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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】縫合糸配置装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
A61B17/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019572548
(86)(22)【出願日】2018-07-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018041030
(87)【国際公開番号】W WO2019014055
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-05-10
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】15/646,521
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519461978
【氏名又は名称】デュラスタット、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン、デイヴィッド、グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】クルド、マーク、エフ
(72)【発明者】
【氏名】タッパー、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、ジェンス
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】佐々木 一浩
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-500125(JP,A)
【文献】特開2001-95787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部と末端部を含む細長い本体、
前記細長い本体と連結されるハンドル、
針ホルダおよびアクチュエータを具え、
前記針ホルダは、前記末端部から延びるかまたは前記末端部の一部として設けられ、前記針ホルダは、最遠位先端を有する末端セクションを含み、前記針ホルダは、遠位開口を有し付随の針を保持するように構成された針通路を画定し、
前記アクチュエータは、細長い本体と相互作用し、第1動作位置と第2動作位置の間を作動可能であり、前記第1動作位置から前記第2動作位置に向かう前記アクチュエータの移動によって前記針が前進方向に動くように前記アクチュエータは構成され、
前記アクチュエータは、手動操作部材、および前記ハンドルの中に配置されたばねとして構成され圧縮位置にある場合に前記第2動作位置に向かって前記アクチュエータを付勢する付勢機構を具え、前記手動操作部材は、前記手動操作部材が非作動位置から作動位置に向かって移動するまで、前記付勢機構が前記第2動作位置の方へ前記アクチュエータを移動させることを妨げるように、前記付勢機構と動作可能に連結されて、
前記ハンドルと連結され、伸長位置と押下げ位置の間を移動可能なプランジャを更に有し、前記伸長位置から前記押下げ位置への前記プランジャの移動によって前記ばねが圧縮される、
縫合装置。
【請求項2】
前記針通路が湾曲している、請求項1の縫合装置。
【請求項3】
前記ばねが、3Nから15Nの力が加えられることで前記アクチュエータを前記第1動作位置から前記第2動作位置に移動させることができるように構成されている、請求項1の縫合装置。
【請求項4】
前記ばねが、9Nから11Nの力が加えられることで前記アクチュエータを前記第1動作位置から前記第2動作位置に移動させることができるように構成されている、請求項1の縫合装置。
【請求項5】
前記ばねが、前記プランジャによって圧縮された場合に、9Nから11Nの力が加えられることで前記アクチュエータを前記第1動作位置から前記第2動作位置に移動させることができるように構成されている、請求項1の縫合装置。
【請求項6】
前記ばねが、前記プランジャによって圧縮された場合に、3Nから15Nの力が加えられることで前記アクチュエータを前記第1動作位置から前記第2動作位置に移動させることができるように構成されている、請求項1の縫合装置。
【請求項7】
前記アクチュエータがスライダと該スライダに連結されたワイヤを具え、前記ばねが前記スライダに対して作用して前記スライダと前記ワイヤが動く、請求項1の縫合装置。
【請求項8】
前記手動操作部材が第1オペレータ接触面を具え、前記作動位置が第一作動位置と第二作動位置を含み、該第1オペレータ接触面を操作することによって前記手動操作部材が前記非作動位置から前記第一作動位置へ移動する場合に、前記手動操作部材が第一方向に移動するように構成されている、請求項1の縫合装置。
【請求項9】
前記手動操作部材が第2オペレータ接触面を具え、該第2オペレータ接触面を操作することによって前記手動操作部材が前記非作動位置から前記第二作動位置へ移動する場合に、前記手動操作部材が第二方向に移動するように構成されており、前記第二方向が前記第一方向とは異なる、請求項の縫合装置。
【請求項10】
前記第一方向が前記第二方向の反対側にある、請求項の縫合装置。
【請求項11】
前記第一方向が、前記付勢機構が前記アクチュエータに付勢する方向を横切る、請求項の縫合装置。
【請求項12】
前記第一方向が、前記付勢機構が前記アクチュエータに付勢する方向に対して直交する、請求項11の縫合装置。
【請求項13】
前記ハンドルが外側面を具え、前記手動操作部材が第1オペレータ接触面を具え、前記外側面が凸型で、前記第1オペレータ接触面が凹型である、請求項1の縫合装置。
【請求項14】
前記細長い本体が回転軸の周りを前記ハンドルに対して回転可能であって、前記ハンドルが該ハンドルの少なくとも一部に、前記回転軸の周りの回転面に従う外側面を具え、前記第1オペレータ接触面が前記外側面の最大径から外側に延びる、請求項13の縫合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全体として、手術および縫合糸の配置(placement)に関するものであり、より詳しくは、組織の縫合修復装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
縫合を使用する外科的縫合技術は、組織を修復するための1つのアプローチである。しかしながら、若干の例において、これらの技術は、解剖学的制約、血液または他の体液による視覚化の妨害、および神経根糸に近接するため、実行するのが困難であり得る。或る場合には、例えば、筒状リトラクタのような低侵襲技術を使用する場合に、これらの試みは更に難しくなり得る。従来の器具および装置では、実施が制限されることがあり、場合によっては、障害物を回避するため、および/または針と縫合糸が組織を適切に通過できるようにするための操作性に欠ける場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
上記に鑑みて、本発明の縫合装置は、細長い本体、針ホルダ、およびアクチュエータを具える。細長い本体は、基端部および末端部を含む。針ホルダは、末端部から離れて延びるかまたは末端部の一部として設けられる。針ホルダは、最遠位先端を有する末端セクションを含む。針ホルダは付随の針を保持するように構成された針通路および遠位開口を画定する。アクチュエータは、細長い本体と相互作用し、第1動作位置と第2動作位置の間を操作可能である。第1動作位置から第2動作位置に向かうアクチュエータの移動によって付随の針が前進方向に動くように、アクチュエータは構成される。アクチュエータは、手動操作部材、および第2動作位置に向かってアクチュエータを付勢する付勢機構を具える。手動操作部材は、付勢機構と動作可能に連結されており、これにより、付勢機構は、非作動位置から作動位置に向かって手動操作部材が移動させられるまで、第2動作位置の方へアクチュエータを移動させることができない。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1は、縫合装置の斜視図。
図2図2は、アクチュエータの構成要素を示すためにハンドルが取除かれた図1の縫合装置の斜視図。
図3図3は、図1の縫合装置の下部の断面図。
図4図4は、伸長位置にあるプランジャを有する図1の縫合装置の上部の断面図。
図5図5は、図1の縫合装置の下部の側面図。
図6図6は、図1の縫合装置の下部の正面図。
図7図7は、押下げ位置にあるプランジャを有する図1の縫合装置の上部の断面図。
図8図8は、図1の縫合装置用の手動操作部材の斜視図。
図9図9は、別の縫合装置の斜視図。
図10図10は、アクチュエータの構成要素を示すためにハンドルが取除かれた図9の縫合装置の上部の斜視図。
図11図11は、図9の縫合装置の上部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図1は、組織の裂け目を縫合するのに有用であり、多くの異なるタイプの外科手術で用いられることが可能な縫合装置10の例を示している。図2を参照すると、縫合装置10は、全体として、アクチュエータ12、細長い本体14および針ホルダ16を具える。縫合装置10は、針20および縫合糸22を正確に配置するために、筒状リトラクタまたは他の小さな外科用ポータルによって行われる低侵襲外科手術において特に有用であり、それは図3に示され、縫合される対象組織に針20を通し易くする。
【0006】
例示の実施例の針20は、尖った第1端部30および第1端部の反対側にある第2端部32を有する湾曲針である。針20は、既知の材料から作られた市販の湾曲針に類似したものであってもよい。針20は、湾曲した針ホルダ16の中に配置された場合には湾曲に従うことができ、針ホルダ16を出た後はまっすぐになるような、可鍛性または可撓性材料から形成されてもよい。針ホルダ16および針20はともに、直線のような、他の形状を取ることもできる。
【0007】
アクチュエータ12が作動することによって、針ホルダ16に対して前進方向36に針20が動く。針20は、図3に示される格納位置から移動し、針20が針ホルダ16から解放される解放状態に至る。解放状態において、外科医は、例えば鉗子で、針20を握って、針20と縫合糸22を引っ張ってもよい。縫合糸22は、針20と連結されていて、針20の第2端部32から延びる。縫合糸22は、針20の第2端部32にかしめられ(swaged)てもよい。縫合糸22はまた、他の従来方式の針20と連結されてもよい。縫合糸22は、既知の縫合製造業者から入手してもよい。
【0008】
アクチュエータ12は、第1動作位置と第2動作位置の間を作動可能である。第1動作位置から第2動作位置へのアクチュエータ12の移動によって、針ホルダ16に対して前進方向36に針20が動き、結果として、針20は、針20が針ホルダ16から解放される解放状態に向かって動く。図示された実施例では、アクチュエータ12は、可撓性部分を具え、図示された実施例ではワイヤ40から成り、それはニチノールから作られてもよい。アクチュエータ12が第1動作位置から第2動作位置の方へ移動する場合に、針ホルダ16の中で曲がるように、可撓性部分は構成される。アクチュエータ12の他の構成要素は、以下により詳細に説明する。
【0009】
細長い本体14は、図示された実施例において、ハンドル50と連結する。図示された実施例の細長い本体14は、カニューレ(cannula)型である。細長い本体14は、平滑な外側面60を有し、アクチュエータ12の一部(より詳しくは、図示された実施例では、ワイヤ40)を受入れるトラック62を画定する。上述の通り、細長い本体14はカニューレであり、トラック62はアクチュエータ12のワイヤ40を受入れる内腔(lumen)である。トラック62は、ワイヤ40を囲む必要がなく、U字型であってもよい。示された実施例において、細長い本体14は、細長い本体14の長手方向に対して直交する断面が円形であるが、多角形またはU字型のような別の形状であってもよい。
【0010】
細長い本体14は、図示された実施例では、バイオネット(bayonet)形状であるが、例えば、長手方向軸に沿ってまっすぐな別の形状であってもよい。細長い本体14は、中間部74によって連結される基端部70および末端部72を具える。基端部70は、以下で詳述する方法でハンドル50と連結される。図示された実施例では、針ホルダ16は、細長い本体14に受入れられ、連結されて、末端部72から離れるように延びる。または、針ホルダ16は、細長い本体14の末端部72の一部として設けられてもよい。細長い本体14は、剛性金属材料から作られるが、必要に応じて、細長い本体14の少なくとも一部は、外科医が外科手術の間、細長い本体14の少なくとも一部を肉体に挿入するための望ましい形状に曲げることができるように、可鍛性または可撓性材料から作られ得る。図示された実施例では、細長い本体14の外径は、基端部70と末端部72の間で一定である。細長い本体14の外径は3.5mm以下であってもよく、それにより、非常にスリムな装置となり、外科手術中の外科医の視野が開ける。
【0011】
中間部74は、基端部70と末端部72の間に位置する。基端部70は、基端部長手方向軸76に沿って延びる。末端部72は、順方向の基端部長手方向軸76からずれた末端部長手方向軸78に沿って延びる。図示された実施例では、末端部長手方向軸78は、基端部長手方向軸76から約25mmずれている。基端部70は近位屈曲82を通って中間部74に移行し、中間部74は遠位屈曲84を通って末端部72に移行する。図示された実施例では、近位屈曲82および遠位屈曲84は、ともに内側に135°曲げられている。
【0012】
図4を参照して、細長い本体14の基端部70は、ハンドル50に設けられた細長い本体通路86に受入れられる。細長い本体通路86は、基端部長手方向軸76に直交する横断面において、細長い本体14の基端部70とほとんど同一(必要に応じてわずかに大きいだけ)の形状を有する。細長い本体14および針ホルダ16は、図示された実施例では基端部長手方向軸76と同軸の回転軸の周りをハンドル50に対して回動可能であるが、ハンドル50に対する細長い本体14および針ホルダ16の回転には、縫合手術において縫合装置10を使用する際に外科医が細長い本体14または針ホルダ16に通常加える力よりも大きな力が必要とされる。
【0013】
図示された実施例では、細長い本体保持90は、ハンドル50に連結され、回転軸76の周りをハンドル50に対して細長い本体14が回転できるように構成される。細長い本体保持90はまた、ハンドル50に連結されることにより、回転軸76に沿ってまたは平行に、ハンドル50に対して細長い本体14が並進移動することを妨げる。図示された実施例では、細長い本体保持90は、基端部70の直径より大きい直径を有する樽型の構成要素である。細長い本体保持90は、基端部70で細長い本体14に固定され、これにより、細長い本体14とともに回転することができる。細長い本体保持90は、ハンドル50の中に受入れられる。細長い本体保持90は、回転軸76に対して直交する横断面において円形の外側面92を有し、ハンドル50に設けられた細長い本体保持空洞94の中に受入れられる。細長い本体保持空洞94は、回転軸76に対して直交する横断面において同様に円形の内側面96を有する。
【0014】
細長い本体保持90の外側面92が細長い本体保持空洞94の内側面96と接することにより、ハンドル50を動かして回転させると、細長い本体14および針ホルダ16はハンドル50とともに動いて回転する。細長い本体保持90の外側面92と細長い本体保持空洞94の内側面96の間の境界面によって、ハンドル50に対して細長い本体保持90、及び結果として、細長い本体14または針ホルダ16の回転が可能となるため、オペレータがハンドル50を握って、ハンドル50の回転を妨げている場合でも、細長い本体14または針ホルダ16は回転可能である。細長い本体通路86は上肩98で細長い本体保持空洞94に移行し、細長い本体保持空洞94は下肩102で直径がより小さい細長い本体通路86に移行する。上肩98および下肩102は、ハンドル50に対する細長い本体保持90、及び結果として、細長い本体14および針ホルダ16の並進移動を妨げる。
【0015】
針ホルダ16は、末端部72から離れるように延びる、または細長い本体14の末端部72の一部として設けられている。図3を参照して、針ホルダ16は、中空管状部材である。図示された実施例では、末端部長手方向軸78と位置合わせされた針ホルダ16の一部は、細長い本体14の内部に受入れられるが、例えば、細長い本体14と針ホルダ16の両方が一つの管状ストック材料から作られてもよく、針ホルダ16は細長い本体14の一部として形成されてもよい。図示された実施例で示された針ホルダ16は、縫合装置10がその末端でJフック構造を有することができるような全体として一定の半径に従う湾曲した針ホルダである。図示された実施例では、針ホルダ16は、細長い本体14から取外し可能であることを意図しないが、別の構成では、針ホルダ16は、摩擦嵌合またはバイオネット接続のような機械的接続によって細長い本体14と選択的に連結されてもよい。
【0016】
図3を参照して、針ホルダ16は、最遠位先端142を有する末端セクション140を具える。針ホルダ16は、トラック120および遠位開口146と連通する針通路144を画定する。遠位開口146は、順方向の末端部長手方向軸78からずれている。図3に示された実施例では、針20が針通路144の中に受入れられ、アクチュエータ12が第1動作位置にある場合に、針20と針ホルダ16の内側面152の間を、針20の第2端32から遠位開口146に向かって縫合糸22の少なくとも一部が針通路144に沿って延びる。最遠位先端142は、末端部長手方向軸78に直交する方向に末端部長手方向軸78から距離にして7mm以下ずれている。低侵襲脊椎手術中に使用される一般的な筒状リトラクタは、14mm~22mmの直径を有する。最遠位先端142を末端部長手方向軸78からずらして7mm以下の間隔を空けることによって、外科医は、筒状リトラクタの中心軸に沿って細長い本体14を配置することができ、筒状リトラクタの側面に接触することなく、中心軸の周りを縫合装置を回転させることができる。
【0017】
図5でより明瞭に示されるように、針ホルダ16は切欠き160を含む。再び図3を参照して、針20が前進方向36に進むにつれて、針20の第1端30は縫合される対象組織を通過し得る。切欠き160を設けることによって、針20の第2端32は、針ホルダ16から解放される前に針ホルダ16の最遠位先端142を通過する必要がない。遠位開口146のこのような構成により、遠位開口146に針20の第2端32を挿入し、前進方向36の反対方向に針20を針ホルダ16に対して動かすことによってなされる、針20および縫合糸22を針通路144に装填することも容易になる。また、遠位開口146の構成によって、針20の第1端30が対象組織24を通過する場合に、針20の第1端30が縫合糸22を通過する可能性も軽減される。
【0018】
切欠き160は針ホルダ16の側面に示されているが、切欠き160は他の場所に配置されてもよい。切欠き160を設けることによって、遠位開口146は、非円形である。最遠位先端142は、丸くてもよく(図6参照)、これにより、外科医は、縫合される対象組織をその内側でつかむまたは「引っ掛ける」ことができ、対象組織を針20の(尖った)第1端30で捕らえてなくても、最遠位先端142で対象組織にくぼみを作ることができる。
【0019】
針ホルダ16はまた、針ホルダ16が末端部長手方向軸78から離れてカーブし始める所に配置された近位穴162を具える。近位穴162は、図示された実施例の曲線の内側に配置される。近位穴162は、針20が収納位置にあるときに針20の第2端32が存在する場所の近くの針通路144の中に延びる。針押さえは、針通路144内に針20を保持するために設けられてもよく、これにより、針ホルダ16に対する針20の予想外の移動を防ぐことができる。このような針押さえの1つの実施例に、針ホルダ16を囲み、下端166で終わる可撓性スリーブ164がある。下端166は、針20が格納位置において針通路144の中に受入れられている場合に、近位穴162の中に延び、針ホルダ16の内側面152に対して針20の第2端部32を保持する。アクチュエータ12が第1動作位置から第2動作位置に移動するとき、図示された実施例のワイヤ40は、可撓性スリーブ164の下端166の保持力に打ち勝って針20の第2端部32を押し、前進方向36に針20を動かす。
【0020】
針ホルダ16の中に針20を保持するために、例えば、弾性バーベル型保持168(図5)のような他のタイプまたは構成の針押さえが、近位穴162に挿入されてもよい。この別の構成において、弾性バーベル型保持168が近位穴162に挿入されるとき、針20が格納位置で針通路144の中に受入れられている場合に、針ホルダ16の内側面152に対して、弾性バーベル型保持168は針20の第2端部32を押す。アクチュエータ12が第1動作位置から第2動作位置に移動するとき、図示された実施例のワイヤ40は、弾性バーベル型保持168の保持力に打ち勝って針20の第2端部32を押し、前進方向36に針20を動かす。
【0021】
細長い本体14の回転力が細長い本体保持部90の外側面92と細長い本体保持空洞94の内側面96の間の摩擦力に打ち勝つ場合を除いて、例えば、回転または並進移動のようなハンドル50の移動によって細長い本体14が同じように移動するように、ハンドル50は細長い本体14の基端部70に連結され、細長い本体14に固定される。細長い本体通路86は、ハンドル末端部196からハンドル基端部198に向かって延び、基端部長手方向軸76と位置合わせされる。図示された実施例の細長い本体通路86は、ハンドル末端部196からハンドル基端部198に亘って延びてはいない。細長い本体保持空洞94に加えて、ハンドル50はさらに、細長い本体通路86より直径が大きいアクチュエータ空洞200を具える。細長い本体通路86は、アクチュエータ空洞200の中へ移行して、ハンドル末端部196からハンドル基端部198に向かって移行する。アクチュエータ空洞200は、ハンドル基端部198のプランジャヘッド凹部204に移行する小径通路202に移行する。返し206は、アクチュエータキャビティ200内に内向きに延びており、以下により詳細に説明される。ハンドル50はまた、ハンドル50の外側面212からハンドル50のアクチュエータ空洞200の中に延びる手動操作部材穴208を具える。ハンドル50はまた、基端部長手方向軸76と直交する方向で手動操作部材穴208と位置合わせされた手動操作部材凹部210を具える。
【0022】
外側面212は、ハンドル基端部198とハンドル末端部196の間を延びる。外側面212は、ハンドル基端部198とハンドル末端部196の間の少なくとも大部分のハンドル50に沿って、基端部長手方向軸76の周りの回転面に従う。図示された実施例では、外側面212は、全体として、ハンドル基端部198とハンドル末端部196の間の少なくとも大部分のハンドル50に沿う円筒状である。ハンドル50の最大外径は、ハンドル50が基端部長手方向軸76に対して直交する横断面において円形である必要がないので、基端部長手方向軸76に直交して測定された幅と呼ばれることもあり、これは10-20mmでよい。図示された実施例では、ハンドル50は、12mm以下の基端部長手方向軸76に対して直交して測定された幅を有する。低侵襲外科手術中に使用される一般的な管状リトラクタは、14mm~22mmの内径を有する。ハンドル50の最大幅は大きすぎず、外科手術中、特に、外科医が、管状リトラクタまたは管状リトラクタ以外の別の小さな手術ポータルを介して手術を行っている場合に、外科医の視線を妨げる可能性がある。ハンドル50はハンドル基端部198からハンドル末端部196までで約12-13cmであり、これにより、外科医は、人差し指と親指の間の空間に、ハンドル50のハンドル基端部198に近い部分を寄りかからせて、鉛筆と同様に縫合装置を保持することができる。
【0023】
再び図1を参照して、ハンドル50はまた、回転グリップ面を具える。図示された実施例の回転グリップ面は、第1回転グリップ面220および(図1では見えない)第2回転グリップ面を具え、それらはそれぞれ、回転面に従うハンドル50の外側面212の大部分と比較してより平面に近い。第1回転グリップ面220は、第2回転グリップ面の反対側にある。オペレータがハンドル50に対して細長い本体14を回転させている間、オペレータは第1回転グリップ面220を掴んでもよい。また、細長い本体14がハンドル50に対して回転可能であることをオペレータに示すために、矢印222などの印をハンドル50に設けてもよい。
【0024】
アクチュエータ12は、細長い本体14と相互作用して、第1動作位置と第2動作位置の間を作動可能である。第1動作位置から第2動作位置に向かうアクチュエータ12の移動によって針20が前進方向36に移動するように、アクチュエータ12は構成される。図2を参照して、アクチュエータ12は、手動操作部材230、付勢機構232およびスライダ234を具える。
【0025】
手動操作部材230は、(図示された実施例ではスライダ234を介して)付勢機構232と作動可能に連結されており、これにより、付勢機構232は、(図4および図7に示される)非作動位置から、矢印236の方向に手動操作部材230が押された作動位置に向かって手動操作部材230が移動させられるまで、第2動作位置の方へアクチュエータ12を移動させることができない。手動操作部材230は、図示された実施例では凹型であるオペレータ接触面238を具える。ハンドル50は、図示された実施例では凸型である外側面212を具え、オペレータ接触面238は、視覚とは対照的に、感触によって、オペレータ接触面238の位置を示すため凹型である。さらに、オペレータ接触面238は、ハンドル50の外側面212の最大径から外側に延びており、これによりまたオペレータ接触面238の位置が分かりやすくなっている。手動操作部材230は、図示された実施形態では押しボタンとして動作し、それにより外科医などのオペレータは、矢印236の方向に手動操作部材230を押し、手動操作部材230を非作動位置から、ハンドル50に設けられた手動操作部材凹部210に手動操作部材230の一部が受入れられる作動位置の方向に移動させる。手動操作部材230はまた、アクチュエータ空洞200の内側面244と接触する指部242を具え、これにより、非作動位置の方へ手動操作部材230が付勢される。図8により詳しく示されるように、手動操作部材230は、主要部246およびより小さな部分248から構成されるスライダ開口部を具える。
【0026】
再び図4を参照して、図示された実施例の付勢機構232は、ばねである。ばね232は、針20を前進方向36に押すワイヤ40と作動可能に接続されたスライダ234に3Nから15Nの間の力を加えるように構成された圧縮バネである。より具体的には、ばね232は、スライダ234に9Nから11Nの間の力を加えるように構成されてもよい。ばね232または他の付勢機構によって加えられる力を制限することによって、針20を進めるために加えられる力が過度に大きくなる可能性を減らし、これにより、縫合手術中、外科医は針20を容易に配置し、針20を対象組織に通すことができる。図示された実施例では圧縮ばねが示されているが、針20が配置されるようにアクチュエータ12を前進させるべく空気圧式ばねのような他のタイプの付勢機構が利用されてもよい。
【0027】
スライダ234は、ワイヤ40を受入れて、ワイヤ40をスライダ234に連結するワイヤ穴250を具える。スライダ234が移動するとワイヤ40が移動するように、ワイヤ40はスライダ234に固定される。スライダ234は、図4で示されるように、スライダ234の上端面である付勢機構接触面252を具える。スライダ234はまた、図4で示されるように、スライダ234の下端面である手動操作部材接触面254を具える。スライダ234はさらに、比較的大きい断面積部258から延びる断面積縮小部256を具える。比較的大きい断面積部258はアクチュエータ空洞200の内径より若干小さ目の直径を有し、これにより、アクチュエータ空洞200内でのスライダ234の並進移動が可能となる。
【0028】
再び図8を参照すると、スライダ開口部の主要部246が断面積縮小部256と位置合わせされたときにスライダ234の断面積縮小部256を受入れるように、スライダ開口部の主要部246は構成される。これは、オペレータが矢印236の方向にオペレータ接触面238を押し、それにより手動操作部材230が図4および図7で示される方向に従って右に移動するときに生じる。しかしながら、スライダ開口部の主要部246は、スライダ234の比較的大きい断面積部258より小さい。従って、スライダ234の移動距離は、手動操作部材接触面254と断面積縮小部256が比較的大きい断面積部258に移行する所にある肩部262の間の距離により制限される。
【0029】
再び図8を参照して、スライダ開口部の小さな部分248は、ワイヤ40が通過できるように構成され、これにより、スライダ234とワイヤ40の接続が可能となる。(図4および図7に示される)非作動位置に手動操作部材230があるときに、手動操作部材230はスライダ234と接して、手動操作部材230に対するスライダ234の移動を妨げる。オペレータが矢印236の方向に手動操作部材230を動かすと、手動操作部材230が矢印236の方向に動かされ、スライダ開口部の主要部246がスライダ234の断面積縮小部256と位置合わせされ、付勢機構232がスライダ234を(図4および図7で示される方向に従って)下に向かって動かし、断面積縮小部256がスライダ開口の主要部246を通り、ワイヤ40が動き、針20が前進方向36に動く。
【0030】
縫合装置10はまた、ハンドル50と連結され、ハンドル50に対して伸長位置(図1および図4)と押下げ位置(図7)の間を移動可能なプランジャ270を具える。伸長位置から押下げ位置へのプランジャ270の移動によってばね232が圧縮される。プランジャ270は、ばね232の位置決め機能として、またプランジャ270を押下げ位置に保持する保持機能としても機能する遠位環状肩部272を具える。再び図7を参照して、プランジャ270が押下げ位置にある場合、遠位環状肩部272は返し206と係合し、返し206は、ばね232からプランジャ270に掛かる(図7に示される方向に従って)上向きの力に対して反対に作用する。図7に示される押下げ位置のプランジャ270を有するプランジャ270によってばね232が圧縮された場合、ばね232は、プランジャ270とスライダ234に3Nから15N、より詳しくは、9Nから11Nの力が加えられるように構成される。プランジャ270は、ばね232の付勢力を変えるために、ばね232または他の付勢機構と協働してもよい。例えば、図4において示される返し206とハンドル基端部198の間に、別の返しが設けられてもよい。図7には、プランジャ270が完全な押下げ位置にある場合が示されており、遠位環状肩部272が、図4において示された返し206と中間押下げ位置のハンドル基端部198の間にある返しにより保持されていた場合、プランジャ270が完全な押下げ位置にある場合の付勢力と比較してより小さな付勢力がばね232によって加えられ得る。または、例えば、付勢機構が空気である場合に、遠位環状肩部272が、アクチュエータ空洞200の内側面244に接するシールを具えてもよく、これにより、スライダ234より上の空気の体積が変化するとスライダ234上の空気によって加えられる圧力が変化する。
【0031】
ばね232は、プランジャ270が伸長位置にある場合に、スライダ234上のばね232によってほとんど力が加えられないように構成されてもよい。次に、オペレータは、プランジャ270を押下げることによって縫合装置の準備をする。プランジャ270の頭部274は、プランジャ頭部凹部204に受入れられてもよく、これにより、プランジャ270の上面276が、ハンドル基端部198と同一平面上となり、装置の作動準備が完了していることを示すことができる。しかしながら、必要に応じて、伸長位置にあるプランジャ270とともに手動操作部材230を非作動位置から作動位置に移動させて、その後、針20を前進させるために、プランジャ270を押下げてもよい。この方法を経た作動は、プランジャ270が最初に押下げられ、その次に手動操作部材230が押下げられる場合ほど迅速ではない。
【0032】
図9乃至11には、同じ細長い本体14と針ホルダ16を具えるが、図1に示されたアクチュエータとは異なるアクチュエータ312を有する別の縫合装置が示されている。図10を参照して、アクチュエータ312は、細長い本体14と相互作用し、第1動作位置と第2動作位置の間を作動可能である。アクチュエータ312は、第1動作位置から第2動作位置へのアクチュエータ312の移動によって針20が前進方向36に移動するように構成される。アクチュエータ312は、手動操作部材230とは異なる手動操作部材330、ばねであって上記のばね232と同じであってもよい付勢機構232、および上記のスライダ234と同様のスライダ234を具える。
【0033】
手動操作部材330は、作動可能に(図示された実施例ではスライダ234を介して)付勢機構232と連結され、これにより、手動操作部材330が非作動位置から作動位置に向かって移動するまで付勢機構232が第2動作位置の方へアクチュエータ12を移動させることを妨げることができる。手動操作部材330は、手動操作部材330が双方向性であるという点で、上記の手動操作部材230とは異なる。手動操作部材330は、図示された実施例では凹型である第1オペレータ接触面338、および図示された実施例ではこれも凹型であり、手動操作部材330の反対側にある第2オペレータ接触面340を具える。
【0034】
再び図9を参照して、縫合装置310はまた、上記のハンドル50と異なるハンドル350を具える。ハンドル350とハンドル50の違いは、ハンドルのそれ以外の部分が似ているという理解の下で、後述する。ハンドル350の外側面352は図示された実施例において凸型であり、オペレータ接触面338、340の位置を示すため、オペレータ接触面338、340はともに凹型である。オペレータ接触面338、340は両方ともハンドル350の外側面352の最大径から外向きに延び、それらの位置を分かりやすくしている。図示された実施例では手動操作部材330は押しボタンとして作動し、それにより外科医などのオペレータは、矢印356の方向に第1オペレータ接触面338を押し、または矢印358の方向に第2オペレータ接触面340を押し、手動操作部材330を非作動位置から、作動位置の方向に移動させる。手動操作部材330は、第1オペレータ接触面338のより近くに第1外側部364、第2オペレータ接触面340のより近くに第2外側部366、および第1外側部364と第2外側部366の間にある小さな中心部368から構成されるスライダ開口部を具える。
【0035】
スライダ開口部の第1外側部364および第2外側部366は、スライダ開口部の第1外側部364および第2外側部366が断面積縮小部256と適切に位置合わせされた場合に、スライダ234の断面積縮小部256を受入れるようにそれぞれ構成される。このことは、オペレータが第1オペレータ接触面338を矢印356の方向に押し、図10に示される方向に従って右に手動操作部材330を動かした場合、またはオペレータが第2オペレータ接触面340を矢印358の方向に押し、図10に示される方向に従って左に手動操作部材330を動かした場合に生じる。しかしながら、スライダ開口部の第1外側部364および第2外側部366はともに、スライダ234の比較的大きい断面積部258より小さい。スライダ開口部の小さい中心部368は、ワイヤ40の通路によってスライダ234にワイヤ40が連結されるように構成される。手動操作部材が非作動位置にある場合、手動操作部材230はスライダ234と接し、手動操作部材230に対するスライダ234の移動を妨げる。
【0036】
ハンドル350は、ハンドル350の外側面352からアクチュエータ空洞380の中に向かってハンドル350の中を延び、上記のアクチュエータ空洞25と同様に構成された第1手動操作部材穴378を具える。ハンドル350はまた、ハンドル350の外側面352からアクチュエータ空洞380の中に向かってハンドル350の中を延びる第2手動操作部材穴382を具える。縫合装置310は、上記のプランジャ270のようなプランジャを含まない。従って、ハンドル350は、ばねが作用する面に対してばね接触面392を画定する閉基端部390を具える。
【0037】
上記の中でいうまでもなく、各種の-開示されたおよび他の、特徴および機能(または変形例またはその種類)は、多くの他の異なるシステムまたはアプリケーションに、望ましく、結合できる。また、当業者によって、各種の現在思いがけないか予期しない変形例、修正、変種または改善がなされることができるであろうが、それらは、以下の請求項に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11