み、ここで、重鎖及び軽鎖のアミノ末端ドメインは配列において可変であり、それゆえ、一般的に、可変領域ドメイン、または可変重鎖(VH)ドメインもしくは可変軽鎖(VH)ドメインと呼ばれる。2つのドメインは、一般的に会合して特異的結合領域を形成するが、本明細書において論じられるように、特異的な結合は、可変配列のみの重鎖によって得ることもでき、様々な非天然の構成の抗体が当該技術分野において知られ、使用されている。
【0045】
本明細書において述べられるとき、「治療用」抗体は、患者の治療に好適な抗体、すなわち、治療用用途、例えばヒト対象の治療に適切な文脈でインビボ活性を有する抗体を指す。いくつかの実施形態において、治療用抗体は、標的細胞の表面上に存在する抗原、例えば、腫瘍特異的抗体、病原体特異的抗体等に結合する抗体を指し得る。そのような治療用抗体は、抗SIRPα抗体と組み合わせて、標的細胞の食作用を増強することができる。
【0046】
本明細書における用語「抗体」は、最も広い意味において使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単量体、二量体、多量体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、重鎖のみ抗体、三本鎖抗体、単一鎖Fv、ナノボディ等を具体的に包含し、所望の生物活性を示す限り抗体フラグメントをも含む(Miller et al(2003)Jour. of Immunology 170:4854-4861)。例えば、F(ab’)2 フラグメントは、抗SIRPα抗体のフォーマットとして対象のものである。抗体は、マウス、ヒト、ヒト化、キメラであってよく、または他の種由来であってもよい。多くの目的のために、本発明の抗体は、ヒトの遺伝子操作を受けたFc領域を含む。
【0047】
用語、「抗体」は、全長重鎖、全長軽鎖、無傷の免疫グロブリン分子、または任意のそれらのポリペプチドの免疫学的に活性な部分を指し得る。本明細書において開示される免疫グロブリンは、免疫グロブリン分子の任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、またはサブクラスであり得、低減したエフェクター細胞活性を提供する遺伝子操作を受けたFc部分を有する改変されたサブクラスを含む。免疫グロブリンは任意の種由来であり得る。一態様において、免疫グロブリンは大部分がヒト起源であるもの、ヒト化されたもの、またはヒトFc領域に関してキメラ化したものである。
【0048】
用語「可変」は、可変ドメインの特定の部分が抗体間で配列において大幅に異なり、その特定の部分が、その特定の抗原に対する各々の特定の抗体の結合及び特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって、均等に分布していない。可変性は、軽鎖と重鎖との可変ドメインの両方の超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度の保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、主としてβ-シート構造を採用し、3つのループ状連結を形成し、場合によりβ-シート構造の部分を形成する3つの超可変領域によって連結される4つのFRを含む。各々の鎖中の超可変領域は、FRによって、他の鎖からの超可変領域と共に近接して保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al (1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.を参照)。
【0049】
本明細書において使用されるとき、用語「超可変領域」は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」もしくは「CDR」からのアミノ酸残基、及び/または「超可変ループ」からのそれらの残基を含み得る。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書に定義されるような、超可変領域残基以外の可変ドメインの残基である。
【0050】
対象の可変領域は、抗SIRPα抗体の可変領域の軽鎖及び重鎖からの少なくとも1つのCDR配列、通常少なくとも2つのCDR配列、より通常は3つのCDR配列を含む。当業者は、配列可変性に基づき、最も一般に使用されるKabatの定義(「Zhao et al. A germline knowledge based computational approach for determining antibody complementarity determining regions.」Mol Immunol.2010;47:694-700を参照)を含む、多くのCDRの定義が一般的に使用されることを理解する。Chothia定義は、構造的ループ領域の位置に基づく(Chothia et al.「Conformations of immunoglobulin hypervariable regions.」Nature.1989;342:877-883)。対象のCDRの代替的な定義は、Honegger,「Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains: an automatic modeling and analysis tool.」J Mol Biol.2001;309:657-670、Ofran et al.「Automated identification of complementarity determining regions (CDRs) reveals peculiar characteristics of CDRs and B cell epitopes.」J Immunol.2008;181:6230-6235、Almagro「Identification of differences in the specificity-determining residues of antibodies that recognize antigens of different size: implications for the rational design of antibody repertoires.」J Mol Recognit.2004;17:132-143、及び、Padlanet al.「Identification of specificity-determining residues in antibodies.」Faseb J. 1995;9:133-139に開示されるものを非限定的に含み、その各々は参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0051】
本明細書において使用されるとき、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集合より取得される抗体、すなわち集合を構成する個別の抗体が、少量で存在し得る起こりうる自然発生の変異を除いて同一であるものを指す。モノクローナル抗体は、高い特異性があり、単一の抗原部位を標的とする。さらに、異なる決定基(エピトープ)を標的とする異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤と比較して、各々のモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を標的とする。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の抗体による混入がなく合成できるという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集合より取得されるという抗体の特性を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。
【0052】
本明細書における抗体は、「キメラ」抗体であり、重鎖及び/または軽鎖の一部分が、特定の種由来の抗体中または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるかまたは相同であり、鎖(複数可)の残余の部分が、別の種由来の抗体中または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるかまたは相同である「キメラ」抗体、ならびに、所望の生物活性を示す限り、そのような抗体のフラグメントを具体的に含む(米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al(1984)Proc. Natl. Acad. Sci. USA,81:6851-6855)。本明細書における対照のキメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば、旧世界猿、類人猿等)に由来する可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列とを含む「霊長類化」抗体を含む。
【0053】
本明細書において使用されるとき、「無傷の抗体鎖」は、全長可変領域と全長定常領域とを含むものである。無傷の「標準的な」抗体は、分泌IgGについて、無傷の軽鎖及び無傷の重鎖、ならびに軽鎖定常ドメイン(CL)及び重鎖定常ドメイン、CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3を含む。IgMまたはIgA等の他のアイソタイプは、異なるCHドメインを有し得る。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列の定常ドメイン)、またはそれらのアミノ酸配列バリアントであり得る。
【0054】
「Fv」は、完全な抗原認識部位と抗原結合部位とを含む最小の抗体フラグメントである。本発明のCD3結合抗体は、強い非共有結合にある1つの重鎖と1つの軽鎖可変ドメインとの二量体を含むが、例えば、多重特異性の構成における使用のための追加の抗体は、VL配列が非存在であるVHを含み得る。単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つの超可変領域のみを含むFvの半分)でさえも、抗原を認識し結合する能力を有するが、親和性は2つのドメイン結合部位のものよりも低いものであり得る。
【0055】
Fabフラグメントはまた、軽鎖の定常ドメインと、重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)とを含む。Fab’フラグメントは、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端において、抗体ヒンジ領域由来の一または複数のシステインを含むいくつかの残基を付加している点でFabフラグメントとは異なる。Fab’-SHは、本明細書において、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が少なくとも1つの遊離チオール基を有するFab’の表示である。F(ab’)2 抗体フラグメントは、元来、それらの間のヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として生産された。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも知られている。
【0056】
非ヒト(例えばげっ歯動物)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むキメラ抗体である。例えば、Jones et al,(1986)Nature 321:522-525、Chothia et al(1989)Nature 342:877、Riechmann et al(1992)J. Mol. Biol.224,487-499、Foote and Winter,(1992)J. Mol. Biol.224:487-499、Presta et al(1993)J. Immunol.151,2623-2632、Werther et al(1996)J. Immunol. Methods 157:4986-4995、及び、Presta et al(2001)Thromb. Haemost. 85:379-389を参照のこと。さらなる詳細については、米国特許第5,225,539号、米国特許第6,548,640号、米国特許第6,982,321号、米国特許第5,585,089号、米国特許第5,693,761号、米国特許第6,407,213号、Jones et al(1986)Nature,321:522-525、及びRiechmann et al(1988)Nature 332:323-329を参照のこと。
【0057】
さらに、本明細書において使用されるとき、用語「抗体」は、適切な実施形態において(他が述べられていないか、または文脈から他が明らかでない限り)、代替的な提示において抗体の構造及び機能的特徴を使用するための、任意の公知の、または開発されたコンストラクトまたはフォーマットを指す。例えば、実施形態、すなわち本発明によって使用される抗体は、無傷のIgG、IgE、及びIgM、二重または多重特異性抗体(例えば、Zybodies(登録商標)等)、単一鎖Fvs、ポリペプチド-Fc融合、Fab、ラクダ抗体、マスクされた抗体(例えば、Probodies(登録商標))、小モジュール免疫薬(Small Modular ImmunoPharmaceuticals、「SMIP(商標))単一鎖またはタンデムジアボディ(TandAb(登録商標))、VHH、Anticalins(登録商標)、ナノボディ(登録商標)、ミニボディ、BiTE(登録商標)、アンキリンリピートまたはDARPIN(登録商標)、Avimers(登録商標)、DART、TCR様抗体、アドネクチン(登録商標)、Affilins(登録商標)、トランスボディ(登録商標)、アフィボディ(登録商標)、TrimerX(登録商標)、マイクロタンパク質、Fynomers(登録商標)、Centyrins(登録商標)、及びKALBITOR(登録商標)を含むがこれらに限定されないフォーマットにある。いくつかの実施形態において、抗体は、天然に産生される場合に有するであろう共有結合修飾(例えば、グリカンの付着)を欠き得る。いくつかの実施形態において、抗体は、共有結合修飾(例えば、グリカン、ペイロード、例えば検出可能な部分、治療用部分、触媒部分等)、または他のペンダント基(例えばポリエチレングリコール等)の付着を含み得る。
【0058】
例示的な抗体剤は、ヒト抗体、霊長類化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、コンジュゲート抗体(すなわち、他のタンパク質、放射性標識、サイトカインにコンジュゲートまたは融合された抗体)、小モジュール免役薬(Small Modular ImmunoPharmaceuticals、「SMIP(商標))、単一鎖抗体、ラクダ抗体、及び抗体フラグメントを含むがこれらには限定されない。本明細書において使用されるとき、用語「抗体剤」はまた、無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一ドメイン抗体(例えば、サメ単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはそれらのフラグメント))、少なくとも2つの無傷の抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び、所望の生物活性を示す限り抗体フラグメントをも含む。いくつかの実施形態において、用語は、ステープルペプチド(stapled peptide)を包含する。いくつかの実施形態において、用語は、1つ以上の抗体様結合ペプチド模倣薬を包含する。いくつかの実施形態において、用語は、1つ以上の抗体様結合スキャフォールドタンパク質を包含する。いくつかの実施形態において、用語は、モノボディまたはアドネクチンを包含する。
【0059】
本明細書において使用されるとき、「抗体フラグメント」及び全てのそれらの文法的変形は、無傷の抗体の抗原結合部位または可変領域を含む無傷の抗体の部分として使用され、ここで部分は、無傷の抗体のFc領域の定常重鎖ドメイン(すなわち、抗体のアイソタイプに応じてCH2、CH3、及びCH4)を含まない。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2 、及びFvフラグメント、ジアボディ、非限定的に、(1)単一鎖Fv(scFv)分子、(2)会合した重鎖部分を有さない、1つの軽鎖可変ドメインのみを含む単一鎖ポリペプチドまたは軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含むそれらのフラグメント、及び(3)会合した軽鎖部分を有さない、1つの重鎖可変領域のみを含む単一鎖ポリペプチドまたは重鎖可変領域の3つのCDRを含むそれらのフラグメントを含む、連続的アミノ酸残基の1つのとぎれない配列(本明細書において、「単一鎖抗体フラグメント」または「単一鎖ポリペプチド」と呼ばれる)からなる一次構造を有するポリペプチドである任意の抗体フラグメント、ならびに、抗体フラグメントから形成される多重特異性または多価構造を含む。1つ以上の重鎖を含む抗体フラグメントにおいて、重鎖(複数可)は、無傷の抗体の非Fc領域に見出される任意の定常ドメイン配列(例えば、IgGアイソタイプ中のCH1)を含み得、及び/または無傷の抗体に見出される任意のヒンジ領域配列を含み得、及び/または重鎖(複数可)のヒンジ領域配列または定常ドメイン配列に融合するかまたはその中に位置するロイシンジッパー配列を含み得る。
【0060】
逆のことが特段に示されない限り、本明細書において、記載及び請求されるとき、用語「コンジュゲート」は、1つ以上の抗体フラグメント(複数可)の1つ以上のポリマー分子(複数可)への共有結合によって形成される不均質な分子として定義され、ここで不均質な分子は水溶性、すなわち、血液等の生理的液体に可溶であり、ここで不均質な分子は、いかなる構造化凝集体も含まない。対象のコンジュゲートはPEGである。先行する定義に関連して、用語「構造化凝集体」は、(1)スフェロイドまたはスフェロイドシェル構造を有する水溶液中の任意の分子の凝集体であって、不均質な分子が、ミセルまたは他のエマルション構造にあらず、脂質二重膜、小胞、またはリポソームに係留されていないもの、及び(2)クロマトグラフィービーズマトリックス等の固体または不溶化形態の分子の任意の凝集体であって、水相との接触の際に不均質な分子を溶液中に放出しないものを指す。したがって、用語「コンジュゲート」は、本明細書において定義されるとき、沈殿物、沈降物、生体内分解性マトリックスまたはその他の固体であって、固体の水和の際に不均質な分子を水溶液中に放出することができるものの中にある上述の不均質な分子を包含する。
【0061】
本明細書における抗SIRPα抗体は、重鎖及び/または軽鎖の一部分が、特定の種由来の抗体中または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるかまたは相同であり、鎖(複数可)の残余の部分が、別の種由来の抗体中または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるかまたは相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を具体的に含み、そして、所望の生物活性を示す限り、そのような抗体のフラグメントを具体的に含む。
【0062】
「単離された」抗体は、その天然の環境の構成要素で同定され、分離され、及び/またはそこから回収されているものである。その天然環境の混入構成要素は、抗体の診断または治療用用途と干渉する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質の、または非タンパク質の溶質を含み得る。いくつかの実施形態において、抗体は、(1)Lowry法により決定されるとき、75重量%を超える、最も好ましくは80重量%、90重量%または99重量%を超える抗体となるように、または(2)クマシーブルー、または好ましくは銀染色を用いて、還元または非還元の条件下でのSDS-PAGEにより均一となるように、精製される。単離された抗体は、抗体の天然の環境の少なくとも1つの構成要素が存在しないので、組換え細胞内のその場での抗体を含む。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0063】
用語「エピトープタグ付けされた」は、本明細書において使用されるとき、「エピトープタグ」に融合された抗SIRPα抗体(またはフラグメント)を指す。エピトープタグポリペプチドは、それに対して抗体を作製することができるエピトープを提供するために十分であるが、抗SIRPα抗体の活性と干渉することがないように十分に短い残基を有する。エピトープタグは、好ましくは、エピトープに特異的である抗体が、実質的に他のエピトープと交差することがないように十分に特有である。好適なタグポリペプチドは概して、少なくとも6つのアミノ酸残基を有し、通常、約8つ~50個のアミノ酸残基の間(好ましくは約9つ~30個の残基の間)である。例は、c-mycタグ、ならびに、それらに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7、及び9E10抗体(Evan et al., Mol. Cell. Biol.5(12):3610-3616(1985))、ならびに単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体(Paborsky et al., Protein Engineering3(6):547-553(1990))を含む。さらなる例は、「ヒスチジンタグ」または「ヒスチジンリッチ親和性ペプチド」であり、それは、ヒスチジンが豊富である金属イオン親和性ペプチドである(例えば、6×Hisタグ、HATタグ、6×HNタグ等)。ヒスチジンタグはまた、抗His抗体に特異的に結合できる。
【0064】
SIRPα1(PTPNS1、SHPS1)は、主に骨髄細胞及び神経細胞に発現する膜貫通糖タンパク質である。SIRPαは、広く分布する膜タンパク質CD47と相互作用する。SIRPαに加えて、SIRPファミリーにおいて、2つの密接に関連するタンパク質:SIRPβ及びSIRPγが存在する。3つともすべてが、それらの細胞外領域に3つの免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)ドメインを有する。ヒトにおいて、SIRPαタンパク質は2つの主要な形態で見出される。1つの形態、すなわちバリアント1またはV1形態は、NCBI RefSeq NP_542970.1として示されているアミノ酸配列を有する(残基27~504は成熟型を構成する)。別の形態、すなわちバリアント2またはV2形態は、13個のアミノ酸と異なり、GenBankにおいてCAA71403.1として示されているアミノ酸配列を有する(残基30~504は成熟型を構成する)。これらのSIRPαの2つの型は、ヒトに存在するSIRPαの型の約80%を構成し、両方とも、本明細書において、用語「ヒトSIRPα」に包含される。ヒトに内在性であり、CD47に結合する際に、CD47を通じてシグナル伝達を誘発する同一の特性を有するそれらの主要でない形態もまた、用語「ヒトSIRPα」に包含される。ヒトSIRPaバリアントの配列は、公的なデータベースを通じてアクセスすることができ、Genbank受入番号:ref|NP_542970.1、gb|EAX10606.1、ref|XP_005260726.1、gb|EAX10606.1、XP_005260726.1、gb|EAX10611.1、gb|EAX10609.1、dbj|BAA12974.1、gb|AAH26692.1、ref|XP_011527475.1を含む。例えば、Lee et al.(2007)J. Immunol.179(11):7741-7750を参照でき、参照により、本明細書に具体的に組み込まれる。
【0065】
ヒトSIRPaに特異的に結合する抗体は、当該技術分野において公知であり、使用され、本明細書に開示されるように遺伝子操作を受けたFc領域の使用に適合され得る。例示的な抗体は、国際特許出願WO2015/138600、米国特許出願公開第2014/0242095号(University Health Networks)、中国特許出願公開CN103665165(JIANGSU KUANGYA BIOLOGICAL MEDICAL SCIENCE & TECHNOLOGY、Zhao XW et al. Proc Natl Acad Sci U S A108:18342-7(2011)に開示されるものを含み、各々は参照により本明細書に具体的に組み込まれる。抗SIRPα抗体は、汎特異的、すなわち、2つ以上の異なるヒトSIRPαのアイソフォームに結合するものであり得るか、または1つのアイソフォームに特異的であり得る。例えば、Zhangらによって記載される抗体1.23Aは、SIRPα1バリアントに特異的であると報告され、一方で、12C4抗体は汎特異的である。抗SIRPα抗体はまた、SIRPαに特異的であり得、かつSIRPβ及び/またはSIRPγへの結合を欠き得る。抗SIRPa抗体は、SIRPβ及び/またはSIRPγに関して汎特異的であり得る。
【0066】
用語「共投与」、「共投与する」、及び「~と組み合わせて」は、同時の、並行した、または非特定の制限時間内の連続的な、2つ以上の治療薬の投与を含む。一実施形態において、剤は、細胞内または対象の生体内に同時に存在するか、またはそれらの生物学的または治療的な効果を同時に発揮する。一実施形態において、治療薬は、同一の組成物または単位剤形中にある。他の実施形態において、治療薬は別個の組成物または単位剤形中にある。ある特定の実施形態において、第1の剤は、第2の剤の投与の前に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前に)、投与され得るか、または、第2の剤の投与と並行して、または第2の剤の投与に続いて(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後に)、投与され得る。
【0067】
抗SIRPα抗体は、標的細胞に選択的に結合する第2の抗体または剤と組み合わせて治療に使用され得る。用語「標的細胞」は、文脈に応じて種々の方法で使用できる。典型的には「標的細胞」は、食細胞(例えば、食細胞)によって食作用される細胞であり、ここで食作用は、対象に抗SIRPα抗体を投与することの結果として増強されている。したがって、用語「標的細胞」は、対象の抗SIRPα抗体が、CD47発現細胞とSIRPα発現食細胞との間の相互作用を阻害することによってCD47発現細胞の食作用を促進するので、CD47発現細胞を指し得る。
【0068】
しかしながら、いくつかの場合において、対象の多重特異性抗体に関して、標的細胞の食作用を誘導するために、標的細胞が高レベルのCD47を発現する必要はない(いくつかの場合において、CD47を発現している必要がまったくない)。例えば、多重特異性(例えば二重特異性)抗体に関連して、対象の多重特異性(例えば、二重特異性)抗体のSIRPα結合領域(第1の結合領域)は、食細胞(例えば、マクロファージ)上のSIRPαに結合し、これは、多重特異性抗体第2の結合領域(例えば、二重特異性抗体の第2の結合領域)によって認識される(特異的に結合される)抗原(例えば、がん細胞のマーカー)を発現する細胞の近隣に食細胞を移動させるためのテザーとして多重特異性抗体が作用することを可能にする。したがって、多重特異性抗体に関連して、標的細胞は、高レベルのCD47を発現していない細胞であり得る(CD47を発現していない細胞でもあり得る)。いくつかの実施形態において、標的細胞は哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞である。標的細胞は、以下に記載されるような任意の個体(例えば、患者、対象等)であり得る。
【0069】
いくつかの場合において、標的細胞は、「罹患した」細胞(例えば、「罹患した」個体由来の細胞)であり、ここで用語「罹患した」は、対象の抗SIRPα抗体によって治療することができる病状、疾病、または疾患を有する対象を指すために本明細書において使用される。「罹患した」対象は、がんを有し得、感染を内部に有し得(例えば、慢性感染)、及び/または他の過剰増殖状態、例えば、硬化症、線維症等を有し得る。非限定的に、動脈瘤、アテローム性動脈硬化等を含む心血管疾患の治療における使用もまた対象である。「罹患した細胞」は、病状、疾病、または疾患を引き起こす細胞であり得る。非限定的な例として、罹患した患者の罹患した細胞は、CD47発現のがん細胞、感染細胞、炎症細胞、免疫細胞等であり得る。疾病または疾患が対象の抗SIRPα抗体によって治療され得るという1つの指標は、関与する細胞(すなわち、罹患した細胞、例えばがん細胞、感染細胞、炎症細胞、免疫細胞等)がCD47を発現する(例えば、いくつかの場合において、同一の細胞型の正常細胞と比較して増加したCD47のレベル)ことである。
【0070】
がんの治療のために、抗SIRPα抗体は、腫瘍抗原に特異的な1つ以上の抗体と組み合わせてもよい。これらの中で、腫瘍関連抗原(TAA)は、比較的腫瘍細胞に限定されるが、腫瘍特異的抗原(TSA)は、腫瘍細胞に特有である。TSA及びTAAは、典型的には、主要組織適合遺伝子複合体の一部として細胞表面上に発現する細胞内分子の部分である。
【0071】
組織特異的分化抗原は、腫瘍細胞上及びそれらの正常細胞の同等物上に存在する分子である。治療用mAbによって認識されることが知られている腫瘍関連抗原は、いくつかの異なる分類に含まれる。造血分化抗原は、通常、分化クラスター(CD)分類と関連する糖タンパク質であり、CD20、CD30、CD33及びCD52を含む。細胞表面分化抗原は、正常細胞と腫瘍細胞との両方の表面に見られる糖タンパク質及び炭水化物の多様な群である。増殖及び分化のシグナル伝達に関与する抗原は、しばしば増殖因子及び増殖因子受容体である。がん患者において抗体の標的である増殖因子は、CEA、上皮増殖因子受容体(EGFR、ERBB1としても知られる)、ERBB2(HER2としても知られる)、ERBB3、MET(HGFRとしても知られる)、インスリン様増殖因子1受容体(IGF1R)、エフリン受容体A3(EPHA3)、腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘導性リガンド受容体1(TRAILR1、TNFRSF10Aとしても知られる)、TRAILR2(TNFRSF10Bとしても知られる)及び核内因子κB活性化受容体リガンド(RANKL、TNFSF11としても知られる)を含む。血管新生に関与する抗原は、通常、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGF受容体(VEGFR)、インテグリンαVβ3及びインテグリンα5β1を含む、新しい微小血管系の形成を支えるタンパク質または増殖因子である。腫瘍間質及び細胞外マトリックスは、腫瘍にとって不可欠な支持構造である。治療標的である間質及び細胞外マトリックスの抗原は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)及びテネイシンを含む。
【0072】
二重特異性の構成において、または併用療法として有用な治療用抗体の例は、非限定的に、リツキシマブ、イブリツモマブ、チウキセタン、トシツモマブ、ブレンツキシマブ、ベドチン、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、アレムツズマブ、IGN101、アデカツムマブ、ラベツズマブ、huA33、ペムツモマブ、オレゴボマブ、CC49(ミンレツモマブ(minretumomab))、cG250、J591、MOv18、MORAb-003(ファーレツズマブ)、3F8、ch14.18、KW-2871、hu3S193、IgN311、ベバシズマブ、IM-2C6、CDP791、エタラシズマブ、ボロシキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ニモツズマブ、806、トラスツズマブ、ペルツズマブ、MM-121、AMG 102、METMAB、SCH 900105、AVE1642、IMC-A12、MK-0646、R1507、CP 751871、KB004、IIIA4、マパツズマブ(HGS-ETR1)、HGS-ETR2、CS-1008、デノスマブ、シブロツズマブ、F19、及び81C6を含む。二重特異性抗体は、Fcγ受容体を活性化するFc領域を使用し得る。
【0073】
がんの治療のために、抗SIRPα抗体は、免疫チェックポイントタンパク質を阻害する1つ以上の抗体と組み合わせてもよい。特に興味深いものは、腫瘍細胞表面上に提示される免疫チェックポイントタンパク質である。臨床がん免疫療法に関連して最も活発に研究されている免疫チェックポイント受容体である、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4、CD152としても知られる)、及びプログラム細胞死タンパク質1(PD1、CD279としても知られる)は、いずれも阻害性受容体である。これらの受容体のいずれかを遮断する抗体の臨床活性は、抗腫瘍免疫が複数のレベルで増強され得ること、及び機序の考察と前臨床モデルとに誘導されて、組み合わせ戦略を論理的に設計することができることを暗示する。
【0074】
PD1に対する2つのリガンドは、PD1リガンド1(PDL1、B7-H1及びCD274としても知られる)とPDL2(B7-DC及びCD273としても知られる)とである。PDL1はがん細胞において発現し、T細胞上のその受容体PD1への結合を介して、T細胞活性化/機能を阻害する。例えば、治療用抗体としてのアベルマブを参照できる。
【0075】
免疫共刺激分子をアゴナイズする剤はまた、本発明の方法において有用である。そのような剤はアゴニストまたはCD40及びOX40を含む。CD40は、抗原提示細胞(APC)上に見られる共刺激タンパク質であり、それらの活性化に必要である。これらのAPCは食細胞(マクロファージ及び樹状細胞)、ならびにB細胞を含む。CD40は、TNF受容体ファミリーの一部である。CD40の一次活性化シグナル伝達分子は、IFNγ及びCD40リガンド(CD40L)である。CD40を介した刺激はマクロファージを活性化する。
【0076】
対象の抗CCR4(CD194)抗体は、潜在的な抗炎症性及び抗新生物の活性を有する、C-Cケモカイン受容体4(CCR4)に対するヒト化モノクローナル抗体を含む。
【0077】
対象の抗SIRPα抗体によって治療できる病状、疾病、及び/または疾患の例は、がん(がん腫、軟部組織腫瘍、肉腫、奇形腫、黒色腫、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、固形腫瘍、中皮腫(MSTO)等を含むがこれらに限定されない任意の形態のがん)、感染(例えば、慢性感染)、及び免疫学的疾患または障害(例えば、炎症疾患)(例えば、多発性硬化症、関節炎等、例えば、免疫抑制療法のためのもの)を含むがこれらには限定されない。対象の抗SIRPα抗体は、移植前処置(例えば、幹細胞移植、骨髄移植等)(例えば、悪性細胞を破壊するため、患者の生体がドナーの細胞/幹細胞を拒絶することを防ぐために免疫抑制を提供するため等)のために使用することもできる。例えば、いくつかの場合において、対象の抗体の組み合わせ、または二重特異性抗体(例えば、抗CD117と組み合わせた抗SIRPα)は、移植前処置における使用を見出だす。例えば、対象の抗体の組み合わせ、または二重特異性抗体(例えば、抗CD117と組み合わせた抗SIRPα)は、骨髄の移植前処置のために使用することができる。いくつかの場合において、対象の抗SIRPα抗体(例えば、抗体の組み合わせ)は、免疫抑制療法のために使用することができる。
【0078】
例えば、がん細胞が、非がん細胞と比べて増加したCD47の発現を示すがんはいずれも、対象の方法及び組成物によって治療するために好適ながんである。本明細書において使用されるとき、「がん」は、最小残存病変を含み、原発腫瘍と転移性腫瘍との両方を含む、固形腫瘍がん(例えば、肺、前立腺、乳房、膀胱、結腸、卵巣、膵臓、腎臓、肝臓、膠芽細胞腫、髄芽腫、平滑筋肉腫、頭頸部扁平上皮がん、黒色腫、神経内分泌等)、及び液体がん(liquid cancer)(例えば、血液がん)、がん腫、軟組織腫瘍、肉腫、奇形腫、黒色腫、白血病、リンパ腫、及び脳腫瘍を含むがこれらに限定されない任意の形態のがんを含む。がん細胞がCD47を発現する(例えば、いくつかの場合において、がん細胞が、非がん細胞と比べて増加したCD47の発現を示す)任意のがんは、対象の方法及び組成物(例えば、対象の抗SIRPα抗体)によって治療されるために好適ながんである。
【0079】
がん腫は、上皮組織に由来する悪性腫瘍である。上皮細胞は、生体の外面を覆い、内部の腔を裏打ちし、そして腺組織の内層を形成する。がん腫の例は、腺がん(腺(分泌)細胞から発生するがん)(例えば、乳房、膵臓、肺、前立腺、及び結腸のがんは、腺がんであり得る)、副腎皮質がん、肝細胞がん、腎細胞がん、卵巣がん、上皮内がん、腺管がん、乳がん、基底細胞がん、扁平上皮がん、移行上皮がん、結腸がん、上咽頭がん、多嚢胞性腎細胞がん、燕麦細胞がん、大細胞肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん等を含むが、これらには限定されない。がん腫は、前立腺、すい臓、結腸、脳(通常、続発性の転移として)、肺、乳房、皮膚などに見出し得る。
【0080】
軟部組織腫瘍は、結合組織に由来する非常にまれな腫瘍の多様な群である。軟部組織腫瘍の例は、胞状軟部肉腫、類血管腫型線維性組織球腫、軟骨粘液線維腫、骨格性軟骨肉腫、骨外性粘液性軟骨肉腫、明細胞肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、隆起性皮膚線維肉腫、子宮内膜間質腫瘍、ユーイング肉腫、線維腫症(デスモイド)、乳児線維肉腫、消化管間質性腫瘍、骨巨細胞腫、腱滑膜巨細胞腫瘍、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、子宮平滑筋腫、平滑筋肉腫、脂肪芽細胞腫、典型的脂肪腫、紡錘細胞または多形性脂肪腫、異型性脂肪腫、軟骨様脂肪腫、高分化型脂肪肉腫、粘液/円形細胞脂肪肉腫、多形性脂肪肉腫、粘液腫型悪性線維性組織球腫、高悪性度悪性線維性組織球腫、粘液線維肉腫、悪性神経鞘腫、中皮腫、神経芽細胞腫、骨軟骨腫、骨肉腫、未分化神経外胚葉性腫瘍、胞巣状横紋筋肉腫、胎児性横紋筋肉腫、良性または悪性神経鞘腫、滑膜肉腫、Evans腫瘍、結節性筋膜炎、デスモイド型線維腫症、単発性線維性腫瘍、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)、血管肉腫、類上皮血管内皮腫、膝関節内腱鞘巨細胞腫(TGCT)、色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)、線維性異形成、粘液線維肉腫、線維肉腫、滑膜肉腫、悪性神経鞘腫、神経線維腫、及び軟組織の多形腺腫、ならびに線維芽細胞、筋線維芽細胞、組織球、血管細胞/内皮細胞及び神経鞘細胞に由来する新生物を含むが、これらには限定されない。
【0081】
肉腫は、間葉由来の細胞、例えば骨、または軟骨、脂肪、筋肉、血管、線維組織、または他の結合組織もしくは支持組織を含む生体の軟組織に生じる稀な型のがんである。種々の型の肉腫はがんが形成される場所に基づく。例えば、骨肉腫は骨に形成され、脂肪肉腫は脂肪に形成され、そして横紋筋肉腫は筋肉に形成される。肉腫の例は、アスキン腫瘍、ブドウ状肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性血管内皮腫、悪性神経鞘腫、骨肉腫、及び軟組織肉腫(例えば、胞巣状軟部肉腫、血管肉腫、嚢腫肉腫、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)、デスモイド腫瘍、線維形成性小円形細胞腫瘍、類上皮肉腫、骨外性軟骨肉腫、骨外性骨肉腫、線維肉腫、消化管間質性腫瘍(GIST)、血管外皮腫、血管肉腫(hemangiosarcoma)(より一般的に「血管肉腫(angiosarcoma)」と呼ばれる)、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、悪性神経鞘腫(MPNST)、神経線維肉腫、滑膜肉腫、未分化多形性肉腫等)を含むが、これらには限定されない。
【0082】
奇形腫は、例えば、毛髪、筋肉、及び骨を含む、いくつかの異なる型の組織(例えば、3つの胚葉:内胚葉、中胚葉、及び外胚葉のいずれか及び/または全てに由来する組織)を含み得る胚細胞腫瘍の一種である。奇形腫は、女性の卵巣、男性の精巣、及び子供の尾骨に最も頻繁に発生する。
【0083】
黒色腫は、メラノサイト(色素メラニンを産生する細胞)から発生するがんの形態である。それはほくろ(皮膚黒色腫)で始まることがあるが、目の中または腸の中等、他の色素性組織で始まることもある。
【0084】
白血病は骨髄などの造血組織から発生するがんであり、大量の異常な血球を産生させて血流に進入させる。例えば、白血病は、通常血流中で成熟する骨髄由来細胞に由来し得る。白血病は、疾患がどれだけ早く発症しそして進行するか(例えば急性対慢性)及び影響を受ける白血球の型(例えば骨髄性対リンパ性)にちなんで名付けられている。骨髄性白血病は、骨髄性または骨髄芽球性白血病とも呼ばれる。リンパ性白血病はまた、リンパ芽球性白血病またはリンパ球性白血病とも呼ばれる。リンパ性白血病細胞はリンパ節に集まる場合があり、リンパ節は腫脹する可能性がある。白血病の例は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、及び慢性リンパ性白血病(CLL)を含むが、これらには限定されない。
【0085】
リンパ腫は免疫系の細胞から発生するがんである。例えば、リンパ腫は、通常リンパ系で成熟する骨髄由来細胞に由来し得る。2つの基本的なリンパ腫の分類が存在する。1つは、これはリード-シュテルンベルク細胞と呼ばれる細胞の型の存在を特徴とするホジキンリンパ腫(HL)である。現在、HLには6つの認められているタイプが存在する。ホジキンリンパ腫の例は、結節硬化型古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、混合細胞型CHL、リンパ球減少型CHL、リンパ球豊富型CHL、及び結節性リンパ球優位型HLを含む。
【0086】
リンパ腫の他の分類は、非ホジキンリンパ腫(NHL)であり、それは、免疫系細胞のがんの大規模で多様な群を含む。非ホジキンリンパ腫は、緩慢性の(増殖が遅い)経過を有するがんと、侵攻性(増殖が速い)経過を有するものとにさらに分類することができる。現在、NHLには61種の認められているタイプが存在する。非ホジキンリンパ腫の例は、エイズ関連リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、バーキット様リンパ腫(小型非切れ込み核細胞性リンパ腫)、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、肝脾γδT細胞リンパ腫、T細胞白血病、リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、鼻部T細胞性リンパ腫、小児リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、形質転換リンパ腫、治療関連T細胞リンパ腫、及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含むが、これらには限定されない。
【0087】
脳腫瘍は、脳組織の全てのがんを含む。脳腫瘍の例は、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫、星状細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫等)、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、原始神経外胚葉性腫瘍(髄芽腫)等を含むが、これらには限定されない。
【0088】
本明細書において使用されるとき、用語「感染」は、生物(すなわち、対象)の少なくとも1つの細胞が感染体によって感染されている(例えば、対照が、細胞内病原体感染、例えば慢性細胞内病原体感染を有する)任意の状態を指す。本明細書において使用されるとき、用語「感染体」は、感染生物の少なくとも1つの細胞において、CD47発現を誘導する(例えば増加したCD47発現)外来の生物学的実体(すなわち、病原体)を指す。例えば、感染体は、細菌、ウイルス、原虫、及び真菌を指すがこれらに限定されない。細胞内病原体は特に興味深い。感染性疾患は、感染体によって引き起こされる障害である。いくつかの感染体は、ある特定の条件において、認識し得る病状または疾患を引き起こさないが、変化した条件下で病状または疾患を引き起こす可能性がある。対象の方法は、例えば、ウイルス感染、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ヒトパピローマウイルス等、細胞内細菌感染、例えばMycobacterium、Chlamydophila、Ehrlichia、Rickettsia、Brucella、Legionella、Francisella、Listeria、Coxiella、Neisseria、Salmonella、Yersinia種、Helicobacter pylori等、及び細胞内原虫病原体、例えば、Plasmodium種、Trypanosoma種、Giardia種、Toxoplasma種、Leishmania種等を含むが、これらに限定されない慢性病原体感染の治療において使用できる。
【0089】
同様に、例えば、参照により各々が本明細書に具体的に組み込まれる、特許公開WO2015/041987、WO2016/138306、WO2016/044021に記載されているような、アテローム性動脈硬化、動脈瘤等の予防または治療の方法を非限定的に含む、対象における冠動脈疾患(CAD)の予防及び治療もまた抗SIRPα抗体による治療の対象である。
【0090】
ポリペプチド
一態様において、本開示は、ヒトSIRPαに特異的に結合し、1つの細胞(例えば、がん細胞、感染細胞等)上のCD47と別の細胞(例えば、食細胞)上のSIRPαとの間の相互作用を低減する抗体(すなわち、抗SIRPα抗体)(及びそのような抗体を産生する細胞株)に関する。抗体は、(i)SIRPα、例えばヒトSIRPαに特異的に結合する可変領域と、(ii)FcRn以外の1つ以上の、ヒトFcγ受容体を含むFc受容体に対する低減した結合を有するFc領域とを含むか、またはFc領域を欠く。いくつかのそのような実施形態において、Fc領域はヒトFc領域であり、ここでFcは、Fc受容体結合を低減するように1つ以上のアミノ酸の変更によって改変されているか、または遺伝子操作を受けている。特異的な抗SIRPα抗体は、非限定的にKWAR23を含み、この抗体は本明細書において、キメラ及びヒト化のフォーマットで開示されている。
【0091】
抗体はまた、特にがん抗原、免疫チェックポイント阻害剤、免疫共刺激アゴニスト、慢性感染の抗原等を含む第2の抗原に応答性である、二重特異性または多重特異性抗体として提供されてもよい。抗SIRPα抗体は、食作用を阻害(SIRPαを通じたシグナル伝達を活性化または刺激することは食作用を阻害する)することなくSIRPαに結合することができる。換言すると、抗SIRPα抗体は、SIRPαに結合し得るが、CD47誘発性SIRPαシグナル伝達を遮断し得る。したがって、好適な抗SIRPα抗体は、エフェクター細胞上に存在し、特にヒトマクロファージ上に存在するFcRに対する低減した結合によってCD47誘導性SIRPαシグナル伝達を阻害することによって、正常細胞よりも罹患した細胞(例えば、がん細胞、感染細胞等)への優先的な食作用を促進する。
【0092】
本明細書において提示されるデータは、IgG4またはIgG1領域等の野生型ヒトFc領域を含む抗SIRPα抗体の活性、例えば、食作用の増強における活性は、細胞標的化抗体と組み合わされるとき、個体間の変動を示し得る。特に、いくらかの個体(応答者)は、食作用における相乗作用的な増加によって応答するが、一方で他の個体(無応答者)は、食作用の大幅な増強を欠く。集団中の無応答者の数は、集団の組成によって変動するであろうが、約10%まで、約20%まで、約30%まで、約40%まで、約50%まで、約60%まで、約70%まで、約80%まで、約90%まで、またはそれ以上であり得る。臨床目的のためには、集団内に無応答者がいることは望ましくない。「機能しない」Fc、すなわち、FcRn以外の1つ以上のヒトFcRへの低減した結合を有するように遺伝子操作を受けたヒトFc配列を含む抗SIRPα抗体は、集団内の無応答者の数を低減し、例えば、無応答者の数を、約10%まで、約20%まで、約30%まで、約40%まで、約50%まで、約60%まで、約70%まで、約80%まで、約90%まで、またはそれ以上で低減する。
【0093】
本明細書において使用されるとき、用語「無応答者」は、細胞標的化抗体の投与を含む療法への抗SIRPα抗体の添加が、細胞標的化抗体の有効性を大幅に増強しない個体を指す。「応答者」は、細胞標的化抗体の投与を含む療法への抗SIRPα抗体の添加が、細胞標的化抗体の有効性を大幅に増強し、相乗効果的な応答を提供し得、ここで活性のレベルが、例えば、陰性対照で標準化するとき、いずれかの抗体の単独療法の活性よりも高い、個体である。
【0094】
好適な抗SIRPα抗体は、そのような抗体の完全なヒト、ヒト化、またはキメラ版を含み、ここでFc領域は、FcRn以外の1つ以上のFcに対するFcRの結合を低減するために、1つ以上のアミノ酸変化によって改変されている。ヒト化抗体は、それらの低い抗原性のために、ヒトにおけるインビボ適用に特に有用である。同様に、イヌ化抗体、ネコ化抗体などは、それぞれイヌ、ネコ、及び他の種における適用に特に有用である。対象の抗体は、ヒト化抗体、またはイヌ化抗体、ネコ化抗体、ウマ化抗体、ウシ化抗体、ブタ化抗体等、及びそれらのバリアントを含む。
【0095】
例示的な抗体の可変領域が提供される。いくつかの実施形態において、可変領域は、「機能しない」Fc領域に連結されるか、またはFc領域を欠く、KWAR23のCDR配列、例えば、重鎖について配列番号3、4、5、軽鎖について配列番号6、7、8に記述されるようなものを含む。対象の抗体は、それらの提供された組み合わせ、及び、可変領域の適切な定常領域への融合、または例えばF(ab)’抗体を産生するための定常領域のフラグメントへの融合を含む。対象の可変領域は、提供される抗SIRPα抗体の少なくとも1つのCDR配列を含み、ここでCDRは、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、またはそれ以上のアミノ酸であり得る。代替的に、対象の抗体は、提供される抗体に記述されるような可変領域、または本明細書に記述される可変領域配列の対を含む。
【0096】
他の実施形態において、ヒト化KWAR23抗体が提供され、その抗体は、配列番号1及び配列番号2に提供される可変領域配列の1つまたは両方、またはそれらに由来する生物学的に活性なバリアントを含む。ヒト化KWAR23は、野生型Fc領域、例えばヒトFc領域を含み得るか、または改変されたFc領域、例えば、機能しないFcを含み得る。
【0097】
ヒト化KWAR23の生物学的に活性なバリアントは、配列番号1または配列番号2に記述されるアミノ酸配列に対して、80%以上、85%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、配列番号1または配列番号2と比べて、1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、5つ以下、6つ以下、7つ以下、8つ以下、9つ以下、10個以下等のアミノ酸の変化を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸の変化は、例えば配列番号3、4、5、6、7、8において定義されるような、CDR残基以外の残基においてであり、すなわち、アミノ酸の変化はフレームワーク配列においてである。生物学的に活性なバリアントは、ヒトSIRPα、通常V1とV2とのバリアントの両方に特異的に結合する能力を保持する。
【0098】
いくつかの実施形態において、対象の抗SIRPα抗体は、配列番号3~5及び6~8に記述されるアミノ酸配列を含むCDRを、1つ以上(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、または6つ以上のCDR)含む。対象の抗SIRPα抗体は、配列番号3~5及び6~8のいずれかに記述されるCDRのアミノ酸配列と比べて、6つまでのアミノ酸(例えば、5つまでのアミノ酸、4つまでのアミノ酸、3つまでのアミノ酸、2つまでのアミノ酸、または1つまでのアミノ酸)において異なるCDR配列を含むことができる。
【0099】
いくつかの場合において、対象の抗SIRPα抗体は、配列番号3~5及び6~8のいずれかに記述されるCDRのアミノ酸配列と比べて、6つまでのアミノ酸(例えば、5つまでのアミノ酸、4つまでのアミノ酸、3つまでのアミノ酸、2つまでのアミノ酸、または1つまでのアミノ酸)において異なるアミノ酸配列を有するCDRを、1つ以上(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、または6つ以上のCDR)含む。いくつかの場合において、対象の抗SIRPα抗体は、配列番号3~5及び6~8のいずれかに記述されるCDRのアミノ酸配列と比べて、6つまでのアミノ酸(例えば、5つまでのアミノ酸、4つまでのアミノ酸、3つまでのアミノ酸、2つまでのアミノ酸、または1つまでのアミノ酸)において異なるアミノ酸配列を有するCDRを、2つ以上(例えば、3つ以上、4つ以上、5つ以上、または6つ以上のCDR)含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、対象の抗SIRPα抗体は、配列番号3~5及び6~8のいずれかに記述されるCDRのアミノ酸配列に対して、80%以上、85%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの場合において、対象の抗SIRPα抗体は、配列番号3~5に記述されるアミノ酸配列の1つ以上(例えば、2つ以上、3つ以上、または3つ)を有する重鎖を含む。いくつかの場合において、対象の抗SIRPα抗体は、配列番号3~5に記述されるアミノ酸配列の3つ全てを有する重鎖を含む。いくつかの場合において、対象の抗SIRPα抗体は、配列番号6~8に記述されるアミノ酸配列の1つ以上(例えば、2つ以上、3つ以上、または3つ)を有する軽鎖を含む。いくつかの場合において、対象の抗SIRPα抗体は、配列番号6~8に記述されるアミノ酸配列の3つ全てを有する軽鎖を含む。
【0101】
いくつかの場合において、対象の抗SIRPα抗体は、配列番号6~8に記述されるアミノ酸配列の3つ全てを有する軽鎖と、配列番号3~5に記述されるアミノ酸配列の3つ全てを有する重鎖とを含む。
【0102】
いくつかの場合において、対象の抗SIRPα抗体は、3つのCDRを有する重鎖を含み、ここでCDR-H1は、配列番号3に記述されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2は、配列番号4に記述されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3は、配列番号5に記述されるアミノ酸配列を有する。いくつかの場合において、対象の抗SIRPα抗体は、3つのCDRを有する軽鎖を含み、ここでCDR-L1は、配列番号6に記述されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2は、配列番号7に記述されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3は、配列番号8に記述されるアミノ酸配列を有する。いくつかの場合において、対象の抗SIRPα抗体は、(i)3つのCDRを有する重鎖であって、ここでCDR-H1は、配列番号3に記述されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2は、配列番号4に記述されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3は、配列番号5に記述されるアミノ酸配列を有する、重鎖と、(ii)3つのCDRを有する軽鎖であって、ここでCDR-L1は、配列番号6に記述されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2は、配列番号7に記述されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3は、配列番号8に記述されるアミノ酸配列を有する、軽鎖とを含む。
【0103】
いくつかの実施形態において、対象の抗体は二重特異性抗体である。用語「多重特異性」または「二重特異性」抗体(二機能性抗体または多機能性抗体としても知られる)は、第1の抗原に特異的である少なくとも1つの領域(例えば、第1の抗体の可変領域に由来する)と、第2の抗原に特異的である少なくとも1つの第2の領域(例えば、第2の抗体の可変領域に由来する)とを有するために、2つ以上の異なる抗原を認識する抗体を指す。二重特異性抗体は、2つの標的抗原に特異的に結合し、よって多重特異性抗体の1つの型である。多重特異性抗体は、組換えDNA法によって産生することができ、任意の従来法によって化学的に産生される抗体を含むが、これらに限定されない。二重特異性抗体は、2つの異なる抗原を認識することができる全ての抗体、または抗体のコンジュゲート、または多量体形態の抗体を含む。二重特異性抗体は、それらの二価の特徴を保持するように還元されそして再形成された抗体、及びそれらが各々の抗原に対する複数の抗原認識部位を有することができるように化学的に結合された抗体を含む。
【0104】
対象の二重特異性抗体は、SIRPα及び第2の抗原に対して向けられる。対象の二重特異性抗体は、第2の抗原を発現する細胞集団の食作用を可能にする。例示的な二重特異性抗体は、SIRPαと、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD52、CD56、CD70、CD96、CD97、CD99、CD123、CD279(PD-1)、CD274(PD-L1)、EGFR、HER2、CD117、C-Met、PTHR2、HAVCR2(TIM3)等のがん細胞マーカーとの組み合わせを標的化するものを含む。そのため、いくつかの場合において、対象の抗体はSIRPαと少なくとも1つの第2の抗原に特異的に結合する、二重特異性または多重特異性抗体である。いくつかの場合において、第2の抗原は、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD52、CD56、CD70、CD96、CD97、CD99、CD123、CD279(PD-1)、CD274(PD-L1)、EGFR、HER2、CD117、C-Met、PTHR2、HAVCR2(TIM3)から選択される。
【0105】
いくつかの場合において、例示的な二重特異性抗体は、本明細書において、SIRPαへの特異的な結合を提供すると開示される配列(例えばCDR)、及びがん細胞マーカーに結合する抗体由来の配列(例えば、CDR)を含む。がん細胞への特異的な結合を提供するCDRを有する抗体の例は、セツキシマブ(EGFRに結合する)、パニツムマブ(EGFRに結合する)、リツキシマブ(CD20に結合する)、トラスツズマブ(HER2に結合する)、ペルツズマブ(HER2に結合する)、アレムツズマブ(CD52に結合する)、ブレンツキシマブ(CD30に結合する)等を含むが、これらに限定されない。
【0106】
二重特異性抗体を産生する方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5989830号、米国特許第5798229号のような文献に記載されている。高次の特異性、例えば三重特異性抗体は、Holliger and Hudson(2005)Nature Biotechnology23:1126-1136に記載されている。
【0107】
本開示の文脈において、抗体は、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab及びF(ab’)2 )、キメラ抗体、二重機能性または二重特異性抗体、ならびに四量体抗体複合体を含むと理解される。抗体はまた、それらのエピトープ、すなわちSIRPαに対する可変領域の結合親和性の観点で記載または特定され得、10-5M以下(例えば、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10 M以下、10-11 M以下、10-12 M以下、10-13 M以下、10-14 M以下、10-15 M以下、10-16 M以下)のKd (解離定数)を特徴とするものを含む。1を超える特異性(すなわち、1を超える結合定数)を有する二重特異性及び/または多重特異性抗体について、各々の抗原特異性領域は、10-5M以下(例えば、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10 M以下、10-11 M以下、10-12 M以下、10-13 M以下、10-14 M以下、10-15 M以下、10-16 M以下)のKd (解離定数)を有することができる。
【0108】
抗体は、FcRn以外の1つ以上のFcRに対する低減した結合を特徴とし得、ここで、非限定的にFcγRを含む1つ以上のFcRに対する結合は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%またはそれ以上低減している。
【0109】
核酸
本開示はまた、対象の抗SIRPα抗体(例えば、上述のポリペプチドの任意のものを含む)をコードする単離された核酸、核酸を含むベクター及び宿主細胞、抗体を産生するための組換え技術を提供する。当該技術分野において知られているように、可変領域の配列は、任意の適切な定常領域配列に融合することができる。
【0110】
抗体の組換え産生について、コードする核酸は、さらなるクローニング(DNAの増幅)のため、または発現のために複製可能なベクターに挿入することができる。対象の抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離してシーケンシングすることができる。多くのベクターが利用可能である。ベクターの構成要素は、一般的に、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサー因子、プロモーター、及び転写終結配列の1つ以上を含むが、これらに限定されない。
【0111】
本開示の対象の抗SIRPα抗体は、直接的だけでなく、シグナル配列、または成熟タンパク質もしくはポリペプチドのN末端の特異的な切断部位、免疫グロブリン定常領域配列等を有する他のポリペプチド等を含む、異種または同種のポリペプチドとの融合ポリペプチドとして、組換えによって産生できる。選択される異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識され、処理され得る(例えば、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものであり得る。天然の抗体シグナル配列を認識も処理もしない原核細胞宿主細胞について、シグナル配列は、選択された原核生物のシグナル配列と置換される。
【0112】
「単離された」核酸分子は、通常、抗体の核酸の天然の源において関連している少なくとも1つの混入核酸分子から同定され分離される核酸分子である。単離された核酸分子は、それが天然に見出される形態または状況以外のものである。したがって、単離された核酸分子は、天然の細胞に存在するような核酸分子とは区別される。しかしながら、単離された核酸分子は、例えば、核酸分子が天然細胞のものとは異なる染色体位置にある通常に抗体を発現する細胞に含まれる核酸分子を含む。
【0113】
対象の核酸をクローニングまたは発現させるために好適な宿主細胞の例は、原核生物、酵母、より高次の真核生物細胞を含むが、これらに限定する必要はない。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胚腎臓株(293または懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293細胞、Graham et al., J. Gen Virol.36:59(1977))、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA77:4216(1980))、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod.23:243-251(1980))、サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、Buffalo系ラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51)、TR1細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci.383:44-68(1.982))、MRC 5細胞、FS4細胞、及びヒト肝細胞がん株(Hep G2)である。宿主細胞は、上述の抗SIRPα抗体の産生のための発現またはクローニングベクターによって形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選別、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切なように改変された標準的な栄養培地中で培養される。
【0114】
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製でき、ここでアフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製技術である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖に基づいて、抗体を精製するために使用できる(Lindmark et al., J. Immunol. Meth.62:1-13(1983))。プロテインGは、通常ヒトIgG3に推奨される(Guss et al., EMBO J.5:15671575(1986))。親和性リガンドが付着するマトリックスは、ほとんどの場合はアガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。制御細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリックスは、アガロースで達成され得るよりも速い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がCH3 ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J. T. Baker, Phillipsburg, N.J.)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画化、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)でのクロマトグラフィー陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿等の他のたんぱく質精製のための技術もまた、回収すべき抗体に応じて利用可能である。
【0115】
任意の予備精製ステップ(複数可)に続いて、対象の抗体及び混入物を含む混合物を、約2.5~4.5の間のpHで、好ましくは低塩濃度(例えば約0~0.25M塩)の溶離緩衝液を用いる低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供することができる。
【0116】
使用方法
本明細書において提供される抗SIRPα抗体は、特にインビボ治療用途のために、食作用の調節(例えば、食作用の誘導)において使用され得る。例えば、本明細書において提供される対象の抗SIRPα抗体は、1つの細胞上のCD47と別のものの上のSIRPαとの相互作用が遮断されるべきである任意の方法において使用することができる。対象の抗SIRPα抗体を使用するための例示的な方法は、米国特許出願第20130142786号、米国特許出願第20120282174号、米国特許出願第20110076683号、米国特許出願第20120225073号、米国特許出願第20110076683号、米国特許出願第20110015090号、米国特許出願第20110014119号、米国特許出願第20100239579号、米国特許出願第20090191202号、米国特許出願第20070238127号、米国特許出願第20070111238号、及び米国特許出願第20040018531号に記載される方法を含むが、こられには限定されない。これらは、参照によりその全ての内容が本明細書に具体的に組み込まれる。例えば、抗体組成物は、CD47を発現しているがん細胞、炎症細胞、及び/または慢性感染細胞の食作用を誘導するために投与され得る。
【0117】
本明細書において提供される対象の抗SIRPα抗体は、病状、疾病、及び/または疾患を治療するために、単独で、または別の抗体と組み合わされて対象に投与され得る。対象の抗SIRPα抗体によって治療できる病状、疾病、及び/または疾患の例は、がん(がん腫、軟部組織腫瘍、肉腫、奇形腫、黒色腫、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、固形腫瘍、中皮腫(MSTO)等を含むがこれらに限定されない任意の形態のがん)、感染(例えば、慢性感染)、心血管疾患、例えばアテローム性動脈硬化、動脈瘤等、及び免疫学的疾患または障害(例えば、炎症疾患)(例えば、多発性硬化症、関節炎等)、(例えば、免疫抑制療法のためのもの)を含むが、これらには限定されない。対象の抗SIRPα抗体は、移植前処置(例えば、幹細胞移植、骨髄移植等)(例えば、悪性細胞を破壊するため、患者の生体がドナーの細胞/幹細胞を拒絶することを防ぐために免疫抑制を提供するため等)のために使用することもできる。
【0118】
いくつかの実施形態において、対象の抗SIRPα抗体(例えば、二重特異性マクロファージ誘導抗体を含む)は、個体を治療するために別の抗体と組み合わせて使用される。一実施形態において、対象の抗SIRPα抗体は、1つ以上のがんマーカー(例えば、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD52、CD56、CD70、CD96、CD97、CD99、CD123、CD279(PD-1)、CD274(PD-L1)、EGFR、HER2、CD117、C-Met、PTHR2、HAVCR2(TIM3)等)に対するモノクローナル抗体と組み合わせられ得る(共投与され得る)。いくつかの場合において、組み合わせ組成物は、単一の抗体の使用と比較した標的細胞の食細胞の増強において相乗作用的であり得る。原理の証明としてCD47に対する剤(例えば、抗CD47抗体)は、B細胞リンパ腫に対するリツキシマブ(抗CD20)及びHER2+乳がんに対するトラスツズマブ(抗HER2)等の腫瘍特異的抗原に対するモノクローナル抗体(mAb)との顕著な抗腫瘍相乗効果を示す。これらのmAbのFcフラグメントは、マクロファージ上のFc受容体(FcR)を活性化して、受容体のITAM(免疫受容活性化チロシンモチーフ)によって伝播されるリン酸化カスケードを駆動する。SIRPαは、反対のITIM(免疫受容抑制性チロシンモチーフ)を通じてシグナル伝達するので、SIRPαを遮断することは、ITAMシグナル伝達を支持するバランスを傾け、それによって食作用を増強する。
【0119】
いくつかの実施形態において、対象の抗SIRPα抗体は、第2の抗原、例えば、腫瘍関連抗原及び腫瘍特異的抗原を非限定的に含む、CD47発現細胞のマーカー(例えば、がん細胞マーカー、炎症細胞のマーカー等)に特異的に結合する抗体と共に投与される(すなわち、組み合わせて投与される)。例えば、いくつかの場合において、対象の抗SIRPα抗体は、セツキシマブ(EGFRに結合する)、パニツムマブ(EGFRに結合する)、リツキシマブ(CD20に結合する)、トラスツズマブ(HER2に結合する)、ペルツズマブ(HER2に結合する)、アレムツズマブ(CD52に結合する)、及びブレンツキシマブ(CD30に結合する)、ゲムツズマブ(CD33に結合する)、ロルボツズマブ(CD56に結合する)、イピリムマブ(CTLA-4(CD152)に結合する)、ニボルマブ(PD-1(CD279)に結合する、アベルマブ(PDL-1に結合する)等から選択される1つ以上の抗体と共に投与される。
【0120】
本開示の1つ以上の抗体を含む治療用製剤は、所望の純度を有する抗体を任意選択の生理学的に許容可能な担体、賦形剤または安定剤と混合することによって、保存のために、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製される(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed.(1980))。抗体組成物は、優れた医療行為と一致する方法で製剤化され、投薬され、そして投与される。これに関連して考慮すべき要素は、治療される特定の傷害、治療される特定の哺乳動物、個別の患者の臨床状態、傷害の原因、剤の送達部位、投与方法、投与計画、及び医療従事者に知られている他の要素を含む。投与される抗体の「治療有効量」は、そのような考慮によって統制され、そしてCD47関連疾患を予防するために必要な最小量である。
【0121】
治療量は、少なくとも0.01mg/kg体重、少なくとも0.05mg/kg体重、少なくとも0.1mg/kg体重、少なくとも0.5mg/kg体重、少なくとも1mg/kg体重、少なくとも2.5mg/kg体重、少なくとも5mg/kg体重、少なくとも約7.5mg/kg体重、少なくとも約10mg/kg体重、少なくとも約15mg/kg体重であり得、300mg/kg体重未満、約200mg/kg体重未満、約100mg/kg体重未満であり得る。そのような指針は活性剤の分子量について、例えば、抗体フラグメントの使用、または抗体コンジュゲートの使用において調整されることは当業者に理解される。局所投与、例えば、鼻腔内、吸入等に関して、または全身投与、例えばi.m.、i.p.、i.v.等に関して、用量はまた変動し得る。
【0122】
抗体は、活性を増強するか、またはそうでなければ治療効果を増強する1つ以上の剤と共に製剤化されている必要はないが、任意選択でそのように製剤化されている。これらは、本明細書に上述するように使用されるものと同一の用量及び投与経路において、または約1%から99%の従来使用される用量において、一般的に使用される。
【0123】
許容可能な担体、賦形剤、または安定剤は、使用される用量及び濃度において、レシピエントに対して非毒性であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝液、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール、メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール)、低分子量(10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等のタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン等のアミノ酸、単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール等の糖類、ナトリウム等の塩形成対イオン、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、及び/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。インビボ投与のために使用される製剤は滅菌される必要がある。これは、滅菌ろ過膜を通じたろ過によって容易に達成される。
【0124】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルによって調製されたマイクロカプセル中に、コロイド状ドラッグデリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中に、またはマクロエマルション中に、捕捉され得る。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed.(1980)に開示されている。
【0125】
抗SIRPα抗体は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、及び鼻腔内を含む、任意の好適な手段によって投与される。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下の投与を含む。さらに、抗SIRPα抗体は、特に抗体の用量の低下を伴って、パルス注入によって好適に投与される。
【0126】
疾患の予防または治療のために、抗体の適切な投与量は、上記で定義されたように治療される疾患の型、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的のために投与されるか否か、以前の治療、患者の病歴及び抗体に対する応答、ならびに主治医の判断に依存する。抗体は、一度にまたは一連の治療にわたって患者に好適に投与される。
【0127】
本開示の別の実施形態において、上述の障害の治療に有用な物質を含む製品が提供される。製品は容器とラベルとを含む。好適な容器は、例えば、瓶、バイアル、注射器、及び試験管を含む。容器は、ガラスまたはプラスチック等の様々な材料から形成することができる。容器は、状態を治療するために有効な組成物を保持し、そして滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。組成物中の活性剤は抗SIRPα抗体であり得る。容器上の、または容器に付随するラベルは、組成物が選択の状態を治療するために使用されることを示すことができる。製品は、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液等の薬学的に許容可能な緩衝液を含む第2の容器をさらに含み得る。それはさらに、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、注射器、及び使用説明書を含む添付文書を含む、商業的及び使用者の観点から望ましい他の物質を含み得る。
【0128】
本開示の対象の抗SIRPα抗体は、キット中、すなわち所定量の試薬と投与及び/またはアッセイを実施するための説明書との包装された組み合わせで提供され得る。いくつかの場合において、対象のキットは、抗SIRPα抗体と組み合わせて使用できる1つ以上の追加の抗体を含み得る。例えば、いくつかの場合において、対象のキットは、各々が第2の抗原(例えば、がん細胞マーカー)と結合する1つ以上の抗体を含む。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD52、CD56、CD70、CD96、CD97、CD99、CD123、CD279(PD-1)、CD274(PD-L1)、EGFR、HER2、CD117、C-Met、PTHR2、及びHAVCR2(TIM3)から選択される抗原である。いくつかの実施形態において、対象のキットは、対象のSIRPα抗体と、セツキシマブ(EGFRに結合する)、パニツムマブ(EGFRに結合する)、リツキシマブ(CD20に結合する)、トラスツズマブ(HER2に結合する)、ペルツズマブ(HER2に結合する)、アレムツズマブ(CD52に結合する)、及びブレンツキシマブ(CD30に結合する)、ゲムツズマブ(CD33に結合する)、ロルボツズマブ(CD56に結合する)、イピリムマブ(CTLA-4(CD152)に結合する)、ならびにニボルマブ(PD-1(CD279)に結合する)から選択される1つ以上の抗体とを含む。
【0129】
抗体が酵素によって標識されるとき、キットは、酵素によって必要とされる基質及び補因子(例えば、検出可能な発色団またはフルオロフォアを提供する基質前駆体)を含み得る。さらに、安定剤、緩衝剤(例えば、ブロッキング緩衝液または溶解緩衝液)などの他の添加剤もまた含まれ得る。様々な試薬の相対量は、アッセイの感度を実質的に最適化する試薬の溶液中の濃度を提供するために広範囲で変動し得る。特に、試薬は、溶解の際に適切な濃度を有する試薬溶液を提供する、賦形剤を含む、通常は凍結乾燥された乾燥粉末として提供され得る。
【0130】
本発明がここで十分に記載されたが、様々な変更及び改変が、本発明の精神または範囲を逸脱することなくなされ得ることは、当業者にとって明白である。
【0131】
実験
以下の実施例は、当業者に本発明をいかに作製及び使用するかの完全な開示及び説明を提供するために進められ、本願発明者が自身の発明と見なすものの範囲を限定することを意図するものではなく、また以下の実験が実施された全部または唯一の実験であることを表すことを意図するものでもない。使用される数字(例えば、量、温度等)に関して正確さを確実にするための努力がなされてきたが、いくつかの実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。別途示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、そして圧力は大気圧または大気圧付近である。
【0132】
本明細書において引用されるすべての刊行物及び特許出願は、個別の刊行物または特許出願が、参照により本明細書に組み込まれるように具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0133】
本発明は、本発明の実施のための好ましい様式を含むと本願発明者によって見出されまたは提案された特定の実施形態に関して説明されている。本開示に照らして、本発明の意図する範囲から逸脱することなく、例示された特定の実施形態において多数の改変及び変更がなされ得ることは当業者には理解される。例えば、コドン縮重のために、タンパク質配列に影響を与えることなく基礎となるDNA配列に変更を加えることができる。さらに、生物学的機能の等価性の考察により、種類または量において生物学的作用に影響を与えることなくタンパク質構造に変更を加えることができる。全てのそのような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。
【0134】
実施例1
CD47-SIRPα経路の遮断は、がん細胞の食作用を媒介し、がんを標的とするモノクローナル抗体と相乗的に作用する。遮断剤は、例えば、CD47に特異的に結合する抗体、及びSIRPαに特異的に結合する抗体を含む。後者は、SIRPαの発現がCD47よりも限定されているので、治療用途において、ある特定の利点を有し得る。これは、薬物動態学及び毒物学プロファイルに影響を与える可能性がある。
【0135】
患者への投与後、望ましい剤は治療上の利益をもたらすために十分な期間、生物学的活性を保持する。例えば、がん及び他の慢性状態の治療において、数日から数週間の半減期が好ましくあり得る。Fc領域を含む抗体はこのレベルの安定性を容易に達成することができ、これは少なくとも部分的に、Fc領域と、IgGの再利用及び輸送に関与する低親和性受容体、hFcRnとの相互作用の相互作用によって媒介されると考えられている。
【0136】
治療薬の別の望ましい特質は、患者に投与したときの最小限の免疫原性である。この理由から、ヒトの療法のための抗体は、典型的に少なくともヒトFc領域(キメラ抗体の場合)、または、ヒトフレームワークと定常領域と(ヒト化抗体の場合)を含むよう改変されている。異種Fc領域を有する抗体の治療的用途は、一般的には反対が示されている。
【0137】
様々な目的のために、インビトロモデル系、または遺伝子操作されたインビボ動物モデルを用いて、剤の毒性及び有効性を決定することができることに留意することは重要である。そのようなモデル系において、例えば、ヒトがん細胞がマウスに異種移植されている場所に存在する標的細胞とエフェクター細胞との「ミスマッチ」があり得る。多くの目的に有用ではあるが、そのようなモデルは、標的細胞とエフェクター細胞とが同じ種、例えばヒトのものであろう患者環境における抗体の活性を正確には予測できない可能性がある。これらの理由から、治療効果に関する有益な情報は、ヒトエフェクター細胞の存在下で、ヒト標的細胞に対するヒト抗体またはヒト化抗体の活性を試験することによって得られる。
【0138】
天然のヒト抗体は、FcドメインのN297位(Euナンバリング)に偏在するN-結合型グリカンを含む糖タンパク質である。N297でのグリコシル化の改変がFcγRとの相互作用を改変し、それによって抗体エフェクター機能に影響を及ぼし得ることを、研究が実証した。N297におけるグリカンの非存在は、FcγRへの結合及び抗体エフェクター機能を無効にする。Fc領域における他のアミノ酸の変化は、二重置換、L234A/L235A(LALA)を含み、これはFcγRへの結合を大幅に低減する。E.coliで産生された脱グリコシル化抗体もまた、FcγRへの結合が最小であり、単純化されたそしてより経済的な抗体産生プラットフォームを提供し得る。
【0139】
治療目的のための抗SIRPα抗体を調製する際に、KWAR23抗体(国際出願WO2015/138600に開示されており、参照により本明細書に具体的に組み込まれる)は、ヒトFc領域を含むように改変された。驚くべきことに、ヒトエフェクター細胞環境においてがん標的化モノクローナル抗体と組み合わせたとき、Fc領域における変化が食作用の増強における活性にとって有害であることが判明した。
【0140】
SIRPαとエフェクター細胞上に存在する高親和性Fcγ受容体との同時結合が、例えば抗体、Fcγ受容体、及び細胞表面上のSIRPαの間での三分子複合体の形成を通じて、食作用の阻害をもたらすと仮定された。この問題に対処するために、抗SIRPα抗体のFcを、いわゆる「機能しないFc」、すなわちアミノ酸の変化の導入によりFcγ受容体への低減した結合を有するように遺伝子操作されたFc領域によって置き換えることにより、Fcγ受容体結合を遮断した。特異的に遺伝子操作されたFc領域は、ヒトIgG1定常領域中のN297Aアミノ酸置換を含んだ。
図1に示されるように、この改変は阻害効果を克服し、そして所望の食作用促進効果を回復した。
【0141】
実施例2
インビトロにおいてリツキシマブと組み合わされた、ヒトマクロファージによるNHL細胞の食作用のための低減したFcγR結合を有する抗SIRPα抗体に関して、実施例1で述べたように、遺伝子操作されたFc領域を含む抗ヒトSIRPα抗体を、インビトロでヒトマクロファージによるヒトNHL細胞株、初代培養NHL細胞、及び正常末梢血(NPB)細胞の食作用を可能にする能力について評価する。NHL細胞をIgG1アイソタイプ対照または抗CD45 IgG1抗体の存在下でインキュベートし、リツキシマブの存在下で、野生型または遺伝子操作を受けたN297A Fc領域を有するヒト化抗SIRPα抗体の存在下での活性を比較する。これらの条件下における腫瘍細胞の食作用が測定される。
【0142】
細胞株
バーキットリンパ腫細胞株(Raji)及びDLBCL細胞株(SUDHL4)は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関から取得されるか、または研究室で樹立される。NHL17*細胞株は、バルク細胞を、10%ヒトAB血清を補充したIMDMによって1.5ヶ月間インビトロで培養することによってDLBCLを有する患者から樹立される。
【0143】
ヒト試料
正常ヒト末梢血及びヒトNHL試料は、IRB承認プロトコルに従ってインフォームドコンセントを得て、または地域倫理委員会(REK)承認プロトコルに従ってノルウェーラジウム病院(ノルウェー、オスロ)からインフォームドコンセントを得て取得される。胚中心B細胞解析のための正常扁桃腺は、同意された小児患者からの廃棄された扁桃摘出標本から得られる。
【0144】
フローサイトメトリー解析
正常末梢血球、胚中心B細胞、及び初代NHL細胞の解析のために、CD19、CD20、CD3、CD10、CD45、CD5、CD38(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA and BD Biosciences, San Jose, CA, USA)の抗体を使用した。CD47発現の解析は、抗ヒトCD47FITC抗体(クローンB6H12.2、BD Biosciences)によって実施した。細胞染色及びフローサイトメトリー解析は、以前に記載されたように実施した。
【0145】
治療用抗体
リツキシマブ(anti-CD20、ヒトIgG1)は、スタンフォード大学メディカルセンターより得られ、マウス抗ヒトCD20,IgG2aは、Beckman Coulter(Miami, FL, USA)より得られる。
【0146】
インビトロイソボログラム研究
示された抗体、抗CD20 IgG2a、またはリツキシマブを単独で、または1μg/ml~10μg/mlの濃度で組み合わせてインキュベートされたNHL細胞によってインビトロ食作用アッセイを実施する。規定された単剤効果(食作用指数)を生じるために必要とされる各々の抗体の濃度は、各細胞型について決定される。次いで、この同一の食作用指数を達成するために組み合わせた2つの抗体の濃度をアイソボログラムにプロットし、そして組み合わせ指数(CI)を決定する。CIは、式CI=(d1/D1)+(d2/D2)から計算され、ここで、d1=食作用指数を達成するための組み合わせでの薬物1の用量、d2=食作用指数を達成するための組み合わせでの薬物2の用量、D1=食作用指数を達成するための薬物1単独の用量、D2=食作用指数を達成するための薬物2単独の用量である。1未満、1に等しい、及び1を超えるCIは、それぞれ相乗作用、相加性、及び拮抗作用を示す。
【0147】
実施例3
インビトロにおいて抗EGFRと組み合わされた、ヒトマクロファージによる結腸直腸がん細胞の食作用のための低減したFcγR結合を有する抗SIRPα抗体がん細胞
DLD1細胞(ATCC)、HT29細胞(ATCC)、SW620細胞(ATCC)、SW48細胞(ATCC)、LS174T細胞(ATCC)、HCT116細胞(ATCC)、及びCACO-2細胞(ATCC)は、10%ウシ胎仔血清(Omega Scientific)、100U/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシン(ThermoFisher S)を補充した、RPMI(ThermoFisher S.)(DLD1)、EMEM(ThermoFisher S.)(CACO-2、LS174T)、McCoy’s 5A(ThermoFisher S.)(HT29、HCT116)、またはLeibovitz’s L-15(ThermoFisher S.)(SW48、SW 620)において培養される。GFP-ルシフェラーゼ+DLD1細胞株は、eGFP-ルシフェラーゼ2(pgl4)融合タンパク質を発現するよう遺伝子操作を受けたpCDH-CMV-MCS-EF1 puro HIVに基づくレンチウイルスベクター(Systems Biosciences)を用いて形質導入することによって樹立された。安定な株は、FACSAria IIセルソーター(BD Biosciences)でGFP発現についてソーティングすることによって作製された。腫瘍細胞は、6μg/mLのポリブレンを含む培地中で、レンチウイルスによって一晩形質導入された。次の日に、細胞を繰り返し洗浄してポリブレンと細胞外のレンチウイルスを除去した。形質導入された(GFP+)細胞は、後に、FACSによって移植腫瘍から単離された。
【0148】
インビトロ食作用アッセイ
末梢血単核細胞を密度勾配遠心分離によって濃縮し、単球を抗CD14マイクロビーズ(Miltenyi)で精製し、10%AB-ヒト血清(Invitrogen)ならびに100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシン(Invitrogen)を補充したIMDM+GlutaMax(Invitrogen)中で7~10日間培養することによってマクロファージに分化させる。食作用アッセイは、50,000のマクロファージと100,000のGFP+腫瘍細胞との2時間の共培養によって実施され、その後、ハイスループットサンプラー(BD Biosciences)を備えたLSRFortessa細胞分析装置を用いて解析される。処理に使用された抗体は、IgG1アイソタイプ対照、活性の、または機能しないFc領域を有する抗SIRPα、及び抗EGFRセツキシマブ(Bristoll-Myers Squibb)を含む。マクロファージは抗CD206抗体を用いてフローサイトメトリーで同定される。死細胞は、DAPI(Sigma)による染色によって解析より排除された。食作用は、GFP+マクロファージのパーセンテージによって評価され、各々の細胞株に対する各々の独立したドナーによる最大応答に対して標準化された。
【0149】
実施例4
進行悪性腫瘍において抗SIRPαと併用したアベルマブ
上述のアッセイを用いて、野生型または機能しないFcを有する抗SIRPα抗体の、抗PD-L1抗体であるアベルマブ(MSB0010718C)と組み合わせた組み合わせを、進行性または転移性固形腫瘍(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、黒色腫、及び頭頸部扁平上皮がん(SCCHN))の、インビトロでの食作用及び/または細胞媒介細胞溶解について試験する。
【0150】
実施例5
個体の応答における変動
マウスFc配列を有する抗SIRPα KWAR23の可変領域を用いて(mKWARと命名)、ヒトFcγRとの相互作用を無効にするためのN297A変異を含むヒトFc配列とのキメラ(chKWAR-dead-Fcと命名)、野生型ヒトIgG1 Fcとのキメラ(chKWAR-IgG1と命名)、及びヒトIgG4 Fc領域とのキメラ(chKWAR-IgG4と命名)の抗体を作製した。
【0151】
リツキシマブと組み合わせたときの、がん細胞の食作用の増強における相乗的応答について抗体をアッセイし、データを
図2に示す。
【0152】
10個の異なるドナー由来のヒトマクロファージは、ヒト血清の存在下で7日間、ドナー番号で示される単球から分化させた。Rajiリンパ腫細胞をCFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステルは蛍光細胞染色色素である)で標識し、10μg/mlのリツキシマブ(抗CD20Ab)単独の存在下で、10μg/mlのKWARバリアントまたは対照としてのヒトIgG4と組み合わせてマクロファージと共にインキュベートした。2時間のインキュベーションの後、食作用は、CFSE陽性マクロファージとしてフローサイトメトリーによって決定された。ベースラインの食作用は、ヒトIgG4対照Abによって決定された。リツキシマブとヒトIgG対照Abとの組み合わせを用いて、リツキシマブ特異的なベースライン食作用を確立した。点線は、リツキシマブ単独による食作用のレベルを示す。
【0153】
複数の個体からの応答を試験する際に、食作用の増強において個体間の変動が存在したことが見出された。リツキシマブとマウス抗SIRPαAb(mKWAR)との組み合わせは、10個の全てのドナーマクロファージについて、リツキシマブ単独と比較して、食作用を増強した(点線より上の増加として示される)。
【0154】
対照的に、リツキシマブとキメラ抗SIRPαAb(chKWAR-IgG4)との組み合わせは、3個のドナーについてはドナーマクロファージについて食作用の大幅な増強を示したが、他の7個のドナーについてはそうではなかった。同様に、野生型IgG1Fc領域(chKWAR-IgG1)で試験した6個のドナーにおいて、ドナーの半分が対照に対して大幅な増強を示さなかった。
【0155】
対照的に、「機能しない」IgG1-Fc領域を有するキメラ抗SIRPα Ab(KWAR-dead-Fc)をリツキシマブと組み合わせたとき、10個のドナー全てが食作用の大幅な増強を有した。
【0156】
これらの実験は、応答性の変動を減少させること、すなわち、細胞標的化抗体と組み合わせたときの食作用の増強において無応答者である個体の数を減少させることにおいて、抗SIRPα抗体に対する機能しないFcコンストラクトの一般的な利点を実証する。
【0157】
実施例6
さらなる抗SIRPα抗体
ヒトSIRPαに対するさらなる抗体が、マウスをヒトタンパク質で免疫して、SIRPaに結合した抗体をスクリーニングすることによって作製された。2つのモノクローナル抗体のクローンは、それぞれ9B11及び7E11と名付けられた。マウス可変領域をヒトIgG4 Fc領域(7E11-G4または9B11-G4と命名)にキメラとして結合するか、またはヒトFcγRとの相互作用を無効にするためのN297A変異を含むヒトIgG1 Fc領域にキメラとして結合した(7E11-G1または9B11-G1と命名)。
【0158】
KWAR23で見出されたように、9B11及び7E11抗体は、リツキシマブと組み合わせたとき、がん細胞の食作用を増強することにおいて相乗的な応答を示した。
図3に示されるように、マクロファージは、ヒト血清の存在下で7日間、ドナーA(A)及びドナーB(B)の単球から分化させた。Raji細胞をCFSEによって標識し、10μg/mlリツキシマブ(Rx)単独、または10μg/mlの9B11-G4、9B11-G1、7E11-G4、もしくは7E11-G1と組み合わせた10μg/mlリツキシマブの存在下で、マクロファージと共に培養した。2時間後、GFP+マクロファージを観察するフローサイトメトリー解析によって食作用のパーセンテージを計算した。
【0159】
データは、IgG4フォーマット化抗体と変異型IgG1フォーマット化抗体との両方が相乗的応答を提供し得るが、変異型IgG1フォーマットはドナー間でより一貫した応答を提供することを示す。
【0160】
実施例7
F(ab)2 フラグメント
Fcγ受容体に対する低減した親和性を有するヒトFc領域を含む抗体の使用の代替として、例えばF(ab’)2 フラグメントを産生することによってFc配列を欠くように抗体を遺伝子操作することができる。
【0161】
例えば、参照により本明細書に具体的に組み込まれる米国特許出願US-2017-0073414-A1に開示される抗SIRPα抗体KWAR23は、マウス抗ヒト抗体として最初に開発された。F(ab)2 フラグメントを産生するために、精製した抗体を、製造者の取扱説明書に従って、沈降樹脂に固定化されたPierce F(ab’)2 Preparationペプシンで懸濁する。ペプシン消化は典型的に、F(ab’)2 フラグメント(非還元条件下のSDS-PAGEで約110kDa)、及びFc部分の多数の小ペプチドを生じる。得られるF(ab’)2 フラグメントは、2つのジスルフィド結合によって結合する一対のFab’単位からなる。Fcフラグメントは、広範囲に分解され、そして透析、ゲル濾過、またはイオン交換クロマトグラフィーによりF(ab′)2 から分離される。
【0162】
実施例8
ヒト化KWAR抗体
例えば、参照により本明細書に具体的に組み込まれる米国特許出願US-2017-0073414-A1に開示される抗SIRPα抗体KWAR23は、マウス抗ヒト抗体として最初に開発された。
マウスKWAR23可変重鎖(VH)(CDRに下線を付す)
【0163】
【0164】
マウスKWAR23可変軽鎖(VL)(CDRに下線を付す)
【0165】
【0166】
ヒト化KWAR23可変重鎖(VH)、配列番号1:
EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGFNIKDYYIHWVQQAPGKGLEWIGRIDPEDGETKYAPKFQDRATITADTSTDTAYMELSSLRSEDTAVYYCARWGAYWGQGTLVTVSS
ヒト化KWAR23可変軽鎖(VL)、配列番号2:
QIVLTQSPPTLSLSPGERVTLTCSASSSVSSSYLYWYQQKPGQAPKLWIYSTSNLASGVPARFSGSGSGTSYTLTISSLQPEDFAVYFCHQWSSYPRTFGAGTKLEIK
【0167】
KWAR23可変重鎖のCDR(IMGTによって定義される)は以下の通りである。
CDR-H1:DYYIH(配列番号3)
CDR-H2:RIDPEDGETKYAPKFQD(配列番号4)
CDR-H3:WGAY(配列番号5)
【0168】
KWAR23可変軽鎖のCDR(IMGTによって定義される)は以下の通りである。
CDR-L1:SASSSVSSSYLY(配列番号6)
CDR-L2:STSNLAS(配列番号7)
CDR-L3:HQWSSYPRT(配列番号8)
【0169】
CDR移植のテンプレートとして使用するヒト抗体フレームワーク(FR)を選択するために、マウスKWAR23のVL及びVH領域を、ヒトの生殖系列配列のものと比較した。ヒトフレームワーク配列は、マウスフレームワーク配列に基づいて選択された。ヒトの選択された配列由来のFRは、ヒト化KWAR23の設計のための開始点を提供した。マウスの配列と同一のFRの残基が保持され、非同一の残基は保持されるかまたは分子モデリングに基づいて置換された。ヒト化KWAR23コード配列は、細胞にトランスフェクトされ、精製された。配列は
図4に示される。
【0170】
次いで、ヒトSIRPαを認識するヒト化KWAR23の能力がBiacoreアッセイによって試験された。マウス抗体の結合親和性は、1.18×10-9Mであると決定された。ヒト化抗体の結合親和性は、1.54×10-9Mであると決定された。
【0171】
ヒト化Kwarを、
図5に示す食作用を促進する治療用抗体との相乗効果について試験した。(A)Raji細胞をCFSEによって標識し、10μg/mlリツキシマブ単独、または10μg/mlのHuKwar-G1と組み合わせた10μg/mlリツキシマブの存在下で、ヒト単球由来マクロファージと共に培養した。提示されるデータは6個の個別のドナー由来の結果であった。(B)HT29細胞をCFSEによって標識し、0.1μg/mlセツキシマブ単独、または10μg/mlのHuKWar-G1と組み合わせた0.1μg/mlセツキシマブの存在下で、ヒト単球由来マクロファージと共に培養した。2時間後、GFP+マクロファージを観察するフローサイトメトリー解析によって食作用のパーセンテージを計算した。提示されるデータは6つの個別のドナー由来の結果であった。ヒトIgG1は、ヒトFcγRとの相互作用を無効にするために、N297A変異を有するように遺伝子操作されている。データは、両方の腫瘍特異的抗体とのヒト化抗体の応答の相乗効果を示す。
【0172】
要約すると、本願発明者らは、マウス/ヒトキメラ抗体及びヒト化抗体を作製する方法を使用することによって、ヒトSIRPαに対するマウスモノクローナル抗体KWAR23に基づく治療用抗体を開発した。キメラ抗体及びヒト化抗体は、SIRPαに特異的に結合する能力を保持する。
【0173】
相互参照
本願は、2016年8月3日に出願された米国仮特許出願第62/370,422号の権益を主張し、その出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【配列表】